説明

合流管

【課題】被回収物の吸引速度の低下を最低限に抑えることのできる合流管を提供する。
【解決手段】下流側吸引ホースに接続される接続口11aと、上流側吸引ホースに接続される複数の合流枝管12と、合流枝管12を経て吸引された被回収物が合流する合流管本体11bと、複数の合流枝管12の一部が内挿される導入部とからなり、真空回収装置に接続される吸引ホースに取り付けられる合流管11に、前記複数の合流枝管12を、前記導入部内に長手方向に対して平行に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のブロック塗装等の前に行われるブラスト処理の後、飛散した多量の研掃材の回収等に使用される吸引ホースの途中に取り付ける合流管に関する。
【背景技術】
【0002】
海水にさらされる船は過酷な腐食環境にさらされる。そのため防食のための塗装が不可欠であり、塗装前には鋼板に付着しているさび等を落とすブラスト処理が行われてきた。ブラスト処理は、被研掃面にスチールグリット等の鋼粒を圧縮空気で吹き付け、表面の錆、汚れ等を除去し、塗装下地としての表面あらさを最適にするものである。しかしながら、世界的にみると腐食に対する定量的知見が不十分で確立された防食策がなく、波浪により繰り返し応力を受ける溶接部などにブラスト処理が施されていない場合などは、そこから疲労き裂が発生し、最終的に貫通・破断に至り、悲惨な大事故を招くこともあった。
【0003】
そこで国際海事機関(IMO)は、船舶の安全性を確保するために新塗装基準(PSPC)を採択し、500総トン以上の全ての船種のバラストタンクと150m以上のバルクキャリアの二重船側区画は、従来より厳しい基準に則り塗装することが求められることとなり、溶接部を含めた新しい基準を満たすブラスト処理が必須となった。
【0004】
図6は、大型船舶の断面図である。造船の工程は、部分的な船体のかたまりであるブロック1を予め製作し、各ブロック1をつないで組み立てていくのであるが、ブラスト処理は各ブロック1ごとに必要となる。また、各ブロック1の溶接部をブラスト処理するため、二重船側区画2内に入り込んでのブラスト処理も必要となる。
【0005】
ブラスト処理がされた後は、ブロック1には大量のグリットGが飛散しており、これを回収する必要がある。また、二重船側区画は、船が海上で壊れないようリブ3などの強度材で複雑な形状をしており、飛散したグリットGの回収作業はかなりの重労働となる。
【0006】
そこで、図7に示すような造船所内のブラスト工場やドックなどに設置されている真空回収装置4に接続されているプレダスター5に非常に長い吸引ホース6を接続して、そのホース6を二重船側部内2に持ち込んで研掃材を回収する。足場の悪い場所で掃除機などの真空回収機を持ち運ぶ労力を省くことができる。
【0007】
また、作業の効率化を図るため、真空回収装置4に接続された吸引ホース6は、図7に示すように、途中、合流管7を介して複数の小径の吸引ホース8に分岐されて、複数の作業員で回収作業が行われることが多い。
【0008】
この合流管7は、図8(a)(b)に示すように小径の吸引ホース8に接続される合流本管9の接続口9aと、左右両側に分岐角度45度に配置された合流枝管10とその接続口10aが一列に並ぶように配置されている。合流管7下流の吸引ホース6との接続口7aの内径は、合流本管9と合流枝管10の内径の断面積の合計よりも若干大きな断面積となるように維持されており、合流管本体7bの内径と同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】調査の結果、記載すべき先行技術文献を見つけることができなかったため、先行技術文献情報を記載しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、世界的な造船受注競争が激化する情勢を受け、船の制作工数を削減するため、ブロック1が大型化される傾向にある。この大型化によって、作業範囲が広がるため、従来の吸引ホース6あるいは8の長さがさらに延長されて使われるようになっており、ホース延長によるエネルギー損失は大きくなる。
【0011】
さらに、各吸引ホース8で吸引されたグリットGは、合流本管9、合流枝管10を経て、合流管本体7b内で衝突し、その速度を落としてしまう。その結果、ホース延長によるエネルギー損失により、速度の落ちたグリットGは再加速することができず、接続口7aと接続する合流管7下流側の吸引ホース6内で滞留してしまい、グリット回収の効率が下がったり、ホース内が閉塞したりなどの不具合が生じることとなった。
【0012】
そこで、従来の真空回収装置の能力はそのままで、吸引ホースが延長されても、グリットGが滞留しないよう、吸引速度の低下を最小限に抑える合流管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
下流側吸引ホースに接続される接続口と、上流側吸引ホースに接続される複数の合流枝管と、合流枝管を経て吸引された被回収物が合流する合流管本体と、複数の合流枝管の一部が内挿される導入部とからなり、真空回収装置に接続される吸引ホースに取り付けられる合流管に、前記複数の合流枝管を、前記導入部内に長手方向に対して平行あるいは最大15度まで偏心して挿入する。
【0014】
さらに、前記導入部内に挿入された前記合流枝管の一部は、合流管の中心側に切り欠きを有している。
【発明の効果】
【0015】
合流管の導入部に合流枝管の一部を、長手方向にほぼ平行に挿入することによって、各合流枝管から流れこんでくる被回収物が衝突しあうのを最小限に抑え、流速が落ちるのを防ぐことができる。さらに、導入部の合流枝管の中心側にのみ切り欠きを設けることによって、気流が中心に向かうようになるため、複数の合流枝管から合流管本体内に流れこんでくる被回収物が、合流管本体内壁にぶつかるのを防ぐことができ、速度の低下が抑えられ、従来の真空回収装置の能力を維持しつつ、回収効率を維持あるいは向上させることができる。また、合流管本体の摩耗も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)本発明にかかる合流管の正面図である。(b)本発明にかかる合流管の右側面図である。(c)(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明にかかる合流管の合流枝管の斜視図である。
