説明

含フッ素化合物、含フッ素界面活性剤およびその組成物

【課題】低濃度でも優れた表面張力低下能を示す含フッ素化合物、該化合物からなる含フッ素界面活性剤、該界面活性剤と水系媒体を含有する界面活性剤組成物の提供。
【解決手段】下式(1)で表される含フッ素化合物。


Rf:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。Ak〜Ak:相互に独立して、炭素数1〜6のアルキレン基。Z:硫黄原子、酸素原子。R:水素原子、炭素数1〜4のアルキル基。R、R:相互に独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基。ただし、RとRは共同して環を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物、含フッ素界面活性剤およびその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は組成物として配合することにより、界面に集まることで表面張力を低下させ、これにより、その組成物の塗り広げ易さ、浸透性を向上させることができる。
従来より、フッ素系界面活性剤の表面張力低下能力は、対応構造の炭化水素系界面活性剤あるいはシリコーン系界面活性剤よりも優れていることが知られている。このため、フッ素系界面活性剤は、広範な分野で使用されてきており、これまでにも界面活性剤に有用な各種の構造の含フッ素化合物が提案されてきた。
【0003】
たとえば、水性膜泡消火薬剤として用いられる界面活性剤組成物に含有される含フッ素化合物としては、ベタイン構造を有する含フッ素化合物が示される(特許文献1、特許文献2参照)。
上記のような用途においては、より少ない使用量で高い性能を発現することが求められることから、より低濃度で優れた表面張力低下能を示す界面活性剤組成物が望まれる。
このような要求にこたえるべく、各種の含フッ素ベタイン化合物が提案されており、また、それを用いた各種配合も検討されているが、そもそもの含フッ素化合物の表面張力低下能力が、濃度が下がると低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−51388号公報
【特許文献2】特開平6−312030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低濃度でも優れた表面張力低下能を示す界面活性剤として有効な含フッ素化合物、該含フッ素化合物からなる含フッ素界面活性剤、および該含フッ素界面活性剤と水系媒体を含有する界面活性剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下式(1)で表される含フッ素化合物を提供する。
【化1】

式中の記号は以下の意味を示す。
Rf:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
Ak、Ak、AkおよびAk:相互に独立して、炭素数1〜6のアルキレン基。
Z:硫黄原子または酸素原子。
:水素原子または炭素数1〜4のアルキル基。
およびR:相互に独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基。
ただし、RとRは共同して環を形成してもよい。
【0007】
前記式(1)で表される化合物は、下式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】

