説明

同軸ケーブル

【課題】可撓性を有し、且つ、さらに高いシールド特性を備え、減衰量を低減させると共に、その変動の小さい同軸ケーブルを提供すること。
【解決手段】中心導体11と、誘電体層12と、外部導体層13と、ジャケット15とを備えた同軸ケーブル1であって、外部導体層13とジャケット15との間には、外部導体層13を巻回するALPET14aからなる巻回帯層14が設けられ、巻回帯層14は、同軸ケーブル1の長手軸方向に対して、25〜50度で巻回される。これにより、外部導体層13の上から、巻回帯層14を巻回することになり、外部導体層13が巻回帯層14によって押え付けられることになるので、外部導体層14が締め付けられ、外部導体14a間の密着度が向上してシールド特性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸ケーブルの中には、シールド効果を向上させ、減衰量の低減を図ることを目的として、外部導体を、この同軸ケーブルの長手軸方向に対してある一定の角度で誘電体層に巻回したものがある。そして、本出願人は、外部導体として、絶縁テープにアルミニウム、若しくは銅等の金属を蒸着、またはこれらの箔を張り合わせた金属テープを使用した同軸ケーブル(特許文献1)と、外部導体として、複数本の導電性の素線を使用した同軸ケーブル(特許文献2)とを提案している。
【0003】
特許文献1の同軸ケーブルは、外部導体となる金属テープを誘電体層の上から巻回しており、この金属テープを同軸ケーブルの長手軸方向に対して0度〜25度の角度で巻回している。そして、所定の範囲内の角度で金属テープを巻くことによって、特許文献1の同軸ケーブルでは、充分なシールド効果を得て、さらに減衰量の低減を図っている。
【0004】
特許文献2の同軸ケーブルは、外部導体となる複数本の導電性の素線を誘電体の上から螺旋状に巻回しており、この複数本の導電性の素線を同軸ケーブルの長手軸方向に対して8度〜19度の角度で巻回している。そして、所定の範囲内の角度で複数本の導電性の素線を巻くことによって、特許文献2の同軸ケーブルでは、シールド効果等の電気的特性に優れた同軸ケーブルを提供している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−057863号公報
【特許文献2】特開2003−092031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した同軸ケーブルでは、外部導体となる金属テープ、若しくは複数本の導電性の素線を、所定の角度で誘電体層に巻回することによって充分なシールド特性を得ており、減衰量の低減を図っている。
【0007】
これに対し、機器の高性能化が進む電子機器業界等からは、可撓性を有し、且つ、さらに高いシールド特性を備え、減衰量の低減を図ることが可能で、減衰量変動の小さい同軸ケーブルを使用したいとの要望が強くなされている。
【0008】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、可撓性を有し、且つ、さらに高いシールド特性を備え、減衰量を低減させると共に、その変動の小さい同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明の同軸ケーブルでは、内部導体と、当該内部導体の外周に設けられた誘電体層と、当該誘電体層の外周に設けられた外部導体層と、当該外部導体層の外周に設けられた保護被膜層とを備えた同軸ケーブルであって、前記外部導体層と前記保護被膜層との間には、当該外部導体層を巻回する巻回帯からなる巻回帯層が設けられており、前記巻回帯層は、前記同軸ケーブルの長手軸方向に対して、所定の角度で巻回されていることを特徴としている。
【0010】
これにより、本発明の同軸ケーブルでは、同軸ケーブルの外部導体層の上から、さらに巻回帯を巻回することになる。そのため、外部導体層が巻回帯によって押え付けられることになるので、外部導体層が締め付けられることになり、外部導体層の密着度が向上してシールド特性が向上する。また、外部導体が締め付けられるので、同軸ケーブルを曲げた際に、外部導体層に隙間が出来難くなり、シールド特性が向上した状態を安定的に維持することが可能となる。
【0011】
また、本発明の同軸ケーブルでは、前記巻回帯は金属化テープであることが好適である。これにより、巻回帯層がシールド層となるので、外部導体層と巻回帯層との2つのシールドを備えることになり、シールド特性をさらに向上させることが可能となる。また、この同軸ケーブルでは、巻回帯層と外部導体層と密着させてシールド特性が向上した状態を安定的に維持することも可能となる。
