説明

吐出器

【課題】押下ヘッドと被覆体との軸線回りの相対的な回転を規制して被覆体のノズル開口によるノズルへの負荷を防止したり被覆体によるノズルの閉塞を防止したりすることができると共に、押下ヘッドに対する被覆体の周方向の位置決めを行って被覆体のノズル開口を押下ヘッドのノズル位置に容易に一致させることができる吐出器を提供することを目的とする。
【解決手段】上方付勢状態で押込み可能に起立したステム4と、ステム4の上端部に装着され、ステム4に連通するノズル51が備えられた押下ヘッド5と、押下ヘッド5に被着され、ノズル51を外部に露出させるノズル開口62が形成された被覆体6と、を備える吐出器1において、被覆体6の下端部に切欠き63,64が形成され、押下ヘッド5の外周面に、切欠き63,64内に配置された凸部54,55が突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出器として、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、上方不正状態で押込み可能に起立したステムと、そのステムの上端部に装着された押下ヘッドと、押下ヘッドに被着された被覆体と、を備えた構成が知られている。上記した押下ヘッドには、ステムに連通する連通路を有するヘッド本体と、ヘッド本体の外周面から突出されていると共に前記連通路を介してステムに連通されたノズルと、が備えられている。被覆体は、上記した押下ヘッドを内側に収納する有頂筒状の部材であり、この被覆体の周壁部には、上記したノズルが挿通されるノズル開口が形成されている。このような吐出器によれば、被覆体によって押下ヘッドの装飾性を容易に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−167832号公報(第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の吐出器では、外観が円柱形状の押下ヘッドに円筒形状の被覆体が装着されているため、押下ヘッドと被覆体とが相対的に軸線回りに回転可能となっている。したがって、被覆体と押下ヘッドとが相対的に軸線回りに回転しようとしたときに、ノズルがノズル開口に掛止され、ノズルに負荷がかかるおそれがある。
【0005】
また、仮に、ノズルが、ヘッド本体の外周面から突出されてなく、ノズル開口の径方向内側に対向配置されている場合には、被覆体と押下ヘッドとが相対的に軸線回りに回転して、ノズル開口とノズルとの周方向位置がずれてノズルが被覆体によって塞がれるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、押下ヘッドと被覆体との軸線回りの相対的な回転を規制して被覆体のノズル開口によるノズルへの負荷を防止したり被覆体によるノズルの閉塞を防止したりすることができると共に、押下ヘッドに対する被覆体の周方向の位置決めを行って被覆体のノズル開口を押下ヘッドのノズル位置に容易に一致させることができる吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吐出器は、上方付勢状態で押込み可能に起立したステムと、該ステムの上端部に装着され、該ステムに連通するノズルが備えられた押下ヘッドと、該押下ヘッドに被着され、前記ノズルを外部に露出させるノズル開口が形成された被覆体と、を備える吐出器において、前記被覆体の下端部に切欠きが形成され、前記押下ヘッドの外周面に、前記切欠き内に配置された凸部が突設されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、押下ヘッドの凸部が被覆体の切欠きの内縁に係止されることで、押下ヘッドと被覆体との相対的な軸線回りの回転が規制される。また、押下ヘッドに被覆体を被着させる際に、押下ヘッドの凸部を被覆体の切欠き内に配置させることで、押下ヘッドと被覆体との相対的な周方向の位置が決められる。
【0009】
また、本発明に係る吐出器は、前記被覆体が金属からなることが好ましい。
これにより、被覆体によって押下ヘッドが外観上、金属製となり、高級感を付与することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る吐出器は、前記押下ヘッドの外周面及び前記被覆体の内周面のうちのいずれか一方に、軸方向に沿って延在する係合溝が形成され、他方に、前記係合溝の内側に配置される係合突起が突設されていることが好ましい。