式中の記号は以下の意味を示す。
m、n、pおよびq:相互に独立して1〜3の整数。
Rf、Z、R、RおよびRは前記式(1)と同じ意味を示す。
【0008】
また、本発明は前記式(1)で表される化合物からなる含フッ素界面活性剤を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記含フッ素界面活性剤と、水系媒体とを含有する界面活性剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低い濃度においても十分に高い表面張力低下能を有するベタイン型界面活性剤となる新規含フッ素化合物が提供される。また、界面活性剤が配合された組成物は、作業上の取り扱いの容易さ、安全性、また環境上の問題から、近年特に水を主成分とする水性媒体により構成されることが多くなったが、本発明の界面活性剤はこのような水系媒体において特に有効に作用するものである。特に本発明の含フッ素化合物は、酸あるいは塩基に対して安定であることから、広いpH範囲の溶液に対し界面活性剤として有効に使用することができる。また、ベタイン構造の特性として、広いpH領域での使用が可能である。
また、本発明の界面活性剤組成物は、本発明の含フッ素界面活性剤を含有することにより、界面活性剤濃度が低い場合でも、十分に高い表面張力低下能力を有するため、各種用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)とも記す。他の式で示される化合物および基についても同様に記す。また、本明細書において%で表示されるものは、特にことわりの無い限り質量%を表す。
【0012】
本発明の化合物(1)において、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基は直鎖状でも分岐状でも構わないが直鎖状が好ましい。合成の容易さや表面張力低下能力が良好であることから、Rfとしては、炭素数4〜6の直鎖のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4または6の直鎖のパーフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数6の直鎖のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0013】
本発明の化合物(1)において、Ak、Ak、AkおよびAkは相互に独立して炭素数1〜6のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状でも分岐状でも構わないが直鎖状が好ましい。Ak、Ak、AkおよびAkとしては、炭素数1〜3の直鎖のアルキレン基が好ましい。Ak、AkおよびAkとしては炭素数1または2のアルキレン基が特に好ましく、Akとしては、炭素数2または3の直鎖のアルキレン基が特に好ましい。
【0014】
本発明の化合物(1)において、Zは硫黄原子または酸素原子である。Zとしては硫黄原子が好ましい。
【0015】
本発明の化合物(1)において、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。アルキル基は直鎖状でも分岐状でもかまわないが直鎖状が好ましい。また、ヒドロキシアルキル基も直鎖状でも分岐状でもかまわないが直鎖状が好ましく、ヒドロキシ基は基の末端に置換するのが好ましい。RとRは共同で環を形成してもよいが、合成が容易であることから、環を形成しない方が好ましい。
とRが環を形成しない場合、Rは水素原子または炭素数1のアルキル基が好ましく、RおよびRは同じ構造であるのが好ましく、炭素数1または2のアルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましい。合成が容易であることから、Rは水素原子であるのが特に好ましい。
とRが環を形成する場合、RとRが共同して(CHを形成し、Akが(CHであり、環が6員環となるのが好ましく、Rは炭素数1または2のアルキル基またはヒドロキシアルキル基であるのが好ましい。
【0016】
本発明の化合物(1)としては、Ak、Ak、AkおよびAkが全て直鎖のアルキレン基である化合物(1−1)が好ましい。
化合物(1−1)において、m、n、pおよびqとしては、1〜3が好ましい。m、nおよびqとしては1または2が特に好ましく、pとしては2または3が特に好ましい。これらはそれぞれ、表面張力の低下能力及び水溶解性の面で好ましい。
【0017】
本発明の化合物(1)および化合物(1−1)として好ましいものは以下のとおりである。
613-(CH2)2-S-CH2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-CH2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)2-N+(CH3)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)2-N+(C25)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-(CH2)2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-(CH2)2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3) (C25)-CH2-COO-
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CON(CH3)-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
49-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
49-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
【0018】
【化3】





【0019】
613-(CH2)2-O-CH2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-CH2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)2-N+(CH3)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)2-N+(C25)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-(CH2)2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-(CH2)2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3) (C25)-CH2-COO-
613-(CH2)2-O-(CH2)2-CON(CH3)-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
49-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
49-(CH2)2-O-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
【0020】
【化4】

