説明

含水素フルオロオレフィン化合物の製造方法

【課題】ポリフルオロシクロペンテンの塩素原子を効率良くフッ素原子に置換する方法を提供する。
【解決手段】式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を金属フッ化物、及びアルキルスルホン酸塩と接触させて、式(1)のXをフッ素に置換した含水素フルオロオレフィン化合物を得る。


ただし、式(1)中、nは0〜3の整数であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造分野において有用なエッチング、CVD等のプラズマ反応用ガス、含フッ素ポリマーの原料であるモノマー、あるいは、含フッ素医薬中間体、ハイドロフルオロカーボン系溶剤の原料として有用な含水素フルオロオレフィン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C=Cを構成する炭素原子に水素原子を有する、含水素フルオロシクロオレフィン化合物としては炭素数4〜6の化合物が良く知られており、幾つかの製造方法が開示されている。
特許文献1ではオクタフルオロシクロペンテンを貴金属触媒存在下に水素化してオクタフルオロシクロペンタンを得、続いて、アルカリ処理することによりヘプタフルオロシクロペンテンを得ている。
非特許文献1においてはヘキサフルオロシクロブテンを金属水素化物で処理することにより、ペンタフルオロシクロブテンが得られている。また、非特許文献2においてはジクロロヘキサフルオロシクロブタンを水素化リチウムアルミニウムヒドリドにより還元させて得られるヘキサフルオロシクロブタンをアルカリ処理することによりペンタフルオロシクロブテンを得ている。
しかしながら、非特許文献1においては原料に用いるヘキサフルオロシクロブテンがガス状化合物のため、その取り扱いが難しく、溶媒中に溶解させる際に極低温に冷却させる必要があり、工業的に量産には不向きであり、また、フッ素原子の1つを水素に置換する方法を取るため工業的には不経済な方法である。非特許文献2においてもヘキサフルオロシクロブタンをアルカリで処理だけで操作は簡便であるが、収率が約60%程度と満足行くものではなく、また、原料と目的物であるペンタフルオロシクロブテンとの沸点差がほとんど無いがために精製が極めて困難と言わざるを得ない。
ところでC=Cを構成する炭素原子に水素原子を有しないフルオロシクロオレフィン化合物の製造方法に関して、特許文献2においては、−CCl=CCl−基を有する化合物を金属フッ化物と接触させることにより、−CF=CF−基に変換する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開11−292807号公報
【特許文献2】WO97/043233号公報
【非特許文献1】Journal of Chemical Society,3198(1961)
【非特許文献2】Journal of Chemical Society,1177(1954)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先述の特許文献2では、ジクロロヘキサフルオロシクロペンテンを主原料として、−CCl=CCl−基をフッ化カリウムで処理することにより、収率良くオクタフルオロシクロペンテンに変換できる旨が開示されている。ところが、C=Cを構成する炭素原子に水素原子を1つ有する化合物を得るべく、−CCl=CH−基を有するポリフルオロシクロペンテンを原料に、特許文献2と同様な条件でフッ素化を試みたところ、目的物である1H−ヘプタフルオロシクロペンテンが得られるものの、その収率は非常に低いものであった。
従って、本発明は−CCl=CH−基を有するポリフルオロシクロペンテンの塩素原子を効率良くフッ素原子に置換できる技術を開発することを目的とするものである。
本発明者らは、特許文献2に記載されているようなクロロポリフルオロシクロアルケンの場合には炭素原子上での塩素―フッ素の付加脱離機構だけでなく、S2’型反応機構が合わさって反応が繰り返されて進行するので、比較的温和な条件で反応が進行するのに対し、−CCl=CH−基を有するポリフルオロシクロペンテンを原料に用いた場合は、−CCl=CH−基の水素原子によりS2’型機構での反応が阻害され、炭素原子上での塩素―フッ素の付加脱離機構でのみしか塩素―フッ素交換反応が起こらないために、反応効率が悪く、反応性が低いと考えた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を金属フッ化物、及びアルキルスルホン酸塩と接触させて、式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物を得る製造方法が提供される。
【化1】

ただし、式(1)中、nは0〜3の整数であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子。
【化2】

ただし、式(2)中、nは0〜3の整数である。
本発明において、前記アルキルスルホン酸塩がトリフルオロメタンスルホン酸カリウムであることが好ましい。
