説明

吊り上げ装置およびこれを用いた工法

【課題】不定形な玉石を確実に吊り上げて効率よく搬送できる吊り上げ装置および、短い工期で完了できる工法を提供する。
【解決手段】回動可能に連結した一対の支持片11a,11bの先端側の挟持片部14a,14bを断面略凹状とし、互いに対向させて取り付ける。挟持片部14a,14bの間に玉石を嵌合させ、挟持片部14a,14bの両側に位置する各爪部142a,142bにて挟持して吊り上げると、少なくとも3か所以上の爪部142a,14bの先端部で玉石を支持して吊り上げることができる。不定形な玉石であっても、確実に支持して挟持しながら搬送でき、効率よく確実に搬送できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉石等の不定形な被搬送物を挟持して吊り上げて搬送する吊り上げ装置およびこの吊り上げ装置を用いた工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吊り上げ装置としては、例えば下記特許文献1に記載の玉石つかみ吊り上げ機が知られている。この玉石つかみ吊り上げ機は、計3本の爪が周方向に均等に取り付けられ、これら爪は、基端部が連結され上下方向に回動可能に取り付けられている。さらに、これら爪は、連結板および連結板止めを介して心棒に連結されており、この心棒を上下動させることによって、これら各爪が連動して開閉動作するように構成されている。
【0003】
一方、この玉石つかみ吊り上げ機にて吊り上げられる玉石としては、河川の護岸や河床等に積み重ねられたり敷き詰められたりするものであって、大きさや質量についてはある程度選択されているものの、形状については不定形なものが用いられているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−19347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、上記特許文献1にかかる従来技術の玉石つかみ吊り上げ機によれば、中心の心棒の上下移動によって各爪の開閉距離が調整されるものであるため、これら計3本の爪で不定形な玉石の三箇所を均等な力でつかむことは稀であり、これら3本の爪で均等に玉石をつかむことが容易ではないから、不定形な玉石を効率よく搬送することは容易ではないという問題を有している。
【0006】
そこで本発明は、従来技術における上記問題を解決し、玉石等の不定形な被搬送物を効率よく搬送できる吊り上げ装置および、この吊り上げ装置を用いることにより、より短い期間で完了することが可能な工法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、玉石等の不定形な被搬送物を挟持して吊り上げる吊り上げ装置であって、中心部で回動可能に連結された一対の支持片を具備し、これら各支持片は、前記中心部より先端側に、断面略凹状の挟持部がそれぞれ設けられ、これら各挟持部の断面略凹状の両側に位置する各爪部を、互いに対向させて設けられていることを特徴とする吊り上げ装置である。
【0008】
請求項2は、請求項1の吊り上げ装置において、一対の支持片の各挟持部には、対向する側に屈曲した屈曲部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1または2の吊り上げ装置において、一方の支持片と、他方の支持片との間には、これら一対の支持片の回動を仮固定させる仮固定機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1ないし3いずれかの吊り上げ装置を用いた工法であって、前記吊り上げ装置の各支持片の中心部より基端側の操作部を、紐状体を介してクレーンのフックに取り付ける取り付け工程と、このクレーンを操作して、前記吊り上げ装置の一対の支持片の挟持部にて被搬送物を挟持できる位置へ、前記吊り上げ装置を移動させる移動工程と、この吊り上げ装置の各挟持部の爪部によって、前記被搬送物が少なくとも3か所以上の位置で支持されて挟まれるように、前記吊り上げ装置の各挟持部間に被搬送物を位置させる位置決め工程と、前記クレーンを操作して、前記吊り上げ装置の一対の支持片間で被搬送物を挟持して吊り上げて、この被搬送物を目的箇所へ搬送する搬送工程と、前記クレーンを操作して、前記吊り上げ装置による被搬送物の挟持を解除させ、この被搬送物を前記目的箇所へ降ろす設置工程とを具備していることを特徴とする吊り上げ装置を用いた工法である。
