説明

含水スペーサー層を有する酵素センサー

本開示は、アンペロメトリック酵素センサーであって、電極と接触している含水スペーサー層、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択される多孔質ポリマー性マトリックスのスペーサー層を含んだセンサーに関する。該センサーは、生物学的被検体、例えば、グルコース、ラクテート、クレアチン、クレアチニン等の存在または量を測定するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極と接触している含水スペーサー層を有するアンペロメトリック酵素センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
酵素センサーは、測定される化学種(被検体)が、検出前にそのセンサー中において酵素で触媒される反応を起こすセンサーである。被検体と酵素(被検体が基質である場合)または酵素カスケードとの反応は、(理想的な条件下における)濃度が、被検体の濃度に比例するまたはそれと一致する第二種を生じる。次に、その第二種の濃度を、変換器によって、例えば、電極によって検出する。
【0003】
酵素センサーの酵素は、典型的には、流体試料に接触するのに適するセンサー膜中に包含される。最も典型的には、酵素は、センサー膜の別々の酵素層中に包含されるが、それは、カバー膜によって流体試料から隔てられている。したがって、被検体は、センサーのカバー膜を介する拡散後に酵素と接触し、次に、酵素/被検体反応が起こり、そして次に、第二種がセンサーの検出器部分、例えば、電極へと拡散して、被検体濃度に関連した応答を生じる。
【0004】
その一方で、酵素層は、ほとんどの場合、第二種の拡散を可能にする妨害制限層によって電極から隔てられている。従来の、酵素を利用したH検出センサーは、通常は、酵素層のためのカバー膜(すなわち、拡散制限層)、酵素層、中間層(すなわち、妨害制限層)および金属アノードを含む。このようなシステムは、概して高濃度で存在する被検体(例えば、血液試料中のラクテートおよびグルコース)に対して用いられた場合に、申し分のなく作動する。しかしながら、そのシステムが、きわめて低濃度で存在する被検体(例えば、クレアチニン、クレアチン、または約1〜約20μMの範囲内の検出限界を有する他の被検体)を検出するために用いられる場合、被検体不含の流体試料は、電極上に顕著な疑似信号を生じることがあり得るということが認められた。それらの疑似信号は、約−25μM〜約25μM被検体の信号に該当する可能性があり、それらは、酵素センサーと接触状態にされるいろいろな液体、例えば、血液試料、洗浄液、湿潤液、検量液等の組成差(ゼロである被検体以外)に由来する。その動作状態は、おそらくは、二つの異なった原因の組み合わせである。
【0005】
第一に、非イオン種は、妨害制限層を越えて、イオン種よりも急速に拡散する。したがって、試料中に存在するが、すすぎ溶液中には存在しないビカーボネート/COは、妨害制限層より下のpHを降下させるであろう。同じ動作は、大部分のすすぎ溶液中に存在するが、試料中には存在しないイミダゾール/H−イミダゾールで認められる。pHの降下は、水の酸化に由来するゼロ電流の降下を引き起こすであろう。
【0006】
第二に、アノード表面におけるイオン種の濃度は、異なった試料の関数として変化する。このような変化は、電極上のイオン組成の変化をもたらし、それによって、非ファラデー電流として知られる電流をもたらすであろう。非ファラデー電流として送られている電荷の全量は、イオン組成の差に依存するにすぎないであろうが、しかしながら、拡散の時定数は、変化することがありうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
疑似信号は、例えば、血液試料中のクレアチニンなどの被検体の濃度の測定時の示差測定に特に問題がある。
したがって、異なった組成の液体の使用によって生じる疑似信号を減少させるまたは排除さえもする酵素センサーが要求される。
【0008】
US2004/0011671A1号は、被検体レベルを測定するデバイスおよび方法であって、具体的には、体液中のグルコースレベルを監視する植込み可能デバイスを開示している。
【0009】
WO90/05910A1号は、被検体減衰層を含む完全微小成形加工(wholly microfabricated)バイオセンサーを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上の問題は、アノードと妨害制限層との間に含水スペーサー層を導入することによって軽減することができるということが判明した。より具体的には、本発明は、すなわち、流体試料中の被検体の濃度を測定する酵素センサーであって、電極;その電極と接触している含水スペーサー層;少なくとも一つの中間層であって、その少なくとも一つの中間層の最も内部が、そのスペーサー層と接触しているもの;および少なくとも一つの酵素層であって、その少なくとも一つの酵素層の最も内部が、その少なくとも一つの中間層の最も外部と接触しているものを含む酵素センサーを提供することにより、酵素センサーの一層高い精度および信頼性を達成できることが判明した。
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書中に記載のように、本発明は、流体試料中の被検体の濃度を測定するアンペロメトリック酵素センサーに関する。
【0012】
本明細書中に記載のように、「酵素センサー」という用語は、概して、問題の被検体を第二種へと変換することができる酵素(または酵素カスケード)を含む電気化学センサーを包含するものである。問題の被検体は、可能性のある流体試料成分である、すなわち、酵素センサーは、典型的には、流体試料中の被検体の濃度を測定するのに用いられる。「被検体」は、時々、「酵素基質」または簡単に「基質」とも称される。
【0013】
本発明のセンサーは、典型的には、多使用(multi-use)センサーである。多使用センサーとは、二つ以上の測定に用いられるセンサーとして理解されるはずであり、したがって、2種類以上の試料容量に曝露され、そして検量液、洗浄液等と断続接触することもありうる。このようなセンサーは、通常、より長い時間用いられる。
【0014】
流体試料は、主に、センサーに、具体的には、カバー膜に適合性であるいずれかの液体(好ましくは、水性液)でありうる。流体試料には、尿、唾液、間質液、髄液および血液などの体液が含まれる。血液には、全血試料、希薄血液試料、血液画分、反応前血液試料等が含まれる。センサーは、具体的には、全血試料に十分に適している。
【0015】
本発明のセンサーは、慣用のタイプのものであってよいし、または平面タイプのもの、例えば、厚手皮膜センサーまたは薄膜センサーであってよい。このようなセンサーの酵素膜は、しばしば、積層膜と称される。
【0016】
慣用のタイプの酵素センサーの場合、膜、例えば、多層膜であって、例えば、スペーサー層、中間層、酵素層およびカバー膜を含むものは、典型的には、離散物体として組み立てられた後、それを電極と接続して配置する(すなわち、概してその先端に取り付ける)。例えば、図1を参照されたい。このような多層膜の構築方法は、当該技術分野において周知である。例えば、WO98/21356号を参照されたい。慣用のタイプの酵素センサーは、トラックエッチング処理済み膜、更には溶液流延膜を包含することができる。
【0017】
平面タイプの酵素センサー、例えば、厚手皮膜センサーおよび薄膜センサーの場合、含水スペーサー層を含む酵素膜と電極は、電極、スペーサー層、中間層、酵素層およびカバー層にそれぞれ該当する材料を(典型的には、逐次的に且つ個々に)、固体の誘電性支持体、例えば、セラミックまたはウェファー材料上に付着させることによって配置される。平面センサー構築の一例を、図3に示す。平面タイプセンサー、例えば、厚手皮膜センサーおよび薄膜センサーの構築方法は、当該技術分野において周知である。例えば、WO01/90733号、WO01/65247号およびWO90/05910号を参照されたい。このようなセンサー膜の層に該当する材料は、ほとんどの場合、溶液流延によって付着される。
【0018】
本発明の酵素センサーは、電極;その電極と接触している含水スペーサー層;少なくとも一つの中間層であって、その少なくとも一つの中間層の最も内部が、そのスペーサー層と接触しているもの;および少なくとも一つの酵素層であって、その少なくとも一つの酵素層の最も内部が、その少なくとも一つの中間層の最も外部と接触しているものを含む。
【0019】
酵素センサーのスペーサー層は、概して、直ぐ使用できる形、すなわち、含水スペーサー層が、相当量の水の含有する形であって、この場合に、酵素センサーは、流体試料中の被検体を測定することが可能であると記載されている。しかしながら、酵素センサーは、乾燥形で、すなわち、スペーサー層が実質的に乾燥している形で保管され且つ最終使用者に供給される。したがって、最終使用者は、相当量の水を吸収することが可能なスペーサー層が含水多孔質スペーサー層に変換されるように、酵素センサーの膜を水性液で湿潤させる必要があるであろう。他の層も、相当量の水を吸収することが可能であってよい。
【0020】
従来の酵素センサー構築においては、湿潤は、典型的には、酵素センサーの内部液によって行うことができる(例えば、図1を参照されたい)。平面センサーは、典型的には、例えば、特定の湿潤液、洗浄液または検量液等によって湿潤される。
【0021】
酵素センサーの主要部材は、(i)電極、(ii)その電極と接触している含水スペーサー層、(iii)少なくとも一つの中間層であって、その少なくとも一つの中間層の最も内部が、そのスペーサー層と接触しているもの、および(iv)少なくとも一つの酵素層であって、その少なくとも一つの酵素層の最も内部が、その少なくとも一つの中間層の最も外部と接触しているものである。スペーサー層、少なくとも一つの中間層、少なくとも一つの酵素層および場合によりカバー層は、一緒に、酵素センサーの酵素膜を形成する。それら個々の部材は、以下に詳細に記載されるであろう。
【0022】
含水スペーサー層
本発明の酵素センサーは、電極と少なくとも一つの中間層を隔離する含水スペーサー層を包含する。
【0023】
「含水スペーサー層」という用語は、センサー使用時に、電極表面におけるpH不安定性を減少させるという点で緩衝作用を与える層をさす。
