説明

含フッ素不飽和スルホニルフロライドの製造方法

本発明は、化学式:RSOCl(式中、Rは、少なくとも一個の不飽和結合を有する含フッ素炭化水素基であり、酸素、窒素及びイオウから選ばれた少なくとも一個の元素を含んでも良い)で表される含フッ素不飽和スルホニルクロライドを、アルキルアミンフッ酸塩、ピリジンフッ酸塩及びポリビニルピリジンフッ酸塩から選ばれた少なくとも一種のフッ素化剤と反応させることを特徴とする化学式:RSOF(式中、Rは、上記に同じ)で表される含フッ素不飽和スルホニルフロライドの製造方法を提供するものである。本発明の方法によれば、不飽和結合を有する含フッ素スルホニルフロライドを工業的に有利な方法で、安価にしかも簡便に高い選択率で収率良く製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素不飽和スルホニルフロライドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和結合を有する含フッ素スルホニルフロライドの内で、例えば、パーフルオロフルオロスルホニルアルキルビニルエーテルは、イオン交換膜材料などの工業原料として有用な化合物である。
【0003】
パーフルオロフルオロスルホニルアルキルビニルエーテルの製造方法としては、パーフルオロクロロスルホニルアルキルビニルエーテルとアルカリ金属フッ化物とを反応させる方法が知られている。例えば、フッ素化剤としてNaFを用い、スルホラン溶媒中で、CF=CFOCFCFSOClで表される化合物をNaFと反応させてCF=CFOCFCFSOFとする方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、この方法では、十分に高い選択率で目的とするスルホニルフロライドを得ることができない。更に、溶媒として低融点、高沸点を有するスルホランを用いるために、未反応原料のNaF、副生成物であるNaCl等との分離が困難であり、スルホランと固体の有効成分を回収する工程が非常に複雑となる。このため、この方法は、工業的実施が困難であり、産業廃棄物が多量に生じるという問題もある。
【0005】
パーフルオロアルキル基を有する化合物、例えば、C17SOClを原料とする場合には、KFを用いてフッ素化することによりC17SOFが得られることが報告されている(特許文献2)。この方法では、高収率でフッ素化物を得るためには、スルホラン、ホルムアミドなどを溶媒として用いることが必要であり、単純な反応系が期待できる水を溶媒とした場合には、100℃でフッ素化しても、C17SOFの収率は25%程度に過ぎず、工業的実施には不適切である。
【特許文献1】米国特許第3,560,568号
【特許文献2】英国特許第1,034,197号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、不飽和結合を有する含フッ素スルホニルフロライドを工業的に有利な方法で、安価にしかも簡便に高い選択率で収率良く製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも一個の不飽和結合を有する含フッ素スルホニルクロライドを原料とする場合に、特定のアミン又はピリジン化合物のフッ酸塩をフッ素化剤として用いることにより、簡便な方法によって、高い選択率で、収率よく含フッ素スルホニルフロライドを製造することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の含フッ素スルホニルフロライドの製造方法を提供するものである。
1. 化学式:RSOCl(式中、Rは、少なくとも一個の不飽和結合を有する含フッ素炭化水素基であり、該含フッ素炭化水素基には、酸素、窒素及びイオウから選ばれた少なくとも一個の元素が含まれていてもよい)で表される含フッ素不飽和スルホニルクロライドを、下記(i)〜(iii)項に示す化合物から選ばれた少なくとも一種のフッ素化剤と反応させることを特徴とする化学式:RSOF(式中、Rは、上記に同じ)で表される含フッ素不飽和スルホニルフロライドの製造方法:
(i)化学式:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基又はシクロアルキル基であり、nは1〜9の整数である)で表されるアルキルアミンフッ酸塩、
(ii)化学式:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基であり、nは1〜9の整数である)で表されるピリジンフッ酸塩、
(iii)化学式:
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、nは1〜9の整数、mは2以上の整数である)で表されるポリビニルピリジンフッ酸塩。
2. 化学式:RSOClにおいて、Rが、
式:CF=CF−(CF−X−R
(式中、Xは、O、S又はNHであり、Rは、置換基としてフッ素原子を有することのある二価の炭化水素基であり、pは、0〜4の整数である)で表される基である上記項1に記載の方法。
3. 化学式:RSOClにおいて、Rが、
式:CF=CF−O−[CFCF(CF)O]CFCF
(式中、qは0〜3の整数である。)で表される基である上記項2に記載の方法。
4. フッ素化剤が、化学式:
【0015】
【化4】

【0016】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、低級アルキル基であり、nは3である)で表されるアルキルアミンフッ酸塩である上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
5. 上記項1〜4のいずれかの方法によって含フッ素不飽和スルホニルフロライドを製造した後、反応粗生成物から該含フッ素不飽和スルホニルフロライドを分離し、次いで、残留するフッ素化剤の塩酸塩を無水HFと反応させてフッ酸塩に変換することを特徴とするフッ素化剤の再生方法。
【0017】
本発明の含フッ素不飽和スルホニルフロライドの製造方法では、原料としては、化学式:RSOClで表される含フッ素不飽和スルホニルクロライドを用いる。
【0018】
上記化学式において、Rは、少なくとも一個の不飽和結合を有する含フッ素炭化水素基であり、該含フッ素炭化水素基には、酸素、窒素及びイオウから選ばれた少なくとも一個の元素が含まれていても良い。不飽和結合は、二重結合、三重結合の何れでもよく、両者が同時に含まれていても良い。不飽和結合の位置についても限定はない。また、含フッ素炭化水素基では、フッ素原子によって全ての水素原子が置換されていてもよく、或いは一部の水素原子のみが置換されていても良い。
【0019】
で表される含フッ素炭化水素基としては、下記式:
CF=CF−(CF−X−R
で表される基を例示できる。上記式において、Xは、O、S又はNHであり、Rは、置換基としてフッ素原子を有することのある二価の炭化水素基であり、pは0〜4の整数である。
【0020】
の具体例としては、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキレン基、アリーレン基又はこれらが結合した基などの二価の炭化水素基を挙げることができる。該炭化水素基には、更に、酸素、イオウ及び窒素から選ばれた少なくとも一種の元素が含まれていてもよい。アルキレン基としては、炭素数1〜8程度の基を例示できる。アリーレン基としては、フェニレン基等を例示できる。これらの二価の炭化水素基は、フッ素原子によって一部又は全ての水素原子が置換されていてもよく、或いは未置換であっても良い。
【0021】
で表される含フッ素炭化水素基の具体例としては、下記式:
CF=CF−O−[CFCF(CF)O]CFCF
で表される基を挙げることができる。上記式において、qは0〜3の整数である。
【0022】
本発明によれば、上記した含フッ素不飽和スルホニルクロライドを下記(i)〜(iii)項に記載した化合物から選ばれる少なくとも一種のフッ素化剤と反応させることによって、含フッ素不飽和スルホニルフロライドを得ることができる。
(i)化学式:
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基又はシクロアルキル基であり、nは1〜9の整数である)で表されるアルキルアミンフッ酸塩、
(ii)化学式:
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基であり、nは1〜9の整数である)で表されるピリジンフッ酸塩、
(iii)化学式:
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、nは1〜9の整数、mは2以上の整数である)で表されるポリビニルピリジンフッ酸塩。
【0029】
上記(i)項に記載したアルキルアミンフッ酸塩では、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基又はシクロアルキル基である。アルキル基としては炭素数1〜9程度の直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を例示でき、特に、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル等の炭素数1〜4程度の低級アルキル基が好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等の炭素数5〜8程度の基を例示できる。nは、1〜9の整数であり、好ましくは2〜9の整数である。
