説明

吊り戸の収納式ガイド装置

【課題】 吊り戸の開放状態の下では、何も、床面から上方に突出することのない収納式ガイド装置の提供。
【解決手段】 天井側に走行可能に吊り下げられ且つその下端面に走行溝を形成した吊り戸のガイド装置であって、床面Fに穿設された取付孔16に挿入固定される外筒1と、該外筒1の内側に嵌合固定される内筒2と、該内筒2の内側に昇降可能に配される昇降筒3と、該昇降筒3を上方へ弾性付勢するスプリング4とを備え、上記内筒2と昇降筒3との間に、昇降筒3をスプリング4の付勢力に抗して内筒2内に収納してその上端面が床面Fと面一となる下降位置に解除可能にロックする第一ロック手段9・13と、昇降筒3をスプリング4の付勢力でその上部が床面Fから突出して上記走行溝内に挿入される上昇位置に解除可能にロックする第二ロック手段10・13とを設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、連装引戸・スライドドア・収納式間仕切りパネル等の吊り戸の下部で使用されて、特に、各種の吊り戸の下部側の振れを防止しながらその移動を案内する収納式ガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したような吊り戸の下では、通常は、その円滑な開閉移動を案内するため、吊り戸の上部を天井側に設けられた上レールとランナーを介して走行自在に吊り下げられる一方、同下部も床面側に設けられる下レールとピボットを介して走行自在に支持して、吊り戸の開閉走行時に、吊り戸自体が大きく振れることを防止して、吊り戸のスムーズな移動を保障する構造となっている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、床面側にも下レールを連続して敷設することは、必然的に、床面に溝が画成されてしまうので、吊り戸が開放されている時には、このレールによる溝に躓いたり、或いは、ハイヒールのヒールが落ち込んでしまうと共に、外観上の見栄えも決して好ましいとは言えなかった。
【0004】
そこで、この下レールの代わりに、吊り戸の下端面に凹状の走行溝を連続して形成し、床面側に該走行溝内を滑動するガイドローラーを立設して、これにより、吊り戸の下部における移動を案内するガイド装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−137084号公報
【特許文献2】実開昭62−79075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、吊り戸の下部をガイドローラーで走行自在に案内することは、下レールのように、ハイヒールのヒールが落ち込む恐れはないが、今度は、ガイドローラー自体が床面から大きく立ち上がってしまうので、やはり、躓いて転んだり或いは外観上の見栄えも悪かった。そこで、このガイドローラーを床面に着脱可能に取り付けて、吊り戸が開放状態にある時には、ガイドローラーを床面から取り外すことが考えられるが、この場合には、いちいちガイドローラーを取り外して保管しなければならないので、極めて作業が面倒となって、現実的なものとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、斯かる従来のガイド装置が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、天井側に走行可能に吊り下げられ且つその下端面に走行溝を形成した吊り戸のガイド装置であって、床面に穿設された取付孔に挿入固定される外筒と、該外筒の内側に嵌合固定される内筒と、該内筒の内側に昇降可能に配される昇降筒と、該昇降筒を上方へ弾性付勢するスプリングとを備え、上記内筒と昇降筒との間に、昇降筒をスプリングの付勢力に抗して内筒内に収納してその上端面が床面と面一となる下降位置に解除可能にロックする第一ロック手段と、昇降筒をスプリングの付勢力でその上部が床面から突出して上記走行溝内に挿入される上昇位置に解除可能にロックする第二ロック手段とを設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、昇降筒の上部に走行溝の側面に沿って滑動するガイドローラーを付設したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1を前提として、昇降筒の上部形状を走行溝内を移動できるガイドピン状となしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3を前提として、昇降筒の上端面に第一・第二ロック手段のロック及びロック解除を行う操作溝を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
