説明

合成樹脂製推進管

【構成】 合成樹脂製推進管10は、低耐荷力方式の推進工法に用いられて、下水管路などの地中管路を形成する。推進管の一方端面44には、管軸方向に突起する2つの突起部46が形成される。突起部46は、推進管10の管軸を中心点とする上下対称位置に形成される。また、突起部46の頂点48から他端面52までの管軸方向の長さは、たとえば推進力伝達ロッド(20)を構成するロッド部材(22)と同じ所定長さLに設定される。このような推進管10を連結して曲線状の管路を形成する場合、推進時には、突起部46の頂点48を支点として推進管10の連結部が屈曲する、つまり管軸基準で管路が曲がる。これにより、推進管10の管端は、所定長さLごとに位置することになる。
【効果】 管路を管軸基準で曲げることができるので、曲線状の管路を形成する場合でも、管路の設計長と使用する推進管の積算長とのずれを無くすことができ、推進力伝達ロッドの爪部材と推進管の管端との位置を合わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は合成樹脂製推進管に関し、特にたとえば、推進力伝達ロッドに設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いる、合成樹脂製推進管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の推進工法の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の推進工法は、合成樹脂製の推進管を用いる低耐荷力方式の推進工法である。この推進工法では、元押しジャッキからの推進力を伝達する推進力伝達ロッドに爪状の支持部材を設け、この支持部材によって、所要本数ごとに推進管の管端を押すようにしている。これにより、推進管の外周面と周囲の土との摩擦抵抗力は、推進管の所要本数分に分散されるので、特許文献1の技術によれば、低耐荷力方式の推進工法における長距離推進が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−266922号公報 [E21D 9/06]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
推進力伝達ロッドは、通常、推進管と同長の複数のロッド部材を連結して形成される。また、上述のように、特許文献1の推進力伝達ロッドの爪部材(推進管支持部材)は、推進管の所要本数毎に設けられるので、爪部材の間隔は、推進管の管長の所要本数倍に設定される。たとえば、1.33mの管長(所定長さL)を有する推進管を用い、10本ごとに推進管を押して管路を形成する場合には、ロッド部材の10本ごとに爪部材が設けられて、爪部材の間隔は13.3mに設定される。
【0005】
ここで、特許文献1に開示されるような端面が平面状の推進管1を用いて、直線状の管路を形成する場合には、図8(A)に示すように、形成される管路の管長は、推進管1の所定長さLの整数倍となり、推進管1の管端は、所定長さLごとに位置することになる。したがって、上述のように、爪部材の間隔を推進管1の管長の所要本数倍にしておけば、爪部材の位置と推進管1の管端の位置とは合う。
【0006】
しかしながら、図8(B)に示すように、曲線状の管路を形成する場合や推進経路の曲線部が存在する場合には、管路の最内側基準で管路が曲がる、つまりカーブの最内側で推進管1の管端同士が当接し、カーブの外側では推進管1の管端同士が離れて隙間が生じるようになる。たとえば、1.33mの推進管1を連結して曲線半径R=60mの管路を形成する場合には、隣り合う推進管1の管端面同士の角度は1.4度となり、隣り合う推進管1の間に、管軸方向2においては4mmの隙間αが生じる。つまり、形成される管路の管長は、推進管1の所定長さLの整数倍よりも長くなってしまい、管路の設計長と使用する合成樹脂製推進管の積算長との間にずれが生じてしまう。
【0007】
したがって、特許文献1の技術を用いて曲線状の管路を形成しようとすると、推進力伝達ロッドの爪部材と推進管の管端とに位置ずれが生じてしまう恐れがあり、爪部材によって推進管を適切に押すことができなくなってしまう恐れがある。
【0008】
このような爪部材と推進管の管端との位置ずれを解消するためには、施工現場に応じて爪部材の間隔を変更する方法が考えられる。しかし、爪部材の間隔を変更するためには、管長の異なる特殊なロッド部材が必要となる。そして、施工現場によって推進経路は異なる、つまり直線状の推進経路もあれば、曲線状の推進経路もあり、その曲率も様々である。したがって、施工現場に応じて爪部材の間隔を変更するためには、多種類の特殊なロッド部材を用意しなければならず、その費用が嵩んでしまうので、この方法は現実的ではない。