【0012】
また、本発明の同軸ケーブルでは、前記所定の角度は、25度〜50度の範囲内であることが好適である。これにより、本発明の同軸ケーブルでは、生産効率を維持しつつ、巻回帯層によって外部導体をしっかりと締め付けることが可能となり、シールド特性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の同軸ケーブルでは、前記外部導体層は、1重横巻きされていることを特徴としている。また、本発明の同軸ケーブルでは、前記外部導体層は、2重横巻きされていることを特徴としている。これにより、本発明の同軸ケーブルでは、外部導体層が1重横巻きであっても、2重横巻きであっても、その上から巻回帯を巻回して外部導体層を締め付けることが可能となるので、外部導体層の巻数が増えたとしても、本発明を適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0015】
まず、本実施形態の同軸ケーブル1の構成について図1を用いて説明する。ここで、図1のうち、図1(a)は、本実施形態の同軸ケーブル1の斜視図であり、図1(b)は、本実施形態の同軸ケーブル1の断面図であり、図1(C)は、同軸ケーブル1の巻回帯を巻回する工程を示す図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の同軸ケーブル1は、中心導体11(内部導体)と、誘電体層12と、外部導体層13と、本発明の特徴的な部分である巻回帯層14と、ジャケット15(保護被膜層)とにより略構成されている。そして、この同軸ケーブル1は以下の手順により形成される。
【0017】
即ち、この同軸ケーブル1は、複数本の導体11aを撚り合わせて中心導体11を形成し、この中心導体11の外周に押出機(図示せず)を用いて誘電体12aを押出し被覆して誘電体層12を形成する。そして、この誘電体層12の外周に複数本の導体素線13aを横巻きして外部導体層13を形成し、この外部導体層13の外周に、例えば、導体素線13aの横巻き方向とは反対方向に、金属化テープである例えばALPET14a(巻回帯)を螺旋状に巻回して、本発明の特徴的な部分である巻回帯層14を形成する。そして、この巻回帯層14の外周にジャケット15を押出し被覆して形成する。このようにして、同軸ケーブル1は形成されている。
【0018】
この同軸ケーブル1の材質は、例えば、導線11aの材質が銀めっき軟銅線、誘電体12aの材質がテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、単にFEPとする)、導体素線13aの材質が錫めっき軟銅線、ジャケット15の材質がFEPとなっている。
【0019】
尚、本実施形態の同軸ケーブル1の材質は、上述した材質に限定されるものではなく、通常同軸ケーブルに用いられる他の材質の物を用いる事も可能である。例えば、誘電体には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、若しくはテトラフルオロエチレン−パールフオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の他のフッ素樹脂を用いることも可能である。また、本実施形態の同軸ケーブル1では、巻回帯層14を巻回する方向は、外部導体層13として横巻きされた導体素線13aが締め付けられるならば、導体素線13aの横巻き方向と同方向であってもよい。
【0020】
また、ALPET14aは、アルミ箔とポリエチレンテフタレート(以下、単にPETとする)とを、ポリ塩化ビニル(以下、単にPVCとする)を介して積層してテープ状に形成したものである。そして、このALPET14aは、アルミ箔が外部導体層13と接触する態様で、外部導体層13の上から巻回される。
【0021】
上述する本実施形態の同軸ケーブル1では、図1(c)に示すように、外部導体層13として導体素線13aを横巻きしており、この外部導体層13の上から巻回帯層14を形成するALPET14aを同軸ケーブル1の長手軸方向に対して所定の角度θで螺旋状に巻回している。そのため、外部導体層13は、この巻回帯層14によって望ましい応力が加えられて締め付けられることになり、外部導体層13の導体素線13a同士の密着度が向上する。さらに、複数本の導体素線13aが、巻回帯層14によって締め付けられていることから、この巻回帯層14によって、導体素線13aが密着した状態を維持されるようになっており、例え同軸ケーブル1が曲げられたとしても、その屈曲部分で導体素線13a同士が離間することを抑制することも可能となっている。そして、この巻回帯層14は、ALPET14aによって形成されていることから、この巻回帯層14自体もシールドとして作用することになる。
