説明

含フッ素エステル化合物の製造方法、及び多官能含フッ素エステル化合物

【課題】製造適性が高く、広範囲の酸ハロゲン化物及び含フッ素アルコール化合物に適用可能な含フッ素エステル化合物の製造方法、及び多官能含フッ素不飽和エステル化合物の前駆体として有用な新規多官能含フッ素エステル化合物を提供する。
【解決手段】
含フッ素アルコール化合物と、オクタノール−水分配係数(logP値)が0.6から9.0の酸ハロゲン化物を、水、有機溶媒、及び有機塩基化合物の存在下、反応させる、含フッ素エステル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物から含フッ素エステル化合物を製造する方法、及び新規な多官能含フッ素エステル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エステル化合物は、リチウム2次電池の非水系電解液(例えば、特許文献1)、記録媒体用潤滑剤(例えば、特許文献2)、反射防止フィルム(例えば、特許文献3)等幅広い分野で使用されている。
【0003】
含フッ素エステル化合物の製造方法の1つに、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物を反応させる方法が知られている(例えば、特許文献4)。含フッ素アルコール化合物の中で、水酸基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にフッ素原子を有する化合物は、フッ素原子の強い電子求引性のために、フッ素非含有のアルコール化合物と比べて、酸ハロゲン化物との反応性が低い。したがって、該含フッ素アルコール化合物をエステル化させる場合、ピリジン等の有機塩基化合物を用い、反応活性種である有機塩基化合物のアシル塩(以下、アシル塩という)を形成させ、該アシル塩と含フッ素アルコール化合物を反応させる方法が用いられる(例えば、特許文献5)。しかしながら、この方法では、用いる酸ハロゲン化物及び有機塩基化合物によっては、該アシル塩が有機溶媒に不溶かつ高粘性であるため、攪拌困難となり、極めて製造適性が低いという問題があった。
【0004】
別法として、強塩基を用いて含フッ素アルコール化合物を活性化させる方法が知られている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、この方法は、3−クロロプロピオニルクロリド等の、カルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する、酸ハロゲン化物に適用した場合、強塩基による該酸ハロゲン化物及び含フッ素エステル化合物からの脱離反応(3−クロロプロピオニルクロリドの場合は、脱塩酸反応)や、該酸ハロゲン化物及び含フッ素エステル化合物の脱離基と強塩基の置換反応等の副反応が進行し、含フッ素エステル化合物の純度が低下するという問題があった。
【0005】
以上から、カルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する酸ハロゲン化物にも適用可能で、かつ製造適性の高い含フッ素エステル化合物の製造方法の開発が求められていた。
【0006】
なお、水存在下での、含フッ素エステル化合物の製造方法としては、含フッ素アルコール化合物とカルボン酸無水物を反応させる方法(特許文献6)、及び抗体触媒存在下、含フッ素アルコール化合物とエステル化合物をエステル交換させる方法が記載されているが(非特許文献2)、水存在下、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物を反応させる方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−192504号公報
【特許文献2】特開2005−263747号公報
【特許文献3】特開2009−3354号公報
【特許文献4】特開2005−239710号公報
【特許文献5】米国特許第3177185号明細書
【特許文献6】特開2008−150339号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ジャーナル オブ フルオリン ケミストリー、128巻、755−761頁(2007年)
【非特許文献2】ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、57巻、4756〜4761頁(1992年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物のエステル化反応が、大量に析出する有機塩基化合物のアシル塩のため、製造適性に乏しかったという問題、及びカルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する、酸ハロゲン化物に適用した場合、脱離・置換反応等の副反応が進行し、含フッ素エステル化合物の純度が低下するという問題を解決するものである。
すなわち、本発明は、上記問題点を解決し、製造適性に優れ、かつ広範囲の含フッ素アルコール化合物及び酸ハロゲン化物に適用可能な、含フッ素エステル化合物の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、多官能含フッ素(メタ)アクリレート化合物等の多官能含フッ素不飽和エステル化合物の前駆体として有用である、新規な多官能含フッ素エステル化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物のエステル化反応の検討において、水、有機溶媒、有機塩基化合物存在下、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物を反応させると、有機塩基化合物と酸ハロゲン化物が反応することにより生じた有機塩基化合物のアシル塩が水に溶解し、攪拌性を悪化させることなく、エステル化が進行することを見出した。一般に、含フッ素アルコール化合物は、フッ素原子を含まないアルコール化合物と比べ、該アシル塩との反応性が低いため、水存在下では該アシル塩の加水分解が優先し、含フッ素エステル化合物が高収率で得られないと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、水、有機溶媒、有機塩基化合物の3種を共存させ、鋭意検討した結果、logP値が0.60〜9.0の酸ハロゲン化物を用いると、高収率で含フッ素エステル化合物が得られることを見出した。また、本発明者らは、本法が、カルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する、酸ハロゲン化物にも適用可能であり、本法が極めて広範囲の含フッ素エステル化合物の製造方法として有用であることを見出した。更に、本発明者らは、本発明の製造方法によって得られた、新規な多官能含フッ素エステル化合物が、多官能含フッ素(メタ)アクリレート化合物等の多官能含フッ素不飽和エステル化合物の前駆体として有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は下記手段により達成された。
【0011】
1.
下記一般式(1)で表される化合物と、オクタノール−水分配係数(logP値)が0.6から9.0の下記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物を、水、有機溶媒、及び有機塩基化合物の存在下、反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物の製造方法。
【0012】
【化1】

【0013】
{一般式(1)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、1価の置換基を示す。一般式(2)中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(3)中、R1’は一般式(1)におけるRと同じ基、又は一般式(1)のRと一般式(2)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示す。一般式(3)中、nは1〜6の整数を示す。}
2.
前記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物が、下記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物であり、前記一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物が、下記一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物である、上記1に記載の製造方法。
【0014】
【化2】

【0015】
{一般式(4)中、Xは前記一般式(2)におけるXと同義である。一般式(5)中、R1’は、前記一般式(1)におけるRと同じ基、又は前記一般式(1)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。一般式(4)及び一般式(5)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。一般式(4)及び一般式(5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。}
3.
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物であり、前記一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物が、下記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物である、上記2に記載の製造方法。
【0016】
【化3】

【0017】
{一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(7)中、R、R、R及びXは、前記一般式(4)におけるR、R、R及びXと同義である。一般式(7)中、R6’は、一般式(6)におけるRと同じ基、又は一般式(6)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。}
4.
前記一般式(4)及び(5)、又は(7)におけるXが、塩素原子である上記2又は3に記載の製造方法。
5.
前記一般式(1)で表される化合物、又は前記一般式(6)で表される化合物が、水酸基が結合した炭素原子(a)に隣接する炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子を有する、上記1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.
水の量が、前記一般式(1)で表される化合物又は前記一般式(6)で表される化合物1gあたり、0.1g〜20gである上記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7.
水と有機溶媒の容積比(水:有機溶媒)が2:1〜1:20である上記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
8.
前記有機塩基化合物が有機アミン化合物である上記1〜7のいずれかに記載の製造方法。
9.
前記有機アミン化合物が含窒素複素環式化合物である上記8に記載の製造方法。
10.
前記含窒素複素環式化合物がピリジン化合物あるいはイミダゾール化合物である上記9に記載の製造方法。
11.
無機塩基存在下、反応させることを特徴とする、上記1〜10のいずれかに記載の製造方法。
12.
下記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物。
【0018】
【化4】

【0019】
{一般式(7)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。R6’は、酸素原子が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。}
13.
上記3〜11のいずれかに記載の方法によって製造された上記12に記載の一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物。
14.
前記一般式(7)におけるXが、塩素原子である上記12又は13に記載の多官能含フッ素エステル化合物。
15.
前記一般式(7)におけるR6’が、酸素原子が結合した炭素原子(a)に隣接する炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子を有する、上記12〜14のいずれかに記載の多官能含フッ素エステル化合物。
16.
少なくとも、下記<工程1>及び<工程2>を経由することを特徴とする下記一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物の製造方法。
<工程1>前記一般式(6)で表される化合物と、前記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物を用い、上記3〜11のいずれかに記載の製造方法に従って、前記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を得る工程。
<工程2>前記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を脱ハロゲン化水素させ、下記一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物を得る工程。
【0020】
【化5】

【0021】
{一般式(4)中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(4)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。一般式(4)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(7)中、R、R、R及びXは、一般式(4)におけるR、R、R及びXと同義である。一般式(7)中、R6’は一般式(6)におけるRと同じ基、又は一般式(6)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。一般式(8)中、R6’は、一般式(7)におけるR6’と同義であり、mは2〜6の整数を示す。一般式(8)中、R、R、及びRは、一般式(4)におけるR、R、及びRと同義である。}
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、広範囲の含フッ素エステル化合物を効率よく製造することができる。本発明の製造方法は、カルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する酸ハロゲン化物にも適用可能である。また、該酸ハロゲン化物から得られる、新規な多官能含フッ素エステル化合物は、例えば、多官能含フッ素(メタ)アクリレート化合物等の多官能含フッ素不飽和エステル化合物の前駆体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明におけるカルボニル基のα位の炭素原子とは、カルボニル炭素に隣接する炭素原子を示す。カルボニル基のβ位の炭素原子とは、カルボニル基のα位の炭素原子に隣接する炭素原子を示す。また、「隣接する」とは他の基を介さずに直接結合していること示す。
また、本明細書においては、フッ素原子を含むフェノール又はフェノール誘導体も「含フッ素アルコール化合物」という。
また、本明細書において、多官能とは、ある官能基を分子内に2つ以上有する化合物を示す。多官能含フッ素アルコール化合物とは、水酸基を2つ以上有する化合物を示し、多官能含フッ素エステル化合物とは、エステル基を2つ以上有する化合物を示し、多官能含フッ素不飽和エステル化合物とは、不飽和エステル基を2つ以上有する化合物を示す。
【0024】
本発明の含フッ素エステル化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物と、オクタノール−水分配係数(logP値)が0.6から9.0の下記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物を、水、有機溶媒、有機塩基化合物の存在下、反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物の製造方法である。
【0025】
【化6】

