吐水形態切替装置及びこれを備えた吐水装置
【課題】容易にコンパクト化を図ることができる吐水形態切替装置及びこれを用いた吐水装置を提供すること。
【解決手段】水導出口47及び止水部48aを構成する弁部材46と、水導出口の下流側に配置された導水口形成部30を有し、導水口形成部には水をストレート吐水口31に導くストレート吐水用導水口32及びシャワー吐水孔33に導くシャワー吐水用導水口34が形成された回動部材29と、弁部材と導水口形成部との間に配置され、通水孔45を有し、水導出口に連通する位置に無い通水孔は止水部によって閉塞されるシール部材44とを備え、シール部材は回動部材と一体的に回動し、この回動に伴って、水導出口が通水孔及びストレート吐水用導水口を介してストレート吐水口に連通する状態と通水孔及びシャワー吐水用導水口を介してシャワー吐水孔に連通する状態とに切り替わるように構成されている。
【解決手段】水導出口47及び止水部48aを構成する弁部材46と、水導出口の下流側に配置された導水口形成部30を有し、導水口形成部には水をストレート吐水口31に導くストレート吐水用導水口32及びシャワー吐水孔33に導くシャワー吐水用導水口34が形成された回動部材29と、弁部材と導水口形成部との間に配置され、通水孔45を有し、水導出口に連通する位置に無い通水孔は止水部によって閉塞されるシール部材44とを備え、シール部材は回動部材と一体的に回動し、この回動に伴って、水導出口が通水孔及びストレート吐水用導水口を介してストレート吐水口に連通する状態と通水孔及びシャワー吐水用導水口を介してシャワー吐水孔に連通する状態とに切り替わるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ストレート吐水とシャワー吐水とに切り替えることができる吐水形態切替装置及びこれを備えた吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来の吐水装置は、図26に示すように、シャワー蛇口本体101に対してキャップ102が取り付けられ、このキャップ102を回転させることにより、ストレート吐水とシャワー吐水とに切り替えることができるというものである。
【0003】
すなわち、キャップ102にはストレート吐水用流路P1とシャワー吐水用流路P2とが形成され、キャップ102の回転に伴って、図27に示すようにキャップ102の上流側にある弁座流路P0に対してストレート吐水用流路P1のみが連通する状態と、図28に示すように弁座流路P0に対してシャワー吐水用流路P2のみが連通する状態とに切り替わる。そして、前者の状態ではストレート吐水が行われ、後者の状態ではシャワー吐水が行われるのであって、必要に応じてキャップ102を回転操作することにより何れかの吐水形態を選択的に得ることができる。
【0004】
より詳しく説明すると、図29に示すように、キャップ102のキャップ本体103に設けられた二つの筒体104にはメガネパッキン105が装着され、このメガネパッキン105によってストレート吐水用流路P1の入口が形成される。そして、キャップ本体103の上流側にある弁座106に設けられた弁座流路P0の二つの出口にストレート吐水用流路P1の入口が相対応する状態では、ストレート吐水が行われる(図27参照)。
【0005】
また、この状態からキャップ102を回転させ、ストレート吐水用流路P1の入口(メガネパッキン105の上方開口)を弁座106で閉じれば、筒体104に連設された椀状部分107の外側に形成されたシャワー吐水用流路P2が弁座流路P0に連通する状態となり、この状態ではシャワー吐水が行われる(図28参照)。
【0006】
尚、図29において、108はナット部材であり、図示していない割りリングによってシャワー蛇口本体101に回動自在に取り付けられる。そして、このナット部材108にはキャップ本体103が嵌入され、ナット部材108に螺着する押えリング109によって、ナット部材108、キャップ本体103、押えリング109は一体化されて回転自在なキャップ102となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−126054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、斯かる吐水装置では、その構造上、キャップ102が大型化せざるを得ず、キャップ102を含む装置全体のコンパクト化を図ることが困難である。この理由について以下に説明する。
【0009】
図29に示すように、椀状部分107の上面には、二つの筒体104と、二つの筒体104に対してこれらを囲む状態で装着されるメガネパッキン105とが設けられる。また、椀状部分107の外側には、多数の先細小孔hが形成されシャワー吐水用流路P2を構成するシャワー面板部分110が連設され、さらにこの外側に筒状部分111が設けられる。
【0010】
ここで、ストレート吐水用流路P1を構成する筒体104の径は、ストレート吐水の際の吐水流量を確保する必要上、それほど小さくできず、筒体104に装着されるメガネパッキン105にも、十分なシール性を発揮させるためにある程度の縁幅は持たせなければならない。そして、これらの制限によって、二つの筒体104間の距離は大きくなり、筒体104に装着されるメガネパッキン105を保持する椀状部分107のコンパクト化は困難となる。さらに、シャワー吐水用流路P2を構成するシャワー面板部分110も、シャワー吐水の際の吐水流量を確保する必要があるので、あまり小さくすることはできない。
【0011】
従って、上記従来の吐水装置では、椀状部分107と、この外側に連設されるシャワー面板部分110とは、何れもコンパクト化が困難であるのに加えて、シャワー面板部分110の外側にはさらに筒状部分111が設けられるので、キャップ102ひいては装置全体の大型化が避けられない。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、容易にコンパクト化を図ることができる吐水形態切替装置及びこれを用いた吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る吐水形態切替装置は、吐出される水の形態をストレート吐水形態とシャワー吐水形態とに切り替える吐水形態切替装置であって、
下流側に向けて設けられた水導出口及び止水部を構成する弁部材と、
前記水導出口の下流側に配置された導水口形成部を有し、該導水口形成部には上流側から供給された水をストレート吐水口に導くためのストレート吐水用導水口及びシャワー吐水孔に導くためのシャワー吐水用導水口が形成された回動部材と、
前記弁部材と前記導水口形成部との間において該導水口形成部を覆うように配置されると共に、前記ストレート吐水用導水口及び前記シャワー吐水用導水口を閉塞しないように形成された複数の通水孔を有し、前記水導出口に連通する位置に無い前記通水孔は前記止水部によって閉塞されるシール部材とを備え、
前記シール部材は前記回動部材と一体的に回動し、この回動に伴って、前記水導出口が前記通水孔及び前記ストレート吐水用導水口を介して前記ストレート吐水口に連通する状態と、前記水導出口が前記通水孔及び前記シャワー吐水用導水口を介して前記シャワー吐水孔に連通する状態とに切り替わるように構成されている(請求項1)。
【0014】
上記吐水形態切替装置が、前記弁部材を前記シール部材に近接離間する方向に移動可能にガイドするガイド手段と、前記弁部材を前記シール部材に近接する方向に付勢する付勢手段とを備えていてもよい(請求項2)。
【0015】
上記吐水形態切替装置において、前記弁部材は前記ガイド手段によって特定の方向に向いた状態に保持されるように構成されていてもよい(請求項3)。
【0016】
上記吐水形態切替装置において、前記シール部材の上流側の面に前記通水孔の周縁に沿って突条部が設けられているか、または前記通水孔を囲む状態で前記シール部材に当接可能な突条部が前記止水部に設けられていてもよい(請求項4)。
【0017】
上記吐水形態切替装置において、前記止水部が下流側に向けて凸の曲面状に形成されていてもよい(請求項5)。
【0018】
上記吐水形態切替装置において、前記弁部材または前記回動部材の何れか一方に前記回動部材の回動方向に延びるレールが設けられると共に他方に前記レールに当接する当接部分が設けられ、前記回動部材の回動に伴って前記水導出口が前記ストレート吐水口及び前記シャワー吐水孔の両方に連通する状態となる間は、前記弁部材を前記回動部材の導水口形成部から離間させるように、前記レールに高さ方向に傾斜する傾斜部分が設けられていてもよい(請求項6)。
【0019】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る吐水装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の吐水形態切替装置を備えている(請求項7)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜7に係る発明では、容易にコンパクト化を図ることができる吐水形態切替装置及びこれを用いた吐水装置が得られる。
【0021】
すなわち、請求項1〜7に係る発明では、弁部材と導水口形成部との間にシール部材を設け、導水口形成部のストレート吐水用導水口とシャワー吐水用導水口とを相互に接近させて配置することのできる構成を採用しているので、導水口形成部を含む切替装置の小型化、ひいては吐水装置の小型化を容易に図ることができる。
【0022】
しかも、請求項6に係る発明では、回動部材の回動操作に必要な力を軽減することができ、操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る吐水装置の構成を概略的に示す説明図及び部分拡大斜視図である。
【図2】前記吐水装置の主に上側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】前記吐水装置の主に下側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図4】(A)は前記吐水装置の主に上側のより詳しい構成を概略的に示す分解斜視図、(B)は(A)のB−B線切断斜視図である。
【図5】(A)は前記吐水装置の主に下側のより詳しい構成を概略的に示す分解斜視図、(B)は(A)のB−B線切断斜視図である。
【図6】(A)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線切断断面図、(C)及び(D)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図7】(A)〜(E)はそれぞれ、図6(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図8】(A)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線断面図、(C)及び(D)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図9】(A)〜(E)はそれぞれ、図8(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図10】(A)及び(D)はストレート吐水形態にあるときの前記吐水装置の吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図、(B)はストレート吐水形態とシャワー吐水形態との間の形態にあるときの前記吐水形態切替装置の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(E)はシャワー吐水形態にあるときの前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図である。
【図11】(A)は前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図、(B)は(A)のB−B線切断断面図、(C)は(A)のC−C線切断断面図である。
【図12】前記吐水形態切替装置の回動部材及びシール部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】(A)及び(B)は前記回動部材の主に上側及び下側の構成を概略的に示す斜視図、(C)〜(E)は前記回動部材の構成を概略的に示す平面図、底面図及び正面図、(F)は同図(C)のF−F線切断断面図、(G)は同図(C)のG−G線切断断面図、(H)は同図(A)のH−H線切断断面図である。
