同軸二輪車及びその制御方法
【課題】降車を容易に行うことができ、安全性の高い同軸二輪車を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる同軸二輪車10は、駆動部16、補助バー14、制御部12を備える。駆動部16は、同軸に配置された2つの車輪13を駆動する。補助バー14は、搭乗者が降車を行う際に、車輪13の前方側で接地する。制御部12は、補助バー14を接地させるときに補助バー14が設けられた前方側の制御ゲインを低減し、制御ゲインに応じて駆動部16による車輪13の駆動を制御する。
【解決手段】本発明にかかる同軸二輪車10は、駆動部16、補助バー14、制御部12を備える。駆動部16は、同軸に配置された2つの車輪13を駆動する。補助バー14は、搭乗者が降車を行う際に、車輪13の前方側で接地する。制御部12は、補助バー14を接地させるときに補助バー14が設けられた前方側の制御ゲインを低減し、制御ゲインに応じて駆動部16による車輪13の駆動を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一軸心線上に配置された2個の車輪を有する同軸二輪車及びその制御方法に関し、特に、人が立位状態で乗車して走行操作を行う同軸二輪車及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搭乗者が立位状態で乗車する車両構造を有する同軸二輪車が開示されている。特許文献1に記載の同軸二輪車では、前進、後退、左右旋回などの操作をハンドルからの指示や、搭乗者の重心移動による指示、さらには、搭乗者が乗るステップの傾きによる指示などによって行う。
【0003】
このような立ち乗り型の同軸二輪車は前後に傾けられる構造になっており、搭乗者の重心移動によって前傾や後傾を行って前進や後退を行う。このため、立ち乗り型同軸二輪車は構造上前後に不安定である。この同軸二輪車から降車する方法としては、接地状態ではなく倒立制御を行っている状態で降りる方法や、車体が後傾して搭乗者が後ろに降りる方法がある。
【0004】
しかし、倒立制御を行っている状態では不本意に同軸二輪車が前後に移動する不安定状態であるため、降車しようと搭乗者が片足を後ろに出そうとすると、搭乗者の重心位置が後ろに移動してしまい車両は後退を始めてしまう。
【0005】
また、車体が後傾して搭乗者が後ろに降りる方法では、搭乗時に搭乗者が車体を前傾、後傾により進行指示操作を行っている際に、車体が一定以上後傾すると、意思に反するタイミングでの降車状態となる場合がある。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の同軸二輪車では、補助輪が設けられており、補助輪を接地させた状態で乗降を行うことで安定して降車を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−074814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の同軸二輪車においては、補助輪は同軸二輪車の前方又は後方に設けられている。降車時には、補助輪が格納された状態から接地された状態へと切り替えられる。降車時において、補助輪を接地させるため車体を傾けると、ゲインが一定であるため、傾きに応じて速度が速くなり暴走する恐れがある。
【0009】
本発明は、このような問題を背景としてなされたものであり、降車を安全性に行うことができる同軸二輪車及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る同軸二輪車は、同軸に配置された2つの車輪を駆動する車輪駆動部と、搭乗者が降車を行う際に、前記車輪の前方側又は後方側で接地する補助バーと、前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪駆動部による前記車輪の駆動を制御する制御部と備えるものである。
【0011】
本発明の第2の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、前記制御部は、前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、降車制御開始信号を生成するための降車釦を有し、前記制御部は、前記降車釦により生成される前記降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第4の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、搭乗者が搭乗していることを検知する検知部をさらに備え、前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車する際、前記検知部により搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、前記制御部は、前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第6の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、同軸に配置された2つの車輪の前方側又は後方側に設けられた補助バーを引き出し、前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪の駆動を制御する。
【0016】
本発明の第7の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、生成される降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車を行う際、搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とする。
【0019】
本発明の第10の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、降車を容易に行うことができ、安全性の高い同軸二輪車及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1に係る同軸二輪車の構成を示す模式図である。
【図2A】実施の形態1に係る同軸二輪車の走行時の状態を説明する図である。
【図2B】実施の形態1に係る同軸二輪車の降車時の状態を説明する図である。
【図3A】実施の形態1に係る同軸二輪車の構成を示す図である。