【0011】
請求項5は、請求項4の吊り上げ装置を用いた工法において、請求項3の吊り上げ装置を用いた工法であって、位置決め工程は、前記吊り上げ装置の仮固定機構を解除して、この吊り上げ装置の一対の支持片を回動可能にさせてから、これら一対の支持片の各挟持部間に被搬送物を位置させ、設置工程は、前記吊り上げ装置の一対の支持片による被搬送物の挟持を解除させた状態で、これら一対の支持片の回動を前記仮固定機構にて仮固定させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一対の支持片の中心部より先端側の断面略凹状の挟持部間に被搬送物を位置させた状態で、これら一対の支持片を中心部にて回動させて各挟持部を近接させていくことにより、これら一対の支持片それぞれの爪部によって、被搬送物が少なくとも3か所以上の位置で支持されて挟持される。この結果、玉石等の不定形な被搬送物であっても、一対の支持片の各爪部によって被搬送物を確実に支持しつつ挟持して搬送できるため、これら被搬送物の搬送を効率よくできる。
【0013】
また、一対の支持片の各挟持部に、互いに対向する側に屈曲した屈曲部を設けることにより、これら屈曲部の両側に位置する各挟持部の爪部によって、被搬送物を支持することが可能なる。このため、被搬送物を最大で計8か所の位置で支持して吊り上げることが可能となるから、これら被搬送物をより確実に支持して吊り上げることでき、これら被搬送物の搬送をより効率良く確実にできる。
【0014】
さらに、一方の支持片と他方の支持片との間に仮固定機構を設け、これら一対の支持片の回動を仮固定できる構成とした。この結果、これら一対の支持片にて被搬送物を挟持して搬送する工程以外の工程で、一対の支持片の回動を仮固定機構にて仮固定させることにより、これら一対の支持片の不要な回動を防止できるから、これら一対の支持片が不本意に回動することによる作業の煩雑さを無くすことができ、被搬送物の搬送作業をより効率良くできる。
【0015】
そして、紐状体を介して吊り上げ装置の各支持片の操作部をクレーンのフックに取り付けてから、クレーンを操作して、吊り上げ装置の一対の支持片の挟持部にて被搬送物を挟持できる位置へ移動させる。この後、この吊り上げ装置の各挟持部の爪部によって被搬送物が少なくとも3か所以上の位置で支持されて挟まれるように、吊り上げ装置の各挟持部間に被搬送物を位置させた後、クレーンを操作して吊り上げ装置の一対の支持片間で被搬送物を挟持して吊り上げて、被搬送物を目的箇所へ搬送する。さらに、クレーンを操作して、吊り上げ装置による被搬送物の挟持を解除させ、被搬送物を目的箇所へ降ろす。この結果、吊り上げ装置の一対の支持片の爪部によって、被搬送物が少なくとも3か所以上の位置で支持されつつ挟持されて吊り上げられて搬送できる。よって、玉石等の不定形な被搬送物であっても、一対の支持片の各爪部によって、被搬送物を確実に支持して挟持しながら搬送できるため、これら被搬送物の搬送を効率よくできるから、被搬送物の設置作業をより短い期間で完了することが可能となる。
【0016】
ここで、これら一対の支持片の各挟持部間に被搬送物を位置させてから仮固定機構を解除して、これら一対の支持片の挟持部間に被搬送物を挟持させることにより、これら一対の支持片の各挟持部の間に被搬送物を位置させる作業を容易にできる。また、一対の支持片による被搬送物の挟持を解除させた状態で仮固定機構にて一対の支持片の回動を仮固定させることにより、これら一対の支持片にて被搬送物を挟持して搬送する工程以外の工程で、一対の支持片の回動が仮固定機構にて仮固定される。よって、吊り上げ装置の一対の支持片の不要な回動を防止できるから、これら一対の支持片が不本意に回動することによる作業の煩雑さを無くすことができるため、被搬送物の搬送作業をより効率良くできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の吊り上げ装置を示す斜視図である。
【図2】上記吊り上げ装置を示す概略右側面図である。
【図3】上記吊り上げ装置の閉塞状態を示す正面図である。
【図4】上記吊り上げ装置の開放状態を示す正面図である。