【0030】
上記(ii)項に記載したピリジンフッ酸塩において、R、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、上記(i)に記載したアルキルアミンフッ酸塩のアルキル基と同様の基を例示できる。nは、1〜9の整数であり、好ましくは2〜9の整数である。
【0031】
上記(iii)項に記載したポリビニルピリジンフッ酸塩において、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、上記(i)に記載したアルキルアミンフッ酸塩のアルキル基と同様の基を例示できる。nは1〜9の整数であり、好ましくは2〜9の整数である。mは2以上の整数であり、重量平均分子量は4000〜160000程度の範囲であることが好ましい。
【0032】
上記(i)〜(iii)項に記載した化合物からなるフッ素化剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。これらのフッ素化剤を用いることにより、高い選択率で収率よく目的とする含フッ素不飽和スルホニルフロライドを得ることができる。
【0033】
上記したフッ素化剤の内で、(i)項に記載したアルキルアミンフッ酸塩については、nが2〜9の場合に液状の化合物であるために取り扱いが容易であり、特に、R、R及びRが、炭素数1〜4程度の低級アルキル基であって、n=3のアルキルアミン3フッ酸塩をフッ素化剤とする場合には、高い転換率と高い選択率で目的とする含フッ素不飽和スルホニルフロライドを得ることができ、しかも取り扱いも容易である。
【0034】
原料として用いる含フッ素不飽和スルホニルクロライドとフッ素化剤とを反応させる方法については、特に限定はなく、両者を同時に仕込んで反応させてもよく、或いは原料及びフッ素化剤のいずれか一方に他方を滴下してもよい。特に、原料及びフッ素化剤のいずれか一方に他方を滴下する方法は、反応熱の蓄積を防ぐことができる点で有利である。
【0035】
フッ素化剤の使用量は、原料として用いる含フッ素不飽和スルホニルクロライド1モルに対して、0.1〜10モル程度とすればよく、1〜5モル程度とすることが好ましい。特に、含フッ素不飽和スルホニルクロライド1モルに対してフッ素化剤を2〜3モル程度用いる場合には、高い転換率で目的物を得ることができる。
【0036】
尚、上記(iii)項に記載したポリビニルピリジンフッ酸塩のモル数については、下記式で表される構成単位
【0037】
【化8】

【0038】
の1個をビニルピリジンフッ酸1分子として換算したモル数である。
【0039】
反応は無溶媒又は溶媒中で行うことができるが、コスト面からは無溶媒で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に関与しない極性溶媒又は無極性溶媒を用いることができる。具体例として、CHCl、CHCl、CHCN、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、HO、C14等を挙げることができる。溶媒の使用量は、例えば、含フッ素不飽和スルホニルクロライド100重量部に対して1〜50重量部程度とすればよい。
【0040】
反応温度は、−20℃〜100℃程度とすればよく、10℃〜40℃程度とすることが好ましい。反応時間は、通常、0.01時間〜48時間程度であり、好ましくは0.5〜24時間程度である。
【0041】
反応圧力は、減圧、大気圧、加圧のいずれでもよいが、大気圧下で反応を行うことが好ましい。
【0042】
以上の方法によって、目的とする含フッ素スルホニルフロライドを高い選択率で製造することができる。
【0043】
得られた粗生成物は、通常、三相に分離する。上相はフッ素化剤、下相は目的とする含フッ素不飽和スルホニルフロライド相となり、中相はフッ素化剤の塩酸塩、例えば、アルキルアミンフッ酸塩をフッ素化剤とする場合にはアルキルアミン塩酸塩、ピリジンフッ酸塩をフッ素化剤とする場合にはピリジン塩酸塩、ポリビニルピリジンフッ酸塩をフッ素化剤とする場合には、ポリビニルピリジン塩酸塩となる。
【0044】