依って、請求項1記載の発明にあっては、吊り戸を開放した時に、昇降筒をスプリングの付勢力に抗して内筒内に収納すると、昇降筒の上端面が床面と面一となって、その下降位置に第一ロック手段を介してロックされて、装置自体が完全に床面内に隠れてしまうので、従来のように、躓いて転んだり或いは外観上の見栄えが害される恐れがなくなる。又、吊り戸を開閉する時には、昇降筒の収納ロック状態を解除すれば、昇降筒の上部がスプリングの付勢力で内筒から上方に突出してその上昇位置に第二ロック手段を介してロックされるので、走行溝内に挿入された昇降筒の上部で、吊り戸の走行を確実に案内できる。
【0012】
請求項2記載の発明にあっては、昇降筒の上部にガイドローラーを付設したので、ガイドローラーは吊り戸の走行溝の側面に沿って滑動して、特に、吊り戸の下部側の円滑な走行を保障できる。
【0013】
請求項3記載の発明にあっては、昇降筒の上部形状がガイドピン状となっているので、やはり、吊り戸の下部側の円滑な走行が期待できる。
【0014】
請求項4記載の発明にあっては、昇降筒の上端面に第一・第二ロック手段のロック及びロック解除を行う操作溝を形成しているので、昇降筒をその下降位置と上昇位置とで容易にロック及びロック解除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る収納式ガイド装置を示す分解斜視図である。
【図2】外筒の縦断面図ある。
【図3】(A)は内筒の正面図、(B)は同側面図である。
【図4】昇降筒の縦断面図である。
【図5】(A)は支持軸の平面図、(B)は同縦断面図である。
【図6】吊り戸の下部側形状を示す要部斜視図である。
【図7】ガイド装置自体が床面の内部に隠れた状態を示す縦断面図である。
【図8】ガイド装置自体が上方に突出して吊り戸の開閉移動を案内する状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、天井側に走行可能に吊り下げられ且つその下端面に走行溝を形成した吊り戸のガイド装置を前提として、床面に穿設された取付孔に挿入固定される外筒と、該外筒の内側に嵌合固定される内筒と、該内筒の内側に昇降可能に配される昇降筒と、該昇降筒を上方へ弾性付勢するスプリングとを備え、上記内筒と昇降筒との間に、昇降筒をスプリングの付勢力に抗して内筒内に収納してその上端面が床面と面一となる下降位置に解除可能にロックする第一ロック手段と、昇降筒をスプリングの付勢力でその上部が床面から突出して上記走行溝内に挿入される上昇位置に解除可能にロックする第二ロック手段とを設けることにより、吊り戸を開放した場合には、ガイド装置自体が床面内に隠れてしまうので、従来のように、躓いて転んだり、外観上の見栄えが害される心配がなくなると共に、床面から取り外して、保管する必要も全くなくなる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る収納式ガイド装置は、特に、各種吊り戸の下部側の走行を円滑に案内するものとして開発されたもので、その具体的な構造は、図1に示す如く、床面Fに穿設された取付孔16に挿入固定される外筒1と、該外筒1の内側に嵌合固定される内筒2と、該内筒2の内側に昇降可能に配される昇降筒3と、該昇降筒3を常時上方へ付勢する圧縮コイル状のスプリング4と、後述する吊り戸Dの下端面に形成された走行溝15を滑動するガイドローラー5と、該ガイドローラー5を昇降筒3の上部に回転可能に取り付ける支持軸6と、上記外筒1の下部開口を閉塞する蓋板7とを備えるものである。
【0018】