含水スペーサー層中の水は、アノードが経験するイオン組成の変化を緩衝するので、非ファラデー電流は、一層長い時間間隔にわたって延長し、そしてより小さい振幅を有する電流を生じると考えられる。拡散は、少ない距離でのきわめて速やかな過程(典型的には、約50μMにわたるOの拡散について約1s未満)である。したがって、スペーサー層は、孤立して機能するのではなく、拡散抵抗(例えば、妨害制限層)との組合せでのみ機能し、その結果、システムは、抵抗体を含む直列のコンデンサーのように機能する。それ自体で、妨害制限層は、イオンにむしろ不浸透性であるべきであるか、さもなければ、スペーサー層は、きわめて厚くあるべきである。
【0024】
スペーサー層の高含水率は、被検体(例えば、H)が、その層を越えて容易に且つ急速に拡散しうるということを保証する。含水スペーサー層を含むセンサー信号及び含まないセンサー信号のコンピューターモデリングは、これら知見を支持する。例えば、下記のセンサーシステムについて、5%未満の振幅減少および13.0s〜13.2sの時定数の増加が認められた。
【0025】
慣用のセンサーのための含水スペーサー層の多孔質ポリマー性マトリックスを形成する(トラックエッチング処理済みまたは溶液流延)材料の好適な例には、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート(PETG)およびグリコール修飾ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)などのポリエステル、ポリカーボネート、セルロース(例えば、再生、アセテート、トリアセテート、アセテートブチレート)、ポリオレフィンおよびそれらの誘導体、フッ素化炭化水素ポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー)、ポリイミド(例えば、Kapton)、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニルおよびその誘導体(塩化ビニルコ(メタ)アクリレート型コポリマーなどのコポリマーを含めた)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン、およびオルガノシロキサンポリカーボネートのコポリマー(例えば、US3,189,662号に開示されたもの)、特に、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートが含まれるが、これに制限されるわけではない。一つの態様において、このようなセンサーのためのスペース層を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)である。好ましくは、このようなスペーサー層は、トラックエッチング処理済みである。
【0026】
平面センサー、例えば、厚手被膜センサーのための含水スペーサー層の多孔質ポリマー性マトリックスを形成する(溶液流延)材料の適する例には、親水性ポリウレタン、親水性ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタン、NafionTMポリマー、電気重合ポリマー(例えば、ポリチオフェン、1,3−ジアミノベンゼン、フェノール)およびSPEES−PES(ポリアリールエーテルスルホン/ポリエーテルスルホンコポリマー)より選択されるポリマーが含まれるが、これに制限されるわけではない。或いは、多孔質ポリマー性マトリックスを形成する材料は、多孔性形成化合物(例えば、洗剤または水溶性親水性ポリマー)と混合された慣用のセンサーのスペーサー層について直ぐ上に記載されたのと同じ材料、具体的には、このような多孔度形成性化合物と混合されたポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択することができる。
【0027】
本文中の、スペーサー層に関して用いられる「含水」という用語は、多孔質ポリマー性マトリックスが、相当量の水、例えば、多孔質ポリマー性マトリックスの重量に基づいて少なくとも6%の量の水を含むということを意味するものとする。含水率は、なお一層高くてよく、例えば、少なくとも10%若しくは少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも40%若しくは少なくとも50%でさえも、またはそれより高い含有率のように、少なくとも8%であってよい。溶液流延平面センサーについて、全膨潤(すなわち、水吸収)度は、過度に高い水吸収が、酵素膜の構造保全性に有害であるかもしれないので、慎重に考慮されるべきである。したがって、平面センサーについて、含水率は、好ましくは、150%のように、200%を上回るべきではない。
【0028】
流体試料および他の液体中のビカーボネート(HCO)の作用を更に減少させるために、緩衝液、陽イオン交換材料または電解質塩をスペーサー層中に包含することは、好都合であると考えられる。したがって、一つの態様において、含水スペーサー層は、緩衝剤、電解質塩(例えば、電解質ポリマー)および陽イオン交換材料より選択される一つまたはそれ以上の成分を更に含む。
【0029】
スペーサー層は、トラックエッチング処理済み材料について0.0005〜2%(vol/vol)の範囲内、および溶液流延材料について1〜90%の範囲内の多孔度を有することができる。
【0030】
トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用のクレアチニン/クレアチンセンサーおよび尿素センサーについて、多孔度は、好ましくは、0.2〜0.25%のように、0.05〜0.1%の範囲内であってよい。トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用のラクテートセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.003〜0.004%のように、0.0005〜0.015%の範囲内であってよい。トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用のグルコースセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.01〜0.02%のように、0.001〜0.05%の範囲内であってよい。トラックエッチング処理済み膜の多孔度は、多孔度(%)=π×(細孔直径/2)×(細孔密度)×100%として決定される。スペーサー層の平均細孔サイズは、1〜150nmまたは10〜110nmのように、0.05〜250nmの範囲内であってよく、そして細孔密度は、40,000〜40,000,000個細孔/cmの範囲内であってよい。
【0031】
溶液流延スペーサー層の多孔度は、膜が水で湿潤している時に水で占有される体積として最も簡単に決定することができる。溶液流延スペーサー層の多孔度は、3〜85%のように、1〜90%の範囲内であってよい。トラックエッチング処理済み膜の多孔度と溶液流延膜の多孔度との間の少なくとも1オーダーの差は、トラックエッチング処理済み膜の「有効な」細孔だけを考慮しているということによって説明することができるが、溶液流延膜の細孔度の決定には、全ての細孔およびキャビティが包含される。
【0032】
スペーサー層の水と固形物との間の重量比は、10:1〜1:10、例えば、8:1〜1:5または10:1〜1:2の範囲内であってよい。
含水スペーサー層は、典型的には、0.5〜15μmのように、0.2〜20μmの範囲内の厚みを有する。平面センサーについて、その厚みは、典型的には、0.5〜5μmのように、0.2〜10μmの範囲内である。慣用のセンサーについて、その厚みは、典型的には、2〜15μmのように、1〜20μmの範囲内である。
【0033】
含水スペーサー層は、溶液流延層の形かまたはトラックエッチング処理済み膜の形であってよい。適切な多孔度を得るためには、具体的には、平面センサー、例えば、厚手皮膜センサーのためのスペーサー層について、上述のポリマー性材料と、多孔度形成性化合物(例えば、洗剤、水溶性親水性ポリマー等)とを混合することがしばしば望まれる。
【0034】
慣用のセンサーの場合、電極で検出される第二種が、電極表面へと一層正確に向けられるように、細孔は、電極表面に対して実質的に垂直に配向されていること(例えば、図1を参照されたい)が重要であると考えられるので、トラックエッチング処理済み膜を用いるのが好適である。これは、境界区域からの減少した拡散を引き起こし、したがって、より速いセンサー応答を与える。更に、この構築では、半径方向の電気的接触は最小限にされ、それによって、外部電気雑音は減少する。
【0035】
一つの態様において、センサーは、慣用のタイプのものであり、そして含水スペーサー層は、トラックエッチング処理済みポリエチレンテレフタレート材料である。別の態様において、センサーは、平面タイプのものであり、そして含水スペーサー層は、好ましくは、例えば、洗剤、水溶性親水性ポリマー等より選択される多孔性形成化合物と混合された親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートの溶液流延層である。
【0036】
上に定義のいろいろな態様について、少なくとも一つの酵素層から電極を隔離する少なくとも一つの中間層と含水スペーサー層の組合せは、パラセタモール、アスコルビン酸および尿酸などの化合物の拡散を、最初の15秒間に信号を少なくとも95%のような、少なくとも90%減少させるような方法で制限可能であることが好適である。
【0037】
中間層
一つの態様において、酵素層は、スペーサー層と直接接触しておらず、そのため酵素センサーは、好ましくは、妨害制限層として機能する少なくとも一つの中間層を包含してよい。
【0038】
別の態様において、その少なくとも一つの中間層は、例えば、セルロースアセテート(CA)、NafionTM、硬質PVC、BaytronTM、電気重合ポリマー(例えば、ポリチオフェン、1,3−ジアミノベンゼン、フェノール)およびSPEES−PES(ポリアリールエーテルスルホン/ポリエーテルスルホンコポリマー)より選択される。一つの態様において、少なくとも一つの中間層は、妨害制限セルロースアセテート(CA)層である。
【0039】
スペーサー層および中間層の組合せ
別の変形において、含水スペーサー層および少なくとも一つの中間層を組み合わせて、中間層について記載されたタイプの材料およびスペーサー層について記載されたタイプの材料の不均一層にする。その層は、スペーサー層タイプの材料が、少なくとも一つの中間層タイプの材料の連続相中に分散するような方法で形成される。材料および性質に関する選択肢は、スペーサー層および少なくとも一つの中間層について上に記載の通りである。
【0040】
電極
