同軸コネクタ用回転機構部品および同軸コネクタ
【課題】回転機構を有する同軸コネクタの電気的特性および機械的特性の双方において信頼性の向上を図ることができる同軸コネクタ用回転機構部品を提供する。
【解決手段】それぞれ基端部がベース部材26に接続されると共に先端部が自由端となるように互いに離間して配設された複数のスプリング部材27のうち、一部のスプリング部材27は、電気的接続のために先端部近傍の凸部27aが所定の接触力で外部導体に接触し、残部のスプリング部材27は、外部導体の回転トルク制御のために基端部近傍の凸部27bがより大きな接触力で外部導体に接触する。
【解決手段】それぞれ基端部がベース部材26に接続されると共に先端部が自由端となるように互いに離間して配設された複数のスプリング部材27のうち、一部のスプリング部材27は、電気的接続のために先端部近傍の凸部27aが所定の接触力で外部導体に接触し、残部のスプリング部材27は、外部導体の回転トルク制御のために基端部近傍の凸部27bがより大きな接触力で外部導体に接触する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同軸コネクタ用回転機構部品に係り、特に、回転機構を有する同軸コネクタにおいて回転トルク制御と電気的接続を行うための回転機構部品および同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、同軸ケーブルを直角等の所定の角度をなして接続するための、いわゆる同軸アングルコネクタは通信機器等において広く使用されている。この種の同軸アングルコネクタでは、例えば図10に示されるように、コネクタレセプタクル1とアングルタイプのコネクタプラグ2とを組み合わせて、これらを嵌合させることで、コネクタプラグ2に接続された同軸ケーブル3をコネクタプラグ2と共に回転させることが可能となる。
このとき、レセプタクル外部導体4とプラグ外部導体5が互いに接触して電気的に接続されると共に、図示しないがコネクタレセプタクル1の中心導体とコネクタプラグ2の中心導体が互いに接触して電気的に接続され、この状態でコネクタプラグ2がコネクタレセプタクル1の中心導体を中心として回転することとなる。
【0003】
ところが、従来の同軸アングルコネクタにおいては、レセプタクル外部導体4とプラグ外部導体5との接触力が、中心導体を中心とした回転運動に対応するように設計されていないため、コネクタプラグ2の回転に伴い、電気接点部の摩擦に起因して電気接点部のメッキが損傷または摩耗し、接触抵抗が増大するという問題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1〜3には、図11に示されるように、レセプタクル外部導体を接続固定するための導電性の回転取付体をプラグ外部導体の先端外周部に回転自在に配設し、これら回転取付体とプラグ外部導体との間にリング状スプリングを介在させた同軸コネクタが提案されている。リング状スプリングにより、回転取付体とプラグ外部導体との間の回転トルク制御と電気的接続がなされ、回転取付体にレセプタクル外部導体を取り付けることで、コネクタレセプタクルとコネクタプラグとが互いに回転運動可能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−75551号公報
【特許文献2】特開2003−45585号公報
【特許文献3】特開2003−45587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に開示されているリング状スプリングでは、図11に示されるように、接触箇所が回転取付体とプラグ外部導体との間の回転トルク制御と電気的接続の双方の機能を担っている。しかしながら、回転トルク制御と電気的接続とでは最適な接触力が異なり、一般に、回転トルク制御の方が電気的接続よりも大きな接触力を必要とする。
【0007】
このため、リング状スプリングの弾性力を回転トルク制御に適した値に設定すると、接触箇所における摩擦が大きくなるので、コネクタレセプタクルとコネクタプラグとの回転運動に伴って次第にメッキが損傷または摩耗して接触抵抗が増大し、同軸コネクタとしての電気的特性の低下を来すおそれがあった。
逆に、リング状スプリングの弾性力を電気的接続に適した値に設定すると、接触箇所における摩擦は小さく、メッキの損傷または摩耗に起因した接触抵抗の増大を回避することはできるが、回転トルクが小さくなるので、コネクタレセプタクルとコネクタプラグとの間で円滑な回転運動を行うことが困難となり、回転機構における機械的特性が低下するという問題を生じてしまう。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、回転機構を有する同軸コネクタの電気的特性および機械的特性の双方において信頼性の向上を図ることができる同軸コネクタ用回転機構部品を提供することを目的とする。
また、この発明は、このような同軸コネクタ用回転機構部品を用いた同軸コネクタを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る同軸コネクタ用回転機構部品は、外周部が絶縁部材で覆われた中心導体が外部導体の円筒状の挿通部内に挿通されると共に外部導体が中心導体を中心として回転自在に配置された同軸コネクタに用いられる導電性の回転機構部品であって、絶縁部材の外周部を囲むと共に絶縁部材の外周部に固定された環状のベース部材と、それぞれ基端部がベース部材に接続されると共に先端部が自由端となるように外部導体の挿通部の内周面に沿って互いに周方向に離間し且つベース部材から中心導体の軸方向に延在する複数のスプリング部材とを備え、複数のスプリング部材のうち、一部のスプリング部材は、それぞれ電気的接続のために長手方向における第1の部位が所定の接触力で外部導体の挿通部の内周面に接触し、残部のスプリング部材は、それぞれ中心導体を中心とする外部導体の回転トルク制御のために第1の部位とは異なる第2の部位が前記所定の接触力よりも大きな接触力で外部導体の挿通部の内周面に接触するように曲げ加工されたものである。
【0010】
複数のスプリング部材は、好ましくは、それぞれ第1の部位が先端部側に配置され、第2の部位が第1の部位よりも基端部側に配置されている。
また、複数のスプリング部材は、それぞれ第1の部位と第2の部位に互いに異なる表面処理が施されたものを使用することができる。