【図14】(A)及び(B)は前記吐水形態切替装置の弁部材の主に上側及び下側の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(D)は前記弁部材の構成を概略的に示す平面図及び底面図である。
【図15】(A)〜(D)は前記吐水形態切替装置の切替装置本体の構成を概略的に示す平面図、底面図、側面図及び斜視図、(E)は同図(A)のE−E線切断断面図、(F)は同図(A)のF−F線切断断面図、(G)は同図(D)のG−G線切断斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る吐水装置の主に上側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る吐水装置の主に下側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図18】(A)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線切断断面図、(C)及び(D)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図19】(A)〜(E)はそれぞれ、図18(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図20】(A)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線断面図、(C)及び(D)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図21】(A)〜(E)はそれぞれ、図20(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図22】(A)及び(D)はストレート吐水形態にあるときの前記吐水装置の吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図、(B)はストレート吐水形態とシャワー吐水形態との間の形態にあるときの前記吐水形態切替装置の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(E)はシャワー吐水形態にあるときの前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図である。
【図23】(A)及び(B)は前記吐水形態切替装置の弁部材の主に上側及び下側の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(D)は前記弁部材の構成を概略的に示す平面図及び底面図である。
【図24】(A)〜(D)は前記吐水形態切替装置の切替装置本体の構成を概略的に示す平面図、底面図、側面図及び斜視図、(E)は同図(A)のE−E線切断断面図、(F)は同図(A)のF−F線切断断面図、(G)は同図(D)のG−G線切断斜視図である。
【図25】(A)はストレート吐水形態にあるときの前記吐水装置の変形例に係る吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図、(B)はストレート吐水形態とシャワー吐水形態との間の形態にあるときの前記吐水形態切替装置の構成を概略的に示す斜視図、(C)はシャワー吐水形態にあるときの前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図26】従来の吐水装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図27】ストレート吐水形態にあるときの従来の吐水装置の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【図28】シャワー吐水形態にあるときの従来の吐水装置の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【図29】従来の吐水装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0026】
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る吐水装置1はシャワーヘッドであり、洗面台に設置された水栓(湯水混合水栓)2を構成している。尚、吐水装置1は、この吐水装置1を支持する水栓本体側の筒状開口部3に対しセレーション嵌合により着脱自在であり、その軸回りに向きを変更して筒状開口部3に装着することができる構成となっている。また、吐水装置1にはシャワーホース4が接続され、このシャワーホース4は筒状開口部3を挿通しており、吐水装置1を筒状開口部3から離脱させたときには、この離脱に伴ってシャワーホース4の一部が筒状開口部3から外部に引き出された状態となる(図1(A)の仮想線参照)。
【0027】
そして、図2〜図5に示すように、吐水装置1は左右対称に構成された略筒状のカバー部材5を備え、このカバー部材5は、例えばABS樹脂等の合成樹脂からなり、外面にはメッキ処理が施されている。
【0028】
また、図2及び図3に示すように、このカバー部材5は、前端が閉塞され後端が後向き開口6として開放された略筒状の側壁5aを有し、後向き開口6からは流路形成部材7が挿入される。また、側壁5aの前部には前側開口8が設けられ、この前側開口8からは回動部材29(詳細な構成は後述する)を有する吐水形態切替装置(以下、「切替装置」と略称する。)9が挿入される。尚、吐水装置1において、カバー部材5の内壁面は流路として用いられず、このカバー部材5内に挿入される流路形成部材7及び切替装置9の中に流路が形成される言わば二重構造となっている。
【0029】
流路形成部材7は、左右対称に構成され、例えばABS樹脂等の合成樹脂製からなり、図2及び図3に示すように、後部内壁面にインナーセレーション10を有し、このインナーセレーション10が嵌合するアウターセレーション(図示していない)が筒状開口部3(図1参照)に設けられている。
【0030】
また、流路形成部材7をカバー部材5内に挿入する際に両部材5,7の上下を容易に合致可能とするために、図2及び図3に示すように、カバー部材5の後部内壁面にガイド部(図示例では溝)11が設けられ、ガイド部11にガイドされる被ガイド部(図示例では突条)12が流路形成部材7の後部外壁面におけるガイド部11に対応する位置に設けられている。尚、本形態ではガイド部11、被ガイド部12が三つずつ設けられているが、これらの数は任意に変更可能である。また、例えば、図示例とは逆に、ガイド部11を突条とし、この突条にガイドされる溝を被ガイド部12としたり、ガイド部11どうし、被ガイド部12どうしが互いに異なる形状や大きさを有するようにしたりするなど、ガイド部11と被ガイド部12の構成は種々に変更可能である。
【0031】
また、本形態では、カバー部材5内の所定位置にまで挿入された流路形成部材7がカバー部材5から不意に抜けることを防ぐために、図3に示すように、流路形成部材7の外面(図示例では下面)に弾性係止片13が設けられ、この弾性係止片13が、カバー部材5に設けられた切欠孔14の内側縁に係止して、カバー部材5内の所定位置にまで挿入された流路形成部材7がカバー部材5から抜けることを妨げるように構成されている(図6(B)、図8(B)も参照)。
【0032】
また、図2〜図5に示すように、流路形成部材7の後部下面には切欠溝15が形成されている。この切欠溝15は、流路形成部材7においてこの流路形成部材7をカバー部材5内の所定位置にまで挿入したときに切欠孔14に臨むことになる位置に設けられており、流路形成部材7の外面から内部空間にまで達している。そして、カバー部材5内に流路形成部材7を挿入し、かつ、この流路形成部材7の後部内にシャワーホース4を進入させた状態で、カバー部材5の切欠孔14及びこの内側に位置する流路形成部材7の切欠溝15に対して略U字形状のホース固定部材16(図2〜図5参照)を差し込めば、流路形成部材7内に位置するシャワーホース4の先端部4aがホース固定部材16によって係止固定され、流路形成部材7から抜けない状態となる。尚、図示していないが、シャワーホースの先端部4aにおいてホース固定部材16によって係止される部分よりも先端側の位置にはシール部材(例えばOリング)が外面に装着され、また、先端部4aの前側には濾過用の網状部材が配置され、この網状部材の周縁部分は先端部4aと流路形成部材7の後部内周壁とに挟まれて固定される。
【0033】
上記のように切欠孔14及び切欠溝15に差し込まれたホース固定部材16は、弾性係止片13を跨ぎ、かつ切欠孔14を閉塞する状態となる(図6(A)〜(C)、図8(A)〜(C)参照)。そして、ホース固定部材16を切欠孔14及び切欠溝15から取り外せばシャワーホース4を流路形成部材7から引き抜くことができる状態となり、さらにこの後に、切欠孔14の外側から弾性係止片13をカバー部材5内に押し込む操作を行えば、切欠孔14の内側縁に対する弾性係止片13の係止が解除され、流路形成部材7をカバー部材5から引き抜くことができる状態となる。
【0034】
一方、切替装置9は、図4(A)及び図5(A)に示すように回動部材29等の複数の部材からなるものであり、これらを組付けた状態にしたものを図2及び図3に示してある。そして、この切替装置9をカバー部材5内に挿入する際に両者5,9の前後を容易に合致可能とするために、図2及び図3に示すように、カバー部材5の前部内壁面にガイド部(図示例ではカバー部材5の前壁から天壁にかけて設けられた略L字状のガイドレール)17が設けられ、ガイド部17にガイドされる被ガイド部(図示例では突条)18が切替装置9の外壁面におけるガイド部17に対応する位置(図示例では前壁面及び上壁面のそれぞれ左右方向における中央部)に設けられている。尚、本形態ではガイド部17をひと続きにして略L字状に形成してあるが、カバー部材5の前壁に設けられる部分と天壁に設けられる部分とを隔ててあってもよい。また、例えば、図示例とは逆に、ガイド部17を突条とし、この突条にガイドされるガイドレールあるいは溝を被ガイド部18としたりするなど、ガイド部17と被ガイド部18の構成は種々に変更可能である。
【0035】
また、カバー部材5に挿入された切替装置9の回動部材29は、図4(A)及び図5(A)に示す略コ字状の支持部材19によって支持され、これにより、切替装置9全体が支持されるように構成されている。すなわち、支持部材19は、例えばステンレス等の金属からなり、二つの脚部分20と、二つの脚部分20を繋ぐブリッジ部分21とを有し、図3に示すように、ブリッジ部分21は流路形成部材7の前面部に設けられた保持溝22に保持される。尚、図には表れていないが、保持溝22には、ブリッジ部分21を係止固定するための係止部分が設けられ、ブリッジ部分21が保持溝22の係止部分に係止固定された状態の支持部材19は、ブリッジ部分21を軸にして自由に回動可能な状態となっている。
【0036】
そして、前側開口8からカバー部材5内に切替装置9を挿入した後、ブリッジ部分21を保持した状態の流路形成部材7(図2及び図3参照)を後向き開口6からカバー部材5内に挿入すると、支持部材19の二つの脚部分20はカバー部材5内に設けられた前後方向に延びる二つのレール5b(図4(B)、図5(B)参照)に載って前側に向けて真っ直ぐ延びる状態を保ちながら前方に進み、やがて二つの脚部分20のそれぞれ先端はカバー部材5内に設けられた図3に示す保持部分(例えば溝)23に保持される状態となり、切替装置9の回動部材29は二つの脚部分20のそれぞれ中間部分によって支持される状態となる(この支持に関する具体的な説明は後述する)。
【0037】
ここで、図4(B)、図5(B)にはカバー部材5の右側のレール5bのみが表れているが、レール5bはカバー部材5の左側にも設けられている。同様に、図3、図4(B)、図5(B)にはカバー部材5の右側の保持部分23のみが表れているが、保持部分23はカバー部材5の左側にも設けられている(図7(D)参照)。また、図4(B)、図5(B)に示すように、カバー部材5内において切替装置9が収容される空間の後側には、支持部材19の二つの脚部分20のそれぞれ基端部分を保持する保持部分(例えば溝)24が設けられている(図7(E)も参照)。尚、レール5bの後端部を斜め下方に向け、流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入する際に脚部分20をレール5bに載せ易くしてもよい。また、流路形成部材7に、支持部材19の二つの脚部分20を前側に向けて真っ直ぐ延びる状態となるように保持する部分を設けてあってもよく、この場合にはレール5bは不要となる。
