説明

合成紙およびその製造方法

【課題】極めて小さな繊維径を有する繊維を含む合成紙を提供すること。
【解決手段】合成高分子を溶媒に溶解した溶液を製造する段階と、前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られる繊維を開繊する段階と、開繊された繊維を抄紙する段階とを含む、繊維径1μm以下の合成高分子からなる繊維が全構成成分を基準として40重量%以上を占める繊維集合体からなる合成紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成紙およびその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は平均繊維径1μm以下の繊維集合体から構成される合成紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成紙とは、合成高分子物質を主な素材として、紙的性質を与える加工をしたもので紙的用途に使用されるものであり、天然パルプからなるいわゆる天然紙とは異なる様々な特性を付与することが出来、幅広い用途へ展開されている。
【0003】
合成紙としては、従来からポリオレフィンや塩化ビニルあるいはポリスチレンなどの熱可塑性合成樹脂フィルムからなるものやポリオレフィンなどの合成パルプをベースとした抄紙からなるものが知られている。
【0004】
しかしながら、前者においては、フィルムがゆえ、通気性に劣るという欠点があり、また、後者の合成パルプからなる抄紙においては、上記欠点は有しないものの、さらに幅広い用途へ展開していくためには、さらなる薄型化が望まれており、そのためにはより繊維径の小さい繊維からなる合成紙が望まれていた。
【0005】
特に、芳香族ポリアミド繊維紙は、他素材からなる紙素材に比べて、耐熱性、電気絶縁性、耐熱寸法安定性、軽量性などの点で優れているため、最近では、電気回路板用積層物の基材にも活用されつつある。例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド短繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製、商標;コーネックス)とポリメタフェニレンイソフタルアミドパルプからなる電気絶縁紙が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。また、ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維(帝人トワロン株式会社製、商標;トワロン)やコポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレン−テレフタルアミド短繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製、商標;テクノーラ)と有機系樹脂バインダーからなる芳香族ポリアミド繊維紙などが提案されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0006】
しかしながら、最近の急速な高密度情報技術の発達にともない、電子回路用積層基板に用いる誘導体には寸法安定性や加工性の他、より一層の薄型化や低誘電率化が求められているが、上記繊維紙はいずれも、その繊維径のために薄型化に限界があった。
【0007】
【特許文献1】特開平2−236907号公報
【特許文献2】特開平2−106840号公報
【特許文献3】特開平1−92233号公報
【特許文献4】特開平2−47392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、極めて小さな繊維径を有する繊維を含む合成紙を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、極めて簡便な方法で上記合成紙を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、
繊維径1μm以下の合成高分子からなる繊維が全構成成分を基準として40重量%以上を占める繊維集合体からなる、合成紙によって達成することができる。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、
合成高分子が溶媒に溶解した溶液を製造する段階と、前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られる繊維を開繊する段階と、開繊された繊維を抄紙する段階を含む、繊維径1μm以下の合成高分子からなる繊維が全構成成分を基準として40重量%以上を占める繊維集合体からなる合成紙の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の合成紙は、非常に小さな繊維径を有する繊維から形成されることにより、繊維自体の特性は維持しつつ薄型化することが可能であり、例えば、透過性の良いフィルターや電子回路板用積層物の基材などに良好に用いることができる。また、非常に大きな表面積を有する合成紙を得ることが出来る。
【0012】
また、得られる合成紙はそのまま使用することもできるし、また取り扱い性やその他の要求事項に合わせて他の部材と組み合わせて用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の合成紙は、繊維径1μm以下の合成高分子からなる繊維が全構成成分を基準として40重量%以上を占める繊維集合体からなることを特徴とする。
【0014】
該合成高分子からなる繊維の繊維径が1μmより大きいと、合成紙の薄型化が困難となり、また合成紙の表面積(ここで、「合成紙の表面積」とは、紙表面の凹凸を無視しないで算出する実面積を意味する。)も小さくなるため好ましくない。好ましい繊維径は10nm〜700nmであり、より好ましくは20nm〜500nmである。
【0015】