【0011】
この発明に係る同軸コネクタは、上述した同軸コネクタ用回転機構部品を用いて同軸ケーブルを引き出し方向回転自在に接続するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、回転機構を有しながらも電気的特性および機械的特性の双方において高い信頼性を有する同軸コネクタを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に係る同軸コネクタを示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る同軸コネクタを示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る同軸コネクタのコネクタレセプタクルを示す正面図である。
【図4】実施の形態に係る同軸コネクタのコネクタレセプタクルを示す側面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】実施の形態に係る同軸コネクタに用いられた回転機構部品を示す斜視図である。
【図7】回転機構部品の複数のスプリング部材を示す平面図である。
【図8】電気的接続用のスプリング部材と外部導体との関係を示す側面断面図である。
【図9】回転トルク制御用のスプリング部材と外部導体との関係を示す側面断面図である。
【図10】従来の同軸コネクタの構成を示す斜視図である。
【図11】従来の他の同軸コネクタの構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および図2に、この発明の実施の形態に係る同軸コネクタの構成を示す。同軸コネクタは、コネクタレセプタクル11と、このコネクタレセプタクル11に嵌合されるコネクタプラグ12から構成されている。コネクタレセプタクル11は、ラック等の支持体13上にボルト14により固定され、コネクタプラグ12には、同軸ケーブル15が接続されている。
【0015】
コネクタレセプタクル11は、図3および図4に示されるように、支持体13に固定される固定部16と、固定部16に対して回転自在に配設された回転部17とを有している。固定部16は、支持体13の表面上に配置されて支持体13に固定される環状の第1の外殻部材18を有し、第1の外殻部材18の中心軸上に外周部が絶縁部材19で覆われた第1の中心コンタクト20が配置されている。一方、回転部17は、第1の外殻部材18の中心軸と共通の中心軸を有するほぼ円筒状の第2の外殻部材21と、この第2の外殻部材21の側部に固定されると共に第2の外殻部材21の中心軸に対して直角方向の中心軸を有する、ほぼ円筒状の第3の外殻部材22とを有している。図3に示されるように、第3の外殻部材22の中心軸上には、外周部が絶縁部材23で覆われた第2の中心コンタクト24の一端部が配置されている。
【0016】
図5に示されるように、第1の外殻部材18は、中心軸上に形成された貫通孔18aを有し、貫通孔18aの下端内周面に同心円状の2段の段部18bおよび18cが形成されている。一方、第2の外殻部材21の下端外周部には、フランジ部21aが形成されており、このフランジ部21aが第1の外殻部材18の内側の段部18bに当接するように第2の外殻部材21がわずかなクリアランスを介して第1の外殻部材18の貫通孔18a内に挿入されている。
また、第1の外殻部材18の外側の段部18cに回転機構部品25の環状のベース部材26が嵌入固定されており、第2の外殻部材21は、フランジ部21aが第1の外殻部材18の段部18bと回転機構部品25のベース部材26との間にわずかなクリアランスを介して挟まれることで、第1の外殻部材18から脱落することなく第1の外殻部材18に対して回転自在に保持されている。
【0017】
第2の外殻部材21の内部には、下方が開放された円筒状の挿通部21bが形成されると共に、挿通部21bの内周面に環状の段部21cが形成され、この段部21cを境に挿通部21bの下半部が上半部よりも大きな内径を有している。
また、回転機構部品25のベース部材26の中心部分に貫通孔26aが形成されており、第1の中心コンタクト20の外周部を覆う絶縁部材19の上半部が第2の外殻部材21の挿通部21bの下半部に挿入された状態でベース部材26の貫通孔26a内に嵌入固定されている。
【0018】
回転機構部品25は、この発明の特徴をなすもので、第1の外殻部材18に固定された環状のベース部材26から第1の外殻部材18の中心軸方向、すなわち、第1の中心コンタクト20の軸方向に延在する複数のスプリング部材27を有しており、これらのスプリング部材27が第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面と絶縁部材19の外周面との間に挿入されている。
【0019】
また、絶縁部材19により外周部が覆われている第1の中心コンタクト20の上端部は、所定の長さにわたって径方向に断面円弧状の2つの分割部分28に分かれている。また、一端部が第3の外殻部材22の中心軸上に配置された第2の中心コンタクト24の他端部は、第2の外殻部材21の挿通部21b内を通って第1の中心コンタクト20の上端部に至り、2つの分割部分28に接触しつつこれら分割部分28の間に挿入されている。これにより、第2の中心コンタクト24の他端部が第1の中心コンタクト20の上端部に回転自在に連結され、電気的接続がなされている。
【0020】
回転機構部品25の斜視図を図6に示す。互いに同一形状に形成された8本のスプリング部材27が環状のベース部材26の貫通孔26aの周りに互いに周方向に均等な間隔で離間して配置されている。これらのスプリング部材27は、それぞれ基端部がベース部材26に接続されると共に先端部が自由端となり、先端部近傍に回転機構部品25の径方向外方へ向かって隆起した凸部27aが形成されると共に、基端部近傍にも同様に回転機構部品25の径方向外方へ向かって隆起した凸部27bが形成されている。
【0021】
8本のスプリング部材27は、第2の外殻部材21との電気的接続の機能を担うスプリング部材S1と、第2の外殻部材21に対する回転トルク制御の機能を担うスプリング部材S2とに分かれている。この実施の形態においては、図7に示されるように、8本のスプリング部材27のうち、ベース部材26の貫通孔26aを挟んで互いに対向する一対のスプリング部材27が電気的接続を行うためのスプリング部材S1として、残る6本のスプリング部材27が回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2としてそれぞれ用いられている。
