説明

名称‘P−1972’のパイナップル植物

【課題】 良い果実の大きさと形のみならず缶詰製造の高い可能性を有する新しい果実変種を作り出すこと。
【解決手段】 本発明により、パイナップル科、単子葉植物亜綱、名称‘P-1972’の新植物変種パイナップル(アナナス・コモサス)を提供する。この新変種は、殻が非常に薄く、はっきりとした卵形の果実を有し、カロテン含量が高く、その果肉に暗い色を与えている。この変種は、溶けやすい固形体及び酸性を有し、かつ他の変種に比べて独特の風味と芳香プロフィールを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
植物学上/商用分類:アナナス・コモサス(Ananas comosus)/“ゴールド型”パイナップル変種。
変種名称:cv. P-1972。
【0002】
本発明は、パイナップル科、単子葉植物亜綱、名称‘P-1972’の新植物変種パイナップル(アナナス・コモサス)に関する。この新変種は、殻が非常に薄く、はっきりとした卵形の果実を有し、カロテン含量が高く、その果肉に暗い色を与えている。この変種は、溶けやすい固形体及び酸性を有し、かつ他の変種に比べて独特の風味と芳香プロフィールを有する。
【背景技術】
【0003】
1975年に、1972年ハワイ製の交雑種由来の種子から生産された分離集団から新しいパイナップル変種が個別植物として選択された。この新変種は‘75-80’として知られた。‘75-80’は、少なくとも50%のカイエンヌ(Cayenne)パイナップル由来の遺伝的基礎を有する。その親系統は、パイナップル研究所(Pineapple Research Institute)(PRI)で以前に開発された2種のクローン、すなわち‘64-337’(C12Q2SG1P1)ב59-443’(C9P3SG2R2)を含む。個別植物の試験及び選択は、中米のホンジュラスで行った。
【0004】
親の説明:花親ハイブリッド‘64-337’は、最初ハワイのパイナップル研究所で開発され、そこから野外評価のためホンジュラスに導入された。‘64-337’は、遺伝的に3/4のカイエンヌ、1/8のクイーン(Queen)、1/16のスムース・ガテマラ(Smooth Guatemala)、及び1/16のペルナムブコ(Pernambuco)で構成される。‘64-337’は特許を受けていない。このハイブリッドクローンは、カイエンヌ変種と比較した場合、早過ぎる開花(premature flowering)(NDF)をあまり受けない。また、内部褐色斑点障害(internal brown spot disorder)(IBS)に対するより高い耐性も示した。IBSは、果肉の内部に褐色の斑点がつくことである。この植物は、とげのない明るい緑色の葉を有する。果肉は、高いカロテン含量を有する黄色を示す。
【0005】
花粉親59-443は、ハワイのパイナップル研究所で開発されたハイブリッドクローンであり、1970年代の初期の間にホンジュラスに導入された。‘59-443’は、特許を受けていない。モンテクリスト(Montecristo)条件下(モンテクリスト農場、ホンジュラスの北部海岸にあるStandard Fruit de Hondurasの所有地)、‘59-443’は、花の自然分化(natural differentiation of flowers)(NDF)に抵抗性であり、半選択植物習性を発生し、1植物当たり1〜2本の接ぎ穂を生成し、かつ居住地に感受性である。スムース・カイエンヌに比し、葉は幅が狭く、長い形状で、とげがない。葉の色は、ふちに沿って赤みを帯びた暗緑色である。花弁の色は、先端が紫色で、基部は白っぽい。果実の花柄は中間であり、形は長い円錐体〜円柱で、幅広の小果実を有し、果実の大きさはカイエンヌより小さい。果肉の色はゴールデンイエローである。‘59-443’ハイブリッドクローンは、Phytophthora parasiticaに感受性であるが、IBS障害に対して抵抗性を示した。
〔発明の開示〕
【0006】
