説明

吐水装置

【課題】操作ハンドルを吐水状態から止水状態に切り替える際に当該操作ハンドルのロック機構が確実にセットされ、操作ハンドルの止水位置が変化してもロックミスが発生しない吐水装置を提供する。
【解決手段】吐水装置10は、略L字状の管体で形成された吐水部11と、回動操作により吐水部11の吐水・止水を切り替える操作ハンドル17と、吐水部11を止水状態から吐水状態へ切り替える際の操作ハンドル17の回動を規制するロック機構と、を有している。吐水部11を止水状態から吐水状態へ切り替えるときはロック機構を解除した位置R2から操作ハンドル17を一定角度回動させた位置R3で吐水状態に切り替わり、吐水部11を吐水状態から止水状態へ切り替えるときはロック機構がセットされた位置R2から操作ハンドル17を一定角度回動させた位置R1で止水状態に切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチや尿瓶を洗浄する水栓などが装備された多機能トイレなどに設置して使用される吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明に関連する従来技術として、図16に示すような吐水装置50がある。この吐水装置50は、給水源(図示せず)から壁面Wに配管された給水管52に連結された略円筒状の本体部53と、本体部53の片端部に起伏可能に取り付けられた円管状の吐水部51と、本体部53の他端部に回動可能に取り付けられたレバー57a付きの操作ハンドル57と、操作ハンドル57の外周面に突設されたロックボタン58と、ロックボタン58を覆ったり、露出させたりする略半球状のボタンカバー56と、吐水部51の起伏操作と連動して操作ハンドル57の外周面に沿ってボタンカバー56を回動させるための連動ロッド55と、を備えている。吐水部51は矢線51sの範囲内で起伏可能であり、操作ハンドル57は矢線57sの範囲内で回動可能である。
【0003】
図16に示すように、吐水装置50の吐水部51が非使用位置(起立状態)にあるときは、通常、操作ハンドル57のレバー57aも垂直位置V(起立状態)にあり、本体部53の正面側に位置するロックボタン58はボタンカバー56によって覆われている。吐水装置50を使用する場合、図17に示すように、吐水部51を本体部53の正面側に倒伏させるように回動させると、吐水部51と連動して本体部53の外周面に沿って回動する連動ロッド55を介してボタンカバー56が本体部53の下面側へ回動して、ロックボタン58が露出する。
【0004】
この後、ロックボタン58を押圧するとロックが解除され操作ハンドル57が回動可能となるので、その状態で、図18に示すように、操作ハンドル57のレバー57aを本体部53の背面側へ回動させると、本体部53内の弁体59(図19参照)が開いて、吐水部51の吐水口51aからの吐水が開始される。操作ハンドル57は、レバー57aが水平位置H(図16参照)に達するまで回動させることができ、水平位置Hに近づくほど吐水量が増大するようになっている。
【0005】
図19に示すように、吐水装置50の本体部53内には、その軸心方向に沿ってスピンドル60が回動可能に配置され、スピンドル60の基端部60aに操作ハンドル57が接続され、先端部60bは弁体59に接続されている。前述したように、レバー57aを介して操作ハンドル57を回動させると本体部53内のスピンドル60が同時に回動して弁体59への押圧が解除されるので、弁体59が弁座54から離れ、給水管52と吐水部51とが連通し、吐水口51aからの吐水が行われる。
【0006】
吐水装置50においては、使用者が誤って吐水操作や止水操作をしたときのトラブルを防止するため、平常は操作ハンドル57を回動不能に保ち、ロックボタン58の押圧操作でロック解除され操作ハンドル57が回動可能となるロック機構が設けられている。また、吐水装置50の場合、内蔵されたパッキン59a(図19参照)などが操作ハンドル57の回動操作の反復によって経年劣化し、その止水位置が次第にずれてくるのに対処するため、ロックボタン58を押圧してロックが解除されると直ちに止水状態から吐水状態へ切り替わる位置にロックセット位置を設けずに、ロックボタン58を押圧した後、操作ハンドル57を一定角度回動させたときに吐水状態となるようにロックセット位置が設定されているのが一般的である。
【0007】