【0022】
これにより、本実施形態の同軸ケーブル1では、外部導体層13と、巻回帯層14との2つのシールド効果を持つ層を備えることになり、さらに、外部導体層13の導体素線13aが巻回帯層14によって締め付けられるので、導体素線13a同士の密着度を向上させ、さらにその密着状態が維持されることになり、外部導体層13のシールド効果をより高めることが可能となる。
【0023】
次に、本実施形態の同軸ケーブル1における、巻回帯層14を巻回する所定の角度θについてその範囲を特定する為の試験を行ったので、この試験について図2〜10を用いて説明する。
【0024】
なお、この度の試験では、上記所定の角度θとシールド効果の特性との関係を求めて所定の角度θの範囲を特定するシールド試験と、上記所定の角度θと減衰量との関係を求めて所定の角度θの範囲を特定する巻き付け試験との2つの試験を行った。そして、シールド試験の試験結果を図2、図3に、巻き付け試験の試験法を図4に、巻き付け試験の試験結果を図5〜10に示す。まず、シールド試験について、図2、図3を用いて詳細に説明する。
【0025】
図2は、シールド試験の試験結果を示す表であり、図3はシールド試験の試験結果を示す図である。このシールド試験では、巻回帯層14を巻回する所定の角度θを変化させた4本の同軸ケーブル1を、長さ3mに調整して試験用ケーブルA〜Dとし、この試験用ケーブルA〜Dに挿入した信号が試験用ケーブルA〜Dの外部に漏れる量をRF(Radio Frequency)ネットワークアナライザを用いて検出する吸収クランプ法という方法で行った。なお、挿入した信号は、0Hzから1GHzまで順次変化させ、その間のシールド効果の変化を測定した。尚、比較の為に従来使用されていた編組タイプ同軸ケーブルにも同様に試験を行った。
【0026】
このシールド試験で使用した4つの試験用ケーブルA〜Dの構成は、外径0.102mmの銀めっき軟銅線を7本撚り合わせて中心導体11を形成し、この中心導体11の外周にFEPを被覆して外径0.9mmとなるように誘電体層12を形成し、この誘電体層12の外周に導体素線13aにあたる外径0.102mmの錫めっき軟銅線を29本、同軸ケーブルの長手軸方向に対して9.6度の角度を与えて横巻きして外部導体層13を形成し、この外部導体層13の外周に、厚さ10μmのアルミ箔と厚さ12μmのPETとを厚さ2〜3μmのPVCを介して積層してなるALPET14aを螺旋状に巻回して巻回帯層14を形成し、この巻回帯層14の外周に厚さ0.12mmのFEPからなるジャケット15を押出し被覆して形成したものであり、この試験用ケーブルA〜Dの外径は1,37mmとされている。
【0027】
また、従来の編組タイプ同軸ケーブルの構成は、外形0.102mmの銀メッキ軟銅線を7本撚り合わせて中心導体を形成し、この中心導体の外周にFEPを被覆して外径0.88mmとなるように誘電体層を形成し、この誘電体層の外周に外径0.05mmの錫めっき軟銅線を用いて打数16、持数6の編組構造で外部導体層を形成し、この外部導体層の外周に厚さ0.12mmのFEPからなるジャケットを押出し被覆して形成したものであり、この従来の編組タイプ同軸ケーブルの外径は1,37mmとされている。
【0028】
そして、試験用ケーブルA〜Dは、巻回帯層14を巻回する角度θをそれぞれ変更しており、試験用ケーブルAは、巻回帯層14を同軸ケーブル1の長手軸方向に対して20度、試験用ケーブルBは、巻回帯層14を同軸ケーブル1の長手軸方向に対して25度、試験用ケーブルCは、巻回帯層14を同軸ケーブル1の長手軸方向に対して30度、試験用ケーブルDは、巻回帯層14を同軸ケーブル1の長手軸方向に対して40度、の角度でそれぞれ螺旋状に巻回したものとなっている。
【0029】
図2、図3から明らかなように、本実施形態の同軸ケーブル1の特徴的な構成を有する試験用ケーブルA〜Dは、編組タイプ同軸ケーブルに比べて全体的にシールド効果が高いことが判る。また、試験用ケーブルA〜Dを比較すると、試験用ケーブルAは、信号が10MHz時のシールド効果は−51.7dB、信号が100MHz時のシールド効果は−48.5dBであり、試験用ケーブルBは、信号が10MHz時のシールド効果は−52.5dB、信号が100MHz時のシールド効果は−49.8dBであり、試験用ケーブルCは、信号が10MHz時のシールド効果は−53.4dB、信号が100MHz時のシールド効果は−50.0dBであり、試験用ケーブルDは、信号が10MHz時のシールド効果は−55.1dB、信号が100MHz時のシールド効果は−51.1dBである。
【0030】