該合成高分子からなる繊維の、繊維集合体中に占める割合が40重量%より小さいと、得られる合成紙の表面積が小さくなり好ましくない。好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。
【0016】
繊維集合体には、繊維径1μmを越える合成繊維、天然繊維が含まれていてもよく、繊維形状以外の成分(例えば接着剤など。)が含まれていてもよい。
【0017】
なお、本発明において繊維集合体とは、短繊維及び/又は長繊維が交絡して、または交絡することなく集合した状態のものをいう。
【0018】
該繊維集合体としては、その繊維長が5μm以下の繊維を実質的に含まないことが、好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、走査型電子顕微鏡によって任意の場所を観察しても5μm以下の繊維長を有する繊維が観察されないことを意味し、5μm以下の繊維長を有する繊維が含まれると、得られる合成紙の力学強度が不十分となる。好ましくは、10μm以下の繊維長を有する繊維を実質的に含まないことであり、更に好ましくは100μm以下の繊維長を有する繊維を含まないことである。
【0019】
該繊維を構成する合成高分子としては、溶液形成可能な合成高分子であることが好ましく、このような合成高分子を用いると、抄紙により形成した紙を例えば溶媒中を通過させることによって、繊維表面の一部を溶解させることにより、紙の接着強度を向上させることができる。なお、ここで、「溶液形成可能な」とは溶媒中に微量であっても溶解することをいう。
【0020】
また、特に溶液濃度として1〜30重量%をとりうるような合成高分子を用いれば、後に述べる静電紡糸法を容易に行なうことができ、本発明の合成紙の製造が容易になるという利点がある。
【0021】
該合成高分子としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ポリパラフェニレンテレフタラアミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド−3,4’−オキシジフェニレンテレフタラミド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタラミド、ポリブチルイソシアネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリビニルアセテート、並びにこれらの共重合体などが挙げられる。
【0022】
これらのうちポリエステル、ポリアミド、付加重合体が好ましい。ポリアミドとしては芳香族ポリアミドが好ましく、特に80重量%以上がメタフェニレンイソフタラミドである芳香族ポリアミドが特に好ましい。付加重合体としては、ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0023】
本発明においては、その目的を損なわない範囲で、他の高分子や他の化合物を併用しても良く、例えば、合成高分子と天然高分子とのブレンドや共重合体た、合成体単独または前記ブレンド、共重合体へのガラス繊維や無機粒子などの添加混合等を例示することができる。
【0024】
また、繊維集合体に更にバインダー成分を混合することで、合成紙の力学特性を改善することも可能である。
【0025】
本発明の合成紙を製造するには、前述の合成紙が得られる手法であればいずれも採用することができるが、前述の合成高分子が溶媒に溶解した溶液を製造する段階と、前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られる繊維を開繊する段階と、開繊された繊維を抄紙する段階を含む製造方法が、本発明の合成紙を製造方法の好ましい一態様として挙げることができる。
【0026】
ここで、静電紡糸法とは繊維形成性の化合物を溶解させた溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板上に累積することによって繊維を得る方法であって、繊維状物質とは、繊維形成性化合物を溶解させた溶媒が留去して繊維を形成している状態のみならず、該溶媒が繊維状物質に含まれている状態も示している。
【0027】
次いで、静電紡糸法で用いる装置について説明する。
前述の電極は、金属、無機物、または有機物のいかなるものでも導電性を示しさえすれば用いることができ、また、絶縁物上に導電性を示す金属、無機物、または有機物の薄膜を持つものであっても良い。
【0028】
また、静電場は一対又は複数の電極間で形成されており、いずれの電極に高電圧を印加しても良い。これは、例えば電圧値が異なる高電圧の電極が2つ(例えば15kVと10kV)と、アースにつながった電極の合計3つの電極を用いる場合も含み、または3つを越える数の電極を使う場合も含むものとする。
【0029】
次に静電紡糸法による本発明の繊維構造体を構成する繊維の製造手法について順を追って説明する。
まず前述の合成高分子が溶媒に溶解した溶液を製造するが、ここで、溶液中の合成高分子の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。該濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維構造体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと、得られる繊維の平均径が大きくなり好ましくない。より好ましい濃度は2〜20重量%である。
【0030】
また、前記の合成高分子を溶解させるための溶媒としては、合成高分子を溶解し、かつ静電紡糸法にて紡糸する段階で蒸発し、繊維を形成可能なものであれば特に限定されず、溶解性、取り扱い性の点から選択される。該溶媒としては、例えばアセトン、クロロホルム、塩化メチレン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、四塩化炭素、酢酸、蟻酸、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルモルホリン−N−オキシド、1,3−ジオキソラン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0031】