【0038】
また、図2〜図5に示すように、流路形成部材7の先端部にはシール部材(例えばOリング)25が装着される結合部26が設けられ、この結合部26に結合される結合口27が切替装置9の背面上部に設けられている。すなわち、切替装置9を前側開口8からカバー部材5内に挿入した後、流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入すると、結合部26が結合口27に結合され、流路形成部材7内の流路と切替装置9内の流路とが連通することになる。
【0039】
上記の構成からなる吐水装置1は、前側開口8からカバー部材5内に切替装置9(回動部材29)を挿入した後、支持部材19を保持した状態の流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入すると共にシャワーホース4を流路形成部材7の後部に挿入し、ホース固定部材16を切欠孔14に差し込むだけで完成する。従って、吐水装置1を組み立てるための工数が少ない上、ガイド部11及び被ガイド部12、ガイド部17及び被ガイド部18といったガイド手段を設けて各工程を簡便に行えるようにしてあるので、組付施工性が非常に良好となっている。
【0040】
また、完成後の吐水装置1において、流路形成部材7をカバー部材5から引き抜くためには、ホース固定部材16を切欠孔14から取り外すだけでは不十分であり、この取り外しの後に、切欠孔14の外側から弾性係止片13をカバー部材5内に押し込み、切欠孔14の内側縁に対する弾性係止片13の係止を解除しなければならない構成となっている。従って、例えばシャワーホース4に装着された上記シール部材や網状部材の交換等のメンテナンスを行うために、ホース固定部材16を取り外してシャワーホース4を流路形成部材7から引き抜いた際に、カバー部材5から引き抜く必要の無い流路形成部材7が支持部材19と共にカバー部材5から不意に抜け、支持部材19が抜けたことによって支持されなくなった切替装置9がカバー部材5から落下し、ひいては破損してしまうことを確実に防止することができる。
【0041】
そして、完成した吐水装置1においては、図1(B)に示すように、切替装置9の下部がカバー部材5の外部に露出した状態になり、吐水装置1は、この切替装置9の下部に設けられた摘まみ28を矢印イ方向に操作することにより、吐水装置1からの吐水形態をストレート吐水形態とシャワー吐水形態との二形態に切り替えることができる機能を有している。
【0042】
以下、この切替え機能を担う切替装置9のより詳細な構成について述べる。
【0043】
図4(A)及び図5(A)に示すように、摘まみ28は回動部材29の一部であり、この回動部材29は図13(A)〜(G)に示す形状(略筒状)をしている。そして、図13(A)及び(C)に示すように、回動部材29の内部には導水口形成部30が設けられ、この導水口形成部30には、この導水口形成部30の上流側(図示例では上側)から供給された水をストレート吐水口31(図3参照)に導くためのストレート吐水用導水口32と、シャワー吐水孔33(図3参照)に導くためのシャワー吐水用導水口34とが二つずつ形成されている(図13(D),(F)〜(H)も参照)。
【0044】
すなわち、回動部材29内には、その下方から図4(A)及び図5(A)に示す吐水口形成部材35が取り付けられ、この吐水口形成部材35は、内筒部36と外筒部37とを有し、両筒部36、37は環状のシャワー面板部分38を介して連設されている(図7(A),図9(A)も参照)。そして、内筒部36の下部がストレート吐水口31として構成されていると共に、シャワー面板部分38に多数のシャワー吐水孔33が設けられている。
【0045】
尚、回動部材29に対する吐水口形成部材35の取付けは、図7(A)及び図9(A)に示すように、回動部材29の下部内壁面に設けられた雌ねじ部分39に、吐水口形成部材35の外筒部37の外壁面に設けられた雄ねじ部分40を螺着させることによって行える。また、回動部材29の内壁面と吐水口形成部材35の外筒部37の外壁面との間における雌ねじ部分39、雄ねじ部分40よりも下方の位置には、シール部材(例えばOリング)41が設けられている。
【0046】
また、回動部材29内における導水口形成部30よりも下側(下流側)の部分は、吐水口形成部材35が回動部材29に取り付けられた状態において、ストレート吐水用導水口32が内筒部36内に連通し、シャワー吐水用導水口34が内筒部36と外筒部37との間の環状空間に連通するように適宜に区画されている(図13(F)〜(H)参照)。尚、図13(F)〜(H)に示すように、この区画のために回動部材29内に設けられた小筒部分42は、その内側の空間がストレート吐水用導水口32に連通し、また、図7(A)、図9(A)に示すように、小筒部分42には、シール部材(例えばシートパッキン)43を介して吐水口形成部材35の内筒部36が接続される。
【0047】
一方、導水口形成部30の上側(上流側)には、図4(A)、図5(A)、図10(D)及び(E)、図11(A)〜(C)に示すように、シール部材(異形パッキン)44が設けられ、このシール部材44は、例えばゴム等の弾性材からなり、導水口形成部30を覆うように配置される。また、シール部材44には、図10(D)及び(E)、図11(B)及び(C)に示すように、導水口形成部30のストレート吐水用導水口32及びシャワー吐水用導水口34を閉塞しないように形成された複数(図示例では四つ)の通水孔45が設けられている。
【0048】
本形態では、回動部材29の上部に上方に開放された凹部を設け、この凹部内にシール部材44を収容する構成を採用している。また、シール部材44を回動部材29と一体的に回動させる必要があり、そのため、本形態では、図12に示すように、シール部材44を略十字形状に構成すると共に、このシール部材44を収容する前記凹部の形状を、図13(A)及び(C)に示すように、シール部材44の形状に合わせてある。
【0049】
さらに、シール部材44の上流側(上側)には、図4(A)、図5(A)、図14(A)〜(D)に示す左右対称の形状を有する弁部材46が配置される。この弁部材46は、図14(A)〜(D)に示すように、二つの貫通孔47が設けられた略円板状の基部48を有し、回動部材29の上部には、この基部48の周縁を当接可能とする環状段部49が設けられている(図13(A)参照)。
【0050】
そして、この弁部材46は、図4(A)、図5(A)、図15(A)〜(G)に示す形状の切替装置本体50内に収容され、この切替装置本体50及び弁部材46には、弁部材46をシール部材44に近接離間する方向に移動可能にガイドし、かつ、特定の方向に向けた状態に保持するガイド手段が設けられている。
【0051】
すなわち、切替装置本体50は、結合口27の他に下流側(本形態では下側)が開放された中空の部材であり、この切替装置本体50内には、図15(B)、(G)に示すガイド保持部51が設けられ、このガイド保持部51にガイド保持される図14(A)〜(C)に示す被ガイド保持部52が弁部材46に設けられている。本形態では、ガイド保持部51は、互いに径が異なる複数の円弧壁部分を繋げた形状とされ、被ガイド保持部52は、ガイド保持部51の内側に沿い、かつ、貫通孔47を避けるように切り欠かれた形状とされている。
【0052】
また、弁部材46は、図7(A)、図9(A)に示すように、付勢手段(例えばスプリング)53によってシール部材44に近接する方向に付勢される。そして、この付勢手段53を保持するために、切替装置本体50の天壁下面に図15(B)、(G)に示す保持部54が設けられ、弁部材46の基部48の上面に、図14(A)及び(C)に示す保持部55が設けられている。
【0053】
また、切替装置本体50は、内部に付勢手段53及び弁部材46を収容した状態で、シール部材44を保持した状態の回動部材29の下部を除く部分を覆うように構成されている。ここで、切替装置本体50の内壁と回動部材29の外壁との間からの水漏れを防止する必要があるが、本形態では、切替装置本体50はカバー部材5内において動かないように固定されるのに対し、回動部材29は摘まみ28の操作によってその軸回りに回動するものである。そこで、本形態において、両者50,29の間に設けられるシール部材56としては、例えばUパッキンやVパッキン等のリップパッキンが挙げられる(図4(A)、図5(A)、図7(A)、図9(A)参照)。
【0054】
また、回動部材29の外壁面において切替装置本体50の下端が当接する部分には、例えばポリエチレン製の滑り面形成部材57(図4(A)、図5(A)、図7(A)、図9(A)参照)が設けられ、両者50、29間の摺動摩擦が減るように構成されている。
【0055】
また、図10(A)〜(E)に示すように、回動部材29は支持部材19によって回動可能に支持されるのであり、図13(E)に示すように、回動部材29の外壁面には環状溝58が設けられ、この環状溝58の上側に連なり上側(上流側)向きに径が大となる拡径部59に、支持部材19の二つの脚部分20が左右両側から当接する。そして、この構成に対応させて、切替装置本体50の左右両側には、図15(C)、(D)、(F)、(G)に示すように、支持部材19の二つの脚部分20を避けるための切欠部分60、61が設けられている。尚、本形態では、切替装置本体50の一面側には貫通孔状の切欠部分60(図15(C)参照)が二つ設けられ、他面側には溝状の切欠部分61(図15(F)参照)が一つのみ設けられているが、切欠部分60、61の構成は種々に変更可能である。
【0056】
そして、本形態では、摘まみ28が図6(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、図6(B)に示すように、ストレート吐水口31から吐水が行われるストレート吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図7(A)〜(E)、図10(A)、(D)にも示す。また、摘まみ28が図8(C),(D)に示す位置にある場合は、図8(B)に示すように、シャワー吐水孔33から吐水が行われるシャワー吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図9(A)〜(E)、図10(C)、(E)にも示す。
【0057】
すなわち、まず、摘まみ28の位置に関係なく、流路形成部材7を経て給水口27から切替装置9内に入った水は、切替装置本体50内を通って弁部材46の上流側に至った後、二つの貫通孔47を経て弁部材46の下流側に向かう。ここで、弁部材46の各貫通孔47は、下流側に向けて設けられた水導出口を構成するものであり、以下、水導出口47という。
【0058】
また、弁部材46の下流側にある回動部材29の導水口形成部30に設けられた四つの導水口32、34は回動部材29の中央(回動軸)を避けた位置にあり(図13(C)参照)、水導出口47は、シール部材44の通水孔45を介して導水口32、34と連通可能となるように、弁部材46において回動部材29の軸心を避けた位置に設けられている(図10(D),(E)参照)。従って、回動部材29の回動に伴って水導出口47に対する回動部材29及びシール部材44の位相が変更され、シール部材44の通水孔45を介して水導出口47に連通する回動部材29の導水口32、34が変更されることになる。
【0059】
そして、摘まみ28が図6(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、水導出口47には、回動部材29の導水口形成部30に設けられた四つの導水口のうち、二つのストレート吐水用導水口32のみが連通し(図10(D)参照)、残る二つのシャワー吐水用導水口34は連通しない状態となる。
【0060】
すなわち、図14(B)及び(D)に示すように、弁部材46の基部48の下面(下流側の面)は略平面状に形成され、この下面における水導出口47以外の部位は下流側に向けて設けられた止水部48aを構成している。そして、シール部材44に設けられた四つの通水孔45のうち、水導出口47に連通する位置に無い通水孔45は止水部48aによって閉塞され、閉塞された通水孔45に連通する導水口32、34は水導出口47に連通しない状態となる。
