説明

合成樹脂製容器

【課題】水平に配列された複数の横溝が周方向に沿って設けられている容器において、当該横溝の間に位置する領域にヒケが生じ難くした合成樹脂製容器を提供する。
【解決手段】水平に配列された複数の横溝41bを周方向に沿って設けるとともに、横溝41bの間に位置する領域45に、横溝41bよりも浅い細溝44を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル状に成形された合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いてプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品を内容物とする飲料用容器として知られている。そして、この種の合成樹脂製容器にあっては、従前より、その軽量化や、使用樹脂量の削減による低コスト化のために、可能な限り容器を薄肉に成形する試みがなされており、近年に至っては、内容物を加熱殺菌して充填する従来のホット充填に代えて、無菌状態で内容物を充填する、いわゆる無菌充填が着目されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、内容物の充填手段として無菌充填を採用すれば、ホット充填の場合のような耐熱性が容器に要求されないため、より一層の軽量化、薄肉化を図ることが可能であるものの、その分、軸荷重強度(高さ方向からの圧縮強度)が低下するなどの強度面での問題が懸念される。このため、例えば、特許文献1にあっては、無菌充填に用いる容器として、一層の軽量化、薄肉化を図るとともに、その高さ方向から加わる荷重に対して座屈変形し難くした容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−214895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無菌充填にあっては、容器の洗浄殺菌から内容物を充填するまでの工程を無菌状態に管理された環境下で行うが、このとき、容器の洗浄殺菌は、通常、85℃程度の熱水によって数秒程度行われる。
このため、当該容器には、ホット充填に際して求められるほどの高い耐熱性は要求されないが、洗浄殺菌時の熱水処理によって容器が過度に収縮してしまわない程度の適度の耐熱性が必要である。そして、ブロー成型時の成形型の温度を比較的高め(例えば、100℃程度)に設定することで、そのような耐熱性を確保することができる。
【0006】
しかしながら、このような比較的高めの温度に設定された成形型によって、従来にも増して薄肉化された容器をブロー成形しようとすると、一般にヒケと称される不規則な窪みが容器表面に生じやすくなってしまう傾向にある。そして、このようなヒケが生じてしまうと、容器の外観が損なわれるだけでなく、容器の強度が低下する原因にもなる。特に、特許文献1で提案された容器にあっては、水平に配列された複数の横溝を周方向に沿って設けることで、軸荷重強度を確保しようとしているが、このような形態の容器にあっては、当該横溝の間に位置する領域にヒケが生じやすいことが見出された。
【0007】
本発明は、上記したような事情に鑑みてなされたものであり、高さ方向に占める一定の範囲に、水平に配列された複数の横溝が周方向に沿って設けられている容器において、当該横溝の間に位置する領域にヒケが生じ難くした合成樹脂製容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る合成樹脂製容器は、口部、肩部、胴部及び底部を備えた合成樹脂製容器であって、前記胴部の高さ方向に占める一定の範囲に、水平に配列された複数の横溝が周方向に沿って設けられているとともに、前記横溝の間に位置する領域に、前記横溝よりも浅い細溝が設けられている構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水平に配列された複数の横溝を周方向に沿って設けた容器において、当該横溝の間に位置する領域にヒケが発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る合成樹脂製容器の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】本発明に係る合成樹脂製容器の実施形態の概略を示す説明図である。
【図3】本発明に係る合成樹脂製容器の実施形態の概略を示す説明図である。
【図4】本発明に係る合成樹脂製容器の実施形態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す説明図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図、図1(c)は底面図である。また、図2(a)は、側面図、図2(b)は、図1(b)のB−B端面図であり、図3(a)は、図1(b)のA−A端面図、図3(b)は、図1(b)のC−C端面図である。
なお、図2(b)、図3(a)、図3(b)に示す端面図では、それぞれの切り口の端面形状のみを示している。
【0012】
本実施形態において、容器1は、例えば、公知の射出成形や圧縮成形などにより製造された、熱可塑性樹脂からなる有底筒状のプリフォームを二軸延伸ブロー成形するなどして、図示するような、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備えた所定の容器形状に成形される。