【0009】
また、従来の推進管によって曲線状の管路を形成する場合、推進管の連結部および推進管自体の僅かな可とう性を利用して、管路を無理やり曲げなければならない。そうすると、急カーブになるほど、推進管の管端などに過度の負担がかかるようになり、推進管が損傷してしまう恐れがある。たとえば、推進管の管端同士の当接は、カーブの最内側における一点荷重となってしまう(図8(B)参照)ので、管端が割れたり変形したりし易い。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、合成樹脂製推進管を提供することである。
【0011】
この発明の他の目的は、曲線状の管路を形成する場合でも、管路の設計長と使用する合成樹脂製推進管の積算長とのずれを無くすことができる、合成樹脂製推進管を提供することである。
【0012】
この発明のさらに他の目的は、曲線状の管路を形成し易い、合成樹脂製推進管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0014】
第1の発明は、推進力伝達ロッドに設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いる合成樹脂製推進管であって、一方端面の管軸を中心点とする対称位置に形成される突起部を備える、合成樹脂製推進管である。
【0015】
第1の発明では、合成樹脂製推進管(10)は、低耐荷力方式の推進工法、特に推進力伝達ロッド(20)に設けた爪部材(26)によって合成樹脂製推進管を所要本数ごとに押しながら推進させる推進工法に用いられる。合成樹脂製推進管は、直管状に形成され、その一方端面(44)には、管軸方向に突起する2つの突起部(46)が形成される。突起部は、合成樹脂製推進管の管軸を中心点とする対称位置に形成される。
【0016】
このような合成樹脂製推進管を連結して曲線状の管路を形成すると、推進時には、突起部の頂点を支点として合成樹脂製推進管の連結部が屈曲する、つまり管軸基準で管路が曲がる(図6参照)。
【0017】
第1の発明によれば、管路を管軸基準で曲げることができるので、曲線状の管路を形成する場合であっても、管路の設計長と使用する合成樹脂製推進管の積算長とのずれを無くすことができる。
【0018】
また、一方端面の対称位置に突起部を設けたことによって、隣り合う合成樹脂製推進管の間に隙間が生じるので、合成樹脂製推進管の連結部を容易に曲げることができるようになる。したがって、曲線状の管路を形成し易い。
【0019】
さらに、推進時における合成樹脂製推進管の管端同士の当接を、2つの突起部と他端面との二点荷重にすることができるので、一点荷重になることと比較して、合成樹脂製推進管の管端が割れたり変形したりしてしまう恐れを低減できる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明に従属し、他端面から突起部の頂点までの管軸方向の長さが、推進力伝達ロッドに設けた爪部材の間隔に応じた所定長さに設定される。
【0021】
第2の発明では、突起部の頂点(48)から他端面(52)までの管軸方向の長さ、つまり推進管(10)の管長は、推進力伝達ロッド(20)に設けた爪部材(26)の間隔に応じた所定長さに設定される。たとえば、推進力伝達ロッドを構成するロッド部材(22)と同じ所定長さ(L)に設定される。
【0022】
第2の発明によれば、曲線状の管路を形成する場合でも、推進力伝達ロッドの爪部材の位置と合成樹脂製推進管の管端の位置とを適切に合わせることができ、直線部、曲線部に関係無く、常に一定かつ均等な力が爪部材から合成樹脂製推進管に付与されることとなる。
【0023】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、突起部の基端から頂点までは傾斜面によって形成される。
【0024】
第3の発明では、合成樹脂製推進管(10)に形成される突起部(46)の基端から頂点(48)までは、所定角度(θ)で傾斜する傾斜面(50)によって形成される。傾斜面の所定角度は、たとえば、合成樹脂製推進管を連結して形成する管路の曲率半径(R)に対応させて設定され、好ましくは、合成樹脂製推進管の各連結部で必要とされる屈曲角と同じ或いはほぼ同じに設定される。これにより、カーブ推進時における合成樹脂製推進管の管端同士の点接触を避けることができ、推進時の応力集中を防止できる。