また本発明において、前記式(2)で表される化合物が1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテン又は1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の製造方法は、前記式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を金属フッ化物,及びアルキルスルホン酸塩と接触させて、前記式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物を一工程で製造するものである。
【0007】
原料として用いる含フッ素ハロゲン化合物は、前記式(1)に示すように、Xに塩素、臭素又はヨウ素原子を有する含フッ素シクロオレフィン化合物が使用される。例えば、1−クロロジフルオロシクロプロペン、1−ブロモジフルオロシクロプロペン、1−ヨードジフルオロシクロプロペンなどの炭素数3の化合物、1−クロロテトラフルオロシクロブテン、1−ブロモテトラフルオロシクロブテン、1−ヨードテトラフルオロシクロブテンなどの炭素数4の化合物、1−クロロヘキサフルオロシクロペンテン、1−ブロモヘキサフルオロシクロペンテン、1−ヨードヘキサフルオロシクロペンテンなどの炭素数5の化合物、1−クロロオクタフルオロシクロヘキセン、1−ブロモオクタフルオロシクロヘキセン、1−ヨードオクタフルオロシクロヘキセンなどの炭素数6の化合物が挙げられる。これらの中でも、1−クロロテトラフルオロシクロブテン、1−ブロモテトラフルオロシクロブテン、1−ヨードテトラフルオロシクロブテンなどの炭素数4の化合物、1−クロロヘキサフルオロシクロペンテン、1−ブロモヘキサフルオロシクロペンテン、1−ヨードヘキサフルオロシクロペンテンなどの炭素数5の化合物がより好ましい。
【0008】
原料として用いる含フッ素ハロゲン化合物は特開2000−86548号公報に記載された方法等に従って製造することができるし、また、Journal of American Chemical Society, Vol.86,5361(1964)に記載の方法によっても製造することが可能である。前者は1,2−ジハロゲノヘキサフルオロシクロペンテンを金属触媒存在下に水素還元して、後者は同様に、1,2−ジハロゲノポリフルオロシクロアルケンを金属水素化物により液相で還元して製造するものである。
【0009】
本発明において得られる含水素フルオロオレフィン化合物は式(2)に示されるように、オレフィン部位に水素を持つ化合物である。その具体例としては、1、3,3−トリフルオロシクロプロペン、1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテン、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン、1,3,3,4,4,5,5,6,6−ノナフルオロシクロへキセンが挙げられ、これらの中でも、1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテン、1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンがより好ましい。
【0010】
本発明で用いる金属フッ化物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウムなどが挙げられ、これらの中でもフッ化カリウム、フッ化セシウムが好ましく、工業的入手し易さの点からフッ化カリウムが最も好ましい。これら金属フッ化物の添加量は原料として用いる含フッ素ハロゲン化合物に対して1〜10モル当量、1.5〜5モル当量が好ましく、2〜3モル当量がより好ましい。
【0011】
また、金属フッ化物はその粒径が小さいほど反応性が良いために、スプレードライ処理を施したもの、粉砕処理を施したものが使用できる。平均粒径としては100μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下である。
【0012】
本発明で用いるアルキルスルホン酸塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ルビジウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウムなどのトリフルオロメタンスルホン酸塩、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ルビジウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸セシウムなどのペンタフルオロエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸カリウム、メタンスルホン酸ルビジウム、メタンスルホン酸セシウムなどのメタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸リチウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸ルビジウム、p−トルエンスルホン酸セシウムなどのp−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0013】