従って、本実施形態の同軸ケーブル1は、従来の同軸ケーブルと比べて高いシールド効果を備えており、また、巻回帯層14を巻回する角度θが大きい方がより高いシールド効果が得られることが判る。つまり、シールド試験の結果からは、巻回帯層14を巻回する角度θは20度以上が好ましいと言える。ただし、巻回する角度θが大きくなると、巻回帯層14のALPET14aの幅が角度θに反比例して狭くなるため、同軸ケーブル1の生産性が低下する。そのため、巻回帯層14を巻回する角度θは、生産性を考慮すると50度が上限になる。従って、シールド試験では、巻回帯層14を巻回する角度θは20度以上50度以下が好ましい角度といえる。次に巻き付け試験について、図4〜10を用いて詳細に説明する。
【0031】
図4は、巻き付け試験の試験法を説明するための図である。まず、図4を用いて、巻き付け試験の試験方法について説明する。巻き付け試験は、試験用ケーブルを外径10mmのパイプ20に10mmの間隔を設けるようにして12回巻き付け、この巻き付けた試験用ケーブルに5GHzと6GHzの2種類の信号を挿入して信号の減衰量を測定したものである。
【0032】
この、巻き付け試験では、図2、3で説明したシールド試験と同一の試験用ケーブルA〜Dを使用した試験と、シールド試験とは異なる試験用ケーブルF〜Hを使用した試験との2種類の巻き付け試験を行った。まず、シールド試験と同一の試験用ケーブルA〜Dを使用した試験の結果について図5〜7を用いて説明する。
【0033】
図5は、巻き付け試験の試験結果を示す表、図6は、巻き付け試験の減衰量と巻回帯層14の巻回した角度θとの関係を示す図、図7は、巻き付け試験の減衰量の変動値と巻回帯層14の巻回した角度θとの関係を示す図である。なお、この巻き付け試験では、比較の為に従来使用されていた編組タイプ同軸ケーブルにも同様に試験を行った。
【0034】
図5から明らかなように、編組タイプ同軸ケーブルの減衰量が5GHz時に3.67dB/m、6GHz時に4.03dB/mであるのに対し、本実施形態の同軸ケーブル1の特徴的な構成を有する試験用ケーブルA〜Dでは、試験用ケーブルAの減衰量は、5GHz時に3.360dB/m、6GHz時に3.692dB/mであり、試験用ケーブルBの減衰量は、5GHz時に3.305dB/m、6GHz時に3.626dB/mであり、試験用ケーブルCの減衰量は、5GHz時に3.233dB/m、6GHz時に3.554dB/mであり、試験用ケーブルDの減衰量は、5GHz時に3.192dB/m、6GHz時に3.510dB/mである。従って、本実施形態の同軸ケーブル1の特徴的な構成を有する試験用ケーブルA〜Dは、編組タイプ同軸ケーブルに比べて全体的に減衰量が低減していることが判る。
【0035】
また、図5〜7から明らかなように、試験用ケーブルA〜Dの中では、巻回帯層14を同軸ケーブルの長手軸方向に対して40度で螺旋状に巻回している試験用ケーブルDが、減衰量及び減衰量変動の値が最も小さくなっており、試験用ケーブルAと試験用ケーブルDとでは、減衰量に約0.2dB/mの差が生じる。従って、本実施形態の同軸ケーブル1は、従来の同軸ケーブルと比べて減衰量が低減しており、また、巻回帯層14を巻回する角度θを大きくすると減衰量がより低減することが判る。
【0036】
また、試験用ケーブルCの減衰量と試験用ケーブルDの減衰量の差は、約0.04dB/mとその差が小さくなっており、減衰量変動は6GHz時では殆ど差がなくなっている。この事から減衰量の低減は、巻回帯層14を巻回する角度θが30度を過ぎると、減衰量の変化がほぼ横ばいになるので、この30度を境にある程度頭打ちになることが判る。そのため、巻回帯層14を巻回する角度θが40度以上であっても、減衰量の値は大きく変化することはなく、良好な状態を維持することができるものと思料する。そして、シールド試験の結果でも述べたように、巻回帯層14を巻回する角度θは、生産性を考慮すると50度が上限になる。
【0037】
また、本実施形態の同軸ケーブル1では、図5〜7から判る様に、減衰量が従来のものに比して大幅に向上すると共に、その変動量が小さくなる巻回帯層14の巻回する角度θは、約25度となる。
【0038】
以上、この減衰量試験の結果から、巻回帯層14を巻回する角度θは、下限は25度となり、50度が上限となる。そして、減衰量と生産性とを考慮にいれた場合、減衰量の変化がほぼ横ばいになっている30度以上40度以下が巻回帯層14を巻回する最も好ましい角度であるといえる。次に別の試験用ケーブルを用いた巻き付け試験について、図8〜10を用いて詳細に説明する。
【0039】
