説明

同期信号発生装置及びその方法、基地局、並びに通信システム

【課題】小型化及び低コスト化を図りつつ、基地局間の協調送信に使用可能な協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号を発生することができる同期信号発生装置及びその方法、並びに、その同期信号発生装置を備えた基地局及び通信システムを提供する。
【解決手段】同期信号発生装置100は、ゲート信号を生成する制御用コンピュータ130と、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で1秒毎に生成されたパルスからなるPPS基準信号が入力され、PPS基準信号のパルス毎に生成された時刻情報を含む時刻情報信号が入力され、前記ゲート信号のゲート幅内に含まれるPPS基準信号のパルスを同期信号として生成するPPSゲート制御回路110とを備える。制御用コンピュータ130は、PPS基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生装置及びその方法、並びに、その同期信号発生装置を備えた基地局及び通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有限かつ稀少な電波を有効活用すべく、周波数の高度利用のための各種技術の研究開発が推進されている。例えば移動体通信の分野では、互いに大きさの異なるマクロセル、ミクロセル、フェムトセル、ピコセル等の無線通信エリア(セル)が混在している環境に通信端末(ユーザ装置)が位置している場合にスループットを最大化できるように複数の基地局と通信端末との間の無線通信を制御する技術の開発が進められている。
【0003】
従来、複数の基地局のセルが重複しているエリアに通信端末が位置するときに、それら複数の基地局が協調し各基地局から当該通信端末にタイミングを合わせて同期送信することができるシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなシステムでは、互いに協調して送信する複数の基地局間で同期をとる必要があり、しかも、その同期の精度として、協調送信を実現するのに必要な時間精度(例えば、1マイクロ秒程度の時間精度)が要求される。そのため、各基地局には、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号を発生する同期信号発生装置が設けられている。
【0004】
図5は、従来の同期信号発生装置の概略構成例を示すブロック図である。この同期信号発生装置900は、時刻基準クロック信号生成回路910と同期信号出力回路920とを備える。時刻基準クロック信号生成回路910は、GPS(Global Positioning System)受信機930から出力されるPPS(Pulse Per Second)基準信号とクロック信号(例えば周波数:10MHz)との時刻情報信号(例えばNMEA(National Marine Electronics Association)フォーマット)とに基づいて、時刻情報信号の時刻情報と一致するタイミングで毎正秒の時刻基準クロック信号を生成する。クロック信号生成回路910で生成された時刻基準クロック信号は、同期信号出力回路920を介して基地局内の無線送信装置に、同期信号として出力される。時刻基準クロック信号生成回路910は制御用コンピュータ940で制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の同期信号発生装置では、時刻基準クロック信号生成回路910で使用される基準クロック信号の動作周波数が10MHz又はそれと同程度の高周波であり、高速且つ複雑な処理を必要とした。そのため、時刻基準クロック信号生成回路910が複雑な構成のFPGA(Field-Programmable Gate Array)からなるハードウェアで構成され、同期信号発生装置が大型及び高コストになるという問題点がある。
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、小型化及び低コスト化を図りつつ、基地局間の協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号を発生することができる同期信号発生装置及びその方法、並びに、その同期信号発生装置を備えた基地局及び通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る同期信号発生装置は、基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生装置であって、所定のゲート幅を有するゲート信号を生成するゲート信号生成手段と、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で所定時間間隔毎に生成されたパルスからなる基準信号が入力され、前記基準信号のパルス毎に生成された時刻情報を含む時刻情報信号が入力され、前記ゲート信号のゲート幅内に含まれる前記基準信号のパルスを前記同期信号として生成する同期信号生成手段と、を備え、前記ゲート信号生成手段は、前記時刻情報信号に含まれる時刻情報に対応させて、前記基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号を生成することを特徴とするものである。
