説明

含フッ素グラフト重合体および防汚剤

【課題】吸水性に優れており、かつ防汚性に優れている汚れ脱離剤を提供する。
【解決手段】 (a)フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、(b)親水性単量体、および(c)ブンテ塩単量体を含んでなる含フッ素グラフト重合体に関する。含フッ素グラフト重合体における幹ポリマーがブンテ塩単量体を含んでなり、含フッ素グラフト重合体がブンテ塩単量体から誘導される−S−結合を有する。必要により、含フッ素グラフト重合体は、(d)他の単量体を含有していてもよい。含フッ素グラフト重合体は、汚れ脱離剤の活性成分として働く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素グラフト重合体、および該含フッ素グラフト重合体を含んでなるSR剤(防汚剤または汚れ脱離剤)に関する。本発明の防汚剤は、吸水性に優れており、かつ防汚性に優れている。
【背景技術】
【0002】
繊維織物等に撥水撥油性を付与し、かつ繊維に付着した汚れを洗濯などにより除去しやすくする防汚加工剤として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、フッ素含有化合物ともいう。)と親水性基含有化合物との共重合体が知られている(特開昭53−134786号、同59−204980号公報、同62−7782号公報参照)。これらの防汚加工剤は洗濯で汚れが落ちやすい特長を有し、例えば、作業着やユニホーム用途で使用されてきた。近年、防汚加工剤はその応用範囲が拡大する傾向にあり、例えば、ポロシャツ、Tシャツ等への加工も検討されている。
しかしながら、従来の防汚加工剤の大きな欠点は、吸水性が不十分であり、例えば、汗をかいても繊維が汗を吸わないため、汗をかく環境においての着用は不快きわまりなく、この用途への展開は限定的なものに留まっていた。
【0003】
一般的に、十分な汚れ脱離性を得るには、撥油性とflip-flop性が重要とされ、空気中ではパーフルオロアルキル基(以下、Rf基と略す)が表面に配向し、高い撥油性を示しながら、水中ではこれとは逆に、Rf基が後退し、親水性基が表面に配向して、汚れが落ちやすくなるとされている。Flip-flop性とは、空気中と水中で環境に応じて表面分子構造が変化する性質であり、Shermanらによって提唱されている。[P.Sherman, S.Smith, B,Johannessen, Textile Research Journal,39,499(1969)]
Rf基は鎖長が短いとRfの結晶性の低下とともに撥油性も低下する傾向にあり、油汚れで被処理物品が汚染しやすくなる。このため、Rf基の炭素数は実質的に8以上のものが使用されてきた。(特開昭53−134786号公報、特開2000−290640号公報参照)
【0004】
さらに、最近になってテロメリゼーションによって得られる炭素数8のRf基を含有する化合物については、
Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-7303-8])(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)や
EPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003
EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf) や
EPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)が、テロマーが分解または代謝により perfluorooctanoic acid(以下、「PFOA」と略す)を生成する可能性があると公表している。
EPA(米国環境保護庁)は、PFOAに対して科学的調査を強化することを発表している。(EPAレポート"PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf) 参照)。
【0005】
WO 2003/095083は、イソシアネート基含有ビニルモノマーを使用する含フッ素グラフトポリマーを記載している。この含フッ素グラフトポリマーが防汚性を付与することが記載されているが、得られる防汚性および/または吸水性は充分ではない。
【特許文献1】特開昭53−134786号
【特許文献2】特開昭59−204980号公報
【特許文献3】特開昭62−7782号公報参照
【特許文献4】特開昭53−134786号公報
【特許文献5】特開2000−290640号公報
【特許文献6】WO 2003/095083公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、繊維織物等に対して、優れた吸水性、撥油性、防汚性、汚れ脱離性を付与する汚れ脱離剤を提供すること、更にはRf基の炭素数が8未満と従来に比較して短くても、同様に優れた汚れ脱離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、
(b)親水性基がオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜6)である親水性単量体、および
(c)ブンテ塩単量体
を含んでなり、
含フッ素グラフト重合体における幹ポリマーがブンテ塩単量体を含んでなり、
含フッ素グラフト重合体がブンテ塩単量体から誘導される−S−結合を有する含フッ素グラフト重合体に関する。必要により、含フッ素グラフト重合体は、(d)単量体(a)〜(c)以外の他の単量体を含有していてもよい。単量体(b)、(c)、(d)は、一般に、フッ素原子を含有しない。
【0008】
含フッ素グラフト重合体において、幹ポリマーが、ブンテ塩単量体(c)を含み、幹ポリマーおよび枝ポリマーが含フッ素単量体(a)および親水性単量体(b)の少なくとも一方を含有してなる。
本発明の含フッ素グラフト重合体(以下、「含フッ素重合体」と呼ぶことがある。)は、一般に、つぎのような重合体である:
(1)親水性単量体(b)およびブンテ塩単量体(c)を含んでなる幹ポリマー、ならびに含フッ素単量体(a)を含んでなる枝ポリマーを有するグラフト重合体、または
(2)含フッ素単量体(a)およびブンテ塩単量体(c)を含んでなる幹ポリマー、ならびに親水性単量体(b)を含んでなる枝ポリマーを有するグラフト重合体。
本発明の含フッ素重合体は、
(A)含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位、
(B)親水性単量体(b)から誘導された繰り返し単位、及び
(C)ブンテ塩単量体(c)から誘導された繰り返し単位を有する。