図8は、別の試験用ケーブルF〜Hを用いた巻き付け試験の試験結果を示す表、図9は、別の試験用ケーブルF〜Hを用いた巻き付け試験の減衰量と巻回帯層14の巻回した角度θとの関係を示す図、図10は、別の試験用ケーブルF〜Hを用いた巻き付け試験の減衰量の変動値と巻回帯層14の巻回した角度θとの関係を示す図である。
【0040】
この巻き付け試験で使用した3つの試験用ケーブルF〜Hの構成は、外径0.079mmの銀めっき軟銅線を7本撚り合わせて中心導体11を形成し、この中心導体11の外周にFEPを被覆して外径0.7mmとなるように誘電体層12を形成し、この誘電体層12の外周に導体素線13aにあたる外径0.05mmの錫めっき軟銅線を91本、同軸ケーブルの長手軸方向に対して8.3度の角度を与えて2重横巻きして外部導体層13を形成し、この外部導体層13の外周に、厚さ10μmのアルミ箔と厚さ12μmのPETとを厚さ2〜3μmのPVCを介して積層してなるALPET14aを螺旋状に巻回して巻回帯層14を形成し、この巻回帯層14の外周に厚さ0.12mのFEPからなるジャケット15を押出し被覆して形成したものであり、この試験用ケーブルF〜Hの外径は1,13mmとされている。
【0041】
そして、試験用ケーブルF〜Hは、巻回帯層14を巻回する角度θをそれぞれ変更しており、試験用ケーブルFは、巻回帯層14を同軸ケーブルの長手軸方向に対して19度、試験用ケーブルGは、巻回帯層14を同軸ケーブルの長手軸方向に対して25度、試験用ケーブルHは、巻回帯層14を同軸ケーブルの長手軸方向に対して32度、の角度でそれぞれ螺旋状に巻回したものとなっている。また、この減衰量試験で使用される比較試験用ケーブルEは、試験用ケーブルF〜Hに巻回帯層14が備えられていないものである。
【0042】
図8から明らかなように、比較試験用ケーブルEの減衰量が5GHz時に4.940dB/m、6GHz時に5.58dB/mであるのに対し、本実施形態の同軸ケーブル1の特徴的な構成を有する試験用ケーブルF〜Hでは、試験用ケーブルFの減衰量は、5GHz時に4.21dB/m、6GHz時に4.65dB/mであり、試験用ケーブルGの減衰量は、5GHz時に4.11dB/m、6GHz時に4.53dB/mであり、試験用ケーブルHの減衰量は、5GHz時に4.05dB/m、6GHz時に4.45dB/mである。従って、本実施形態の同軸ケーブル1の特徴的な構成を有する試験用ケーブルF〜Hは、比較試験用ケーブルEに比べて全体的に減衰量が低減していることが判る。
【0043】
また、図8〜10から明らかなように、試験用ケーブルF〜Hの中では、巻回帯層14を同軸ケーブルの長手軸方向に対して32度で螺旋状に巻回している試験用ケーブルHが、減衰量及び減衰量変動の値が最も小さくなっており、試験用ケーブルFと試験用ケーブルHとでは、減衰量に約0.2dB/mの差が生じる。従って、本実施形態の同軸ケーブル1は、従来の同軸ケーブルと比べて減衰量が低減しており、また、外部導体層13を2重横巻きにした場合でも、巻回帯層14を巻回する角度θを大きくすると減衰量がより低減することが判る。
【0044】
また、試験用ケーブルGの減衰量と試験用ケーブルHの減衰量の差は、約0.06dB/mとその差が小さくなっており、減衰量変動は、試験用ケーブルGと試験用ケーブルHとの間で殆ど差がなくなっている。この事から減衰量の低減は、巻回帯層14を巻回する角度θが25〜32度の間、言い換えれば約30度で、減衰量の変化がほぼ横ばいになるので、約30度である程度頭打ちになることが判る。そのため、巻回帯層14を巻回する角度θが32度以上であっても、減衰量の値は大きく変化することはなく、良好な状態を維持することができるものと思料する。そして、シールド試験の結果でも述べたように、巻回帯層14を巻回する角度θは、生産性を考慮すると50度が上限になる。
【0045】
また、本実施形態の同軸ケーブル1では、外部導体層が2重横巻きの場合、図8〜10から判る様に、減衰量が従来のものに比して大幅に向上すると共に、その変動量が小さくなる巻回帯層14の巻回する角度θは、約25度となる。
【0046】
以上、この減衰量試験の結果から、巻回帯層14を巻回する角度θは、下限は25度となり、50度が上限となる。そして、減衰量と生産性とを考慮にいれた場合、減衰量の変化がほぼ横ばいになっている30度以上40度以下が巻回帯層14を巻回する最も好ましい角度であるといえる。
【0047】
以上、3種類の試験結果から、巻回帯層14を巻回する所定の角度θの範囲は、求められる減衰量の値から下限が25度、生産性の観点から上限が50度となる。そして、好ましい範囲としては、30度以上40度以下が巻回帯層14を巻回する最も好ましい角度であるといえる。
【0048】