【図3B】実施の形態1に係る同軸二輪車の構成を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図5】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図6】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するためのフロー図である。
【図7A】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図7B】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図7C】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図7D】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図8】実施の形態2に係る同軸二輪車の制御方法を説明するためのフロー図である。
【図9】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するためのフロー図である。
【図10A】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図10B】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図10C】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
最初に、本発明にかかる同軸二輪車の制御方法について、図1、2A、2Bを用いて説明する。本発明に係る同軸二輪車は、特に、搭乗者が車両から降車する際の制御に特徴を有する。図1は、本実施の形態に係る同軸二輪車10の構成を示す模式図である。図1は、同軸二輪車10の左側面図である。図1に示すように、同軸二輪車10は、ステップ11、制御部12、車輪13、補助バー14、ハンドル15を備えている。
【0023】
本実施の形態に係る同軸二輪車10は、搭乗者の重心移動により前進、後退、左右旋回等の動作を操作することができる。搭乗者が重心を同軸二輪車10の前側に移動させ、同軸二輪車10を前傾させると前進動作を実行する。また、搭乗者が重心を同軸二輪車10の後ろ側に移動させ、同軸二輪車10を後傾させると後進動作を実行する。
【0024】
図1に示す例では、補助バー14は、車輪13の前方側に設けられている。図2Aは、搭乗者が同軸二輪車10に搭乗し、走行している状態を示す。図2Aに示すように、搭乗者が同軸二輪車10に搭乗している際には、補助バー14は、地面に接しないように、ステップ11の近傍に収納されている。なお、段差があるところを走行したり、坂を走行することを考慮して、補助バー14と地面との間に所定の間隔が設けられる。これにより、同軸二輪車10を十分傾けることができ、加減速を十分に行うことができる。
【0025】
図2Bは、搭乗者が同軸二輪車10から降車するときの状態を示す。図2Bに示すように、搭乗者が降車する際には、補助バー14が引き出される。そして、同軸二輪車10を補助バー14が設けられた前方側に傾けることにより、地面に接地させる。この状態で、同軸二輪車から搭乗者が車両後方に降車することにより、安全に降車を行うことができる。
【0026】
従来、降車時において補助バー14を接地させるため車体を前傾させると、ゲインが一定であるため、傾きに応じて速度が速くなり暴走する恐れがある。本発明は、このときのゲインを制御することにより、より安全性の高い同軸二輪車10を提供する。
【0027】
ここで、図3A、3Bを参照して、同軸二輪車10の詳細な構成について説明する。図3A、3Bは、本実施の形態に係る同軸二輪車10の構成を示す図である。図3Aは同軸二輪車10の進行方向側から見た正面図であり、図3Bは左側面図である。なお、図3A、3Bにおいて紙面に向かって左側が搭乗者側からみた右側に当たる。以下の説明において、搭乗者側からみて右側の部材には「R」、左側の部材には「L」を付して説明する。図3Aにおいては、説明のため、補助バー14の図示を省略している。
【0028】
同軸二輪車10は、ステップ11L、11R、制御部12、車輪13L、13R、補助バー14、ハンドル15、駆動部16L、16R、降車釦17を備えている。ここでは、車体上部材U、車体下部材D、側面部材Sを含む平行リンク機構を備える例について説明する。なお、本明細書において、ピッチ軸は一対の車輪13L、13Rの車軸に相当する軸であり、ロール軸は車両本体12の中心を通り、車両の走行方向と平行をなす軸であり、また、ヨー軸は車両本体12の中心を通り、車両が走行する路面と垂直をなす軸である。
【0029】
同軸二輪車10は、同一軸心線上に配置された2個の車輪13L、13Rを備えている。2個の車輪13L、13Rは、平行に配置されている。車輪13L、13Rにはそれぞれ独立にモータ等の駆動手段16L、16Rが設けられている。駆動手段16L、16R間は、車両本体によって連結されている。車両本体は、上下に分割された車体上部材U、車体下部材D、及び、左右に分割された側面部材Sを含む平行リンク機構を有する。側面部材Sは、車輪13L、13Rを回転自在に支持している。
【0030】
車両本体の上側には、走行する際に搭乗者が立位状態で搭乗する補助バー14L、14Rが設けられている。補助バー14は、車両本体の車幅方向で左右に分割されている。ステップ14L、14Rの間には、ハンドル15が設けられている。ハンドル15は、車両本体に対してロール軸方向に傾斜可能にされると共に、ハンドル15とステップ14L、14Rとの間は、互いに垂直となるようにリンク機構(図示せず)で連結されている。
【0031】
車輪13L、13Rの間において、車輪13の前方側には、補助バー14が設けられている。本実施の形態では、補助バー14は、車体本体に接続されている。搭乗者が降車する際には、補助バー14が引き出され、同軸二輪車10から前方に突出する。なお、補助バー14は、車輪13の後方側に設けることも可能である。
【0032】
補助バー14は、ステップ11に対して上下移動可能に設けられていてもよく、補助バー14と車両本体との接続点を中心として回転移動可能に接続されていてもよい。また、補助バー14が、伸縮可能となっており、手動で引き出すことにより、収納状態/非収納状態を切り替えてもよい。なお、補助バー14の収納状態/非収納状態を切り替えは、モータ等により行うことも可能である。
【0033】
また、同軸二輪車10は、補助バー14が接地したか否かを検出する図示しないセンサ(近接センサなど)を有している。補助バー14が確実に接地したのちに、搭乗者が降車することにより、より安全に降車動作を行うことが可能となる。