【0026】
{一般式(1)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、1価の置換基を示す。一般式(2)中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(3)中、R1’は一般式(1)におけるRと同じ基、又は一般式(1)のRと一般式(2)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示す。一般式(3)中、nは1〜6の整数を示す。}
【0027】
(含フッ素アルコール化合物)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造に用いられる下記一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物について説明する。
【0028】
【化7】

【0029】
{一般式(1)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。}
【0030】
一般式(1)において、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するn価の置換基を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。
は、直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素基を母体構造とするか、又はその母体構造の一部の水素原子、及び炭化水素基のいずれかが後述する他の置換基によって置き換えられた基を示す。Rは、飽和であっても不飽和であってもよく、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は、単環であっても縮合環であっても良く、環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を有するヘテロ環であってもよい。ヘテロ環は、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。また、Rは、エーテル性酸素原子を有していてもよく、水酸基が結合した炭素原子(a)以外の炭素原子(b)にフッ素原子以外のハロゲン原子を有していてもよい。フッ素原子以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
は、水酸基が結合した炭素原子(a)以外の炭素原子(b)であれば、いずれの炭素原子にフッ素原子を有していてもよいが、入手性及び製造の容易さという観点から、水酸基が結合した炭素原子(a)に隣接する炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子を有する基であることが好ましい。Rの炭素原子(b)におけるフッ素原子の数は、1つでも、2つ以上でもよく、炭素原子(b)の全ての水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
の炭素数は、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜40であり、特に好ましくは2〜30である。
【0031】
が含むことができる前記他の置換基は、水酸基と反応する基(例えば、ハロカルボニル基、ハロスルホニル基等)でなければ特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、チエニル基、フリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基等)、ヘテロアリールオキシ基(例えば、チエニルオキシ基、フリルオキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ピバロイルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、ヘテロアリールチオ基(例えば、チエニルチオ基、フリルチオ基等)、スルファモイル基(例えば、N,N−ジメチルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルホニル基又はアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基等)、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基等)、ヘテロアリールアゾ基(例えば、チエニルアゾ基、フリルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、アルデヒド基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、水酸基、アジド基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基等が挙げられる。これらの置換基は更に他の置換基で置換されていてもよく、Rは、これらの置換基を2つあるいはそれ以上有していてもよい。Rが、これらの置換基を2つ以上有する場合、置換基は同一であっても、異なっていてもよい。
【0032】
以下にRの具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
以下に、一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物の入手方法は特に限定されず、市販のものをそのまま用いることもできるし、様々な公知の方法によって製造することができる。例えば、特表平4−500520号公報記載の製造方法に従って、下記のように、エステル化合物(9)をフッ素化後、メタノリシスにより、メチルエステル化合物(11)とし、これを還元することによって製造できる。式(9)中、Rはエーテル性酸素原子を有していてもよいn価の炭化水素基を示し、式(10)、式(11)及び式(12)中、RfはRの水素原子が全てフッ素原子に置換されたn価の炭化水素基を示す。nは1から6の整数を示す。
【0039】
【化12】

【0040】
(酸ハロゲン化物)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造に用いられる、オクタノール−水分配係数(logP値)が0.6から9.0の下記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物について説明する。
【0041】
【化13】

【0042】
{一般式(2)中、Rは、1価の置換基を示す。Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。}
【0043】
一般式(2)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示すが、好ましくは塩素原子、又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0044】
一般式(2)中、Rは1価の置換基を示す。Rは、直鎖、分岐鎖、環状いずれの構造であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。Rは、エーテル性酸素原子を有していてもよく、ハロゲン化されていてもよい。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。Rの炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アルキニル基(例えば、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、チエニル基、フリル基等)等が挙げられ、これらの基は他の置換基によって置換されていてもよく、下記置換基を有していてもよい。
【0045】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、N,N−ジエチルカルバモイル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ベンゾイルアミノ基、モルフォリノカルボニル基等)、アルカンスルホニル基又はアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アルコキシカルボニルアミノ基又はアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基等)、スルファモイル基(例えば、N,N−ジエチルアミノスルホニル基、N−シクロへキシルアミノスルホニル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アルキルチオカルボニル基あるいはアリールチオカルボニル基(例えば、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基等)、アシルチオ基(例えば、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等)等が挙げられる。これらの置換基は更に他の置換基で置換されていてもよく、Rは、これらの置換基を2つあるいはそれ以上有していてもよい。Rがこれらの置換基を2つ以上有する場合、置換基は同一であっても、異なっていてもよい。
【0046】
の具体例としては、例えば、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、i―ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、1−アダマンチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、2−エトキシエチル基、ブトキシメチル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、2−(メチルチオ)エチル基、3−(エチルチオ)プロピル基、4−(エチルチオ)ブチル基、1−メチルビニル基、1−フルオロビニル基、1−クロロビニル基、1−ブロモビニル基、1−トリフルオロメチルビニル基、アリル基、クロチル基、i―クロチル基、メタリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチルー1−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘプテニル基、8−ヘプタデセニル基、1,3−ペンタジエニル基、1,4−ペンタジエニル基、1,5−ヘキサジエニル基、ウンデカジエニル基、8,11−ヘプタデカジエニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−へプチニル基、1−オクチニル基、9−デシニル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、1−フルオロエチル基、1−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、1−ヨードエチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヨードエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、1−ブロモプロピル基、2−クロロプロピル基、2−フルオローi―プロピル基、2−ブロモーi―プロピル基、1−ブロモーi―プロピル基、2,2’−ジブロモーi―プロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、4−クロロブチル基、4−ブロモブチル基、クロローtert−ブチル基、5−クロロペンチル基、5−ブロモペンチル基、ウンデカフルオロペンチル基、2−フルオロシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−ヨードシクロヘキシル基、7−ブロモヘプチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2−アセチルフェニル基、3−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2−クロロー4−ニトロフェニル基、ナフチル基、2−アントラキノリル基、フリル基、チエニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−アセチルプロピル基、1−アセトキシーi―プロピル基、2−アセトキシーi―プロピル基、3−(プロピオニルオキシ)プロピル基、4−アセトキシブチル基、5−アセチルペンチル基、6−アセチルヘキシル基、4−(ベンゾイルオキシ)ブチル基、ベンゾイルメチル基、4−クロロフェノキシメチル基、2−アセチルチオーi―プロピル基、3−(メトキシカルボニル)プロピル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基、フェノキシカルボニルメチル基、3−(アシルオキシ)プロピル基、ピバロイルオキシメチル基、2−(ベンゾイルオキシ)エチル基、2−(メチルチオカルボニル)エチル基、フェニルチオカルボニルメチル基、2−(アセチルチオ)エチル基、ベンゾイルチオメチル基、2−(ピバロイルアミノ)エチル基、2−(ベンゾイルアミノ)エチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、8−(モルホリノカルボニル)オクチル基、4−(ベンゾイルアミノ)ブチル基、5−(ベンゾイルアミノ)ペンチル基、2−[4−(N−アセチルピペリジノ)]エチル基、4−(N−アセチルピペリジノ)メチル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニルメチル基、2−(ベンゾイルアミノ)エチル基、tert−ブトキシカルボニルアミノメチル基、2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル基、ベンジルオキシカルボニルアミノメチル基、3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロピル基、フェノキシカルボニルアミノメチル基、4−(フェノキシカルボニルアミノ)ブチル基、2−(N,N−ジメチルカルバモイルオキシ)エチル基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシメチル基、8−(モルホリノカルボニルオキシ)オクチル基、N,N−ジエチルアミノスルホニルメチル基、N−シクロへキシルアミノスルホニルメチル基、3−(N−フェニルアミノスルホニル)プロピル基、5−(フタルイミドー1−イル)ペンチル基、8−(メタンスルホニル)オクチル基、7−(エタンスルホニル)ヘプチル基、2−(フェニルスルホニル)エチル基、4−(フェニルスルホニル)ブチル基、5−(フェニルスルホニル)ペンチル基、2−(シクロヘキサンスルホニル)エチル基等が挙げられるが、好ましくは、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、i―ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、1−アダマンチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、2−エトキシエチル基、ブトキシメチル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、1−メチルビニル基、1−フルオロビニル基、1−クロロビニル基、1−ブロモビニル基、1−トリフルオロメチルビニル基、アリル基、クロチル基、i―クロチル基、メタリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチルー1−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘプテニル基、8−ヘプタデセニル基、1,3−ペンタジエニル基、1,4−ペンタジエニル基、1,5−ヘキサジエニル基、ウンデカジエニル基、8,11−ヘプタデカジエニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−へプチニル基、1−オクチニル基、9−デシニル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、1−フルオロエチル基、1−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、1−ヨードエチル基、2−フルオロエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヨードエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、1−ブロモプロピル基、2−クロロプロピル基、2−フルオローi―プロピル基、2−ブロモーi―プロピル基、1−ブロモーi―プロピル基、2,2’−ジブロモーi―プロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、4−クロロブチル基、4−ブロモブチル基、クロローtert−ブチル基、5−クロロペンチル基、5−ブロモペンチル基、ウンデカフルオロペンチル基、2−フルオロシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−ヨードシクロヘキシル基、7−ブロモヘプチル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2−アセチルフェニル基、3−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2−クロロー4−ニトロフェニル基、ナフチル基、2−アントラキノリル基、フリル基、チエニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−アセチルプロピル基、1−アセトキシーi―プロピル基、2−アセトキシーi―プロピル基、3−(プロピオニルオキシ)プロピル基、4−アセトキシブチル基、5−アセチルペンチル基、6−アセチルヘキシル基、4−(ベンゾイルオキシ)ブチル基、ベンゾイルメチル基、4−クロロフェノキシメチル基、2−アセチルチオーi―プロピル基、3−(メトキシカルボニル)プロピル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基、フェノキシカルボニルメチル基、3−(アシルオキシ)プロピル基、ピバロイルオキシメチル基、2−(ベンゾイルオキシ)エチル基である。
【0047】
本発明の含フッ素エステル化合物の製造においては、logP値が0.6から9.0の範囲内にある酸ハロゲン化物を用いる。logP値が0.6より小さいと酸ハロゲン化物が水層に移行しやすくなる。水層に移行した酸ハロゲン化物は、容易に加水分解され、カルボン酸化合物となる。カルボン酸化合物は、有機塩基化合物と反応して、アシル塩を形成できない。したがって、logP値が0.6より小さい酸ハロゲン化物を用いると、酸ハロゲン化物が加水分解されやすくなり、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0048】
本発明におけるlogP値とは、ある有機化合物が1−オクタノールと水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値で表した物性値であり、それぞれの溶媒中における有機化合物の平衡濃度の比(分配係数P)を常用対数で表した値である。酸ハロゲン化物は、水、1−オクタノールいずれとも反応してカルボン酸化合物あるいはオクチルエステル化合物となるため、実測することは困難である。したがって、酸ハロゲン化物のlogP値は、計算化学的手法によって算出することが好ましい。計算科学的手法としては、Hansch−Leoのフラグメント法、Atom Fragment法、Rekkerのフラグメント法、Crippenのフラグメント法、Viswanadhanのフラグメント法、Brotoのフラグメント法等が挙げられるが、Hansch−Leoのフラグメント法を用いることが好ましい。酸ハロゲン化物のlogP値が、計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明のlogP値の範囲内であるかどうかは、Hansch−Leoのフラグメント法により判断することが好ましい。
なお、本発明における酸ハロゲン化物のlogP値は、Medicinal Chemistry Project Pomona College,Claremont,Californiaで開発され、Daylight Chemical Information System Inc.より入手できるソフトウェアPCModelsを用いて算出した。
【0049】
logP値が0.6から9.0の範囲内ある一般式(2)で表される酸ハロゲン化物の具体例としては、例えば、以下に示すものが挙げられるが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における、酸ハロゲン化物の量は、含フッ素エステル化合物の収率を向上させるという理由から含フッ素アルコール化合物の水酸基モル数に対して1倍以上が好ましく、製造時の生産性を向上させるという理由から、含フッ素アルコール化合物の水酸基モル数に対して10倍以下が好ましい。酸ハロゲン化物の量は、含フッ素アルコール化合物の水酸基モル数に対して1.5〜5倍であるのがより好ましい。
【0053】
酸ハロゲン化物の入手方法は特に限定されず、市販のものをそのまま用いることもできるし、様々な公知の方法によって製造することができる。酸フッ化物、酸塩化物、及び酸臭化物は、例えば、日本化学会編「第4版実験化学講座」(丸善株式会社発行)、第22巻、115〜127頁に記載の方法に従って、下記のように、カルボン酸化合物をフッ化シアヌル、塩化チオニル、三臭化リン等のハロゲン化剤と反応させることによって製造することができる。酸ヨウ化物は、例えば、酸塩化物のハロゲン交換反応により製造することができる。下記一般式(13)〜(17)において、Rは前記一般式(2)におけるRと同様である。
【0054】
【化16】