以上、上述した本実施形態の同軸ケーブル1は、外部導体層13が、導体素線13aにより横巻き形成されているので、可撓性に富むと共に、従来の同軸ケーブルと比べて高いシールド効果を備えており、また減衰量も低減していることが判る。そして、巻回帯層14を巻回する角度θを大きくすることにより、シールド効果がより向上し、減衰量がより低減することが判る。これは、巻回帯層14を巻回する角度θを大きくするとその分巻回帯層14による外部導体層13を締め付ける力が強くなるため、外部導体層13の導体素線13a同士の密着度がその分向上するためである。導体素線13a同士の密着度が向上すると、導体素線13a同士の間に隙間が出来難くなる。そのため、導体素線13a同士の間に隙間が出来ることによるシールド効果の低減を防止することが可能となり、シールド効果が向上する。さらに、この巻回帯層14は、ALPET14aによって形成されていることから、この巻回帯層14自体もシールドとして作用することになる。
【0049】
これにより、本実施形態の同軸ケーブル1は、外部導体層13と、巻回帯層14との2つのシールド効果を持つ層を備えることになり、さらに、外部導体層13の導体素線13aが巻回帯層14によって締め付けられるので、導体素線13a同士の密着度を向上させ、さらにその密着状態が維持されることになり、外部導体層13のシールド効果をより高めることが可能となり、さらに減衰量の低減を図ることもできる。
【0050】
なお、本実施形態では、巻回帯層14は、金属化テープであるALPET14aによって形成されていたが、本発明の巻回帯層はこれに限定されるものではない。例えば、外部導体層を締め付けることが可能であれば、どのようなものでも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の同軸ケーブルは、どのような機器でも適用可能である。例えば、コンピュータ、計算機、携帯電話等の電子機器でも適用可能であり、さらに、自動車、飛行機等の制御機器を狭小部に搭載する必要のある機械の制御回路にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態における同軸ケーブル1を示す図である。
【図2】同軸ケーブル1のシールド試験の結果を示す第1の図である。
【図3】同軸ケーブル1のシールド試験の結果を示す第2の図である。
【図4】同軸ケーブル1の巻き付け試験の試験方法を示す図である。
【図5】同軸ケーブル1の巻き付け試験の結果を示す第1の図である。
【図6】同軸ケーブル1の巻き付け試験の結果を示す第2の図である。
【図7】同軸ケーブル1の巻き付け試験の結果を示す第3の図である。
【図8】外部導体層が2重横巻きになっている同軸ケーブル1の巻き付け試験の結果を示す第1の図である。
【図9】外部導体層が2重横巻きになっている同軸ケーブル1の巻き付け試験の結果を示す第2の図である。
【図10】外部導体層が2重横巻きになっている同軸ケーブル1の巻き付け試験の結果を示す第3の図である。
【符号の説明】
【0053】
1 同軸ケーブル、
11 中心導体(内部導体)、
11a 導体、
12 誘電体層、
12a 誘電体、
13 外部導体層、
13a 導体素線、
14 巻回帯層、
14a ALPET(巻回帯)、
15 ジャケット(保護被膜層)、
20 パイプ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体と、
当該内部導体の外周に設けられた誘電体層と、
当該誘電体層の外周に設けられた外部導体層と、
当該外部導体層の外周に設けられた保護被膜層とを備えた同軸ケーブルであって、
前記外部導体層と前記保護被膜層との間には、当該外部導体層を巻回する巻回帯からなる巻回帯層が設けられており、
前記巻回帯層は、前記同軸ケーブルの長手軸方向に対して、所定の角度で巻回されていることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記巻回帯は金属化テープであることを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記所定の角度は、25度〜50度の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記外部導体層は、1重横巻きされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記外部導体層は、2重横巻きされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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