容器1を成形するのに使用する熱可塑性樹脂としては、延伸ブロー成形が可能であれば、任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリ乳酸又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル,これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものなどが好適である。特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが、好適に使用される。また、アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン−エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用することができる。
【0013】
図示する例において、口部2は、円筒状とされ、このような口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのねじ山が、蓋体取り付け手段として設けられている。これにより、内容物を充填した後に、蓋体を口部2に取り付けることによって、容器1内を密封できるようになっている。
【0014】
また、肩部3は、口部2と胴部4との間に位置し、口部2の直下から拡径しながら胴部4に連続するように形成されている。胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占める部分であり、本実施形態にあっては、高さ方向に直交する横断面が、角部を丸めた矩形状となるようにしている。これにより、容器1は、角型ボトル状の容器形状とされている。
なお、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に置いたときに、水平面に直交する方向に沿った方向をいうものとする。
【0015】
また、胴部4は、胴部4の一部を径方向に絞り込むようにして設けられたウェスト部40によって、上胴部4aと下胴部4bとに分けられている。そして、胴部4を上胴部4aと下胴部4bとに分けるウェスト部40は、上胴部4aの下端縁に接続する上胴部側斜面40aと、下胴部4bの上端縁に接続する下胴部側斜面40bとを有している。
【0016】
このようなウェスト部40は、容器1の高さ方向ほぼ中央付近の剛性を高めるために胴部4の周方向に沿って設けられるが、上胴部側斜面40aと下胴部側斜面40bとの間に底面40cを備えると、軸荷重強度も確保しやすくなり好ましい。また、上胴部側斜面40a及び下胴部側斜面40bを高さ方向に対し平行寄りに近づけ、図3(a)に示す高さ方向に対する上胴部側斜面40aの傾斜角度θaと高さ方向に対する下胴部側斜面40bの傾斜角度θbのそれぞれが10〜40°となるようにすると、軸荷重が加わったときに各斜面40a,40bが水平方向に倒れ込みにくくなるのでいっそう好ましくなる。
【0017】
さらに、ウェスト部40の剛性を確保するためには、上胴部4a側に位置する上胴部側斜面40aと底面40cとの間、及び下胴部4b側に位置する下胴部側斜面40bと底面40cとの間に、図示するような容器内方に窪んだ凹溝40d,40eが形成されるようにするのが好ましい。
【0018】
また、上胴部4aには、周方向に沿って設けられた四つの横溝41aが、高さ方向にほぼ等間隔で配列されている。これとともに、下胴部4bにも、周方向に沿って設けられた四つの横溝41bが高さ方向にほぼ等間隔で配列されている。
このようにして、上胴部4aに形成される横溝41aと、下胴部4bに形成される横溝41bとは、主として、容器1の軸荷重強度を確保するために設けられる。
【0019】
また、上記の如き横溝41aを上胴部4aに設けるにあたり、図示する例にあっては、上胴部4aの長辺側及び短辺側の各平面部において、その幅方向中央に、横溝41aよりも高さ方向に幅広で、かつ、横溝41aよりも深く窪んだ横溝補強凹ビード42を横溝41aに重ねて設けている。その一方で、長辺側の幅方向中央におけるウェスト部40から下胴部4bにかけた部分には、容器内方に窪ませた把持部43を設けて、使用者が容器1を把持しやすくなるようにしている。
【0020】
本実施形態にあっては、下胴部4bに複数の横溝41bを設けるとともに、横溝41bの間に位置する領域45に、横溝41bよりも浅い細溝44を設けている。図示する例において、横溝41bの間に位置する領域45は、横溝41bの溝底に対し凸状に段上げされた平面(横断面矩形の辺部)又は曲面(横断面矩形の丸められた角部)となっているが、このような領域45の幅方向のほぼ中央(当該領域45の高さ方向に沿ったほぼ中央)に、横溝41bとほぼ平行となるように細溝44を設けている。前述したように、容器1の軸荷重強度を確保するために水平に配列された複数の横溝41bを周方向に沿って設けると、横溝41bの間に位置する領域45にヒケが生じ易い傾向にあるが、図示するような細溝44を設けることで、当該領域45におけるヒケの発生を抑制することができる。
【0021】
このとき、図4に示すように、横溝41bの配列ピッチをL1、深さをL2、幅をL3としたときに、0.3≦L3/L1≦0.4、0.3≦L2/L3≦0.7なる関係が成り立つようにすることで、容器1の軸荷重強度を十分に確保することができる。そして、横溝41bの間に位置する領域45の幅をL4とし、細溝44の幅をL5、深さをL6としたときに、0.1≦L6/L2≦0.5、0.1≦L5/L4≦0.3なる関係が成り立つようにすることで、細溝44の賦形性を損なうことなくヒケの発生を抑制することができる。
【0022】
ここで、図4は、図3(b)において一点鎖線で囲む部分を拡大して示す要部拡大断面図であり、作図上、その肉厚の図示は省略している。また、横溝41bをなす傾斜面を延長した仮想平面と、横溝41bの間に位置する領域45を延長した仮想平面との交線を、横溝41bと当該領域45との境界とするものとし、図4の断面図に現れる当該仮想平面を鎖線で示した。
【0023】