【0034】
なお、ここでは図示していないが、同軸二輪車10は、倒立制御を行うために倒れ角速度又は倒れ角を測定するセンサー(ジャイロセンサーなど)や、車輪の回転角度又は回転角速度を測定できるセンサー(エンコーダ、レゾルバなど)を備えている。
【0035】
制御部12は、ジャイロ等のセンサで検出された同軸二輪車10本体の傾き(姿勢角)や、車両への荷重等の情報に応じて駆動手段16L、16Rを制御する。具体的には、制御部12は、同軸二輪車10の姿勢角に基づいて得られた信号に所定の制御ゲインを乗じ、倒立状態を維持するための車輪13の駆動量を算出する。
【0036】
制御部12は、算出された運動量に応じて駆動手段16L、16Rを制御して、車輪13L、13Rの回転駆動を制御することで、倒立状態を維持する。搭乗者の重心移動により、倒立状態を維持しながら、前進、後進、停止等の制御を行うことができる。
【0037】
図4、5は、実施の形態1に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するための図である。図4、5において、横軸は同軸二輪車10の車体が前傾する角度を示しており、縦軸は制御ゲインの値を示している。通常走行中においては、図4に示すように、制御ゲインは姿勢角によらず一定の値となる。一方、図5に示すように、降車時に補助バー14を接地させるときには、同軸二輪車10が、補助バー14が設けられた側の制御ゲインを低減する。本例では、前傾する角度に応じて、制御ゲインが小さくなる。このように、制御ゲインを小さくすることにより、同軸二輪車10の暴走を防止することができ、安全に補助バー14を接地させることができる。
【0038】
ハンドル15の上部には、降車釦17が設けられている。降車釦17の押下により、降車制御開始信号が生成される。降車制御開始信号を受けて、制御部12は、搭乗者の降車を検知し、補助バー14を引き出し、同軸二輪車10の車体を補助バー14が設けられた前方側に傾ける。
【0039】
なお、ここでは図示してないが、同軸二輪車10の駆動部16を制御するだけでなく、降車動作を開始したときにシステムから警告音を発生する警告音発生手段や、LEDを点灯させる点灯手段を備えることによって、搭乗者の降車意図が高まりスムーズに降車ができるようになる。
【0040】
ここで、図6、7A〜7Dを参照して、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法について説明する。図6は、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するためのフロー図である。図7〜7Dは、実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【0041】
図6に示すように、まず、降車釦17が押下されることにより(S1)、降車動作が開始される(S2)。S2では、補助バー14が接地されるように、補助バー14が収納状態(図7A)から非収納状態(図7B)へ切り替えられる。そして、補助バー14が下がっているか否かが判断される(S3)。
【0042】
補助バー14が下がっていない場合には(S3No)、S2に戻り、再度降車動作が開始される。すなわち、同軸二輪車10では、補助バー14が下がっている時しか降車動作をしない。これにより、降車時の転倒の危険を回避することができる。
【0043】
補助バー14が下がっている場合には(S3Yes)、同軸二輪車10に設けられたLEDを点灯させたり、スピーカ等により音声を発することにより、降車動作中であることを周囲に報知する(S4)。そして、同軸二輪車10の現在の車体速度が0m/s、すなわち、停止している状態であるか否かが判断される(S5)。
【0044】
同軸二輪車10の車体速度は0m/sでない場合には(S5No)、同軸二輪車10を停止させる(S6)。同軸二輪車10の車体速度が0m/sである場合には(S5Yes)、上述のように、制御部12による倒立制御が実行される(S7)。このとき、同軸二輪車10を補助バー14が設けられている前方側に傾けるとともに、姿勢角に応じて制御ゲインを制御する。これにより、同軸二輪車10の暴走を食い止めることができ、図7Cに示すように、補助バー14を安全に接地させることができる。
【0045】
その後、近接センサ等により、補助バー14が接地したか否かが判断される(S8)。なお、補助バー14が接地したか否かは、ピッチ軸周りの同軸二輪車10の傾斜角度(ピッチ角)を確認することにより、補助バー14の接地を確認することも可能である。
【0046】
補助バー14が接地していない場合には(S8No)、さらに同軸二輪車10を前傾させる(S7)。補助バー14が接地した場合には(S8Yes)、制御部12による倒立制御が解除され、車輪13が回転しないようにロックされる(S9)。これにより、同軸二輪車10は、前後に動かないようになり、安全に同軸二輪車10から降りることができる(図7D)。同軸二輪車10から降りる際には、S4と同様に、LEDを点灯させたり、音声を発してもよい。
【0047】
このように本発明によれば、同軸二輪車10から降車する際に、搭乗者の姿勢移動により、同軸二輪車10が暴走してしまうのを防止することができる。これにより、降車を容易に行うことができ、安全性の高い同軸二輪車及びその制御方法を実現することができる。
【0048】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る同軸二輪車10の制御方法について、図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態に係る10の制御方法を説明するためのフロー図である。本実施の形態では、実施の形態1において倒立制御を行う際に(S7)、ゲイン制御を行わない(S17)。
【0049】
本実施の形態では、補助バー14が下がったことを確認し(S13)、補助バー14が下がっているときにのみ、降車動作を実行する。また、車体速度が0m/sとなったときに(S15Yes)、倒立制御を行って、同軸二輪車10を補助バー14が設けられた方向に傾ける。
【0050】
その後、補助バー14が接地したか否かを確認し(S18)、接地した場合に車輪13のモータ制御を切り、車輪13をロックする(S19)。このように、補助バー14が完全に接地し、倒立制御を行わない状態で搭乗者が同軸二輪車10から降車することができるため、安全性を向上させることが可能となる。