この育種努力は、良い果実の大きさと形のみならず缶詰製造の高い可能性を有する新しい果実変種を作り出すことを目標とした。主要選択パラメーターのいくつかは、普通に育てられている‘スムース・カイエンヌ’変種と比較した一年中の生産、早過ぎる開花傾向の低減(NDF抵抗性)、内部褐色斑点障害(IBS)の低発生率、高カロテン、高ビタミンC、安定した副花冠(crown)型及び良い風味だった。
【0007】
この新種の開発はハワイのワヒアワで開始した。クローン‘64-337’の花を1972年のクローン‘59-443’の植物から取った花粉で異花受粉させた。この交雑由来の種子を発芽と引き続く有望な個体の選択のため1974年にホンジュラスに持って行った。そのとき以来、この変種はホンジュラスの北部海岸にあるStandard Fruit de Hondurasの所有地であるモンテクリスト農場で栽培している。変種増殖のため、無性繁殖の種々の方法、すなわち茎切断、挿し木、吸枝、零余子、果実副花冠及び組織培養誘導植物を使用した。
【0008】
選択したハイブリッドは、独特の果実芳香及び殻と果肉の両者の深い黄色、並びに非常に対称的な卵形の果実形状のようなユニークな特徴を示した。この植物は、さらに挿し木、hapas、副花冠、及び茎切断を用いて繁殖させ、数年にわたって数を増やした。この新しいハイブリッドを‘75-80’と命名した。‘75-80’の原集団から、より短い花柄及びより大きい果実を示す精鋭の個体を2001年に選択して‘P-1972’と命名した。本明細書は、この‘P-1972’と命名した改良された特徴を有する精鋭植物の新集団を包含する。この新しい栽培変種植物は安定であり、かつ無性生殖の3連続世代で型どおりに再生した。
【0009】
この新しいパイナップル(Ananas comosus)変種、‘P-1972’は、より高いカロテン含量、改良された芳香、独特な果実と果肉の色、及び非常に対称的な卵形の果実形状を有することで、その親と異なる。‘P-1972’は、小果実中心腐敗の低発生率を示し、大理石模様がつく発生率も低い。本植物は、色が淡い〜灰色っぽい緑色で、パイピングのある長く、とげのない葉で、葉の表面から葉脈が突き出ていることを特徴とする。果実は、滑らかかつ薄い殻と、フラットな小果実又は目を有する。
〔発明の効果〕
【0010】
‘P-1972’は‘75-80’より短い花柄と長い果実を有し、かつ殻が割れにくい。‘P-1972’は‘Mayan Gold 1’及び‘Mayan Gold 3’よりずっと高レベルのカロテンを有する。‘Mayan Gold 1’はパイナップル研究所の変種‘57-293’と‘59-443’の交雑から生じる非特許ハイブリッドである。‘Mayan Gold 3’はPRI‘58-1184’とPRI‘59-443’の交雑から生じる非特許のパイナップル研究所ハイブリッド名‘73-114’である。‘P-1972’果実の形状は、‘Mayan Gold 3’の四角い肩を持った或いは円柱形に比べて卵形である。‘Mayan Gold 1’は、葉の上に赤い色素沈着を有するが、‘Mayan Gold 3’と‘P-1972’にはない。‘P-1972’は、種々の成長条件下で‘Mayan Gold 3’より明るい緑色である。さらに、‘P-1972’は、種々の成長条件下、‘Mayan Gold 3’より高いカロテン、ブリックス(Brix)及び酸を有する。
【実施例】
【0011】
(本植物の植物学上の説明)
本植物新種の以下の詳細な説明は、2003年の10月〜12月に2箇所の異なる場所で育てた栄養生長期(植え付け後314日)及び花序発生(植え付け後384日)及び果実収穫(植え付け後468日)で良く実のなった標本の観察に基づく。まず、ホンジュラスの北部海岸のモンテクリスト農場で(北緯15度44分、西経86度53分)。コスタリカの大西洋斜面(El Bosque農場、北緯10度52分;西経84度73分)で育てた植物の観察も含まれる。モンテクリストの平均気温は26℃、3542-mmの平均年間降水量であり、El Bosqueの気温は平均25℃で、年間降雨量は3217-mmである。