これらの溶媒は単独で用いても良く、複数の溶媒を組み合わせた混合溶媒として用いても良い。また、合成高分子の溶解性や紡糸安定性を改善させるために、無機塩や有機塩、可塑剤などの低分子化合物を上記溶媒に加えても良い。
【0032】
次に前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階について説明する。該溶液を静電場中に吐出するには、任意の方法を用いることが出来、例えば、溶液をノズルに供給することによって、溶液を静電場中の適切な位置に置き、そのノズルから溶液を電界によって曳糸して繊維化させればよい。
【0033】
以下、図1を用いて更に具体的に説明する。
注射器の筒状の溶液保持槽(図1中3)の先端部に適宜の手段、例えば高電圧発生器(図1中6)にて電圧をかけた注射針状の溶液噴出ノズル(図1中1)を設置して、溶液(図1中2)を溶液噴出ノズル先端部まで導く。接地した繊維状物質捕集電極(図1中5)から適切な距離で該溶液噴出ノズル(図1中1)の先端を配置し、溶液(図1中2)が該溶液噴出ノズル(図1中1)の先端部から噴出させ、このノズル先端部分と繊維状物質捕集電極(図1中5)との間で繊維状物質を形成させることができる。
【0034】
このとき、繊維状物質捕集電極(図1中5)上にマスク(図1中7)を置くと、所望の形状に繊維状物質を高効率で製造できより好ましい。マスクとしては誘電率が2.4以上の有機高分子からなるマスクが有効である。
【0035】
また他の態様として、図2を以って説明すると、該溶液の微細滴(図示せず。)を静電場中に導入することもでき、その際の唯一の要件は溶液(図2中2)を静電場中に置いて、繊維化が起こりうるような距離に繊維状物質捕集電極(図2中5)から離して保持することである。例えば、溶液噴出ノズル(図2中1)を有する溶液保持槽(図2中3)中の溶液(図2中2)に直接、繊維状物質捕集電極に対抗する電極(図2中4)を挿入することもできる。
【0036】
該溶液をノズルから静電場中に供給する場合、数個のノズルを並列的に用いて繊維状物質の生産速度を上げることもできる。また、電極間の距離は、帯電量、ノズル寸法、溶液のノズルからの噴出量、溶液濃度等に依存するが、10kV程度のときには5〜20cmの距離が適当であった。また、印加される静電気電位は、一般に3〜100kV、好ましくは5〜50kV、一層好ましくは5〜30kVである。所望の電位は従来公知の任意の適切な方法で作れば良い。
【0037】
上記二つの態様は、電極が捕集部材を兼ねる場合であるが、電極間に捕集部材となりうる物を設置することで、電極と別に捕集部材を設け、そこに繊維を捕集することも出来る。この場合、例えばベルト状物質を電極間に設置して、これを捕集部材とすることで、連続的な生産も可能となる。また、捕集側の電極を水などの凝固性溶媒を入れた浴中に配置することで凝固性溶媒を捕集部材とし、繊維を凝固性溶媒上または凝固性溶媒中に捕集することも可能である。
【0038】
次に捕集部材に累積される繊維を得る段階について説明する。本発明においては、該溶液を捕集部材に向けて曳糸する間に、条件に応じて溶媒が蒸発して繊維状物質が形成される。通常の室温であれば捕集部材上に捕集されるまでの間に溶媒は完全に蒸発するが、もし溶媒蒸発が不十分な場合は減圧条件下で曳糸しても良い。この捕集部材上に捕集された時点では少なくとも前記繊維平均径と繊維長とを満足する繊維が形成されている。また、曳糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度にあわせて調整すれば良く、通常は、0〜100℃の範囲である。
【0039】
次に得られた繊維を抄紙する段階について説明する。本発明においては、得られた繊維を水などに分散させて水性スラリーを作成した後、湿紙を作成し、この湿紙を脱水、乾燥する湿式抄紙法を用いることが出来る。このとき、繊維とともにバインダー成分などを同時に分散させることでバインダー成分を均一に塗布することが出来る。
また、その他の繊維や添加剤を同時に分散させ、湿紙を作成することにより各種機能を付与した合成紙を得ることが出来る。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何等限定を受けるものではない。また実施例中における各値は下記の方法で求めた。
(1)繊維の平均径:
得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率20000倍)して得た写真から無作為に20箇所を選んで繊維の径を測定し、すべての繊維径(n=20)の平均値を求めて、繊維の平均径とした。
(2)繊維長5μm以下の繊維の存在確認:
得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率20000倍)して得た写真を観察し、繊維長5μm以下の繊維が存在するかどうか確認した。
【0041】
[実施例1]
十分に乾燥した攪拌装置付の三ツ口フラスコに、脱水精製したNMP200g、メタフェニレンジアミン16.34gを常温下で添加し窒素中で溶解した後、氷冷し攪拌しながらイソフタル酸ジクロリド30.68gを添加した。その後徐々に昇温して最終的に80℃、80分反応させたところで水酸化カルシウム11.20gを添加して中和反応を行い、芳香族ポリアミドのNMP溶液を得た。得られたドープにイオン交換水を入れて沈殿、ろ過して乾燥することにより芳香族ポリアミド粉末を得た。
【0042】
かかる芳香族ポリアミドの濃度0.5g/100mLの濃硫酸溶液を30℃で測定した特有粘度ηinhは1.44dL/gであった。
【0043】
得られた芳香族ポリアミド10重量部を、DMAc9重量部、塩化リチウム0.12重量部と混合し、溶液を作成した。
【0044】