【0051】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る同軸二輪車10の制御方法について、図9、10A〜10Cを参照して説明する。図9は、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するためのフロー図である。図10A〜10Cは、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するための図である。
【0052】
本実施の形態では、2つの降車動作を選択することにより、安全な降車を可能にする同軸二輪車10の制御方法である。すなわち、本実施の形態に係る制御方法では、実施の形態1において説明したように、補助バー14が設けられた方向に同軸二輪車10を傾けて補助バー14を接地させた状態で降車する方法と、同軸二輪車10を補助バー14が設けられていない後方側に傾けることにより、搭乗者を後ろに下ろす方法を含む。
【0053】
同軸二輪車10により走行している場合は、加減速や、段差、坂等の走行性を考慮すると、補助バー14を収納した状態とする必要がある。このため、走行中に異常事態が起きたり、急に降車する必要があり降車釦17を押下する場合には、補助バー14を下げている時間がない。このような場合には、降車動作を変更する。
【0054】
S21において、降車釦17がON又は異常事態が起きた場合に、降車動作が開始される(S22)。そして、補助バー14が下がっているか否かが判断される(S23)。補助バー14が下がっている場合には(S23Yes)、その後図6に示すフロー及び図7A〜7Dに示す動作と同様の動作が実行される(S24〜S29)。
【0055】
一方、図10Aに示すように、補助バー14が収納状態である場合には(S23No)、LEDの点灯等により、降車中であることを報知する(S30)。そして、同軸二輪車10の車体速度が0m/sである場合に(S31Yes)、倒立制御を行い補助バー14が設けられていない後方側に同軸二輪車10を傾ける(S33)。これにより、図10Bに示す状態となる。その後、倒立制御を切って、車輪13をロックし(S34)、同軸二輪車10を後傾させた状態で、後方側に降りることができる(図10C)。
【0056】
このように、本実施の形態では、2つの降車動作を選択することにより、搭乗者の降車意図による降車開始だけでなく、制御部12が何らかの異常を検知して制御を終了する必要がある場合にも、降車動作を開始することで搭乗者の安全降車を誘導することができる。また、同軸二輪車10へのダメージを小さくするという効果も得られる。
【0057】
なお、上記の実施の形態において、ステップ11に荷重センサからなるステップセンサを設けてもよい。ステップセンサは、ステップ11のそれぞれに搭乗者の足が乗っているかどうかを検出し、足が乗っている場合に検知信号を制御部12に供給する。制御部12は、ステップ11のいずれか一方若しくは両方に搭乗者の足が乗っているかどうかを検知することができる。
【0058】
補助バー14が接地した後に搭乗者が降車する際、このステップセンサにより搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、駆動部16のモータをオフして、車輪13をロックすることができる。これにより、同軸二輪車10を搭乗者が降車するまで停止させすることができ、安全に降車をすることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上述の例では、ハンドルを設ける例について説明したが、ハンドルはなくても構わない。
【0060】
また、上記の制御方法を、搭乗者がパニックに至ったときに、そのパニックに対応するためのブレーキとして使用することも可能である。これによりまだ同軸二輪車の操縦に慣れていない初心者が操作を誤り暴走しそうになった場合でも安全に停止して降車することができるようになる。
【符号の説明】
【0061】
10 同軸二輪車
11 ステップ
12 制御部
13 車輪
14 補助バー
15 ハンドル
16 駆動部
17 降車釦
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一軸心線上に配置された2個の車輪を有する同軸二輪車及びその制御方法に関し、特に、人が立位状態で乗車して走行操作を行う同軸二輪車及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搭乗者が立位状態で乗車する車両構造を有する同軸二輪車が開示されている。特許文献1に記載の同軸二輪車では、前進、後退、左右旋回などの操作をハンドルからの指示や、搭乗者の重心移動による指示、さらには、搭乗者が乗るステップの傾きによる指示などによって行う。
【0003】
このような立ち乗り型の同軸二輪車は前後に傾けられる構造になっており、搭乗者の重心移動によって前傾や後傾を行って前進や後退を行う。このため、立ち乗り型同軸二輪車は構造上前後に不安定である。この同軸二輪車から降車する方法としては、接地状態ではなく倒立制御を行っている状態で降りる方法や、車体が後傾して搭乗者が後ろに降りる方法がある。
【0004】
しかし、倒立制御を行っている状態では不本意に同軸二輪車が前後に移動する不安定状態であるため、降車しようと搭乗者が片足を後ろに出そうとすると、搭乗者の重心位置が後ろに移動してしまい車両は後退を始めてしまう。
【0005】
また、車体が後傾して搭乗者が後ろに降りる方法では、搭乗時に搭乗者が車体を前傾、後傾により進行指示操作を行っている際に、車体が一定以上後傾すると、意思に反するタイミングでの降車状態となる場合がある。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の同軸二輪車では、補助輪が設けられており、補助輪を接地させた状態で乗降を行うことで安定して降車を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−074814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の同軸二輪車においては、補助輪は同軸二輪車の前方又は後方に設けられている。降車時には、補助輪が格納された状態から接地された状態へと切り替えられる。降車時において、補助輪を接地させるため車体を傾けると、ゲインが一定であるため、傾きに応じて速度が速くなり暴走する恐れがある。
【0009】