前記同期信号発生装置において、前記ゲート信号生成手段は、所定の制御プログラムが実行されることにより前記ゲート信号を生成するコンピュータ装置を用いて構成してもよい。
また、前記同期信号発生装置において、前記ゲート信号生成手段は、前記コンピュータ装置内のクロックに基づいて前記時刻情報信号の欠落の有無を判断してもよい。
また、前記同期信号発生装置において、前記時刻情報信号を計数するカウンタを更に備え、前記ゲート信号生成手段は、前記カウンタの計数結果に基づいて前記時刻情報信号の欠落の有無を判断してもよい。
また、前記同期信号発生装置において、前記ゲート信号生成手段は、前記時刻情報信号の欠落があったと判断した場合、入力済みの過去の時刻情報信号の時刻情報に基づいて前記ゲート信号の生成を継続し、前記時刻情報信号の欠落があった旨の情報を出力してもよい。
また、前記同期信号発生装置において、前記基準信号を生成する基準信号生成手段を更に備えてもよい。
【0008】
本発明に係る基地局は、基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生手段と、前記同期信号に基づいて所定のタイミングに送信する無線送信装置とを備えた基地局であって、前記同期信号発生手段として、前記いずれかの同期信号発生装置を備えたことを特徴とするものである。
また、本発明に係る無線通信システムは、互いに協調送信が可能な複数の基地局を含む無線通信システムであって、前記複数の基地局はそれぞれ前述の基地局であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る同期信号発生方法は、基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生方法であって、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で所定時間間隔毎のパルスからなる基準信号が入力されるステップと、前記基準信号のパルス毎に生成された時刻情報信号が入力されるステップと、前記時刻情報信号に含まれる時刻情報に対応させて、前記基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号を生成するステップと、前記ゲート信号のゲート幅内に含まれる前記基準信号のパルスを、前記同期信号として出力するステップと、を含むことを特徴とするものである。
前記同期信号発生方法において、前記ゲート信号は、コンピュータ装置で所定の制御プログラムが実行されることにより生成してもよい。
また、前記同期信号発生方法において、前記コンピュータ装置内のクロックに基づいて前記時刻情報信号の欠落の有無を判断するステップを更に含んでもよい。
また、前記同期信号発生方法において、前記時刻情報信号を計数するステップと、前記時刻情報信号の計数結果に基づいて前記時刻情報信号の欠落の有無を判断するステップと、を更に含んでもよい。
また、前記同期信号発生方法において、前記時刻情報信号の欠落があったと判断した場合、入力済みの過去の時刻情報信号に基づいて前記ゲート信号の生成を継続し、前記時刻情報信号の欠落があった旨の情報を出力するステップを更に含んでもよい。
また、前記同期信号発生方法において、前記基準信号を生成するステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で所定時間間隔毎に生成されたパルスからなる基準信号が入力され、その基準信号のパルス毎に生成された時刻情報を含む時刻情報信号が入力される。この時刻情報信号に含まれる時刻情報に対応させて、上記基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号が生成される。このゲート信号は上記所定のゲート幅を有するため、そのゲート幅内には上記基準信号のパルスが一つだけ含まれる。従って、ゲート信号のゲート幅内に含まれる基準信号の一つのパルスを、上記時刻情報に対応する同期信号として生成することができる。そして、この基準信号のパルスは、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有するので、基地局間の協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号として発生させることができる。
しかも、上記同期信号の発生に用いられるゲート信号は、上記基準信号のパルスを一つ含むように設定すればよく、その立ち上がり、立ち下がり及びゲート幅に高い時間精度が要求されず、同期信号の目標時間精度よりも精度の低い時間精度で済む。従って、同期信号を生成する部分の回路構成が簡易になり、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
以上のように、本発明によれば、小型化及び低コスト化を図りつつ、基地局間の協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る同期信号発生装置を有する複数の基地局を備えた通信システムの構成の一例を示す説明図。
【図2】同期信号発生装置の構成の一例を示すブロック図。
【図3】PPS基準信号とゲート信号と同期信号との関係の一例を示すタイムチャート。