図16に示すように、ロック解除状態の操作ハンドル57は、そのレバー57aが垂直位置Vから水平位置Hに至る範囲内(矢線57sで示す範囲内)において回動可能であるが、通常はロックがセットされているため、操作ハンドル57のレバー57aは垂直位置Vから傾斜位置P1までの範囲内で回動可能である。吐水部51を本体部53の正面側に倒伏させ、ロックボタン58を露出させた状態でロックボタン58を押圧すると、ロックが解除され、操作ハンドル57のレバー57aは傾斜位置P1を通過して回動可能となるので、さらに回動させると、レバー57aが傾斜位置P2に達したときに吐水が開始される。このように、操作ハンドル57のレバー57aが矢線T1の範囲内にあるときは止水状態にあり、矢線T2の範囲内にあるときは吐水状態にあり、矢線T3の範囲内(傾斜位置P1,P2の間)にあるときは止水状態にあるがロックはされていない。
【0008】
一方、本願発明に関連するその他の吐水装置として、操作ハンドルが止水位置にあるときのロックボタンの解除操作を防止するため、吐水部が非使用位置にあるときは、吐水部の起伏運動と連動して動きながら当該ロックボタンを覆うロックボタンカバーを操作ハンドルに設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、吐水部が非使用位置にあるときは、操作ハンドルに接近して位置することにより、操作ハンドルの回動操作を規制する規制手段を設けた吐水装置もある(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】特開2007−198092号公報
【特許文献2】特開平10−204956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図16に示すように、従来の吐水装置50の場合、操作ハンドル57を吐水位置(水平位置H)から止水位置(垂直位置V)に向けて回動操作していくと、そのレバー57aが傾斜位置P2を通過した後、傾斜位置P1に達する前の段階(矢線T3の範囲)で吐水部51は止水状態となる。即ち、操作ハンドル57のロック機構がセットされる前に吐水部51は止水状態となるため、使用者は、操作ハンドル57がロックされる前(レバー57aが傾斜位置P1に達する前)に操作ハンドル57の回動操作を止めることがある。
【0011】
このような状態にある吐水装置50において、次の使用者が誤って操作ハンドル57を吐水方向へ回動操作すると、ロック機構がセットされていないため、操作ハンドル57が回動して、吐水部51の吐水口51aから吐水してしまうことがある。従って、吐水口51aから吐出される水が無駄になり、節水の観点から望ましくない。
【0012】
また、特許文献1,2に記載された吐水装置においては、便器背面側の壁面に水栓本体部が固定され、操作ハンドルはロックされていないため、使用者が誤って操作ハンドルを操作すると、吐水部の吐水口から急に吐水してしまい、使用者の背中や衣服を濡らすことがある。
【0013】
さらに、特許文献1記載の吐水装置は、操作ハンドルのロックボタンを覆うためのロックボタンカバーを設けた構造であるが、前述した吐水装置50と同様の問題を有する。また、特許文献2記載の吐水装置の場合、吐水部が非使用位置にあるときの操作ハンドルの回動を防止することはできるが、ロック機構が機能している状態において、操作ハンドルが不意に操作されたときの吐水を防止することはできない。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、操作ハンドルを吐水状態から止水状態に切り替える際に当該操作ハンドルのロック機構が確実にセットされ、操作ハンドルの止水位置が変化してもロックミスが発生しない吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、吐水部と、回動操作により前記吐水部からの吐水・止水を切り替える操作ハンドルと、を有する吐水装置において、
前記操作ハンドルは、前記吐水部を止水状態から吐水状態へ切り替える際の当該操作ハンドルの回動を規制するロック機構を有し、
前記操作ハンドルを回動させて前記吐水部を止水状態から吐水状態へ切り替えるときは前記ロック機構が解除された位置から前記操作ハンドルを一定角度回動させると止水状態から吐水状態に切り替わり、
前記操作ハンドルを回動させて前記吐水部を吐水状態から止水状態に切り替えるときは前記ロック機構がセットされた位置から前記操作ハンドルを一定角度回動させると吐水状態から止水状態に切り替わることを特徴とする。