植物標本及び組織の色は、Gretag Macbeth LLC, New Windsor, New York出版の植物組織のマンセル(Munsell)色図表で報告されている学術用語と名称を参照する。色図表と色は、色相値と彩度表示法によって報告されている。
【0012】
以下は、ホンジュラスのモンテクリスト農場と、コスタリカのEl Bosque農場で育てた新種の植物集団の詳細である(括弧内の数字はコスタリカで育てた植物について)。
名称:Ananas comosus(L.) Merr. Var. P-1972、パイナップル科、単子葉植物亜綱。

I. 種子親−クローン‘64-337’
II. 花粉親−クローン‘59-443’
起源:クローン‘64-337’と‘59-443’のPRI交雑
分類:
植物学上:
科:パイナップル(Bromeliaceae)科
亜科:Bromeliacidae
属:Ananas
種:comosus
栽培変種植物:‘64-337’ב59-443’(変種P-1972)
【0013】
商用:Bromeliad果実植物
一般形態:‘P-1972’植物の空中部分は、開いた群葉を有し、かつ中心茎から現れ、開花期の間コンポジット花序を取り囲む重なった無柄葉の密集したロゼット(rosette)から成る。開花期の間又はその後に開始される異種類(hapas、吸枝及び挿し木)の側枝数は、平均してそれぞれ1.1、0.1及び0.1〜5.3である。優性な側枝は、最初の果実収穫後引き続き作物を生じさせる。植物の高さは、果実を含めて測定し、平均して86.4±14.0cmで、標準的と考えられる(コスタリカ−93.9±3.1)。茎の平均径は、基底部で、収穫時に測定して5.6±1.1cmである。
茎:茎花柄は直立し、かつ短く、通常、開花期の高さ20.6±3.9cm、直径7.5±1.4cmである。茎は、求頂的様式で配置される重なった葉によって納められ、心臓形状の茎を形成している。茎の色は淡い緑色(5 GY 7/8〜7/10)である。
葉:
一般:葉は無柄、披針形で、非常に伸長した多肉多汁であり、頭の尖った頂端形状を有し、かつ5/13葉序のロゼットを形成している。群葉姿勢はかなり開いており、中間抵抗性の葉破損を有する。葉の表面テクスチャーは、両表皮上に毛状体が存在するにもかかわらず滑らかである。1植物当たりの葉の数は44.2±5.6〜54.7±4.2(コスタリカ−56±5)の範囲であり、各葉の基部に発達休止中の腋芽がある。
色:
植物組織のマンセル図表で決定される頂上から15番目の葉の上面の色は、淡い緑色(5 GY 6/6、6/8、7/6、7/8、5/10から変動)から暗い緑色(5 GY 4/4、4/6、4/8、5/6、5/8)の範囲である。
縁:葉は、完全にとげがなく、上の葉面を覆う折りたたまれた下表皮の部分に起因するパイピングの存在を示す。上側から見えるパイピングはオリーブグリーン色(5 GY 6/6〜6/8)を呈し、下側では、灰色がかったオリーブ色が観察される(5 GY 5/4〜5/6)。最長リードの厚さは、平均して1.5±0.4である。
挿入角度:列間41cm(16インチ)、植物間25cm(10インチ)の植え付け間隔で育てた2.3kgの植物中、最も若い葉から14番目で58.9±4°。
葉の大きさ:完全に発育した葉は、長さ106.6±6.7cm〜130.1±4cm、幅6.3±0.4〜7.6±0.9cmの範囲である。
葉の脈相:葉の両面で目立つ特別な帯に沿って平行。
【0014】
花序:
一般:3枚の萼片(長さ9.1±1.1mm)、6本の雄しべ(長さ14.6±0.9mm)、3つの柱頭(幅1.5±0.4cm)、及び3枚の心皮(幅5.3±0.8mm)を含有する自家不和合性の個々の両性花を有する、コンポジット花のパイナップル花序。この花序は、長さ20.6±3.9cmで、明るい緑から緑の彩色(7.5 GY 7/8〜7/10、5/6〜5/8)の長い花柄内で支えられる。各花序は、84〜138個の小果実で構成される。中間開花期の花序の平均サイズは、直径6.0±0.5cm、高さ10.5±0.5cmである。