【0061】
ここで、シール部材44に設けられた四つの通水孔45、導水口形成部30に1対ずつ設けられた導水口32、34のうち、水導出口47に連通する通水孔45、導水口32、34のみに水が流れるように、本形態では、略平面状の止水部48aに対向するシール部材44の上流側(上側)の面に、各通水孔45の周縁に沿って突条部44a(図12参照)が設けられ、略平面状のシール部材44の下流側(下側)の面に対向する導水口形成部30の上流側(上側)の面に、各導水口32、34の周縁に沿って突条部30aが設けられている。
【0062】
尚、止水部48aを略平面状とし、かつ、シール部材44に突条部44aを設けるという構成に代えて、シール部材44の上流側(上側)の面を略平面状にし、弁部材46の止水部48aに、各通水孔45を囲む状態でシール部材44に当接可能な突条部を設けるという構成を採用してもよい。同様に、シール部材44の下流側(下側)の面を略平面状とし、かつ、導水口形成部30に突条部30aを設けるという構成に代えて、導水口形成部30の上流側(上側)の面を略平面状にし、シール部材44の下流側(下側)の面に、各導水口32、34を囲む状態で導水口形成部30に当接可能な突条部を設けるという構成を採用してもよい。
【0063】
従って、摘まみ28が図6(A),(C),(D)に示す位置にある場合、水導出口47から導出された水は、シール部材44の通水孔45、ストレート吐水用導水口32を通過し、回動部材29内の小筒部分42、吐水口形成部材35の内筒部36を経て、その先端にあるストレート吐水口31から吐出される。尚、水が内筒部36を経る際、内筒部36内に装着されている整流器(例えば泡沫器)62を通過するが、この整流器62としては公知のものを採用可能であり、図面の複雑化を避けるために、整流器62は図4(A)及び図5(A)のみに概略的に示してある。
【0064】
また、摘まみ28を操作して図8(C),(D)に示す位置に移動させると、水導出口47には、回動部材29の導水口形成部30に設けられた四つの導水口のうち、二つのシャワー吐水用導水口34のみが連通し(図10(E)参照)、残る二つのストレート吐水用導水口32は連通しない状態となる。
【0065】
従って、摘まみ28が図8(C),(D)に示す位置にある場合、水導出口47から導出された水は、シール部材44の通水孔45、シャワー吐水用導水口34を通過し、吐水口形成部材35の内筒部36及び外筒部37間の環状空間を経て、その先端にあるシャワー面板部分38の多数のシャワー吐水孔33から吐出される。
【0066】
ここで、摘まみ28の操作に伴う回動部材29の回動可能な範囲を制限して、摘まみ28を図6(A),(C),(D)に示す位置と図8(C),(D)に示す位置とに容易に移動させることができるようにするために、本形態では、回動部材29の上部に突起63(図10(B)参照)が設けられ、切替装置本体50内には、突起63を止める二つのストッパー64(図15(B)、(D)、(G)参照、回動部材29の回動を制限する回動制限部としての一例)が設けられている。
【0067】
上記吐水装置1では、弁部材46と導水口形成部30との間にシール部材44を設け、導水口形成部30のストレート吐水用導水口32とシャワー吐水用導水口34とを相互に接近させて配置することのできる構成を採用しているので、導水口形成部30を含む切替装置9の小型化、ひいては吐水装置1の小型化を容易に図ることができる。
【0068】
また、前側開口8からカバー部材5内に回動部材29を挿入した後、支持部材19を保持した状態の流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入するだけで回動部材29の装着が完了する。従って、回動部材29を装着するための作業が簡単な上、回動部材29の装着の際にねじ込み作業を不要とすることができるので、回動部材29の他、支持部材19や流路形成部材7に過度のストレスが加わらないようにし、ひいては常に適切な装着状態を実現することが容易となる。
【0069】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0070】
第1の実施の形態の弁部材46は、略平面状に形成された止水部48aを有していたが、第2の実施の形態に係る吐水装置の弁部材46Aは、図16、図17、図23(A)〜(D)に示すように、略平面状ではなく下流側(下側)に向けて凸の曲面状に形成された止水部48aを有している。これに伴い、第1の実施の形態では、止水部48aに対向するシール部材44の上流側(上側)の面に、各通水孔45の周縁に沿って突条部44a(図12参照)が設けられていたが、第2の実施の形態では、突条部44aを設けず、シール部材44の上流側(上側)の面を略平面状としてある。
【0071】
また、第1の実施の形態の弁部材46は、水導出口47を構成する二つの貫通孔を有していたが、第2の実施の形態の弁部材46Aは、図16、図17、図23(A)〜(D)に示すように、水導出口47を構成する貫通孔を有しておらず、その代わりに、基部48を小さくし、弁部材46Aの基部48と弁部材46Aを収容する切替装置本体50の内壁との間に隙間が形成されるようにしてあり、この隙間によって水導出口47が構成されている。
【0072】
さらに、第2の実施の形態において、弁部材46をシール部材44に近接離間する方向に移動可能にガイドし、かつ、特定の方向に向けた状態に保持するガイド手段の構成が、第1の実施の形態のものと異なっている。すなわち、第2の実施の形態におけるガイド保持部51としては、図24(B)、(D)、(E)、(G)に示すように、上下に延びるレール状部分51aと、互いに径が異なる複数の円弧壁部分を繋げた形状の壁部分51bとが設けられ、被ガイド保持部52としては、図23(A)〜(D)に示すように、レール状部分51aに沿う溝部分52aと、壁部分51aの内側に沿い、かつ、溝部分52a及び止水部48aを避けるように切り欠かれた形状の壁部分52bとが設けられている。
【0073】
また、第2の実施の形態における切替装置本体50は図24(A)〜(G)に示す構造を有し、この内部の二つのストッパー64は図24(D)、(G)に示す形状をしており、第1の実施の形態のものと異なっている。
【0074】
そして、第2の実施の形態では、摘まみ28が図18(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、図18(B)に示すように、ストレート吐水口31から吐水が行われるストレート吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図19(A)〜(E)、図22(A)、(D)にも示す。また、摘まみ28が図20(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、図20(B)に示すように、シャワー吐水孔33から吐水が行われるシャワー吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図21(A)〜(E)、図22(C)、(E)にも示す。
【0075】
そして、回動部材29が支持部材19によって回動可能に支持されている点(図22(A)〜(E)参照)等、第2の実施の形態におけるその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、共通する構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0076】
尚、第2の実施の形態において、図25(A)〜(C)に示すように、回動部材29に回動部材29の回動方向に延びるレール71が設けられると共に、弁部材46にレール71に当接する当接部分72が設けられ、回動部材29の回動に伴って水導出口47がストレート吐水口31及びシャワー吐水孔33の両方に連通する状態(図25(B)参照)となる間は、弁部材46を回動部材29の導水口形成部30から離間させるように、レール71に高さ方向に傾斜する傾斜部分73が設けられていてもよい。勿論、逆に、レール71及び傾斜部分73に相当する構成が弁部材46に設けられ、当接部分72に相当する構成が回動部材29に設けられていてもよい。
【0077】
上記のようにレール71、当接部分72、傾斜部分73を設けた場合には、摘まみ28による回動部材29の回動操作に必要な力を軽減することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。そこで、以下にその変形例について説明する。
【0079】
吐水装置1はシャワーホース4を有していないものでもよく、本発明はシャワーヘッド以外の吐水装置にも適用可能である。また、水栓2の設置場所は洗面台に限らず、水栓2自体も湯水混合水栓に限らず例えば単水栓でもよい。
【0080】
回動部材29を支持する支持部材19は流路形成部材7に保持されていなくてもよく、例えば支持部材19が流路形成部材7と一体化されていてもよい。
【0081】
ストレート吐水用導水口32、シャワー吐水用導水口34が一対ずつ設けられ、通水孔45が四つ設けられる構成に限らず、例えば、導水口32、34が一つずつ設けられ、通水孔45が二つ設けられていてもよい。
【0082】
弁部材46を付勢する付勢手段53を設けず、給水圧を利用して弁部材46を付勢するようにしてもよい。さらに、弁部材46、切替装置本体50を設けず、水導出口47及び止水部48aがカバー部材5の内壁によって形成されていてもよい。この場合、切替装置本体50が有する他の必要な機能をカバー部材5の内壁によって担うように構成すればよい。
【0083】
尚、例えば、第2の実施の形態において述べた、レール71、当接部分72、傾斜部分73を設けるという変形を、第1の実施の形態に適用してもよく、このように、上記各実施の形態の構成及びその変形を、適宜に組み合わせて行ってもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 吐水装置
9 吐水形態切替装置
29 回動部材
30 導水口形成部
31 ストレート吐水口
32 ストレート吐水用導水口
33 シャワー吐水孔
34 シャワー吐水用導水口
44 シール部材
45 通水孔
46 弁部材
47 水導出口
48a 止水部
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ストレート吐水とシャワー吐水とに切り替えることができる吐水形態切替装置及びこれを備えた吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来の吐水装置は、図26に示すように、シャワー蛇口本体101に対してキャップ102が取り付けられ、このキャップ102を回転させることにより、ストレート吐水とシャワー吐水とに切り替えることができるというものである。
【0003】
すなわち、キャップ102にはストレート吐水用流路P1とシャワー吐水用流路P2とが形成され、キャップ102の回転に伴って、図27に示すようにキャップ102の上流側にある弁座流路P0に対してストレート吐水用流路P1のみが連通する状態と、図28に示すように弁座流路P0に対してシャワー吐水用流路P2のみが連通する状態とに切り替わる。そして、前者の状態ではストレート吐水が行われ、後者の状態ではシャワー吐水が行われるのであって、必要に応じてキャップ102を回転操作することにより何れかの吐水形態を選択的に得ることができる。
【0004】
より詳しく説明すると、図29に示すように、キャップ102のキャップ本体103に設けられた二つの筒体104にはメガネパッキン105が装着され、このメガネパッキン105によってストレート吐水用流路P1の入口が形成される。そして、キャップ本体103の上流側にある弁座106に設けられた弁座流路P0の二つの出口にストレート吐水用流路P1の入口が相対応する状態では、ストレート吐水が行われる(図27参照)。
【0005】
また、この状態からキャップ102を回転させ、ストレート吐水用流路P1の入口(メガネパッキン105の上方開口)を弁座106で閉じれば、筒体104に連設された椀状部分107の外側に形成されたシャワー吐水用流路P2が弁座流路P0に連通する状態となり、この状態ではシャワー吐水が行われる(図28参照)。
【0006】