【0055】
(水)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における水の役割について説明する。有機塩基化合物を用いた、含フッ素アルコール化合物と酸ハロゲン化物の反応では、まず、有機塩基化合物と酸ハロゲン化物が反応し、反応活性種である有機塩基化合物のアシル塩が生成する(例えば、有機塩基化合物にピリジンを用いた場合、下記ピリジンのアシル塩である一般式(18)で表される化合物が生成する)。反応活性種である該アシル塩と含フッ素アルコール化合物が反応することにより、含フッ素エステル化合物が生成する。該アシル塩は、一般に、有機溶媒に対する溶解度が極めて低いこと、及びフッ素を含まないアルコール化合物と比べ、含フッ素アルコール化合物との反応性が低いため、有機溶媒中に該アシル塩が大量に析出する。用いる酸ハロゲン化物及び有機塩基化合物によっては、該アシル塩は高粘性であり、攪拌困難となり、極めて製造適性が低くなる。水は、該アシル塩を溶解させることにより、製造適性を向上させるのに役立つ。下記一般式(18)において、R及びXは、前記一般式(2)におけるR及びXと同様である。
【0056】
【化17】

【0057】
水の量は、該アシル塩の有機溶媒及び水への溶解性によって適宜変更されるが、含フッ素アルコール化合物1gに対して、0.1g〜20gであることが好ましく、0.2g〜10gであることがより好ましい。含フッ素アルコール化合物に対する水の量が前記範囲の上限値以下であれば、酸ハロゲン化物が加水分解されにくく、含フッ素エステル化合物の収率が低下するそれが少ないため好ましい。水の量が前記範囲の下限値以上であれば、該アシル塩が反応溶液中に析出しにくく、攪拌困難となりにくいため好ましい。
【0058】
(有機溶媒)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における有機溶媒は、酸ハロゲン化物と反応する官能基(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホキシド基等)、及び含フッ素アルコール化合物及び有機塩基化合物と反応する官能基(例えば、ハロカルボニル基、ハロスルホニル基等)を含まなければ特に限定されないが、水層と二層に分離する有機溶媒、あるいは水層と二層に分離する組成の混合有機溶媒が好ましい。水層と二層に分離する有機溶媒あるいは、水層と二層に分離する組成の混合有機溶媒を用いると、酸ハロゲン化物が加水分解されにくく、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれが少ないため、好ましい。
【0059】
有機溶媒の具体例としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、1H−ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘキサン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の含フッ素溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、トリグリム、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒、チオアニソール、フェニルスルフィド等のチオエーテル系溶媒等が挙げられ、これらは、2種あるいはそれ以上を混合して用いてもよい。
【0060】
(水と有機溶媒の容積比)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における、水と有機溶媒の容積比(水:有機溶媒)は、好ましくは、2:1〜1:20であり、より好ましくは、1:1〜1:20である。水に対する有機溶媒の量が前記範囲の下限以上であれば、酸ハロゲン化物が加水分解されにくく、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれが少ないため、好ましい。水に対する有機溶媒の量が前記範囲の上限以下であれば、反応溶液の量が多くなりすぎず、生産性に優れるため、好ましい。
【0061】
(有機塩基化合物)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における有機塩基化合物は、酸ハロゲン化物と反応して、有機塩基化合物のアシル塩を形成する。該アシル塩が反応活性種であり、該アシル塩と含フッ素アルコール化合物が反応することにより、含フッ素エステル化合物が生成する。有機塩基化合物としては、反応中に水、含フッ素アルコール化合物、及び含フッ素エステル化合物と反応して失活せず、酸ハロゲン化物と反応して、反応活性種であるアシル塩を形成するものであれば、特に限定されないが、有機アミン化合物が好ましい。
【0062】
有機アミン化合物は、水中における共役酸のpKa(酸解離定数)が、2〜11であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。有機アミン化合物の共役酸のpKaが大きすぎると、有機アミン化合物の酸ハロゲン化物との反応性は高くなるが、有機アミン化合物と酸ハロゲン化物から生成したアシル塩の含フッ素アルコール化合物との反応性が低くなり、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれがあるため好ましくない。有機アミン化合物の共役酸のpKaが小さすぎると、該アシル塩と含フッ素アルコール化合物との反応性は高くなるが、有機アミン化合物の酸ハロゲン化物との反応性が低くなり、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれがあるため、好ましくない。
有機アミン化合物としては、例えば、含窒素複素環式化合物(例えば、ピリジン、イミダゾール等)、3級アミン化合物(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等)等が挙げられる。
【0063】
有機アミン化合物の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、4−アセチルピリジン、2−エチルピリジン、2−ブチルピリジン、3−ブチルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、3−アセトキシピリジン、2−ベンジルピリジン、3−ベンジルピリジン、4−ベンジルピリジン、3−クロロピリジン、3−ブロモピリジン、4−アミルピリジン、4−ベンゾイルピリジン、2−クロロメチルピリジン、3−クロロメチルピリジン、4−クロロメチルピリジン、2−ブトキシピリジン、2,6−ビス(クロロメチル)ピリジン、2,6−ビス(ブロモメチル)ピリジン、5−ブロモ−2−メトキシピリジン、2−(4−クロロベンジル)ピリジン、4−(4−クロロベンジル)ピリジン、キノリン、6−tert−ブチルキノリン、6−クロロキノリン、8−クロロキノリン、5−ブロモキノリン、6−ブロモキノリン、2−クロロメチルキノリン、2−メチルー6−ブロモキノリン、7−クロロ−2−メチルキノリン、イソキノリン、5−ブロモイソキノリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンズイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−(4−シアノフェニル)イミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジメチルベンズイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、アクリジン等が挙げられるが、好ましくは、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、3−アセチルピリジン、2−エチルピリジン、2−ブチルピリジン、3−ブチルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、3−アセトキシピリジン、2−ベンジルピリジン、3−ベンジルピリジン、4−ベンジルピリジン、4−アミルピリジン、2−ブトキシピリジン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンズイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾールであり、より好ましくは、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールであり、これらの有機アミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
有機アミン化合物としては、ピリジン化合物(分子内にピリジン構造を有する化合物)又はイミダゾール化合物(分子内にイミダゾール構造を有する化合物)が、
酸ハロゲン化物との反応性、及び該有機アミン化合物と酸ハロゲン化物から生成したアシル塩の含フッ素アルコール化合物との反応性の両方に優れ、収率よく含フッ素エステル化合物が得られるという理由から好ましい。
【0065】
有機塩基化合物の量は、酸ハロゲン化物と反応して、アシル塩を効率的に生成させ、含フッ素エステル化合物の収率を向上させるという理由から、酸ハロゲン化物のモル数に対して、0.1倍以上が好ましい。また、製造時の生産性を向上させるという理由から、有機塩基化合物の量は、酸ハロゲン化物のモル数に対して、5倍以下が好ましい。有機塩基化合物の量は酸ハロゲン化物のモル数に対して0.1〜2.5倍であるのがより好ましい。
【0066】
(無機塩基)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造は、更に無機塩基を存在させて実施してもよい。本発明における無機塩基の役割は、反応時に生成する、有機塩基化合物のハロゲン化水素塩から、有機塩基化合物を再生させることである。すなわち、無機塩基の存在下実施することにより、有機塩基化合物の使用量を減らすことができるため、好ましい。
有機塩基化合物のモル数が、酸ハロゲン化物のモル数より少ない場合は、無機塩基化合物の存在下、反応を実施することが好ましい。
【0067】
無機塩基は、有機塩基化合物のハロゲン化水素塩から、有機塩基化合物を再生できるものであれば、特に限定されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等の炭酸水素塩、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ベリリウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物等が挙げられる。
無機塩基の量は、酸ハロゲン化物のモル数に対し、0.1〜5倍であるのが好ましく、0.2〜2.5倍であるのがより好ましい。
【0068】
(反応温度・反応時間)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における反応温度は、用いる含フッ素アルコール化合物、酸ハロゲン化物、有機塩基化合物等によって適宜変更されるため特に限定することはできないが、好ましくは−50〜100℃であり、より好ましくは−20〜50℃である。反応温度が高すぎると、酸ハロゲン化物及び含フッ素エステル化合物が加水分解されやすくなり、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれがあるため、好ましくない。反応温度が低すぎると原料の回収量が多くなるおそれがあるため、好ましくない。
本発明の含フッ素エステル化合物の製造における反応時間は、用いる含フッ素アルコール化合物、酸ハロゲン化物、有機塩基化合物、無機塩基、有機溶媒、水の量や種類、反応温度等によって、適宜変更されるが、10分から48時間で行うのが好ましく、10分から24時間で行うのがより好ましい。
【0069】
(試薬の混合順)
本発明の含フッ素エステル化合物の製造では、試薬の混合順については、特に限定されないが、酸ハロゲン化物の加水分解及び有機塩基化合物のアシル塩の析出を抑制するため、含フッ素アルコール化合物、有機塩基化合物、水、有機溶媒、(必要に応じて無機塩基)をあらかじめ混合しておき、最後に酸ハロゲン化物を添加するのが好ましい。含フッ素アルコール化合物、有機塩基化合物、水、有機溶媒、無機塩基の混合順は特に限定されない。
酸ハロゲン化物の添加方法は特に限定されず、例えば、全ての酸ハロゲン化物を一度に添加する連続添加、及び酸ハロゲン化物を分割して逐次添加する半連続添加等を用いることができる。酸ハロゲン化物の添加時間は、用いる含フッ素アルコール化合物、酸ハロゲン化物、有機塩基化合物、無機塩基、有機溶媒、水の量や種類、反応温度等によって、適宜変更されるが、好ましくは1分〜12時間であり、より好ましくは、10分〜6時間である。
【0070】
(含フッ素エステル化合物)
本発明の製造方法によれば、前記一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物と、オクタノール−水分配係数(logP値)が0.6から9.0の前記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物を、水、有機溶媒、有機塩基化合物存在下、反応させることにより、下記一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物を得ることができる。
【0071】
【化18】