本発明は、このような問題を背景としてなされたものであり、降車を安全性に行うことができる同軸二輪車及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る同軸二輪車は、同軸に配置された2つの車輪を駆動する車輪駆動部と、搭乗者が降車を行う際に、前記車輪の前方側又は後方側で接地する補助バーと、前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪駆動部による前記車輪の駆動を制御する制御部と備えるものである。
【0011】
本発明の第2の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、前記制御部は、前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、降車制御開始信号を生成するための降車釦を有し、前記制御部は、前記降車釦により生成される前記降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第4の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、搭乗者が搭乗していることを検知する検知部をさらに備え、前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車する際、前記検知部により搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の態様に係る同軸二輪車は、上記の同軸二輪車であって、前記制御部は、前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第6の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、同軸に配置された2つの車輪の前方側又は後方側に設けられた補助バーを引き出し、前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪の駆動を制御する。
【0016】
本発明の第7の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、生成される降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車を行う際、搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とする。
【0019】
本発明の第10の態様に係る同軸二輪車の制御方法は、上記の制御方法であって、前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、降車を容易に行うことができ、安全性の高い同軸二輪車及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1に係る同軸二輪車の構成を示す模式図である。
【図2A】実施の形態1に係る同軸二輪車の走行時の状態を説明する図である。
【図2B】実施の形態1に係る同軸二輪車の降車時の状態を説明する図である。
【図3A】実施の形態1に係る同軸二輪車の構成を示す図である。
【図3B】実施の形態1に係る同軸二輪車の構成を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図5】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図6】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するためのフロー図である。
【図7A】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図7B】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図7C】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図7D】実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図8】実施の形態2に係る同軸二輪車の制御方法を説明するためのフロー図である。
【図9】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するためのフロー図である。
【図10A】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図10B】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【図10C】実施の形態3に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
最初に、本発明にかかる同軸二輪車の制御方法について、図1、2A、2Bを用いて説明する。本発明に係る同軸二輪車は、特に、搭乗者が車両から降車する際の制御に特徴を有する。図1は、本実施の形態に係る同軸二輪車10の構成を示す模式図である。図1は、同軸二輪車10の左側面図である。図1に示すように、同軸二輪車10は、ステップ11、制御部12、車輪13、補助バー14、ハンドル15を備えている。
【0023】
本実施の形態に係る同軸二輪車10は、搭乗者の重心移動により前進、後退、左右旋回等の動作を操作することができる。搭乗者が重心を同軸二輪車10の前側に移動させ、同軸二輪車10を前傾させると前進動作を実行する。また、搭乗者が重心を同軸二輪車10の後ろ側に移動させ、同軸二輪車10を後傾させると後進動作を実行する。
【0024】
図1に示す例では、補助バー14は、車輪13の前方側に設けられている。図2Aは、搭乗者が同軸二輪車10に搭乗し、走行している状態を示す。図2Aに示すように、搭乗者が同軸二輪車10に搭乗している際には、補助バー14は、地面に接しないように、ステップ11の近傍に収納されている。なお、段差があるところを走行したり、坂を走行することを考慮して、補助バー14と地面との間に所定の間隔が設けられる。これにより、同軸二輪車10を十分傾けることができ、加減速を十分に行うことができる。
【0025】
図2Bは、搭乗者が同軸二輪車10から降車するときの状態を示す。図2Bに示すように、搭乗者が降車する際には、補助バー14が引き出される。そして、同軸二輪車10を補助バー14が設けられた前方側に傾けることにより、地面に接地させる。この状態で、同軸二輪車から搭乗者が車両後方に降車することにより、安全に降車を行うことができる。
【0026】
従来、降車時において補助バー14を接地させるため車体を前傾させると、ゲインが一定であるため、傾きに応じて速度が速くなり暴走する恐れがある。本発明は、このときのゲインを制御することにより、より安全性の高い同軸二輪車10を提供する。