【0022】
電気的接続を行うためのスプリング部材S1は、図8に示されるように、基端部近傍に形成された凸部27bが第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触することなく、先端部近傍に形成された凸部27aのみが挿通部21bの内周面に接触し、逆に、回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2は、図9に示されるように、先端部近傍に形成された凸部27aが第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触することなく、基端部近傍に形成された凸部27bのみが挿通部21bの内周面に接触している。
スプリング部材S1の先端部近傍の凸部27aが、この発明における電気的接続のための第1の部位を構成し、スプリング部材S2の基端部近傍の凸部27bが、この発明における回転トルク制御のための第2の部位を構成している。
【0023】
さらに、スプリング部材S1の凸部27aと第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面との接触力は、電気的接続に適した値に設定され、一方、スプリング部材S2の凸部27bと第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面との接触力は、回転トルク制御に適した値に設定される。一般に、回転トルク制御の方が電気的接続よりも大きな接触力を必要とするため、回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2の凸部27bにおける接触力の方が電気的接続を行うためのスプリング部材S1の凸部27aにおける接触力よりも大きく設定されている。
【0024】
回転機構部品25の8本のスプリング部材27は、互いに同一形状に形成されているが、上述したように、電気的接続を行うための2本のスプリング部材S1は、それぞれ先端部近傍の凸部27aのみが所定の接触力で第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触し、回転トルク制御を行うための6本のスプリング部材S2は、それぞれ基端部近傍の凸部27bのみが電気的接続を行うためのスプリング部材S1の接触力よりも大きな接触力で第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触するように、曲げ加工が施されている。
【0025】
なお、第1の外殻部材18、第2の外殻部材21、第3の外殻部材22、第1の中心コンタクト20および第2の中心コンタクト24は、いずれも導電性に優れた金属等の材料から形成されており、第1の中心コンタクト20がこの発明における中心導体を、第2の外殻部材21がこの発明における外部導体を、それぞれ構成している。
回転機構部品25は、導電性を有すると共に所望の接触力を得るために優れたバネ性を有する材料から形成されることが好ましく、例えばリン青銅からなる丸棒材を切削加工した後、上記のような曲げ加工を施すことにより、製造することができる。さらに、第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面との接触箇所における良好な電気的特性および機械的特性を得るために、回転機構部品25の表面上に金メッキが施されている。
【0026】
次に、この実施の形態に係る同軸コネクタの作用について説明する。
この同軸コネクタのコネクタレセプタクル11は、以上のような構成を有するため、回転機構部品25の6本のスプリング部材S2の基端部近傍の凸部27bがそれぞれ回転トルク制御に適した接触力で第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触することで、第2の外殻部材21は第3の外殻部材22と共に第1の外殻部材18の中心軸の回りに全周にわたって円滑に回転運動を行うことが可能となる。このとき、回転機構部品25の2本のスプリング部材S1の先端部近傍の凸部27aが、上記のスプリング部材S2における接触力とは異なる、電気的接続に適した接触力でそれぞれ第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触するので、回転機構部品25と第2の外殻部材21とを小さな接触抵抗で良好に電気的に接続することが可能となる。すなわち、第1の外殻部材18から回転機構部品25のベース部材26、2本のスプリング部材S1および第2の外殻部材21を介して第3の外殻部材22まで常時良好な電気的接続がなされる。
【0027】
なお、第1の中心コンタクト20と第2の中心コンタクト24との間では、回転トルク制御を行う必要がないので、第2の中心コンタクト24の他端部が第1の中心コンタクト20の上端部の2つの分割部分28に接触しつつこれら分割部分28の間に挿入されるだけで、これら第1の中心コンタクト20と第2の中心コンタクト24が回転自在に連結されると共に良好な電気的接続がなされる。
【0028】
コネクタレセプタクル11の第3の外殻部材22にコネクタプラグ12を嵌合することにより、図1に示されるように、コネクタプラグ12を360度円滑に回転させることができ、これに伴ってコネクタプラグ12に接続された同軸ケーブル15の引き出し方向を自由に回転させることが可能となる。
第2の外殻部材21との電気的接続と第2の外殻部材21の回転運動に対する回転トルク制御とを互いに異なるスプリング部材S1およびS2を介して行うため、それぞれ最適な接触力に設定することが容易となり、電気的特性および機械的特性の双方において信頼性の高い同軸コネクタが実現される。
【0029】
特に、回転機構部品25の複数のスプリング部材27は、それぞれ基端部がベース部材26に接続されると共に先端部が自由端となっているので、電気的接続のためのスプリング部材S1と回転トルク制御のためのスプリング部材S2とで互いに異なる接触力を個別に設定することが容易となる。