【0016】
このような構成とすれば、吐水部を止水状態から吐水状態へ切り替えるときは、従来通り、操作ハンドルのロック機構が解除された位置から一定角度操作ハンドルを回動させることによって吐水状態へ切り替わり、吐水状態から止水状態に切り替えるときは、従来と異なり、操作ハンドルのロック機構がセットされた位置から一定角度だけ当該操作ハンドルを回動させないと止水されないこととなる。従って、吐水状態から止水状態へ切り替えるとき、ロック機構がセットされない状態で操作ハンドルが止水位置に到達することがなくなる。このため、吐水部が止水状態にあるときに、誤って操作ハンドルが吐水側へ回動されても、必ずロック機構が機能して、吐水部から吐水されることがない。
【0017】
また、ロック機構は、当該ロック機構がセットされた位置から、一定角度操作ハンドルを回動させないと、吐水部が吐水から止水へ切り替わらないため、水栓を構成するパッキンなどの劣化により、操作ハンドルの止水位置が変化することがあっても、ロック機構がセットされる前に、吐水部が止水されるような事態が発生しない。
【0018】
ここで、前記吐水装置は、前記吐水部に給水を行う弁体と、前記操作ハンドル及び前記弁体に連結し、前記操作ハンドルの回動を前記弁体に伝達するスピンドルと、を備えた水栓本体を有し、
前記スピンドルは、前記操作ハンドルと連結した第一スピンドル部材と、前記弁体と連結した第二スピンドル部材とを有し、前記第一スピンドル部材と前記第二スピンドル部材との回動伝達に遊びを設けることが望ましい。
【0019】
このような構成とすれば、第一スピンドル部材と第二スピンドル部材とが一体的に連動しない機構が形成されるので、操作ハンドルの回動操作と同時に弁体が回動することがなくなり、当該操作ハンドルの操作角度と、それに伴う弁体の回動角度との間に「遊び」に相当する分の角度差が生じる。これにより、誤って操作ハンドルを操作したとき、直ちに弁体が開いて吐水されることのないロック機構が形成されるため、吐水部からの意図しない吐水を防止することできる。
【0020】
また、前記吐水部が、便器ボール面に向かって吐水する使用位置と、便器後部に起立する非使用位置との間で回動可能である吐水装置でも、吐水部が止水状態にも係わらず、操作ハンドルのロック機構が解除されているような状態がないので、吐水部が便器後部に起立する非使用位置にあるときに操作ハンドルが誤って吐水操作されても必ずロック機構が機能して、吐水部からは吐水されない。従って、使用者が便器に座った状態で誤って操作ハンドルを吐水操作しようとしても、使用者の衣服や背中に水が掛かるようなトラブルの発生を回避することができる。
【0021】
さらに、前記吐水部が前記非使用位置にある状態で前記操作ハンドルを回動させたときに前記ロック機構が解除されるのを防止するために前記吐水部と一体的に回動するロックカバーを設けることが望ましい。このような構成とすれば、吐水部が非使用位置にある状態で、操作ハンドルを誤って回動させて、更にロック機構を誤って解除しようとしても、ロックカバーがロック機構の解除を防止するため、吐水部から水を吐水させることはできず、吐水部から水が吐水されて使用者の衣服や背中を濡らすようなトラブルの発生をより少なくすることができる。
【0022】
この場合、前記ロックカバーは、前記吐水部が使用位置にあるときに限り、前記ロック機構を解除可能な状態となるようにすれば、吐水部が使用位置以外にあるときはロックカバーがロック機構を解除不能に保つことができる。従って、吐水部が使用位置にない状態において、使用者が誤ってロック機構を解除することを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、操作ハンドルを吐水状態から止水状態に切り替える際に当該操作ハンドルのロック機構が確実にセットされ、操作ハンドルの止水位置が変化してもロックミスが発生しない吐水装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である吐水装置の斜視図、図2は図1に示す吐水装置が吐水状態にあるときの斜視図、図3は図1に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図、図4は図1に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図、図5は図1に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図、図6は図1に示す吐水装置の側面図、図7は図6に示す吐水装置の操作手順を示す側面図、図8は図6に示す吐水装置が吐水状態にあるときの側面図、図9は図7のA−A線における断面図である。
