説明

向流反応器を用いる中間留出物の水素化

【課題】炭化水素供給物の水素化脱硫のためのプロセスを提供する。
【解決手段】炭化水素供給物の水素化脱硫のためのプロセスは、液体流出物が第一の反応ゾーンの底部端において排出されかつ水素含有気体状流出物が第一の反応ゾーンの頂部端において排出されるように、少なくとも第一の触媒層において水素化脱硫触媒の存在下で水素化脱硫反応条件下、第一の反応ゾーン内において向流様式で、炭化水素供給物の主要量を水素と接触させ、第一の反応ゾーンの前記水素含有流出物を受け取るように配置された触媒層を有する第二の反応ゾーン内において並流様式で、炭化水素供給物の小部分を前記水素含有気体状流出物と接触させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、品質の改善されたディーゼル生成物を生成するためにディーゼル燃料などの中間留出物供給原料の水素化のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
直留ガス油、ビスブレーキング装置での熱的クラッキングガス油、コークス化装置ガス油、およびFCC軽サイクルガス油などの、約330°Fから約800°Fの範囲で沸騰するガス油を含む石油留出物は、処理されて、品質の改善されたディーゼル燃料を生成する。ディーゼル燃料は、硫黄、窒素、オレフィンおよびアロマティックスの含有量、セタン指数、沸点(蒸留)、および重量に関する所定の仕様に適合する必要がある。将来、精製業者は、よりきびしい規制で超低硫黄含有量ディーゼル(ultra low sulfur content diesel)(ULSD)を精製する必要がある。一般に、これにより精製業者は、10〜50wppmまたはそれ以下の硫黄含有量のディーゼル燃料を精製する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水素化処理による、すなわち、適切な条件下で供給原料を水素と反応させて硫化水素(H2S)の形態で硫黄を除去することによる、炭化水素供給原料の脱硫が一般に知られている。最近の触媒の進歩により、精製業者は、既存のユニットで処理済み留出物生成物中の硫黄を低減できるが、懸案の規制に適合するには充分でない。
【0004】
現在50wppmより高い硫黄レベルでディーゼル燃料を生成している多くの既存の水素化処理装置には、改造および/または新しいユニットの据え付けが必要とされる。必要なディーゼル燃料仕様を実現するためには、留出物の化学的および物理的性質に作用するように留出物供給原料を処理する必要がある。触媒の種類および作動の厳格さは、所望のディーゼル燃料仕様の関数である。処理には、適切な触媒による、または水素に富む環境でのさまざまな触媒系の組み合わせによる、水素化が必要とされる。硫黄、窒素、オレフィン、およびアロマティックスの低減では、深い水素化が必要である。セタンおよび/または重量の改善では、深い水素化と選択的開環の両方が必要になる。
【0005】
超低硫黄ディーゼルを生成するように既存の水素処理装置を改造するための従来実践された通常の処理スキームは一般に、新しい並流反応器を既存の反応器に直列または並列に追加して付加的な触媒体積を実現することである。さらに、この種の改造スキームでは、主配管/熱交換器、アミン・スクラバー、および再循環圧縮機を含む高圧反応ループ内に既存の装置品目に大幅な変更および/または置換がなされる。これら既存ユニットの変更は全て結果として、大きな設備投資および休止時間となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願では、炭化水素供給物の水素化のためのプロセスが提供される。このプロセスは、液体流出物が第一の反応ゾーンの底部端において排出されかつ水素含有気体状流出物が第一の反応ゾーンの頂部端において排出されるように、少なくとも第一の触媒層において水素化触媒の存在下で水素化反応条件下、第一の反応ゾーン内において向流様式で、炭化水素供給物の主要部分を水素と接触させ、第一の反応ゾーンの前記水素含有流出物を受け取るように配置された触媒層を有する第二の反応ゾーン内において並流様式で、炭化水素供給物の小部分を前記水素含有気体状流出物と接触させることを含む。
【0007】