また、一つの回転機構部品25で電気的接続のための接触力と回転トルク制御のための接触力の双方を個別に設定することができるので、少ない部品点数で電気的特性および機械的特性を共に向上させることが可能となる。
【0030】
なお、上記の実施の形態においては、回転機構部品25の8本のスプリング部材27のうち2本を電気的接続のためのスプリング部材S1として使用し、残る6本を回転トルク制御のためのスプリング部材S2として使用したが、これに限るものではなく、少なくとも1本のスプリング部材S1で電気的接続を行えばよい。ただし、複数本のスプリング部材S1を用いて複数の電気接点部でそれぞれ電気的接続を行うようにした方が、電気的特性の信頼性向上のために好ましい。
また、回転トルク制御のためには、3本以上のスプリング部材S2で第2の外殻部材21にトルクをかけることが好ましく、さらに、これら3本以上のスプリング部材S2は、トルクのバランスをとるために第2の外殻部材21の回転方向に対称に配置されることが好ましい。
回転機構部品25のスプリング部材27の本数は、8本には限らない。ただし、より多数のスプリング部材27を有する方が、全体の接触点が増加するため、1つの接触点あたりの接触力を小さく設定することができ、各接触点における摩擦が低減されるので、電気的特性および機械的特性の双方において信頼性のさらなる向上を図ることができる。
【0031】
上記の実施の形態では、回転機構部品25の表面上に金メッキが施されていたが、これに限るものではなく、例えば、特に電気的特性の向上を重視する場合には、各スプリング部材27の先端部近傍に形成された凸部27aの表面に金メッキを施す一方、基端部近傍に形成された凸部27bの表面にはニッケルメッキを施すこともできる。また、特に回転機構の機械的特性の向上を重視する場合には、各スプリング部材27の基端部近傍の凸部27bの表面に金メッキを施す一方、先端部近傍の凸部27aの表面にニッケルメッキを施してもよい。このようにすれば、製造コストを低減することが可能となる。
【0032】
複数のスプリング部材27はそれぞれベース部材26から同一方向、すなわちベース部材26に対して垂直方向に同じ長さで立設されているので、ディッピング処理により各スプリング部材27の先端部付近あるいは各スプリング部材27の全体に同時にメッキを施すことができる。
また、各スプリング部材27の基端部近傍の凸部27bは、回転トルク制御を行うためのものであり、電気的接続を行う必要がないので、導電性を有しない被膜を表面上に形成することもできる。例えば、フッ素樹脂等からなる被膜を形成すれば、凸部27bの表面における摩擦を低減することが可能となる。
【0033】
電気的接続を行うためのスプリング部材S1では先端部近傍の凸部27aのみが接触点となるので、基端部近傍の凸部27bを形成する必要はなく、また、回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2では基端部近傍の凸部27bのみが接触点となるので、基端部近傍の凸部27bよりも先端側の部位を形成する必要がない。このため、それぞれ独特の形状を有するスプリング部材S1とスプリング部材S2を形成することもできる。ただし、上記の実施の形態のように、複数のスプリング部材27をそれぞれ同一形状に形成した後、電気的接続のためのスプリング部材S1と回転トルク制御のためのスプリング部材S2とで互いに異なる接触力が得られるように曲げ加工を施した方が、製造工程が簡単化され、容易に且つ安価に回転機構部品25を製造することができる。
【0034】
上記の実施の形態では、スプリング部材S1の先端部近傍の凸部27aが電気的接続のための第1の部位を構成し、スプリング部材S2の基端部近傍の凸部27bが回転トルク制御のための第2の部位を構成していたが、これに限るものではなく、例えば逆に、各スプリング部材の先端部近傍に回転トルク制御のための第2の部位を設定し、基端部近傍に電気的接続のための第1の部位を設定することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 コネクタレセプタクル、2 コネクタプラグ、3 同軸ケーブル、4 レセプタクル外部導体、5 プラグ外部導体、11 コネクタレセプタクル、12 コネクタプラグ、13 支持体、14 ボルト、15 同軸ケーブル、16 固定部、17 回転部、18 第1の外殻部材、18a,26a 貫通孔、18b,18c,21c 段部、19,23 絶縁部材、20 第1の中心コンタクト、21 第2の外殻部材、21a フランジ部、21b 挿通部、22 第3の外殻部材、24 第2の中心コンタクト、25 回転機構部品、26 ベース部材、27 スプリング部材、27a,27b 凸部、28 分割部分、S1 電気的接続を行うためのスプリング部材、S2 回転トルク制御を行うためのスプリング部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は、同軸コネクタ用回転機構部品に係り、特に、回転機構を有する同軸コネクタにおいて回転トルク制御と電気的接続を行うための回転機構部品および同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、同軸ケーブルを直角等の所定の角度をなして接続するための、いわゆる同軸アングルコネクタは通信機器等において広く使用されている。この種の同軸アングルコネクタでは、例えば図10に示されるように、コネクタレセプタクル1とアングルタイプのコネクタプラグ2とを組み合わせて、これらを嵌合させることで、コネクタプラグ2に接続された同軸ケーブル3をコネクタプラグ2と共に回転させることが可能となる。
このとき、レセプタクル外部導体4とプラグ外部導体5が互いに接触して電気的に接続されると共に、図示しないがコネクタレセプタクル1の中心導体とコネクタプラグ2の中心導体が互いに接触して電気的に接続され、この状態でコネクタプラグ2がコネクタレセプタクル1の中心導体を中心として回転することとなる。
【0003】