目的とする含フッ素不飽和スルホニルフロライドは、濾過、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で精製できる。この様にして得られる含フッ素不飽和スルホニルフロライドの内で、例えば、パーフルオロアルキルビニルスルホニルフロライドは、電解質ポリマー用のモノマー成分等として有用な物質である。
【0045】
また、上記した方法で含フッ素不飽和スルホニルフロライドを製造し、回収した後、残留するフッ素化剤とフッ素化剤の塩酸塩の二相からなる混合物中に、無水HFを添加することによって、フッ素化剤の塩酸塩をフッ酸塩に変換して、フッ素化剤として再生することができる。
【0046】
この場合、無水HFの使用量については、フッ素化剤の塩酸塩に対して0.1〜100倍モル程度とすればよく、特に、フッ素化剤の塩酸塩に対して3〜20倍モル程度という過剰量の無水HFを使用することが好ましい。
【0047】
反応温度は、−20℃〜100℃程度の範囲とすればよく、0℃〜40℃程度の範囲とすることが好ましい。反応時間は、0.01〜48時間程度とすればよく、0.5〜24時間程度とすることが好ましい。
【0048】
反応圧力は、減圧、大気圧、加圧のいずれでもよいが、大気圧下又は5.0MPa(ゲージ圧)程度までの加圧下で反応を行うことが好ましい。
【0049】
以上の方法によって、フッ素化剤の塩酸塩をフッ酸塩に変換して、フッ素化剤として再生することができる。
【0050】
特に、式:(CHN・(HF)nにおいて、nが2.5〜3.5程度のフッ酸塩については、蒸留によって簡単に分離できるので、簡単な方法で純度のよいフッ素化剤として再生できる。
【発明の効果】
【0051】
本発明方法によれば、煩雑な操作を要することなく、工業的に有利な方法によって、目的とする含フッ素不飽和スルホニルフロライドを高い選択率で収率良く製造することができる。
【0052】
また、本発明で用いるフッ素化剤は、簡単な方法で再生してリサイクルすることができる。従って、本発明方法は、産業廃棄物を低減することが可能な環境負荷の低い製造方法といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0054】
CF=CFOCFCFSOFの製造
ジムロート及び滴下ロートを取り付けた100ml三つ口フラスコを用意し、このフラスコにトリエチルアミン3フッ酸塩(EtN:(HF))を33.5g(208.1mmol)仕込み、滴下ロートにCF=CFOCFCFSOClを20.0g(67.5mmol)仕込んだ(仕込みモル比3:1)。
【0055】
室温下(22℃)で攪拌を行ないながら、CF=CFOCFCFSOClを1.67g/分の速度で滴下した。反応の進行と共に溶液が白濁し始め、滴下の間に、発熱により液温が22℃から33℃に上昇した。滴下終了後から約1時間、攪拌して反応を進行させた。
【0056】
反応終了後、フラスコ内は、EtN:(HF)n(n=4〜6)(液相)/EtN:HCl(固相)/CF=CFOCFCFSOF(液相)の3相分液状態であった。ガスクロマトグラフィー及びNMR測定を行なった結果、最下相のみに目的化合物であるCF=CFOCFCFSOFが存在していることが確認できた。CF=CFOCFCFSOClの転化率は100%、CF=CFOCFCFSOFの選択率は100%であった。
【0057】
反応器を加熱して、単蒸留でCF=CFOCFCFSOFを蒸留回収した結果、CF=CFOCFCFSOFの単離収率は96.0%であった。
【0058】
フッ素化剤の再生
上記方法で得られたEtN:(HF)n(n=4〜6)(液相)/EtN:HCl(固相)の二相からなる混合物34.6gを100mlのSUS製オートクレーブ(コンデンサ付き(−10℃に冷却))に仕込み、反応系内を真空置換した。その後、HFをガスとして10.8g(EtN:HClに対して8倍当量)仕込んで反応させた。
【0059】
副生するHClガスは水洗塔を通してトラップした。HFを6.1g(0.30mol)(EtN:HClに対して4.5倍モル量)仕込んだところで圧力が上昇し始め、0.1MPa(ゲージ圧)に到達した。この時点で、HFが仕込めなくなったので、系内ガスを大気圧付近まで抜き出しながらHFを仕込んでいった。最終的に仕込んだHF量は10.3g(0.52mol)であった。反応器内の液をNMRで分析したところEtN:7.7HFが生成していた。このEtN:7.7HFをEtN:3HFに戻すために、15mmHgの減圧下でEtN(HF)の回収を行なった。還流温度70℃で安定するまでHFを抜き出し、70℃留分の液について分析した結果、EtN:3.2HFであった。
【実施例2】
【0060】
CF=CFOCFCFSOFの製造