これにより、係合突起が係合溝の内周面に係止されることで、押下ヘッドと被覆体との相対的な軸線回りの回転が規制される。また、押下ヘッドに被覆体を被着させる際、まず、押下ヘッドの上端部の外周に被覆体の下端部を被せる。このとき、係合突起を係合溝の内側に配置させる。次に、係合突起を係合溝に沿って摺動させながら被覆体を押下ヘッドに対して相対的に下降させる。これにより、被覆体の内側に押下ヘッドが収納されると共に、押下ヘッドの凸部が被覆体の切欠き内に配置される。このとき、係合溝が軸方向に沿って延在しているので、係合突起及び係合溝によって被覆体が軸方向に案内され、被覆体が軸方向に沿って下降し、被覆体の切欠き内に押下ヘッドの凸部が配置される。
【0011】
また、本発明に係る吐出器は、容器の口部に装着可能な装着キャップが備えられ、該装着キャップの天壁部には、軸方向に沿って延在すると共に平面視において内側に前記押下ヘッドが配置された立上り筒部が立設されており、該立上り筒部の内周面には、前記立上り筒部の上端に沿って周方向に延在する段差状の周溝部と、該周溝部から軸方向下側に向けて延在する縦溝部と、を備えた溝部が形成されており、該溝部の内側に前記凸部が移動可能に配置されていることが好ましい。
【0012】
これにより、当該吐出器を使用しない時には、周溝部の内側のうち、縦溝部から周方向にずらした位置に凸部を配置させる。これにより、周溝部の下面に凸部が係止されるので、押下ヘッドの下降が規制される。一方、当該吐出器を使用する際には、まず、押下ヘッドを立上り筒部に対して相対的に軸線回りに回転させ、凸部を縦溝部の直上に配置させる。続いて、凸部を縦溝部に沿って移動させながら押下ヘッドを押し下げる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吐出器によれば、押下ヘッドと被覆体との軸線回りの相対的な回転が規制されるので、被覆体のノズル開口によるノズルへの負荷を防止したり被覆体によるノズルの閉塞を防止したりすることができる。また、押下ヘッドに対する被覆体の周方向の位置決めを行って被覆体のノズル開口を押下ヘッドのノズル位置に容易に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の縦断面図である。
【図2】図1に示すA−A間の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための吐出器の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る吐出器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、本実施の形態では、吐出器1における押下ヘッド5側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、図1に示す符号Oは、吐出器1の中心軸線を示しており、以下、単に軸線Oと記す。また、この軸線O方向を、以下、単に「軸方向」と記し、軸線Oに直交する方向を、以下、単に「径方向」と記し、軸線O回りの方向を、以下、単に「周方向」と記す。
【0016】
図1から図3に示すように、吐出器1は、内容物を収容した容器10の口部11に装着され、その容器10内の内容物を吐出する吐出ポンプである。吐出器1の概略構成としては、容器10の口部11に装着された装着キャップ2と、装着キャップ2に取り付けられたポンプ3と、ポンプ3のシリンダ30の上端から上方付勢状態で押込み可能に起立したステム4と、ステム4の上端部に装着された押下ヘッド5と、押下ヘッド5に被着された被覆体6と、が備えられている。なお、上記した容器10の口部11の外周面には雄ねじ12が形成されている。
【0017】
装着キャップ2は、円環状の天壁部20と、天壁部20の外縁から垂下された周壁部21と、天壁部20の外縁から立設された立上り筒部22と、を備えている。天壁部20は、軸線Oを中心にして軸線Oに対して垂直に配設されている。周壁部21は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設された円筒形状の筒部であり、その内周面には、上記した口部11の雄ねじ12に螺着される雌ねじ23が形成されている。立上り筒部22は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設された円筒形状の筒部である。この立上り筒部22の内周面には、軸線Oを対称軸にして回転対称に配設された複数の溝部24,25が形成されている。
【0018】
具体的に説明すると、立上り筒部22の内周面には、第一溝部24と第二溝部25とが形成されている。これら第一溝部24及び第二溝部25は、立上り筒部22の上端に沿って周方向に延在する平面視円弧状の周溝部26,28と、周溝部26,28の一端から軸方向に沿って延在する直線状の縦溝部27,29と、をそれぞれ備えている。