含フッ素重合体は、(D)単量体(a)〜(c)以外の他の単量体(d)から誘導された繰り返し単位を有していてもよい。他の単量体(d)は、前記単量体(a)、(b)、(c)と共重合可能な不飽和二重結合を有する、単量体(a)、(b)、(c)以外の単量体である。他の単量体(d)は、含フッ素重合体における幹ポリマーまたは枝ポリマーのいずれに存在してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防汚剤は、吸水性に優れており、かつ防汚性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
繰り返し単位(A)は含フッ素単量体(a)から誘導される。
含フッ素単量体(a)は、含フッ素(メタ)アクリレートエステルであることが好ましい。
【0011】
含フッ素単量体(a)は、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体であることが好ましい。
【0012】
含フッ素単量体(a)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(1)において、Xが、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0013】
Z基の好ましい例は、炭素数1〜10のアルキレン基、すなわち、-(CH2)n- (nは、1〜10、好ましくは1〜4)である。
【0014】
上記式(1)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜10、例えば1〜8、特に1〜6、特別には4または6であってよい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)7CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF3等である。
【0015】
含フッ素単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0016】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0017】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0018】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0019】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0020】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0021】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキル基である。]
単量体(a)は、2種類以上の混合物であってもよい。
含フッ素単量体(a)の量は、含フッ素グラフト重合体に対して、5〜95重量%、例えば20〜80重量%であってよい。
【0022】
繰り返し単位(B)は、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜6)である親水性基を有する親水性単量体(b)から誘導される。
親水性単量体(b)は、フッ素原子を含まないことが好ましい。親水性単量体(b)は、ブンテ塩を有しない単量体である。
親水性単量体(b)は、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜6)である親水性基および炭素-炭素二重結合を有する単量体であってもよい。
オキシアルキレン基である親水性基は、ノニオン性である。親水性単量体(b)におけるオキシアルキレン基の数は、2〜200、例えば3〜50であってよい。
親水性単量体(b)は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートであってよい。
親水性単量体(b)の分子量は、100以上、例えば150以上、特に200以上、特に250〜3000であってよい。
ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、一般式(2):
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−X2 (2)
[式中、
1は、水素原子またはメチル基、
2は、水素原子または炭素数1〜22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、炭素数2〜6のアルキレン基、
nは、2〜90の整数、
である。]
で示されるものであることが好ましい。nは、特に3〜30、例えば4〜20であってよい。
一般式(2)中のRは特にエチレン基であることが好ましい。
一般式(2)中のRは2種類以上のアルキレン基の組み合わせであっても良い。その場合、少なくともRのひとつはエチレン基であることが好ましい。Rの組合せとしては、エチレン基/プロピレン基の組合せ、エチレン基/ブチレン基の組合せが挙げられる。
親水性単量体(b)は2種類以上の混合物であっても良い。その場合は少なくとも親水性単量体(b)のひとつは一般式(2)中のRがエチレン基であることが好ましい。
【0023】
親水性単量体(b)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CX1COO-(CH2CH2O)n-H
CH2=CX1-(CH2CH2O)n-CH3
CH2=CX1COO-(CH2CH(CH3)O)n-H
CH2=CX1COO-(CH2CH(CH3)O)n-CH3
CH2=CX1COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=CX1COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=CX1COO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=CX1COO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=CX1COO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
親水性単量体(b)の量は、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部、例えば25〜65重量部であってよい。
【0024】
繰り返し単位(C)はブンテ塩単量体(c)から誘導される。