尚、図29において、108はナット部材であり、図示していない割りリングによってシャワー蛇口本体101に回動自在に取り付けられる。そして、このナット部材108にはキャップ本体103が嵌入され、ナット部材108に螺着する押えリング109によって、ナット部材108、キャップ本体103、押えリング109は一体化されて回転自在なキャップ102となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−126054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、斯かる吐水装置では、その構造上、キャップ102が大型化せざるを得ず、キャップ102を含む装置全体のコンパクト化を図ることが困難である。この理由について以下に説明する。
【0009】
図29に示すように、椀状部分107の上面には、二つの筒体104と、二つの筒体104に対してこれらを囲む状態で装着されるメガネパッキン105とが設けられる。また、椀状部分107の外側には、多数の先細小孔hが形成されシャワー吐水用流路P2を構成するシャワー面板部分110が連設され、さらにこの外側に筒状部分111が設けられる。
【0010】
ここで、ストレート吐水用流路P1を構成する筒体104の径は、ストレート吐水の際の吐水流量を確保する必要上、それほど小さくできず、筒体104に装着されるメガネパッキン105にも、十分なシール性を発揮させるためにある程度の縁幅は持たせなければならない。そして、これらの制限によって、二つの筒体104間の距離は大きくなり、筒体104に装着されるメガネパッキン105を保持する椀状部分107のコンパクト化は困難となる。さらに、シャワー吐水用流路P2を構成するシャワー面板部分110も、シャワー吐水の際の吐水流量を確保する必要があるので、あまり小さくすることはできない。
【0011】
従って、上記従来の吐水装置では、椀状部分107と、この外側に連設されるシャワー面板部分110とは、何れもコンパクト化が困難であるのに加えて、シャワー面板部分110の外側にはさらに筒状部分111が設けられるので、キャップ102ひいては装置全体の大型化が避けられない。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、容易にコンパクト化を図ることができる吐水形態切替装置及びこれを用いた吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る吐水形態切替装置は、吐出される水の形態をストレート吐水形態とシャワー吐水形態とに切り替える吐水形態切替装置であって、
下流側に向けて設けられた水導出口及び止水部を構成する弁部材と、
前記水導出口の下流側に配置された導水口形成部を有し、該導水口形成部には上流側から供給された水をストレート吐水口に導くためのストレート吐水用導水口及びシャワー吐水孔に導くためのシャワー吐水用導水口が形成された回動部材と、
前記弁部材と前記導水口形成部との間において該導水口形成部を覆うように配置されると共に、前記ストレート吐水用導水口及び前記シャワー吐水用導水口を閉塞しないように形成された複数の通水孔を有し、前記水導出口に連通する位置に無い前記通水孔は前記止水部によって閉塞されるシール部材とを備え、
前記シール部材は前記回動部材と一体的に回動し、この回動に伴って、前記水導出口が前記通水孔及び前記ストレート吐水用導水口を介して前記ストレート吐水口に連通する状態と、前記水導出口が前記通水孔及び前記シャワー吐水用導水口を介して前記シャワー吐水孔に連通する状態とに切り替わるように構成されている(請求項1)。
【0014】
上記吐水形態切替装置が、前記弁部材を前記シール部材に近接離間する方向に移動可能にガイドするガイド手段と、前記弁部材を前記シール部材に近接する方向に付勢する付勢手段とを備えていてもよい(請求項2)。
【0015】
上記吐水形態切替装置において、前記弁部材は前記ガイド手段によって特定の方向に向いた状態に保持されるように構成されていてもよい(請求項3)。
【0016】
上記吐水形態切替装置において、前記シール部材の上流側の面に前記通水孔の周縁に沿って突条部が設けられているか、または前記通水孔を囲む状態で前記シール部材に当接可能な突条部が前記止水部に設けられていてもよい(請求項4)。
【0017】
上記吐水形態切替装置において、前記止水部が下流側に向けて凸の曲面状に形成されていてもよい(請求項5)。
【0018】
上記吐水形態切替装置において、前記弁部材または前記回動部材の何れか一方に前記回動部材の回動方向に延びるレールが設けられると共に他方に前記レールに当接する当接部分が設けられ、前記回動部材の回動に伴って前記水導出口が前記ストレート吐水口及び前記シャワー吐水孔の両方に連通する状態となる間は、前記弁部材を前記回動部材の導水口形成部から離間させるように、前記レールに高さ方向に傾斜する傾斜部分が設けられていてもよい(請求項6)。
【0019】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る吐水装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の吐水形態切替装置を備えている(請求項7)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜7に係る発明では、容易にコンパクト化を図ることができる吐水形態切替装置及びこれを用いた吐水装置が得られる。
【0021】
すなわち、請求項1〜7に係る発明では、弁部材と導水口形成部との間にシール部材を設け、導水口形成部のストレート吐水用導水口とシャワー吐水用導水口とを相互に接近させて配置することのできる構成を採用しているので、導水口形成部を含む切替装置の小型化、ひいては吐水装置の小型化を容易に図ることができる。
【0022】
しかも、請求項6に係る発明では、回動部材の回動操作に必要な力を軽減することができ、操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る吐水装置の構成を概略的に示す説明図及び部分拡大斜視図である。
【図2】前記吐水装置の主に上側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】前記吐水装置の主に下側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図4】(A)は前記吐水装置の主に上側のより詳しい構成を概略的に示す分解斜視図、(B)は(A)のB−B線切断斜視図である。
【図5】(A)は前記吐水装置の主に下側のより詳しい構成を概略的に示す分解斜視図、(B)は(A)のB−B線切断斜視図である。
【図6】(A)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線切断断面図、(C)及び(D)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図7】(A)〜(E)はそれぞれ、図6(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図8】(A)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線断面図、(C)及び(D)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図9】(A)〜(E)はそれぞれ、図8(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図10】(A)及び(D)はストレート吐水形態にあるときの前記吐水装置の吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図、(B)はストレート吐水形態とシャワー吐水形態との間の形態にあるときの前記吐水形態切替装置の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(E)はシャワー吐水形態にあるときの前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図である。
【図11】(A)は前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図、(B)は(A)のB−B線切断断面図、(C)は(A)のC−C線切断断面図である。
【図12】前記吐水形態切替装置の回動部材及びシール部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【図13】(A)及び(B)は前記回動部材の主に上側及び下側の構成を概略的に示す斜視図、(C)〜(E)は前記回動部材の構成を概略的に示す平面図、底面図及び正面図、(F)は同図(C)のF−F線切断断面図、(G)は同図(C)のG−G線切断断面図、(H)は同図(A)のH−H線切断断面図である。
【図14】(A)及び(B)は前記吐水形態切替装置の弁部材の主に上側及び下側の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(D)は前記弁部材の構成を概略的に示す平面図及び底面図である。
【図15】(A)〜(D)は前記吐水形態切替装置の切替装置本体の構成を概略的に示す平面図、底面図、側面図及び斜視図、(E)は同図(A)のE−E線切断断面図、(F)は同図(A)のF−F線切断断面図、(G)は同図(D)のG−G線切断斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る吐水装置の主に上側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る吐水装置の主に下側の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図18】(A)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線切断断面図、(C)及び(D)はストレート吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図19】(A)〜(E)はそれぞれ、図18(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図20】(A)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す側面図、(B)は同図(C)のX−X線断面図、(C)及び(D)はシャワー吐水形態にある前記吐水装置の構成を概略的に示す底面図及び正面図である。
【図21】(A)〜(E)はそれぞれ、図20(B)のA−A線、B−B線、C−C線、D−D線、E−E線に係る切断断面図である。
【図22】(A)及び(D)はストレート吐水形態にあるときの前記吐水装置の吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図、(B)はストレート吐水形態とシャワー吐水形態との間の形態にあるときの前記吐水形態切替装置の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(E)はシャワー吐水形態にあるときの前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図及び部分切断斜視図である。
【図23】(A)及び(B)は前記吐水形態切替装置の弁部材の主に上側及び下側の構成を概略的に示す斜視図、(C)及び(D)は前記弁部材の構成を概略的に示す平面図及び底面図である。
【図24】(A)〜(D)は前記吐水形態切替装置の切替装置本体の構成を概略的に示す平面図、底面図、側面図及び斜視図、(E)は同図(A)のE−E線切断断面図、(F)は同図(A)のF−F線切断断面図、(G)は同図(D)のG−G線切断斜視図である。
【図25】(A)はストレート吐水形態にあるときの前記吐水装置の変形例に係る吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図、(B)はストレート吐水形態とシャワー吐水形態との間の形態にあるときの前記吐水形態切替装置の構成を概略的に示す斜視図、(C)はシャワー吐水形態にあるときの前記吐水形態切替装置の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図26】従来の吐水装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図27】ストレート吐水形態にあるときの従来の吐水装置の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【図28】シャワー吐水形態にあるときの従来の吐水装置の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【図29】従来の吐水装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0026】