【0019】
周溝部26,28は、立上り筒部22の上端の内縁部に形成された段差状(縦断面視L字状)の溝部であり、立上り筒部22の上端面側および内周面側にそれぞれ開放されている。第一溝部24の周溝部(第一周溝部26)と第二溝部25の周溝部(第二周溝部28)は、軸線Oを挟んで対称に配設されている。第一周溝部26の奥行き(径方向の寸法)及び高さ(軸方向の寸法)と第二周溝部28の奥行き及び高さとはそれぞれ同等の長さである。また、第一周溝部26の下面26aの全長(周方向の寸法)と第二周溝部28の下面28aの全長は同等の長さである。
【0020】
縦溝部27,29は、立上り筒部22の内周面側に開放された横断面視凹状の溝部であり、上記した周溝部26,28の一端部から立上り筒部22の下端(天壁部20の上面)まで延設されている。第一溝部24の縦溝部(第一縦溝部27)と第二溝部25の縦溝部(第二縦溝部29)は、軸線Oを挟んで対称に配設されている。第一縦溝部27の奥行き(径方向の寸法)と第二縦溝部29の奥行きとはそれぞれ同等であり、第一周溝部26や第二周溝部28の奥行きと同等の長さとなっている。一方、第二縦溝部29の横幅(周方向の寸法)は、第一縦溝部27の横幅よりも大きい。
【0021】
ポンプ3は、容器10内の内容物をステム4内に送る公知の機構であり、軸方向に沿って延設されたシリンダ30の内側に図示せぬピストンや付勢部材、バルブなどが収納された構成からなる。シリンダ30の上部には、径方向外側に突出したフランジ部31が全周に亘って形成されている。この円環状のフランジ部31は、装着キャップ2の周壁部21の上端部の内側に嵌合されており、シリンダ30の上端部は、装着キャップ2の天壁部20の内側に挿通されている。また、フランジ部31は、円環状のパッキン32を介して容器10の口部11の上端面に載置されており、このフランジ部31を介してポンプ3は支持されている。また、上記したシリンダ30の下端部には、容器10の内側に収納されるディップチューブ7が連結されている。
【0022】
ステム4は、軸方向に沿って延在する略円筒形状の筒体であり、軸線Oを共通軸にして上記した立上り筒部22と同軸上に配設されている。このステム4の下端部には上記したポンプ3の図示せぬピストンが連結されており、このピストンを付勢する図示せぬ付勢部材によって上方付勢状態で配置されている。
【0023】
押下ヘッド5は、指等で押し下げ操作するための操作部であり、その概略構成としては、ステム4の上端部に装着されたヘッド本体50と、ヘッド本体50の外周面から径方向外側に向けて突出したノズル51と、を備えている。
【0024】
ヘッド本体50は、外観が略円柱形状の部材であり、その概略構成としては、平面視円形の天壁部52と、天壁部52の外縁から垂下された周壁部53と、周壁部53の内側に配設されてステム4に連通された図示せぬ連通路と、を備えている。周壁部53は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在する円筒形状の筒部であり、周壁部53の下端部の外周面には、上記した装着キャップ2の複数の溝部24,25の内側に移動可能にそれぞれ配置された複数の凸部54、55が突設されている。
【0025】
具体的に説明すると、周壁部53の下端部の外周面には、上記した第一溝部24の内側に配置された第一凸部54と、上記した第二溝部25の内側に配置された第二凸部55と、が突設されている。これら第一凸部54及び第二凸部55は、軸方向に沿って延在する略長方形状の凸リブであり、軸線Oを挟んで対称に配設されている。また、第一凸部54及び第二凸部55は、後述する被覆体6の切欠き63,64内に挿通され、被覆体6の径方向外側に突出されている。第一凸部54の奥行き(径方向の寸法)及び高さ(軸方向の寸法)と第二凸部55の奥行き及び高さはそれぞれ同等の長さである。一方、第二凸部55の横幅(周方向の寸法)は第一凸部54の横幅よりも大きい。
【0026】
また、ヘッド本体50には、ノズル51を取り付けるノズル取付部57が形成されている。このノズル取付部57は、ノズル51の基端部がアンダーカット嵌合される孔部であり、周壁部53の上部の外周面から外部に向けて開放されている。なお、このノズル取付部57の開口部57aは、上記した第一凸部54と同じ周方向位置に形成され、上記した第一凸部54の直上に配設されている。
【0027】