【0027】
ここで、図3A、3Bを参照して、同軸二輪車10の詳細な構成について説明する。図3A、3Bは、本実施の形態に係る同軸二輪車10の構成を示す図である。図3Aは同軸二輪車10の進行方向側から見た正面図であり、図3Bは左側面図である。なお、図3A、3Bにおいて紙面に向かって左側が搭乗者側からみた右側に当たる。以下の説明において、搭乗者側からみて右側の部材には「R」、左側の部材には「L」を付して説明する。図3Aにおいては、説明のため、補助バー14の図示を省略している。
【0028】
同軸二輪車10は、ステップ11L、11R、制御部12、車輪13L、13R、補助バー14、ハンドル15、駆動部16L、16R、降車釦17を備えている。ここでは、車体上部材U、車体下部材D、側面部材Sを含む平行リンク機構を備える例について説明する。なお、本明細書において、ピッチ軸は一対の車輪13L、13Rの車軸に相当する軸であり、ロール軸は車両本体12の中心を通り、車両の走行方向と平行をなす軸であり、また、ヨー軸は車両本体12の中心を通り、車両が走行する路面と垂直をなす軸である。
【0029】
同軸二輪車10は、同一軸心線上に配置された2個の車輪13L、13Rを備えている。2個の車輪13L、13Rは、平行に配置されている。車輪13L、13Rにはそれぞれ独立にモータ等の駆動手段16L、16Rが設けられている。駆動手段16L、16R間は、車両本体によって連結されている。車両本体は、上下に分割された車体上部材U、車体下部材D、及び、左右に分割された側面部材Sを含む平行リンク機構を有する。側面部材Sは、車輪13L、13Rを回転自在に支持している。
【0030】
車両本体の上側には、走行する際に搭乗者が立位状態で搭乗する補助バー14L、14Rが設けられている。補助バー14は、車両本体の車幅方向で左右に分割されている。ステップ14L、14Rの間には、ハンドル15が設けられている。ハンドル15は、車両本体に対してロール軸方向に傾斜可能にされると共に、ハンドル15とステップ14L、14Rとの間は、互いに垂直となるようにリンク機構(図示せず)で連結されている。
【0031】
車輪13L、13Rの間において、車輪13の前方側には、補助バー14が設けられている。本実施の形態では、補助バー14は、車体本体に接続されている。搭乗者が降車する際には、補助バー14が引き出され、同軸二輪車10から前方に突出する。なお、補助バー14は、車輪13の後方側に設けることも可能である。
【0032】
補助バー14は、ステップ11に対して上下移動可能に設けられていてもよく、補助バー14と車両本体との接続点を中心として回転移動可能に接続されていてもよい。また、補助バー14が、伸縮可能となっており、手動で引き出すことにより、収納状態/非収納状態を切り替えてもよい。なお、補助バー14の収納状態/非収納状態を切り替えは、モータ等により行うことも可能である。
【0033】
また、同軸二輪車10は、補助バー14が接地したか否かを検出する図示しないセンサ(近接センサなど)を有している。補助バー14が確実に接地したのちに、搭乗者が降車することにより、より安全に降車動作を行うことが可能となる。
【0034】
なお、ここでは図示していないが、同軸二輪車10は、倒立制御を行うために倒れ角速度又は倒れ角を測定するセンサー(ジャイロセンサーなど)や、車輪の回転角度又は回転角速度を測定できるセンサー(エンコーダ、レゾルバなど)を備えている。
【0035】
制御部12は、ジャイロ等のセンサで検出された同軸二輪車10本体の傾き(姿勢角)や、車両への荷重等の情報に応じて駆動手段16L、16Rを制御する。具体的には、制御部12は、同軸二輪車10の姿勢角に基づいて得られた信号に所定の制御ゲインを乗じ、倒立状態を維持するための車輪13の駆動量を算出する。
【0036】
制御部12は、算出された運動量に応じて駆動手段16L、16Rを制御して、車輪13L、13Rの回転駆動を制御することで、倒立状態を維持する。搭乗者の重心移動により、倒立状態を維持しながら、前進、後進、停止等の制御を行うことができる。
【0037】
図4、5は、実施の形態1に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するための図である。図4、5において、横軸は同軸二輪車10の車体が前傾する角度を示しており、縦軸は制御ゲインの値を示している。通常走行中においては、図4に示すように、制御ゲインは姿勢角によらず一定の値となる。一方、図5に示すように、降車時に補助バー14を接地させるときには、同軸二輪車10が、補助バー14が設けられた側の制御ゲインを低減する。本例では、前傾する角度に応じて、制御ゲインが小さくなる。このように、制御ゲインを小さくすることにより、同軸二輪車10の暴走を防止することができ、安全に補助バー14を接地させることができる。
【0038】
ハンドル15の上部には、降車釦17が設けられている。降車釦17の押下により、降車制御開始信号が生成される。降車制御開始信号を受けて、制御部12は、搭乗者の降車を検知し、補助バー14を引き出し、同軸二輪車10の車体を補助バー14が設けられた前方側に傾ける。
【0039】
なお、ここでは図示してないが、同軸二輪車10の駆動部16を制御するだけでなく、降車動作を開始したときにシステムから警告音を発生する警告音発生手段や、LEDを点灯させる点灯手段を備えることによって、搭乗者の降車意図が高まりスムーズに降車ができるようになる。
【0040】
ここで、図6、7A〜7Dを参照して、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法について説明する。図6は、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するためのフロー図である。図7〜7Dは、実施の形態1に係る同軸二輪車の制御方法を説明するための図である。
【0041】
図6に示すように、まず、降車釦17が押下されることにより(S1)、降車動作が開始される(S2)。S2では、補助バー14が接地されるように、補助バー14が収納状態(図7A)から非収納状態(図7B)へ切り替えられる。そして、補助バー14が下がっているか否かが判断される(S3)。
【0042】
補助バー14が下がっていない場合には(S3No)、S2に戻り、再度降車動作が開始される。すなわち、同軸二輪車10では、補助バー14が下がっている時しか降車動作をしない。これにより、降車時の転倒の危険を回避することができる。
【0043】