【図5】上記吊り上げ装置にて被搬送物を吊り上げた状態を示す概略説明図である。
【図6】上記吊り上げ装置を用いた工法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施の形態に係る吊り上げ装置について図1ないし図6を参照して説明する。
【0019】
<全体構成>
本発明に係る吊り上げ装置1は、玉石等の略球状であって不定形な被搬送物Aを挟持して吊り上げて搬送するための玉石キャッチャであって、主として河川の床固用に用いられる比較的大きな玉石を川岸から河床へ搬送するために用いられる。この吊り上げ装置1は、クレーン2に吊り下げられて取り付けられた状態で用いられる。ここで、クレーン2は、図6に示すように、クレーン本体21の上面に進退可能かつ揺動可能にブーム22が取り付けられており、このブーム22の先端部からワイヤ23が進退可能に垂れ下がっており、このワイヤ23の先端部にフック24が取り付けられている。
【0020】
そして、吊り上げ装置1は、この吊り上げ装置1の基端側が、連結具3を介してクレーン2のフック24に取り付けられて吊り下げられている。ここで、連結具3は、クレーン2のフック24に係合される係合クランプ31と、基端側が係合クランプ31に固定された一対の紐状体である係止ワイヤ32a,32bと、これら係止ワイヤ32a,32bの各先端側に取り付けられた連結クランプ33a,33bとで構成されている。
【0021】
<吊り上げ装置>
具体的に、吊り上げ装置1は、一対の支持片11a,11bを備えている。これら各支持片11a,11bの中間部には、これら支持片11a,11bの回転中心となる円形平板状の中心部としての回転部12a,12bが設けられている。そして、これら回転部12a,12bの基端側には、操作部となる細長平板状の操作片部13a,13bが一体的かつ面一に設けられている。さらに、これら操作片部13a,13bの基端側、すなわち支持片11a,11bの先端側には、厚さ方向に貫通した貫通孔131a,131bが穿設されており、これら貫通孔131a,131bには、連結具3の連結クランプ33a,33bが取り付けられて固定されている。
【0022】
さらに、これら各支持片11a,11bの回転部12a,12bの先端側には、長手方向が内側に向けて多段的に屈曲した正面視略Cの字状の挟持部としての挟持片部14a,14bが取り付けられている。これら挟持片部14a,14bは、断面略凹状、すなわち箱状に形成されている。そして、これら各挟持片部14a,14bは、細長平板状の本体部141a,141bを備えており、これら本体部141a,141bの幅方向の両側に、細長平板状の爪部142a,142bの一側縁が連結されて略垂直に突設されて、断面略凹状に形成されている。さらに、これら挟持片部14a,14bの各爪部142a,142bの長手方向の先端部には、先細状の爪状部143a,143bが形成されている。
【0023】
そして、これら挟持片部14a,14bの各本体部141a,141bには、各支持片11a,11bの回転部12a,12bから先端側に向けて一体的に突出した連結片部15a,15bが接合されている。具体的に、これら連結片部15a,15bは、各挟持片部14a,14bの基端側に挟み込まれて嵌合されて取り付けられており、各回転部12a,12bの厚さ方向に各挟持片部14a,14bの本体部141a,141bの幅方向を沿わせた状態とされて、これら本体部141a,141bの幅方向の中心位置に固定されている。
【0024】
また、これら支持片11a,11bの回転部12a,12bの中心位置には、厚さ方向に貫通したボルト挿通孔(図示せず)が穿設されており、これらボルト挿通孔に連結手段としてのボルト122が挿通されてナット(図示せず)にて固定され回動可能とされている。このとき、これら支持片11a,11bは、一方の支持片11aの挟持片部14aの爪部142aを、他方の支持片11bの挟持片部14bの爪部142bに対向させて互いに向かい合わせた状態とされて回動可能、すなわち開閉可能とされている。
【0025】