ブンテ塩単量体(c)(S-Sulfate単量体)は、式:
H2C=CX-A-S-SO3-Z
[式中、Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX1X2基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、あるいは置換または非置換のフェニル基、
Aは、−Ph−Y−または−COO−Y−(但し、Phは、置換基を有していても良いフェニレン基、Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜18の芳香族基、環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Zは水素または金属原子である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0025】
ブンテ塩単量体(c)において、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX1X2基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。すなわち、Xは、水素原子、メチル基でないことがある。
ビニル基とA基はフェニレン基においてp−位、o−位またはm−位に結合している。p−フェニレンが好ましい。
【0026】
Y基の好ましい例は、-(CH2)n- (nは、1〜10、好ましくは1〜4)である。
Zは、水素原子または金属原子である。金属原子は、一価の金属原子、特にアルカリ金属であることが好ましい。金属原子の例は、ナトリウム、リチウム、カリウムである。Zは、S-Sulfate単量体およびその重合体において、一般に、陽イオンとなっている。
【0027】
ブンテ塩単量体(c)の代表的な具体例は、次のとおりである。
H2C=CH-Ph-CH2-S-SO3-Na
H2C=C(CH3)-Ph-CH2-S-SO3-Na
H2C=C(Cl)-Ph-CH2-S-SO3-Na
H2C=CF-Ph-CH2-S-SO3-Na
[式中、Phはp-,o-またはm-フェニレン基、特にp-フェニレン基である。]
H2C=CH-COO-CH2-S-SO3-Na
H2C=CH-COO-CH2CH2-S-SO3-Na
H2C=C(CH3)-COO-CH2CH2-S-SO3-Na
H2C=C(Cl)-COO-CH2CH2-S-SO3-Na
H2C=CF-COO-CH2CH2-S-SO3-Na
【0028】
ブンテ塩単量体(c)の量は、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、例えば0.5〜2.5重量部であってよい。
【0029】
ブンテ塩単量体(c)は、例えば、次のようにして製造することができる。
水中または水・有機溶剤混合溶液中でアルキルハロゲン化物とチオ硫酸ナトリウム五水和物を入れ、10℃〜100℃の範囲で1〜100時間、攪拌して反応させる方法が採用される。アルキルハロゲン化物としては塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物が用いられる。アルキルハロゲン化物の具体例は、p−クロロメチルスチレン、2−ブロモエチルメタクリレートなどである。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類など水溶性の有機溶剤が用いられる。アルキルハロゲン化物1モルに対して、チオ硫酸ナトリウム五水和物は1モル以上、例えば、1.0〜1.5モルの量を使用することができる。アクリル基など重合性基を有するアルキルハロゲン化物を用いる場合は、反応溶液中に重合禁止剤を添加することが望ましい。重合禁止剤としては、例えば、t-ブチルカテコール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等が用いられる。重合禁止剤はアルキルハロゲン化物に対して例えば、1〜1000ppmが添加される。
【0030】
繰り返し単位(D)は、他の単量体(d)から誘導される。他の単量体(d)は、単量体(a)〜(c)以外の単量体である。他の単量体は、一般に、フッ素原子を含まない。
他の単量体は、非架橋性単量体または架橋性単量体であってよい。
非架橋性単量体は、フッ素を含有せず、炭素-炭素二重結合を有する単量体であることが好ましい。非架橋性単量体は、フッ素を含有しないビニル性単量体であることが好ましい。非架橋性単量体は、一般に、1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物である。
【0031】
非架橋性単量体としては、ブタジエン、クロロプレン、マレイン酸誘導体、塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル、エチレン、塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、などが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0032】
非架橋性単量体は、アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルであってよい。アルキル基の炭素数は、1〜30、例えば、6〜30、例示すれば、10〜30であってよい。例えば、非架橋性単量体は一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは水素原子またはメチル基、AはC2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。]
で示されるアクリレート類であってよい。
【0033】
フッ素系重合体は、架橋性単量体を含んでもよい。架橋性単量体は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。架橋性単量体は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックドイソシアネート、アミノ基、カルボキシル基、などである。
架橋性単量体の例としては、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
架橋性単量体の他の例としては、グリセロール(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートのようなイソシアネート基含有(メタ)アクリレートまたはメチルエチルケトオキシム等のブロック化剤でイソシアネート基がブロックされたそれらの(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0034】