酵素センサーの電極は、被検体と、一つまたは複数の酵素(例えば、クレアチニンセンサーの場合のような酵素カスケード)との反応生成物に配慮して選択される。典型的には、電極は、貴金属、例えば、金、パラジウム、白金、ロジウム、インジウムまたはイリジウム、好ましくは、金または白金、またはそれらの混合物から製造される。他の好適な電子伝導性材料には、MnO、プルシアンブルー、黒鉛、鉄、ニッケルおよびステンレス鋼が含まれる。
【0041】
いくつかの場合、必須の電極に隣接した追加の電極、例えば、内部参照電極および/または対向電極を更に包含するのが好適である。例えば、図3を参照されたい。
酵素層
酵素センサーの(一つまたは複数の)酵素層は、一つまたはそれを超える酵素が、電極表面で検出することができる二次種への被検体の変換を容易にするという点で、重要な役割を果たしている。いくつかの態様において、単一酵素が用いられるが(例えば、グルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼ、ウレアーゼ)、複数の酵素(例えば、クレアチナーゼまたはサルコシンオキシダーゼ)を用いて、検出することができる種をもたらす反応カスケードを容易にすることができる。
【0042】
一つまたは複数の酵素は、それ自体で付着しているかまたは、直接的にまたは間接的に固定した形、例えば、ポリマー中に埋封又は混合した形、または移動を減少させるまたは排除するように基底層またはカバー層に架橋したまたは固定した形であってよい。いくつかの態様において、複数の酵素は、別々の層に配置することができる。酵素層は、更に、過剰量の酵素の使用を免れるように且つ十分に測定された量の酵素を、センサー膜の十分に規定された領域に確実に入れるように、リングまたはガスケットによって定位置に保持することができる。
【0043】
少なくとも一つの酵素層は、炭水化物オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、α−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ウレアーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、P−450、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよび関連補酵素が含まれるがこれに制限されるわけではない少なくとも一つの酵素を含んでよい。
【0044】
クレアチンの検出には、酵素層は、好ましくは、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを含む。クレアチニンの検出には、酵素層は、好ましくは、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを含む。グルコースの検出には、酵素層は、好ましくは、グルコースオキシダーゼを含む。ラクテートの検出には、酵素層は、好ましくは、ラクテートオキシダーゼを含む。尿素の検出には、酵素層は、好ましくは、ウレアーゼを含む。
【0045】
カバー膜
酵素センサーは、更に、一定の十分に規定された典型的な量の被検体を、酵素層中に確実に拡散させるように、すなわち、制御条件下において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料のカバー膜を包含してよい。このような被検体で制限される変換は、センサー応答と、妥当な範囲内の被検体濃度との間に実質的線形関係を得るための前提条件である。
【0046】
したがって、本発明の酵素センサーは、好ましくは、流体試料から酵素層を分離するのに適応しているカバー膜の形の拡散制限層を含む。そのカバー膜は、好ましくは、被検体の変換のための固定化酵素の能力を超えないように、および被検体の酵素変換に十分な酸素(O)が酵素層中に存在するように、酵素層中への被検体の拡散を制限する多孔質膜である。拡散制限層の原理は、例えば、デンマーク特許第170103号に記載されている。したがって、実際は、既知のカバー膜はいずれも、本発明の酵素センサーに関して有用でありうる。
【0047】
更に、カバー膜を介する被検体の拡散は、二つの別々の流体試料の同一被検体濃度が、十分に規定されたセンサー応答を生じるように、時間経過中におよび試料ごとに不変であるということが望まれる。更に望まれるのは、カバー膜が、その膜を越えて少量の被検体を急速拡散させることが可能であるという特徴であり、それによって、酵素層中の被検体の一様分散が容易になるので、酵素層の酵素は、被検体を第二種へと速やかに変換して、急速センサー応答を生じる。被検体のこのようなほぼ同時の変換は、改善された線形性をもたらす。更に、巨大分子、例えば、タンパク質および酵素は、カバー膜を越えて移動するのを実質的に妨げられることが望ましい。例えば、洗浄溶液または血液試料中に存在するプロテアーゼは、このようなプロテアーゼが、カバー膜中におよびそれを介して移動することが可能である場合、酵素層に有害な作用を有するであろうということが注目されてきた。
【0048】
もう一方において、カバー膜は、センサー内の第二種(例えば、HおよびO)の高い保持性を与えることが可能であるということも重要であり、その結果、その第二種に由来する応答には、カバー膜の細孔を介して拡散する相当量のそれらの種によってバイアスがかけられるということはなく、そして被検体で制限される変換を維持するための十分な量のOが、酵素層中に保持される。これら特徴は、具体的には、拡散制限作用を有する中間層が、酵素層と電極との間に配置されるかどうかを考慮するのに関係がある。
【0049】
その少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、かなり広範囲の材料から選択することができる。代表的な例には、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート(PETG)およびグリコール修飾ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)などのポリエステル、ポリカーボネート、セルロース(例えば、再生、アセテート、トリアセテート、アセテートブチレート)、ポリオレフィンおよびそれらの誘導体、フッ素化炭化水素ポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー)、ポリイミド(例えば、Kapton)、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニルおよびその誘導体(塩化ビニルコ(メタ)アクリレート型コポリマーなどのコポリマーを含めた)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン、およびオルガノシロキサンポリカーボネートのコポリマー(例えば、US3,189,662号に開示されたもの)が含まれる。
【0050】
本発明のある側面において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択される。
一つの態様において、多孔質ポリマー性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)である。
【0051】
別の態様において、多孔質ポリマー性材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)である。
典型的には、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリウレタンを含まないが、それは、このような材料が、特に、拡散制限作用を有する中間層が包含される場合、過剰レベルのH拡散を与えるであろうと考えられるからである。
【0052】
一つの態様において、これら好都合な特性のいくつかを有するカバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、好ましくは、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されることで達成される。
【0053】
カバー膜(そして更に、その少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料)は、二つの面、すなわち、酵素層に近接する一面および酵素層に遠位の一面を含むが、後者は、更に、酵素センサーが使用中の時に、流体試料に面している。上記のように、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面は、親水性ポリマーで被覆されている。
【0054】
本発明のある側面において、少なくとも、酵素層に遠位の面は、親水性ポリマーで被覆されている。この側面は、血液バイアスおよび血液ドリフトの減少又は排除に関する利点を与え且つセンサーの寿命を延長する。
【0055】
別の側面において、少なくとも、酵素層に近接する面は、親水性ポリマーで被覆されている。変化する感度、線形性の欠如、酵素層中の被検体分布、および減少した寿命に関する問題は、この方法で減少させるまたは排除することができると考えられる。少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、例えば、適する血液適合性をそれ自体が有する多孔質ポリマー性材料を選択することによって適切に選択される場合、血液バイアスおよび血液ドリフトに関する問題は、酵素層に遠位の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の面の外部表面および細孔口を被覆している親水性ポリマーの不存在下においてさえも、少なくとも一部分減少させることができる。
【0056】
好ましい態様において、双方の面は、親水性ポリマーで被覆されている。この配置は、血液バイアスおよび血液ドリフトの減少または排除さえも、酵素層中の被検体分布、感度および線形性の改善に関する利点を与え、センサーの寿命を延長し、酵素の移動を制限し、そして線形性を改善する。
【0057】
「外部表面および細孔口」という表現は、細孔口(細孔開口部)で中断される表面である少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の各々二つの面をさす。
本文中の「で被覆される」という表現は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の表面のみならず、細孔口も、親水性ポリマー(例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される)で被覆されるということを意味する。