別の実施態様において、プロセスは、(a) 低減されたヘテロ原子の含有量を有する第一の流出物を生成するための、第一の水素化触媒の存在下での第一の反応ゾーン内における水素との石油フラクションの並流接触と、(b) 重量で約50ppm以下のヘテロ原子含有量を有する生成物を生成するように、第二の水素化触媒の存在下で第二の反応ゾーン内において向流様式で第一の流出物を水素と接触させること、を含む。
【0008】
プロセスは、深い水素化を伴っており、一般に従来の処理スキームに付随する大きな変更なしで新しい設備および既存の設備両方のための超低硫黄含有量ディーゼル燃料を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の新しい向流反応器と共に並流反応器を用いる本発明のプロセスの概略図である。
【図2】並流反応器と新しい向流反応器の両方を用いる本発明の他のプロセススキームの概略図である。
【図3】並流反応器と新しい向流反応器の両方を用いる本発明の他のプロセススキームの概略図である。
【図4】並流反応器と新しい向流反応器の両方を用いる本発明の他のプロセススキームの概略図である。
【図5】向流反応器のみを用いる石油留出物の水素化のためのプロセススキームの概図である。
【図6】本発明の水素化プロセスの生成物に対して実施できる次の脱芳香化処理の図である。
【図7】本発明の複数層の向流反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願では図面を参照してさまざまな実施態様を説明する。
【0011】
本発明は、石油フラクション、特にディーゼル燃料に使用できるものなどといった中間留出物、の水素化に使用できる。水素化は、例えばヘテロ原子を除去するための水素化処理、または、脱芳香化(例えば、水素化脱硫、水素化脱窒化、水素化脱芳香化)に使用できる。
【0012】
本発明の処理スキームは、既存の水素化処理システムに統合できる向流反応器を用いる。向流反応器は、「高圧反応ループの外側に」据え付けられ、それによって、より低い設置費用、より簡単な改造、不要な主配管/熱統合、既存のスクラバーや再循環ガス圧縮機に対する影響の皆無、および休止時間の低減を含む付加的な処理の利点が得られる。代替のスキームは、低費用卑金属触媒を用い、アロマティックス低減、セタン改善、および触媒安定性を含む改善された生成物の性質を与える。
【0013】
改造では、既存の反応器作動は、新しい向流反応器への供給物を調製するように最適化される。向流反応器はさらに、必要な処理目的物を実現するように既存の反応器からの流出物を処理する。
【0014】
図1をここで参照すると、中間留出物を水素化脱硫するためのシステム100が示される。システム100は、向流反応スキーム102の組み込みによる、101により輪郭が描かれた水素化処理スキームの改造を例示する。残りの図面についての以下の説明では、同様の参照番号および参照符号は、同様の処理装置または流れを示す。
【0015】
供給物Fは、一般に以下の図1に示すような性質を有する中間範囲石油フラクションである。
【表1】

【0016】
これらの範囲は、例示の目的で与えたものである。これらの範囲外の性質を有する供給物も、適切なときに使用できる。
【0017】
水素がライン127を介して供給物Fに添加され、水素を加えた混合供給物は、並流反応器R−1に送られ、そこでは、少なくとも部分的水素化脱硫が達成される。並流反応器は、シリカ、アルミナ、またはシリカ−アルミナなどの担体上にニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、およびこれらの混合物(Ni−Mo、Co−Mo、Ni−W、Co−Mo−Ni、Co−Mo−Wなど)などの適切な水素化脱硫触媒を含有する層を含む。並流水素化脱硫反応条件は一般に、約200℃から約450℃の温度、約300psigから約1,500psigの圧力、および約20v/v/hr以下の空間速度を含む。反応器R−1からの流出物110は一般に、重量で約100ppmから約1,000ppmの硫黄含有量を有する。少なくとも部分的に脱硫された流出物(ライン110)は、熱交換器111によって約200℃から約380℃の温度に冷却され、ライン110を介してドラムD−11に送られ、そこでそれは、蒸気と液体とに分離される。液体は、ライン112を介して抜き出され、熱交換器113内で約225℃から約370℃の温度に加熱され、次いで、向流反応器R−2に送られる。ドラムD−11からの蒸気はさらに、熱交換器115によって冷却され、ライン114を介して、蒸気および液体成分のさらなる分離のためにドラムD−12に送られる。水素、硫化水素、および軽炭化水素成分を含有する蒸気は、ライン120を介して、ドラムD−13への移動のためにライン118に添加される。液体は、抜き出され、ライン122を介して、反応器R−2へと送られる流れ112に送られる。
