説明

吐出装置

【課題】物質を保有するパックのための吐出装置であって、吐出作業中、回動可能な前面プレートを確実に閉じた状態に保持する吐出装置を得る。
【解決手段】物質を保有するパック36のための吐出装置であって、吐出機構12と、パック36のための収容空間16とを備え、収容空間16は、吐出機構12および前面プレート26により範囲を画定し、前面プレート26は、回動軸線27で画定される回動ポイント28の周りで開いた状態から閉じた状態に回動可能とし、前面プレート26の回動ポイント28から離間した箇所には、前面プレート26を閉じた状態においてロックする、可撓性スナップ手段31を有するスナップロックを設け、スナップロックに硬質保持部分29を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を保有するパックのための吐出装置であり、この吐出装置は、吐出機構と、パックのための収容空間とを備え、収容空間は、一方の側を吐出機構により、他方の側を、吐出機構から離間して取り付けた前面プレートにより区切り、前面プレートは、回動軸線で画定される回動ポイントの周りに、パックを収容空間内に挿入するための開いた状態から、パックを収容空間内に保持するための閉じた状態に回動可能とし、また、前面プレートの回動ポイントから離間した箇所には、可撓性スナップ手段を有するスナップロックを設け、このスナップロックにより、前面プレートを閉じた状態にて、吐出装置に設け、スナップ手段を受け止めるためのスナップ受け部にロックする該吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの吐出装置は、パックに充填した、例えばモルタルまたはシール剤混合物などの物質を、塗布箇所に吐出するために使用される。これらパックとしては、吐出すべき物質の1成分または複数の成分のための1個または複数の収容空間を有する、例えばカートリッジがあり、これら物は、直接または例えばフォイルパックに充填された状態でカートリッジの収容空間に装填される。「パック」の概念は、吐出すべき物質の1成分または複数の成分が充填されたフォイルパックを含み、これらのフォイルパックは、個別の、または吐出装置に設けた受容体に装着する。
【0003】
さらに、吐出装置の吐出機構には送り機構を設け、この送り機構が作動することで、例えばピストンロッドなどの送り手段を所定量移動させる。ピストンロッドに取り付けた例えばピストンなどの圧力伝達手段は、パック内の物質に作用して、送り動作ごとに対応する量の物質を出口から吐出する。
【0004】
特許文献1(米国特許第6371938号)は、物質を保有するパックのための吐出装置を記載する。この吐出装置の前方には、回動軸線で画定される回動ポイントの周りで、開いた状態から閉じた状態に回動可能な前面プレートを設ける。開いた状態では、新しいパックを収容部に挿入したり、使用済みパックを収容部から取り出したりすることができる。閉じた状態では、吐出作業中、パックは収容部内で吐出方向に向けて保持される。前面プレートの回動ポイントから離れた位置には、U字形の可撓性スナップ手段を有するスナップロックを設け、このスナップロックにより、ボルトとして構成した吐出装置のスナップ受け部に前面プレートを閉じた状態にロックする。
【0005】
この既知の解法は、特にモルタルおよびシーリング剤の吐出作業中に、回動可能な前面プレートに強い負荷が加わる点において不利である。この負荷は、とりわけスナップロックによって吐出装置に伝達される。このとき、可撓性スナップ手段が変形したり、スナップロックが外れたりして、前面フラップとしての前面プレートは不慮に閉じた状態から少なくとも部分的に開いた状態に回動してしまう可能性がある。この場合、吐出作業を中断しなければならず、ユーザーの手間が余計にかかることになる。
【特許文献1】米国特許第6371938号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、回動可能な前面プレートを備える、物質を保有するパックのための吐出装置であって、吐出作業中、確実に閉じた状態に保持する吐出装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立項に記載する特徴によって達成される。好適な実施形態については、従属項に記載する。
【0008】
本発明によれば、スナップロックには、可撓性スナップ手段に隣接して硬質保持部分を設ける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬質保持部分を設けることで、吐出作業中に前面フラップ即ち、前面プレートに作用する負荷は、スナップロックを変形することなく吐出装置に伝達される。硬質保持部分と可撓性スナップ手段とを組合せることで、吐出作業中に吐出装置をどの方向に向けても、前面プレートが意図せずに開いてしまうことはなくなる。さらに、スナップロックは、一定の力を回動方向に加えることで開放されるので、前面プレートは、閉じた状態から開いた状態に簡単に回動して戻すことができる。
【0010】
上述の点に関連して、硬質保持部分とは、可撓性スナップ手段の材料と比較して、より剛性の高い材料から成る保持部分を指すものとする。好適には、硬質保持部分は、前面プレートと同じ材料で形成する。
【0011】
好適には、可撓性スナップ手段を、ボルトとして構成したスナップ受け部のための、硬質保持部分が構成する係止窪みに部分的内に突出させる。このとき、好適には可撓性スナップ手段は、ボルトの背面に係合する。とくに好適には、可撓性スナップ手段は、硬質保持部分の、U字形に形成した係止窪みの遊端に設ける。この可撓性スナップ手段により、回動可能な前面プレートのロックおよびロック解除を簡単に行うことができ、またこれを閉じた状態に確実にロックできるようになる。
【0012】
好適には、可撓性スナップ手段にばね負荷を付与する。この構成により、前面プレートを簡単に開放することができる。また、前面プレートを閉じた状態に、確実にロックすることもできる。可撓性スナップ手段は、例えばばね鋼で製造し、スナップ受け部または錠止の形態に対応するよう構成する。
