説明

合成樹脂製容器

【課題】減圧吸収パネルを更に改良し、従来容器の減圧吸収パネルよりも減圧吸収効果を高め、該容器内の圧力変化に対する耐性をより高めることによって、例えば、より高温の内容物を充填可能な合成樹脂製容器を提供する。
【解決手段】胴部4にリブ8により離間された複数の減圧吸収パネル7を有する合成樹脂製容器1であって、該リブ8は、該容器1の高さ方向に延びており、該減圧吸収パネル7は、凹面部9及び島部10により構成され、該島部10は、その全周が該凹面部9によって囲まれており、該凹面部9に対して容器1の外方に向って双瘤形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製容器に関し、より詳細には、容器胴部のパネル構造に特徴のある合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製の容器、例えば、それらで作成された壜様の容器があるが、このような容器は、硝子製の容器と比較して剛性が低いため、容器内の圧力変化(特に、減圧)によって変形し、外観等に不良を生じ易い。特に、このような圧力変化は、例えば、衛生上の観点等から、内容物を高温で充填することがおこなわれる液体調味料分野において、容器に高温の内容物が充填された後に該容器が蓋等により密閉され冷却される際に生じる。
【0003】
この様な問題に対しては、従来、該容器の胴部に減圧吸収パネルを設けることで耐圧性を改善している。この様な減圧吸収パネルは多くの場合、該容器の胴部に凹面として形成される(例えば、特許文献1を参照)。又、該凹面様の減圧吸収パネルの中央に更に略半円柱形状の島部を設け、より耐圧性を改善した容器もある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−87644号公報
【特許文献2】特開2004−35110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような略半円柱形状の島部を形成した減圧吸収パネルは、容器の耐圧性に対して一定の効果は得られるものの、容器内がある一定以上に減圧された際又は外部からの力によって、島部が反転してしまい、その効果が損なわれる可能性がある。島部をより肉厚に形成すれば、該島部が反転することは防げるが、今度は、該島部の箇所の剛性が増すため、減圧吸収パネル、特に該島部の効果自体が低下してしまう。このような問題は、内容物の高温での充填を妨げ、特に、衛生上の観点からより高温での充填が求められる液体調味料用の容器では大きな問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、減圧吸収パネルを更に改良し、従来容器の減圧吸収パネルよりも減圧吸収効果を高め、該容器内の圧力変化に対する耐性をより高めた合成樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、胴部にリブにより離間された複数の減圧吸収パネルを有する合成樹脂製容器であって、該リブは、該容器の高さ方向に延びており、該減圧吸収パネルは、凹面部及び島部により構成され、該島部は、その全周が該凹面部によって囲まれており、該凹面部に対して双瘤形状に形成されることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0008】
又、本発明は、前記島部は、該島部の前記凹面部からの高さが、その中央が最も低くなるように形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0009】
又、前記島部は、平面視略瓢箪形状をしていることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0010】
又、前記島部は、該島部の前記容器の周方向の幅が、その中央が最も細くなるように形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0011】
又、本発明は、前記島部は、島部の前記容器の高さ方向の長さが、前記減圧吸収パネルの該容器の高さ方向の長さの50乃至90%であることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0012】
又、本発明は、前記リブは、前記容器の外方に向って略円弧状であることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、合成樹脂製容器の胴部に複数の凹面部及び島部で構成される減圧吸収パネルを形成し、該島部を該凹面部に対して双瘤形状に形成することにより、該島部の反転を防止することができるため、該容器内の圧力変化に対する耐性がより高い合成樹脂製容器を提供することができる。又、該島部は平面視略瓢箪形状に形成することもできる。好ましくは、該島部は、その中央部が、該凹面部からの高さが最も低く、又は/且つ、該容器の周方向の幅が最も細く形成される。更に、該島部の前記容器の高さ方向の長さが、該減圧吸収パネルの該長さの50乃至90%であることが好ましい。
【0014】
又、本発明は、前記減圧吸収パネルを離間するリブを前記容器の外方に向って円弧状にすることによって、該リブが、該容器内の圧力変化に伴って座屈することを防止できるため、該容器の該容器内の圧力変化に対する耐性をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の正面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の実施形態の側面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】本発明の実施形態の平面図である。