【図4】同期信号の生成に用いられるPPS基準信号、時刻情報信号及びゲート信号それぞれを実際に測定した波形の一例を示す図。
【図5】従来の同期信号発生装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る同期信号発生装置を有する複数の基地局を備えた通信システムの構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システム10は、相互に通信可能に接続された複数の基地局11、12を備えている。複数の基地局11、12は同期信号に基づいて互いに協調し、各基地局11、12の無線通信エリアが重複したエリアに存在する移動局である通信端末(以下「端末」という。)20に、送信タイミングを合わせた無線通信により、送信データであるパケットを同期送信することができる。この同期送信により、端末20によるパケット通信時におけるスループットの向上、通信品質の向上および通信帯域の有効利用を実現できる。
【0013】
なお、本実施形態では、互いに協調してパケットを同期送信する複数の基地局が2つである場合について説明するが、当該複数の基地局は3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、複数の基地局から同期送信された複数のパケットを1台の端末で受信する場合について説明するが、当該同期送信された複数のパケットを受信する端末は複数台であってもよい。
【0014】
通信システム10は、複数の基地局11、12に送信データであるパケットを分配するパケット分配元のノードである送信データ分配装置としてのパケット分配装置13を含んでもよい。パケット分配装置13は、パケット通信網14を介して外部のネットワークと通信することができる。パケット分配装置13と複数の基地局11、12とは、パケット通信網15を介して接続されている。通信システム10は、パケット通信網15を含んでもよい。また、通信システム10は、複数の基地局11、12から同期送信される複数のパケットを受信可能な端末20を含んでもよい。また、端末20は、通信サービスの利用者によって使用されるためユーザ装置(UE:User Equipment)と呼ばれる場合があり、移動可能なものであるため移動局と呼ばれる場合もあり、また、無線機と呼ばれる場合もある。
【0015】
基地局11、12及びパケット通信網15等で構築されるネットワークは、移動体通信ネットワークのセルラーネットワークであってもよい。パケット通信網14は、移動体通信ネットワークのコアネットワークであってもよい。基地局11、12の無線通信エリアはそれぞれ、互いに大きさが異なるマクロセル、マイクロセル、フェムトセル、ピコセル等の各種セルのいずれかであってもよい。また、基地局11、12は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の仕様においては「NodeB」と呼ばれたり、更に、LTE(Long Term Evolution)の仕様では発展型のNodeBとして「eNodeB(evolved Node B)」と呼ばれる場合がある。
【0016】
また、基地局11、12はそれぞれ、次のような同期信号発生方法により、複数の基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する。すなわち、基地局11、12にはそれぞれ、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で1秒毎のパルスからなる基準信号としてのPPS(Pulse Per Second)基準信号が入力され、そのPPS基準信号のパルス毎に生成された時刻情報信号が入力される。そして、その時刻情報信号に含まれる時刻情報に対応させて、PPS基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも十分長いゲート幅を有するゲート信号を生成する。このゲート信号のゲート幅内に含まれるPPS基準信号のパルスを同期信号として前記同期送信に用いる。ここで、上記PPS基準信号のパルスの時刻定義部分は、当該パルスにおける時刻の定義に用いられる部分である。通常は、当該パルスの立ち上がり部分が時刻定義部分として用いられる。
【0017】
なお、本実施形態では、上記基準信号が1秒毎のパルスからなるPPS基準信号の場合について説明するが、本発明は、上記基準信号が複数秒毎のパルスからなるPPS基準信号(例えば、2秒毎のパルスからなるPP2S(Pulse Per 2 Seconds)基準信号)あるいは1秒間に複数回発生する基準信号(例えば、1秒間に5パルス発生する5PPS(5Pluses per Seconds)の場合にも同様に適用することができる。