ところが、従来の同軸アングルコネクタにおいては、レセプタクル外部導体4とプラグ外部導体5との接触力が、中心導体を中心とした回転運動に対応するように設計されていないため、コネクタプラグ2の回転に伴い、電気接点部の摩擦に起因して電気接点部のメッキが損傷または摩耗し、接触抵抗が増大するという問題があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1〜3には、図11に示されるように、レセプタクル外部導体を接続固定するための導電性の回転取付体をプラグ外部導体の先端外周部に回転自在に配設し、これら回転取付体とプラグ外部導体との間にリング状スプリングを介在させた同軸コネクタが提案されている。リング状スプリングにより、回転取付体とプラグ外部導体との間の回転トルク制御と電気的接続がなされ、回転取付体にレセプタクル外部導体を取り付けることで、コネクタレセプタクルとコネクタプラグとが互いに回転運動可能に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−75551号公報
【特許文献2】特開2003−45585号公報
【特許文献3】特開2003−45587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に開示されているリング状スプリングでは、図11に示されるように、接触箇所が回転取付体とプラグ外部導体との間の回転トルク制御と電気的接続の双方の機能を担っている。しかしながら、回転トルク制御と電気的接続とでは最適な接触力が異なり、一般に、回転トルク制御の方が電気的接続よりも大きな接触力を必要とする。
【0007】
このため、リング状スプリングの弾性力を回転トルク制御に適した値に設定すると、接触箇所における摩擦が大きくなるので、コネクタレセプタクルとコネクタプラグとの回転運動に伴って次第にメッキが損傷または摩耗して接触抵抗が増大し、同軸コネクタとしての電気的特性の低下を来すおそれがあった。
逆に、リング状スプリングの弾性力を電気的接続に適した値に設定すると、接触箇所における摩擦は小さく、メッキの損傷または摩耗に起因した接触抵抗の増大を回避することはできるが、回転トルクが小さくなるので、コネクタレセプタクルとコネクタプラグとの間で円滑な回転運動を行うことが困難となり、回転機構における機械的特性が低下するという問題を生じてしまう。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、回転機構を有する同軸コネクタの電気的特性および機械的特性の双方において信頼性の向上を図ることができる同軸コネクタ用回転機構部品を提供することを目的とする。
また、この発明は、このような同軸コネクタ用回転機構部品を用いた同軸コネクタを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る同軸コネクタ用回転機構部品は、外周部が絶縁部材で覆われた中心導体が外部導体の円筒状の挿通部内に挿通されると共に外部導体が中心導体を中心として回転自在に配置された同軸コネクタに用いられる導電性の回転機構部品であって、絶縁部材の外周部を囲むと共に絶縁部材の外周部に固定された環状のベース部材と、それぞれ基端部がベース部材に接続されると共に先端部が自由端となるように外部導体の挿通部の内周面に沿って互いに周方向に離間し且つベース部材から中心導体の軸方向に延在する複数のスプリング部材とを備え、複数のスプリング部材のうち、一部のスプリング部材は、それぞれ電気的接続のために長手方向における第1の部位が所定の接触力で外部導体の挿通部の内周面に接触し、残部のスプリング部材は、それぞれ中心導体を中心とする外部導体の回転トルク制御のために第1の部位とは異なる第2の部位が前記所定の接触力よりも大きな接触力で外部導体の挿通部の内周面に接触するように曲げ加工されたものである。
【0010】
複数のスプリング部材は、好ましくは、それぞれ第1の部位が先端部側に配置され、第2の部位が第1の部位よりも基端部側に配置されている。
また、複数のスプリング部材は、それぞれ第1の部位と第2の部位に互いに異なる表面処理が施されたものを使用することができる。
【0011】
この発明に係る同軸コネクタは、上述した同軸コネクタ用回転機構部品を用いて同軸ケーブルを引き出し方向回転自在に接続するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、回転機構を有しながらも電気的特性および機械的特性の双方において高い信頼性を有する同軸コネクタを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に係る同軸コネクタを示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る同軸コネクタを示す斜視図である。
【図3】実施の形態に係る同軸コネクタのコネクタレセプタクルを示す正面図である。
【図4】実施の形態に係る同軸コネクタのコネクタレセプタクルを示す側面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。
【図6】実施の形態に係る同軸コネクタに用いられた回転機構部品を示す斜視図である。
【図7】回転機構部品の複数のスプリング部材を示す平面図である。
【図8】電気的接続用のスプリング部材と外部導体との関係を示す側面断面図である。
【図9】回転トルク制御用のスプリング部材と外部導体との関係を示す側面断面図である。
【図10】従来の同軸コネクタの構成を示す斜視図である。
【図11】従来の他の同軸コネクタの構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および図2に、この発明の実施の形態に係る同軸コネクタの構成を示す。同軸コネクタは、コネクタレセプタクル11と、このコネクタレセプタクル11に嵌合されるコネクタプラグ12から構成されている。コネクタレセプタクル11は、ラック等の支持体13上にボルト14により固定され、コネクタプラグ12には、同軸ケーブル15が接続されている。
【0015】
コネクタレセプタクル11は、図3および図4に示されるように、支持体13に固定される固定部16と、固定部16に対して回転自在に配設された回転部17とを有している。固定部16は、支持体13の表面上に配置されて支持体13に固定される環状の第1の外殻部材18を有し、第1の外殻部材18の中心軸上に外周部が絶縁部材19で覆われた第1の中心コンタクト20が配置されている。一方、回転部17は、第1の外殻部材18の中心軸と共通の中心軸を有するほぼ円筒状の第2の外殻部材21と、この第2の外殻部材21の側部に固定されると共に第2の外殻部材21の中心軸に対して直角方向の中心軸を有する、ほぼ円筒状の第3の外殻部材22とを有している。図3に示されるように、第3の外殻部材22の中心軸上には、外周部が絶縁部材23で覆われた第2の中心コンタクト24の一端部が配置されている。