本実施形態にあっては、横溝41bの間に位置する領域45に細溝44を設けることで、当該領域45にヒケが発生するのを抑制することができるが、横溝41bの深さL2に対して細溝44の深さL6が浅すぎ、両者の関係が上記範囲に満たない場合は、ヒケの発生を十分に抑制することができなくなってしまう。一方、両者の関係が上記範囲を超えて細溝44の深さL6が深くなってしまうと、細溝44の賦形性が損なわれてしまう。また、当該領域45の幅L4に対する細溝44の幅L5が狭かったり、その逆となってしまったりして、両者の関係が上記範囲から外れてしまうと、この場合にも、ヒケの発生を十分に抑制することができなくなってしまう。
【0024】
これらの関係を満たしつつ、横溝41bの配列ピッチL1、深さL2、幅L3、横溝41bの間に位置する領域45の幅L4、細溝44の幅L5、深さL6のぞれぞれは適宜設定することができるが、横溝41bの配列ピッチL1は17.5〜21mm、深さL2は2〜4mm、幅L3は6〜7mm、横溝41bの間に位置する領域45の幅L4は10〜14mm、細溝44の幅L5は1.5〜2.5mm、深さL6は0.5〜1mmとするのが、本実施形態におけるおおよその目安である。
【0025】
また、本実施形態のように、本発明を角形ボトル状の容器1に適用するにあたっては、細溝44は、少なくとも容器1のコーナー部に位置するように形成するのが好ましい。すなわち、角形ボトル状の容器1をブロー成形する場合には、ブロー成形型の型内の形状と、当該型内でブロー成形されるプリフォームの形状との関係から、容器1のコーナー部が他の部分に比べて相対的に肉薄になり、ヒケが生じやすくなる傾向が強い。このため、細溝44は、少なくとも容器1のコーナー部に設けるのが好ましい。
また、容器1の横断面が矩形状とされる場合には、同様の理由から、長辺側に比べて短辺側の方が相対的に肉薄になる。このため、細溝44は、短辺側に設けるのが好ましく、図示する例のように、長辺側に細溝44を形成するのを適宜省略することができる。
このように、横溝41bの間に位置する領域45に細溝44を形成するにあたり、細溝44は容器1の周方向に沿って部分的に形成されるようにしてもよいが、容器1の全周にわたって細溝44を形成してもよいのはいうまでもない。
【0026】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0027】
例えば、前述した実施形態では、下胴部4bにおいて、横溝41bの間に位置する領域45に、横溝41bよりも浅い細溝44を設けているが、同様の細溝を上胴部4aの横溝41aの間に位置する領域に設けることもできる。このように、本発明にあっては、胴部4の高さ方向に占める一定の範囲に、水平に配列された複数の横溝が周方向に沿って設けられているとともに、当該横溝の間に位置する領域に、当該横溝よりも浅い細溝を設ければよいが、一般には、上胴部4aに比べて下胴部4bの方が相対的に肉薄になる。このため、前述した実施形態のように、少なくとも下胴部4b側に、水平に配列された複数の横溝41bを周方向に沿って設けるとともに、この横溝41bの間に位置する領域45に、横溝41bよりも浅い細溝44を設けるのが好ましい。
【0028】
また、前述した実施形態では、胴部4の高さ方向に直交する横断面を矩形状としているが、当該横断面は正方形状としてもよい。さらに、当該横断面を円形状として、容器1を丸型ボトル状の容器形状とすることもでき、胴部4の具体的な形態は特に限定されない。
【0029】
また、本発明は、プリフォームの重量を35〜45g程度とし、このようなプリフォームをブロー成形してなる1.5〜2.0L程度の比較的容量の大きいものに特に好適に適用できるが、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のような本発明に係る合成樹脂製容器は、ボトル状に成形される種々の合成樹脂製容器に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
4a 上胴部
4b 下胴部
40 ウェスト部
41a,41b 横溝
44 細溝
45 横溝の間に位置する領域
5 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部及び底部を備えた合成樹脂製容器であって、
前記胴部の高さ方向に占める一定の範囲に、水平に配列された複数の横溝が周方向に沿って設けられているとともに、前記横溝の間に位置する領域に、前記横溝よりも浅い細溝が設けられていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記横溝の配列ピッチをL1、深さをL2、幅をL3としたときに、0.3≦L3/L1≦0.4,0.3≦L2/L3≦0.7なる関係が成り立ち、
さらに、前記横溝の間に位置する領域の幅をL4とし、前記細溝の幅をL5、深さをL6としたときに、0.1≦L6/L2≦0.5,0.1≦L5/L4≦0.3なる関係が成り立つ請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記胴部が、前記胴部の一部を径方向に絞り込むようにして設けられたウェスト部によって、上胴部と下胴部とに分けられており、
前記横溝及び前記細溝が、少なくとも前記下胴部に設けられている請求項1又は2のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記胴部の高さ方向に直交する横断面が方形状とされた角型ボトル状の合成樹脂製容器であって、
前記細溝が、少なくとも前記胴部のコーナー部に位置するように設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230815(P2011−230815A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104810(P2010−104810)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】