【0072】
{一般式(3)中、R1’は一般式(1)におけるRと同じ基、又は一般式(1)のRと一般式(2)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。Rは、1価の置換基を示す。}
【0073】
一般式(3)中のR1’が、一般式(1)のRと異なる基となりうるのは、一般式(1)のRが、一般式(2)で表される酸ハロゲン化物と反応する基(例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基等)を有する場合であるが、R1’は、一般式(1)におけるRと同じ基であることが好ましい。
一般式(3)中、R1’の好ましい範囲は前記一般式(1)におけるRと同様である。
一般式(3)中、Rの好ましい範囲は前記一般式(2)におけるRと同様である。
【0074】
以下に一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
本発明の含フッ素エステル化合物の製造方法は、下記一般式(4)で表される、カルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する、酸ハロゲン化物に適用した場合でも、後述の条件下では、脱離反応(脱ハロゲン化水素反応)等の副反応を起こしにくい。したがって、本発明の製造方法は、下記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物にも好適に用いることができる。
【0080】
【化23】

【0081】
{一般式(4)中、Xは、前記一般式(2)におけるXと同義である。R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。}
【0082】
一般式(4)中、Xの好ましい範囲は、前記一般式(2)におけるXと同様である。一般式(4)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示すが、好ましくは、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、より好ましくは、塩素原子、又は臭素原子であり、特に好ましくは、塩素原子である。
【0083】
、R、Rが1価の置換基を表す場合、該1価の置換基は、直鎖、分岐鎖、環状いずれの構造であってもよい。該1価の置換基は、エーテル性酸素原子を有していてもよく、ハロゲン化されていてもよい。ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等が挙げられる。1価のR、R、Rの炭素数は、好ましくは、0〜20であり、より好ましくは、0〜15であり、更に好ましくは0〜10である。
ただし、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物のlogP値は0.6〜9.0の範囲内である。
1価の置換基は、一般式(4)中のX又はXと反応する基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基等)を含まず、また、エステル化反応において分解・副反応等を起こすものでなければ、特に限定されないが、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、2−ブチニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ベンゾイルアミノ基等)、アルカンスルホニル基又はアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アルコキシカルボニルアミノ基又はアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基等)、スルファモイルアルキル基(例えば、N,N−ジエチルアミノスルホニル基、N−シクロへキシルアミノスルホニル基、N−フェニルアミノスルホニル基)、アルキルチオカルボニル基あるいはアリールチオカルボニル基(例えば、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基等)、アシルチオ基(例えば、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基等)、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられ、これらの置換基は更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0084】
、R、Rの1価の置換基の具体例としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、i―ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ベンゾイル基、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、ビニル基、アリル基、クロチル基、i―クロチル基、メタリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチルー1−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘプテニル基、8−ヘプタデセニル基、1,3−ペンタジエニル基、1,4−ペンタジエニル基、1,5−ヘキサジエニル基、ウンデカジエニル基、8,11−ヘプタデカジエニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−へプチニル基、1−オクチニル基、9−デシニル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2−アセチルフェニル基、3−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2−クロロー4−ニトロフェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニ基、ベンゾイルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジエチルアミノスルホニル基、N−シクロへキシルアミノスルホニル基、N−フェニルアミノスルホニル基、フタルイミドー1−イル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、フェニルスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基等が挙げられるが、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、i―ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ベンゾイル基、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ビニル基、アリル基、クロチル基、i―クロチル基、メタリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチルー1−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘプテニル基、8−ヘプタデセニル基、1,3−ペンタジエニル基、1,4−ペンタジエニル基、1,5−ヘキサジエニル基、ウンデカジエニル基、8,11−ヘプタデカジエニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−へプチニル基、1−オクチニル基、9−デシニル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2−アセチルフェニル基、3−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2−クロロー4−ニトロフェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基であり、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、フェノキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ベンゾイル基、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、フェニル基であり、特に好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基である。
【0085】
、R、Rが2価又は3価の置換基を表す場合は、R、R、Rのうち2つ又は3つが連結して環を形成し、2価又は3価の置換基を形成することが好ましい。該2価又は3価の置換基は、直鎖状、分岐状、環状いずれの構造であってもよい。2価又は3価の置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基は、エーテル性酸素原子を有していてもよく、ハロゲン化されていてもよい。ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等が挙げられる。炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。また、炭化水素基は、Rで説明した置換基を有してもよい。2価又は3価のR、R、Rの炭素数は、好ましくは、0〜10であり、より好ましくは、0〜6であり、特に好ましくは、0〜4である。
ただし、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物のlogP値は0.6〜9.0の範囲内である。
以下に、R、R、Rの2価又は3価の置換基の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0086】
【化24】

【0087】
以下に、一般式(4)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0088】
【化25】

【0089】
前記一般式(1)で表される化合物と、酸ハロゲン化物として前記一般式(4)で表される化合物を用いた場合は、下記一般式(5)で表される、カルボニル基のα位の炭素原子に水素原子を有し、カルボニル基のβ位の炭素原子に脱離基を有する含フッ素エステル化合物を得ることができる。
【0090】
【化26】

【0091】
{一般式(5)中、R1’は、前記一般式(1)におけるRと同じ基、又は一般式(1)のRと前記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。一般式(5)中、R、R、R、及びXは、前期一般式(4)におけるR、R、R、及びXと同義である。}
【0092】
一般式(5)中のR1’が、一般式(1)のRと異なる基となりうるのは、一般式(1)のRが、前記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物と反応する基(例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基等)を有する場合であるが、R1’は、一般式(1)におけるRと同じ基であることが好ましい。
一般式(5)中、R1’の好ましい範囲は前記一般式(1)におけるRと同様である。
一般式(5)中、X、R、R、及びRの好ましい範囲は前記一般式(4)におけるX、R、R、及びRと同様である。
【0093】
以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0094】
【化27】

【0095】
【化28】

【0096】
【化29】

【0097】
【化30】

【0098】
一般式(1)で表される化合物と、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物から、一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物を製造する場合の好ましい反応条件は、有機塩基化合物及び反応温度を除いては、上述の一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される酸ハロゲン化物から、一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物を製造する場合の反応条件と同様である。
【0099】
一般式(1)で表される化合物と、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物から、一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物を製造する場合、有機塩基化合物は、水中における共役酸のpKa(酸解離定数)が2〜8であることが好ましく、共役酸のpKaが4〜8であることがより好ましい。有機アミン化合物の共役酸のpKaが大きすぎると、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物及び一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物の脱離反応(脱ハロゲン化水素反応)が進行し、含フッ素エステル化合物の純度が低下するおそれがあるため、好ましくない。有機アミン化合物の共役酸のpKaが小さすぎると、有機アミン化合物の酸ハロゲン化物との反応性が低くなり、含フッ素エステル化合物の収率が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0100】
有機アミン化合物としては、3級アミン化合物(例えば、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン等)、含窒素複素環式化合物(例えば、ピリジン、イミダゾール等)等が挙げられるが、含窒素複素環式化合物が好ましい。含窒素複素環式化合物としては、ピリジン化合物(分子内にピリジン構造を有する化合物)及びイミダゾール化合物(分子内にイミダゾール構造を有する化合物)が好ましい。
有機アミン化合物の具体例としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、3−アセチルピリジン、2−エチルピリジン、2−ブチルピリジン、3−ブチルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、3−アセトキシピリジン、2−ベンジルピリジン、3−ベンジルピリジン、4−ベンジルピリジン、4−アミルピリジン、2−クロロメチルピリジン、3−クロロメチルピリジン、4−クロロメチルピリジン、2−ブトキシピリジン、2,6−ビス(クロロメチル)ピリジン、2,6−ビス(ブロモメチル)ピリジン、5−ブロモ−2−メトキシピリジン、4−(4−クロロベンジル)ピリジン、2−ブチル−6−フェニルピリジン、キノリン、6−tert−ブチルキノリン、イソキノリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンズイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−(4−シアノフェニル)イミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジメチルベンズイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール等が挙げられるが、好ましくは、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−エチルピリジン、2−ブチルピリジン、3−ブチルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、2−ベンジルピリジン、3−ベンジルピリジン、4−ベンジルピリジン、4−アミルピリジン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンズイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾールであり、より好ましくは、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールであり、これらの有機アミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0101】
一般式(1)で表される化合物と、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物から、一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物を製造する場合の反応温度は、好ましくは−50〜50℃であり、より好ましくは−20℃〜40℃である。反応温度が高すぎると、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物、及び一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物の脱離反応(脱ハロゲン化水素反応)、あるいは一般式(4)で表される酸ハロゲン化物、及び一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物のXと有機塩基化合物との置換反応等の副反応が進行し、含フッ素エステル化合物の純度が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0102】
また、本発明の含フッ素エステル化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物として下記一般式(6)で表される多官能含フッ素アルコール化合物、酸ハロゲン化物として前記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物を用いた場合、下記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を得ることができる。下記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物は新規化合物である。
【0103】
【化31】