さらに、これら各支持片11a,11bの挟持片部14a,14bの各爪部142a,142bは、長手方向の中間位置において、先端側が内側に屈曲されて第1屈曲部144a,144bが形成されている。これら第1屈曲部144a,144bは、図3に示すように、各挟持片部14a,14bの爪状部143a,143bが互いに対向する側に向けて、例えば約25°の屈曲角度ψ1で屈曲されて形成されている。また、これら第1屈曲部144a,144bより先端側の中間位置にもまた、先端側が内側に屈曲されて第2屈曲部145a,145bが形成されている。これら第2屈曲部145a,145bは、各挟持片部14a,14bの爪状部143a,143bが互いに対向する側に向けて、例えば約45°の屈曲角度ψ2で屈曲されて形成されている。さらに、これら第2屈曲部145a,145bより先端側の中間位置にもまた、先端側が内側に屈曲されて第3屈曲部146a,146bが形成されている。これら第3屈曲部146a,146bは、各挟持片部14a,14bの爪状部143a,143bが互いに対向する側に向けて、例えば約15°の屈曲角度ψ3で屈曲されて形成されている。また、各挟持片部14a,14bの爪部142a,142bの第3の屈曲部146a,146bより先端側の部分は、尖鋭状に形成されて爪状部143a,143bとされている。
【0026】
ここで、これら第1ないし第3屈曲部144a〜146a,144b〜146bは、好ましくは、第1および第3屈曲部144a,144b,146a,146bの屈曲角度ψ1,ψ3が、第2屈曲部145a,145bの屈曲角度ψ2より小さく形成されている。さらに、これら第1屈曲部144a,144bと第2屈曲部145a,145bとの間の第1支持部147a,147bと、これら第2屈曲部145a,145bと第3屈曲部146a,146bとの間の第2支持部148a,148bと、これら第3屈曲部146a,146bより先端側の第3支持部149a,149bとは、好ましくは、ほぼ等しい長さ差で、例えば137mm、100mm、95mmと、徐々に内側辺の長手方法が小さくなるように構成されている。
【0027】
さらに、各支持片11a,11bの挟持片部14a,14bの第1屈曲部144a,144bには、これら挟持片部14a,14bを開閉動作させるための略コ字状の取っ手16a,16bがそれぞれ取り付けられている。これら各取っ手16a,16bは、挟持片部14a,14bの本体部141a,141bの幅方向の両側縁に、略コ字状の各端部が溶接等されて固定されて取り付けられており、ほぼ第1支持部147a,147bでの本体部141a,141bの厚さ方向に向けて突出するように取り付けられている。
【0028】
また、一方の支持片11aの挟持片部14aの基端側に位置する連結片部15aと、他方の支持片11bの操作片部13bとの間には、吊り上げ装置1の開閉動作可能な状態を仮固定させるための仮固定機構17が設けられている。この仮固定機構17は、一方の支持片11aの連結片部15aの先端縁に設けられた凸状の係止凸部171を備えている。そして、この係止凸部171は、連結片部15aの外側縁に沿って一体的に設けられている。また、この係止凸部171の基端側には、略凹状の係止凹部172が形成されている。一方、他方の支持片11bの操作片部13bの長手方向の中間位置より若干回転部12b寄りの位置には、仮固定手段となる開き固定用のチェーン173の一端が固定されて取り付けられている。このチェーン173は、図4に示すように、吊り上げ装置1を開放動作した状態で、このチェーン173の先端部を一方の支持片11aの係止凸部171に係止させることによって、この吊り上げ装置1の開閉動作可能な状態を固定させる。そして、このチェーン173による係止凸部171への係止を解除させることによって、これらチェーン173と係止凸部171とによる吊り上げ装置1の開閉動作可能な状態の固定が解除される。
【0029】
さらに、吊り上げ装置1の一方の支持片11aには、この吊り上げ装置1の開放動作時及び閉塞動作時における作業者等の指等の挟み込みを防止するための挟み込み防止機構18が設けられている。この挟み込み防止機構18は、吊り上げ装置1の開放動作時の挟み込みを防止するための第1ストッパ181を備えている。この第1ストッパ181は、一方の支持片11aの回転部12aの外周縁に突設されている。そして、この第1ストッパ181は、回転部12aの径方向に突出しており、図4に示すように、吊り上げ装置1の開放時、例えば支持片11a,11bを120°の開放角度θに開放させた状態で、他方の支持片11bの挟持片部14bの本体部141aの外側面に当接し、これら支持片11a,11bの操作片部13a,13bと連結片部15b,15aとの間に一定の隙間が形成されるようにし、これら操作片部13a,13bと連結片部15b,15aとの間での指等の挟み込みを防止する。