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る吐水装置1はシャワーヘッドであり、洗面台に設置された水栓(湯水混合水栓)2を構成している。尚、吐水装置1は、この吐水装置1を支持する水栓本体側の筒状開口部3に対しセレーション嵌合により着脱自在であり、その軸回りに向きを変更して筒状開口部3に装着することができる構成となっている。また、吐水装置1にはシャワーホース4が接続され、このシャワーホース4は筒状開口部3を挿通しており、吐水装置1を筒状開口部3から離脱させたときには、この離脱に伴ってシャワーホース4の一部が筒状開口部3から外部に引き出された状態となる(図1(A)の仮想線参照)。
【0027】
そして、図2〜図5に示すように、吐水装置1は左右対称に構成された略筒状のカバー部材5を備え、このカバー部材5は、例えばABS樹脂等の合成樹脂からなり、外面にはメッキ処理が施されている。
【0028】
また、図2及び図3に示すように、このカバー部材5は、前端が閉塞され後端が後向き開口6として開放された略筒状の側壁5aを有し、後向き開口6からは流路形成部材7が挿入される。また、側壁5aの前部には前側開口8が設けられ、この前側開口8からは回動部材29(詳細な構成は後述する)を有する吐水形態切替装置(以下、「切替装置」と略称する。)9が挿入される。尚、吐水装置1において、カバー部材5の内壁面は流路として用いられず、このカバー部材5内に挿入される流路形成部材7及び切替装置9の中に流路が形成される言わば二重構造となっている。
【0029】
流路形成部材7は、左右対称に構成され、例えばABS樹脂等の合成樹脂製からなり、図2及び図3に示すように、後部内壁面にインナーセレーション10を有し、このインナーセレーション10が嵌合するアウターセレーション(図示していない)が筒状開口部3(図1参照)に設けられている。
【0030】
また、流路形成部材7をカバー部材5内に挿入する際に両部材5,7の上下を容易に合致可能とするために、図2及び図3に示すように、カバー部材5の後部内壁面にガイド部(図示例では溝)11が設けられ、ガイド部11にガイドされる被ガイド部(図示例では突条)12が流路形成部材7の後部外壁面におけるガイド部11に対応する位置に設けられている。尚、本形態ではガイド部11、被ガイド部12が三つずつ設けられているが、これらの数は任意に変更可能である。また、例えば、図示例とは逆に、ガイド部11を突条とし、この突条にガイドされる溝を被ガイド部12としたり、ガイド部11どうし、被ガイド部12どうしが互いに異なる形状や大きさを有するようにしたりするなど、ガイド部11と被ガイド部12の構成は種々に変更可能である。
【0031】
また、本形態では、カバー部材5内の所定位置にまで挿入された流路形成部材7がカバー部材5から不意に抜けることを防ぐために、図3に示すように、流路形成部材7の外面(図示例では下面)に弾性係止片13が設けられ、この弾性係止片13が、カバー部材5に設けられた切欠孔14の内側縁に係止して、カバー部材5内の所定位置にまで挿入された流路形成部材7がカバー部材5から抜けることを妨げるように構成されている(図6(B)、図8(B)も参照)。
【0032】
また、図2〜図5に示すように、流路形成部材7の後部下面には切欠溝15が形成されている。この切欠溝15は、流路形成部材7においてこの流路形成部材7をカバー部材5内の所定位置にまで挿入したときに切欠孔14に臨むことになる位置に設けられており、流路形成部材7の外面から内部空間にまで達している。そして、カバー部材5内に流路形成部材7を挿入し、かつ、この流路形成部材7の後部内にシャワーホース4を進入させた状態で、カバー部材5の切欠孔14及びこの内側に位置する流路形成部材7の切欠溝15に対して略U字形状のホース固定部材16(図2〜図5参照)を差し込めば、流路形成部材7内に位置するシャワーホース4の先端部4aがホース固定部材16によって係止固定され、流路形成部材7から抜けない状態となる。尚、図示していないが、シャワーホースの先端部4aにおいてホース固定部材16によって係止される部分よりも先端側の位置にはシール部材(例えばOリング)が外面に装着され、また、先端部4aの前側には濾過用の網状部材が配置され、この網状部材の周縁部分は先端部4aと流路形成部材7の後部内周壁とに挟まれて固定される。
【0033】
上記のように切欠孔14及び切欠溝15に差し込まれたホース固定部材16は、弾性係止片13を跨ぎ、かつ切欠孔14を閉塞する状態となる(図6(A)〜(C)、図8(A)〜(C)参照)。そして、ホース固定部材16を切欠孔14及び切欠溝15から取り外せばシャワーホース4を流路形成部材7から引き抜くことができる状態となり、さらにこの後に、切欠孔14の外側から弾性係止片13をカバー部材5内に押し込む操作を行えば、切欠孔14の内側縁に対する弾性係止片13の係止が解除され、流路形成部材7をカバー部材5から引き抜くことができる状態となる。
【0034】
一方、切替装置9は、図4(A)及び図5(A)に示すように回動部材29等の複数の部材からなるものであり、これらを組付けた状態にしたものを図2及び図3に示してある。そして、この切替装置9をカバー部材5内に挿入する際に両者5,9の前後を容易に合致可能とするために、図2及び図3に示すように、カバー部材5の前部内壁面にガイド部(図示例ではカバー部材5の前壁から天壁にかけて設けられた略L字状のガイドレール)17が設けられ、ガイド部17にガイドされる被ガイド部(図示例では突条)18が切替装置9の外壁面におけるガイド部17に対応する位置(図示例では前壁面及び上壁面のそれぞれ左右方向における中央部)に設けられている。尚、本形態ではガイド部17をひと続きにして略L字状に形成してあるが、カバー部材5の前壁に設けられる部分と天壁に設けられる部分とを隔ててあってもよい。また、例えば、図示例とは逆に、ガイド部17を突条とし、この突条にガイドされるガイドレールあるいは溝を被ガイド部18としたりするなど、ガイド部17と被ガイド部18の構成は種々に変更可能である。
【0035】
また、カバー部材5に挿入された切替装置9の回動部材29は、図4(A)及び図5(A)に示す略コ字状の支持部材19によって支持され、これにより、切替装置9全体が支持されるように構成されている。すなわち、支持部材19は、例えばステンレス等の金属からなり、二つの脚部分20と、二つの脚部分20を繋ぐブリッジ部分21とを有し、図3に示すように、ブリッジ部分21は流路形成部材7の前面部に設けられた保持溝22に保持される。尚、図には表れていないが、保持溝22には、ブリッジ部分21を係止固定するための係止部分が設けられ、ブリッジ部分21が保持溝22の係止部分に係止固定された状態の支持部材19は、ブリッジ部分21を軸にして自由に回動可能な状態となっている。
【0036】
そして、前側開口8からカバー部材5内に切替装置9を挿入した後、ブリッジ部分21を保持した状態の流路形成部材7(図2及び図3参照)を後向き開口6からカバー部材5内に挿入すると、支持部材19の二つの脚部分20はカバー部材5内に設けられた前後方向に延びる二つのレール5b(図4(B)、図5(B)参照)に載って前側に向けて真っ直ぐ延びる状態を保ちながら前方に進み、やがて二つの脚部分20のそれぞれ先端はカバー部材5内に設けられた図3に示す保持部分(例えば溝)23に保持される状態となり、切替装置9の回動部材29は二つの脚部分20のそれぞれ中間部分によって支持される状態となる(この支持に関する具体的な説明は後述する)。
【0037】
ここで、図4(B)、図5(B)にはカバー部材5の右側のレール5bのみが表れているが、レール5bはカバー部材5の左側にも設けられている。同様に、図3、図4(B)、図5(B)にはカバー部材5の右側の保持部分23のみが表れているが、保持部分23はカバー部材5の左側にも設けられている(図7(D)参照)。また、図4(B)、図5(B)に示すように、カバー部材5内において切替装置9が収容される空間の後側には、支持部材19の二つの脚部分20のそれぞれ基端部分を保持する保持部分(例えば溝)24が設けられている(図7(E)も参照)。尚、レール5bの後端部を斜め下方に向け、流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入する際に脚部分20をレール5bに載せ易くしてもよい。また、流路形成部材7に、支持部材19の二つの脚部分20を前側に向けて真っ直ぐ延びる状態となるように保持する部分を設けてあってもよく、この場合にはレール5bは不要となる。
【0038】
また、図2〜図5に示すように、流路形成部材7の先端部にはシール部材(例えばOリング)25が装着される結合部26が設けられ、この結合部26に結合される結合口27が切替装置9の背面上部に設けられている。すなわち、切替装置9を前側開口8からカバー部材5内に挿入した後、流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入すると、結合部26が結合口27に結合され、流路形成部材7内の流路と切替装置9内の流路とが連通することになる。
【0039】
上記の構成からなる吐水装置1は、前側開口8からカバー部材5内に切替装置9(回動部材29)を挿入した後、支持部材19を保持した状態の流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入すると共にシャワーホース4を流路形成部材7の後部に挿入し、ホース固定部材16を切欠孔14に差し込むだけで完成する。従って、吐水装置1を組み立てるための工数が少ない上、ガイド部11及び被ガイド部12、ガイド部17及び被ガイド部18といったガイド手段を設けて各工程を簡便に行えるようにしてあるので、組付施工性が非常に良好となっている。
【0040】
また、完成後の吐水装置1において、流路形成部材7をカバー部材5から引き抜くためには、ホース固定部材16を切欠孔14から取り外すだけでは不十分であり、この取り外しの後に、切欠孔14の外側から弾性係止片13をカバー部材5内に押し込み、切欠孔14の内側縁に対する弾性係止片13の係止を解除しなければならない構成となっている。従って、例えばシャワーホース4に装着された上記シール部材や網状部材の交換等のメンテナンスを行うために、ホース固定部材16を取り外してシャワーホース4を流路形成部材7から引き抜いた際に、カバー部材5から引き抜く必要の無い流路形成部材7が支持部材19と共にカバー部材5から不意に抜け、支持部材19が抜けたことによって支持されなくなった切替装置9がカバー部材5から落下し、ひいては破損してしまうことを確実に防止することができる。
【0041】
そして、完成した吐水装置1においては、図1(B)に示すように、切替装置9の下部がカバー部材5の外部に露出した状態になり、吐水装置1は、この切替装置9の下部に設けられた摘まみ28を矢印イ方向に操作することにより、吐水装置1からの吐水形態をストレート吐水形態とシャワー吐水形態との二形態に切り替えることができる機能を有している。
【0042】
以下、この切替え機能を担う切替装置9のより詳細な構成について述べる。
【0043】
図4(A)及び図5(A)に示すように、摘まみ28は回動部材29の一部であり、この回動部材29は図13(A)〜(G)に示す形状(略筒状)をしている。そして、図13(A)及び(C)に示すように、回動部材29の内部には導水口形成部30が設けられ、この導水口形成部30には、この導水口形成部30の上流側(図示例では上側)から供給された水をストレート吐水口31(図3参照)に導くためのストレート吐水用導水口32と、シャワー吐水孔33(図3参照)に導くためのシャワー吐水用導水口34とが二つずつ形成されている(図13(D),(F)〜(H)も参照)。
【0044】
すなわち、回動部材29内には、その下方から図4(A)及び図5(A)に示す吐水口形成部材35が取り付けられ、この吐水口形成部材35は、内筒部36と外筒部37とを有し、両筒部36、37は環状のシャワー面板部分38を介して連設されている(図7(A),図9(A)も参照)。そして、内筒部36の下部がストレート吐水口31として構成されていると共に、シャワー面板部分38に多数のシャワー吐水孔33が設けられている。