【0104】
{一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(7)中、X、R、R、及びRは、前記一般式(4)におけるX、R、R、及びRと同義である。一般式(7)中、R6’は、一般式(6)におけるRと同じ基、又は一般式(6)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。}
【0105】
(多官能含フッ素アルコール化合物)
前記一般式(6)で表される多官能含フッ素アルコール化合物について説明する。
【0106】
一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示す。m価の置換基としては、エーテル性酸素原子を有していてもよいm価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、環状いずれの構造であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は、単環であっても縮合環であっても良く、環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を有するヘテロ環であってもよい。ヘテロ環は、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。また、該炭化水素基の一部の水素原子及び炭化水素基のいずれかが、前記一般式(1)のRで説明した、その他の置換基によって置き換えられていてもよい。
は、水酸基が結合した炭素原子(a)以外の炭素原子(b)にフッ素原子以外のハロゲン原子を有していてもよい。フッ素原子以外のハロゲンとしては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
において、フッ素原子は、水酸基が結合した該炭素原子(a)以外の炭素原子(b)であればいずれに置換されていてもよいが、入手性及び製造の容易さという観点から、Rは、水酸基が結合した該炭素原子(a)に隣接する炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子を有することが好ましい。Rの炭素原子(b)におけるフッ素原子の数は、1つでも、2つ以上でもよいが、炭素原子(b)の全ての水素原子がフッ素原子に置換されていることがより好ましい。
の炭素数は、好ましくは3〜50であり、より好ましくは3〜40であり、特に好ましくは3〜30である。
【0107】
以下に、Rの具体例を示すがこれによって本発明が限定されるものではない。
【0108】
【化32】

【0109】
以下に、一般式(6)で表される多官能含フッ素アルコール化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0110】
【化33】

【0111】
(多官能含フッ素エステル化合物)
一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物について説明する。
【0112】
【化34】

【0113】
一般式(7)中、X、R、R、及びRの好ましい範囲は前記一般式(4)におけるX、R、R、及びRと同様である。mは2〜6の整数を示す。
一般式(7)中のR6’が、一般式(6)のRと異なる基となりうるのは、一般式(6)のRが、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物と反応する基(例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基等)を有する場合であるが、R6’は、一般式(6)におけるRと同じ基であることが好ましい。
一般式(7)におけるR6’の好ましい範囲は、前記一般式(6)におけるRと同様である。
以下に、一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0114】
【化35】

【0115】
【化36】

【0116】
【化37】

【0117】
【化38】

【0118】
一般式(6)で表される多官能含フッ素アルコール化合物と、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物から、一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を得る反応の好ましい条件は、上述の一般式(1)で表される化合物と一般式(4)で表される酸ハロゲン化物から、一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物を製造する場合の反応条件と同様である。
【0119】
(多官能含フッ素不飽和エステル化合物の製造方法)
本発明の多官能含フッ素不飽和エステル化合物の製造方法は、少なくとも下記<工程1>及び<工程2>を経由することを特徴とする。
<工程1>前記一般式(6)で表される化合物と、前記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物を用い、前記本発明の製造方法に従って、前記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を得る工程。
<工程2>前記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を脱ハロゲン化水素させ、下記一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物を得る工程。
【0120】
【化39】

【0121】
{一般式(4)中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(4)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。一般式(4)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(7)中、R、R、R及びXは、一般式(4)におけるR、R、R及びXと同義である。一般式(7)中、R6’は一般式(6)におけるRと同じ基、又は一般式(6)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。一般式(8)中、R6’は一般式(7)におけるR6’と同義であり、mは2〜6の整数を示す。一般式(8)中、R、R、及びRは、一般式(4)におけるR、R、及びRと同義である。}
【0122】
一般式(8)中、R、R、及びRの好ましい範囲は前記一般式(4)におけるR、R、及びRと同様である。
一般式(8)中のR6’が、一般式(6)のRと異なる基となりうるのは、一般式(6)のRが、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物と反応する基(例えば、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基等)を有する場合であるが、R6’は、一般式(6)におけるRと同じ基であることが好ましい。
一般式(8)におけるR6’の好ましい範囲は、前記一般式(6)におけるRと同様である。
【0123】
<工程2>の脱ハロゲン化水素反応の方法は特に限定されず、様々な公知の方法に従って、実施することができる。例えば、特開昭63−104946号公報記載の製造方法に従って、下記のように、一般式(7)で表される含フッ素エステル化合物に3級アミン化合物を作用させることによって一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物を製造することができる。
【0124】
【化40】

【0125】
<工程2>は、<工程1>の反応溶液に、例えば上述の3級アミン化合物を添加して、連続的に実施してもよいが、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物の純度を向上させるという理由から、例えば、抽出又は分液洗浄、カラムクロマトグラフィー、蒸留、濾過、再結晶、再沈殿等の精製工程のいずれか、あるいは2種以上の組み合わせによって、無機塩基、有機塩基化合物、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物、及び該酸ハロゲン化物が加水分解され生成したカルボン酸化合物を除去後、<工程2>を実施することが好ましい。分液によって、無機塩基、有機塩基化合物、一般式(4)で表される酸ハロゲン化物、及び該酸ハロゲン化物が加水分解され生成したカルボン酸化合物を除去後、<工程2>を実施する場合、有機層を完全に、あるいは一部濃縮してから<工程2>を実施してもよいし、濃縮せず<工程2>を実施してもよい。
【0126】
以下に、一般式(8)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
前記<工程1>及び<工程2>を経由して得られる、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物は、下記式のように、一般式(6)で表される多官能含フッ素アルコール化合物と、下記一般式(19)で表される酸ハロゲン化物を反応させることにより得られる、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物よりも純度が高い。一般式(19)中、X、R、R、及びRは、前記一般式(4)におけるX、R、R、及びRと同義である。
したがって、本発明の一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物は、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物の前駆体として極めて有用である。本発明の製造方法によって得られる、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物は、例えば、コーティング剤、撥水撥油剤、防汚剤、塗料、フォトレジスト、表面改質剤、低屈折含フッ素樹脂等に好適に用いることができ、反射防止膜用素材として特に好適に用いることができる。
【0130】
【化43】

【実施例】
【0131】
以下に本発明を具体的に説明する実施例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。ここでは、核磁気共鳴法はNMR、高速液体クロマトグラフィーをHPLCと記す。H−NMRではテトラメチルシラン(TMS)を内部標準として用いて測定を行った。19F−NMRではフルオロトリクロロメタンを外部標準として用いて測定を行った。
【0132】
[実施例1] 化合物(21)の製造
【0133】
【化44】

【0134】
化合物(20)5.00g(15.1mmol)及びピリジン1.49g(18.9mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル25mL及びヘキサン25mLに溶解させた。重曹4.76g(56.6mmol)及び水6mLを加え、内温10℃以下に冷却した。プロピオニルクロリド4.19g(45.3mmol、logP値:0.660)を1.5時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水25mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸25mL、25%食塩水25mL、7.5%重曹水25mL、25%食塩水25mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(21)を5.51g(14.2mmol、収率94.0%)得た。
化合物(21);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=1.19(3H、t、J=7.5Hz)、2.45(2H、q、J=7.5Hz)、4.60(2H、t、J=13.5Hz)、6.05(1H、tt、51.9、5.1Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−136.9(2F)、−129.5(2F)、−123.6(4F)、−122.2(2F)、−119.5(2F)。
【0135】
[実施例2] 化合物(21)の製造
【0136】
【化45】

【0137】
ピリジンを1−メチルイミダゾール1.55g(18.9mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行い、化合物(21)を5.50g(14.2mmol、収率94.0%)得た。
【0138】
[実施例3] 化合物(22)の製造
【0139】
【化46】

【0140】
プロピオニルクロリドをメタアクリル酸クロリド(logP値:0.885)6.30g(60.3mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行い、化合物(22)を5.84g(14.6mmol、収率96.7%)得た。
化合物(22);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=1.98(3H、t、J=1.1Hz)、4.66(2H、t、J=13.4Hz)、5.71(1H、t、J=1.5Hz)、6.06(1H、tt、51.9、5.1Hz)、6.22(1H、t、J=1.1Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−137.1(2F)、−129.5(2F)、−123.5(4F)、−122.2(2F)、−119.5(2F)。
【0141】
[実施例4] 化合物(23)の製造
【0142】
【化47】

【0143】
化合物(20)5.00g(15.1mmol)及びピリジン1.79g(22.7mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル50mL及びヘキサン50mLに溶解させた。重曹4.76g(56.6mmol)及び水25mLを加え、内温10℃以下に冷却した。ステアロイルクロリド(logP値:8.60)18.2g(60.2mmol)を1.5時間かけて添加し、内温10℃以下で4時間攪拌した。反応液を濾過後、分液した。有機層を2規定塩酸50mL、25%食塩水50mL、7.5%重曹水50mL、25%食塩水50mLで順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(23)を8.44g(14.1mmol、収率%93.4%)得た。
化合物(23);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=0.89(3H、t、J=6.8Hz)、1.24−1.34(28H、m)、1.63(2H、m)、2.30(2H、t、J=7.6Hz)、4.59(2H、t、J=13.4Hz)、6.04(1H、tt、51.9、5.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−137.0(2F)、−129.5(2F)、−123.5(4F)、−122.2(2F)、−119.5(2F)。
【0144】
[実施例5] 化合物(24)の製造
【0145】
【化48】