トリエチルアミン3フッ酸塩(EtN:(HF))5.4g(33.7mmol)とCF=CFOCFCFSOCl 10.1g(33.7mmol)を原料として用い、実施例1と同様の条件で、CF=CFOCFCFSOFの合成と単離を行った。この場合、仕込みモル比は1:1である。
【0061】
反応の結果、CF=CFOCFCFSOClの転化率は41.9%、CF=CFOCFCFSOFの選択率は100%、CF=CFOCFCFSOFの単離収率は38.3%であった。
【実施例3】
【0062】
CF=CFOCFCFSOFの製造
100mlのPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとの共重合体)製ボトルに、ピリジン3フッ酸(CN:(HF))を5.3g(37.8mmol)仕込み、そこに純度82.5mass%のCF=CFOCFCFSOClを4.7g(13.1mmol)を仕込んだ(仕込みモル比2.9:1)。この溶液を室温下(22℃)で17時間撹拌して反応を進行させた。
【0063】
反応終了後、PFAボトル内は、CN:(HF)n(n=4〜6)(液相)/CF=CFOCFCFSOF(液相)の2相分液状態であった。ガスクロマトグラフィー及びNMR測定を行なった結果、最下相に目的化合物であるCF=CFOCFCFSOFが存在していることが確認できた。CF=CFOCFCFSOClの転化率は80.3%、CF=CFOCFCFSOFの選択率は100%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式:RSOCl(式中、Rは、少なくとも一個の不飽和結合を有する含フッ素炭化水素基であり、該含フッ素炭化水素基には、酸素、窒素及びイオウから選ばれた少なくとも一個の元素が含まれていてもよい)で表される含フッ素不飽和スルホニルクロライドを、下記(i)〜(iii)項に示す化合物から選ばれた少なくとも一種のフッ素化剤と反応させることを特徴とする化学式:RSOF(式中、Rは、上記に同じ)で表される含フッ素不飽和スルホニルフロライドの製造方法:
(i)化学式:
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基又はシクロアルキル基であり、nは1〜9の整数である)で表されるアルキルアミンフッ酸塩、
(ii)化学式:
【化2】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって水素原子又はアルキル基であり、nは1〜9の整数である)で表されるピリジンフッ酸塩、
(iii)化学式:
【化3】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基であり、nは1〜9の整数、mは2以上の整数である)で表されるポリビニルピリジンフッ酸塩。
【請求項2】
化学式:RSOClにおいて、Rが、
式:CF=CF−(CF−X−R
(式中、Xは、O、S又はNHであり、Rは、置換基としてフッ素原子を有することのある二価の炭化水素基であり、pは、0〜4の整数である)で表される基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学式:RSOClにおいて、Rが、
式:CF=CF−O−[CFCF(CF)O]CFCF
(式中、qは0〜3の整数である。)で表される基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素化剤が、化学式:
【化4】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、低級アルキル基であり、nは3である)で表されるアルキルアミンフッ酸塩である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの方法によって含フッ素不飽和スルホニルフロライドを製造した後、反応粗生成物から該含フッ素不飽和スルホニルフロライドを分離し、次いで、残留するフッ素化剤の塩酸塩を無水HFと反応させてフッ酸塩に変換することを特徴とするフッ素化剤の再生方法。

【国際公開番号】WO2005/073182
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517457(P2005−517457)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001005
【国際出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】