【0025】
図1,図2に示すように、本実施形態の吐水装置10は、洋式便器20の背面側に位置する壁面Wに取り付けられている。また、洋式便器20は、便器本体20a,便座20b及び衛生洗浄装置などが内蔵された機能部20cなどによって構成されている。吐水装置10は、給水源(図示せず)から壁面Wに配管された給水管12に連結された略円筒状の本体部13と、本体部13の片端部に起伏可能に取り付けられた吐水部11と、本体部13の他端部に回動可能に取り付けられたレバー17a付きの操作ハンドル17と、操作ハンドル17の外周面に突設されたロックボタン18と、ロックボタン18を覆ったり、露出させたりする円弧板形状のロックカバー16と、吐水部11の起伏操作と連動して操作ハンドル17の外周面に沿ってロックカバー16を回動させるための連動ロッド15と、を備えている。図6に示すように、吐水部11は矢線11sの範囲内で起伏可能であり、操作ハンドル17は矢線17sの範囲内で回動可能である。
【0026】
吐水部11は略L字状の管体で形成され、その先端には吐水口11aが設けられ、基端側が本体部13に回動可能に取り付けられている。操作ハンドル17には、吐水部11を止水状態から吐水状態へ切り替える際の当該操作ハンドル17の回動を規制するロック機構(図示せず)が設けられている。ロックカバー16の内周にはロックボタン18を収納するための溝部16aが当該ロックカバー16の回動方向に沿って設けられている。
【0027】
図1,図6に示すように、吐水装置10の吐水部11が非使用位置(起立状態)にあるときは、操作ハンドル17のレバー17aは垂直位置V(垂下状態)にあり、本体部13の正面側に位置するロックボタン18はロックカバー16によって覆われている。吐水装置10を使用する場合、図3に示すように、吐水部11の吐水口11a付近を手Fで掴んで便器本体20aの正面側に倒伏させるように回動させると、吐水部11と連動して本体部13の外周面に沿って回動する連動ロッド15によってロックカバー16が本体部13の下面側へ回動するため、図7に示すように、操作ハンドル17の正面側にロックボタン18が露出した状態となる。
【0028】
この後、図4に示すように、操作ハンドル17のレバー17aを手Fで掴んだ状態でロックボタン18を手指で押圧するとロックが解除され、操作ハンドル17が回動可能となるので、図5に示すように、操作ハンドル17のレバー17aを本体部13の背面側(壁面W側)へ回動させると、図9に示す本体部13内のスピンドル23を介して弁体19が開かれ、図8に示すように、吐水部11の吐水口11aからの吐水が始まる。操作ハンドル17は、図6に示すように、レバー17aが水平位置Hに達するまで回動させることができ、水平位置Hに近づくほど吐水口11aからの吐水量が増加する。
【0029】
図9に示すように、吐水装置10の本体部13内には、その軸心方向に沿ってスピンドル23が回動可能に配置されている。スピンドル23は、同軸上に直列配置された第一スピンドル部材21と第二スピンドル部材22とで構成され、第一スピンドル部材21の基端部21aが操作ハンドル17に連結され、第二スピンドル部材22の先端部22aが弁体19に連結されている。また、第一スピンドル部材21の回動を第二スピンドル部材22に伝達するため、第一スピンドル部材21の先端部21b及び第二スピンドル部材22の基端部22bにそれぞれ連結面21c,22cが設けられている。
【0030】
ここで、図10〜図12に基づいて、スピンドル23及び第一スピンドル部材21及び第二スピンドル部材22の形状、機能などについて説明する。図10は図9に示す吐水装置を構成するスピンドルの正面図、図11(a)は図10に示すスピンドルを構成する第一スピンドル部材の側面図、図11(b)は前記第一スピンドル部材の正面図、図12(a)は図10に示すスピンドルを構成する第二スピンドル部材の正面図、図12(b)は前記第二スピンドル部材の側面図である。
【0031】