【0045】
尚、回動部材29に対する吐水口形成部材35の取付けは、図7(A)及び図9(A)に示すように、回動部材29の下部内壁面に設けられた雌ねじ部分39に、吐水口形成部材35の外筒部37の外壁面に設けられた雄ねじ部分40を螺着させることによって行える。また、回動部材29の内壁面と吐水口形成部材35の外筒部37の外壁面との間における雌ねじ部分39、雄ねじ部分40よりも下方の位置には、シール部材(例えばOリング)41が設けられている。
【0046】
また、回動部材29内における導水口形成部30よりも下側(下流側)の部分は、吐水口形成部材35が回動部材29に取り付けられた状態において、ストレート吐水用導水口32が内筒部36内に連通し、シャワー吐水用導水口34が内筒部36と外筒部37との間の環状空間に連通するように適宜に区画されている(図13(F)〜(H)参照)。尚、図13(F)〜(H)に示すように、この区画のために回動部材29内に設けられた小筒部分42は、その内側の空間がストレート吐水用導水口32に連通し、また、図7(A)、図9(A)に示すように、小筒部分42には、シール部材(例えばシートパッキン)43を介して吐水口形成部材35の内筒部36が接続される。
【0047】
一方、導水口形成部30の上側(上流側)には、図4(A)、図5(A)、図10(D)及び(E)、図11(A)〜(C)に示すように、シール部材(異形パッキン)44が設けられ、このシール部材44は、例えばゴム等の弾性材からなり、導水口形成部30を覆うように配置される。また、シール部材44には、図10(D)及び(E)、図11(B)及び(C)に示すように、導水口形成部30のストレート吐水用導水口32及びシャワー吐水用導水口34を閉塞しないように形成された複数(図示例では四つ)の通水孔45が設けられている。
【0048】
本形態では、回動部材29の上部に上方に開放された凹部を設け、この凹部内にシール部材44を収容する構成を採用している。また、シール部材44を回動部材29と一体的に回動させる必要があり、そのため、本形態では、図12に示すように、シール部材44を略十字形状に構成すると共に、このシール部材44を収容する前記凹部の形状を、図13(A)及び(C)に示すように、シール部材44の形状に合わせてある。
【0049】
さらに、シール部材44の上流側(上側)には、図4(A)、図5(A)、図14(A)〜(D)に示す左右対称の形状を有する弁部材46が配置される。この弁部材46は、図14(A)〜(D)に示すように、二つの貫通孔47が設けられた略円板状の基部48を有し、回動部材29の上部には、この基部48の周縁を当接可能とする環状段部49が設けられている(図13(A)参照)。
【0050】
そして、この弁部材46は、図4(A)、図5(A)、図15(A)〜(G)に示す形状の切替装置本体50内に収容され、この切替装置本体50及び弁部材46には、弁部材46をシール部材44に近接離間する方向に移動可能にガイドし、かつ、特定の方向に向けた状態に保持するガイド手段が設けられている。
【0051】
すなわち、切替装置本体50は、結合口27の他に下流側(本形態では下側)が開放された中空の部材であり、この切替装置本体50内には、図15(B)、(G)に示すガイド保持部51が設けられ、このガイド保持部51にガイド保持される図14(A)〜(C)に示す被ガイド保持部52が弁部材46に設けられている。本形態では、ガイド保持部51は、互いに径が異なる複数の円弧壁部分を繋げた形状とされ、被ガイド保持部52は、ガイド保持部51の内側に沿い、かつ、貫通孔47を避けるように切り欠かれた形状とされている。
【0052】
また、弁部材46は、図7(A)、図9(A)に示すように、付勢手段(例えばスプリング)53によってシール部材44に近接する方向に付勢される。そして、この付勢手段53を保持するために、切替装置本体50の天壁下面に図15(B)、(G)に示す保持部54が設けられ、弁部材46の基部48の上面に、図14(A)及び(C)に示す保持部55が設けられている。
【0053】
また、切替装置本体50は、内部に付勢手段53及び弁部材46を収容した状態で、シール部材44を保持した状態の回動部材29の下部を除く部分を覆うように構成されている。ここで、切替装置本体50の内壁と回動部材29の外壁との間からの水漏れを防止する必要があるが、本形態では、切替装置本体50はカバー部材5内において動かないように固定されるのに対し、回動部材29は摘まみ28の操作によってその軸回りに回動するものである。そこで、本形態において、両者50,29の間に設けられるシール部材56としては、例えばUパッキンやVパッキン等のリップパッキンが挙げられる(図4(A)、図5(A)、図7(A)、図9(A)参照)。
【0054】
また、回動部材29の外壁面において切替装置本体50の下端が当接する部分には、例えばポリエチレン製の滑り面形成部材57(図4(A)、図5(A)、図7(A)、図9(A)参照)が設けられ、両者50、29間の摺動摩擦が減るように構成されている。
【0055】
また、図10(A)〜(E)に示すように、回動部材29は支持部材19によって回動可能に支持されるのであり、図13(E)に示すように、回動部材29の外壁面には環状溝58が設けられ、この環状溝58の上側に連なり上側(上流側)向きに径が大となる拡径部59に、支持部材19の二つの脚部分20が左右両側から当接する。そして、この構成に対応させて、切替装置本体50の左右両側には、図15(C)、(D)、(F)、(G)に示すように、支持部材19の二つの脚部分20を避けるための切欠部分60、61が設けられている。尚、本形態では、切替装置本体50の一面側には貫通孔状の切欠部分60(図15(C)参照)が二つ設けられ、他面側には溝状の切欠部分61(図15(F)参照)が一つのみ設けられているが、切欠部分60、61の構成は種々に変更可能である。
【0056】
そして、本形態では、摘まみ28が図6(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、図6(B)に示すように、ストレート吐水口31から吐水が行われるストレート吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図7(A)〜(E)、図10(A)、(D)にも示す。また、摘まみ28が図8(C),(D)に示す位置にある場合は、図8(B)に示すように、シャワー吐水孔33から吐水が行われるシャワー吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図9(A)〜(E)、図10(C)、(E)にも示す。
【0057】
すなわち、まず、摘まみ28の位置に関係なく、流路形成部材7を経て給水口27から切替装置9内に入った水は、切替装置本体50内を通って弁部材46の上流側に至った後、二つの貫通孔47を経て弁部材46の下流側に向かう。ここで、弁部材46の各貫通孔47は、下流側に向けて設けられた水導出口を構成するものであり、以下、水導出口47という。
【0058】
また、弁部材46の下流側にある回動部材29の導水口形成部30に設けられた四つの導水口32、34は回動部材29の中央(回動軸)を避けた位置にあり(図13(C)参照)、水導出口47は、シール部材44の通水孔45を介して導水口32、34と連通可能となるように、弁部材46において回動部材29の軸心を避けた位置に設けられている(図10(D),(E)参照)。従って、回動部材29の回動に伴って水導出口47に対する回動部材29及びシール部材44の位相が変更され、シール部材44の通水孔45を介して水導出口47に連通する回動部材29の導水口32、34が変更されることになる。
【0059】
そして、摘まみ28が図6(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、水導出口47には、回動部材29の導水口形成部30に設けられた四つの導水口のうち、二つのストレート吐水用導水口32のみが連通し(図10(D)参照)、残る二つのシャワー吐水用導水口34は連通しない状態となる。
【0060】
すなわち、図14(B)及び(D)に示すように、弁部材46の基部48の下面(下流側の面)は略平面状に形成され、この下面における水導出口47以外の部位は下流側に向けて設けられた止水部48aを構成している。そして、シール部材44に設けられた四つの通水孔45のうち、水導出口47に連通する位置に無い通水孔45は止水部48aによって閉塞され、閉塞された通水孔45に連通する導水口32、34は水導出口47に連通しない状態となる。
【0061】
ここで、シール部材44に設けられた四つの通水孔45、導水口形成部30に1対ずつ設けられた導水口32、34のうち、水導出口47に連通する通水孔45、導水口32、34のみに水が流れるように、本形態では、略平面状の止水部48aに対向するシール部材44の上流側(上側)の面に、各通水孔45の周縁に沿って突条部44a(図12参照)が設けられ、略平面状のシール部材44の下流側(下側)の面に対向する導水口形成部30の上流側(上側)の面に、各導水口32、34の周縁に沿って突条部30aが設けられている。
【0062】
尚、止水部48aを略平面状とし、かつ、シール部材44に突条部44aを設けるという構成に代えて、シール部材44の上流側(上側)の面を略平面状にし、弁部材46の止水部48aに、各通水孔45を囲む状態でシール部材44に当接可能な突条部を設けるという構成を採用してもよい。同様に、シール部材44の下流側(下側)の面を略平面状とし、かつ、導水口形成部30に突条部30aを設けるという構成に代えて、導水口形成部30の上流側(上側)の面を略平面状にし、シール部材44の下流側(下側)の面に、各導水口32、34を囲む状態で導水口形成部30に当接可能な突条部を設けるという構成を採用してもよい。
【0063】
従って、摘まみ28が図6(A),(C),(D)に示す位置にある場合、水導出口47から導出された水は、シール部材44の通水孔45、ストレート吐水用導水口32を通過し、回動部材29内の小筒部分42、吐水口形成部材35の内筒部36を経て、その先端にあるストレート吐水口31から吐出される。尚、水が内筒部36を経る際、内筒部36内に装着されている整流器(例えば泡沫器)62を通過するが、この整流器62としては公知のものを採用可能であり、図面の複雑化を避けるために、整流器62は図4(A)及び図5(A)のみに概略的に示してある。
【0064】
また、摘まみ28を操作して図8(C),(D)に示す位置に移動させると、水導出口47には、回動部材29の導水口形成部30に設けられた四つの導水口のうち、二つのシャワー吐水用導水口34のみが連通し(図10(E)参照)、残る二つのストレート吐水用導水口32は連通しない状態となる。
【0065】
従って、摘まみ28が図8(C),(D)に示す位置にある場合、水導出口47から導出された水は、シール部材44の通水孔45、シャワー吐水用導水口34を通過し、吐水口形成部材35の内筒部36及び外筒部37間の環状空間を経て、その先端にあるシャワー面板部分38の多数のシャワー吐水孔33から吐出される。
【0066】
ここで、摘まみ28の操作に伴う回動部材29の回動可能な範囲を制限して、摘まみ28を図6(A),(C),(D)に示す位置と図8(C),(D)に示す位置とに容易に移動させることができるようにするために、本形態では、回動部材29の上部に突起63(図10(B)参照)が設けられ、切替装置本体50内には、突起63を止める二つのストッパー64(図15(B)、(D)、(G)参照、回動部材29の回動を制限する回動制限部としての一例)が設けられている。
【0067】
上記吐水装置1では、弁部材46と導水口形成部30との間にシール部材44を設け、導水口形成部30のストレート吐水用導水口32とシャワー吐水用導水口34とを相互に接近させて配置することのできる構成を採用しているので、導水口形成部30を含む切替装置9の小型化、ひいては吐水装置1の小型化を容易に図ることができる。
【0068】
また、前側開口8からカバー部材5内に回動部材29を挿入した後、支持部材19を保持した状態の流路形成部材7を後向き開口6からカバー部材5内に挿入するだけで回動部材29の装着が完了する。従って、回動部材29を装着するための作業が簡単な上、回動部材29の装着の際にねじ込み作業を不要とすることができるので、回動部材29の他、支持部材19や流路形成部材7に過度のストレスが加わらないようにし、ひいては常に適切な装着状態を実現することが容易となる。