【0018】
向流反応器R−2は好ましくは、二つまたはそれ以上の触媒層、B−1およびB−2を含む。反応器R−2は、二つの反応ゾーン、すなわち、炭化水素および水素の向流接触が生じる第一のゾーンと、炭化水素および水素の並流接触が生じる第二の反応ゾーンとを含む。図1に示すように、層B−1が第一の反応ゾーンであり、層B2が第二の反応ゾーンである。炭化水素供給物は、第一の反応ゾーンと第二の反応ゾーンの間の位置において反応器R−2内に導入される。各層は、水素化脱硫触媒を含有する。有用な水素化脱硫触媒としては、上述したようなもの(例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ担体上のNi−Mo、Co−Mo、Ni−W)などや、ゼオライト、貴金属触媒、および同様のものなどが挙げられる。ライン112からの液体供給物は、層B−1とB−2の間の反応器R−2内に導入される。投入水素Hが、反応器R−2の底部において導入される。反応器R−2は、約225℃から約450℃の温度、約250psigから約1,500psigの圧力、および約0.6から約5.0LHSVの空間速度で作動する。
【0019】
反応器への炭化水素供給物の主要部分は、層B−1が占める第一の反応ゾーン内へと下方へ流れる。反応器R−2の底部において流入する水素は、触媒層B−1を通る液体の下方への流れに対して向流様式で上方へと移動する。しかしながら、第一の反応ゾーンの頂部においてB−1からの流出物として存在する水素含有気体は、反応器への炭化水素供給物の主要部分を含む。どのような飛沫同伴される炭化水素ミストまたは蒸気も、層B−2内で触媒の存在下、水素含有気体と反応する。炭化水素部分および水素含有気体両方とも層B−1を通って上方へと流れるので、接触は、並流様式で行われる。第一の反応ゾーンからの流出物水素含有気体を受け取るようにした供給物入口より上の触媒層B−2の位置決めによって、触媒の存在下、どのような炭化水素も水素と接触せずには反応器R−2を通過しないことが保障され、それによって、超低硫黄含有量の要件が達成される。反応器R−2からの塔頂留出物116は、底部液体と組み合わされ、反応器R−2の流出物全体は、熱交換器117内で冷却され、ライン118を介してドラムD−13に送られる。
【0020】
液体生成物Pは、分離され、ライン126を介してドラムD−13から抜き出され、蒸気は、ライン124を介して除去される。ここで説明したプロセスおよび装置は、重量で50ppmより低い硫黄含有量を持った、ディーゼル燃料成分として有用な、生成物Pを提供するものである。
【0021】
ドラムD−13からの蒸気塔頂留出物(水素、硫化水素、およびいくらかの炭化水素成分を含有する)は、ライン124を介して抜き出され、冷却のために熱交換器125を通り、次いで空気冷却ユニット130を通り、液体および蒸気のさらなる分離のためにドラムD−14へと送られる。ドラムD−14からの液体は、ライン134を介して底部から抜き出され、超低硫黄含有量石油フラクションの生成物流れPを形成するように、流れ126に添加される。ドラムD−14からの蒸気(水素、硫化水素、およびメタンエタンその他などのいくらかの軽炭化水素を含有する)は、ライン132を介して吸収器A底部に送られ、そこで、蒸気の上方への流れは、蒸気流れから硫化水素を除去するように下方へと流れる吸収剤と向流の仕方で接触する。より詳細には、希薄アミン吸収剤A−1が、吸収器150の頂部において導入される。アミン吸収剤は好ましくは、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルヂエタノールアミン、トリエタノールアミン、および同様のものなどのアルカノールアミンの水溶液である。
【0022】
吸収器Aからの塔頂留出物の水素に富む蒸気(いくらかの軽炭化水素成分を含む)は、ライン136を介して圧縮機C−1に送られ、そこでそれは、約400psigから約1,600psigの圧力に圧縮される。圧縮機C−1から排出される流れ128は、反応器R−2への移動のための投入水素流れHと混合される流れ129と、流れ124と熱交換するためのユニット125を通して供給物流れFに送られる流れ127とに分割できる。
【0023】