図2にしめす装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極5に1時間吐出したのち、得られた繊維をかき集めた。これを50回繰り返すことにより、0.5gの繊維を得た。噴出ノズル1の内径は0.8mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から繊維状物質捕集電極5までの距離は15cmであった。
【0045】
得られた繊維0.5gとイオン交換水300gをミキサー(株式会社東芝製、MX−L20GA)にて1分間攪拌することで繊維を水に分散させた。この分散液を吸引ろ過により捕集することで、目付0.5g/mの合成紙を作成した。
【0046】
得られた繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)で測定したところ、平均繊維径は80nmであり、繊維長5μm以下の繊維は観察されなかった。得られた合成紙表面の走査型電子顕微鏡写真図を図3、4に示す。
【0047】
[実施例2]
ポリアクリロニトリル(Aldrich)1重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業、特級)9重量部よりなる溶液を作成した。図2にしめす装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極5に30時間吐出したのち、得られた繊維をかき集めた。これを10回繰り返すことにより、0.5gの繊維を得た。噴出ノズル1の内径は0.8mm、電圧は12kV、噴出ノズル1から繊維状物質捕集電極5までの距離は10cmであった。
【0048】
得られた繊維0.5gとイオン交換水200gをミキサー(株式会社東芝製、MX−L20GA)にて1分間攪拌することで繊維を水に分散させた。この分散液を吸引ろ過により捕集することで、目付0.5g/mの合成紙を作成した。
【0049】
得られた繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)で測定したところ、平均繊維径は150nmであり、繊維長5μm以下の繊維は観察されなかった。得られた合成紙表面の走査型電子顕微鏡写真図を図5に示す。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の製造方法によって得られる合成紙は、単独で用いても良いが、取り扱い性やその他の要求事項に合わせて、他の部材と組み合わせて使用しても良い。例えば、不織布や織布、フィルム等と積層したり、樹脂を含浸させたりしてプリプレグを得ることも可能である。
【0051】
また、得られた合成紙に対して熱処理や化学処理を施しても良く、さらに、紡糸以前の任意の段階で、前述の合成高分子に、エマルジョン、有機物もしくは無機物の粉末、フィラー等を混合しても良く、例えば本発明の合成紙に各種触媒を担持させることにより、触媒担持基材として用いることもできる。
【0052】
更に、各種電子基板材料や支持体として用いることが出来る。また、本発明の合成紙は目が細かいことから、各種フィルターに用いることも出来る。
更に合成高分子が生体内分解吸収性であるものを用いた場合には、細胞培養用支持基材や、癒着防止膜、歯科用吸収性組織遮断膜、止血材などにも用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に用いる静電紡糸を行うための装置構成の一態様を模式的に示した図である。
【図2】本発明に用いる静電紡糸を行うための装置構成の一態様を模式的に示した図である。
【図3】実施例1で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(8000倍)して得られた写真図である。
【図4】実施例1で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(20000倍)して得られた写真図である。
【図5】実施例1で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(20000倍)して得られた写真図である。
【符号の説明】
【0054】
1 溶液噴出ノズル
2 溶液
3 溶液保持槽
4 電極
5 繊維状物質捕集電極
6 高電圧発生器
7 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径1μm以下の合成高分子からなる繊維が全構成成分を基準として40重量%以上を占める繊維集合体からなる、合成紙。
【請求項2】
繊維集合体が、繊維長5μm以下の繊維を実質的に含まない、請求項1記載の合成紙。
【請求項3】
合成高分子が、溶液形成可能な合成高分子である、請求項1記載の合成紙。
【請求項4】
合成高分子が、ポリエステル、ポリアミド、および付加重合体より選ばれる少なくとも1種の高分子である、請求項1記載の合成紙。
【請求項5】
ポリアミドが芳香族ポリアミドである、請求項4記載の合成紙。
【請求項6】
付加重合体がポリアクリロニトリルである、請求項4記載の合成紙。
【請求項7】
芳香族ポリアミドの全繰り返し単位を基準として80重量%以上がメタフェニレンイソフタルアミドである、請求項5記載の合成紙。
【請求項8】
合成高分子を溶媒に溶解した溶液を製造する段階と、前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって得られる繊維を開繊する段階と、開繊された繊維を抄紙する段階とを含む、繊維径1μm以下の合成高分子からなる繊維が全構成成分を基準として40重量%以上を占める繊維集合体からなる合成紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−37276(P2006−37276A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218464(P2004−218464)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】