【0016】
図5に示されるように、第1の外殻部材18は、中心軸上に形成された貫通孔18aを有し、貫通孔18aの下端内周面に同心円状の2段の段部18bおよび18cが形成されている。一方、第2の外殻部材21の下端外周部には、フランジ部21aが形成されており、このフランジ部21aが第1の外殻部材18の内側の段部18bに当接するように第2の外殻部材21がわずかなクリアランスを介して第1の外殻部材18の貫通孔18a内に挿入されている。
また、第1の外殻部材18の外側の段部18cに回転機構部品25の環状のベース部材26が嵌入固定されており、第2の外殻部材21は、フランジ部21aが第1の外殻部材18の段部18bと回転機構部品25のベース部材26との間にわずかなクリアランスを介して挟まれることで、第1の外殻部材18から脱落することなく第1の外殻部材18に対して回転自在に保持されている。
【0017】
第2の外殻部材21の内部には、下方が開放された円筒状の挿通部21bが形成されると共に、挿通部21bの内周面に環状の段部21cが形成され、この段部21cを境に挿通部21bの下半部が上半部よりも大きな内径を有している。
また、回転機構部品25のベース部材26の中心部分に貫通孔26aが形成されており、第1の中心コンタクト20の外周部を覆う絶縁部材19の上半部が第2の外殻部材21の挿通部21bの下半部に挿入された状態でベース部材26の貫通孔26a内に嵌入固定されている。
【0018】
回転機構部品25は、この発明の特徴をなすもので、第1の外殻部材18に固定された環状のベース部材26から第1の外殻部材18の中心軸方向、すなわち、第1の中心コンタクト20の軸方向に延在する複数のスプリング部材27を有しており、これらのスプリング部材27が第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面と絶縁部材19の外周面との間に挿入されている。
【0019】
また、絶縁部材19により外周部が覆われている第1の中心コンタクト20の上端部は、所定の長さにわたって径方向に断面円弧状の2つの分割部分28に分かれている。また、一端部が第3の外殻部材22の中心軸上に配置された第2の中心コンタクト24の他端部は、第2の外殻部材21の挿通部21b内を通って第1の中心コンタクト20の上端部に至り、2つの分割部分28に接触しつつこれら分割部分28の間に挿入されている。これにより、第2の中心コンタクト24の他端部が第1の中心コンタクト20の上端部に回転自在に連結され、電気的接続がなされている。
【0020】
回転機構部品25の斜視図を図6に示す。互いに同一形状に形成された8本のスプリング部材27が環状のベース部材26の貫通孔26aの周りに互いに周方向に均等な間隔で離間して配置されている。これらのスプリング部材27は、それぞれ基端部がベース部材26に接続されると共に先端部が自由端となり、先端部近傍に回転機構部品25の径方向外方へ向かって隆起した凸部27aが形成されると共に、基端部近傍にも同様に回転機構部品25の径方向外方へ向かって隆起した凸部27bが形成されている。
【0021】
8本のスプリング部材27は、第2の外殻部材21との電気的接続の機能を担うスプリング部材S1と、第2の外殻部材21に対する回転トルク制御の機能を担うスプリング部材S2とに分かれている。この実施の形態においては、図7に示されるように、8本のスプリング部材27のうち、ベース部材26の貫通孔26aを挟んで互いに対向する一対のスプリング部材27が電気的接続を行うためのスプリング部材S1として、残る6本のスプリング部材27が回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2としてそれぞれ用いられている。
【0022】
電気的接続を行うためのスプリング部材S1は、図8に示されるように、基端部近傍に形成された凸部27bが第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触することなく、先端部近傍に形成された凸部27aのみが挿通部21bの内周面に接触し、逆に、回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2は、図9に示されるように、先端部近傍に形成された凸部27aが第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触することなく、基端部近傍に形成された凸部27bのみが挿通部21bの内周面に接触している。
スプリング部材S1の先端部近傍の凸部27aが、この発明における電気的接続のための第1の部位を構成し、スプリング部材S2の基端部近傍の凸部27bが、この発明における回転トルク制御のための第2の部位を構成している。
【0023】
さらに、スプリング部材S1の凸部27aと第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面との接触力は、電気的接続に適した値に設定され、一方、スプリング部材S2の凸部27bと第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面との接触力は、回転トルク制御に適した値に設定される。一般に、回転トルク制御の方が電気的接続よりも大きな接触力を必要とするため、回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2の凸部27bにおける接触力の方が電気的接続を行うためのスプリング部材S1の凸部27aにおける接触力よりも大きく設定されている。
【0024】
回転機構部品25の8本のスプリング部材27は、互いに同一形状に形成されているが、上述したように、電気的接続を行うための2本のスプリング部材S1は、それぞれ先端部近傍の凸部27aのみが所定の接触力で第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触し、回転トルク制御を行うための6本のスプリング部材S2は、それぞれ基端部近傍の凸部27bのみが電気的接続を行うためのスプリング部材S1の接触力よりも大きな接触力で第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触するように、曲げ加工が施されている。