図2をここで参照すると、システム200は、向流反応スキーム202の組み込みによる、201により輪郭が描かれた水素化処理スキームの改造を例示する。上に述べたようなものなどの組成を有する供給物Fが、流れ238からの水素(および軽炭化水素)と組み合わされ、次いで、反応器R−1に送られ、そこでは、上述した反応条件下、少なくとも部分的水素化脱硫がなされる。反応器R−1からの流出物210は、熱交換器211内で冷却され、ドラムD−21に送られ、そこで、液体と蒸気とが分離される。ドラムD−21からの蒸気の流れ226は、熱交換器227および空気冷却器230を通り、次いでドラムD−24へと送られる。ドラムD−21からの液体塔底液は、流れ212として抜き出され、ドラムD−24からの流れ214に添加され、次いで、随意選択のポンプ215および熱交換器216を通して反応器R−2へと送られる。交換器216は、流れ214の温度を約200℃から約450℃の温度に制御する。上述したように、反応器R−2への供給物は、触媒層B−1とB−2の間に導入される。液体は、層B−1を通って水素の上方への流れに対して下方へと流れる。水素供給源Hからの投入水素は、層B−1より下において導入され、上方へと流れる。上方へ流れる飛沫同伴された炭化水素ミストは、層B−2内でさらに処理される。水素、硫化水素、および炭化水素蒸気を含有する塔頂留出物蒸気は、流れ218を形成するように反応器R−2からの底部液体と組み合わされる。反応器R−2からの流出物全体218は、熱交換器219内で冷却され、沈降ドラムD−22に送られる。ドラムD−22からの液体は、生成物流れPとして抜き出される。ドラムD−22からの蒸気は、熱交換器223内でさらに冷却され、さらなる分離のためにドラムD−23へと送られる。ドラムD−23からの塔底液は、流れ222を介して、超低硫黄含有量石油フラクションの生成物流れPへと送られる。塔頂留出物蒸気流れ224は、ドラムD−21からの蒸気流れ226に添加される。上述したように、流れ226は、熱交換器227内で冷却され、次いで、空気冷却器230内で冷却され、ドラムD−24へと送られる。ドラムD−24からの底部液体は、ライン214を介して反応器R−2に送られる。水素、硫化水素、および軽炭化水素を含有するドラムD−24からの塔頂留出物蒸気は、吸収器A内に送られ、そこでそれは、上述したものなどの下方へと流れるアミンH2S吸収剤の流れと向流接触する。いくらかの軽炭化水素と共に主として水素を含有する塔頂留出物無H2S蒸気流れ232は、約400psigから約1,600psigに圧縮するために圧縮機C−1に送られる。圧縮機出力流れ234は、投入水素流れHに添加される流れ236と、交換器227内で流れ226に対して熱交換され、次いで、反応器R−1内への導入のための供給物流れFに添加される流れ238とに分割できる。
【0024】
図3をここで参照すると、システム300は、向流反応スキーム302の組み込みによる、301により輪郭が描かれた水素化処理スキームの改造を例示する。上に述べたような組成を有する供給物Fが、水素およびいくらかの軽炭化水素成分を含有する流れ342と組み合わされ、上述した条件下での少なくとも部分的水素化脱硫のために反応器R−1内へ導入される。反応器R−1からの流出物310は、熱交換器311内で冷却され、液体および蒸気の分離のためにドラムD−31に送られる。液体は、ライン312を介して随意選択のポンプ314および熱交換器315を通して反応器R−2へと送られる。交換器315は、流れ312の温度を約200℃から約450℃の温度に制御する。上述したように、反応器R−2への供給物は、触媒層B−1とB−2の間に導入される。液体は、層B−1を通って水素の上方への流れに対して下方へと流れる。水素供給源Hからの投入水素は、層B−1より下において導入され、上方へと流れる。上方へ流れる飛沫同伴された炭化水素ミストは、層B−2内でさらに処理される。水素、硫化水素、および炭化水素蒸気を含有する塔頂留出物蒸気は、反応器R−2からの底部液体と組み合わされる。反応器R−2からの流出物全体318は、熱交換器319内で冷却され、沈降ドラムD−32に送られる。ドラムD−32からの液体は、流れ328を形成するようにドラムD−33からの液体塔底液が添加される流れ322を介して抜き出される。流れ328は、生成物流れPを形成するようにドラムD−34からの流れ344に添加される。ドラムD−32からの蒸気流れ320は、熱交換器321内でさらに冷却され、さらなる分離のためにドラムD−33へと送られる。ドラムD−33からの塔底液は、上述したように、流れ324を介して流れ322に送られる。ドラムD−33からの塔頂留出物蒸気流れ326は、ドラムD−34からの蒸気流れ334に添加される。