これらの中でも、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ルビジウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウムなどのトリフルオロメタンスルホン酸塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウムがより好ましい。
【0014】
アルキルスルホン酸塩の添加量は、前記式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物に対し、0.01〜3モル当量が好ましく、0.1〜1モル当量添加するのがより好ましい。アルキルスルホン酸塩の効果としては以下のように考えられる。−CCl=CH−基を有する原料化合物は、反応系中においてアルキルスルホン酸塩とハロゲン原子との交換反応によりビニルスルホネートに変換され、反応性が高くなったビニルスルホネートと、金属フッ化物から生成するフッ素イオンと交換反応により、目的とするフッ素化反応が円滑に進行するものと推測される。
【0015】
原料として用いる含フッ素ハロゲン化合物と金属フッ化物、及びアルキルスルホン酸塩は通常、溶媒を介して接触させる。溶媒としては金属フッ化物を溶解させる傾向のあるアプロティックな極性溶媒が用いられる。この際に、金属フッ化物は溶媒に溶けていても良いし、懸濁している状態であっても構わない。極性溶媒としてはアミド系、スルホキシド系を用いることができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルホキシド系溶媒が挙げられる。
【0016】
金属フッ化物によるフッ素化は常法に従って行えばよく、通常、原料となる含フッ素ハロゲン化合物と金属フッ化物を加熱下に攪拌して行うことができる。フッ素化の反応温度は通常、100〜350℃、好ましくは130〜250℃の範囲で行う。反応時の圧力は常圧でも、加圧下でも良い。反応時間は反応条件を考慮して任意に決定でき、通常2〜20時間、好ましくは4〜15時間程度である。
【0017】
フッ素化反応時の反応性を更に向上させるために、テトラフェニルホスオニウムブロミド、トリブチルヘキサデカホスホニウムブロミドなどのホスホニウム系相関移動触媒、15−クラウン−5−エーテルや18−クラウン−6−エーテルなどのクラウンエーテル、分子量200〜35000程度のポリエチレングリコールなどの添加剤を加えることも可能である。これら添加剤は、フッ素化剤の量に対して、通常、0.01〜10モル%,好ましくは0.1〜5モル%である。
【0018】
反応の形態としては、溶媒中に金属フッ化物、及びアルキルスルホン酸塩を溶解/懸濁させておき、加温させながら、原料となる含フッ素ハロゲン化合物を滴下させ、生成する含水素フルオロオレフィンを、精留塔(充填剤を詰めたカラム)内を通して抜き出す方法が採用される。このような方法を採用することにより、反応と精製を同時に行うことができるので、過剰反応の抑制、100℃前後の低沸点化合物に対してはロスの低減という観点から好ましい。
目的物である含水素フルオロオレフィンを抜き出す際には、精留塔の登頂での温度が目的物の温度に到達後、30分程度経過して抜き出せば良い。反応終点付近に来たら、精留塔内部のホールドアップ分を回収するために、反応に使用した溶媒が沸騰するまでさらに加温行うのが好ましい。さらに純度を高めたい場合は、再度精留塔の操作を行っても構わない。
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0020】
以下において採用した分析条件は下記の通りである。
(1)ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:G−5000(日立製作所社製)
カラム:TC−1(60m×I.D0.25μm、1.0μmdf) (GLサイエンス社製)
昇温プログラム:(1)50℃で10分保持し、次いで(2)20℃/分で昇温した後、(3)250℃で10分保持する。
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素ガス
検出器:FID
【0021】
(2)ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS分析)
装置:アジレント社製ガスクロマトグラフ質量分析計「HP6890」
カラム:アジレントHP−1(長さ60m、内径250μm、膜厚1μm)
昇温プログラム:(1)40℃で10分保持し、次いで(2)20℃/分で昇温した後、(3)240℃で10分保持する。
インジェクション温度:150℃
ディテクター温度:150℃
キャリヤーガス:ヘリウムガス(282mL/分)
スプリット比:170/1
検出器:FID
MS部分:アジレント5973ネットワーク(アジレント社製)
検出器:EI型(加速電圧:70eV)
【0022】
(3)NMR分析
装置:日本電子社製核磁気共鳴装置「JNM−ECA400型」
【0023】
[製造例1] 1−クロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンの製造