また、本実施形態で例示する上記基準信号の時間精度(協調送信を実現するのに必要な同期時間精度)は、例えば1マイクロ秒以下であるが、この時間精度に限定されるものではない。協調送信を実現するのに必要な同期時間精度は、例えば基地局間で同期送信を行う通信システムの構成や同期送信の方式等によって異なる場合があるので、それぞれの場合における協調送信を実現するのに必要な同期時間精度に応じて上記基準信号の時間精度が要求される。例えば、基地局間で同期送信を行う通信システムの構成や同期送信の方式等によっては、1マイクロ秒以下の時間精度を有する基準信号ではなく、4マイクロ秒以下又は16マイクロ秒以下等の他の時間精度を有する基準信号を使用できる場合もあり得る。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る同期信号発生装置の構成の一例を示すブロック図である。この同期信号発生装置100は、同期信号生成手段としてのPPSゲート制御回路110と、同期信号出力回路120と、ゲート信号生成手段としてのコンピュータ装置である制御用コンピュータ130とを備える。これらの構成のうちPPSゲート制御回路110は同期信号出力回路120は、例えば電気回路基板やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェア要素として構成することができる。また、同期信号発生装置100は、例えば複数の基地局11,12それぞれに組み込まれる。
【0019】
PPSゲート制御回路110は、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で1秒毎に生成されたパルスからなるPPS基準信号と、制御用コンピュータ130で生成されたゲート信号とが入力される。PPS基準信号は、GPS(Global Positioning System)受信機200から出力される。PPSゲート制御回路110は、上記ゲート信号のゲート幅内に含まれるPPS基準信号のパルスを同期信号として生成する同期信号生成手段として機能する。
【0020】
なお、本実施形態では、PPS基準信号及び時刻情報信号を出力する時間関連信号出力手段としてGPS受信機200を用いているが、上記時間関連信号出力手段は、PPS基準信号及び時刻情報信号を出力可能なものであれば他の装置であってもよい。例えば、上記時間関連信号出力手段は、PPS基準信号及び時刻情報信号を出力できるようにネットワーク上に設けられたNTP(Network Time Protocol )サーバや、JJY等の標準電波局から送信される標準電波を受信する受信機であってもよい。
【0021】
同期信号出力回路120は、PPSゲート制御回路110で生成された同期信号を所定の大きさまで増幅して出力したり、同期信号を受ける外部回路との間のインピーダンス整合を行ったりする機能を有する。
【0022】
制御用コンピュータ130は、例えばCPU、半導体メモリ(ROM、RAM)等の内部記憶装置、I/Oインターフェース、HDDなどの外部記憶装置等を用いて構成されたパーソナルコンピュータであり、内部記憶装置や外部記憶装置から読み出された所定の制御プログラムが実行されるが、動作基準のクロックの精度が低い(例えば、数10ミリセカンドの時間精度しか持たない)ため、同期信号の目標時間精度よりも動作精度が低い。制御用コンピュータ130は、上記所定の制御プログラムが実行されることにより、PPS基準信号のパルス毎に生成された時刻情報を含む時刻情報信号が入力され、その時刻情報信号に基づいて、PPS基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも十分長いゲート幅を有するゲート信号を生成するゲート信号生成手段として機能する。このゲート信号は、上記PPS基準信号のパルスを一つ含むように設定すればよく、その立ち上がり、立ち下がり及びゲート幅に高い時間精度が要求されない。そのため、上記所定のゲート幅及び時間精度を有するゲート信号は、同期信号の目標時間精度よりも精度の低い制御用コンピュータ130によっても確実に生成することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、時刻情報信号が入力されるたびにゲート信号を生成しているが、複数の時刻情報信号ごとに(例えば、2つの時刻情報信号ごとに、又は3以上の時刻情報信号ごとに)ゲート信号を生成したり、所定時刻の時刻情報信号に対応付けてゲート信号を生成してもよい。また、本実施形態では、上記時刻情報信号は、GPS受信機200から出力されるNMEAフォーマットに準拠した信号であり、「NMEA信号」と呼ばれる場合もあるが、時刻を正確に伝達する信号であれば、独自フォーマットの信号であってもよい。
【0024】
また、上記ゲート信号生成手段は、本実施形態のように所定の制御プログラムが実行される制御用コンピュータ(コンピュータ装置)130で実現してもよいが、装置内に簡単に組み込むことが可能な同等な機能を有するプロセッサ(制御用小型プロセッサ)で実現してもよい。この場合、制御プログラムを一定規模の回路へ実装することになるが、従来装置(図5参照)に比べてはるかに小さな規模・コストで実現できる。
【0025】
図3は、PPS基準信号とゲート信号と同期信号との関係の一例を示すタイムチャートである。図示のように、PPS基準信号1001は、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で1秒毎に生成された複数のパルスからなるパルス列であり、通常は正確な毎正秒がパルスの立ち上がり(図中の上矢印部分)で定義される。また、そのPPS基準信号1001のパルスの周期Tppsは1秒であるが、そのパルスの時刻を定義する時刻定義部分1005は信号レベルが立ち上がっている部分である。また、ゲート信号1002は、時刻情報信号1003が入力されるたびに、その時刻情報信号1003に対応付けて生成される。ゲート信号1002のゲート幅Tgは、PPS基準信号1001のパルスの1周期(Tpps)よりも短く、且つ、パルスの立ち上がり部分(時刻定義部分)が十分にその期間内にあるように(たとえば、パルスの半周期(Tpps/2)よりも長くなるように)設定される。また、ゲート信号1002は、そのゲート信号1002に対応するPPS基準信号1001の一つのパルス1001pの立ち上がり部分(時刻定義部分)が当該ゲート信号1002のゲート幅Tg内に確実に位置するように立ち上がる。
