説明

同軸マイクロストリップ線路変換器

【目的】 外部へ不要な放射を生じさせることのない、良好な特性を有する同軸マイクロストリップ線路変換器を提供する。
【構成】 マイクロストリップ線路のストリップ導体側の上方から垂直に同軸にて給電する同軸マイクロストリップ線路変換器において、同軸コネクタ1と基板7の間に金属ブロック4を設置し、金属ブロック4の一方向側をくり抜いて、基板裏面のアース導体と金属ブロックとによりカットオフ導波管6を構成し、マイクロストリップ線路側出力端子とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、マイクロストリップ線路のストリップ導体側上方より垂直に同軸給電できる同軸マイクロストリップ線路変換器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図6aは、マイクロストリップ線路のストリップ導体側上方より垂直に同軸給電できる同軸マイクロストリップ線路変換器の従来の構成例である。図において、1は同軸コネクタ(以下、レセプタクルと呼ぶ)、3はレセプタクル1の中心導体(ピン)、7はマイクロストリップ線路等が形成されている基板、8は基板7上に形成されたマイクロストリップ線路、10はレセプタクル1と基板7との間に設置される小型の基板、11は基板7及び小型基板10の表裏のアースパターン同士を接続するスルーホール、12は基板7及び小型基板10により形成されるトリプレート線路、13は四隅の取付ネジであり、実装時、レセプタクル1と基板10及び基板7はこのネジ13により台座にとも締めされる。なお、図6(b)は基板10の裏面のパターンの一例を示している。
【0003】図6において、レセプタクル1の中心導体3は小型の基板10を貫通し、基板7上に形成されたマイクロストリップ線路8に接続される。一方、同軸コネクタの中心導体3と誘電体を隔てた外周に設けられた外導体は、小型の基板10の表面のアースパターンを介し、基板10及び基板7中のスルーホール11を経て、基板7の裏面のアースパターンに接続される。また、基板7上のマイクロストリップ線路8は、基板10と重なる部分(図6中の12)においてはトリプレート線路を構成しており、伝搬モードは同軸→トリプレート線路→マイクロストリップ線路の順に変換される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の同軸マイクロストリップ線路変換器は上記のように構成されているので、モード変換部において、電磁界が小型基板10及び基板7とレセプタクル1との接触面のすき間を伝搬し、外部へ放射して種々の不具合を生じさせるという問題点があった。
【0005】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、良好な特性を有し、かつ外部へ不要な放射を生じさせることのない、基板上方より垂直に同軸給電可能な構造の同軸マイクロストリップ線路変換器を得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係る同軸マイクロストリップ線路変換器は、同軸コネクタとマイクロストリップ線路等を形成した基板の間に金属ブロックを設置し、この金属ブロックをマイクロストリップ線路出力側方向に沿ってくりぬき、マイクロストリップ線路を形成した基板の裏面アース導体と上記金属ブロックとでカットオフ導波管を構成する。
【0007】また、カットオフ導波管の短絡面近傍のH面にステップを設け、低インピーダンス導波管とする。
【0008】更に、金属ブロックと基板の裏面アース導体とで構成されるカットオフ導波管の基板上に、フィルタ、増幅器などのマイクロ波回路素子を形成する。
【0009】
【作用】この発明における同軸マイクロストリップ線路変換器においては、マイクロストリップ線路の引出し方向以外は、基板のアースパターンと金属ブロックとが強固に接地され、また、線路の引出し方向は使用周波数に対しカットオフとなる導波管を構成するため、いずれの方向へも不要な電磁波の放射は発生しない。
【0010】
【実施例】実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、1は同軸コネクタ(レセプタクル)、3はレセプタクル1の中心導体(ピン)、2は中心導体3の回りのテフロン被覆、4は金属ブロック、5,6は金属ブロック4を切削して形成されたコネクタ取付穴及びカットオフ導波管部、7は基板、8は基板7上に形成されたマイクロストリップ線路、11は基板7の表裏のアースパターン同士を接続するスルーホール、13は金属ブロック4を基板7に取り付ける取付ネジである。
【0011】また、図2は図1のA−A線断面を示し、金属ブロック4及び基板7を縦方向に切断した図である。なお、14はケース等の接地導体である。