【0058】
本明細書中で用いられる「親水性ポリマー」という表現は、単一親水性ポリマー、更には、二つまたはそれを超える親水性ポリマーの混合物を意味するものである。上記の一つまたは複数の親水性ポリマーは、30%までの他の非親水性ポリマーと混合することができるということは理解されるはずである。しかしながら、一つの好ましい態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料上のコーティングは、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーを含むにすぎない。
【0059】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の外部表面および細孔口を被覆するための、例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーの使用は、更に、コーティングする前の多孔質ポリマー性材料の異なった多孔度に依存し且つ異なった試料被検体濃度範囲に適する酵素膜を製造するための所望の拡散制限を得るように拡散性を調節することを可能にする。
【0060】
平面センサーについて、親水性ポリマー(例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される)のコーティングは、典型的には、親水性ポリマーの溶液を、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の表面(および細孔口)上に分配する、噴霧する、スクリーン印刷すること等によって得られる。本発明のある側面において、酵素層に最も遠位の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆される。別の態様、すなわち、酵素層を親水性ポリマーでコーティングした後に、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を与える(そして場合により、その多孔質ポリマー材料を同じまたは別の親水性ポリマーでコーティングする)態様も、まさに、両面がコーティングされている態様の通りであると考えられる。
【0061】
慣用のセンサーについては、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料上のコーティングは、親水性ポリマーの溶液を、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の(両面かまたはその一つの面だけの)表面(および細孔口)上に分配する、噴霧する、スクリーン印刷すること等によって得ることができるし、または少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を、親水性ポリマー等の溶液中に浸漬することができる。
【0062】
したがって、具体的には、トラックエッチング処理済み多孔質材料を含む慣用のセンサーについて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の両面は、親水性ポリマーで被覆されていてよい。酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の面も、親水性ポリマーで被覆されていてよいということは、一つ一つの細孔間の比較的大きい距離が、親水性ポリマーコーティングの不存在下において非線形応答を生じるという理由で、具体的には、トラックエッチング処理済み多孔質ポリマー性材料について特別な利点を与えると考えられる。この状況において、被検体(酵素基質)は、酵素層内の非占有酵素分子へと拡散すべきであろうが、一層長い拡散距離は、非同時変換を引き起こす。対照的に、酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー材料の面上の親水性ポリマーコーティングは、その層内の被検体の拡散を容易にし且つ被検体を一層一様に酵素層に与えるであろうが、それによって、より高いまたはより線形の応答が得られる。したがって、酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー材料の面上の親水性ポリマーコーティングでは、被検体は、利用可能な酵素分子に到達するまで、より稠密な酵素層において短距離を移動すべきであるにすぎないであろう。
【0063】
本発明のいくつかの側面において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の外部表面および細孔口だけが、親水性ポリマーで被覆されているのではなく、その親水性ポリマーもまた、その少なくとも一つの面から多孔質ポリマー性材料の細孔に少なくとも一部分浸透している。
【0064】
これら具体的な態様では、カバー膜層の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されていると言われている。
本文中の「含浸されている」という用語は、親水性ポリマーが、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の両面の外部表面および細孔口を被覆し、そして更に、多孔質ポリマー性材料の細孔に浸透しているということを意味するものである。
【0065】
「少なくとも一部分含浸されている」という用語は、親水性ポリマーが、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口を被覆し、そして更に、その少なくとも一つの面に由来する多孔質ポリマー性材料の細孔に少なくとも一部分浸透しているということを意味するものである。
【0066】
本発明の別の側面において、親水性ポリマーは、センサー使用時に、実質的に水に不溶性である。しかしながら、親水性ポリマーは、カバー膜に適用されてそれを被覆する場合に、好ましくは、架橋しておらず、そして好ましくは、引き続き架橋は起こらない。代わりに、親水性ポリマーの親水性および水への不溶性は、親水性ポリマーの親水性セグメントおよび疎水性セグメント/部分の好適な組合せによって得られる。この配置は、架橋工程を完全に省略することができるという理由で、はるかに単純化された製造手順を提供する。
【0067】
「水に不溶性」という用語は、親水性ポリマーで被覆されたカバー膜を水溶液中において25℃で24時間貯蔵時に、実質的に水中に溶解しないポリマーを意味する。
本発明のある態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、0.002〜30%(vol/vol)の範囲内の多孔度を有する。
【0068】
ポリマー性材料の望ましい多孔度は、ある程度は、検出範囲の望ましい上限に依存する。検出範囲のきわめて高い上限は、カバー膜が、被検体にかなり高い拡散抵抗を与えるはずであるような広い線形範囲を得るために、かなり低い多孔度を必要とするであろう。多孔度(%(vol/vol))および線形検出範囲の上限(被検体のmM)の数積として表される場合、その値は、好ましくは、0.05〜10[%(vol/vol)・mM]または好ましくは、0.1〜2[%(vol/vol)・mM]のような、0.01〜50[%(vol/vol)・mM]の範囲内である。
【0069】
多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズは、1〜150nmまたは10〜110nmのように、0.05〜250nmの範囲内であってよい。
一つの態様において、具体的には、センサーが慣用のタイプのものである場合、多孔質ポリマー性材料は、40,000〜40,000,000個細孔/cmの範囲内の細孔密度を有するトラックエッチング処理済み材料である。
【0070】
トラックエッチング処理済みカバー膜を含むクレアチニン/クレアチンセンサーおよび尿素センサーについて、多孔度は、好ましくは、0.2〜0.25%のように、0.05〜0.1%の範囲内である。トラックエッチング処理済みカバー膜を含むラクテートセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.003〜0.004%のように、0.0005〜0.015%の範囲内である。トラックエッチング処理済みカバー膜を含むグルコースセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.01〜0.02%のように、0.001〜0.05%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度は、多孔度(%)=π×(細孔直径/2)×(細孔密度)×100%として決定される。
【0071】
溶液流延膜の多孔度は、膜が水で湿潤している時に水で占有される体積として一層容易に決定することができる。溶液流延膜の多孔度は、典型的には、3〜30%のように、1〜40%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度と溶液流延膜の多孔度との間の少なくとも1オーダーの差は、トラックエッチング処理済み膜の「有効な」細孔(すなわち、貫通している細孔)だけを考慮しているということによって説明することができるが、溶液流延膜の細孔度の決定には、全ての細孔およびキャビティが含められる。
【0072】
一つの態様において、親水性ポリマーは、親水性ポリウレタンである。
ポリウレタンは、血液接触表面に、例えば、インプラントおよび医療用具に最も広く用いられている生物医学的ポリマーである。ポリウレタンエラストマーは、硬質および軟質のセグメントの交互ブロックから成る多相ブロックコポリマーである。疎水性硬質セグメントは、脂肪族、環状脂肪族または芳香族のジイソシアネートと、ジオール、ジアミンまたは水との反応で形成される。軟質の親水性または相対的に親水性のセグメントは、低分子量のヒドロキシ末端付きポリエーテル、ポリエステルまたは脂肪族ポリオレフィンから構成される。親水性ポリオールは、連鎖延長剤として用いられるし、または或いは、プレポリマー中に包含することができる。硬質と軟質のセグメント間の、および疎水性と親水性のセグメント間の化学的不適合性は、ポリウレタン中の相凝離をもたらす。硬質セグメントドメインは、第二結合で相互連結していて且つ軟質セグメントマトリックス中に分散しているが、システム全体を強化する物理的架橋として働く。軟質マトリックスは、異なった親水性を有するポリエーテルまたはポリエステルの混合物を用いることにより、親水性に関して調節することができる。きわめて親水性のポリウレタンには、ポリエチレングリコールがしばしば用いられるが、それらの親水性の調節は、高級ポリアルキルエーテル、例えば、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコールで達成することができる。この方法で、ポリウレタンは、親水性、疎水性、親水性/疎水性、硬質且つ剛性または軟質且つ弾性、加水分解安定性、または意図的に分解性となるように製造することができる。それらの硬質および軟質セグメント構造のゆえに、それらポリウレタンは、機械的に強く、引裂抵抗性であり、そして良好な屈曲寿命を示す。これら性質は、それらポリウレタンを、センサー膜用の親水性コーティングとして適切なものにする。それらコーティングは、親水性セグメントの含有率による高吸水および良好な使用安定性を有する。それらの疑似架橋セグメント構造のゆえに、それらコーティングは、水に不溶性でもある。