他の単量体(d)は、イオン性基(すなわち、カチオン性基またはアニオン性基)および炭素-炭素二重結合を有する単量体であってもよい。他の単量体(d)は、カチオン供与基であるイオン性基を有するカチオン性単量体であることが好ましい。
【0035】
カチオン供与基の例は、三級アミノ基および四級アミノ基である。
三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じまたは異なって、炭素数1〜5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6〜20の芳香族基(アリール基)または炭素数7〜25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C6H5-CH2-))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じまたは異なって、炭素数1〜5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6〜20の芳香族基(アリール基)または炭素数7〜25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C6H5-CH2-))であることが好ましい。三級アミノ基および四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。
他の単量体(d)としてはカチオン供与基および炭素―炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0036】
カチオン供与基を有する単量体の具体例としては以下の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH3)2 及びその塩
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 及びその塩
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH3)2 及びその塩
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 及びその塩
CH2=CHC(O)N(H)-CH2CH2CH2-N(CH3)2 及びその塩
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(-CH3)(-CH2-C6H5) 及びその塩
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(-CH2CH3)(-CH2-C6H5)及びその塩
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(-CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(-CH2CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Br-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3I-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3O-SO3CH3
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)(-CH2-C6H5)2Br-
【0037】
塩は、酸(有機酸または無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1〜20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸)が好ましい。
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びそれらの塩が好ましい。
【0038】
他の単量体(d)(特に、非架橋性単量体、架橋性単量体またはカチオン性単量体)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、風合いなどの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0039】
他の単量体(d)の量は、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、150重量部以下、好ましくは1〜100重量部、特に2〜30重量部であってよい。非架橋性単量体の量は、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、30重量部以下、好ましくは1〜20重量部であってよい。架橋性単量体の量は、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、30重量部以下、好ましくは1〜20重量部であってよい。イオン性基含有単量体の量は、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、30重量部以下、好ましくは1〜20重量部であってよい。
【0040】
本発明の含フッ素重合体の重量平均分子量は、1000〜1000000、好ましくは5000〜500000であってよい。1000〜1000000であることにより、耐久性を維持しながら高い汚れ脱離性が得られ、取り扱いが容易であるように重合体液の粘度が低い。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
幹ポリマーの重量平均分子量は800〜800000、好ましくは4000〜600000であってよい。
【0041】
含フッ素重合体は、例えば、幹ポリマーを製造した後に枝ポリマーを製造する方法によって製造できる。
幹ポリマーは、親水性単量体(b)およびブンテ塩単量体(c)を含んでなり、必要により、含フッ素単量体(a)および/または他の単量体(d)を含んでなることが好ましい。枝ポリマーは、含フッ素単量体(a)を含んでなり、必要により、親水性単量体(b)および/または他の単量体(d)を含んでなることが好ましい。
この場合に、枝ポリマーにおける含フッ素単量体(a)100重量部に対して、