【0025】
ドラムD−31からの蒸気流れ313は、蒸気および液体の分離のためにドラムD−34に送られる前に、熱交換器325内で熱交換により冷却され、さらに空気冷却器330によって冷却される。ドラムD−34からの液体塔底液流れ344は、超低硫黄含有量石油フラクションの生成物流れPを形成するようにドラムD−32からの液体流れ328と組み合わされる。ドラムD−34からの塔頂留出物蒸気流れは、ドラムD−33からの蒸気流れ326と組み合わされ、ライン334を介して吸収器Aに送られ、そこでそれは、上述したものなどの下方へと流れるアミンH2S吸収剤の流れと向流接触する。いくらかの軽炭化水素と共に主として水素を含有する塔頂留出物無H2S蒸気流れ336は、約400psigから約1,600psigに圧縮するために圧縮機C−1に送られる。圧縮機出力流れ338は、投入水素流れHに添加される流れ340と、交換器325内で流れ313に対して熱交換され、次いで、反応器R−1内への導入のための供給物流れFに添加される流れ342とに分割できる。
【0026】
図4をここで参照すると、システム400は、向流反応スキーム402の組み込みによる、401により輪郭が描かれた水素化処理スキームの改造を例示する。上に述べたような組成を有する供給物Fが、水素およびいくらかの軽炭化水素成分を含有する流れ434と組み合わされ、上述した条件下での少なくとも部分的水素化脱硫のために反応器R−1内へ導入される。反応器R−1からの流出物410は、ドラムD−41に送られる。ドラムD−41からの液体塔底液流れ414は、熱交換器413内で冷却される。蒸気塔頂留出物412は、液体流れ414と組み合わされ、次いで、反応器R−2に送られる。上述したように、反応器R−2への供給物は、触媒層B−1とB−2の間に導入される。液体は、層B−1を通って水素の上方への流れに対して下方へと流れる。水素供給源Hからの投入水素は、層B−1より下において導入され、上方へと流れる。上方へ流れる飛沫同伴された炭化水素ミストは、層B−2内でさらに処理される。反応器R−2からの底部流出物流れ418は、ライン418を介して冷却器417を通ってドラムD−42内へと送られる。反応器R−2からの塔頂留出物416は、冷却器417内での冷却の前に、流れ418に添加される。ドラムD−42からの液体塔底液は、生成物流れPとなるように流れ422を介して送られる。ドラムD−42からの塔頂留出物420は、蒸気および液体の分離のためにドラムD−43に送られる前に、熱交換器425内で熱交換により冷却され、さらに空気冷却器430によって冷却される。ドラムD−43からの液体塔底液流れ424は、超低硫黄含有量石油フラクションの生成物流れPを形成するようにドラムD−42からの液体流れ422と組み合わされる。ドラムD−43からの塔頂留出物蒸気流れは、ライン426を介して吸収器Aに送られ、そこでそれは、上述したものなどの下方へと流れるアミンH2S吸収剤の流れと向流接触する。いくらかの軽炭化水素と共に主として水素を含有する塔頂留出物無H2S蒸気流れ428は、約400psigから約1,600psigに圧縮するために圧縮機C−1に送られる。圧縮機出力流れは、投入水素流れHに添加される流れ432と、交換器425内で流れ420に対して熱交換され、次いで、反応器R−1内への導入のための供給物流れFに添加される流れ434とに分割される。
【0027】
図5をここで参照すると、部分的水素化処理により供給物を前処理するのに並流反応器R−1を用いないシステム500が示される。むしろ、水素化のために反応器R−2だけを使用する。供給物Fは、熱交換器510内で、次いで、熱交換器512内で加熱され、次いで、約200℃から約450℃の温度に加熱器514内でさらに加熱するために送られる。加熱された供給物は、次いで、層B−1とB−2の間で反応器R−2内に導入される。水素の流れ529が、反応器R−2の底部において導入され、液体石油留出物の下流への流れに対して上方へと流れる。上述したように、気体の上方への流れにより運ばれる飛沫同伴された炭化水素は、層B−2に流入し、水素化処理を受け、それによって、供給物のどのような部分も、水素化処理なしには反応器R−2から排出されない。