【0030】
また、一方の支持片11aの連結片部15aの内側縁には、吊り上げ装置1の閉塞動作時の挟み込みを防止するための第2ストッパ182が設けられている。この第2ストッパ182は、一方の支持片11aの挟持片部14aに嵌合されて取り付けられた連結片部15aの内側、すなわち挟持片部14aの両爪部142a間に位置する側に取り付けられている。また、この第2ストッパ182は、操作片部13a側に向けて傾斜されて取り付けられている。一方、他方の支持片11bの連結片部15bの内側には、吊り上げ装置1の閉塞動作時に第2ストッパ182を当接させ、この閉塞動作時における操作片部13a,13b間の隙間、および挟持片部14a,14b間の隙間での挟み込みを防止するための当接面部183が取り付けられている。この当接面部183は、他方の支持片11bの連結片部15bの回転部12b寄りの基端側の内側縁に垂直に取り付けられている。すなわち、これら第2ストッパ182および当接面部183は、図3に示すように、吊り上げ装置1を閉塞動作させた場合、例えば支持片11a,11bを60°の開放角度θに閉塞させた場合に、この吊り上げ装置1の一対の挟持片部14a,14bの基端部において一定の隙間が確保されるようにし、これら挟持片部14a,14b間における指等の挟み込みを防止するとともに、この吊り上げ装置1の一対の操作片部13a,13bの基端部における挟み込みを防止させる。
【0031】
ここで、吊り上げ装置1の仮固定機構17のチェーン173は、図4に示すように、この吊り上げ装置1を開放動作させて第1ストッパ181を他方の支持片11bの挟持片部14bに当接させて最大限に開放させた状態で、このチェーン173の先端部を係止凸部171に係止でき、この開放状態を維持できる程度の長さに形成されている。
【0032】
<概略>
次に、上記吊り上げ装置1を用いた工法として、河川の床固用に用いられる比較的大きな被搬送物である玉石Aを川岸から河床へ搬送する工法について説明する。
【0033】
ここで、この玉石Aは、例えば50cm程度の径寸法を有する略球状の石材であって、作業者の力では持ち上げることが容易でなく移動させにくい質量、例えば100kg程度の質量を有している。
【0034】
そして、これら玉石Aは、図6に示すように、クレーン2が設置された川岸の搬入箇所Cから、これら玉石Aを規則的に配置して積み重ねたり敷き詰めたり等する河床等の設置箇所Dへクレーン2および吊り上げ装置1を用いて搬送される。
【0035】
<取り付け工程>
まず、これから床固を行う河床周辺の川岸にクレーン2を設置し、この川岸の平坦な部分を玉石Aの搬入箇所Cとし、この搬入箇所Cへ複数の玉石Aを搬入する。
【0036】
この後、各支持片11a,11bの貫通孔131a,131bに結合クランプ33a,33bがそれぞれ係合されて連結具3が取り付けられた吊り上げ装置1を、クレーン2の周囲へ運び、この吊り上げ装置1に取り付けられた連結具3の係止クランプ31をクレーン2のフック24に係合させて取り付けて、この吊り上げ装置1がクレーン2にて吊り上げおよび移動可能な状態とする。
【0037】
さらに、この吊り上げ装置1の一対の支持片11a,11bを開放動作させつつ、この吊り上げ装置1の仮固定機構17のチェーン173を係止凸部171に係合させて、この吊り上げ装置1の開放状態を仮固定させる。
【0038】
<移動工程>
この後、クレーン2のブーム22やワイヤ23を適宜操作して、このクレーン2のフック24に取り付けられている吊り上げ装置1を搬入箇所Cへ移動させる。このとき、この搬入箇所Cに搬入された複数の玉石Aのうち、次に搬送する玉石Aの真上に吊り上げ装置1が位置し、この吊り上げ装置1の一対の挟持片部14a,14bにて挟持して吊り上げることができる位置へ、吊り上げ装置1を移動させる。
【0039】
<位置決め工程>
次いで、この搬入箇所Cで作業する作業者が、吊り上げ装置1の取っ手16a,16bを把持し、この吊り上げ装置1の挟持片部14a,14b間に、次に搬送する玉石Aが位置し、この吊り上げ装置1の各挟持片部14a,14bの爪部142a,142bによって、この玉石Aが少なくとも3か所以上の接触点Bで支持されて挟持された状態となるように、この吊り上げ装置1を適宜周方向に回転させてから嵌合させて位置決めさせる。このとき、この吊り上げ装置1は、クレーン2の操作によって適宜移動される。