【0025】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかに従属し、本管部と、突起部を含む短筒状の端部材とを接合した合成樹脂製推進管である。
【0026】
第4の発明では、合成樹脂製推進管(10)は、本管部(54)と、突起部(46)を含む短筒状の端部材(56)とを含み、これらを別部材として作成した後、接合することによって形成される。
【0027】
第4の発明によれば、端部材を取り換えるだけで、突起部の形状が異なる合成樹脂製推進管を製作でき、成形型の作成コストを低減できるので、合成樹脂製推進管の製造コストを低減できる。
【0028】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかに従属し、内周縁に沿って形成されて、管軸方向に突出する差込部をさらに備える。
【0029】
第5の発明では、合成樹脂製推進管(10)は、差込部(70)を備える。差込部は、たとえば、薄肉の円筒状や半円筒状に形成されて、一方端面(44)の内周縁から管軸方向に突出するように形成される。合成樹脂製推進管を連結するときには、差込部は、隣接する合成樹脂製推進管に差し込まれて、合成樹脂製推進管の連結部に形成される隙間(凹部)を覆う。
【0030】
第5の発明によれば、差込部によって合成樹脂製推進管の連結部に形成される隙間を覆うので、形成した管路の内面をほぼ平坦にすることができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、端面の対称位置に突起部を形成したので、管路を管軸基準で曲げることができ、曲線状の管路を形成する場合でも、管路の設計長と使用する合成樹脂製推進管の積算長とのずれを無くすことができる。
【0032】
また、端面の対称位置に突起部を形成することにより、隣り合う合成樹脂製推進管の間に横方向の隙間が生じるので、合成樹脂製推進管の連結部を容易に曲げることができるようになり、曲線状の管路を形成し易い。
【0033】
さらに、推進時における合成樹脂製推進管の管端同士の当接を、2つの突起部と他端面との二点荷重にすることができるので、一点荷重になることと比較して、合成樹脂製推進管の管端が割れたり変形したりしてしまう恐れを低減できる。
【0034】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の合成樹脂製推進管の一実施例の外観を示す、(A)は正面図であり、(B)は平面図である。
【図2】図1の合成樹脂製推進管を用いて地中管路を形成する際に用いる推進装置の構成を示す図解図である。
【図3】図1の合成樹脂製推進管を用いて地中管路を形成する推進工法を説明するための図解図である。
【図4】図1の合成樹脂製推進管の製作方法の一例を説明するための図解図である。
【図5】図1の合成樹脂製推進管を連結した状態を示す図解図である。
【図6】図1の合成樹脂製推進管を用いて管路を形成する際の状態を説明するための図解図であり、(A)は直線状の管路を形成する場合を示し、(B)および(C)は曲線状の管路を形成する場合を示す。
【図7】この発明の他の合成樹脂製推進管の一実施例を示す、(A)は正面図であり、(B)は断面図である。
【図8】従来の推進管を用いて管路を形成する際の状態を説明するための図解図であり、(A)は直線状の管路を形成する場合を示し、(B)は曲線状の管路を形成する場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および図3を参照して、この発明の一実施例である合成樹脂製推進管10(以下、単に「推進管10」という。)は、低耐荷力方式の推進工法に用いられて、下水管路などの地中管路を形成する。
【0037】
以下には、先ず、この発明の理解に必要な範囲で、この発明の背景となる低耐荷力方式の推進工法、およびそれに用いられる推進装置12について説明する。
【0038】
低耐荷力方式の推進工法とは、先導体の推進に必要な元押しジャッキからの推進力の初期抵抗力を推進力伝達ロッドに作用させ、推進管には周囲の土との周面抵抗力のみを負担させる推進工法であり、鉄筋コンクリート管と比較して許容耐荷力の低い、塩化ビニル等の合成樹脂製の推進管に適用される推進工法である。低耐荷力方式の推進工法には、圧入方式、オーガ方式、泥水方式および泥土圧方式などが知られているが、この実施例の推進管10は、これらのいずれの方式にも適用可能である。