また、周壁部53の外周面には、軸方向に沿って延在する係合溝56が形成されている。この係合溝56は、断面視半円状の溝部であり、第一凸部54とノズル取付部57の開口部57aとの間、及び、ノズル取付部57の開口部57aと周壁部53の上端との間にそれぞれ形成されている。
【0028】
ノズル51は、ステム4内からヘッド本体50の図示せぬ連通路内に供給された内容物を外部に向けて吐出させる筒部材であり、ヘッド本体50に取り付けられてヘッド本体50の図示せぬ連通路の内側に連通されている。ノズル51の先端部は、先端側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状を成している。ノズル51の基端部は上記したノズル取付部57の内側に嵌合される筒部であり、その外周面には、ノズル取付部57の内周面に係合される係合凸部58が全周に亘って突設されている。
【0029】
上記した押下ヘッド5は、平面視において立上り筒部22の内側に配設されており、周壁部53の下端部は、立上り筒部22の上端部の内側に挿入されている。そして、上記したノズル51は、立上り筒部22の上方に配設されている。
【0030】
被覆体6は、押下ヘッド5を被覆する有頂筒状のカバーであり、この被覆体6の内側に押下ヘッド5(ヘッド本体50)が嵌合されている。また、被覆体6は、押下ヘッド5の材質(例えば合成樹脂)と異なる材質の部材であり、例えばアルミニウム等の金属からなる。被覆体6の概略構成としては、軸線Oに対して垂直に配設された円形板状の天壁部60と、天壁部60の外縁から垂下された周壁部61と、を備えている。
【0031】
天壁部60は、押下ヘッド5の上面を覆う壁部であり、ヘッド本体50の天壁部52の上方に配設されている。周壁部61は、押下ヘッド5の外周面を覆う円筒形状の筒部であり、ヘッド本体50の周壁部53の外側に周設されている。この周壁部61は、軸線Oを共通軸にしてヘッド本体50の周壁部53と同軸上に配設されている。
【0032】
周壁部61には、ノズル51を外部に露出させるノズル開口62が形成されている。このノズル開口62は、ノズル51が挿通される円形の挿通孔であり、周壁部61の上部に形成され、上記したノズル取付部57の開口部57aに合わせられてノズル取付部57に連通されている。
【0033】
また、周壁部61の下端部には、複数の切欠き63,64が形成されている。
具体的に説明すると、周壁部61の下端部には、上記した第一凸部54が内側に配置される第一切欠き63と、上記した第二凸部55が内側に配置される第二切欠き64と、がそれぞれ形成されている。これら第一切欠き63及び第二切欠き64は、周壁部61の下端から上方に切り欠いた凹状の開口であり、第一凸部54や第二凸部55に沿って形成されている。また、第一切欠き63及び第二切欠き64は、軸線Oを挟んで対称に配設されている。また、第一切欠き63は、上記したノズル開口62と同じ周方向位置に形成されており、上記したノズル開口62の直下に配設されている。また、第一切欠き63の高さ(軸方向の寸法)と第二切欠き64の高さは同等の長さである。一方、第二切欠き64の横幅(周方向の寸法)は第一切欠き63の横幅よりも大きい。
【0034】
また、周壁部61の内周面には、上記したヘッド本体50の係合溝56の内側に配置された係合突起65が突設されている。この係合突起65は、係合溝56の内周面に係止される小突起であり、係合溝56に沿って軸方向に移動可能な半球状の突部である。係合突起65は、上記した第一切欠き63やノズル開口62と同じ周方向位置に形成されており、上記した第一切欠き63とノズル開口62との間に配設されている。
【0035】
次に、上記した吐出器1の製造方法について説明する。
【0036】
まず、ステム4の下端部をポンプ3の図示せぬピストンに嵌合させてポンプ3のシリンダ30の上端からステム4を起立させると共に、シリンダ30の下端にディップチューブ7を嵌合させる。また、ポンプ3のシリンダ30の外側にパッキン32を嵌装させ、このパッキン32をポンプ3のフランジ部31の下面に重ね合わせると共に、ポンプ3のフランジ部31を装着キャップ2の周壁部21の上端部の内側に嵌合させてポンプ3を装着キャップ2に装着させる。
【0037】
次に、押下ヘッド5のヘッド本体50に被覆体6を被着させる工程を行う。
詳しく説明すると、図3に示すように、まず、ヘッド本体50の上端側から被覆体6を被せて、被覆体6の下端部の内側にヘッド本体50の上端部を挿入させる。このとき、被覆体6の係合突起65をヘッド本体50の係合溝56の内側に配置させる。これにより、ヘッド本体50の第一凸部54の直上に被覆体6の第一切欠き63が配置され、ヘッド本体50の第二凸部55の直上に被覆体6の第二切欠き64が配置される。
【0038】