反応器R−2からの塔頂留出物流れ516は、流入する供給物Fに熱を交換することにより熱交換器510内で冷却され、次いで、液体および蒸気の分離のためにドラムD−51に送られる。ドラムD−51からの液体塔底液は、流れ534すなわちドラムD−53からの液体塔底液に合流するように流れ520を介して送られ、それによって、生成物流れPを提供する。水素、硫化水素、およびいくらかの軽炭化水素を含有するドラムD−51からの塔頂留出物蒸気流れ518は、吸収器Aに送られ、そこで上方へと流れる蒸気は、下方へと流れる希薄なアミンH2S吸収剤A−1に対して接触する。水素およびいくらかの軽炭化水素を含有する、吸収器Aからの塔頂留出物無H2S蒸気流れ522は、水素供給源Hからの投入水素と組み合わされ、圧縮のために圧縮機C−2/C−3に送られる。ドラムD−53からの塔頂留出物流れ532は、流れ523を形成するように圧縮機C−2の流出物と組み合わされ、流れ523は、熱交換器524内で冷却され、次いで、液体および蒸気のさらなる分離のためにドラムD−52に送られる。ドラムD−52からの液体塔底液は、超低硫黄含有量生成物Pを提供するように流れ528を介してドラムD−53からの塔底液流れ534に送られる。ドラムD−52からの塔頂留出物529は、圧縮のために圧縮機C−3に送られ、次いで、反応器R−2の底部に送られる。C−2とC−3の間の全体の圧縮は、約300psigから約1,600psigである。
【0028】
図6をここで参照すると、超低硫黄含有量生成物Pは、さらに水素化できる。例えば、システム600は、水素化触媒の層B−3を含む水素化脱芳香化のための反応器610を含む。反応器は一般に、約200℃から約400℃の温度、約400psigから約1,600psigの圧力、および約0.3から約6LHSV、好ましくは約3.5LHSVの空間速度で作動する。さまざまな水素化プロセスが、知られており、例えば、参照により本願に組み込まれる米国特許第5,183,556号に開示されている。層B−3内の触媒は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、または他の金属酸化物に担持された貴金属または非貴金属触媒とすることができる。水素供給源Hからの水素は、反応器610の底部内へ導入され、石油留出物フラクションの下方への流れに対して上方へと流れる。塔頂留出物蒸気は、流れ602を介して除去され、脱芳香化された石油留出物を含有する底部流出物は、流れ603を介して除去される。
【0029】
図7をここで参照すると、代替の複数層の向流水素化反応器R−3が例示される。反応器R−3は、三つの離間した触媒層すなわちB−1a、B−1b、およびB−2を含有する。供給物Fは、中間層B−1bと最上層B−2との間に導入される。水素は、ラインH−1およびH−2を介して導入される。反応器R−3へのH−1入力は、最下層B−1aより下に配置され、反応器R−3へのH−2入力は、層B−1aより上で層B−1bより下に配置される。水素は、石油留出物供給物Fの下方への流れに対して上方へと流れ、供給物Fの水素化(例えば、水素化脱硫、水素化脱窒化)が、水素と接触する向流により層B−1aおよびB−1b内でなされる。上述したように、いくらかの炭化水素成分が、水素の上方への流れの中に飛沫同伴され、これらの成分は、層B−2内で水素化され、それによって、供給物の全てが、水素化を受ける。塔頂留出物蒸気流れVは、過剰の水素、硫化水素、およびいくらかの軽炭化水素成分を含有する。反応器の底部から取り出される液体流出物Eは、超低硫黄含有量石油留出物(例えば、ディーゼル燃料)を含有する。
【0030】
以下の実施例が、本発明の態様を例示する。
実施例)
【0031】
以下の範囲の性質:
API重量 27〜40
蒸留範囲 ℃(°F)
初期沸点 165〜260(330〜500)
最終沸点 280〜440(536〜825)
硫黄、wt% 0.01〜0.05
窒素、(合計)wppm 5〜100
を有する供給原料が提供された。
【0032】
供給原料は、本発明による向流反応器を有する水素化システム内で処理された。反応条件は、346℃の温度、750psigの圧力、1.6LHSVの空間速度、およびシリカ担体上にNiMoを含む水素化触媒を含んでいた。結果として得られた生成物は、38.6のAPI重量、重量で8ppmの硫黄含有量、および重量で1ppm未満の窒素含有量を有していた。
【0033】