【0021】
本発明の化合物(1)は、特にその製法について限定されるものではなく、目的に応じて公知の有機化学反応、公知の設備を適用して製造することができる。
【0022】
本発明の化合物(1)の製造例としては、下記化合物(2)をジアミン化合物と反応させてアミド化して下記化合物(3)を製造し、得られた化合物(3)をカルボキシル化剤と反応させてベタイン化することが挙げられる。
Rf-Ak1-Z-Ak2-COOH (2)
Rf-Ak1-Z-Ak2-CONR1-Ak3-N(R2)(R3) (3)
式中の記号は、化合物(1)と同じ意味を示す。
【0023】
前記化合物(2)は、下式(4)で表されるRfハロゲン化物と、メルカプトカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸とを反応させることや、下式(4’)で表されるRfチオールまたはRfアルコールと、アクリル酸等の不飽和カルボン酸とを反応させることなどで得られる。中でも化合物(4)を用いるのが好ましい。
Rf−Ak1−X (4)
Rf-Ak1-ZH (4’)
Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、Rf、Ak1およびZは化合物(1)と同じ意味を示す。
【0024】
ジアミン化合物としては、下式(5)で表される化合物が挙げられる。
NHR1-Ak3-N(R2)(R3) (5)
式中の記号は化合物1と同じ意味を示す。
化合物(5)としては、N,N-ジメチルプロパンジアミンのような鎖状構造の化合物や、ヒドロキシエチルピペラジンのような環状構造の化合物が挙げられる。
【0025】
アミド化反応の温度については特に制限されないが、0℃〜250℃が好ましく、特に50℃〜150℃が好ましい。圧力についても特に制限はなく、大気圧〜1MPaが好ましく、特に大気圧が好ましい。アミド化反応は、化合物(2)の直接アミド化でもよいし、化合物(2)の酸塩化物やエステルなどからの置換反応でも良い。
【0026】
カルボキシル化剤としては、クロロ酢酸、β-プロピオラクトン、アクリル酸等が挙げられ、中でもクロロ酢酸が好ましい。
ベタイン化反応の温度については特に制限されないが、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。
【0027】
なお、化合物(3)は前記方法だけでなく、前記化合物(4’)と、下式(6)で表される化合物との反応により得ることもできる。
CH2=CH-CONR1-Ak3-N(R2)(R3) (6)
式中の記号は、化合物(1)と同じ意味を示す。
【0028】
本発明の含フッ素界面活性剤は、化合物(1)が1種だけからなるものでもよく、化合物(1)が2種以上からなるものでもよい。
【0029】
本発明の含フッ素界面活性剤は、各種液体に添加することにより、該液体の表面張力を下げることができる。また、その表面張力低下能により、添加した液体にレベリング性、浸透性、起泡性、洗浄性、乳化性等の機能を付与できる。
また、本発明の含フッ素界面活性剤は、低濃度でも充分な表面張力低下能を発揮できるため、各種用途に好適に用いることができる。本発明の含フッ素界面活性剤は、ワックス等のレベリング剤、発泡助剤、泡消火のための安定な泡沫生成および消火性能向上を目的とした添加剤、洗浄剤、離型剤、乳化剤、防錆剤、ラテックス安定剤、農業用フィルムの防霧剤、顔料分散剤、インク・塗料・レジスト等の濡れ性・浸透性改良、硬化性樹脂への撥水撥油性付与、農業フィルムの防霧剤、防汚剤、浮遊選鉱剤、平滑剤、脱墨剤などにおいてその効果を発揮するものであり、洗浄、グラビア印刷など、幅広い用途に用いることもできる。
本発明の含フッ素界面活性剤は、これら各種用途の組成物総量中に化合物(1)が0.0001〜5%となる量を添加することが好ましい。この濃度は、0.005〜1%であることがより好ましい。この範囲内であると、表面張力低下能力を十分に発揮するとともに、主剤の機能性を打ち消さずに済む。
【0030】
本発明の界面活性剤組成物は、前記本発明の含フッ素界面活性剤と水系媒体のみからなるものでもよく、他の界面活性剤を含有するものでもよい。他の界面活性剤として、フッ素系、シリコーン系あるいは炭化水素系の界面活性剤と併用することができる。その含有比率は目的に応じて適宜設定されうる。
また、前記ワックス、泡消火剤、洗浄剤等の水系媒体を含む各種用途の組成物に、本発明の含フッ素界面活性剤を添加したものも、本発明の界面活性剤組成物である。この場合、各種用途の組成物に、本発明の含フッ素界面活性剤を直接添加してもよく、本発明の含フッ素界面活性剤と水系媒体とを混合したものを添加してもよい。つまり、本発明の界面活性剤組成物を添加した、各種用途の組成物もまた、本発明の界面活性剤組成物となる。
また、本発明の界面活性剤組成物は、化合物(1)を1種だけ含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。
【0031】
本発明の界面活性剤組成物に用いる水系媒体は、水、水溶性有機溶媒、または水と水溶性有機溶媒を混合したものが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルといったエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチルピロリドン等の極性溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
【0032】