【図8】本発明の実施形態の減圧吸収パネルの略図であり、(a)は縦断面図に相当する図であり、(b)は正面図に相当する図である。
【図9】比較例の斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の抜き取り量と内圧値との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図1乃至8より説明する。合成樹脂製容器1は、壜様の容器であり、首部2、肩部3、胴部4及び底部5により構成される。本実施の形態では、合成樹脂製容器1は、平面視略円状に形成され、PET樹脂で作成されている。尚、後述する本実施形態の構成は、壜様の容器1のみならず、他の形状の容器にも応用可能である。
【0017】
首部2には、容器1に充填された内容液を流通させるための口部6が形成されると共に首部2には中栓(図示省略)が装着される。
【0018】
肩部3は、首部2から胴部4へと橋絡する部分であり、本実施の形態では、該半球形状に形成される。
【0019】
本実施の形態において、底部5は、その中心部5aが容器1の内方に向って突出している。尚、底部5の形状は適宜変更することができる。
【0020】
胴部4には、その側面4aに、容器1の高さ方向に延びるリブ8及びその側縁部7a,7bでリブ8と連続し、リブ8によって互いが離間されている複数の減圧吸収パネル7が形成されている。又、本実施の形態においては、胴部4は略円筒状に形成されている。
【0021】
リブ8は、容器1内の圧力変化(減圧)に対する強度を高くするため、容器1の外方に向って僅かに略円弧状に形成されている。このようにすることによって、容器1内の圧力変化(減圧)や容器1外部からの力によって、リブ8が座屈することを防止している。尚、リブ8は、略円弧状に形成せずに直線状に形成することもできる。
【0022】
減圧吸収パネル7は、凹面部9及び島部10により構成される。島部10は、減圧吸収パネル7の容器1の周方向に対する中央部7cに、その全周が凹面部9によって囲まれるように且つ凹面部8に対して容器1の外方に向って凸状に形成されている。本実施の形態では、減圧吸収パネル7は凹面部9の面積をより広く確保するために平面視略方形状に形成されているが、その形状は平面視略楕円形状等に適宜変更することが可能である。
【0023】
凹面部9は、容器1内の減圧を吸収することにより、容器1の座屈を防止するために形成されるものである。凹面部9はその面積が広い程、容器1内の減圧に対する容器1の強度をより保持することができるようになる。従って、減圧吸収パネル7はその数は可能な限り少ないことが好ましい。本実施の形態では、容器1が平面視円形状に形成されることを考慮しつつ、凹面部9の面積を広く確保するため、減圧吸収パネル7は6面形成されている。
【0024】
島部10は、容器1内が減圧された際に、島部10が容器1内方に向って凹むことにより、容器1内の減圧を吸収するために形成されるものであり、双瘤形状に形成される。又、島部10は、凹面部9を支持することで、外力や容器内の圧力変化(減圧)により凹面部9が必要以上に変形することを防止し、凹面部9の上記機能をより高くする機能も有する。本発明において双瘤形状とは、例えば、図8(a)に示す様な形状であり、凹面部9からの高さh,hが、その周囲よりも高くなる様に形成された2つの頂部10a,10bを有し、2つの頂部10a,10bが、その間に形成され、且つ、島部10の中で凹面部9からの高さが最も低い谷部10cを介して連続しており、谷部10cが、凹面部9に対して、凹面部9よりも高い位置に形成されている形状を指す。
【0025】
本実施の形態では、島部10の頂部10aは島部10の上端部10dの近傍に、頂部10bは島部10の下端部10eの近傍に各々形成され、そして、各々の凹面部9からの高さh及びhは略等しい。又、谷部10cは、島部10の中央部10fに形成されている。つまり、島部10は、2つの頂部10a,10b及び中央部10fの各々の高さが、h≒h>h>0となる様に形成されている。(hは中央部10fの凹面部9からの高さである)。
【0026】
尚、2つの頂部10a,10b及び中央部10fの位置、面積、高さ等は、容器1の大きさ及び形状等に合わせ適宜変更することができ、凹面部9からの高さの異なる頂部10a及び頂部10bを形成してもよい。
【0027】
又、本実施の形態では、島部10は平面視略瓢箪形状である。本発明において、瓢箪形状とは、例えば、図8(b)に示す様な形状であり、上端部10d側から細部10gに向けて徐々にその幅が細くなっていき、細部10gを境に下端部10eに向ってその幅が徐々に太くなっていく形状である。従って、細部10gが最も幅が細くなっている箇所である。
【0028】
本実施の形態では、島部10の容器1の周方向対する平面視の幅は、上端部10d側では、その頂部10aの周方向の幅wが、その下端部10e側は、その頂部10bの周方向の幅wが最も太くなる様に且つwとwが略等しくなるように形成される。又、細部10gが中央部10fにくる様に形成される。つまり、島部10はw≒w>w>0となるように形成されている(wは中央部10fの周方向の幅である)。尚、島部10は、平面視略方形状(w≒w≒w)にすることもできる、又、必ずしもw≒wでなくともよい。
【0029】