そこで、これらを具体的に説明すると、まず、外筒1は、図2にも示す如く、その下部外周面に縦断面が鋸歯状となった係止面8を形成して、該係止面8が上記床面Fの取付孔16の内周面に係止することにより、取付孔16内に挿入された外筒1の抜け外れを防止する構成となっている。又、外筒1の高さに関しては、床面に穿設された取付孔16の中に完全に挿入された状態で、その上端開口縁が床面Fと面一状態となる寸法が付与されている。
【0019】
又、内筒2は、完全なる円筒状に成形されて、図3にも示す如く、その側壁の90°置きに、後述する昇降筒3に突設された一対のストッパー突起13を係合する高さの異なる短スリット9と長スリット10を2個づつ交互に軸方向に形成して、対の関係となる短・長スリット9・10同士を連結スリット11を介して連通させる構成となっている。
【0020】
昇降筒3は、図4にも示す如く、上端開口の内周縁にスプリング4の受け座を形成する円環状の内向フランジ12を形成する一方、下部の外周面に対向する一対のストッパー突起13を突設する構成となっている。従って、当該昇降筒3が内筒2内に昇降可能に配されて、各ストッパー突起13が上記内筒2の短スリット9の端縁と係合すると、昇降筒3は、ガイドローラー5と支持軸6を伴って完全に収納された下降位置にロックされ、逆に、各ストッパー突起13が内筒2の長スリット10の端縁に係合すると、昇降筒3は、ガイドローラー5と支持軸6を伴って内筒2から突出した上昇位置にロックされることとなるので、ここでは、短スリット9とストッパー突起13とが第一ロック手段となり、長スリット10とストッパー突起13とが第二ロック手段を構成することとなる。
【0021】
支持軸6は、図5にも示す如く、円盤状頭部6aと先端面が円錐状に窪んだ脚部6bとからなり、当該脚部6bの先端をポンチを介してカシメて拡開することにより、昇降筒3の上端開口縁に接合させて、円盤状頭部6aと共同して、上記ガイドローラー5を昇降筒3に回転可能に取り付けると共に、上記円盤状頭部6aの中央部に、上記第一ロック手段と第二ロック手段の操作溝14を形成する構成となっている。従って、昇降筒3の上端面とは、実質的には、この支持軸6の円盤状頭部6aが該当する。
【0022】
外筒1の下部開口を閉塞する蓋板7は、外筒1の内側にスプリング4と昇降筒3と内筒2を収納保持するものであるが、外筒1の下部開口を閉塞した状態では、スプリング4の端部の受け座も兼用する構成となっている。
【0023】
又、吊り戸Dに関しては、従来と同様に、天井側に上レール(図示せず)とランナー(図示せず)を介して走行自在に吊り下げられるものであるが、その下部側に対しては、図6に示す如く、下端面の長手方向に凹状の走行溝15を連続して形成して、該走行溝15の側面を上記昇降筒3の上部に取り付けられたガイドローラー5を滑動させることにより、吊り戸Dの開閉移動を案内できる構造が付与されている。
【0024】
従って、斯かるガイド装置を組み立てる場合には、内筒2の各ストッパー突起13と昇降筒3の短スリット9又は長スリット10を合致させながら、内筒2を外側から昇降筒3に外嵌すると、内筒2に対して昇降筒3が昇降可能に配されることとなるので、後は、スプリング4を昇降筒3の内向フランジ12と蓋板7の間にセットしながら、そのまま、内筒2を外筒1の内側に挿入固定すると、装置自体が簡単に組み立てられる。この結果、昇降筒3は、スプリング4の付勢力で上方に押し上げられることとなる。
【0025】
依って、実際の使用に際しては、床面Fに穿設された取付孔16に外筒1を挿入して、該外筒1を取付孔16内にその係止面8を介して固定すれば、これにより、使用に供されることとなるが、この場合、昇降筒3側のストッパー突起13がスプリング4の付勢力に抗して内筒2側の短スリット9の端縁と係合していると、図7に示す如く、昇降筒3は、ガイドローラー5と支持軸6を伴ってその下降位置にロックされて、昇降筒3の上端面を形成する支持軸6の円盤状頭部6aが床面Fと面一となるので、本実施例にあっては、従来と異なり、昇降筒3は勿論のこと、ガイドローラー5や支持軸6の円盤状頭部6aが内筒2内に収納されて上方に突出することが全くなくなる。この為、吊り戸Dが開放状態にあっても、従来のように、躓いて転んだりすることがなくなると共に、外観上の見栄えが害されることも解消できる。
【0026】