本発明の界面活性剤組成物中の本発明の含フッ素界面活性剤濃度は、目的、使用条件により適宜設定されるものである。前記各種用途の組成物に本発明の含フッ素界面活性剤を添加した組成物の場合は、該各種用途の組成物総量中に化合物(1)を0.0001〜5%の量で含むことが好ましい。この濃度は、0.005〜1%であることがより好ましい。この範囲内であると、表面張力低下能力を十分に発揮するとともに、主剤の機能性を打ち消さずに済む。また、本発明の含フッ素化合物と水系媒体とを混合し、前記各種用途の主剤を含まない組成物の場合は、該組成物総量中に、化合物(1)を0.1〜80%の量で含むことが好ましい。該組成物は、それ単独で使用するよりも、該組成物を前記各種用途の組成物に添加するために用いることが好ましい。添加量は、前記各種用途の組成物における化合物(1)の濃度が、前記各種用途の組成物総量中の0.0001〜5%になる量であることが好ましく、0.005〜1%になる量であることがより好ましい。化合物(1)を2種以上含む場合は、その合計量が前記範囲内であることが好ましい。
ただし、前記の濃度は、界面活性剤組成物の使用時における濃度を意味する。すなわち、化合物(1)を10%含む界面活性剤組成物(製品)を10倍に希釈して用いる場合は、前記の濃度は1%となる。前記化合物(1)を2種以上含む場合は、その合計量が前記範囲内であることが好ましい。
【0033】
本発明の界面活性剤組成物を、各種液体に添加することにより、各種液体に、前記本発明の含フッ素界面活性剤と同様の機能を付与することができる。また、本発明の界面活性剤組成物は、前記本発明の含フッ素界面活性剤と同様の各種用途に好適に用いることができる。特に、ワックス等のレベリング剤、泡消火剤の添加剤、インク・塗料・レジスト等の濡れ性・浸透性改良剤として用いることが好ましい。
また、本発明の界面活性剤組成物を、ワックス等、泡消火剤、インク、塗料、レジスト組成物等として用いることも好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
なお、実施例中の化合物は以下の構造である。
化合物(2−1)
613-(CH2)2-S-(CH2)2-COOH
化合物(3−1)
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N(CH3)2
化合物(1−1)
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
化合物(3−2)
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N(C25)2
化合物(1−2)
613-(CH2)2-S-(CH2)2-CONH-(CH2)3-N+(C25)2-CH2-COO-
また、化合物(2−1)は、前記のように公知文献を参考に、C61324I及びHSC24COOHより製造した(参考文献:新実験化学講座14(III))。
【0035】
[製造例1]
ガラス製1Lフラスコに化合物(2−1)(純度98.0%)396.8g、トルエン396.8g、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸1.52gを仕込み、N,N-ジメチルプロパンジアミン96.7gを10分かけて滴下した。その後110℃まで昇温し反応させ12時間熟成させた。その後、5%炭酸ナトリウム水溶液198.4gを加え分液し下層を回収した。イソプロピルアルコール211.3gを加え析出物をろ過後、溶媒を留去し、化合物(3−1)364.0g をガスクロマトグラフ純度93.7%で回収した。
化合物(3−1)の1H−NMRおよび13C-NMRスペクトルデータは以下のとおりである。
1H−NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):1.66(2H) 2.24〜2.59(12H) 2.77(2H) 2.87(2H) 3.37(2H)
13C-NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):22.5、25.9、27.7、31.7(t)、36.3、39.0、45.0、58.1、170.5、105〜125 多数の分裂ピーク
【0036】
[実施例1]
ガラス製500mlフラスコに、製造例1で得た化合物(3−1)(純度93.7%)15.0g、イソプロプルアルコール125.2g、クロロ酢酸29.7gを仕込み80℃まで昇温した。そこに、30%水酸化ナトリウム水溶液41.9gを1時間かけて滴下後、80℃で3時間熟成させた。その後析出物をろ過し、イソプロピルアルコール98.4g、イオン交換水 173.2gを加え、化合物(1−1)を30%含む水/イソプロピルアルコール溶液を得た。反応液のガスクロマトグラフィー分析から、化合物(3−1)から化合物(1−1)への転化率は、91.8%であることが分った。
目的物の確認のために、溶液の一部を110℃で2時間乾燥させて固形物を得て、NMR測定を行った。化合物(1−1)の1H−NMRおよび13C-NMRスペクトルデータは以下のとおりである。
1H−NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):1.94(2H) 2.43〜2.58(4H) 2.77〜2.89(4H) 3.21(6H) 3.25〜3.31(4H) 3.61(2H)
13C-NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):22.0、23.3、28.7、32.9(t)、36.9、37.3、43.4、56.8、61.7、169.0、174.4、105〜125 多数の分裂ピーク
【0037】
[製造例2]