(i)幹ポリマーにおける親水性単量体(b)の量は、10〜300重量部、例えば20〜200重量部、特に30〜100重量部であり、幹ポリマーにおけるブンテ塩単量体(c)の量は、0.1〜10重量部、例えば0.2〜5重量部、特に0.5〜2.5重量部であり、幹ポリマーにおける含フッ素単量体(a)の量は、50重量部以下、例えば0.1〜30重量部、特に0.5〜10重量部であり、幹ポリマーにおける他の単量体(d)の量は、150重量部以下、例えば0.5〜100重量部、特に1〜50重量部であり、
(ii)枝ポリマーにおける親水性単量体(b)の量は、50重量部以下、例えば0.1〜30重量部、特に0.5〜20重量部であり、枝ポリマーにおける他の単量体(d)の量は、150重量部以下、例えば0.1〜30重量部、特に0.5〜20重量部であることが好ましい。
【0042】
含フッ素重合体の製造は、例えば、以下のような工程からなる:
(1)幹用単量体(例えば、親水性単量体とブンテ塩単量体)を重合してベースポリマー(幹ポリマー)を製造する。
(2)ベースポリマーを酸で処理して、-S-SO3Na基を-SH基に変換する。
(3)(一般に、通常のラジカル重合条件下で)枝用単量体(例えば、含フッ素単量体)を連鎖移動重合させ、グラフト重合体を調製する。
枝用単量体を重合して枝ポリマーを製造した後に、枝ポリマーを幹ポリマーに結合させてもよい。
【0043】
含フッ素重合体の製造は、以下のような反応スキームで示すことができる。この反応スキームにおいては、幹ポリマーを形成した後に、枝ポリマーを形成することによって含フッ素重合体を得ている。
【0044】
幹ポリマーの製造:

【0045】
グラフト重合体の製造:

[式中、HPは親水性基を表す。]
【0046】
幹ポリマーおよび枝ポリマーの重合は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できる。例えば一般的には有機溶剤を用いた溶液重合や、水または有機溶剤と水を併用する乳化重合が選定される。重合後に水で希釈したり、乳化剤を加えて水に乳化することで処理液に調製される。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
乳化重合や重合後、乳化剤を加えて水に乳化する場合の乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の一般的な各種乳化剤が使用できる。
【0047】
重合開始剤として、例えば過酸化物、アゾ化合物または過硫酸系の化合物を使用し得る。重合開始剤は、一般に、水溶性および/または油溶性である。
油溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2、4−ジメチル4−メトキシバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ−第三級−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t−ブチル等が好ましく挙げられる。
【0048】
また、水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく挙げられる。
重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で用いられる。
また、分子量調節を目的として、連鎖移動剤、例えば、メルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2−メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、アルキルメルカプタンなどが挙げられる。メルカプト基含有化合物は単量体100重量部に対して、5重量部以下、0.01〜3重量部の範囲で用いられる。
【0049】
(A)幹ポリマーおよび枝ポリマーの重合
具体的には、幹ポリマーおよび枝ポリマーは、以下のようにして製造できる。
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、例えば50〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤は、一般に、油溶性重合開始剤であってよい。有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0050】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、例えば50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、水溶性重合性開始剤および/または油溶性重合開始剤であってよい。
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、水溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。乳化剤としては、カチオン性、アニオン性およびノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲で用いられる。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0051】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜80重量部、例えば5〜50重量部の範囲で用いてよい。
【0052】
(B)ブンテ塩からの-SH基の形成
ベースポリマーを酸で処理して、ブンテ塩モノマーから誘導された繰り返し単位における-S-SO3Na基を-SH基に変換する。
酸の例は、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などである。酸の量は、ブンテ塩モノマーに対して3〜40当量であることが好ましい。処理反応において、反応温度は40〜160℃、反応時間は0.5〜15時間であることが好ましい。
【0053】
得られた含フッ素重合体は、必要により水や有機溶剤等に希釈または分散された後、乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなどの任意の形態に調製でき、汚れ脱離剤とすることが可能である。含フッ素重合体は、汚れ脱離剤の有効成分(活性成分)として機能する。汚れ脱離剤は、含フッ素重合体および媒体(特に、液状媒体)(例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。汚れ脱離剤において、含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.01〜50重量%であってよい。
