説明

合成畳

【課題】踏みつけた際に稲わらに近い感触を得ることのでき、長時間接触していても疲れを感じさせることのない合成畳を提供すること。
【解決手段】発泡合成樹脂板を芯材12とする畳床の少なくとも畳表側に、木材チップを繊維方向に解きほぐした繊維体を圧縮することにより適度なクッション性を備えた層状の断面構造を有する木質繊維断熱材14が介在されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成畳に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は高気密・高断熱住宅が多くなり、建築材料には気密性・断熱性・防水性等の機能が要求されている。この要求に応えるための畳としては、図3に示したように天然素材である稲わらに代えて発泡合成樹脂製の芯材1を用いた合成畳Aがある。この合成畳Aは室温を逃がさず、しかも床下からの冷え込みを防ぐことができるため、夏涼しく冬温かい快適な住まいを実現できる利点がある。
【0003】
ところで、合成畳の場合、発泡合成樹脂製の芯材1のみでは、衝撃などにより角部を破損したり、踏みつけなどによりへたりが生じる虞があるため、この種の合成畳Aでは、芯材1の表裏面に所定の厚さを有する補強材2,3が配置される場合がある(特許文献1)。
【0004】
この補強材2,3としては、ポリプロピレンにグラスファイバーを混合させたグラスファイバープレスボード、ポリエステル繊維融着ボード、ベニヤ板などを例示することができる。
【0005】
一方、合成畳では、クッション性を改善するために,特許文献2に開示されているように、芯材としてインシュレーションボード(木質繊維板)を採用したものも知られている。
【0006】
このインシュレーションボードは、植物性繊維を高温高圧で蒸してほぐした繊維をすきだして乾燥し、接着剤で固めた多孔質の軟質繊維板である。内部に多くの気泡を含んでいるので断熱性に優れ、保湿性、吸音性に優れるとともに、割れ、変形などを起こし難い利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−19022号公報
【特許文献2】実開平6−63725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2のように、従来の合成畳に採用されているインシュレーションボードは、木質系の材質であったとしても、繊維素材にバインダーとして接着剤を加えて強固に固められた板材であるため、合成畳の芯材として採用された場合に、素足で踏んだときの感触が日本古来の稲わらを使用した畳の感触と異なり、居住者に硬いという感触を与えてしまうという問題があった。そのため、長時間接触していると、疲れを感じさせてしまう場合があり、改善が求められていた。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、踏みつけた際に稲わらに近い感触を得ることのでき、長時間接触していても疲れを感じさせることのない合成畳を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る合成畳は、
発泡合成樹脂板を芯材とする畳床の少なくとも畳表側に、木材チップを繊維方向に解きほぐした繊維体を圧縮することにより適度なクッション性を備えた層状の断面構造を有する木質繊維断熱材が介在されていることを特徴としている。
このような構成からなる合成畳によれば、天然素材である稲わらを使用した日本古来の畳の感触を付加することができる。
【0011】
ここで、本発明では、前記木質繊維断熱材は、25〜100mm厚品を圧縮し、10〜25mm厚品として測定したときの密度(kg/m3)が30〜50であることが好ましい。
このような木質繊維断熱材であれば、合成畳の畳床として好ましく用いることができる。
【0012】
さらに、本発明では、前記クッション性を備えた層状の木質繊維断熱材は、当該木質繊維断熱材と芯材との間に縫着糸を差し通して前記芯材に一体化させる際に、前記縫着糸が当該芯材の短手方向に沿って進ませた糸であり、この縫着糸から締め付けられる力により所定の厚さに圧縮されて前記芯材に一体化されていることが好ましい。
【0013】
このような合成畳であれば、縫着糸で縫い合わせる際に、木質繊維断熱材を所定の厚さに圧縮することができるので、わら畳の製法を活用することで、コストを安価にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る合成畳によれば、自然素材のわら畳の感触を残したまま、工業製品の合成畳の性能を融合させることができる。
すなわち、足で踏んだとき、あるいは座ったときなどの感触が稲わらのように柔らかいため、長時間接触したとしても疲れを生じさせることがない。また、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の一実施例に係る合成畳の断面図である。