【0039】
また、推進管10が適用される推進工法では、推進力伝達ロッドによって先導体を押すと共に、推進力伝達ロッドに設けた爪部材(推進管支持部材)によって、所要本数ごとに推進管10の管端を押すようにしている。これにより、推進管10の外周面と地盤との摩擦抵抗力は推進力伝達ロッドに作用するようになる、つまり推進管10にかかる周面抵抗力は所要本数分に分散されて小さくなるので、合成樹脂製の推進管10であっても長距離推進が可能になる。なお、上記所要本数は、推進管10と地盤との周面抵抗力が、推進管10の許容忍耐力を下回る本数に設定され、たとえば8本〜15本に設定される。
【0040】
具体的には、図2に示すように、この推進工法に用いられる推進装置12は、推進力の発生源である元押しジャッキ14、先端にカッタ16が装着される先導体18、元押しジャッキ14からの推進力を先導体18に伝える推進力伝達ロッド20、および掘削した土砂を送るための送土管(図示せず)などを備える。
【0041】
ここで、推進力伝達ロッド20は、複数のロッド部材22を連結することによって形成される。ロッド部材22は、推進管10の管長と同じ所定長さL(たとえばL=1.33m)を有し、鋼材などの高耐荷力材によって形成される。ロッド部材22の両端部の上部および下部のそれぞれには、接続部24が設けられ、隣り合うロッド部材22の接続部24同士は、横方向に屈曲可能にピン接合される。
【0042】
また、上述のように、推進力伝達ロッド20には、爪部材26が設けられる。爪部材26は、推進力伝達ロッド20の外周面から上方および下方の少なくとも一方に突出するように形成され、外方に突出する突出状態と内方に引込む引込状態とに状態変化できる機能を有する。このような爪部材26は、所要本数ごとにロッド部材22に設けられる、つまり、爪部材26同士の間隔は、所定長さL(推進管10およびロッド部材22の長さ)の所要本数倍に設定される。
【0043】
次に、図3を参照して、推進装置12を用いた推進工法による地中管路の形成方法について説明する。
【0044】
地中管路を形成する際には、先ず、発進立孔30および到達立孔32を掘削し、掘削した発進立孔30に元押しジャッキ14を設置する。次に、元押しジャッキ14に先導体18をセットし、先導体18のカッタ16を回転駆動させて地盤を掘削しながら、元押しジャッキ14によって先導体18を押し込んで推進させる。
【0045】
続いて、ロッド部材22をピン接合によって先導体18に接続し、それに外嵌するように、推進管10を先導体18に接続し、元押しジャッキ14によってロッド部材22および推進管10の後端を押し込んでさらに推進させる。その後、ロッド部材22同士および推進管10同士の接続作業、および元押しジャッキ14による押し込み作業を順次繰り返し、所定の推進経路を通る地中管路を形成していく。このとき、爪部材26を設けたロッド部材22を所要本数ごとに接続し、ロッド部材22によって所要本数ごとに推進管10の管端を押すようにする。
【0046】
そして、先導体18が到達立孔32まで到達すると、先導体18を分離して回収し、推進管10(管路)の先頭が到達立孔32に到達するまで、さらに押し込み作業を続ける。推進管10の先頭が到達立孔32に到達すると、爪部材26の突き出しを引込ませた後、ロッド部材22を順次分離しながら推進力伝達ロッド20を回収し、地中管路の形成作業を終了する。
【0047】
このように、所要本数ごとに爪部材26によって推進管10の管端を押すことにより、合成樹脂製の推進管10であっても長距離推進が可能になる。具体的には、地盤の土質や推進管10の管径などの条件にもよるが、爪部材26を用いない低耐荷力方式の推進工法では、推進可能距離は通常30〜70mであるのに対して、爪部材26を用いる低耐荷力方式の推進工法では、推進可能距離は200〜300mにも達し、安価で耐腐食性に優れる合成樹脂製の推進管10の長距離推進を可能にしている。
【0048】
このような推進装置12を用いる推進工法において、爪部材26によって推進管10を適切に押すためには、爪部材26の位置と推進管10の管端の位置とを合わせることが重要になる。以下に具体的に説明するこの発明は、曲線状の管路を形成する場合であっても、特殊な推進力伝達ロッド20を用いることなく、爪部材26の位置と推進管10の管端の位置とを合わせることができる推進管10を提供するものである。
【0049】
図1を参照して、この発明の一実施例である推進管10について具体的に説明する。図1(A)は、推進管10を横方向から見た外観を示す正面図であり、図1(B)は、推進管10を上方から見た外観を示す平面図である。