【0013】
好適には、可撓性スナップ手段を弾性材料とする。好適には、この弾性材料は、ロックまたはロック解除のために撓むのに充分な可撓性を有する弾性材料とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面につき、本発明の最適な実施形態を詳述する。
図1〜3に示す、混合物を含有するパック36のための吐出装置11には、それぞれ押圧ピストン14を設けた2つのピストンロッド13を有する吐出機構12と、パック36のための収容空間16とを設ける。このパック36は、多成分混合物用のカートリッジであり、成分Aを含有する第1収容部38と、成分Bを含有する第2収容部39とを有する。吐出機構12が作動すると、ピストンロッド13は押圧ピストン14と一緒に前方に移動し、多成分混合物の一成分である、パック36内の成分を、混合ハウジング37から、所望の塗布点に吐出される。
【0015】
収容空間16は、一方の側を吐出機構12によって、他方の側を、吐出機構12から離間して取り付けた前面プレート26によって区切る。側方には、吐出装置11の吐出方向に平行に延在する連結ロッド18および20をそれぞれ設け、これらは、吐出機構12から起端し、その遊端19または21は、収容空間16内に挿入したパック36を越えるが、混合ハウジング37前方に突出しない位置まで延在する。前面プレート26には、一方に開口する切除部34を設け、この切除部34は、閉じた状態において、収容空間16内に挿入したパック36の混合ハウジング37を部分的に包囲する。
【0016】
前面プレート26は、一方の連結ロッド18に沿って延在する回動軸線27上における回動ポイント28の周りで、パック36を収容空間16に配置するための開いた状態(図2参照)から、パック36を収容空間16に保持するための閉じた状態(図3参照)に回動可能とする。他方の連結ロッド20の遊端21には周方向の張り出し部を設け、この張り出し部の後方、つまり吐出機構12に対向する側を、回動可能な前面プレート26のためのスナップ受け部22とする。前面プレート26の回動ポイント28から離間した位置に、U字形の硬質保持部分29を有するスナップロックを設け、このスナップロックには、前面プレート26を閉じた状態で吐出装置11のスナップ受け部22に錠止するための係止窪み30と、可撓性スナップ手段31とを設け、この可撓性スナップ手段31により前面フラップすなわち前面プレート26を、さらにスナップ受け部22にしっかりとクランプする。可撓性スナップ手段31は、弾性を持たせた構造とするため、弾性材料で形成する。この可撓性スナップ手段31は、保持部分29の遊端領域における肉厚部32として設け、この肉厚部32は、硬質保持部分29の係止窪み30内に突出し、このため前面フラップ、すなわち前面プレート26をその後方部で確実にスナップ受け部22に保持することができる。さらに、可撓性スナップ手段31には外方に突出するつまみ部33を設ける。前面フラップ、すなわち前面プレート26を解錠する際には、可撓性スナップ手段31は、このつまみ部33を握ることで簡単に外方に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明吐出装置の、パックを配置した状態を示す部分平面図である。
【図2】本発明吐出装置の、前面プレートが開いた状態を示す前方からの端面図である。
【図3】本発明吐出装置の、前面プレートが閉じた状態を示す図1中のIII‐III線上の拡大端面図である。
【符号の説明】
【0018】
11 吐出装置
12 吐出機構
13 ピストンロッド
14 押圧ピストン
16 収容空間
18 連結ロッド
19 遊端
20 連結ロッド
21 遊端
22 スナップ受け部
26 前面プレート
28 回動ポイント
29 硬質保持部分
30 窪み
31 可撓性スナップ手段
32 肉厚部
33 つまみ部
36 パック
37 混合ハウジング
38 第1収容部
39 第2収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を保有するパック(36)のための吐出装置であって、
吐出機構(12)と、前記パック(36)のための収容空間(16)とを備え、
前記収容空間(16)は、一方の側を前記吐出機構(12)により、他方の側を、前記吐出機構(12)から離間して取り付けた前面プレート(26)により区切り、
前記前面プレート(26)は、回動軸線(27)で画定される回動ポイント(28)の周りに、前記パック(36)を前記収容空間(16)内に挿入するための開いた状態から、前記パック(36)を前記収容空間(16)内に保持するための閉じた状態に回動可能とし、
また、前記前面プレート(26)の前記回動ポイント(28)から離間した箇所には、可撓性スナップ手段(31)を有するスナップロックを設け、このスナップロックにより、前記前面プレート(26)を前記閉じた状態において、前記吐出装置(11)に設け、前記スナップ手段(31)を受け止めるためのスナップ受け部(22)にロックする該吐出装置において、
前記スナップロックには、前記可撓性スナップ手段(31)に隣接して、硬質保持部分(29)を設けたことを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載する吐出装置において、前記可撓性スナップ手段(31)を、ボルトとして構成したスナップ受け部(22)のための、前記硬質保持部分(29)が構成する係止窪み(30)内に部分的に突出させた吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吐出装置において、前記可撓性スナップ手段(31)にばね負荷を付与した吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3までのいずれか一項に記載の吐出装置において、前記可撓性スナップ手段(31)を弾性材料で形成した吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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