続いて、被覆体6をヘッド本体50に対して相対的に軸方向下側に移動させて被覆体6の内側にヘッド本体50を嵌合させる。このとき、被覆体6の係合突起65をヘッド本体50の係合溝56に沿って摺動させることで、被覆体6が軸方向に案内され、被覆体6は軸方向に沿って下降する。これにより、被覆体6の第一切欠き63内にヘッド本体50の第一凸部54が嵌め込まれると共に、被覆体6の第二切欠き64内にヘッド本体50の第二凸部55が嵌め込まれる。そして、これら切欠き63,64内に凸部54,55を配置させることで、ヘッド本体50と被覆体6との相対的な軸線O回りの回転が規制される。これにより、ヘッド本体50と被覆体6との相対的な周方向の位置決めが行われ、ノズル取付部57の開口部57aと被覆体6のノズル開口62とが合わせられ、ノズル取付部57がノズル開口62を介して外部に向けて開放される。
【0039】
次に、ヘッド本体50にノズル51を取り付ける工程を行う。
詳しく説明すると、ノズル51の基端部を被覆体6のノズル開口62を通してヘッド本体50のノズル取付部57の内側に挿入し、ノズル51の係合凸部58によってノズル51の基端部をノズル取付部57の内側に嵌合させる。これにより、ノズル51の内側とヘッド本体50の図示せぬ連通路が連通される。
【0040】
次に、ヘッド本体50をステム4の上端部に装着させる工程を行う。
詳しく説明すると、ヘッド本体50をステム4の上端部に嵌合させ、ヘッド本体50の図示せぬ連通路とステム4の内側とを連通させる。このとき、ヘッド本体50の第一凸部54を装着キャップ2の立上り筒部22の第一溝部24の内側に配置させると共に、ヘッド本体50の第二凸部55を立上り筒部22の第二溝部25の内側に配置させる。上記した第一凸部54と第二凸部55、及び、第一溝部24と第二溝部25は、それぞれ外観形状(大きさ)が異なっているので、それぞれを目視で容易に確認することが可能である。そして、第一凸部54を第一溝部24の内側に、第二凸部55を第二溝部25の内側に配置させることで、押下ヘッド5の装着キャップ2に対する相対的な周方向位置が決められ、ノズル51が所定の向きに配置される。
【0041】
以上により、吐出器1の組み立てが完了する。なお、ヘッド本体50に被覆体6を被着させる前、又は、ヘッド本体50にノズル51を取り付ける前に、ヘッド本体50をステム4の上端部に装着させてもよい。
【0042】
次に、上記した吐出器1の使用方法について説明する。
【0043】
まず、吐出器1を使用しない時には、周溝部26,28の内側のうち、縦溝部27,29から周方向にずれた位置に凸部54,55を配置させる。具体的には、図2の二点鎖線で示すように、第一周溝部26の他端部(周方向における第一縦溝部27側の反対側)に第一凸部54を配置すると共に、第二周溝部28の他端部(周方向における第二縦溝部29側の反対側)に第二凸部55を配置する。これにより、第一周溝部26の下面26aに第一凸部54が掛止されると共に、第二周溝部28の下面28aに第二凸部55が掛止されるので、押下ヘッド5の下降が規制される。
【0044】
一方、吐出器1を使用する際には、まず、図2の実線で示すように、押下ヘッド5を立上り筒部22に対して相対的に軸線O回りの一方側に回転させ、凸部54,55を縦溝部27,29の直上に配置させる。具体的に説明すると、押下ヘッド5と立上り筒部22とを相対的に軸線O回りに回転させ、第一凸部54を第一周溝部26の他端部から一端部側に移動させて第一周溝部26の下面26aから外すと共に、第二凸部55を第二周溝部28の他端部から一端部側に移動させて第二周溝部28の下面28aから外す。
【0045】
続いて、凸部54,55を縦溝部27,29に沿って移動させながら押下ヘッド5を押し下げる。詳しく説明すると、押下ヘッド5に被着された被覆体6の天壁部60の上面を指等で押圧し、押下ヘッド5を押し下げる。このとき、第一凸部54が、軸方向に延在する第一縦溝部27内に配置されていると共に、第二凸部55が、軸方向に延在する第二縦溝部29内に配置されるので、これら凸部54,55及び縦溝部27,29によって押下ヘッド5が軸方向に沿って案内される。これにより、押下ヘッド5が回転しないで軸方向に沿って真直ぐに押し下げられる。
【0046】
上述したように押下ヘッド5が押し下げられると、押下ヘッド5に嵌着されたステム4がシリンダ30内に押し込められ、ステム4と共にポンプ3の図示せぬピストンが下降する。これにより、シリンダ30内の内容物がステム4内を通ってヘッド本体50の図示せぬ連通路内に流入し、その連通路内からノズル51内に流入してノズル51の先端から外部に吐出される。
【0047】