【0040】
この状態で、この吊り上げ装置1の仮固定機構17のチェーン173による係止凸部171への係合を解除させ、この吊り上げ装置1の一対の支持片11a,11bを回動可能な状態とし、作業者の手作業によって吊り上げ装置1を閉塞動作させ、この吊り上げ装置1の一対の挟持片部14a,14b間に玉石Aが挟持され、少なくとも3か所以上の位置の接触点Bで支持されて吊り上げ可能な状態とする。
【0041】
<搬送工程>
この後、クレーン2を適宜操作し、吊り上げ装置1を上方に数メートルほど移動させ、この吊り上げ装置1にて玉石Aが挟持されて吊り上げられた状態とする。この状態で、この吊り上げ装置1の各支持片11a,11bの爪部142a,142bによって、少なくとも3か所以上、好ましくは8か所の位置で支持されているかを確認する。
【0042】
このとき、この吊り上げ装置1によって玉石Aが少なくとも3か所以上の位置で支持されていない場合には、不安定な状態と判断し、クレーン1を適宜操作して、吊り上げ装置1を下方に移動させ、上記位置決め工程をやり直す。
【0043】
一方、この吊り上げ装置1によって玉石Aが少なくとも3か所以上の位置で支持されて吊り上げられている場合には、必要に応じ、玉石Aに付着しているごみや汚泥等の付着物を水等で洗い落とす。
【0044】
この状態で、クレーン2を適宜操作して、吊り上げ装置1の一対の挟持片部14a,14bにて玉石Aを挟持して吊り上げつつ、この玉石Aを、目的箇所である河床等の設置箇所Dへ搬送する。
【0045】
<設置工程>
吊り上げ装置1にて吊り上げられて設置箇所D周辺へ玉石Aを搬送させた後、この設置箇所Dで作業する作業者によって吊り上げ装置1を適宜周方向に回転させて、この玉石Aの設置位置を決めてから、クレーン2を適宜操作して設置箇所Dへ玉石Aを降ろす。
【0046】
この状態で、作業者が吊り上げ装置1の取っ手16a,16bを把持し、この吊り上げ装置1による玉石Aの挟持を解除させ、この玉石Aを設置箇所Dへ降ろした後、この吊り上げ装置1を開放動作させるとともに、この吊り上げ装置1の仮固定機構17のチェーン173を係止凸部171に係合させて、この吊り上げ装置1の開放状態を仮固定させる。
【0047】
<連続工程>
この後、次に搬送する玉石Aが存在する場合には、上述した取り付け工程から設置工程までの各工程を繰り返していき、河床等の設置箇所Dに玉石Aを規則的に配置して積み重ねたり敷き詰めたりしていく。
【0048】
<作用効果>
前述のように、本発明に係る吊り上げ装置1によれば、一対の支持片11a,11bを回動可能に連結させ、これら支持片11a,11bの先端側の挟持片部14a,14bを断面略凹状とし、これら挟持片部14a,14bを互いに対向させて取り付けた構成とした。この結果、これら挟持片部14a,14bの間に、玉石等の不定形な被搬送物Aを嵌合させ、これら挟持片部14a,14bの両側に位置する各爪部142a,142bにて挟持させて吊り上げた場合に、図5に示すように、これら挟持片部14a,14bの少なくとも3つ以上の爪部142a,142bの先端部が被搬送物Aに接触した状態となり、この被搬送物Aを少なくとも3か所以上の位置、すなわち3角形以上の多角形的に支持した状態で吊り上げることができる。よって、被搬送物Aの3か所以上の位置で支持して吊り上げて吊り上げ装置1にて搬送できるため、玉石等の不定形な被搬送物Aであっても、吊り上げ装置1の一対の支持片11a,11bの各爪部142a,142bによって、被搬送物Aを確実に支持して挟持しながら搬送でき、これら被搬送物Aを効率よく確実に搬送することができる。
【0049】