【図2】図2は図1に示した合成畳において、縫着糸の進む方向を示した概略図である。
【図3】図3は従来の合成畳の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る合成畳について説明する。
図1は本発明の一実施例による合成畳10の縦断面図である。
この合成畳10では、発泡プラスチックを10mm〜60mm厚、好ましくは35mm〜45mmの板状に成形した芯材12を有する。この芯材12を構成する発泡プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、硬質ポリウレタン、フェノール樹脂などの熱可塑性プラスチックを適宜な倍率で発泡させたものが挙げられる。その中でも、ポリスチレンの発泡体である商品名カネライトフォーム(株式会社カネカ製)を用いることが好ましい。この発泡体は、断熱性能に優れ、吸水・保湿性がほとんどなく、フロンやホルムアルデヒドが含まれておらず、さらには切削加工性が良好であるとともに、圧縮強度、曲げ強さもあり、驚異的な粘り腰を発揮するので合成畳の芯材に有効である。
【0017】
一方、本実施例では、芯材12の上面側に、緩衝材として適宜なクッション性を備えた層状の断面構造を有する木質繊維断熱材14が設置されている。このクッション性を備えた木質繊維断熱材14は、間伐材や廃材などの木材をチップ状に細かく砕いて繊維方向に解きほぐすとともに、その解きほぐされた繊維体を乾燥し、さらに適宜な荷重で圧縮したクッション性を備えた断熱材である。
【0018】
このクッション性を備えた層状の断面構造を有する木質繊維断熱材14は、グラスウールと同様にそれ自身の形をほとんど有していない。すなわち、木の繊維が層状に広がる断面構造を有しており、木の繊維体自体が変形可能である。しかしながら、この木質繊維断熱材14は、グラスウールと同等の断熱性能(0.038W/m・K)を有しており、冬季にも申し分のない断熱効果を発揮することができる。また、鉱物系断熱材の2〜5倍もの蓄熱性を有するため、夏季の遮熱にも威力を発揮し、涼しい室内環境を創出することができる、とされている。
【0019】
さらに、このクッション性を備えた木質繊維断熱材14は木質であることから常時呼吸(吸放湿)し、1m3のウッドファイバーで最大7リットルの水蒸気を蓄えることができ、結露やカビ対策としても有効である。また、天然の素材であるため、ホルムアルデヒドを含まずアレルギー対策にも貢献することができ、防音性にも優れており、空気伝播音や二階の足音などを効果的に遮ることもできる。
【0020】
このようなクッション性を備えた木質繊維断熱材14は、25〜100mm厚品を圧縮し、10〜25mm厚品として測定したときの密度(kg/m3)は30〜50である。よって、接着剤で固められたパーティクルボードなどとは異なり極めて軽量で、変形も容易であることから持ち運ぶときの作業性が良好である。
【0021】
一方、本実施例の合成畳10では、芯材12と木質繊維断熱材14との間に、第1の補強板16が設置されている。この第1の補強板16としては、1mm以上の木質の単板、好ましくは針葉樹からなる木質単板が使用されることが好ましい。
【0022】
また、芯材12の下面側には、第2の補強板18が設置され、第2の補強板18の下面側に、1mm程度の裏面材20が介在されている。
第2の補強板18としては、例えば、3mm以上の厚さを有することが好ましい。また、第2の補強板18としては、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂で形成された片プラスチック段ボール、あるいは同程度の厚さを有する菰などを例示することができる。
【0023】
裏面材20は、ポリオレフィンクロス、不織布などで構成することができ、中でもクラフト紙を貼り合わせたポリエチレンテープヤーンを好ましく用いることができる。
第1の補強板16は必須のものではないが、上面側に補強板16が介在されることにより、上側から荷重が加わった場合に、その荷重が第1の補強板16を介して芯材12に伝達されるので、その荷重を吸収することができる。また、芯材12の下方に介在されたプラスチック段ボールあるいは菰などからなる第2の補強材18によりヘタリが防止され、長期間の使用に耐えることができる。
【0024】
さらに、本実施例では、クッション性を備えた木質繊維断熱材14の上面側に、不織布からなる保護材22が介在され、その保護材22の上面を覆うように畳表24が設置されている。
【0025】
保護材22、クッション性を備えた木質繊維断熱材14、第1の補強材16、芯材12、第2の補強材18および裏面材20は、縫着糸で一括して縫合固定されている。縫着糸としては、ビニロン系又はポリプロピレン系の糸が用いられている。
【0026】
このように本実施例では、畳床を形成する際に、縫着糸によって一体化されるが、その場合、縫着糸26は、図2に示したように、合成畳10の短手方向に縫い合わされていく。また、縫着糸26のピッチaは、30mm〜70mm、好ましくは、40mm〜60mmの範囲である。