【0026】
PPSゲート制御回路110は、ゲート信号1002のゲート幅Tg内にPPS基準信号1001の一つのパルス1001pが位置するとき、そのパルス1001pを同期信号1004として生成する。
【0027】
図4は、本実施形態に基づく制御回路を試験動作させ、同期信号の生成に用いられるPPS基準信号、時刻情報信号及びゲート信号それぞれを実際に測定した波形の一例を示す図である。図4において、ゲート信号1002は、時刻情報信号1003から所定の遅れ時間Tdが経過したタイミングで立ち上がるように生成される。このゲート信号1002のゲート幅Tg内に、PPS基準信号の一つのパルス1001が位置するとき、そのパルス1001が同期信号として生成される。
【0028】
以上、本実施形態によれば、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で所定時間間隔毎に(1秒毎)に生成されたパルスからなるPPS基準信号が入力され、そのPPS基準信号のパルス毎に生成された時刻情報を含む時刻情報信号が入力される。この時刻情報信号に基づいて、当該時刻情報信号に対応するように、PPS基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号が生成される。このゲート信号は上記所定のゲート幅を有するため、そのゲート幅内にはPPS基準信号のパルスが一つだけ含まれる。従って、ゲート信号のゲート幅内に含まれるPPS基準信号の一つのパルスを、上記時刻情報信号に対応する同期信号として生成することができる。この同期信号として生成されるPPS基準信号のパルスは、協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有するので、基地局11,12間の協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号として発生させることができる。
しかも、上記同期信号の発生に用いられるゲート信号は、上記PPS基準信号のパルスを一つ含むように設定すればよく、その立ち上がり、立ち下がり及びゲート幅に高い時間精度が要求されない。従って、同期信号を生成する部分の回路構成が簡易になり、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
より具体的には、例えば、図5に示した従来の同期信号発生装置900における時刻基準クロック信号生成回路910及び同期信号出力回路920からなるハードウェア回路要素のサイズは400mm×320mmであった。これに対し、本実施形態の同期信号発生装置100におけるPPSゲート制御回路110及び同期信号出力回路120からなるハードウェア回路要素のサイズは120mm×180mmであり、従来の6分の1程度の面積まで小型化を図ることができた。
【0029】
また、本実施形態によれば、ゲート信号生成手段を、同期信号の目標時間精度よりも時間精度の低い、所定の制御プログラムが実行されることによりゲート信号を生成するコンピュータ装置としての制御用コンピュータ130を用いて構成しているので、上記ゲート信号の生成をより汎用的で制御内容の変更が容易なソフトウェア制御で行うことができる。
【0030】
なお、上記実施形態において、GPS受信機200のリセットやGPS衛星の混乱などによって上記時刻情報信号がGPS受信機200から正確に一定時間間隔おきに(上記実施形態の場合は、1秒おきに)出力されない場合がある。すなわち、時刻情報信号の「ブランク」があり得る。このような時刻情報信号の「ブランク」があると、上記ゲート信号が生成されず、PPSゲート制御回路110における同期信号の生成が行われなかったり同期信号の生成動作が正常に行われなくなったりする。
【0031】
そこで、上記実施形態の同期信号発生装置100において、上記ゲート信号生成手段としての制御用コンピュータ130は、その制御用コンピュータ130内のクロックに基づいて時刻情報信号の欠落の有無を判断するようにソフトウェア制御を行ってもよい。
また、上記実施形態の同期信号発生装置100において、GPS受信機200から出力される時刻情報信号を計数するカウンタを更に備え、上記ゲート信号生成手段としての制御用コンピュータ130は、そのカウンタの計数結果に基づいて時刻情報信号の欠落の有無を判断するようにソフトウェア制御を行ってもよい。
このように時刻情報信号の欠落の有無を判断することにより、時刻情報信号の欠落があった場合に所定のエラー処理を行うことにより、PPSゲート制御回路110における同期信号の生成動作の安定性及び確実性を確保することができる。
【0032】