【0073】
親水性ポリウレタンは、その中に包含される親水性セグメント、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド等のセグメントを有するポリウレタンより選択することができる。このような親水性ポリウレタンは、末端ヒドロキシ基またはアミノ基を有することによって、ジイソシアネートとの反応により線状ポリマー鎖を形成するポリアルキレングリコール(ポリアルキレンオキシド)から製造することができる。このような親水性ポリウレタンの例は、US4,789,720号;US4,798,876号;およびUS5,563,233号に開示されたものである。他の好適な例には、親水性基、例えば、脂肪族ポリエーテルで修飾されたポリウレタンが含まれる。例えば、US6,200,772B1号を参照されたい。
【0074】
親水性セグメントは、典型的には、ポリエチレングリコール、アミノ基末端付きポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミノ基末端付きポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンイミン、特にポリエチレングリコールから誘導される。
【0075】
いくつかの態様において、親水性ポリウレタンは、脂肪族ポリエーテルウレタン、脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエーテルウレタン、環状脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、芳香族ポリエーテルウレタン、芳香族ポリエーテルウレタン尿素、脂肪族ポリエステルウレタン、脂肪族ポリエステルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエステルウレタン、環状脂肪族ポリエステルウレタン尿素、芳香族ポリエステルウレタンおよび芳香族ポリエステルウレタン尿素より選択される。脂肪族ポリエーテルウレタンまたは環状脂肪族ポリエーテルウレタン(例えば、シクロヘキシルポリエーテルウレタン)は、線状または環状の脂肪族ジイソシアネートが用いられている場合の膜コーティングとして好適である。天然起原のイソシアネート(例えば、リシンジイソシアネート)も適している。シクロヘキシルポリエーテルウレタンは、良好な生体適合性を膜に与え且つ膜の汚染を抑制するか又は排除さえもすると考えられる。
【0076】
本発明のある側面において、親水性ポリウレタンは、ポリエチレングリコールの主鎖セグメント−(CH−CH−O−)−を、具体的には、少なくとも7%(w/w)または少なくとも10%(w/w)のように、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む。相当量のポリエチレングリコールセグメントが含有されると、適当な親水性を付与され且つ血液適合性が改善されると考えられる。
【0077】
好ましい親水性ポリウレタンの好適な例は、本明細書中にそのまま援用されるUS5,322,063号に開示されたものである。
本発明のある側面において、親水性ポリウレタンは、多糖(例えば、アルギネート、カラゲナン、ペクチンおよびデキストラン)、ポリ(HEMA)、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVA)またはセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)の主鎖セグメントを、少なくとも7%(w/w)または少なくとも10%(w/w)のように、少なくとも5%(w/w)の多糖、ポリビニルアセテートまたはセルロース誘導体セグメントそれぞれの典型的な重量比で含む。
【0078】
商業的に入手できる好適な親水性ポリウレタンの例には、Hydromed D4(湿潤時の含水率:50%(w/w))および Hydromed D640(湿潤時の含水率:93%(w/w))が含まれる。いずれのポリウレタンも、Cardiotech International Inc., Wilminton, MA, USA の商品名である。
【0079】
Hydromed D4およびD640製品は、中心ポリブチレンオキシドセグメントと、ポリアルキレンオキシド末端基を含む。ポリアルキレンオキシド基は、ポリエチレンオキシドかまたはポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドであってよい。どちらの場合も、ポリエチレンオキシドセグメントは、好ましくは、ポリブチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのセグメント長さより長い。これは、十分な親水性および吸水、更には、適切な血液適合性を与えると考えられる。
【0080】
別の態様において、親水性ポリマーは、親水性ポリ(メタ)アクリレートである。
親水性ポリ(メタ)アクリレートの例には、エステルのアルコール部分の一部分としてポリ(エチレンオキシド)置換基を有するアクリル酸エステルから成る第一モノマー単位と、メタクリレートおよびアクリレートより選択される一つまたはそれ以上の第二モノマー単位を含むアクリルコポリマーが含まれる。第一モノマー単位のポリ(エチレンオキシド)置換基は、典型的には、200〜2000、例えば、500〜1500の平均分子量を有する。このような第一モノマーの例は、メトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、メトキシポリ(エチレンオキシド)アクリレート等である。第二モノマー単位の例には、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート等が含まれる。
【0081】
好ましい親水性ポリ(メタ)アクリレートには、本明細書中にそのまま援用されるWO93/15651A1号に開示されたアクリルコポリマーが含まれる。
モノマーの好ましい組合せは、メトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートである。
【0082】
他の好ましい親水性ポリ(メタ)アクリレートには、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)のセグメントまたは側鎖を有するものが含まれる。
本発明のある側面において、親水性ポリマーの親水性は、湿潤時の含水率が、25〜95%(w/w)または45〜95%(w/w)のように、5〜100%(w/w)または10〜95%(w/w)の範囲内になるようなものである。その含水率は、典型的には、より高い親水性セグメント含有率が(湿潤時の)より高い含水率を生じるという意味で、親水性ポリマーのタイプおよび含有率の関数である。多孔度も、含水率の好ましい範囲に関して、ある種の役割を果たすことがありうる、すなわち、小さい細孔を有する膜について、含水率の好ましい範囲は、10〜30%(w/w)のように、5〜80%(w/w)または8〜40%(w/w)であってよい。
【0083】
拡散、拡散速度、および特に大形の分子を排除する能力に関するカバー膜の性質は、センサーの機能性にとって重要である。
更に考慮されるべきことは、グルコースの拡散を可能にするが、もう一方では、Hの拡散を制限するカバー膜の能力である。したがって、一つの態様において、カバー膜を介するグルコースの拡散速度に対する、カバー膜を介したHの拡散速度は、3〜15または3〜10のように、3〜20の範囲内である。拡散速度は、「実験」部分に記載のように決定される。カバー膜の相対拡散速度は、典型的な既知のポリウレタンカバー膜の速度より優れている。
【0084】
カバー膜を介したグルコースの見掛け拡散係数は、グルコースセンサーについて、好ましくは、0.3〜1.5×10−9または0.5〜1.1×10−9のように、0.1〜5.0×10−9の範囲内であるべきである。該当するラクテートセンサーについて、カバー膜を介したラクテートの見掛け拡散係数は、好ましくは、1.2〜3.2×10−10のように、0.5〜5×10−10の範囲内であるべきである。見掛け拡散係数は、「実験」部分に記載のように測定される。
【0085】
更に関係があるのは、「大形」分子(例えば、ペプチド、タンパク質、および酵素層の酵素などの酵素(例えば、グルコースオキシダーゼおよびラクテートオキシダーゼ))を排除するが、同時に、関係のある被検体、例えば、ラクテート、グルコース、クレアチン、クレアチニン等の拡散を可能にするカバー膜の能力である。このような被検体は、典型的には、約200までの分子量を有するが、ペプチド、タンパク質および酵素は、小形ペプチドの場合の約300〜タンパク質の場合の数千またはそれを上回る分子量、例えば、グルコースオキシダーゼの場合の約30,000の分子量を有することがありうる。カバー膜層は(湿潤形の場合)、慣用のセンサーについて、典型的には、6〜30μmまたは10〜17μmのように、5〜40μmの範囲内の厚みを有する。厚手皮膜センサーについて、(湿潤形の)カバー膜層は、典型的には、2〜10μmまたは3〜5μmのように、1〜20μmの範囲内の厚みを有する。
【0086】
乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層は、特に厚手皮膜センサーについては、0.25〜3μmまたは0.5〜1μmのような、0.1〜5μmの範囲内の厚みを有する。
すなわち、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層は、典型的には、ポリマー性材料の平均細孔サイズの100〜1000%または200〜500%のような、100〜2000%の範囲内の厚みを有する。
【0087】