【0025】
なお、第1の外殻部材18、第2の外殻部材21、第3の外殻部材22、第1の中心コンタクト20および第2の中心コンタクト24は、いずれも導電性に優れた金属等の材料から形成されており、第1の中心コンタクト20がこの発明における中心導体を、第2の外殻部材21がこの発明における外部導体を、それぞれ構成している。
回転機構部品25は、導電性を有すると共に所望の接触力を得るために優れたバネ性を有する材料から形成されることが好ましく、例えばリン青銅からなる丸棒材を切削加工した後、上記のような曲げ加工を施すことにより、製造することができる。さらに、第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面との接触箇所における良好な電気的特性および機械的特性を得るために、回転機構部品25の表面上に金メッキが施されている。
【0026】
次に、この実施の形態に係る同軸コネクタの作用について説明する。
この同軸コネクタのコネクタレセプタクル11は、以上のような構成を有するため、回転機構部品25の6本のスプリング部材S2の基端部近傍の凸部27bがそれぞれ回転トルク制御に適した接触力で第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触することで、第2の外殻部材21は第3の外殻部材22と共に第1の外殻部材18の中心軸の回りに全周にわたって円滑に回転運動を行うことが可能となる。このとき、回転機構部品25の2本のスプリング部材S1の先端部近傍の凸部27aが、上記のスプリング部材S2における接触力とは異なる、電気的接続に適した接触力でそれぞれ第2の外殻部材21の挿通部21bの内周面に接触するので、回転機構部品25と第2の外殻部材21とを小さな接触抵抗で良好に電気的に接続することが可能となる。すなわち、第1の外殻部材18から回転機構部品25のベース部材26、2本のスプリング部材S1および第2の外殻部材21を介して第3の外殻部材22まで常時良好な電気的接続がなされる。
【0027】
なお、第1の中心コンタクト20と第2の中心コンタクト24との間では、回転トルク制御を行う必要がないので、第2の中心コンタクト24の他端部が第1の中心コンタクト20の上端部の2つの分割部分28に接触しつつこれら分割部分28の間に挿入されるだけで、これら第1の中心コンタクト20と第2の中心コンタクト24が回転自在に連結されると共に良好な電気的接続がなされる。
【0028】
コネクタレセプタクル11の第3の外殻部材22にコネクタプラグ12を嵌合することにより、図1に示されるように、コネクタプラグ12を360度円滑に回転させることができ、これに伴ってコネクタプラグ12に接続された同軸ケーブル15の引き出し方向を自由に回転させることが可能となる。
第2の外殻部材21との電気的接続と第2の外殻部材21の回転運動に対する回転トルク制御とを互いに異なるスプリング部材S1およびS2を介して行うため、それぞれ最適な接触力に設定することが容易となり、電気的特性および機械的特性の双方において信頼性の高い同軸コネクタが実現される。
【0029】
特に、回転機構部品25の複数のスプリング部材27は、それぞれ基端部がベース部材26に接続されると共に先端部が自由端となっているので、電気的接続のためのスプリング部材S1と回転トルク制御のためのスプリング部材S2とで互いに異なる接触力を個別に設定することが容易となる。
また、一つの回転機構部品25で電気的接続のための接触力と回転トルク制御のための接触力の双方を個別に設定することができるので、少ない部品点数で電気的特性および機械的特性を共に向上させることが可能となる。
【0030】
なお、上記の実施の形態においては、回転機構部品25の8本のスプリング部材27のうち2本を電気的接続のためのスプリング部材S1として使用し、残る6本を回転トルク制御のためのスプリング部材S2として使用したが、これに限るものではなく、少なくとも1本のスプリング部材S1で電気的接続を行えばよい。ただし、複数本のスプリング部材S1を用いて複数の電気接点部でそれぞれ電気的接続を行うようにした方が、電気的特性の信頼性向上のために好ましい。
また、回転トルク制御のためには、3本以上のスプリング部材S2で第2の外殻部材21にトルクをかけることが好ましく、さらに、これら3本以上のスプリング部材S2は、トルクのバランスをとるために第2の外殻部材21の回転方向に対称に配置されることが好ましい。
回転機構部品25のスプリング部材27の本数は、8本には限らない。ただし、より多数のスプリング部材27を有する方が、全体の接触点が増加するため、1つの接触点あたりの接触力を小さく設定することができ、各接触点における摩擦が低減されるので、電気的特性および機械的特性の双方において信頼性のさらなる向上を図ることができる。
【0031】
上記の実施の形態では、回転機構部品25の表面上に金メッキが施されていたが、これに限るものではなく、例えば、特に電気的特性の向上を重視する場合には、各スプリング部材27の先端部近傍に形成された凸部27aの表面に金メッキを施す一方、基端部近傍に形成された凸部27bの表面にはニッケルメッキを施すこともできる。また、特に回転機構の機械的特性の向上を重視する場合には、各スプリング部材27の基端部近傍の凸部27bの表面に金メッキを施す一方、先端部近傍の凸部27aの表面にニッケルメッキを施してもよい。このようにすれば、製造コストを低減することが可能となる。
【0032】
複数のスプリング部材27はそれぞれベース部材26から同一方向、すなわちベース部材26に対して垂直方向に同じ長さで立設されているので、ディッピング処理により各スプリング部材27の先端部付近あるいは各スプリング部材27の全体に同時にメッキを施すことができる。
また、各スプリング部材27の基端部近傍の凸部27bは、回転トルク制御を行うためのものであり、電気的接続を行う必要がないので、導電性を有しない被膜を表面上に形成することもできる。例えば、フッ素樹脂等からなる被膜を形成すれば、凸部27bの表面における摩擦を低減することが可能となる。
【0033】