上記エラー処理としては、例えば、上記クロックに基づいて欠落があった時刻情報を推定してゲート信号を継続して生成するようにソフトウェア制御を行う。また、入力済みの過去の時刻情報信号に基づいて欠落があった時刻情報を推定してゲート信号を継続して生成するようにソフトウェア制御を行ってもよい。これにより、PPSゲート制御回路110における同期信号は継続して生成することができ、同期信号を利用する基地局や協調制御装置に出力することができる。
【0033】
なお、上記実施形態において、同期信号発生装置100は、PPS基準信号を生成するGPS受信機200等の基準信号生成手段を内蔵してもよい。この場合は、GPS受信機200等の基準信号生成手段を別途設けることができない環境下においても、基地局11,12間の協調送信を実現するのに必要な同期時間精度を有する高精度の同期信号を出力することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 通信機システム
11、12 基地局
20 端末
100 同期信号発生装置
110 PPSゲート制御回路
120 同期信号出力回路
130 制御用コンピュータ
200 GPS受信機
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2009−171382号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生装置であって、
所定のゲート幅を有するゲート信号を生成するゲート信号生成手段と、
協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で所定時間間隔毎に生成されたパルスからなる基準信号が入力され、前記基準信号のパルス毎に生成された時刻情報を含む時刻情報信号が入力され、前記ゲート信号のゲート幅内に含まれる前記基準信号のパルスを前記同期信号として生成する同期信号生成手段と、を備え、
前記ゲート信号生成手段は、前記時刻情報信号に含まれる時刻情報に対応させて、前記基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号を生成することを特徴とする同期信号発生装置。
【請求項2】
請求項1の同期信号発生装置において、
前記ゲート信号生成手段は、同期信号の目標時間精度よりも時間精度の低い、所定の制御プログラムが実行されることにより前記ゲート信号を生成するコンピュータ装置を用いて構成されていることを特徴とする同期信号発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2の同期信号発生装置において、
前記ゲート信号生成手段は、前記コンピュータ装置内のクロックに基づいて前記時刻情報信号の欠落の有無を判断することを特徴とする同期信号発生装置。
【請求項4】
請求項1又は2の同期信号発生装置において、
前記時刻情報信号を計数するカウンタを更に備え、
前記ゲート信号生成手段は、前記カウンタの計数結果に基づいて前記時刻情報信号の欠落の有無を判断することを特徴とする同期信号発生装置。
【請求項5】
請求項3又は4の同期信号発生装置において、
前記ゲート信号生成手段は、前記時刻情報信号の欠落があったと判断した場合、入力済みの過去の時刻情報信号に基づいて前記ゲート信号の生成を継続し、前記時刻情報信号の欠落があった旨の情報を出力することを特徴とする同期信号発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの同期信号発生装置において、
前記基準信号を生成する基準信号生成手段を更に備えたことを特徴とする同期信号発生装置。
【請求項7】
基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生手段と、前記同期信号に基づいて所定のタイミングに送信する無線送信装置とを備えた基地局であって、
前記同期信号発生手段として、請求項1乃至6のいずれかの同期信号発生装置を備えたことを特徴とする基地局。
【請求項8】
互いに協調送信が可能な複数の基地局を含む通信システムであって、
前記複数の基地局はそれぞれ、請求項7の基地局であることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
基地局間の協調送信に使用される同期信号を発生する同期信号発生方法であって、
協調送信を実現するのに必要な同期時間精度で所定時間間隔毎のパルスからなる基準信号が入力されるステップと、
前記基準信号のパルス毎に生成された時刻情報信号が入力されるステップと、
前記時刻情報信号に含まれる時刻情報に対応させて、前記基準信号のパルスの1周期よりも短く当該パルスの時刻定義部分よりも長いゲート幅を有するゲート信号を生成するステップと、
前記ゲート信号のゲート幅内に含まれる前記基準信号のパルスを、前記同期信号として出力するステップと、
を含むことを特徴とする同期信号発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−209869(P2012−209869A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75644(P2011−75644)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「異なる大きさのセルが混在する環境下における複数基地局間協調制御技術の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】