好ましい吸水性を考えると、湿潤形のカバー膜の厚みと、乾燥形のカバー膜の厚みとの間の比率は、好ましくは、2:1〜1:1の範囲内である。
湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、100:1〜1:1または80:1〜2:1の範囲内である。
【0088】
いくつかの態様において、特に、慣用のセンサーについては、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、10:1〜2:1の範囲内のように、20:1〜1.5:1の範囲内であってよい。いくつかの他の態様において、特に、例えば、トラックエッチング処理済み膜を含む慣用のセンサーについては、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、好ましくは、50:1〜30:1の範囲内のように、80:1〜10:1の範囲内である。
【0089】
例えば、溶液流延膜を含む平面センサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、好ましくは、6:1〜3:1の範囲内のように、10:1〜2:1の範囲内である。
【0090】
他の態様において、多孔質ポリマー性材料と親水性ポリマー(非湿潤状態)との間の重量比は、100:1〜1:1、例えば、80:1〜10:1または50:1〜30:1の範囲内である。
【0091】
本発明の一つの態様において、カバー膜は、酵素センサーの最も外部層である。
いくつかの利点は、例えば、親水性ポリウレタンを用いて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面(および細孔口)を被覆することによって確認された。一つには、ポリウレタンは本来、酵素/タンパク質の浸透/移動について、多孔質ポリマー性材料の細孔を有効にブロックする小さい細孔を有するが、親水性がより少なく且つ疎水性の分子の拡散を依然として可能にする。更に、親水性ポリウレタンは、通常は水に不溶性であるが、そのポリウレタンは、膨潤性であり且つ相当な量の水を保持することが可能である。それ自体で、ポリウレタンコーティングの浸出および変性は、センサーの寿命期間中に実質的に存在しないであろう。同じことが、例えば、親水性ポリ(メタ)アクリレートにも当てはまる。
【0092】
好ましい態様
一つの態様は、流体試料中のクレアチンの濃度を測定するアンペロメトリック酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP)の、特に、トラックエッチング処理済みPETP材料の含水スペーサー層;そのスペーサー層と接触している妨害制御層(例えばセルロースアセテート(CA)の妨害制限層);そのセルロースアセテート層と接触している酵素層(例えば、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層);およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。
【0093】
別の態様は、流体試料中のクレアチニンの濃度を測定するアンペロメトリック酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している含水スペーサー層(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP)の、特に、トラックエッチング処理済みPETP材料の含水スペーサー層);そのスペーサー層と接触している妨害制御層(例えば、セルロースアセテート(CA)の妨害制限層);そのセルロースアセテート層と接触している酵素層(例えば、サルコシンオキシダーゼ、クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層);およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。
【0094】
酵素センサーの使用
本発明の酵素センサーは、その最初の使用前に、通常は、信号が安定するまで、湿潤液または検量液に曝露されてよい。
【0095】
体液試料中の、例えば、クレアチニン、クレアチン、グルコース、ラクテート等の測定は、いろいろな自動または半自動分析器で行うことができるが、その多くは、マルチプルセンサーを用いて、多数のパラメーターを測定する。一つの例は、臨床分析器、特に血液分析器である。流体試料は、分析器のフローシステム中にまたは分析器中への導入用カセットのフローシステム中に手動でまたは自動的に導入される。したがって、一つまたはそれを超える生理学的試料パラメーターのセンサーは、フローシステム中に導入された流体試料に曝露することができる。
【0096】
したがって、本発明は、更に、流体試料中の被検体の濃度を測定する装置であって、本明細書中に記載の一つまたはそれ以上の酵素センサーを含む装置を提供する。
更に、本発明は、流体試料中の被検体の濃度を測定する方法であって、流体試料と、本明細書中に記載の酵素センサーとを接触させ、そして酵素センサーの電極を必要とする少なくとも一つの測定を行う工程を含む方法を更に提供する。
【0097】
それらのセンサーは、通常、そのセンサーへと導かれた試料及びセンサーから導き出された試料並びに他の流体、例えば、湿潤液、洗浄液、検量液等に曝露される。
上の説明は、いずれにせよ、請求の範囲に記載の発明を制限することを意図したものではない。更に、論じられた特徴の組合せは、本発明の解釈に絶対に必要というわけではない。更に、本明細書中に引用された全ての特許または公開出願の開示は、本明細書中にそのまま援用される。
【0098】
本発明を、次の実施例に更に詳しく説明する。しかしながら、これら実施例は、単に例示するためのものであり、いずれにせよ、本発明の範囲を制限するのに用いられるべきではないということは理解されるはずである。
【実施例】
【0099】
実験
材料
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)からのクレアチニナーゼは、Roche Diagnostics, Mannheim, Germany より入手した。Hydromed D4、Hydromed D640および Hydromed TPは、Cardiotech International Inc., Wilminton, MA, USA より入手した。
【0100】
一般的な手順
見掛け拡散係数の測定
拡散性は、拡散セル中で決定することができるが、その場合、基質の見掛け拡散係数の値は、全細孔度および水中の基質の拡散係数の結果として得られる。「見掛け拡散係数」とは、膜の細孔度を考慮していない膜全体の面積の「有効な」拡散係数を意味する。
【0101】
拡散セル(直径15mm、Oリングを有する)は、使用前に完全に清浄であるべきである。汚染を減少させるために、Oリングが配置されているセルの半分(cell half)には、高基質濃度の溶液を有することが望ましい。分析用の流体試料を、Oリング不含のセルの半分に充填する。それらセルの半分同士の間の開口部より約1/2cm大きい膜試料を切断し、Oリングの上に配置する。次に、そのセルを閉じ、密閉する。膜およびマグネチックバー(10mm)を含む拡散セルを、マグネチックスターラー上に置く(320±30r.p.m.)。30mLの洗浄液(S4970)中の基質溶液と、30mLの純洗浄液(S4970)とを、拡散セルの二つのハーフセル中に同時に充填する。48時間後および72時間後それぞれに、1mLの試料をシリンジで取り出し、そして1mLの純洗浄液を充満させることにより、純洗浄液中の基質濃度を測定する。試料中の基質濃度は、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical ApS, Copenhagen, Denmark)で測定する。
【0102】
見掛け拡散係数は、次のように決定する。流束:全てのシステムにおいて、化合物の受動輸送過程は、システム中の化合物の分布が、化合物の熱力学的平衡分布に該当しない場合に生じるであろう。流束は、1秒につき、面積単位(輸送方向に垂直な面積)を通過する化合物の量として定義し、J=量・cm−2・s−1の単位を有する。
【0103】
Fick の第一法則は、定常拡散にあてはまる。すなわち、線形濃度勾配が確定された。
【0104】
【数1】

【0105】
ここにおいて、Dは、化合物の拡散係数、すなわち、与えられた条件下における拡散性分子タイプに特有の値であり(それは、サイズおよび形のような、輸送速度を決定する因子を包含するのみならず、例えば、粘性のような周囲媒体の性質も包含する);dC/dxは、x地点における濃度プロフィールの勾配である(dC/dx値は、x方向の濃度勾配とも称され、その場合の符号文字は、濃度が増加する方向を示す、すなわち、dC/dxの正値は、濃度がx軸の正方向に増加することを示す)。
【0106】
一般的なセンサー構築(慣用のセンサータイプ)
図1に関して、センサー1は、電極2を含み、その上に、膜リング3が取り付けられている。電極2は、ミクロプラグ6を介して銀アノード接触体7と接続している白金線5と接続した白金アノード4を含む。その白金アノード4と、白金線の下方部分は、ガラス体8中に密封されている。ガラス体8とミクロプラグ6との間で、白金線5は、熱収縮チューブで保護されている。チューブ状銀参照電極10は、ガラス体8の上方部分を取り囲み、そして固定体11およびエポキシ12によって参照電極内部に固定されているアノード接触体7へと、電極2の長さで延びている。ガラス体8の下方部分は、電極基材13によって取り囲まれ、それに、膜リング3が取り付けられている。
【0107】
図1および図2に関して、参照電極10の上方部分は、プラグ部材14によって、分析装置(示されていない)の該当するプラグ中に電極2を取り付けるために、且つ、マントル15を固定するために取り囲まれている。ガスケット16および17は、電極2の測定用表面にあるいずれかの電解質が蒸発しないことを確実にするために、電極2とマントル15との間に置かれている。膜リング3は、マントル15の一端に取り付けられていて、リング20を含む。膜21は、リング20の下方開口部の上に張られている。この膜21は、図2に詳細に示されるが、実施例1に詳細に記載の通りである。
【0108】
一般的なセンサー構築(厚手皮膜センサータイプ)