ここで、この吊り上げ装置1の各支持片11a,11bの挟持片部14a,14bの爪部142a,142bを、第1ないし第3屈曲部144a〜146a,144b〜146bにて多段的に内側に屈曲させた形状とした。このため、これら挟持片部14a,14bの爪部142a,142b間に被搬送物Aを挟み込んだ場合に、最大で、一方の挟持片部14aの各第1支持部147aおよび各第3支持部149aの計4か所と、他方の挟持片部14bの各第1支持部147bおよび各第3支持部149bの計4か所との、合計8か所の位置で被搬送物Aを挟み込んで支持して挟持して吊り上げることができる。特に、これら第1ないし第3の支持部147a〜149a,147b〜149bによる被搬送物Aの接触点Bとしては、この被搬送物Aの形状に応じ、最大で、12か所が可能となる。よって、この吊り上げ装置1を用いることにより、玉石等の不定形な被搬送物Aであっても、より確実に安定させて吊り上げて搬送できるから、被搬送物Aの搬送をより効率良くかつ確実にでき、被搬送物Aを搬送して設置する工程、すなわち工期をより短期間に完了させることが可能となる。
【0050】
また、一方の支持片11aの挟持片部14aと、他方の支持片11bの操作片部13bとの間に仮固定機構17を設け、この仮固定機構17の他方の操作片部13bに取り付けられたチェーン173を、一方の支持片11aの連結片部15aに設けられた凸状の係止凸部171に係合させることにより、吊り上げ上げ装置1を開放動作させた状態を仮固定できる構成とした。この結果、吊り上げ装置1の一対の支持片11a,11bの各挟持片部14a,14b間に被搬送物Aを位置させて位置決めしてから、仮固定機構17を解除させ、これら一対の支持片11a,11bの挟持片部14a,14b間に被搬送物Aを挟持させることにより、これら挟持片部14a,14b間に被搬送物Aを位置させて位置決めする作業を容易にできる。
【0051】
また同時に、吊り上げ装置1による被搬送物Aの搬送が完了し、一対の支持片11a,11bによる被搬送物Aの挟持を解除させた状態で、仮固定機構17にて一対の支持片11a,11bの回動を仮固定させることにより、これら一対の支持片11a,11bの挟持片部14a,14b間に被搬送物Aを挟持させて吊り上げて搬送する工程以外の工程における、これら一対の支持片11a,11bの開閉動作を仮固定することができる。よって、これら一対の支持片11a,11bの不要な開閉動作を防止できるから、これら一対の支持片11a,11bが不本意に回動することによる作業時の煩雑さを無くすことができるため、被搬送物Aの搬送作業をより効率良く確実にできる。
【0052】
さらに、吊り上げ装置1の一方の支持片11aの回転部12aに挟み込み防止機構18となる第1ストッパ181を設けたことにより、この吊り上げ装置1を開放動作させて、図4に示すように、例えば支持片11a,11bを120°の開放角度θに開放させた場合に、他方の支持片11bの挟持片部14bの本体部141aの外側面に第1ストッパ181が当接する。この結果、これら支持片11a,11bの操作片部13a,13bと連結片部15b,15aとの間に一定の隙間が形成されるため、これら操作片部13a,13bと連結片部15b,15aとの間での作業者の指等の挟み込みを確実に防止できる。
【0053】
また、吊り上げ装置1の一方の支持片11aの連結片部15aの内側縁に第2ストッパ182を設け、他方の支持片11bの連結片部15bの内側に当接面部183を取り付けたことにより、図3に示すように、吊り上げ装置1を閉塞動作させ、例えば支持片11a,11bを60°の開放角度θに閉塞させた場合に、この吊り上げ装置1の一対の挟持片部14a,14bの基端部において一定の隙間が確保される。この結果、これら挟持片部14a,14b間における作業者の指等の挟み込みを防止できるとともに、この吊り上げ装置1の一対の操作片部13a,13bの基端部における作業者の指等の挟み込みを防止できる。
【0054】
したがって、第1ストッパ181によって吊り上げ装置1の開放動作時の挟み込みを防止でき、第2ストッパ182および当接面部183によって吊り上げ装置1の閉塞動作時の挟み込みを防止できるから、これら第1ストッパ181、第2ストッパ182および当接面部183によって、吊り上げ装置1の各動作時における作業者の指等の挟み込みを防止できるため、吊り上げ装置1の作業時の安全性をより向上させることができる。
【0055】
<その他>
なお、上記一実施の形態においては、吊り上げ装置1にて搬送する被搬送物Aとして、玉石等の略球状であって不定形なものについて説明したが、いずれの形状の被搬送物Aであっても、吊り上げ装置1の大きさや形状を適宜調整することにより、少なくとも3か所以上の位置で被搬送物Aを支持して挟持して搬送することができる。特に、この吊り上げ装置1にて搬送する被搬送物Aとしては、一般に、作業者が持ち上げることが容易ではない大きさ又は質量の場合に、被搬送物Aを搬送する際の作業性を大幅に向上できる。