【0012】図1及び図2において、レセプタクル1は金属ブロック4のコネクタ取付穴5を貫通し、その中心導体3は基板7上に形成されたマイクロストリップ線路8に接続される。一方、同軸の外導体は金属ブロック4に接続されるとともに、基板7中のスルーホール11を介して接地導体14にも接続される。レセプタクル1から給電された同軸モードの電磁界は、マイクロストリップ線路のモードに変換されて8へ伝送されるが、モード変換部における電磁界の乱れにより放射電磁界が発生する。しかし、金属ブロック4のカットオフ導波管部6の幅W,長さLを適当に選べば、この放射電磁界はカットオフ導波管部6の内部で減衰を受け、カットオフ導波管部6の開口面から外部へ放射することなく、マイクロストリップ線路のモードのみがこの変換器から出力される。
【0013】実施例2.図3はこの発明の第2の実施例を示す斜視図であり、図4は図3のB−B線において金属ブロック4及び基板7を切断した断面図である。この実施例2においては、金属ブロック4のコネクタ取付穴5付近の導波管H面にステップを設けている。このような構造とすることにより、レセプタクル1のテフロン被覆2の露出部が少なくなり、基板7に接触する直前まで電磁界は同軸モードで伝搬する、従ってモード変換部における電磁界の乱れは実施例1の場合より小さくなり、変換器の特性(VSWR等)が改善される。
【0014】実施例3.図5はこの発明の第3の実施例を示す斜視図である。本実施例においては、カットオフ導波管部6内の基板7上に帯域通過フィルタ9を構成している。帯域通過フィルタ9は遮断周波数に対しては全反射となるので、放射による結合を防ぐため、カットオフ導波管を構成するカバーで覆う必要がある。本実施例によれば、同軸マイクロストリップ線路変換器内に基板7上のパターンとして帯域通過フィルタを構成することによりこのカバーが不要となるため、部品点数が削減できる効果がある。また、帯域通過フィルタの代りに増幅器モジュール等の他のマイクロ波回路素子を形成しても良く、いずれの場合にも機構部品点数を増やすことなく、素子の前後のアイソレーションを改善する効果がある。
【0015】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば同軸マイクロストリップ線路変換器のモード変換部をカットオフ導波管を形成するような金属ブロック内に作り込んだので、良好な特性をもち、かつ外部へ不要な放射を生じさせることのない同軸マイクロストリップ線路変換器を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1による同軸マイクロストリップ線路変換器を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面を示す図である。
【図3】この発明の実施例2による同軸マイクロストリップ線路変換器を示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線断面を示す図である。
【図5】この発明の実施例3による同軸マイクロストリップ線路変換器を示す斜視図である。
【図6】従来の同軸マイクロストリップ線路変換器の一構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 同軸コネクタ(レセプタクル)
2 テフロン被覆
3 中心導体(ピン)
4 金属ブロック
5 コネクタ取付穴
6 カットオフ導波管
7 基板
8 マイクロストリップ線路のストリップ導体
9 帯域通過フィルタ
11 スルーホール
13 取付ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクロストリップ線路のストリップ導体側の上方から同軸給電する同軸マイクロストリップ線路変換器において、同軸コネクタと、マイクロストリップ線路を形成した基板と、同軸コネクタと前記基板のストリップ導体面側との間に挟まれる金属ブロックを備え、同軸コネクタの中心導体は金属ブロックと絶縁されて基板表面のストリップ導体線路に接続され、同軸コネクタの外導体は金属ブロックを介して前記基板裏面のアース導体に接続され、金属ブロックと前記基板裏面のアース導体とでカットオフ導波管を構成してマイクロストリップ線路側の出力端子としたことを特徴とする同軸マイクロストリップ線路変換器。
【請求項2】 請求項1に記載した同軸マイクロストリップ線路変換器において、金属ブロックと基板の裏面アース導体とで構成されるカットオフ導波管の短絡面近傍のH面に一段下がったステップを設け、低インピーダンス導波管としたことを特徴とする請求項1記載の同軸マイクロストリップ線路変換器。
【請求項3】 請求項1に記載した同軸マイクロストリップ線路変換器において、金属ブロックと基板の裏面アース導体とで構成されるカットオフ導波管の基板上に、フィルタ、増幅器などのマイクロ波回路素子を形成したことを特徴とする同軸マイクロストリップ線路変換器。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−259713
【公開日】平成5年(1993)10月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−87648
【出願日】平成4年(1992)3月10日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)