上述した説明は、多くの詳細を含むとはいえ、これらの詳細は、本発明の範囲の限定としてではなく、本発明の好ましい実施態様の単なる例示として解釈すべきである。例えば、第一の反応ゾーンおよび第二の反応ゾーンは、別々の反応器シェル内にもまた単一の反応器シェル内にも配置できる。当業者は、添付の請求項により規定される本発明の範囲および趣旨の中で他の多くの可能な変形を構想するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油フラクションの水素化脱硫方法であって、
a)適切な水素化脱硫触媒を含有する、担持された触媒層を備えた第一の水素処理ユニット(R−1)において、該石油フラクションを水素化脱硫反応条件下で第一の水素流れと並流接触させて、液体成分と第一の蒸気成分を含む第一の流出物を得る工程、
b)前記第一の流出物を第一の熱交換器(111、211)で225℃から380℃の範囲の温度まで冷却し、冷却された第一の流出物を得る工程、
c)第一の液体−蒸気ドラム(D−11、D−12)において、前記冷却された第一の流出物から前記第一の蒸気成分を除去して、第一のドラム流出物を得る工程、
d)第二の熱交換器(113、216)において前記c)工程で得られた流出物を225℃から370℃の範囲の温度まで加熱し、加熱された液体成分を得る工程、
e)前記加熱された液体成分を、第二の水素処理ユニット(R−2)に導入する工程、
この工程において、前記第二の水素処理ユニット(R−2)は第一の反応ゾーンと第二の反応ゾーンを有する向流反応器であり、前記第二の反応ゾーンは前記第一の反応ゾーンより上に位置し、かつ第一の反応ゾーンから離間されており、
該工程e)の導入する工程は前記第一の反応ゾーンと前記第二の反応ゾーンの間において実施され、
f)前記第一の反応ゾーンより下の位置で前記第二の水素処理ユニット(R−2)に第二の水素流れを導入する工程、
この工程において、前記加熱された液体成分の主要部分を、少なくとも第一の触媒層(B−1)中の第一の水素化脱硫触媒の存在下で水素化脱硫反応条件下、前記第一の反応ゾーン内において向流様式で、前記第二の水素流れと接触させて、処理された底部流出物(この底部流出物は前記第一の反応ゾーンの底部端から排出される)と水素含有気体状流出物(この水素含有気体状流出物は前記第一の反応ゾーンの頂部端から排出される)を得、かつ、
前記加熱された液体成分の小部分を、第二の触媒層(B−2)中の第二の水素化脱硫触媒の存在下で水素化脱硫反応条件下、前記第二の反応ゾーン内において並流様式で、該水素含有気体状流出物と接触させて、処理された頂部流出物(この頂部流出物は前記第二の反応ゾーンの頂部端から排出される)を得、
g)処理された頂部流出部を処理された底部流出物と混合して、処理された混合した流出物を得る工程、
h)第三の熱交換器(117、219)において、前記処理された混合した流出物を冷却し、冷却された処理された混合した流出物を得る工程、及び
i)第二の液体−蒸気ドラム(D−13、D−22)において、前記冷却された処理された混合した流出物から第二の蒸気成分を除去して生成物流れ(P)を得る工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程c)はさらに、
c’)前記第一の蒸気成分を第四の熱交換器(125、227)及び空気冷却器(130、230)を通す工程、
c’’)第三の液体−蒸気ドラム(D−24)において、前記工程c’)で得られた成分から第三の蒸気成分を除去して第三のドラム流出物を得る工程、
c’’’)前記第三のドラム流出物と前記第一のドラム流出物とを再混合する工程
を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
石油フラクションの水素化脱硫方法であって、
a)適切な水素化脱硫触媒を含有する、担持された触媒層を備えた第一の水素処理ユニット(R−1)において、該石油フラクションを水素化脱硫反応条件下で第一の水素流れと並流接触させて、液体成分と第一の蒸気成分を含む第一の流出物を得る工程、
b)第一の液体−蒸気ドラム(D−41)において、前記第一の流出物から前記第一の蒸気成分を除去する工程、
c)第一の熱交換器(413)において、前記ドラム流出物を冷却し、冷却されたドラム流出物を得る工程、
d)前記第一の蒸気成分を前記冷却されたドラム流出物と混合して液体成分を得る工程、
e)前記液体成分を第二の水素処理ユニット(R−2)に導入する工程、
この工程において、前記第二の水素処理ユニット(R−2)は第一の反応ゾーンと第二の反応ゾーンを有する向流反応器であり、前記第二の反応ゾーンは前記第一の反応ゾーンより上に位置し、かつ第一の反応ゾーンから離間されており、