ガラス製200mlフラスコに、化合物(2−1)(純度98.5%)40.0g、トルエン40.0g、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸 0.31gを仕込み、N,N-ジエチルプロパンジアミン13.6gを10分かけて滴下した。その後110℃にまで昇温し反応させ9時間熟成させた。その後、水40.0g、水酸化ナトリウム0.09gを加えて分液し、下層を回収し、80℃ 2mmHgで溶媒を留去し、化合物(3−2)44.8gをガスクロマトグラフ純度97.2%で得た。
化合物(3−2)の1H−NMRおよび13C-NMRスペクトルデータは以下のとおりである。
1H−NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):1.01(6H) 1.66(2H) 2.44〜2.56(10H) 2.78(2H) 2.86(2H) 3.35(2H) 7.95(1H)
13C-NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):12.0、23.1、25.5、28.2、32.3(t)、37.0、40.4、47.4、53.0、170.1、105〜125 多数の分裂ピーク
【0038】
[実施例2]
ガラス製200mlフラスコに、製造例2で得た化合物(3−2)(純度97.2%)35.2g、イソプロピルアルコール 35.0g、クロロ酢酸8.56gを仕込み80℃まで昇温した。そこに、30%水酸化ナトリウム水溶液12.1gを1時間かけて滴下後、80℃で36時間熟成させた。その後析出物をろ過し、イソプロピルアルコール7.0g、 イオン交換水46.8gを加え、化合物(1−2)を30%含む水/イソプロピルアルコール溶液を得た。
目的物の確認のために、溶液の一部を110℃で2時間乾燥させて固形物を得て、NMR測定を行った。化合物(1−2)の1H−NMRおよび13C-NMRスペクトルデータは以下のとおりである。反応液のガスクロマトグラフィー分析から、化合物(3−2)から化合物(1−2)への転化率は、87.3%であることが分った。
1H−NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):1.34(6H) 2.08(2H) 2.45(2H) 2.61(2H) 2.81(2H) 2.88(2H) 3.13(6H) 3.40(2H) 3.61(2H) 8.10(1H)
13C-NMR(330MHz、溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサメチルジシロキサン)、σ(ppm):8.0、8.5、22.9、24.0、28.0、32.0(t)、36.0、36.4、46.5、49.6、167.0、172.2
【0039】
[実施例3]
実施例1および実施例2で得られた化合物、および下記の比較化合物1をそれぞれ水に溶かし、所定の濃度の水溶液を調整した。その後、自動表面張力系CBVP−A3型(協和界面化学製)を用いて、ウィルヘルミー法にて静的表面張力を測定した。測定結果を表1に示す。
なお、濃度は固形分濃度(%)である。化合物(1−1)および化合物(1−2)については、得られた反応液の全体量(g)と、該反応液から溶媒を除去した乾燥残分(g)との比率から固形分濃度を測定し、これを水で希釈した。比較化合物1は固形分濃度25%で市販されているものであり、これを水で希釈した。
【0040】
【表1】

比較化合物1:Forafac1157(デュポン社製)。特開平07-173034の記載から、下記構造を持つ界面活性剤と推定される。
613-(CH2)2-SO2NH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2-COO-
【0041】
表1より、本発明の化合物(1−1)および化合物(1−2)は、従来のベタイン構造の化合物と比べて、優れた表面張力低下能力を有し、特に低濃度での表面張力低下能力が優れることが分った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される含フッ素化合物。
【化1】

式中の記号は以下の意味を示す。
Rf:炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基。
Ak、Ak、AkおよびAk:相互に独立して、炭素数1〜6のアルキレン基。
Z:硫黄原子または酸素原子。
:水素原子または炭素数1〜4のアルキル基。
およびR:相互に独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基。
ただし、RとRは共同して環を形成してもよい。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、下式(1−1)で表される化合物である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【化2】

式中の記号は以下の意味を示す。
m、n、pおよびq:相互に独立して1〜3の整数。
Rf、Z、R、RおよびRは前記式(1)と同じ意味を示す。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物からなる含フッ素界面活性剤。
【請求項4】
請求項3に記載の含フッ素界面活性剤と、水系媒体とを含有する界面活性剤組成物。

【公開番号】特開2010−275263(P2010−275263A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131473(P2009−131473)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】