【0050】
推進管10は、硬質塩化ビニルなどの合成樹脂によって直管状に形成され、たとえば300mmの呼び径を有する。推進管10の両端部には、その中央部よりも薄肉に形成されるカラー装着部40が形成され、カラー装着部40の外周面には、ゴム輪溝42が形成される。
【0051】
また、推進管10の一方端面44には、管軸方向に突起する2つの突起部46が形成される。この2つの突起部46は、推進管10の管軸を中心点とする上下対称位置に形成される。突起部46は、平面状の頂点48を有し、突起部46の基端から頂点48までは、所定角度θで傾斜する傾斜面50によって形成される。
【0052】
傾斜面50の所定角度θは、推進管10を連結して形成する管路の曲率半径Rに対応させて設定するとよく、推進管10の各連結部で必要とされる屈曲角と同じ或いはほぼ同じに設定することが好ましい。たとえば、1.33mの推進管10を用いて曲線半径R=60mの管路を形成する場合には、傾斜面50の角度θを1.4度に設定するとよい。また、推進管10の管長は、上述のように、ロッド部材22と同じ所定長さL(たとえばL=1.33m)に設定されるが、ここでいう推進管10の管長とは、突起部46の頂点48から他端面52までの管軸方向の長さをいう。
【0053】
このような推進管10は、専用の成形型を作成し、射出成形などで製作してもよいし、従来の推進管を製作した後、後加工で一方端面44を削って突起部46を形成することにより製作してもよい。また、推進管10は、予め一体的に形成する必要はなく、2つの部材を接合して製作してもよい。図4を参照して、たとえば、他端面52から一方端面44側のゴム輪溝42までを含む本管部54(破線bより左側の部分)と、突起部46を含む短筒状の端部材56(破線bより右側の部分)とを別途製作するようにし、本管部54の端面と端部材56の端面とを接着や融着などで接合することにより、推進管10を製作してもよい。ただし、後述のように推進管10はカラー62によって接続されるので、本管部54と端部材56とを必ずしも接着接合などで一体的にする必要はなく、カラー62によって本管部54と端部材56とを固定するだけでもよい。このように本管部54と端部材56とを別途製作すれば、端部材56を取り換えるだけで、突起部46の形状が異なる推進管10を製作できる。たとえば専用の成形型を用いて複数種類の推進管10を製作する場合には、端部材56用の成形型を複数用意するだけでよく、本管部54は共通の成形型で製作できるので、推進管10全体を一度に形成するための大きな成形型を複数用意することと比較して、成形型の製造コストを低減でき、推進管10の製造コストを低減できる。
【0054】
図5に示すように、推進管10同士を接続するとき(管路を形成するとき)には、ゴム輪溝42にゴム輪60が装着され、推進管10の一方端面44と他端面52とを突き合わせるようにして、ゴム輪装着部40にカラー62が外嵌される。これにより、推進管10の外面とカラー62の内面とによってゴム輪60が圧接されてシール機能を発揮し、形成した管路内からの水漏れ、および管路内への水の浸入が防止される。ゴム輪60としては、水膨潤タイプのゴム輪などを用いることができ、カラー62としては、SUSカラーやリブカラー等を用いることができる。なお、突起部46は、推進方向の前方側および後方側のどちらになるように配置されてもかまわない。
【0055】
図6(A)に示すように、このような推進管10を連結して直線状の管路を形成する場合、推進時には、突起部46の頂点48と他端面52とが当接する。そして、形成される管路の管長は、推進管10の所定長さLの整数倍となり、推進管10の管端は、所定長さLごとに位置することになる。したがって、爪部材26の間隔を推進管10の管長の所要本数倍にしておけば、爪部材26の位置と推進管10の管端の位置とを合わせることができる。また、この場合、突起部46の頂点48を平面状にしておくことにより、他端面52とのいわゆる点接触を避けることができ、推進時に応力が集中することを防止できる。
【0056】