図3は、作用電極(120)および参照電極(130;140)が形成されている誘電性支持体(110)上に形成された代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示している。それら電極は、二層誘電性封入材(150;160および151;161)によって境界形成されている。作用電極は、本明細書中に開示の含水スペーサー層(121)、中間層(170)、酵素層(180)およびカバー膜(190)で被覆されている。
【0109】
図3は、作用電極(120)および参照電極(130;140)が形成されている誘電性支持体(110)上に形成された代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示している。それら電極は、二層誘電性封入材(150;160および151;161)によって境界形成されている。作用電極は、本明細書中に開示のように、含水多孔質スペーサー層(121)、中間層(170)、酵素層(180)およびカバー膜(190)で被覆されている。
【0110】
図3に関して、200μmの厚みのアルミナ支持体110の一つの表面には、直径1000μmおよび10μmの厚みの円形白金作用電極120;その作用電極の外周の30〜330°の角度範囲を被覆している、外径3000μm、内径2000μmおよび10μmの厚みの環状白金対向電極130;およびその作用電極の外周の0°に位置している、直径50μmの円形銀/塩化銀参照電極140が設けられている。これら3種類の電極構造は全て、アルミナ支持体110を越えて、センサーエレクトロニクス(示されていない)へと、支持体を横断する白金仕上げ(filed)スルーホール(示されていない)を通じて接続されている。操作時に、作用電極120は、参照電極140に対して、+675mVへと分極する。
【0111】
更に、アルミナ支持体110上には、ガラスおよびポリマー封入材の二層構造がある。これら二層構造は、作用電極120を取り囲んでいる、外径1800μm、内径1200μmおよび50μmの厚みの環状構造160、161;および完全な電極システムを取り囲んでいる、50μmの厚みの構造150、151を包含する。これら二層構造は両方とも、ESL Europe of United Kingdom 製のESLガラス4904のアルミナ支持体110に面している、20μmの厚みの内層150、160;および SenDx Medical Inc. of California, USA の国際特許出願WO97/43634号に開示されたような、28.1重量%のポリエチルメタクリレート(Elvacite,製品番号2041,DuPont 製)、36.4重量%のカルビトールアセテート、34.3重量%のシラン化カオリン(Engelhard 製の製品番号HF900)、0.2重量%のヒュームドシリカおよび1.0重量%のトリメトキシシランを含む、SenDx Medical Inc. of California, USA 製のポリマー封入材の外層151、161から成る。
【0112】
含水多孔質スペーサー層121は、300nLの96%エタノール中の7%D4 PUR(Hydromed inc.)溶液を、微量分配によってPt作用電極上に分配することにより形成した。
【0113】
直径1200μmおよび1μmの厚みの、セルロースアセテートおよびセルロースアセテートブチレートの円形内膜170は、スペーサー層121の上部に製造されている作用電極120を被覆している。膜170は、スペーサー層を全て被覆することが重要であり、それ以外の場合、妨害物の排除は不完全であろう。
【0114】
直径1200μmおよび2μmの厚みの、グルタルアルデヒドで架橋したグルコースオキシダーゼの円形酵素層180は、その内膜170を被覆している。
酵素層180は、グルタルアルデヒドで架橋したグルコースオキシダーゼの緩衝化した溶液0.4μlを、セルロースアセテート膜170上に分配することによって製造した。酵素層は、37℃で30分間乾燥させた。
【0115】
直径4000μmおよび10μmの厚みの、PVC/トリメチルノニルトリエチレングリコール/ジエチレングリコールの円形カバー膜層190は、作用電極120上に中心を置く完全な電極システムを被覆している。
【0116】
カバー膜は、1.35グラムのポリ塩化ビニル(Aldrich 34, 676-4)、0.0149グラムのトリメチルノニルトリエチレングリコール(Th. Goldschmidt 製の Tergitol TMN3)および0.134グラムのジエチレングリコールから、それらに、21.3グラムのテトラヒドロフランおよび7.58グラムのシクロヘキサノンに加えて製造した。その混合物を、PVCが溶解するまで撹拌し、そして均一溶液を得た。28.5グラムのテトラヒドロフランを加えて、90/1/9のPVC/界面活性剤/親水性化合物組成の2%溶液を得た。その溶液を、3種類の電極全てを被覆するように且つポリマー封入材151での約0.5mmオーバーラップを有するように、センサー面積上に分配した。それらのカバー膜を、23±2℃で30分間および40℃で1.5時間乾燥させた。
【0117】
0.3μLの96%EtOH中の5%親水性ポリウレタン(80%の含水率を有するHydromed D640/Hydromed D4混合物)溶液(実施例1を参照されたい)を、乾燥した外膜上に分配した。
【0118】
全3種類の層170、180、190を、自動分配装置(IVEKポンプ)を取り付けられたx、y、z平面上に分配した。
実施例1−代表的なクレアチンおよびクレアチニンセンサー構築
クレアチンセンサーおよびクレアチニンセンサーは各々、既知のアンペロメトリックセンサーを含む。図1は、このようなセンサー1(上記)を示しており、これは生体試料中の被検体の濃度を測定するための装置、例えばABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical ApS, Copenhagen, Denmark)に取り付けるのに適している。
【0119】
図2は、四つの層、すなわち、電極2の白金アノード4に面している雑音減少性含水スペーサー層22;妨害制限膜層23;酵素層25を取り囲むガスケット24;および約80%の含水率を有する親水性ポリウレタンを含浸した拡散制限多孔質ポリマー性材料26を含む膜21の詳細を示している。コーティングされた膜層26は、分析される試料に面している。
【0120】
スペーサー層22は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)の21±2μmのトラックエッチング処理済み膜(細孔直径約1.3〜1.5μm;細孔密度:2.2・10個細孔/cm)であってよい。妨害制限膜層23は、セルロースアセテート(CA)の6±2μm多孔質膜であってよい。
【0121】
ガスケット24は、1500μmの直径のセンター穴を有する30±5μmの両面接着ディスクであってよい。ガスケット24の接着剤は、妨害制限層23および拡散制限層26に、それら層間から酵素を漏出させない程度に接着する。
【0122】
クレアチンセンサーの酵素層25は、典型的には、緩衝剤などの好適な添加剤と混合されたグルタルアルデヒドに架橋したクレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼの約20μm層である。クレアチニンセンサーの酵素層25は、典型的には、緩衝剤などの好適な添加剤と混合されたグルタルアルデヒドに架橋したクレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼの約20μm層である。
【0123】
拡散制限多孔質ポリマー性材料26は、親水性ポリウレタン(約80%の含水率を有するHydromed D640/Hydromed D4混合物)を含浸したポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層(細孔直径約0.1μm;細孔密度:3・10個細孔/cm)であってよい(実施例1を参照されたい)。
【0124】
クレアチニンセンサーの場合、クレアチンおよびクレアチニンを両方とも、過酸化水素に変換する。クレアチンセンサーの場合、クレアチンのみを過酸化水素に変換する。
アンペロメトリック電極では、過酸化水素を、Ag/AgClに対して+675mVでアノード酸化する。得られた電流の流れは、試料中のクレアチニン/クレアチン濃度に比例する。
【0125】
クレアチニンの濃度は、クレアチニンセンサー信号(クレアチン+クレアチニンを示している)と、クレアチンセンサー信号(クレアチンを示している)との間の差から決定する。
【0126】
実施例2−セルロースアセテート膜を介するイミダゾール/H−イミダゾールの相対拡散係数
CA膜を介したイミダゾール/H−イミダゾールの相対拡散係数は、CA膜を介したイミダゾールによって緩衝化された溶液と接触して得られた未緩衝溶液中のpHを分析することによって測定した。試料は双方とも30mLであり、双方の溶液に接触するCA膜は、直径10mmであった(上の「見掛け拡散係数の測定」を参照されたい)。その溶液は、140mM NaCl、4mM KCl、1mM CaClおよび110mMイミダゾールであり、pHは、25℃で7.40に調整した。20時間後、未緩衝溶液のpHは、25℃で8.86に上昇したが、他方の溶液のpHは未変化であった。したがって、イミダゾールの中性種(イミダゾール対の塩基性部分)は、荷電種よりも少なくとも30倍速く拡散可能であり、有意のpH変化を反映しているが、それは、検量溶液および試料それぞれへの曝露期間中に電極表面で認めることができる。
【0127】
実施例3−クレアチニンセンサー測定値への含水スペーサー層の影響
Radiometer Medical ApS, Denmark 製ABLTM735型の二つの類似した血液分析器を、実施例1に記載の二重センサーシステムに適応するように変更した。一つの血液分析器では、実施例1によるスペーサー層をいずれも装備した5個のクレアチニンセンサー(三酵素センサー)および5個のクレアチンセンサー(二酵素センサー)を配置した。同様に、もう一つの血液分析器では、5個のクレアチニンセンサー(三酵素センサー)および5個のクレアチンセンサー(二酵素センサー)を、実施例1に従うが、スペーサー層不含で配置した。
【0128】
検量溶液は、Radiometer Calibration Solution 1 S1720中の200μMクレアチニンおよび Radiometer Calibration Solution 2 S1730中の200μMクレアチンを溶解させることによって調製した。これら溶液を、他のおよびセンサーの応答が得られた後に、一つの装置中に繰り返し導入した。
【0129】
このような検量後、それらセンサーを、次の7種類のクレアチニン不含液およびクレアチン不含液に供して、それらの「疑似」クレアチン応答を測定した(表Aを参照されたい)。