【0146】
プロピオニルクロリドをベンゾイルクロリド(logP値:1.57)8.49g(60.4mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行い、化合物(24)を6.33g(14.5mmol、収率96.1%)得た。
化合物(24);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.83(2H、t、J=13.4Hz)、6.06(1H、tt、J=51.9、5.1Hz)、7.48(2H、dd、J=7.2、5.7Hz)、7.62(1H、dd、J=5.7、1.4Hz)、8.07(2H、dd、J=7.2、1.4Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−137.0(2F)、−129.4(2F)、−123.3(4F)、−122.2(2F)、−119.3(2F)。
【0147】
[実施例6] 化合物(25)の製造
【0148】
【化49】

【0149】
プロピオニルクロリドを2−チオフェンカルボニルクロリド(logP値:1.21)8.83g(60.2mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行い、化合物(25)を6.20g(14.0mmol、収率92.9%)得た。
化合物(25);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.80(2H、t、J=13.5Hz)、6.06(1H、tt、J=51.8、5.3Hz)、7.15(1H、dd、J=4.8、3.9Hz)、7.65(1H、dd、J=4.8、1.2Hz)、7.88(1H、dd、J=3.9、1.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−137.0(2F)、−129.5(2F)、−123.4(4F)、−122.2(2F)、−119.3(2F)。
【0150】
[比較例1] 化合物(26)の製造
【0151】
【化50】

【0152】
プロピオニルクロリドをアクリル酸クロリド(logP値:0.58)5.45g(60.2mmol)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行った。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(26)を0.79g(2.05mmol、収率13.6%)得た。
【0153】
[実施例7] 化合物(28)の製造
【0154】
【化51】

【0155】
化合物(27)5.0g(44.6mmol)及びピリジン3.53g(44.6mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル75mL及びトルエン75mLに溶解させた。重曹18.0g(214mmol)及び水25mLを加え、内温10℃以下に冷却した。プロピオニルクロリド16.5g(178mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で4時間攪拌した。10%炭酸カリウム水90mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸90mL、25%食塩水90mL、7.5%重曹水90mL、25%食塩水90mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(28)を7.01g(41.7mmol、収率93.4%)得た。
化合物(28);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=1.28(3H、t、J=7.5Hz)、2.60(2H、q、J=7.5Hz)、6.82−6.98(3H、m)、7.35(1H、m)。
【0156】
[実施例8] 化合物(30)の製造
【0157】
【化52】

【0158】
化合物(29)5.00g(23.6mmol)及び4−ピコリン5.49g(58.9mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル50mL及びヘキサン50mLに溶解させた。重曹14.9g(177mmol)及び水25mLを加え、内温10℃以下に冷却した。プロピオニルクロリド13.1g(142mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水70mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸50mL、25%食塩水50mL、7.5%重曹水50mL、25%食塩水50mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(30)を7.29g(22.5mmol、収率95.4%)得た。
化合物(30);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=1.19(6H、t、J=7.5Hz)、2.46(4H、q、J=7.5Hz)、4.59(4H、t、J=13.6Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−126.4(2F)、−120.5(4F)。
【0159】
[実施例9] 化合物(30)の製造
【0160】
【化53】

【0161】
4−ピコリンを、N‐メチルモルホリン5.96g(58.9mmol)にかえ、プロピオニルクロリドを17.5g(189mmol)用いたこと以外は、実施例8と同様に行い、化合物(30)を7.13g(22.0mmol、収率93.2%)得た。
【0162】
[実施例10] 化合物(31)の製造
【0163】
【化54】

【0164】
4−ピコリンをピリジン4.67g(59.0mmol)、プロピオニルクロリドを3−クロロプロピオニルクロリド(logP値:0.723)18.0g(142mmol)にかえたこと以外は、実施例8と同様に行い、化合物(31)を8.82g(22.4mmol、収率94.9%)得た。
化合物(31);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.92(4H、t、J=6.7Hz)、3.79(4H、t、J=6.7Hz)、4.60(4H、t、J=13.5Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−126.4(2F)、−120.6(4F)。
【0165】
[実施例11] 化合物(32)の製造
【0166】
【化55】

【0167】
4−ピコリンをピリジン4.67g(59.0mmol)、プロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド(logP値:0.863)24.3g(142mmol)にかえたこと以外は、実施例8と同様に行い、化合物(32)を10.8g(22.5mmol、収率94.9%)得た。
化合物(32);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=3.10(4H、t、J=6.7Hz)、3.69(4H、t、J=6.7Hz)、4.20(4H、t、J=13.5Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−126.4(2F)、−120.6(4F)。
【0168】
[実施例12] 化合物(34)の製造
【0169】
【化56】

【0170】
化合物(33)5.00g(14.9mmol)及びピリジン3.54g(44.8mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル50mL及びヘキサン50mLに溶解させた。重曹9.39g(112mmol)及び水15mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド11.4g(89.8mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水50mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸50mL、25%食塩水50mL、7.5%重曹水50mL、25%食塩水50mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(34)を7.55g(14.6mmol、収率97.9%)得た。
化合物(34);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.81(4H、t、J=6.6Hz)、3.69(4H、t、J=6.6Hz)、7.45(4H、d、8.8Hz)、7.52(4H、d、J=8.8Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−64.6(6F)。
【0171】
[実施例13] 化合物(36)の製造
【0172】
【化57】

【0173】
化合物(35)5.00g(7.44mmol)及びピリジン2.21g(27.9mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル25mL及びヘキサン25mLに溶解させた。重曹7.03g(83.7mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド8.50g(67.0mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水40mLを加え、室温で1時間攪拌後、抽出した。有機層を、2規定塩酸40mL、25%食塩水40mL、7.5%重曹水40mL、25%食塩水40mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(36)を6.66g(7.06mmol、収率94.9%)得た。
化合物(36);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.90(6H、t、J=6.6Hz)、3.77(6H、t、J=6.6Hz)、4.59(6H、t、J=12.9Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.2(6F)、−86.3(6F)、−66.8(6F)、−63.2(3F)。
【0174】
[実施例14] 無機塩基非存在下での化合物(36)の製造
【0175】
【化58】

【0176】
重曹を加えず、3−クロロプロピオニルクロリドを9.92g(78.1mmol)ピリジンを6.80g(85.9mmol)用いたこと以外は、実施例13と同様に行い、化合物(36)を6.45g(6.83mmol、収率91.8%)得た。
【0177】
[比較例2] 水非存在下での化合物(36)の製造
【0178】
【化59】

【0179】
水を加えなかったこと以外は、実施例13と同様に行った。3−クロロプロピオニルクロリドの添加により、高粘性のピリジンのアシル塩が大量に析出し、攪拌困難となった。また、高粘性の塩中に化合物(35)及び化合物(35)が部分的にエステル化された化合物が取り込まれたため、3−クロロプロピオニルクロリドを更に添加しても反応が完結しなかった。
【0180】
[比較例3] 有機塩基化合物非存在下での化合物(36)の製造
【0181】
【化60】

【0182】
ピリジンを加えなかったこと以外は、実施例13と同様に行った。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(36)を0.176g(0.187mmol、収率2.51%)得た。
【0183】
[実施例15] 化合物(37)の製造
【0184】
【化61】

【0185】
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド11.5g(67.0mmol)にかえたこと以外は、実施例13と同様に行い、化合物(37)を7.62g(7.07mmol、収率95.0%)得た。
化合物(37);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=3.11(6H、t、J=6.7Hz)、3.70(6H、t、J=6.7Hz)、4.61(6H、t、J=13.1Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.1(6F)、−86.3(6F)、−66.8(6F)、−63.2(3F)。
【0186】
[実施例16] 化合物(38)の製造
【0187】
【化62】

【0188】
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモ−2−メチルプロピオニルクロリド(logP値:1.17)16.4g(89.3mmol)にかえたこと以外は、実施例13と同様に行い、化合物(38)を7.80g(6.97mmol、収率93.7%)得た。
化合物(38);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=1.32(9H、d、J=6.8Hz)、2.90(3H、m)、3.49(6H、m)、4.61(6H、t、J=13.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.3(6F)、−86.4(6F)、−66.8(6F)、−63.2(3F)。
【0189】
[実施例17] 化合物(40)の製造
【0190】
【化63】

【0191】
化合物(39)5.00g(7.44mmol)及びピリジン2.21g(27.9mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル20mL及びヘキサン20mLに溶解させた。重曹7.03g(83.7mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド8.50g(67.0mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水40mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸40mL、25%食塩水40mL、7.5%重曹水40mL、25%食塩水40mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(40)を6.66g(7.06mmol、収率94.9%)得た。
化合物(40);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.90(6H、t、J=6.6Hz)、3.77(6H、t、J=6.6Hz)、4.70(6H、m)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−133.4(3F)、−82.6(9F)、−64.7(6F)、−63.2(3F)。
【0192】
[実施例18] 化合物(41)の製造
【0193】
【化64】

【0194】
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド11.5g(67.0mmol)にかえたこと以外は、実施例17と同様に行い、化合物(41)を7.46g(6.93mmol、収率93.1%)得た。
化合物(41);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=3.09(6H、t、J=6.6Hz)、3.69(6H、t、J=6.6Hz)、4.69(6H、m)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−133.3(3F)、−82.6(9F)、−64.7(6F)、−63.2(3F)。
【0195】
[実施例19] 化合物(43)の製造
【0196】
【化65】