本発明の汚れ脱離剤は、含フッ素重合体および水性媒体を含んでなることが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100重量部に対して、80重量部以下、例えば0.1〜50重量部、特に5〜30重量部である。)をも含有する媒体を意味する。
【0054】
本発明の含フッ素重合体は、被処理物品の種類や前記調製形態(乳濁液、有機溶剤溶液、エアゾールなど)などに応じて、任意の方法で汚れ脱離剤として被処理物品に適応され得る。例えば、水性乳濁液や有機溶剤溶液である場合には、浸漬塗布、スプレー塗布等のような被覆加工の既知の方法により、被処理物の表面に付着させ乾燥する方法が採用され得る。この際、必要ならばキュアリング等の熱処理を行っても良い。
また、必要ならば、他のブレンダーを併用することも可能である。例えば、撥水撥油剤、防シワ剤、防縮剤、難燃剤、架橋剤、帯電防止剤、柔軟剤、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ワックスエマルション、抗菌剤、顔料、塗料などである。これらのブレンダーは被処理物、処理時に処理浴に添加して使用しても良いし、あらかじめ、可能なら、本発明の含フッ素重合体と混合して使用しても良い。
【0055】
被処理物品としては、特に限定されないが繊維製品の他、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。特に繊維製品に対して有用である。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
【0056】
本発明においては、被処理物品を汚れ脱離剤で処理する。「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0057】
次に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
以下において、部または%は、特記しない限り、重量部または重量%を表す。
【0058】
合成例1
2-ブロモエチルメタクリレートの合成:
500mlのベンゼンを入れたナスフラスコに2-ブロモエタノール 46.7g(0.37mol)、トリエチルアミン29.1g(0.29mol)を加えゴム栓で蓋をした。氷水中にてスターラーで撹拌しながら、シリンジを用いてメタクリロイルクロライド 30g(0.29mol)を加えた。しばらく撹拌を続けた後、室温に戻し一晩撹拌した。吸引濾過でトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、水 300mlで3回洗浄し未反応物を抽出した。
500mlの三角フラスコに移し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで減圧濃縮し、減圧蒸留にて精製を行い無色透明の液体33.8g(収率61%)を得た。
生成物の同定はIRスペクトルより行った。
【0059】
合成例2
MMASモノマーの合成:
水60 mlと2-プロパノール 40 mlを入れた300mlのナスフラスコにチオ硫酸ナトリウム7.0g(24.2mmol)、ヒドロキノン 0.01g(0.09mmol)を加え、撹拌溶解させた。
そこに合成例1で合成した2-ブロモエチルメタクリレート 4.0g(20.7mmol) を加え室温で48時間撹拌した。そして、エバポレーターで減圧濃縮後、エタノール27.0mlとメタノール 14.0ml を加えて不要な塩を再結晶させ、再びエバポレーターで減圧濃縮を行った。
2-プロパノールを60ml加え、−4℃で一晩静置し、再結晶させた。得られた結晶を吸引濾過し、デシケーター中で真空乾燥し、白色結晶を得た3.13g(収率61%)。生成物は、H2C=C(CH3)-COO-CH2CH2-S-SO3-Na(MMASモノマー)であった。
生成物の同定は融点、Rf値、IRスペクトル、1H-NMR、13C-NMRスペクトルより行った。
【0060】
実施例1
フルオロアクリレートグラフトポリマーの製造:
200ml4つ口フラスコに、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)10g、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)1.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)1.0g、MMASモノマー0.28g とイソプロピルアルコール 60gを仕込んで30分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル 0.1gを添加し、8時間反応させ、幹ポリマー(重量平均分子量:13000)を得た。
得られた重合液そのままをガスクロマトグラフィー(GC)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、モノマー由来のピークがほぼ消失し、共重合体由来のピーク(GPC)が発生していることを確認した。
引き続き、内温を75−80℃に保ち、この重合体溶液に2N−HCl溶液を10g加えて2時間攪拌した。更に、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA)を28g、アゾビスイソブチロニトリル 0.05gを加えて、8時間、2段目の連鎖移動重合を行った。GCで13FAのピークの消失を確認した後、重合反応を終了した。グラフト重合体(重量平均分子量:29000)を分散した乳白色の分散液が得られた。グラフト重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
これに更に水を加えて20%の重合体分散液を調製した。
【0061】
実施例2〜8
表1に示す、モノマー組成、重量%で実施例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体分散液を得た。重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
なお、枝ポリマーの製造においては、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA)のみを使用した。
【0062】
【表1】

【0063】
表の略号
13FA:2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート
AE-400:ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)、日本油脂株式会社製
M-230G:メトキシポリオキシエチレンメタクリレート(POE平均鎖長23モル、新中村化学株式会社製
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
AAEM:アセトアセトキシエチルメタクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
MMAS:H2C=C(CH3)-COO-CH2CH2-S-SO3-Na
【0064】
比較例1
200ml4つ口フラスコに、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(13FA)28g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO 10mol)(AE-400)10g、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)1.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)1.0gとイソプロピルアルコール 60gを仕込んで30分間窒素フローした。内温を75−80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル 0.1gを添加し、8時間反応させた。得られた重合液そのままをガスクロマトグラフィー(GC)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したところ、モノマー由来のピークがほぼ消失し、共重合体由来のピーク(GPC)が発生していることを確認した。重合後、DMAEAと当量の酢酸0.42gを加えて中和し、水で希釈して20%の重合体溶液を得た。重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
【0065】
比較例2〜4
表2に示す、モノマー組成、重量%で比較例1と同様の手順を繰り返すことで、共重合体溶液を得た。重合体の組成は、仕込みモノマー組成にほぼ一致した。
【0066】
【表2】

【0067】
<吸水試験 液滴法>
マイクロピペットを用いて、飲料水(20±2℃)10μLを試験布上に静かにのせる。試験布に水滴をのせてから、水滴が試験布に滲み込み、水滴が消失するまでの時間(単位:秒)を測定する。ここで水滴が消失するとは、水の鏡面反射が消え、湿潤だけが残る状態をさす。5箇所を測定し、平均の吸水時間を測定値とする。
【0068】
<吸水試験 Wicking Test>
試験布を長さ16cm、幅2.5cmの短冊状に切断する。
これを純水200ぐぉ入れた200mlビーカーに試験布の先端が5〜10mm、水に浸かるようにセットする。30分後に、毛細管現象で布をつたって上昇してくる水の水面からの高さを読み取る。
【0069】
<撥油試験>
撥油性の試験は、繊維製品を用いてAATCC―TM118−2000に準じて行った。即ち、試験布を水平に広げ、表3に示す試験溶液を数滴落し、30秒後の浸透状態で判定する。撥油性が低い場合は、空気中で油汚れが被処理物品に進入して除去困難となる為、汚れ脱離性(SR性)の試験と並び重要な評価指標となる。
【0070】
【表3】

【0071】
<汚れ脱離試験(SR試験)>
汚れ脱離試験は米国のAATCC Stain Release Management Performance Test Methodに準じて行った。試験用の汚れにはコーンオイルまたはミネラルオイルを使用した。
水平に敷いたブロッティングペーパーの上に20cm四方の試験布を広げ、汚れとしてコーンオイル(またはミネラルオイル)を5滴(約0.2cc)を試験布に垂らす。その上からグラッシンペーパーをかけて、さらに2268gの分銅をのせ、60秒、放置する。60秒後に分銅とグラッシングペーパーを取り除き、そのまま、室温で15分、放置する。15分経過後、試験布にバラスト布を加えて1.8kgとし、洗剤(AATCC標準のWOB洗剤)100gを使用して、AATCC標準洗濯機(米国ケンモア社製)で浴量64リットル、浴温38℃の条件で12分間洗濯し、濯いだ後、AATCC標準タンブラー乾燥機(米国ケンモア社製)で試験布を乾燥する。乾燥した試験布の残存シミ汚れの状態を判定用標準写真板と比較し、汚れ脱離性能を該当する判定級(表4参照)をもって表す。判定用標準写真板は、AATCC―TM130−2000(American Association of Textile Chemists and Colorists Test Method 130-2000)のものを使用した。
【0072】
【表4】

【0073】
試験例1
加工処理液の調製:
実施例1で得られた含フッ素共重合体の20%水分散液 11.0部
NICCA Assist V2(MDI系ブロックドイソシアネート、日華化学) 0.25部
NICCA Sunmarina S-750(ポリエチレンワックス水分散体、日華化学) 1.70部
ベッカミンNS-19 (グリオキザールレジン、大日本インキ化学) 8.0部
ベッカミンX-80 (グリオキザールレジン用触媒、大日本インキ化学) 2.4部
水道水 76.65部
【0074】
上記の割合で実施例1で得られた含フッ素共重合体溶液とブロックドイソシアネート等の薬剤を水で希釈し、加工処理液を調製した。このようにして得られた処理液に、100%綿ツイル布を浸漬し、ロールで絞ってウエットピックアップが60mass%となるようにした。次いで、布を160℃で3分間、乾燥、熱処理することにより、汚れ脱離剤処理を完了した。これらの布について吸水性(水滴法、Wicking法)、汚れ脱離性 及び 撥油性を測定した。
結果を表5に示す。
【0075】
試験例2〜8及び比較試験例1〜4
含フッ素共重合体の20%水分散液をそれぞれ実施例2〜8及び比較例1〜4で得られたものに変更する以外は、試験例1と同様の手順で処理液を調製、布処理し、汚れ脱離性、撥油性を測定した。
結果を表5に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
測定例1
ポリエチレンテレフタレート(PET)板(2cm x 5cm)を共重合体の1%イソプロピルアルコール(IPA)溶液に等速(1mm/s)で浸漬し、その後、引き上げ、PET板上にポリマーをコーティングする。このPET板をその後、130℃で3分間、熱処理し、得られたPET板について接触角の測定およびESCAによる表面元素分析を行った。結果を表6および表7に示す。
【0078】
【表6】

【0079】
実施例4と比較例4の比較および実施例1と比較例1の比較から、グラフトポリマー(実施例4および実施例1)はランダムポリマー(比較例4および比較例1)に比較して水をはじきにくくなっており、水に対する親和性が高いことがわかる。
【0080】
【表7】

【0081】