図10に示すように、スピンドル23は、同軸上に直列配置された第一スピンドル部材21と第二スピンドル部材22とで構成されている。図11に示すように、第一スピンドル部材21の先端部21bは、その軸心Cを含む平面状の連結面21cを有する蒲鉾形状をしている。図12に示すように、第二スピンドル部材22の基端部22bは、その軸心Cを稜線として屋根形状に配置された二つの連結面22cを有している。従って、第二スピンドル部材22側から見た第一スピンドル部材21の先端部21bの端面形状が半円形状であるのに対し、第一スピンドル部材21側から見た第二スピンドル部材22の基端部22bの端面形状は扇形状である。
【0032】
図10に示すように、スピンドル23は、第一スピンドル部材21の先端部21bの連結面21cと、第二スピンドル部材22の基端部22bの連結面22cと、を互いに対向させた状態で直列配置することによって構成されているため、第一スピンドル部材21の回動は直接第二スピンドル部材22へ伝達されない。即ち、第一スピンドル部材21が回動してその連結面21cの一部が、第二スピンドル部材22の連結面22cの一方に当接することによって、第一スピンドル部材21の回動が第二スピンドル部材22へ伝達される。従って、第一スピンドル部材21と第二スピンドル部材22との回動伝達には、図12(b)に示す回動角度Pに相当する「遊び」が存在する。なお、第二スピンドル部材22において二つの連結面22cの成す角度S(図12(b)参照)は限定しないので、この角度Sを増減して回動角度Pを変更することによって前記「遊び」の角度を変更することができる。
【0033】
次に、図6〜図8に基づいて、吐水装置10の吐水・止水操作について説明する。図6に示すように、ロック機構が解除された状態にあるときの操作ハンドル17は、そのレバー17aが垂直位置Vから水平位置Hに至る範囲内(矢線17sで示す範囲内)において回動可能であるが、通常はロック機構がセットされているため、操作ハンドル17のレバー17aは垂直位置Vから傾斜位置R2までの範囲内で回動可能である。図7に示すように、吐水部11を吐水位置まで回動させると、ロックカバー16が本体部13の下面側へ回動してロックボタン18が露出する。ここで、ロックボタン18を押圧すると操作ハンドル17のロックが解除され、レバー17aは傾斜位置R2を通過して回動可能となるので、さらにレバー17aを本体部13の背面側へ回動させると、レバー17aが傾斜位置R3を通過した時点で吐水口11aからの吐水が開始される。
【0034】
一方、図8に示すように、レバー17aが水平位置H(図6参照)にあって吐水部11が吐水状態にあるとき、レバー17aを下方に回動させていくと、図6に示す傾斜位置R3を経て、傾斜位置R2を通過した時点でロック機構がセットされるが、吐水部11は吐水状態に維持される。この後、レバー17aをさらに本体部13の正面側へ回動させていくと、レバー17aが傾斜位置R1に達した時点で吐水部11は止水状態となる。即ち、吐水部11が止水状態となる前の段階で操作ハンドル17のロック機構がセットされる。
【0035】
このように、操作ハンドル17を回動させて吐水部11を止水状態から吐水状態へ切り替えるときは、図6の矢線X1で示す範囲が止水範囲となり、矢線X2で示す範囲が吐水範囲となるのに対し、操作ハンドル17を回動させて吐水部11を吐水状態から止水状態へ切り替えるときは、図6の矢線Y1で示す範囲が吐水範囲となり、矢線Y2で示す範囲が止水範囲となる。
【0036】
このように、操作ハンドル17のロック機構のセット位置・解除位置が、吐水操作・止水操作のいずれの場合も一定位置(傾斜位置R2)であるのに対し、吐水操作時の止水範囲(矢線X1で示す範囲)と、止水操作時の止水範囲(矢線Y2で示す範囲)と、が異なるのは、第一スピンドル部材21と第二スピンドル部材22との回動伝達に、図12(b)に示す回動角度Pに相当する「遊び」が存在することによる。従って、操作ハンドル17を回動させて吐水部11を止水状態から吐水状態へ切り替えるとき、ロック機構が解除される前に吐水部11が吐水状態になるような事態が発生しない。これにより、吐水部11が止水状態にあるとき、誤って操作ハンドル11が吐水側へ回動されても、必ずロック機構が機能するため、吐水部11から吐水されることがない。
【0037】
また、操作ハンドル17は、そのロック機構を解除した位置(傾斜位置R2)から傾斜位置R1に至るまで回動させないと、吐水部11が吐水から止水へ切り替わらないため、水栓を構成するパッキンなどの劣化により、操作ハンドル17の止水位置が変化することがあっても、ロック機構がセットされる前に、吐水部11が止水されるような事態が発生しない。このように、吐水装置10においては、操作ハンドル17を吐水状態から止水状態に切り替える際に当該操作ハンドル17のロック機構が確実にセットされるため、操作ハンドル17の止水位置が変化してもロックミスが発生しない。