該工程e)の導入する工程は前記第一の反応ゾーンと前記第二の反応ゾーンの間において実施され、
f)前記第一の反応ゾーンより下の位置で前記第二の水素処理ユニット(R−2)に第二の水素流れを導入する工程、
この工程において、前記液体成分の主要部分を、少なくとも第一の触媒層(B−1)中の第一の水素化脱硫触媒の存在下で水素化脱硫反応条件下、前記第一の反応ゾーン内において向流様式で、前記第二の水素流れと接触させて、処理された底部流出物(この底部流出物は前記第一の反応ゾーンの底部端から排出される)と水素含有気体状流出物(この水素含有気体状流出物は前記第一の反応ゾーンの頂部端から排出される)を得、かつ、
前記液体成分の小部分を、第二の触媒層(B−2)中の第二の水素化脱硫触媒の存在下で水素化脱硫反応条件下、前記第二の反応ゾーン内において並流様式で、該水素含有気体状流出物と接触させて、処理された頂部流出物(この頂部流出物は前記第二の反応ゾーンの頂部端から排出される)を得、
g)処理された頂部流出部を処理された底部流出物と混合して、処理された混合した流出物を得る工程、
h)第二の熱交換器(417)において、前記処理された混合した流出物を冷却し、冷却された処理された混合した流出物を得る工程、及び
i)第二の液体−蒸気ドラム(D−42)において、前記冷却された処理された混合した流出物から第二の蒸気成分を除去して生成物流れ(P)を得る工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記第二の水素処理ユニット(R−3)の前記第一の反応ゾーンが上方の第一の触媒層(B−1b)及び該上方の第一の触媒層から離間されており、該上方の第一の触媒層の下に位置する、下方の第一の触媒層(B−1a)を有し、
第三の水素流れが前記上方の第一の触媒層(B−1b)と前記下方の第一の触媒層(B−1a)の間の位置で前記第二の水素処理ユニット(R−3)に導入されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記石油フラクションが、165℃から260℃の範囲の初期沸点と、280℃から440℃の最終沸点とを有する中間留出物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の水素処理ユニット(R−1)における前記水素化脱硫反応条件が、200℃から450℃の範囲の温度、2MPa(300psig)から10MPa(1,500psig)の範囲の圧力、および20LHSVよりも小さい空間速度を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の水素処理ユニット(R−1)の担持された触媒層が、触媒担体上に、コバルト、モリブデン、ニッケル、およびタングステンから成る群より選択される一つまたは複数の金属を含み、前記触媒担体が、シリカ、アルミナ、又はシリカ−アルミナであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の水素化脱硫触媒が、触媒担体上に、コバルト、モリブデン、ニッケル、およびタングステンから成る群より選択される一つまたは複数の金属を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記触媒担体が、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、ジルコニア、およびチタニアから成る群より選択される無機酸化物であることを特徴とする請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246492(P2012−246492A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165921(P2012−165921)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2006−533493(P2006−533493)の分割
【原出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(391011227)ルマス テクノロジー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】