【0069】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0070】
第1の実施の形態の弁部材46は、略平面状に形成された止水部48aを有していたが、第2の実施の形態に係る吐水装置の弁部材46Aは、図16、図17、図23(A)〜(D)に示すように、略平面状ではなく下流側(下側)に向けて凸の曲面状に形成された止水部48aを有している。これに伴い、第1の実施の形態では、止水部48aに対向するシール部材44の上流側(上側)の面に、各通水孔45の周縁に沿って突条部44a(図12参照)が設けられていたが、第2の実施の形態では、突条部44aを設けず、シール部材44の上流側(上側)の面を略平面状としてある。
【0071】
また、第1の実施の形態の弁部材46は、水導出口47を構成する二つの貫通孔を有していたが、第2の実施の形態の弁部材46Aは、図16、図17、図23(A)〜(D)に示すように、水導出口47を構成する貫通孔を有しておらず、その代わりに、基部48を小さくし、弁部材46Aの基部48と弁部材46Aを収容する切替装置本体50の内壁との間に隙間が形成されるようにしてあり、この隙間によって水導出口47が構成されている。
【0072】
さらに、第2の実施の形態において、弁部材46をシール部材44に近接離間する方向に移動可能にガイドし、かつ、特定の方向に向けた状態に保持するガイド手段の構成が、第1の実施の形態のものと異なっている。すなわち、第2の実施の形態におけるガイド保持部51としては、図24(B)、(D)、(E)、(G)に示すように、上下に延びるレール状部分51aと、互いに径が異なる複数の円弧壁部分を繋げた形状の壁部分51bとが設けられ、被ガイド保持部52としては、図23(A)〜(D)に示すように、レール状部分51aに沿う溝部分52aと、壁部分51aの内側に沿い、かつ、溝部分52a及び止水部48aを避けるように切り欠かれた形状の壁部分52bとが設けられている。
【0073】
また、第2の実施の形態における切替装置本体50は図24(A)〜(G)に示す構造を有し、この内部の二つのストッパー64は図24(D)、(G)に示す形状をしており、第1の実施の形態のものと異なっている。
【0074】
そして、第2の実施の形態では、摘まみ28が図18(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、図18(B)に示すように、ストレート吐水口31から吐水が行われるストレート吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図19(A)〜(E)、図22(A)、(D)にも示す。また、摘まみ28が図20(A),(C),(D)に示す位置にある場合は、図20(B)に示すように、シャワー吐水孔33から吐水が行われるシャワー吐水形態となる。このときの吐水装置1各部の状態を、図21(A)〜(E)、図22(C)、(E)にも示す。
【0075】
そして、回動部材29が支持部材19によって回動可能に支持されている点(図22(A)〜(E)参照)等、第2の実施の形態におけるその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、共通する構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0076】
尚、第2の実施の形態において、図25(A)〜(C)に示すように、回動部材29に回動部材29の回動方向に延びるレール71が設けられると共に、弁部材46にレール71に当接する当接部分72が設けられ、回動部材29の回動に伴って水導出口47がストレート吐水口31及びシャワー吐水孔33の両方に連通する状態(図25(B)参照)となる間は、弁部材46を回動部材29の導水口形成部30から離間させるように、レール71に高さ方向に傾斜する傾斜部分73が設けられていてもよい。勿論、逆に、レール71及び傾斜部分73に相当する構成が弁部材46に設けられ、当接部分72に相当する構成が回動部材29に設けられていてもよい。
【0077】
上記のようにレール71、当接部分72、傾斜部分73を設けた場合には、摘まみ28による回動部材29の回動操作に必要な力を軽減することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。そこで、以下にその変形例について説明する。
【0079】
吐水装置1はシャワーホース4を有していないものでもよく、本発明はシャワーヘッド以外の吐水装置にも適用可能である。また、水栓2の設置場所は洗面台に限らず、水栓2自体も湯水混合水栓に限らず例えば単水栓でもよい。
【0080】
回動部材29を支持する支持部材19は流路形成部材7に保持されていなくてもよく、例えば支持部材19が流路形成部材7と一体化されていてもよい。
【0081】
ストレート吐水用導水口32、シャワー吐水用導水口34が一対ずつ設けられ、通水孔45が四つ設けられる構成に限らず、例えば、導水口32、34が一つずつ設けられ、通水孔45が二つ設けられていてもよい。
【0082】
弁部材46を付勢する付勢手段53を設けず、給水圧を利用して弁部材46を付勢するようにしてもよい。さらに、弁部材46、切替装置本体50を設けず、水導出口47及び止水部48aがカバー部材5の内壁によって形成されていてもよい。この場合、切替装置本体50が有する他の必要な機能をカバー部材5の内壁によって担うように構成すればよい。
【0083】
尚、例えば、第2の実施の形態において述べた、レール71、当接部分72、傾斜部分73を設けるという変形を、第1の実施の形態に適用してもよく、このように、上記各実施の形態の構成及びその変形を、適宜に組み合わせて行ってもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 吐水装置
9 吐水形態切替装置
29 回動部材
30 導水口形成部
31 ストレート吐水口
32 ストレート吐水用導水口
33 シャワー吐水孔
34 シャワー吐水用導水口
44 シール部材
45 通水孔
46 弁部材
47 水導出口
48a 止水部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出される水の形態をストレート吐水形態とシャワー吐水形態とに切り替える吐水形態切替装置であって、
下流側に向けて設けられた水導出口及び止水部を構成する弁部材と、
前記水導出口の下流側に配置された導水口形成部を有し、該導水口形成部には上流側から供給された水をストレート吐水口に導くためのストレート吐水用導水口及びシャワー吐水孔に導くためのシャワー吐水用導水口が形成された回動部材と、
前記弁部材と前記導水口形成部との間において該導水口形成部を覆うように配置されると共に、前記ストレート吐水用導水口及び前記シャワー吐水用導水口を閉塞しないように形成された複数の通水孔を有し、前記水導出口に連通する位置に無い前記通水孔は前記止水部によって閉塞されるシール部材とを備え、
前記シール部材は前記回動部材と一体的に回動し、この回動に伴って、前記水導出口が前記通水孔及び前記ストレート吐水用導水口を介して前記ストレート吐水口に連通する状態と、前記水導出口が前記通水孔及び前記シャワー吐水用導水口を介して前記シャワー吐水孔に連通する状態とに切り替わるように構成されている吐水形態切替装置。
【請求項2】
前記弁部材を前記シール部材に近接離間する方向に移動可能にガイドするガイド手段と、前記弁部材を前記シール部材に近接する方向に付勢する付勢手段とを備えている請求項1に記載の吐水形態切替装置。
【請求項3】
前記弁部材は前記ガイド手段によって特定の方向に向いた状態に保持されるように構成されている請求項2に記載の吐水形態切替装置。
【請求項4】
前記シール部材の上流側の面に前記通水孔の周縁に沿って突条部が設けられているか、または前記通水孔を囲む状態で前記シール部材に当接可能な突条部が前記止水部に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の吐水形態切替装置。
【請求項5】
前記止水部が下流側に向けて凸の曲面状に形成されている請求項1〜3の何れかに記載の吐水形態切替装置。
【請求項6】
前記弁部材または前記回動部材の何れか一方に前記回動部材の回動方向に延びるレールが設けられると共に他方に前記レールに当接する当接部分が設けられ、前記回動部材の回動に伴って前記水導出口が前記ストレート吐水口及び前記シャワー吐水孔の両方に連通する状態となる間は、前記弁部材を前記回動部材の導水口形成部から離間させるように、前記レールに高さ方向に傾斜する傾斜部分が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の吐水形態切替装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の吐水形態切替装置を備えた吐水装置。
【請求項1】
吐出される水の形態をストレート吐水形態とシャワー吐水形態とに切り替える吐水形態切替装置であって、
下流側に向けて設けられた水導出口及び止水部を構成する弁部材と、
前記水導出口の下流側に配置された導水口形成部を有し、該導水口形成部には上流側から供給された水をストレート吐水口に導くためのストレート吐水用導水口及びシャワー吐水孔に導くためのシャワー吐水用導水口が形成された回動部材と、
前記弁部材と前記導水口形成部との間において該導水口形成部を覆うように配置されると共に、前記ストレート吐水用導水口及び前記シャワー吐水用導水口を閉塞しないように形成された複数の通水孔を有し、前記水導出口に連通する位置に無い前記通水孔は前記止水部によって閉塞されるシール部材とを備え、
前記シール部材は前記回動部材と一体的に回動し、この回動に伴って、前記水導出口が前記通水孔及び前記ストレート吐水用導水口を介して前記ストレート吐水口に連通する状態と、前記水導出口が前記通水孔及び前記シャワー吐水用導水口を介して前記シャワー吐水孔に連通する状態とに切り替わるように構成されている吐水形態切替装置。
【請求項2】
前記弁部材を前記シール部材に近接離間する方向に移動可能にガイドするガイド手段と、前記弁部材を前記シール部材に近接する方向に付勢する付勢手段とを備えている請求項1に記載の吐水形態切替装置。
【請求項3】
前記弁部材は前記ガイド手段によって特定の方向に向いた状態に保持されるように構成されている請求項2に記載の吐水形態切替装置。
【請求項4】
前記シール部材の上流側の面に前記通水孔の周縁に沿って突条部が設けられているか、または前記通水孔を囲む状態で前記シール部材に当接可能な突条部が前記止水部に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の吐水形態切替装置。
【請求項5】
前記止水部が下流側に向けて凸の曲面状に形成されている請求項1〜3の何れかに記載の吐水形態切替装置。
【請求項6】
前記弁部材または前記回動部材の何れか一方に前記回動部材の回動方向に延びるレールが設けられると共に他方に前記レールに当接する当接部分が設けられ、前記回動部材の回動に伴って前記水導出口が前記ストレート吐水口及び前記シャワー吐水孔の両方に連通する状態となる間は、前記弁部材を前記回動部材の導水口形成部から離間させるように、前記レールに高さ方向に傾斜する傾斜部分が設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の吐水形態切替装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の吐水形態切替装置を備えた吐水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
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【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2011−184941(P2011−184941A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50961(P2010−50961)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
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