補助バー14が下がっている場合には(S3Yes)、同軸二輪車10に設けられたLEDを点灯させたり、スピーカ等により音声を発することにより、降車動作中であることを周囲に報知する(S4)。そして、同軸二輪車10の現在の車体速度が0m/s、すなわち、停止している状態であるか否かが判断される(S5)。
【0044】
同軸二輪車10の車体速度は0m/sでない場合には(S5No)、同軸二輪車10を停止させる(S6)。同軸二輪車10の車体速度が0m/sである場合には(S5Yes)、上述のように、制御部12による倒立制御が実行される(S7)。このとき、同軸二輪車10を補助バー14が設けられている前方側に傾けるとともに、姿勢角に応じて制御ゲインを制御する。これにより、同軸二輪車10の暴走を食い止めることができ、図7Cに示すように、補助バー14を安全に接地させることができる。
【0045】
その後、近接センサ等により、補助バー14が接地したか否かが判断される(S8)。なお、補助バー14が接地したか否かは、ピッチ軸周りの同軸二輪車10の傾斜角度(ピッチ角)を確認することにより、補助バー14の接地を確認することも可能である。
【0046】
補助バー14が接地していない場合には(S8No)、さらに同軸二輪車10を前傾させる(S7)。補助バー14が接地した場合には(S8Yes)、制御部12による倒立制御が解除され、車輪13が回転しないようにロックされる(S9)。これにより、同軸二輪車10は、前後に動かないようになり、安全に同軸二輪車10から降りることができる(図7D)。同軸二輪車10から降りる際には、S4と同様に、LEDを点灯させたり、音声を発してもよい。
【0047】
このように本発明によれば、同軸二輪車10から降車する際に、搭乗者の姿勢移動により、同軸二輪車10が暴走してしまうのを防止することができる。これにより、降車を容易に行うことができ、安全性の高い同軸二輪車及びその制御方法を実現することができる。
【0048】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る同軸二輪車10の制御方法について、図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態に係る10の制御方法を説明するためのフロー図である。本実施の形態では、実施の形態1において倒立制御を行う際に(S7)、ゲイン制御を行わない(S17)。
【0049】
本実施の形態では、補助バー14が下がったことを確認し(S13)、補助バー14が下がっているときにのみ、降車動作を実行する。また、車体速度が0m/sとなったときに(S15Yes)、倒立制御を行って、同軸二輪車10を補助バー14が設けられた方向に傾ける。
【0050】
その後、補助バー14が接地したか否かを確認し(S18)、接地した場合に車輪13のモータ制御を切り、車輪13をロックする(S19)。このように、補助バー14が完全に接地し、倒立制御を行わない状態で搭乗者が同軸二輪車10から降車することができるため、安全性を向上させることが可能となる。
【0051】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る同軸二輪車10の制御方法について、図9、10A〜10Cを参照して説明する。図9は、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するためのフロー図である。図10A〜10Cは、本実施の形態に係る同軸二輪車10の制御方法を説明するための図である。
【0052】
本実施の形態では、2つの降車動作を選択することにより、安全な降車を可能にする同軸二輪車10の制御方法である。すなわち、本実施の形態に係る制御方法では、実施の形態1において説明したように、補助バー14が設けられた方向に同軸二輪車10を傾けて補助バー14を接地させた状態で降車する方法と、同軸二輪車10を補助バー14が設けられていない後方側に傾けることにより、搭乗者を後ろに下ろす方法を含む。
【0053】
同軸二輪車10により走行している場合は、加減速や、段差、坂等の走行性を考慮すると、補助バー14を収納した状態とする必要がある。このため、走行中に異常事態が起きたり、急に降車する必要があり降車釦17を押下する場合には、補助バー14を下げている時間がない。このような場合には、降車動作を変更する。
【0054】
S21において、降車釦17がON又は異常事態が起きた場合に、降車動作が開始される(S22)。そして、補助バー14が下がっているか否かが判断される(S23)。補助バー14が下がっている場合には(S23Yes)、その後図6に示すフロー及び図7A〜7Dに示す動作と同様の動作が実行される(S24〜S29)。
【0055】
一方、図10Aに示すように、補助バー14が収納状態である場合には(S23No)、LEDの点灯等により、降車中であることを報知する(S30)。そして、同軸二輪車10の車体速度が0m/sである場合に(S31Yes)、倒立制御を行い補助バー14が設けられていない後方側に同軸二輪車10を傾ける(S33)。これにより、図10Bに示す状態となる。その後、倒立制御を切って、車輪13をロックし(S34)、同軸二輪車10を後傾させた状態で、後方側に降りることができる(図10C)。
【0056】
このように、本実施の形態では、2つの降車動作を選択することにより、搭乗者の降車意図による降車開始だけでなく、制御部12が何らかの異常を検知して制御を終了する必要がある場合にも、降車動作を開始することで搭乗者の安全降車を誘導することができる。また、同軸二輪車10へのダメージを小さくするという効果も得られる。
【0057】
なお、上記の実施の形態において、ステップ11に荷重センサからなるステップセンサを設けてもよい。ステップセンサは、ステップ11のそれぞれに搭乗者の足が乗っているかどうかを検出し、足が乗っている場合に検知信号を制御部12に供給する。制御部12は、ステップ11のいずれか一方若しくは両方に搭乗者の足が乗っているかどうかを検知することができる。
【0058】
補助バー14が接地した後に搭乗者が降車する際、このステップセンサにより搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、駆動部16のモータをオフして、車輪13をロックすることができる。これにより、同軸二輪車10を搭乗者が降車するまで停止させすることができ、安全に降車をすることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上述の例では、ハンドルを設ける例について説明したが、ハンドルはなくても構わない。
【0060】