電気的接続を行うためのスプリング部材S1では先端部近傍の凸部27aのみが接触点となるので、基端部近傍の凸部27bを形成する必要はなく、また、回転トルク制御を行うためのスプリング部材S2では基端部近傍の凸部27bのみが接触点となるので、基端部近傍の凸部27bよりも先端側の部位を形成する必要がない。このため、それぞれ独特の形状を有するスプリング部材S1とスプリング部材S2を形成することもできる。ただし、上記の実施の形態のように、複数のスプリング部材27をそれぞれ同一形状に形成した後、電気的接続のためのスプリング部材S1と回転トルク制御のためのスプリング部材S2とで互いに異なる接触力が得られるように曲げ加工を施した方が、製造工程が簡単化され、容易に且つ安価に回転機構部品25を製造することができる。
【0034】
上記の実施の形態では、スプリング部材S1の先端部近傍の凸部27aが電気的接続のための第1の部位を構成し、スプリング部材S2の基端部近傍の凸部27bが回転トルク制御のための第2の部位を構成していたが、これに限るものではなく、例えば逆に、各スプリング部材の先端部近傍に回転トルク制御のための第2の部位を設定し、基端部近傍に電気的接続のための第1の部位を設定することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 コネクタレセプタクル、2 コネクタプラグ、3 同軸ケーブル、4 レセプタクル外部導体、5 プラグ外部導体、11 コネクタレセプタクル、12 コネクタプラグ、13 支持体、14 ボルト、15 同軸ケーブル、16 固定部、17 回転部、18 第1の外殻部材、18a,26a 貫通孔、18b,18c,21c 段部、19,23 絶縁部材、20 第1の中心コンタクト、21 第2の外殻部材、21a フランジ部、21b 挿通部、22 第3の外殻部材、24 第2の中心コンタクト、25 回転機構部品、26 ベース部材、27 スプリング部材、27a,27b 凸部、28 分割部分、S1 電気的接続を行うためのスプリング部材、S2 回転トルク制御を行うためのスプリング部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部が絶縁部材で覆われた中心導体が外部導体の円筒状の挿通部内に挿通されると共に前記外部導体が前記中心導体を中心として回転自在に配置された同軸コネクタに用いられる導電性の回転機構部品であって、
前記絶縁部材の外周部を囲むと共に前記絶縁部材の外周部に固定された環状のベース部材と、それぞれ基端部が前記ベース部材に接続されると共に先端部が自由端となるように前記外部導体の挿通部の内周面に沿って互いに周方向に離間し且つ前記ベース部材から前記中心導体の軸方向に延在する複数のスプリング部材とを備え、
前記複数のスプリング部材のうち、一部のスプリング部材は、それぞれ電気的接続のために長手方向における第1の部位が所定の接触力で前記外部導体の挿通部の内周面に接触し、残部のスプリング部材は、それぞれ前記中心導体を中心とする前記外部導体の回転トルク制御のために前記第1の部位とは異なる第2の部位が前記所定の接触力よりも大きな接触力で前記外部導体の挿通部の内周面に接触するように曲げ加工されていることを特徴とする同軸コネクタ用回転機構部品。
【請求項2】
前記複数のスプリング部材は、それぞれ前記第1の部位が前記先端部側に配置され、前記第2の部位が前記第1の部位よりも前記基端部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ用回転機構部品。
【請求項3】
前記複数のスプリング部材は、それぞれ前記第1の部位と前記第2の部位に互いに異なる表面処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の同軸コネクタ用回転機構部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の同軸コネクタ用回転機構部品を用いて同軸ケーブルを引き出し方向回転自在に接続することを特徴とする同軸コネクタ。
【請求項1】
外周部が絶縁部材で覆われた中心導体が外部導体の円筒状の挿通部内に挿通されると共に前記外部導体が前記中心導体を中心として回転自在に配置された同軸コネクタに用いられる導電性の回転機構部品であって、
前記絶縁部材の外周部を囲むと共に前記絶縁部材の外周部に固定された環状のベース部材と、それぞれ基端部が前記ベース部材に接続されると共に先端部が自由端となるように前記外部導体の挿通部の内周面に沿って互いに周方向に離間し且つ前記ベース部材から前記中心導体の軸方向に延在する複数のスプリング部材とを備え、
前記複数のスプリング部材のうち、一部のスプリング部材は、それぞれ電気的接続のために長手方向における第1の部位が所定の接触力で前記外部導体の挿通部の内周面に接触し、残部のスプリング部材は、それぞれ前記中心導体を中心とする前記外部導体の回転トルク制御のために前記第1の部位とは異なる第2の部位が前記所定の接触力よりも大きな接触力で前記外部導体の挿通部の内周面に接触するように曲げ加工されていることを特徴とする同軸コネクタ用回転機構部品。
【請求項2】
前記複数のスプリング部材は、それぞれ前記第1の部位が前記先端部側に配置され、前記第2の部位が前記第1の部位よりも前記基端部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ用回転機構部品。
【請求項3】
前記複数のスプリング部材は、それぞれ前記第1の部位と前記第2の部位に互いに異なる表面処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の同軸コネクタ用回転機構部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の同軸コネクタ用回転機構部品を用いて同軸ケーブルを引き出し方向回転自在に接続することを特徴とする同軸コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【公開番号】特開2011−204423(P2011−204423A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69557(P2010−69557)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
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