【0038】
また、吐水装置10の場合、スピンドル23を、操作ハンドル17と連結した第一スピンドル部材21と、弁体19と連結した第二スピンドル部材22とで構成し、第一スピンドル部材21と第二スピンドル部材22との回動伝達に遊び(回動角度P)を設けることにより、第一スピンドル部材21と第二スピンドル部材22とが一体的に連動しない機構を形成している。従って、操作ハンドル17の回動操作と同時に弁体19が回動することがなく、当該操作ハンドル17の操作角度と、それに伴う弁体19の回動角度との間に回動角度Pに相当する分の「遊び」が存在する。これにより、誤って操作ハンドル17を操作したとき、直ちに弁体19が開いて吐水されることのないロック機構を形成することができるため、吐水部11からの意図しない吐水を防止することできる。
【0039】
また、吐水部11は、図2に示すように、便器本体20aのボール面に向かって吐水する使用位置と、図1に示すように、便器本体20aの後部に起立する非使用位置との間で回動可能であるが、操作ハンドル17にロック機構が設けられているため、吐水部11が便器本体20aの後部に起立する非使用位置にあるときに操作ハンドル17が吐水操作されても吐水部11から吐水されない。従って、使用者が便座20bに座った状態で誤って操作ハンドル17を吐水操作しても使用者の衣服や背中に水が掛かるようなトラブルの発生を回避することができる。
【0040】
さらに、連動ロッド15を介して吐水部11と一体的に回動するロックカバー16を設けたことにより、吐水部11が図1に示す非使用位置にある状態で、操作ハンドル17が誤って回動操作されても、ロックカバー16がロック機構の解除操作を阻止するため、吐水部11からの吐水によって使用者の衣服や背中を濡らすようなトラブルを回避することができる。また、ロックカバー16は、図2,図7に示すように吐水部11が使用位置にあるときに限り、ロック機構を解除可能な状態にするので、吐水部11が使用位置以外にあるときはロックカバー16がロック機構を解除不能に保つことができる。従って、吐水部11が使用位置にない状態において、使用者が誤ってロック機構を解除することを防止することができる。
【0041】
次に、図13〜図15に基づいて吐水装置10のその他の使用形態について説明する。図13は図1に示す吐水装置のその他の使用形態を示す斜視図、図14は図13に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図、図15は図13に示す吐水装置が吐水状態にあるときの斜視図である。なお、図13〜図15において図1〜図12と同符号を付している部分は吐水装置10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0042】
図13〜図14に示すように、吐水装置10は、便器本体30aと便座30bとから成る洋式便器30において、便座30bを起立させた状態で使用することもできる。即ち、図13に示すように、吐水部11を使用位置まで回動させ、便座30bを手Fで持ち上げて起立させた後、図14に示すように、ロックボタン18を手Fで押圧してロック機構を解除した後、図15に示すように、操作ハンドル17のレバー17aを手Fで掴んで吐水方向(壁面W側)へ回動させると吐水部11の吐水口11aから便器本体30aのボール面に向かって吐水が開始される。このように、吐水装置10は、図1に示す洋式便器20以外の洋式便器30においても使用することができるため、汎用性も優れている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の吐水装置は、多機能トイレなどに設置される尿瓶洗浄用水栓などとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態である吐水装置の斜視図である。
【図2】図1に示す吐水装置が吐水状態にあるときの斜視図である。
【図3】図1に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図である。
【図4】図1に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図である。