花の包葉は、滑らかな縁側面を有する披針形であり、小果実(長さ18±1.6mm、基底部で15.8±1.9mm)の1/3を覆っている。包葉の頂端は、先端を切った基部を有するのぎがある。未熟な果実では、包葉の色は、外側で淡い緑色(5 GY 6/8)であるが、熟した果実の包葉先端色は、内側で深いピンク色(5 R 6/10、6/8)である。
萼片は円形に近い形状であり、基部の向軸側でオリーブグリーン色を有する(5 GY 6/8〜6/10)。
花弁は、先端が紫(5 RP 4/4)から、中心が白紫(5 RP 4/10、4/12)、かつ底部が白っぽい色に色が変化する長楕円形である。花粉の色は黄色(5 Y 8/8〜8/10)である。
【0015】
果実:
果実の形状:果実は均一な円柱形かつ対称的で、わずかに先細りで直径12.1±0.7cmである(コスタリカ−10.9±2.0cm)。殻は滑らかかつ薄く、フラットな小果実の目を有する。1植物当たりの小果実は、果実の大きさによって113〜146の範囲で変わり、最長螺旋内の小果実の平均数は、13.1±2.3である(コスタリカ−10〜19)。
果実及び副花冠の平均高さは、果実/副花冠比0.9で、それぞれ15.4±3.2及び17.2±4.1cmである(コスタリカ−11.7±2.7及び11.8±0.6cm)。平均果実質量は1.9〜2.4kgの範囲であり(コスタリカ−1.57±0.43kg)、副花冠質量は0.18±0.02〜0.26±0.05kgで変化する。
色:未熟な小果実の色は緑色(7.5 GY 4/2、3/2)である。小果実が熟した場合(5等級)、色はゴールデンイエロー(2.5 Y 8/10、8/8、7/8、7/10)である。果実の中心径は2.7±0.7cmである。
副花冠の特徴:副花冠は長い円錐形状である。葉の色は緑色(5 GY 5/6、5/8、4/8)である。葉はとげがなく、滑らかで、葉の縁にパイピングがある。
果肉と果汁の特徴(等級5):果肉は密で濃厚な滑らかなテクスチャーで、小量の繊維細胞と独特なマンゴ様の芳香を有する。時折、種がほとんど見られない(1〜5)。果肉色は、オレンジ-イエロー〜ゴールデンイエロー(2.5 Y 8/8、8/10)で、受け入れうる半透明の外観を有する。中心径は、平均して2.7±0.7cmであり、オレンジイエロー色(2.5 Y 8/6〜8/8)を有する。果汁のpHは、平均して3.7であり、15.3±1.3度のブリックス値と0.53±0.1の酸価を有する。アスコルビン酸(mg AA/100ml果汁、インドフェノール法)は22.8〜27.5の範囲内であり、クエン酸含量は0.58〜0.62で変化する。
花柄:果実は、通常長さ20.6±3.9cm及び直径3.3±0.7cmの花柄上で該植物の頂端分裂組織から発生する。花柄の包葉数は8.1±1.4cmで、最長包葉の長さは20±4.6cmである。
















【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】‘P-1972’と‘75-80’との差異を示す写真であり、‘P-1972’(a)と‘75-80’(b)との比較を示す。
【図2】‘P-1972’と‘75-80’との差異を示す写真であり、‘P-1972’(a)と‘75-80’(b)との比較を示す。
【図3】‘P-1972’と‘75-80’との差異を示す写真であり、‘P-1972’(a)と‘75-80’(b)との比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に本明細書に示しかつ記載するとおりの名称‘P-1972’の新規かつ特徴的なパイナップル植物の変種。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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