一方、図6(B)および(C)に示すように、推進管10を連結して曲線状の管路を形成する場合、推進時には、頂点48を支点として推進管10の連結部が屈曲し、突起部46の傾斜面50と他端面52とが当接する。つまり、管路を管軸基準で曲げることができるので、管軸方向2における隙間が生じない。これにより、形成される管路の管長は、推進管10の所定長さLの整数倍となり、推進管10の管端は、所定長さLごとに位置することになる。したがって、爪部材26の間隔を推進管10の管長の所要本数倍にしておけば、爪部材26の位置と推進管10の管端の位置とを合わせることができる。また、この場合、推進管10の管端同士の当接は、一方端面において最も離れた位置(つまり管軸を中心点とする対称位置)にある2つの突起部46と他端面52との少なくとも二点荷重になるので、一点荷重になることと比較して、推進管10の管端が割れたり変形したりしてしまう恐れを低減できる。さらに、図6(C)に示すように、突起部46の傾斜面50の所定角度θを、推進管10の各連結部で必要とされる屈曲角と同じ或いはほぼ同じに設定することにより、他端面52との点接触を避けることができ、推進時における応力の集中を防止できる。
【0057】
この実施例によれば、一方端面44の上下対称位置に突起部46を形成したので、管路を管軸基準で曲げることができ、曲線状の管路を形成する場合でも、管路の設計長と使用する推進管10の積算長とのずれを無くすことができる。また、推進力伝達ロッド20の爪部材26と推進管10の管端との間の位置ずれを防止できるので、直線部、曲線部に関係無く、常に一定かつ均等な力を爪部材26から推進管10に付与することができる。また、これにより、特殊な推進力伝達ロッド20を用いることなく、直線状、曲線状、さらには曲率の異なる様々な推進経路に対応できるので、設備費用を削減できる。
【0058】
また、図8に示すような従来の推進管1では、推進管1の連結部を曲げようとすると、管端がカーブの最内側でぶつかって、連結部を曲げる際の抵抗力となるため、連結部の屈曲性が制限されてしまう。しかし、この実施例の推進管10によれば、一方端面44の上下対称位置に突起部46を形成することにより、隣り合う推進管10の間に横方向の隙間が生じるので、推進管10の連結部を容易に横方向に曲げることができるようになる。したがって、曲線状の管路を形成し易い。また、推進管10は、連結部を容易に曲げることができる上、推進時における管端同士の接触が一点荷重になることを避けることができるので、推進時の破損が生じ難い。
【0059】
さらに、図8に示すような従来の推進管1では、カーブ推進時に隙間αが生じる。このような隙間αが一旦形成されると、推進経路が曲線状から直線状になったときに、ある連結部にそのしわ寄せがきて(隙間αが集まって)、大きな隙間となってしまう恐れがある。連結部の隙間が大きくなりすぎると、管内面に大きな凹みができるので流下物がひっかかったり、カラー62が外れたりする等の不具合が生じてしまう。しかし、この実施例の推進管10によれば、突起部46の頂点48と他端面52とは常に接触しており、隙間αは形成されないので、上述のような不具合は生じない。
【0060】
なお、上述の実施例では、突起部46を一方端面44にのみ形成するようにしたが、推進管10の両端面に突起部46を形成してもよい。この場合には、一方端面44の突起部46の頂点48から他端面52の突起部46の頂点48までの長さが所定長さLに設定され、突起部46の傾斜面50の傾斜角は小さくてよい。
【0061】
また、上述の実施例では、突起部46の頂点48を平面状に形成したが、必ずしも平面状にする必要はない。たとえば、突起部46の頂点48を緩やかな曲面状に形成してもよい。
【0062】
続いて、図7を参照して、この発明の他の実施例である推進管10について説明する。図7(A)は、推進管10を横方向から見た外観を示す正面図であり、図7(B)は、推進管10を管軸に沿って鉛直方向に切断した断面を示す断面図である。図7に示す推進管10は、図1に示す推進管10とほぼ同じであるが、端部に差込部70を有する点が異なる。以下には、図7に示す推進管10について具体的に説明するが、図1に示す推進管10と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0063】
図7に示すように、推進管10は、一方端面44側に形成される差込部70を備える。この差込部70は、推進管10を連結するときに、隣接する推進管10の他端面52側に差し込まれて、推進管10の連結部に形成される隙間(凹部)を覆う(塞ぐ)ものである。
【0064】
具体的には、差込部70は、一方端面44から管軸方向に突出するように、推進管10の内周縁に沿って短円筒状に形成される。差込部70が一方端面44から突出する長さは、突出部46の傾斜面50の角度θなどに応じて設定され、推進管10の連結部を屈曲させたときに、差込部70の先端が隣接する推進管10から抜けない長さに設定される。また、差込部70は、形成した管路の内面に露出するので、管路の内面に段差が生じないように、なるべく肉薄(たとえば、1mm以下の厚さ)に形成されることが望ましい。