逆に、吊り戸Dを開閉する場合には、支持軸6の円盤状頭部6aに形成された操作溝14にコインかマイナスドライバーの先端を差し込んで、所定方向に90°回転させると、これに伴い、昇降筒3の回転を得て、各短スリット9の端縁に係合している一対のストッパー突起13が、連結スリット11を経て対応する各長スリット10内に移行することとなるが、今度は、スプリング4の付勢力で、一対のストッパー突起13が長スリット10の端縁に係合して、昇降筒3を上昇位置にロックするので、図8に示す如く、ガイドローラー5と支持軸6を伴って、昇降筒3が取付孔16から上方に突出することとなる。この為、後は、ガイドローラー5が吊り戸Dの走行溝15内に進入して、その側面で滑動することとなるので、吊り戸Dの開閉移動が案内されて、吊り戸Dの下部側の振れが有効に防止できることとなると共に、吊り戸の閉塞時に、吊り戸Dの揺れ倒れも有効に防止できる。
【0027】
又、この上昇位置でのロック状態から下降位置に変更する場合には、昇降筒3をスプリング4の付勢力に抗して内筒2内に強制的に押し込みながら、同様に、支持軸6側の操作溝14にコインかマイナスドライバーの先端を差し込んで、逆方向に90°回転させると、長スリット10の端縁に係合している各ストッパー突起13が、今度は、連結スリット11を経て短スリット9の端縁に係合ロックするので、これにより、再度、ガイド装置自体を床面Fの内部に隠すことが可能となる。
【0028】
尚、上記した実施例の下では、昇降筒3の上部側にガイドローラー5を取り付けて、走行溝15の側面を滑動させることにより、吊り戸Dの走行を案内する構成を採用したものであるが、本発明は、これに限定されるものではなく、具体的には図示しないが、ガイドローラー5や支持軸6を省略して、昇降筒3の上部を走行溝15内を移動できる通常のガイドピン形状となしても、同様な効果が得られることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る収納式ガイド装置は、吊り戸の開放状態の下では、床面から上方に突出することが全くなくなるので、従来のように、躓いて転んだり、外観上の見栄えも害することがなくなる結果、これを連装引戸・スライドドア・収納式間仕切りパネル等に応用すれば、頗る好都合なものとなる。
【符号の説明】
【0030】
1 外筒
2 内筒
3 昇降筒
4 スプリング
5 ガイドローラー
6 支持軸
6a 円盤状頭部
6b 脚部
7 蓋板
8 係止面
9 短スリット
10 長スリット
11 連結スリット
12 内向フランジ
13 ストッパー突起
14 操作溝
15 走行溝
16 取付孔
D 吊り戸
F 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井側に走行可能に吊り下げられ且つその下端面に走行溝を形成した吊り戸のガイド装置であって、床面に穿設された取付孔に挿入固定される外筒と、該外筒の内側に嵌合固定される内筒と、該内筒の内側に昇降可能に配される昇降筒と、該昇降筒を上方へ弾性付勢するスプリングとを備え、上記内筒と昇降筒との間に、昇降筒をスプリングの付勢力に抗して内筒内に収納してその上端面が床面と面一となる下降位置に解除可能にロックする第一ロック手段と、昇降筒をスプリングの付勢力でその上部が床面から突出して上記走行溝内に挿入される上昇位置に解除可能にロックする第二ロック手段とを設けたことを特徴とする吊り戸の収納式ガイド装置。
【請求項2】
昇降筒の上部に走行溝の側面に沿って滑動するガイドローラーを付設したことを特徴とする請求項1記載の吊り戸の収納式ガイド装置。
【請求項3】
昇降筒の上部形状を走行溝内を移動できるガイドピン状となしたことを特徴とする請求項1記載の吊り戸の収納式ガイド装置。
【請求項4】
昇降筒の上端面に第一・第二ロック手段のロック及びロック解除を行う操作溝を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吊り戸の収納式ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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