【図5】図1に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図である。
【図6】図1に示す吐水装置の側面図である。
【図7】図6に示す吐水装置の操作手順を示す側面図である。
【図8】図6に示す吐水装置が吐水状態にあるときの側面図である。
【図9】図7のA−A線における断面図である。
【図10】図9に示す吐水装置を構成するスピンドルの正面図である。
【図11】(a)は図10に示すスピンドルを構成する第一スピンドル部材の側面図であり、(b)は前記第一スピンドル部材の正面図である。
【図12】(a)は図10に示すスピンドルを構成する第二スピンドル部材の正面図であり、(b)は前記第二スピンドル部材の側面図である。
【図13】図1に示す吐水装置のその他の使用形態を示す斜視図である。
【図14】図13に示す吐水装置の操作手順を示す斜視図である。
【図15】図13に示す吐水装置が吐水状態にあるときの斜視図である。
【図16】従来の吐水装置を示す側面図である。
【図17】図16に示す吐水装置の操作手順を示す側面図である。
【図18】図16に示す吐水装置が吐水状態にあるときの側面図である。
【図19】図17のB−B線における断面図である。
【図20】図19に示す吐水装置を構成するスピンドルの正面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 吐水装置
11 吐水部
11a 吐水口
12 給水管
13 本体部
15 連動ロッド
16 ロックカバー
16a 溝部
17 操作ハンドル
17a レバー
18 ロックボタン
19 弁体
20,30 洋式便器
20a,30a 便器本体
20b,30b 便座
20c 機能部
21 第一スピンドル部材
22 第二スピンドル部材
21a,22b 基端部
21b,22a 先端部
21c,22c 連結面
23 スピンドル
C 軸心
H 手
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部と、回動操作により前記吐水部からの吐水・止水を切り替える操作ハンドルと、を有する吐水装置において、
前記操作ハンドルは、前記吐水部を止水状態から吐水状態へ切り替える際の当該操作ハンドルの回動を規制するロック機構を有し、
前記操作ハンドルを回動させて前記吐水部を止水状態から吐水状態へ切り替えるときは前記ロック機構が解除された位置から前記操作ハンドルを一定角度回動させると止水状態から吐水状態に切り替わり、
前記操作ハンドルを回動させて前記吐水部を吐水状態から止水状態に切り替えるときは前記ロック機構がセットされた位置から前記操作ハンドルを一定角度回動させると吐水状態から止水状態に切り替わることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記吐水装置は、前記吐水部に給水を行う弁体と、前記操作ハンドル及び前記弁体に連結し、前記操作ハンドルの回動を前記弁体に伝達するスピンドルと、を備えた水栓本体を有し、
前記スピンドルは、前記操作ハンドルと連結した第一スピンドル部材と、前記弁体と連結した第二スピンドル部材とを有し、前記第一スピンドル部材と前記第二スピンドル部材との回動伝達に遊びを設けたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記吐水部は、便器ボール面に向かって吐水する使用位置と、便器後部に起立する非使用位置との間で回動可能であることを特徴とする請求項1または2記載の吐水装置。
【請求項4】
前記吐水部が前記非使用位置にある状態で前記操作ハンドルを回動させたときに前記ロック機構が解除されるのを防止するために前記吐水部と一体的に回動するロックカバーを設けたことを特徴とする請求項3記載の吐水装置。
【請求項5】
前記ロックカバーは、前記吐水部が使用位置にあるときに限り、前記ロック機構を解除可能な状態となることを特徴とする請求項4記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−47916(P2010−47916A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211066(P2008−211066)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】