【0065】
このような差込部70は、射出成形などによって、推進管10の他の部分と予め一体的に形成してもよいし、別部材として形成して、接着接合などで他の部分と接合するようにしてもよい。また、上述のように、推進管10を2つの部材(たとえば本管部54および端部材56)を接合して製作する場合には、端部材56に差込部70を形成しておくとよく、端部材56と差込部70とを射出成形などによって予め一体的に形成してもよい。これにより、推進管10の製造コストを低減できる。
【0066】
差込部70の材質としては、推進管10の他の部分と同種の合成樹脂を用いるとよいが、差込部70を別部材として形成する場合には、硬質塩化ビニルよりもポリプロピレンやポリエチレンを用いる方が割れ難くて好ましい。差込部70は、なるべく薄く形成することが望ましいので、硬質塩化ビニルでは割れが生じる恐れがあるからである。
【0067】
このような差込部70を形成することによって、推進管10の連結部の隙間、たとえば、突起部46を形成したことによりその横方向に形成される隙間、或いは、元押しジャッキ14による推進力が作用しなくなったときに管端同士が離れて形成される隙間、が覆われるので、内面がほぼ平坦な管路を形成できる。
【0068】
なお、差込部70は、排水管10の内周縁全周に亘る円筒状に形成したが、これに限定されず、内周縁底部を中心とする円弧状、たとえば半円筒状に形成することもできる。推進管10によって形成される管路が下水管路である場合、排水は管路に満水で流れるよりも管路の底面付近を流れることが多いので、排水が流れる部分をカバーできれば良いからである。
【0069】
また、差込部70は、突起部46が形成される一方端面44側に形成する必要はなく、平面状に形成される他端面52側に形成してもよい。
【0070】
さらに、差込部70は、隣接する推進管10に差し込むときに邪魔にならない程度に、一方端面44から離れるに従って拡径するように形成してもよい。これにより、隣接する推進管10の内周面に差込部70がより密着するようになり、管路内の排水の流れをより滑らかにすることができる。
【0071】
なお、上述の各実施例の推進管10は、爪部材26を用いる推進工法に好適に用いられるものであるが、もちろん爪部材26を用いない推進工法にも適用でき、この場合にも、推進管10の連結部を容易に曲げることができる等の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0072】
10 …合成樹脂製推進管
12 …推進装置
14 …元押しジャッキ
18 …先導体
20 …推進力伝達ロッド
22 …ロッド部材
26 …爪部材
46 …突起部
48 …突起部の頂点
50 …突起部の傾斜面
70 …差込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進力伝達ロッドに設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いる合成樹脂製推進管であって、
一方端面の管軸を中心点とする対称位置に形成される突起部を備える、合成樹脂製推進管。
【請求項2】
他端面から前記突起部の頂点までの管軸方向の長さが、前記推進力伝達ロッドに設けた爪部材の間隔に応じた所定長さに設定される、請求項1記載の合成樹脂製推進管。
【請求項3】
前記突起部の基端から頂点までは傾斜面によって形成される、請求項1または2記載の合成樹脂製推進管。
【請求項4】
本管部と、突起部を含む短筒状の端部材とを接合した、請求項1ないし3のいずれかに記載の合成樹脂製推進管。
【請求項5】
内周縁に沿って形成されて、管軸方向に突出する差込部をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の合成樹脂製推進管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−168788(P2010−168788A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11703(P2009−11703)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(502218617)株式会社エム・シー・エル・コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】