続いて、上記した押下ヘッド5の押し下げを解除すると、ポンプ3の図示せぬ付勢部材によって図示せぬピストンが上昇し、このピストンに連結されたステム4及び押下ヘッド5がそれぞれ押し上げられ、押下ヘッド5が元の位置に戻される。これにより、ノズル51からの内容物の吐出が停止すると共に、容器10内の内容物がディップチューブ7を通ってシリンダ30内に供給される。
【0048】
そして、吐出器1の使用後は、押下ヘッド5を立上り筒部22に対して相対的に軸線O回りの他方側に回転させ、凸部54,55を周溝部26,28の下面26a,28a上に配置させる。周溝部26,28の下面26a,28aに凸部54,55が掛止され、押下ヘッド5の下降が規制される。
【0049】
上記した構成からなる吐出器1によれば、押下ヘッド5の凸部54,55が被覆体6の切欠き63,64の内縁に係止されることで、押下ヘッド5と被覆体6との相対的な軸線O回りの回転が規制されている。したがって、被覆体6のノズル開口62の縁部によってノズル51の外周面が押圧されず、ノズル開口62によるノズル51への負荷を防止することができる。
【0050】
また、切欠き63,64内に凸部54,55を配置させることで、ヘッド本体50と被覆体6との相対的な軸線O回りの回転が規制され、ヘッド本体50と被覆体6との相対的な周方向の位置が決められるので、ノズル取付部57の開口部57aと被覆体6のノズル開口62との位置を一致させることができる。これにより、ノズル取付部57とノズル開口62との周方向位置を合わせる作業を省略することができ、吐出器1の生産性を向上させることができる。
【0051】
また、被覆体6が金属からなるため、被覆体6によって吐出器1における押下部分が外観上、金属製となる。これにより、吐出器1の装飾性を向上させることができる。
【0052】
また、被覆体6の係合突起65が押下ヘッド5の係合溝56の内周面に係止されることで、押下ヘッド5と被覆体6との相対的な軸線O回りの回転がより確実に規制されるので、ノズル開口62によるノズル51への負荷を確実に防止することができると共に、ノズル取付部57の開口部57aと被覆体6のノズル開口62との位置を確実に一致させることができる。
また、被覆体6を押下ヘッド5に被着させる際、被覆体6の係合突起65を押下ヘッド5の係合溝56の内側に配置させた後、係合溝56に沿って被覆体6を下降させることで、被覆体6の切欠き63,64内に押下ヘッド5の凸部54,55を容易に配置させることができる。
【0053】
また、凸部54,55を周溝部26,28の下面26a,28a上に配置させることで、周溝部26,28の下面26a,28aに凸部54,55が掛止され、押下ヘッド5の下降が規制されるので、押下ヘッド5が不用意に押し下げられることを防止することができる。
【0054】
以上、本発明に係る吐出器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、ノズル51が被覆体6の周壁部61の径方向外側に突出されているが、本発明は、ノズルが被覆体6の外側に突出されていなくてもよく、被覆体6の内側にノズルの先端が配設され、被覆体6のノズル開口62の径方向内側にノズルの先端面が対向配置されていてもよい。例えば、ヘッド本体50の周壁部53の内側にノズルが埋設されていてもよい。この場合、押下ヘッド5の凸部54,55が被覆体6の切欠き63,64の内縁に係止され、押下ヘッド5と被覆体6との相対的な軸線O回りの回転が規制されることで、ノズル開口62とノズルとを一致させることができ、被覆体6の周壁部61によってノズルが塞がれることを防止することができる。なお、ノズルの先端が被覆体の内側に配設されている場合、ヘッド本体とノズルとが一体に形成されていてもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態では、被覆体6の周壁部61の上部に円形孔状のノズル開口62が形成され、被覆体6の周壁部61の下端部に凹状の第一切欠き63が形成されているが、本発明は、ノズル開口と切欠きを一体に形成してもよい。すなわち、被覆体6の周壁部61に、周壁部61の下端から軸方向に沿って周壁部61の上部まで延びる長孔を形成し、この長孔の上端部にノズル51を挿通させると共に、上記した長孔の下端部に第一凸部54を挿通させてもよい。なお、この場合、長孔は、ノズル51の外径に合わせた横幅(周方向の寸法)で形成されるので、この長孔の横幅に合わせて第一凸部54の横幅(周方向の寸法)を大きくすることが好ましい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、凸部54,55、切欠き63,64及び溝部24,25が各2つずつ配設されているが、本発明は、凸部、切欠き及び溝部が1つずつであってもよく、或いは、3つ以上配設されていてもよい。