【符号の説明】
【0056】
1 吊り上げ装置
11a,11b 支持片
12a,12b 回転部(中心部)
122 ボルト
13a,13b 操作片部(操作部)
131a,131b 貫通孔
14a,14b 挟持片部(挟持部)
141a,141b 本体部
142a,142b 爪部
143a,143b 爪状部
144a,144b 第1屈曲部
145a,145b 第2屈曲部
146a,146b 第3屈曲部
147a,147b 第1支持部
148a,148b 第2支持部
149a,149b 第3支持部
15a,15b 連結片部
16a,16b 取っ手
17 仮固定機構
171 係止凸部
172 係止凹部
173 チェーン
18 挟み込み防止機構
181 第1ストッパ
182 第2ストッパ
183 当接面部
2 クレーン
21 クレーン本体
22 ブーム
23 ワイヤ
24 フック
3 連結具
31 係合クランプ
32a,32b 係止ワイヤ
33a,33b 結合クランプ
A 被搬送物(玉石)
B 接触点
C 搬入箇所
D 設置箇所
θ 開放角度
ψ1,ψ2,ψ3 屈曲角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉石等の不定形な被搬送物を挟持して吊り上げて搬送する吊り上げ装置であって、
中心部で回動可能に連結された一対の支持片を具備し、
これら各支持片は、前記中心部より先端側に、断面略凹状の挟持部がそれぞれ設けられ、これら各挟持部の断面略凹状の両側に位置する各爪部を、互いに対向させて設けられている
ことを特徴とする吊り上げ装置。
【請求項2】
一対の支持片の各挟持部には、対向する側に屈曲した屈曲部が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の吊り上げ装置。
【請求項3】
一方の支持片と、他方の支持片との間には、これら一対の支持片の回動を仮固定させる仮固定機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の吊り上げ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載の吊り上げ装置を用いた工法であって、
前記吊り上げ装置の各支持片の中心部より基端側の操作部を、紐状体を介してクレーンのフックに取り付ける取り付け工程と、
このクレーンを操作して、前記吊り上げ装置の一対の支持片の挟持部にて被搬送物を挟持できる位置へ、前記吊り上げ装置を移動させる移動工程と、
この吊り上げ装置の各挟持部の爪部によって、前記被搬送物が少なくとも3か所以上の位置で支持されて挟まれるように、前記吊り上げ装置の各挟持部間に被搬送物を位置させる位置決め工程と、
前記クレーンを操作して、前記吊り上げ装置の一対の支持片間で被搬送物を挟持して吊り上げて、この被搬送物を目的箇所へ搬送する搬送工程と、
前記クレーンを操作して、前記吊り上げ装置による被搬送物の挟持を解除させ、この被搬送物を前記目的箇所へ降ろす設置工程と
を具備していることを特徴とする吊り上げ装置を用いた工法。
【請求項5】
請求項3記載の吊り上げ装置を用いた工法であって、
位置決め工程は、前記吊り上げ装置の仮固定機構を解除して、この吊り上げ装置の一対の支持片を回動可能にさせてから、これら一対の支持片の各挟持部間に被搬送物を位置させ、
設置工程は、前記吊り上げ装置の一対の支持片による被搬送物の挟持を解除させた状態で、これら一対の支持片の回動を前記仮固定機構にて仮固定させる
ことを特徴とする請求項4記載の吊り上げ装置を用いた工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63814(P2013−63814A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202571(P2011−202571)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(505064895)渡辺建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】