【0027】
このようなピッチaで畳床を短手方向に縫い合わせていけば、多数の縫着糸26が使用されるので、強度的にも十分であるのは勿論のこと、特に芯材12と木質繊維断熱材14とを一体化する上で好適である。
【0028】
すなわち、本実施例では、縫着糸26により短手方向に畳床を縫い合わせて一体化することにより、製造時に厚さ50mmであったクッション性を備えた木質繊維断熱材14を、全ての箇所で厚さ10mmにまで浮き上がらせることなく圧縮することができる。しかも、畳床の短手方向に縫着糸26を縫い合わせていくことで、両端部が固結された縫着糸が面全体に多数存在することになるため、面全体に圧縮力が作用することになり、結果として、綿状の言わばふわふわした断熱材を板状に強固な状態にして保持することができる。
【0029】
なお、クッション性を備えた木質繊維断熱材14の密度(Kg/m3)は、50mm厚品を200kg/m3で圧縮し10mm厚品として測定したときの密度が40〜50であることが好ましい。本実施例のクッション性を備えた木質繊維断熱材14の10mm厚品の密度は40Kg/m3である。
【0030】
このように木質繊維断熱材14を縫い合わせて一体化させた後に、イグサなどからなる畳表24を他の縫着糸によりその上面に縫い合わせれば、本実施例の合成畳10を構成することができる。
【0031】
本実施例による合成畳10では、上下の層間に接着剤が介在されず、全て縫着糸で一体化されているため、各層間は適宜な移動が可能である。これにより復元性が良好で、どの部分を踏んだとしても硬さは均一である。
【0032】
また、クッション性を備えた木質繊維断熱材14自体も、バインダーとしての接着剤が含有されておらず、繊維体を圧縮することで形の無い木質繊維断熱材14に保形性を発現させている。そして、その繊維体を縫着糸26で畳床に縫い合わせていくことにより、畳床内で略同一厚さの形状を保持させている。よって、この木質繊維断熱材14は、稲わらのように十分な変形力を発揮させることができるので、上方から加えられる荷重を吸収することができる。また、荷重が解除されれば、元の姿勢に復元させることができる。
【0033】
さらに、踏んだときあるいは座ったときなどの感覚も木質繊維断熱材14の内部に存在する多数の空隙により、稲わらに似た感覚を発現することができる。よって、合成畳でありながら、日本古来の畳床と同様の踏み心地、座り心地、触り心地に近似させることができる。
【0034】
以上、本発明の一実施例に係る合成畳10について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例の合成畳10では、上側に第1の補強板16を、下側に第2の補強板18をそれぞれ設けているが、補強板は少なくとも下側の第2の補強板18が介在されていれば、第1の補強板16は設置されていなくても良い。また、畳床の全体の厚さは、適宜変更可能である。
【0035】
本発明では、クッション性を備えた木質繊維断熱材14を利用しているので、軽量で作業性が良好である。さらに、森林から伐採した間伐材、廃材などを利用することができるので、森林循環、温暖化防止、森林保全などにも貢献することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 合成畳
12 芯材
14 クッション性を備えた木質繊維断熱材
16 第1の補強板
18 第2の補強板
20 裏面材
22 保護材
24 畳表
26 縫着糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂板を芯材とする畳床の少なくとも畳表側に、木材チップを繊維方向に解きほぐした繊維体を圧縮することにより適度なクッション性を備えた層状の断面構造を有する木質繊維断熱材が介在されていることを特徴とする合成畳。
【請求項2】
前記木質繊維断熱材は、50mm厚品を200kg/m3で圧縮し10mm厚品として測定したときの密度(kg/m3)が30〜50であることを特徴とする請求項1に記載の合成畳。
【請求項3】
前記クッション性を備えた層状の木質繊維断熱材は、当該木質繊維断熱材と芯材との間に縫着糸を差し通して前記芯材に一体化させる際に、前記縫着糸が当該芯材の短手方向に沿って進ませた糸であり、この縫着糸から締め付けられる力により所定の厚さに圧縮されて前記芯材に一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の合成畳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−184548(P2012−184548A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46619(P2011−46619)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】