グラフトポリマー(実施例4および実施例1)はフッ素含有量が多いポリマー(実施例1)でも表面のF/Cが小さい。表面のフッ素原子が少ないことが吸水性向上に貢献していることがわかる。
一方、ランダムポリマー(比較例4および比較例1)はフッ素含有量が少ないポリマー(比較例4)でも表面のF/Cが大きく、表面のフッ素原子が多いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の重合体は、吸水性を有する汚れ脱離剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、
(b)親水性基がオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜6)である親水性単量体、および
(c)ブンテ塩単量体
を含んでなり、
含フッ素グラフト重合体における幹ポリマーがブンテ塩単量体を含んでなり、
含フッ素グラフト重合体がブンテ塩単量体から誘導される−S−結合を有する含フッ素グラフト重合体。
【請求項2】
(1)親水性単量体(b)およびブンテ塩単量体(c)を含んでなる幹ポリマー、ならびに含フッ素単量体(a)を含んでなる枝ポリマーを有するグラフト重合体、または
(2)含フッ素単量体(a)およびブンテ塩単量体(c)を含んでなる幹ポリマー、ならびに親水性単量体(b)を含んでなる枝ポリマーを有するグラフト重合体
である請求項1に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項3】
含フッ素単量体(a)が、含フッ素(メタ)アクリレートエステルである請求項1または請求項2に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項4】
含フッ素単量体(a)が、
一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体である請求項3に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項5】
親水性単量体(b)が、一般式(2):
CH2=CX1C(=O)−O−(RO)n−X2 (2)
[式中、
1は、水素原子またはメチル基、
2は、水素原子または炭素数1〜22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、炭素数2〜6のアルキレン基、
nは、2〜90の整数、
である。]
で示されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項6】
ブンテ塩単量体(c)が、式:
H2C=CX-A-S-SO3-Z
[式中、Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX1X2基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、あるいは置換または非置換のフェニル基、
Aは、−Ph−Y−または−COO−Y−(但し、Phは、置換基を有していても良いフェニレン基、Yは、直接結合、酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族基、酸素原子を有していてもよい炭素数6〜18の芳香族基、環状脂肪族基または芳香脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Zは水素または金属原子である。]
で示される化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項7】
含フッ素グラフト重合体が、(d)単量体(a)〜(c)以外の他の単量体をも含んでなる請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項8】
他の単量体(d)が非架橋性単量体または架橋性単量体である請求項7に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項9】
非架橋性単量体が、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは水素原子またはメチル基、AはC2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。]
で示されるアクリレート類である請求項8に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項10】
架橋性単量体が、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有する単量体であり、反応性基がヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックドイソシアネート、アセトアセトキシ基、アミノ基またはカルボキシル基である請求項8に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項11】
他の単量体(d)が、イオン性の親水性基を有する単量体である請求項7に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項12】
イオン性の親水性基が三級アミノ基および四級アミノ基のカチオン供与基である請求項11に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項13】
含フッ素グラフト重合体の重量平均分子量が、1000〜1000000である請求項1に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項14】
含フッ素単量体(a)100重量部に対して、親水性単量体(b)の量が10〜300重量部であり、ブンテ塩単量体(c)の量が0.1〜5重量部である請求項1に記載の含フッ素グラフト重合体。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の含フッ素グラフト重合体を必須成分とする汚れ脱離剤。
【請求項16】
水性媒体をも含有する請求項15に記載の汚れ脱離剤。
【請求項17】
請求項15に記載の汚れ脱離剤で処理することからなる、基材を処理する方法。
【請求項18】
請求項15に記載の汚れ脱離剤によって処理された繊維製品。

【公開番号】特開2009−96941(P2009−96941A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271965(P2007−271965)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】