減圧吸収パネル7において、凹面部9及び島部10の平面視における面積比は、容器1の形状、大きさ等によって適宜決定することができる。しかしながら、島部10の面積比が極端に大きく(凹面部9の面積比を極端に小さく)した場合、凹面部9の面積が小さくなりすぎて、凹面部9の有する上記機能が発揮されなくなる。逆に、凹面部9の面積比を極端に大きく(島部10の面積比を極端に小さく)した場合、今度は、島部10の有する上記機能は発揮されなくなることとなる。従って、凹面部9及び島部10は適度に両機能が発揮されるような面積比で減圧吸収パネル7に形成される。本実施の形態では、凹面部9と島部10の面積比は凡そ1:1となる様に形成されている。好適には、凹面部9と島部10の面積比は、3:1〜1:2の範囲となる様に形成することが望ましい。
【0030】
又、島部10は、その容器1の高さ方向の長さlが短すぎても上記機能が発揮されなくなる。逆に、島部10の長さlが減圧吸収パネルの上縁部7d及び下縁部7eに略接する位に長くすると、島部10がリブ8の様な働きをしてしまい、島部10の上記機能が発揮されないばかりでなく、凹面部9が細分化されるため、凹面部9の上記機能も減少することとなる。従って、島部10の長さlaは、減圧吸収パネル7の容器1の高さ方向の長さlの50乃至90%であることが好ましい。本実施の形態では、la/l=約89%である。
【0031】
次に、本実施の形態の具体的な効果について示す。後述の3種類のサンプルについて比較検討を行った。
【0032】
(実施例)本実施の形態の合成樹脂製容器1である。
(比較例1)本実施の形態と島部の形状及び厚さが異なる合成樹脂製容器101であり、島部110は、図9に示す様な略半円筒形状であり、減圧吸収パネル107は、実施例で示す合成樹脂製容器1の減圧吸収パネル7より薄肉に形成されている(以下、比較例1の凹面部を凹面部109と謂う)。
(比較例2)本実施の形態と島部の形状が異なる合成樹脂製容器201であり、島部210は、図9に示す様な略半円筒形状である(以下、比較例2の減圧吸収パネルを減圧吸収パネル207、同凹面部を凹面部209と謂う)。尚、島部210の厚さは実施例で示す合成樹脂製容器1の島部10と略同じである。
【0033】
図10に上記実施例及び比較例1及び2の抜き取り量(ml)に対する内圧値(kPa)との関係表すグラフを示す。又、表1に図10のグラフより算出した各容器1,101,201が座屈した際の抜き取り量(ml)及びその内圧値(kPa)を示す。
【表1】

【0034】
図10において、実施例の合成樹脂製容器1におけるグラフの傾きは、比較例1や比較例2の合成樹脂製容器101,201と比べて小さくなっていることがわかる。これは、実施例1が比較例1、比較例2に比べて減圧を吸収する能力が高いことを表している。
【0035】
又、表1において、実施例の合成樹脂製容器1における抜き取り量は比較例1や比較例2の合成樹脂製容器101,201と比べて大きい値を示している。これは、実施例が比較例1、比較例2と比べて容器内の減圧によって容器が座屈し難いことを表している。
【0036】
以上のような減圧吸収パネル7を容器1の胴部4に形成することにより、本実施の形態の容器1は、上記の凹面部9の機能と島部10の機能の両機能を発揮させることが可能であるため、容器1内の減圧に対して変形し難い。又、島部10を上記のような形状に形成することによって、容器1内が減圧状態になった際や外部から応力が掛かった際に、島部10の中央部10fにその圧力が集中し、中央部10fが初めに凹むことにより、島部10が反転することを防止しながら、良好な減圧吸収機能を発揮することができる。
【0037】
又、本実施の形態の容器1では、減圧吸収パネル7を離間しているリブ8を容器1の外方に向って僅かに円弧状にすることによって、リブ8の座屈を防止することができ、更に容器1内の減圧に対して変形し難くなっている。
【0038】
従って、容器内の圧力変化に対する耐性がより高い合成樹脂製容器を提供することができる。

【符号の説明】
【0039】
1 合成樹脂製容器 2 首部 3 肩部
4 胴部 4a 側面 5 底部
5a 中心部 5b 溝部 6 口部
7 減圧吸収パネル 7a 側縁部 7b 側縁部
7c 中央部 7d 上縁部 7e 下縁部
8 リブ 9 凹面部 10 島部
10a 頂部 10b 頂部 10c 谷部
10d 上端部 10e 下端部 10f 中央部
10g 細部 101 合成樹脂容器 107 減圧吸収パネル
109 凹面部 110 島部 201 合成樹脂容器
207 減圧吸収パネル 209 凹面部 210 島部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部にリブにより離間された複数の減圧吸収パネルを有する合成樹脂製容器であって、
該リブは、該容器の高さ方向に延びており、
該減圧吸収パネルは、凹面部及び島部により構成され、
該島部は、その全周が該凹面部によって囲まれており、該凹面部に対して双瘤形状に形成されることを特徴とする合成樹脂製容器
【請求項2】
前記島部は、該島部の前記凹面部からの高さが、その中央部が最も低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記島部は、平面視略瓢箪形状をしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記島部は、該島部の前記容器の周方向の幅が、その中央部が最も細くなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記島部は、該島部の前記容器の高さ方向の長さが、前記減圧吸収パネルの該容器の高さ方向の長さの50乃至90%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記リブは、前記容器の外方に向って略円弧状であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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