【図3】合流管の第2実施形態にかかる合流管の斜視図である。
【図4】合流管の第3実施形態にかかる合流管の斜視図である。
【図5】合流管の第4実施形態にかかる合流管の斜視図である。
【図6】船の断面図である。
【図7】研掃材回収のフロー図である。
【図8】(a)従来における合流管の右側面図である。(b)従来における合流管の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる合流管について説明する。図1は本発明の実施形態にかかる合流管を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のA−A断面図である。図2は本発明の実施形態にかかる合流管の合流枝管の全体を示す斜視図である。図7はグリット等研掃材回収のフローを示す図であり、合流管以外は、すべて同じ符号を用いて説明することとする。
【0018】
本発明の実施形態にかかる合流管11は、プレダスター5に接続される下流側吸引ホース6に接続される接続口11aと、合流枝管12を経て吸引された研掃材が合流する合流管本体11bと3本の合流枝管12の一部が内挿される導入部11cとからなる。合流枝管12は導入部11cの上流側を覆う板11dに溶接されて固定されている。合流管11下流の吸引ホース6との接続口11aの内径の断面積は、3本の合流枝管12の内径の断面積の合計よりも若干大きくなるように維持されている。
【0019】
合流管11の導入部11cには、合流枝管12の一部が、合流管長手方向にに平行に挿入されている。図1(b)に示すように、紙面右側(上流側)から合流管11を見ると、3本の合流枝管12の断面積の各中心が正三角形の各頂点になるように配置されている。3本の合流枝管12は、その接続口12aに吸引ホース8が図示しないバンドによって接続固定されるため、そのホース脱着に必要な最低限の間隔を開けて配置されており、導入部11cの内径は下流側接続口11aの内径よりも若干大きくなっている。そのため、導入部11cと接続口11aをつなぐ合流管本体11bは上流から下流にかけて径が漸次小さくなる円錐形状となっている。
【0020】
3本の合流枝管12は、導入部11c内部に挿入された部分に切り欠き12bを有している。この切り欠き12bは、図1(c)に示すように、合流管11の中心側にのみ設けられており、合流枝管12の長手方向に平行かつ合流管11の上流側を覆う板11dに平行に切断されている。導入部11c内に挿入された合流枝管12の外周部分12cは、30〜50m/sで合流管11内に流れこんでくるグリットGが外側に広がるのを防ぎ、切り欠き12bが設けられている中心側にグリットGを積極的に案内するガイドの役割を果たす。
【0021】
上流側の導入部11cから流れこんでくるグリットGは、合流枝管の外周部分12cや切り欠き12bによって、合流管本体11bの中心部に誘導されるものの、下流に向かって漸次径が小さくなっている円錐形状をした合流管本体11bの内壁にぶつかって、合流管本体11bは摩耗しやすい。そのため合流管本体11bは高張力鋼板などの耐摩耗鋼の素材を用いることが望ましい。
【0022】
合流管11には持ち手13を設けて、自由に持ち運べるようにしてもよい。グリットの回収が終了した際には、吸引ホース6、8を各接続口から外し、合流管11単独で持ち運ぶことができ、簡単に片付けることができる。
【0023】
図3は、合流枝管12が2本の場合の実施例、図4は、合流枝管12が4本の場合の実施例で、その他は図1に示す第1実施例と同じである。
【0024】
図5は、合流枝管12が3本の場合の実施例であるが、合流枝管12が接続口11aと平行でなく、上流側から下流側に向かって中心部に偏心して設けられているものである。図5に示す偏心角度は7.5度であるが、それ以下でもよく、最大15度程度まで偏心させても構わない。また、合流枝管12は2本あるいは4本でもよい。
【0025】
合流枝管12の切り欠き12bは、図2に示す場合のほかに、導入部11c内の上流側から下流側にかけて斜めに切り欠いても構わない。
【0026】
本実施例では、船舶の塗装前の下地処理に使用されるグリットGを被回収物として説明したが、被回収物はグリットに限らず、砂、ショット、セラミック、ガーネット、銅カラミ等でもよく、またこれらに限定することなく適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 ブロック
2 二重船側区画
3 リブ
4 真空回収装置
5 プレダスター
6 吸引ホース
7 合流管
7a 接続口
7b 合流管本体
8 吸引ホース
9 合流本管
9a 接続口
10 合流枝管
10a 接続口
11 合流管
11a 接続口
11b 合流管本体
11c 導入部
11d 合流管下流部を覆う板
12 合流枝管
12a 接続部
12b 切り欠き
12c 外周部
13 持ち手
G グリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空回収装置に接続される吸引ホースに取り付けられる合流管は、
下流側吸引ホースに接続される接続口と、上流側吸引ホースに接続される複数の合流枝管と、合流枝管を経て吸引された被回収物が合流する合流管本体と、複数の合流枝管のそれぞれの一部が内挿される導入部とからなり、
前記複数の合流枝管は、前記導入部内に長手方向に対して平行に挿入されていることを特徴とする。
【請求項2】
真空回収装置に接続される吸引ホースに取り付けられる合流管は、
下流側吸引ホースに接続される接続口と、上流側吸引ホースに接続される複数の合流枝管と、合流枝管を経て吸引された被回収物が合流する合流管本体と、複数の合流枝管のそれぞれの一部が内挿される導入部とからなり、
前記複数の合流枝管は、前記導入部内に長手方向に対して最大15度まで偏心して挿入されていることを特徴とする。
【請求項3】
前記導入部内に挿入された前記合流枝管の一部は、合流管の中心側に切り欠きを有していることを特徴とする請求項1または2記載の合流管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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