なお、3つ以上の凸部、切欠き及び溝部を有する場合、それら複数の凸部等の周方向に均等に配設されていると共に、それら複数の凸部等のうち、少なくとも1つの凸部が他の凸部と異なる形状を成していることが好ましい。これにより、被覆体6や立上り筒部22に対する押下ヘッド5の周方向の位置決めを行うことができ、ノズル51を所定の向きに配設させることができる。
また、複数の凸部等を周方向に不均等に配設させることで、被覆体6や立上り筒部22に対する押下ヘッド5の周方向の位置決めを行うことができ、ノズル51を所定の向きに配設させることができる。
【0057】
また、上記した実施の形態では、被覆体6の周壁部61の内周面に係合突起65が形成され、押下ヘッド5のヘッド本体50の周壁部53の外周面に係合溝56が形成されているが、本発明は、被覆体6の周壁部61の内周面に係合溝が形成され、ヘッド本体50の周壁部53の外周面に係合突起が形成されていてもよい。なお、上記した係合溝及び係合突起を省略することも可能である。
【0058】
また、上記した実施の形態では、立上り筒部22に溝部24,25が形成されているが、本発明は、溝部24,25を省略することも可能であり、或いは、立上り筒部22自体を省略することも可能である。
また、上記した実施の形態では、金属製の被覆体6が押下ヘッド5に被着されているが、本発明は、金属製以外の被覆体を用いることも可能であり、例えば合成樹脂製の被覆体を用いることも可能である。
【0059】
また、上記した実施の形態では、ポンプ3を有する吐出器1について説明しているが、本発明は、ポンプ式の吐出器でなくてもよく、例えば、ポンプ3が備えられていないエアゾール容器などでもよい。
【0060】
また、上記した実施の形態では、外観が略円柱形状の押下ヘッド5に有頂円筒形状の被覆体6が被着されているが、本発明は、押下ヘッドや被覆体の形状は適宜変更可能である。例えば、半球状やテーパー形状の押下ヘッドや被覆体であってもよい。
【0061】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 吐出器
2 装着キャップ
4 ステム
5 押下ヘッド
6 被覆体
10 容器
11 口部
20 天壁部
22 立上り筒部
24 第一溝部(溝部)
25 第二溝部(溝部)
26 第一周溝部(周溝部)
27 第一縦溝部(縦溝部)
28 第二周溝部(周溝部)
29 第二縦溝部(縦溝部)
51 ノズル
54 第一凸部(凸部)
55 第二凸部(凸部)
56 係合溝
62 ノズル開口
63 第一切欠き(切欠き)
64 第二切欠き(切欠き)
65 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で押込み可能に起立したステムと、該ステムの上端部に装着され、該ステムに連通するノズルが備えられた押下ヘッドと、該押下ヘッドに被着され、前記ノズルを外部に露出させるノズル開口が形成された被覆体と、を備える吐出器において、
前記被覆体の下端部に切欠きが形成され、
前記押下ヘッドの外周面に、前記切欠き内に配置された凸部が突設されていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1記載の吐出器において、
前記被覆体が金属からなることを特徴とする吐出器。
【請求項3】
請求項1または2記載の吐出器において、
前記押下ヘッドの外周面及び前記被覆体の内周面のうちのいずれか一方に、軸方向に沿って延在する係合溝が形成され、他方に、前記係合溝の内側に配置される係合突起が突設されていることを特徴とする吐出器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の吐出器において、
容器の口部に装着可能な装着キャップが備えられ、
該装着キャップの天壁部には、軸方向に沿って延在すると共に平面視において内側に前記押下ヘッドが配置された立上り筒部が立設されており、
該立上り筒部の内周面には、前記立上り筒部の上端に沿って周方向に延在する段差状の周溝部と、該周溝部から軸方向下側に向けて延在する縦溝部と、を備えた溝部が形成されており、
該溝部の内側に前記凸部が移動可能に配置されていることを特徴とする吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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