【0197】
化合物(42)5.00g(14.9mmol)及びピリジン4.78g(60.4mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル60mL、及びヘキサン60mLに溶解させた。重曹14.3g(170mmol)及び水20mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド17.3g(136mmol)を1.5時間かけて添加し、内温10℃以下で3.5時間攪拌した。10%炭酸カリウム水70mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸70mL、25%食塩水70mL、7.5%重曹水70mL、25%食塩水70mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(43)を8.70g(14.3mmol、収率96.0%)得た。
化合物(43);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.86(t、6H、J=6.7Hz)、3.72(t、6H、J=6.7Hz)、4.79−5.01(6H、m)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−188.3、−185.0、−120.8〜−123.3、−112.1〜−115.6。
【0198】
[実施例20] 化合物(44)の製造
【0199】
【化66】

【0200】
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド23.3g(136mmol)にかえたこと以外は、実施例19と同様に行い、化合物(44)を10.7g(14.4mmol、収率96.6%)得た。
化合物(44);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=3.06(t、6H、J=6.7Hz)、3.66(t、6H、J=6.7Hz)、4.79−5.01(6H、m)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−188.4、−185.1、−120.8〜−123.3、−112.1〜−115.6。
【0201】
[実施例21] 化合物(46)の製造
【0202】
【化67】

【0203】
化合物(45)5.00g(6.25mmol)及びピリジン2.97g(37.5mmol)をガラス製反応容器に取り、THF38mL、酢酸エチル23mL、及びヘキサン60mLに溶解させた。重曹7.87g(93.7mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド9.52g(75.0mmol)を1.5時間かけて添加し、内温10℃以下で3.5時間攪拌した。10%炭酸カリウム水30mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸30mL、25%食塩水30mL、7.5%重曹水30mL、25%食塩水30mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより化合物(46)を7.01g(6.03mmol、収率96.5%)得た。
化合物(46);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.90(t、8H、J=6.6Hz)、3.77(t、8H、J=6.6Hz)、4.56(t、8H、J=13.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.3(8F)、−85.9(8F)、−66.1(8F)。
【0204】
[実施例22] 化合物(47)の製造
【0205】
【化68】

【0206】
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド12.9g(75.3mmol)にかえたこと以外は、実施例21と同様に行い、化合物(47)を7.95g(5.93mmol、収率94.9%)得た。
化合物(47);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=3.08(t、8H、J=6.6Hz)、3.69(t、8H、J=6.6Hz)、4.57(t、8H、J=13.1Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.5(8F)、−86.0(8F)、−66.1(8F)。
【0207】
[実施例23] 化合物(49)の製造
【0208】
【化69】

【0209】
化合物(48)5.00g(3.78mmol)及びピリジン2.24g(28.4mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル30mL及びヘキサン30mLに溶解させた。重曹7.15g(85.1mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド10.1g(79.4mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で4時間攪拌した。10%炭酸カリウム水45mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸45mL、25%食塩水45mL、7.5%重曹水45mL、25%食塩水45mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(49)を6.42g(3.44mmol、収率91.0%)得た。
化合物(49);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=2.91(t、12H、J=6.6Hz)、3.79(t、12H、J=6.6Hz)、4.57(t、12H、J=12.9Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.3(12F)、−85.8(12F)、−66.0(12F)、−65.2(4F)。
【0210】
[実施例24] 化合物(50)の製造
【0211】
【化70】

【0212】
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド13.6g(79.4mmol)にかえたこと以外は、実施例23と同様に行い、化合物(50)を7.40g(3.47mmol、収率91.9%)得た。
化合物(50);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=3.10(t、12H、J=6.6Hz)、3.71(t、12H、J=6.6Hz)、4.56(t、12H、J=12.9Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.4(12F)、−85.8(12F)、−66.0(12F)、−65.2(4F)。
【0213】
[実施例25] 化合物(51)の製造
【0214】
【化71】

【0215】
(25−1)化合物(31)の製造
化合物(29)5.00g(23.6mmol)及びピリジン4.66g(58.9mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル50mL及びヘキサン50mLに溶解させた。重曹14.9g(177mmol)及び水25mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド18.0g(142mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水70mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸70mL、25%食塩水70mL、7.5%重曹水70mL、25%食塩水70mLで順次洗浄し、化合物(31)のヘキサンー酢酸エチル溶液を得た。
(25−2)化合物(51)の製造
化合物(31)のヘキサン−酢酸エチル溶液に、トリエチルアミン9.17g(90.6mmol)を加え、内温50〜55℃で4時間反応させた。放冷後、内温30℃以下で2規定塩酸50mLを添加し、分液した。有機層を25%食塩水50mL、7.5%重曹水50mL、25%食塩水50mLで順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(51)を7.08g(22.1mmol、収率93.6%)得た。HPLCより、得られた化合物(51)の純度は、96.3%であった。
化合物(51);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.58(t、4H、J=12.9Hz)、5.97(2H、dd、J=10.4、1.2Hz)、6.17(2H、dd、J=17.2、10.4Hz)、6.51(2H、dd、J=17.2、1.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−126.5(2F)、−120.5(4F)。
【0216】
[実施例26] 化合物(51)の製造
【0217】
【化72】

【0218】
(26−1)化合物(32)の製造
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド24.3g(142mmol)にかえたこと以外は上記(25−1)と同様に行い、化合物(32)のヘキサン−酢酸エチル溶液を得た。
(26−2)化合物(51)の製造
化合物(31)のヘキサン−酢酸エチル溶液を、上記(26−1)で得た化合物(32)のヘキサン−酢酸エチル溶液にかえたこと以外は、上記(25−2)と同様に行い、化合物(51)を6.92g(21.6mmol、収率91.5%)得た。HPLCより、得られた化合物(51)の純度は、96.2%であった。
【0219】
[比較例4]化合物(51)の製造
【0220】
【化73】

【0221】
化合物(29)5.00g(23.6mmol)、アセトニトリル50mL、ピリジン10.3g(130mmol)、及びN,N−ジメチルアミノピリジン57.7mg(0.472mmol)をガラス製反応容器にとり、アクリル酸クロリド10.7g(118mmol)を内温20℃以下で添加した。ピリジンとアクリル酸クロリドが反応した、ピリジンのアシル塩が析出したが、該塩を適宜砕きながら反応させた。内温20〜25℃で7時間攪拌後、氷冷し、ヘキサン50mL、酢酸エチル50mL、及び2規定塩酸75mLを添加し、分液した。有機層を25%食塩水50mL、10%炭酸カリウム水50mLで洗浄後、10%炭酸カリウム水35mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を7.5%重曹水50mL及び25%食塩水50mLで順次洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(51)を6.70g(20.9mmol、収率88.6%)得た。HPLCより、得られた化合物(51)の純度は、93.9%であった。
【0222】
[実施例27] 化合物(52)の製造
【0223】
【化74】

【0224】
(27−1)化合物(36)の製造
化合物(35)5.00g(7.44mmol)及びピリジン2.21g(27.9mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル25mL及びヘキサン25mLに溶解させた。重曹7.03g(83.7mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド8.50g(67.0mmol)を2時間かけて添加し、内温10℃以下で3時間攪拌した。10%炭酸カリウム水40mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸40mL、25%食塩水40mL、7.5%重曹水40mL、25%食塩水40mLで順次洗浄し、化合物(36)のヘキサン−酢酸エチル溶液を得た。
(27−2)化合物(52)の製造
化合物(36)のヘキサン−酢酸エチル溶液に、トリエチルアミン4.34g(42.9mmol)を加え、内温50〜55℃で4時間反応させた。放冷後、内温30℃以下で2規定塩酸20mLを添加し、分液した。有機層を25%食塩水20mL、7.5%重曹水20mL、25%食塩水20mLで順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(52)を5.72g(6.86mmol、収率92.2%)得た。HPLCより、得られた化合物(52)の純度は、96.1%であった。
化合物(52);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.58(t、6H、J=12.9Hz)、5.97(3H、dd、J=10.5、1.2Hz)、6.17(3H、dd、J=17.4、10.5Hz)、6.51(3H、dd、J=17.4、1.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.2(6F)、−86.3(6F)、−66.8(6F)、−63.3(3F)。
【0225】
[実施例28] 化合物(52)の製造
【0226】
【化75】

【0227】
(28−1)化合物(37)の製造
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド11.5g(67.0mmol)にかえたこと以外は、上記(27−1)と同様に行い、化合物(37)のヘキサン−酢酸エチル溶液を得た。
(28−2)化合物(52)の製造
化合物(36)のヘキサン−酢酸エチル溶液を、上記(28−1)で得た化合物(37)のヘキサン−酢酸エチル溶液にかえたこと以外は、上記(27−2)と同様に行い、化合物(52)を5.78g(6.93mmol、収率93.1%)得た。HPLCより、得られた化合物(52)の純度は、95.9%であった。
【0228】
[比較例5]化合物(52)の製造
【0229】
【化76】

【0230】
化合物(29)を、化合物(35)5.00g(7.44mmol)にかえ、比較例4と同様に行った。比較例4と同様に、ピリジンのアシル塩が析出したため、該アシル塩を適宜砕きながら反応させることにより、化合物(52)を5.64g(6.76mmol、収率90.9%)得た。HPLCより、得られた化合物(52)の純度は、90.7%であった。
【0231】
[実施例29] 化合物(53)の製造
【0232】
【化77】

【0233】
(29−1)化合物(46)の製造
化合物(45)5.00g(6.25mmol)及びピリジン2.97g(37.5mmol)をガラス製反応容器に取り、THF38mL、酢酸エチル23mL、及びヘキサン60mLに溶解させた。重曹7.87g(93.7mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド9.52g(75.0mmol)を1.5時間かけて添加し、内温10℃以下で3.5時間攪拌した。10%炭酸カリウム水30mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸30mL、25%食塩水30mL、7.5%重曹水30mL、25%食塩水30mLで順次洗浄し、化合物(46)のヘキサン−THF−酢酸エチル溶液を得た。
(29−2)化合物(53)の製造
化合物(46)のヘキサン−THF−酢酸エチル溶液に、トリエチルアミン4.86g(48.0mmol)を加え、内温50〜55℃で4時間反応させた。放冷後、内温30℃以下で2規定塩酸20mLを添加し、分液した。有機層を25%食塩水20mL、7.5%重曹水20mL、25%食塩水20mLで順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(53)を5.83g(5.73mmol、収率91.7%)得た。HPLCより、得られた化合物(53)の純度は、95.0%であった。
化合物(53);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.58(t、8H、J=12.9Hz)、5.97(4H、dd、J=10.5、1.2Hz)、6.17(4H、dd、J=17.1、10.5Hz)、6.51(4H、dd、J=17.1、1.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.2(8F)、−85.9(8F)、−66.1(8F)。
【0234】
[実施例30] 化合物(53)の製造
【0235】
【化78】