【0130】
【表1】

【0131】
センサー信号は、センサーを試料に供する直前の信号と、試料接触後28秒の信号との差として計算する。同様に、センサー感度は、検量溶液から計算する。次に、7種類の液体についてのセンサー信号を、該当する「疑似」クレアチン濃度へと変換して、2酵素および3酵素双方のセンサーを、センサー感度を用いて比較する(表Bおよび表Cおよび図4を参照されたい)。期待値は「0」(ゼロ)であるということが注目される。
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
表Bおよび表Cから理解されうるように、スペーサー層を装備したセンサーは、含水スペーサー層不含のセンサーと比較して、よりわずかな差(2酵素センサーおよび3酵素センサーそれぞれによる「疑似」クレアチン信号間の差)、及び、よりわずかな標準偏差しか示さない。
【0135】
一連の類似した実験を、含水スペーサー層を含む3酵素センサーおよび含まない3酵素センサーで行った。それら結果を、この場合は、「疑似」クレアチニン信号へと変換する。それら結果は、図4に示されている(黒菱形は、スペーサー層を含むセンサーであり、そして空白四角は、スペーサー層不含センサーである)。センサーごとの変動は、スペーサー層の導入で減少する。
【0136】
実施例4−全血のクレアチン/クレアチニンセンサー測定値への含水スペーサー層の影響
健康な個体からの全血試料を、実施例1による上記センサーで測定した。患者血液試料のクレアチニン濃度は、実施例3による上の二系統(スペーサー層を含むおよび含まない)の各々からの5個のクレアチンセンサーおよび4個のクレアチニンセンサーの全組合せを用いて計算した(表Dおよび表Eを参照されたい)。
【0137】
【表4】

【0138】
【表5】

【0139】
表Dおよび表Eから分かるように、スパンおよび標準偏差は、スペーサー層を含むセンサーの場合に低下する。
実施例5−Hへの感度
白金電極、含水スペーサー層および妨害低減層を含むだけの三つの簡単な平面センサーを、本質的には、上の「一般的なセンサー構築(厚手皮膜センサータイプ)」に記載のように構築した。
【0140】
含水多孔質スペーサー層を、300nLの96%エタノール中の7%D4 PUR(Hydromed inc.)溶液を、微量分配によってPt作用電極上に分配することにより形成し、そして1μmの厚みのセルロースアセテートおよびセルロースアセテートブチレートの内膜を、そのスペーサー層の上部に製造した。
【0141】
二つの参照平面センサーは、上記のようにであるが、スペーサー層不含で且つ2μmの内膜厚みで製造した。
一連の測定は、5個のセンサーを用い且つ1mM H溶液を試験試料として用いて行った。そのH溶液は、グルコースに曝露されたグルコースオキシダーゼ層を模擬するのに用いた。それらの結果は、図5に示されている。
【0142】
より高い感度は、スペーサー層を持たないセンサーの場合(約35nA)よりも、スペーサー層を有するセンサーについて(約55nA)認められる。これは、白金電極への改善されたH拡散の結果であると考えられるが、その理由は、スペーサーが、高拡散速度を可能にするからであり、そしてセルロースアセテート内膜が、スペーサー層が存在する場合に、きわめて薄い層で分配されることが可能だからである。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、電極および膜を含む慣用の酵素センサーを示す。
【図2】図2は、図1のセンサーの膜を示す。
【図3】図3は、代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示す。
【図4】図4は、いろいろな液体と接触時の二重センサーシステムについて、疑似信号への含水スペーサー層導入の作用を示す。
【図5】図5は、含水スペーサー層および妨害排除層で被覆されたセンサーのHへの感度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の被検体の濃度を測定するアンペロメトリック酵素センサーであって、
電極、
前記電極と接触している含水スペーサー層、
少なくとも一つの中間層であって、前記中間層の最も内部が、前記スペーサー層と接触しているもの、および
少なくとも一つの酵素層であって、前記酵素層の最も内部が、前記中間層の最も外部と接触しているもの
を含むアンペロメトリック酵素センサー。
【請求項2】
スペーサー層が、トラックエッチング処理済み材料について0.0005〜2%(vol/vol)の範囲内の多孔度、および溶液流延材料について1〜90%の範囲内の多孔度を有する、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項3】
スペーサー層が、水および固形物を含み、そして水と固形物との間の重量比が、10:1〜1:10の範囲内である、請求項1又は2に記載の酵素センサー。
【請求項4】
スペーサー層が、0.2〜20μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項5】
含水スペーサー層が、緩衝剤、電解質塩および陽イオン交換材料より選択される一つまたはそれ以上の成分を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項6】
センサーが、慣用のセンサーであり、そしてスペーサー層が、固形物であって、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択される多孔質ポリマー母材から本質的に成る固形物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項7】
多孔質ポリマー母材が、ポリエチレンテレフタレート(PETP)材料である、請求項6に記載の酵素センサー。
【請求項8】
スペーサー層の多孔質ポリマー母材が、トラックエッチング処理済み膜である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項9】
センサーが、平面センサータイプであり、そしてスペーサー層が、固形物であって、親水性ポリウレタン、親水性ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタン、NafionTMポリマー、電気重合ポリマーおよびSPEES−PESより選択される多孔質ポリマー母材から本質的に成る固形物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項10】
スペーサー層の多孔質ポリマー母材が、溶液流延層である、請求項1〜7および請求項9のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵素センサーであって、
電極、
前記電極と接触している含水スペーサー層、
前記スペーサー層と接触している中間層、および
前記中間層と接触している酵素層
を含む酵素センサー。
【請求項12】
酵素層が、クレアチナーゼおよび/またはクレアチニナーゼを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項13】
前記酵素層のためのカバー膜を更に含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項14】
カバー膜が、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、ここにおいて、該少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されている、請求項13に記載の酵素センサー。
【請求項15】
流体試料中のクレアチンの濃度を測定するアンペロメトリック酵素センサーであって、
金属電極、
前記金属電極と接触している含水スペーサー層、
前記スペーサー層と接触している妨害制限層、
前記妨害制限層と接触している、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層、および
前記酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、前記カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するアンペロメトリック酵素センサー。
【請求項16】
多孔質ポリエチレンテレフタレート材料が、トラックエッチング処理済み材料である、請求項15に記載の酵素センサー。
【請求項17】
流体試料中のクレアチニンの濃度を測定するアンペロメトリック酵素センサーであって、
金属電極、
前記金属電極と接触している含水スペーサー層、
前記スペーサー層と接触している妨害制限層、
前記妨害制限層と接触している、サルコシンオキシダーゼ、クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層、および
前記酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、前記カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するアンペロメトリック酵素センサー。
【請求項18】
多孔質ポリエチレンテレフタレート材料が、トラックエッチング処理済み材料である、請求項17に記載の酵素センサー。
【請求項19】
流体試料中の被検体の濃度を測定する装置であって、請求項1〜18のいずれか1項に記載の一つまたはそれ以上の酵素センサーを含む装置。
【請求項20】
流体試料中の被検体の濃度を測定する方法であって、
該流体試料と、請求項1〜18のいずれか1項に記載の酵素センサーとを接触させる工程、及び
該酵素センサーの電極を必要とする少なくとも一つの測定を行う工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−541104(P2008−541104A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511554(P2008−511554)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000264
【国際公開番号】WO2006/122553
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(500554782)ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス (20)