また、上記の制御方法を、搭乗者がパニックに至ったときに、そのパニックに対応するためのブレーキとして使用することも可能である。これによりまだ同軸二輪車の操縦に慣れていない初心者が操作を誤り暴走しそうになった場合でも安全に停止して降車することができるようになる。
【符号の説明】
【0061】
10 同軸二輪車
11 ステップ
12 制御部
13 車輪
14 補助バー
15 ハンドル
16 駆動部
17 降車釦
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に配置された2つの車輪を駆動する車輪駆動部と、
搭乗者が降車を行う際に、前記車輪の前方側又は後方側で接地する補助バーと、
前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪駆動部による前記車輪の駆動を制御する制御部と、
備える同軸二輪車。
【請求項2】
前記制御部は、前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項1に記載の同軸二輪車。
【請求項3】
降車制御開始信号を生成するための降車釦を有し、
前記制御部は、前記降車釦により生成される前記降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項1又は2に記載の同軸二輪車。
【請求項4】
搭乗者が搭乗していることを検知する検知部をさらに備え、
前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車する際、前記検知部により搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の同軸二輪車。
【請求項5】
前記制御部は、前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の同軸二輪車。
【請求項6】
同軸に配置された2つの車輪の前方側又は後方側に設けられた補助バーを引き出し、
前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪の駆動を制御する同軸二輪車の制御方法。
【請求項7】
前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項6に記載の同軸二輪車。
【請求項8】
生成される降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項6又は7に記載の同軸二輪車。
【請求項9】
前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車を行う際、搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の同軸二輪車の制御方法。
【請求項10】
前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、
前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、
前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の同軸二輪車の制御方法。
【請求項1】
同軸に配置された2つの車輪を駆動する車輪駆動部と、
搭乗者が降車を行う際に、前記車輪の前方側又は後方側で接地する補助バーと、
前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪駆動部による前記車輪の駆動を制御する制御部と、
備える同軸二輪車。
【請求項2】
前記制御部は、前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項1に記載の同軸二輪車。
【請求項3】
降車制御開始信号を生成するための降車釦を有し、
前記制御部は、前記降車釦により生成される前記降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項1又は2に記載の同軸二輪車。
【請求項4】
搭乗者が搭乗していることを検知する検知部をさらに備え、
前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車する際、前記検知部により搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の同軸二輪車。
【請求項5】
前記制御部は、前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の同軸二輪車。
【請求項6】
同軸に配置された2つの車輪の前方側又は後方側に設けられた補助バーを引き出し、
前記補助バーを接地させるときに前記補助バーが設けられた側の制御ゲインを低減し、前記制御ゲインに応じて前記車輪の駆動を制御する同軸二輪車の制御方法。
【請求項7】
前記同軸二輪車の速度がゼロであることを検出した場合に、前記補助バーを接地させるため、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項6に記載の同軸二輪車。
【請求項8】
生成される降車制御開始信号に応じて搭乗者の降車を検知し、車体を前記補助バーが設けられた側に傾けることを特徴とする請求項6又は7に記載の同軸二輪車。
【請求項9】
前記補助バーを接地した後に搭乗者が降車を行う際、搭乗者が搭乗していることが検知された場合には、前記車輪をロックすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の同軸二輪車の制御方法。
【請求項10】
前記補助バーが収納状態であるか否かを判定し、
前記補助バーが出ている場合には前記補助バーが設けられている方向に車体を傾け、
前記補助バーが収納されている場合には前記補助バーが設けられていない方向に車体を傾けることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の同軸二輪車の制御方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【公開番号】特開2011−178196(P2011−178196A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41725(P2010−41725)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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