【0236】
(30−1)化合物(47)の製造
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド12.9g(75.0mmol)にかえたこと以外は、上記(29−1)と同様に行い、化合物(47)のヘキサン−THF−酢酸エチル溶液を得た。
(30−2)化合物(53)の製造
化合物(46)のヘキサン−THF−酢酸エチル溶液を、上記(30−1)で得た化合物(47)のヘキサン−THF−酢酸エチル溶液にかえたこと以外は、上記(29−2)と同様に行い、化合物(53)を5.84g(5.74mmol、収率91.9%)得た。HPLCより、得られた化合物(53)の純度は、94.7%であった。
【0237】
[比較例6]化合物(53)の製造
【0238】
【化79】

【0239】
化合物(29)を、化合物(45)5.00g(6.25mmol)にかえ、比較例4と同様に行った。比較例4と同様に、ピリジンのアシル塩が析出したため、該アシル塩を適宜砕きながら反応させることにより、化合物(53)を5.67g(5.58mmol、収率89.3%)得た。HPLCより、得られた化合物(53)の純度は、87.3%であった。
【0240】
[実施例31] 化合物(54)の製造
【0241】
【化80】

【0242】
(31−1)化合物(49)の製造
化合物(48)5.00g(3.78mmol)及びピリジン2.24g(28.4mmol)をガラス製反応容器に取り、酢酸エチル30mL及びヘキサン30mLに溶解させた。重曹7.15g(85.1mmol)及び水10mLを加え、内温10℃以下に冷却した。3−クロロプロピオニルクロリド8.64g(68.0mmol)を1.5時間かけて添加し、内温10℃以下で4時間攪拌した。10%炭酸カリウム水45mLを加え、室温で1時間攪拌後、分液した。有機層を、2規定塩酸45mL、25%食塩水45mL、7.5%重曹水45mL、25%食塩水45mLで順次洗浄し、化合物(49)のヘキサン−酢酸エチル溶液を得た。
(31−2)化合物(54)の製造
化合物(49)のヘキサン−酢酸エチル溶液に、トリエチルアミン4.41g(43.5mmol)を加え、内温50〜55℃で4時間反応させた。放冷後、内温30℃以下で2規定塩酸20mLを添加し、分液した。有機層を25%食塩水20mL、7.5%重曹水20mL、25%食塩水20mLで順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧留去することにより、化合物(54)を5.60g(3.40mmol、収率89.9%)得た。HPLCより、得られた化合物(54)の純度は、93.9%であった。
化合物(54);H−NMR[CDCl]:δ[ppm]=4.57(t、12H、J=12.9Hz)、5.96(6H、dd、J=10.2、1.2Hz)、6.16(6H、dd、J=17.3、10.2Hz)、6.50(6H、dd、J=17.3、1.2Hz)。19F−NMR[CDCl]:δ[ppm]−123.2(12F)、−85.8(12F)、−66.0(12F)、−65.2(4F)。
【0243】
[実施例32] 化合物(54)の製造
【0244】
【化81】

【0245】
(32−1)化合物(50)の製造
3−クロロプロピオニルクロリドを3−ブロモプロピオニルクロリド11.7g(68.3mmol)にかえたこと以外は、上記(31−1)と同様に行い、化合物(50)のヘキサン−酢酸エチル溶液を得た。
(32−2)化合物(54)の製造
化合物(49)のヘキサン−酢酸エチル溶液を、上記(32−1)にて得た化合物(50)のヘキサン−酢酸エチル溶液にかえ、上記(31−2)と同様に行い、化合物(54)を5.53g(3.36mmol、収率89.0%)得た。HPLCより、得られた化合物(54)の純度は、93.6%であった。
【0246】
[比較例7]化合物(54)の製造
【0247】
【化82】

【0248】
化合物(29)を、化合物(48)5.00g(3.78mmol)にかえ、比較例4と同様に行った。比較例4と同様に、ピリジンのアシル塩が析出したため、該アシル塩を適宜砕きながら反応させることにより、化合物(54)を5.24g(3.18mmol、収率84.2%)得た。HPLCより、得られた化合物(54)の純度は、82.9%であった。
【0249】
[実施例33]
(硬化性組成物の調製)
下記表1に示す製造方法によって得た、多官能含フッ素不飽和エステル化合物(51)、(52)、(53)、及び(54)をメチルエチルケトンに溶解させ40質量%の溶液を調製した。各溶液に、光重合開始剤[イルガキュア907(商品名:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)]を多官能含フッ素不飽和エステル化合物に対して、5質量%加え、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過して、硬化性組成物を調製した。
【0250】
(硬化膜の作製)
各硬化性組成物を、バーコーターを用いてガラス基板上に塗布し、90℃で乾燥させた。窒素雰囲気下、紫外線を照射し、120℃で10分間加熱後、室温まで放冷して、硬化膜を形成させた。
【0251】
(硬化膜の評価)
前記のように作製した硬化膜について、鉛筆硬度を評価した。
【0252】
【表1】

【0253】
(鉛筆硬度の評価方法)
硬化膜を温度25℃、湿度60RH%で2時間放置後、JIS K 5600−5−4に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0254】
以上の結果から明らかなように、一般式(6)で表される多官能含フッ素アルコール化合物と一般式(19)で表される酸ハロゲン化物を反応させることによって得られる、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物より、本発明の<工程1>及び<工程2>を経由することによって得られる、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物ほうが純度が高い。更に本発明の製造方法によって得られた、含フッ素多官能不飽和エステル化合物の硬化膜は、鉛筆硬度に優れる。したがって、一般式(7)で表される化合物は、一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物の前駆体として極めて有用であり、該化合物を経由して得られる多官能含フッ素不飽和エステル化合物は、コーティング剤、撥水撥油剤、防汚剤、塗料、フォトレジスト、表面改質剤、低屈折含フッ素樹脂等に好適に用いることができ、反射防止膜用素材として特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、オクタノール−水分配係数(logP値)が0.6から9.0の下記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物を、水、有機溶媒、及び有機塩基化合物の存在下、反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物の製造方法。
【化1】

{一般式(1)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(2)及び一般式(3)中、Rは、1価の置換基を示す。一般式(2)中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(3)中、R1’は一般式(1)におけるRと同じ基、又は一般式(1)のRと一般式(2)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示す。一般式(3)中、nは1〜6の整数を示す。}
【請求項2】
前記一般式(2)で表される酸ハロゲン化物が、下記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物であり、前記一般式(3)で表される含フッ素エステル化合物が、下記一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【化2】

{一般式(4)中、Xは前記一般式(2)におけるXと同義である。一般式(5)中、R1’は、前記一般式(1)におけるRと同じ基、又は前記一般式(1)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するn価の置換基を示し、nは1〜6の整数を示す。一般式(4)及び一般式(5)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。一般式(4)及び一般式(5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。}
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物であり、前記一般式(5)で表される含フッ素エステル化合物が、下記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物である、請求項2に記載の製造方法。
【化3】

{一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(7)中、R、R、R及びXは、前記一般式(4)におけるR、R、R及びXと同義である。一般式(7)中、R6’は、一般式(6)におけるRと同じ基、又は一般式(6)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。}
【請求項4】
前記一般式(4)及び(5)、又は(7)におけるXが、塩素原子である請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物、又は前記一般式(6)で表される化合物が、水酸基が結合した炭素原子(a)に隣接する炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
水の量が、前記一般式(1)で表される化合物又は前記一般式(6)で表される化合物1gあたり、0.1g〜20gである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
水と有機溶媒の容積比(水:有機溶媒)が2:1〜1:20である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機塩基化合物が有機アミン化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記有機アミン化合物が含窒素複素環式化合物である請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記含窒素複素環式化合物がピリジン化合物あるいはイミダゾール化合物である請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
無機塩基存在下、反応させることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
下記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物。
【化4】

{一般式(7)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。R6’は、酸素原子が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。}
【請求項13】
請求項3〜11のいずれかに記載の方法によって製造された請求項12に記載の一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物。
【請求項14】
前記一般式(7)におけるXが、塩素原子である請求項12又は13に記載の多官能含フッ素エステル化合物。
【請求項15】
前記一般式(7)におけるR6’が、酸素原子が結合した炭素原子(a)に隣接する炭素原子に少なくとも1つのフッ素原子を有する、請求項12〜14のいずれかに記載の多官能含フッ素エステル化合物。
【請求項16】
少なくとも、下記<工程1>及び<工程2>を経由することを特徴とする下記一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物の製造方法。
<工程1>前記一般式(6)で表される化合物と、前記一般式(4)で表される酸ハロゲン化物を用い、請求項3〜11のいずれかに記載の製造方法に従って、前記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を得る工程。
<工程2>前記一般式(7)で表される多官能含フッ素エステル化合物を脱ハロゲン化水素させ、下記一般式(8)で表される多官能含フッ素不飽和エステル化合物を得る工程。
【化5】

{一般式(4)中、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(4)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1価、2価、若しくは3価の置換基を示し、R、R、及びRのうち、2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。一般式(4)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。一般式(6)中、Rは、水酸基が結合した炭素原子(a)、該炭素原子(a)とは別の炭素原子(b)、及び該炭素原子(b)に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。ただし、該炭素原子(a)にはフッ素原子は結合していない。一般式(7)中、R、R、R及びXは、一般式(4)におけるR、R、R及びXと同義である。一般式(7)中、R6’は一般式(6)におけるRと同じ基、又は一般式(6)のRと一般式(4)で表される酸ハロゲン化物が反応することにより生成するm価の置換基を示し、mは2〜6の整数を示す。一般式(8)中、R6’は、一般式(7)におけるR6’と同義であり、mは2〜6の整数を示す。一般式(8)中、R、R、及びRは、一般式(4)におけるR、R、及びRと同義である。}

【公開番号】特開2011−157292(P2011−157292A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19666(P2010−19666)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】