攪拌機、滴下ロートを付したガラス製反応器に乾燥トリエチレングリコールジメチルエーテル300部と1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン182部を仕込み、氷水浴に浸して0℃に保持した。滴下ロートから2.0mol/lの水素化ホウ素ナトリウム−トリエチレングリコールジメチルエーテル溶液(アルドリッチ社製)118部を3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃にて30分間攪拌を継続し、ガスクロマトグラフィー分析にて原料である1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンが消失していることを確認した。反応終了後、反応器にドライアイス−エタノール浴に浸したガラス製トラップを2つ直列に繋ぎ、トラップアウトから真空ポンプにより系内を減圧した(−0.1MPa)。その間、反応器は攪拌を継続しながら、ウォーターバスにて50℃に加温し、フッ素系化合物をトラップ内に捕集した。トラップ内に捕集した粗生成物を更に常圧単蒸留して精製した結果、目的物である1−クロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点78℃)が114部(収率68%)得られた。
【0024】
[実施例1] 1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンの合成
攪拌機、滴下ロート、及び精留塔(東科精器社製KS型、理論段数30段)を付したガラス製反応器にスプレードライフッ化カリウム34部(シグマアルドリッチ社製)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム6部、及び乾燥N、N−ジメチルホルムアミド100部を仕込んだ。精留塔登頂部に備え付けられたジムロート型コンデンサーには0℃の冷媒を循環させ、滴下ロートには製造例1で得られた1−クロロ−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン62部を仕込み、攪拌させながらガラス製反応器を150℃まで昇温した。滴下ロートから原料を1.2時間かけて滴下しながら反応を継続した。精留塔の塔頂の温度が46℃に達してから30分間後に、還流比20(O/C=3/60sec)で内容物を断続的に抜き出した。留分はガラス製受器に捕集した。精留塔のコンデンサー内での還流が認められなくなったところで、反応器の温度を徐々に昇温し、精留塔登頂部の温度が153℃(N、N−ジメチルホルムアミドの沸点)に達したところで抜き出しを止め、反応器を冷却した。ガラス製受器に捕集された留分をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、99GC面積%の1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンが47部(収率82%)得られた。
【0025】
1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンのスペクトルデータ
19F−NMR(CFCl,CDCl):δ−107.8(s,2F),−120.4(s,2F),−125.0(m,2F),−130.5(s,1F),H−NMR(TMS,CDCl):δ5.95(m、1H)
GC−MS(EI−MS):m/z 194,173,144
【0026】
[実施例2]
実施例1において、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム6部をトリフルオロメタンスルホン酸リチウム5部に変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、99GC面積%の1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンが44部(収率77%)得られた。
【0027】
[実施例3]
実施例1において、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム6部をメタンスルホン酸カリウム7部に変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、99GC面積%の1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンが41部(収率71%)得られた。
【0028】
[実施例4] 1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテンの合成
攪拌機、滴下ロート、及び精留塔(東科精器製KS型、理論段数30段)を付したガラス製反応器にフッ化カリウム39部(シグマアルドリッチ社製スプレードライ品)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム6部、及び乾燥N、N−ジメチルホルムアミド100部を仕込んだ。精留塔登頂部に備え付けられたジムロート型コンデンサーには−20℃の冷媒を循環させ、滴下ロートには製造例1と同様の方法で製造した1−クロロ−3,3,4,4−テトラフルオロシクロブテン48部を仕込み、ガラス製反応器を150℃まで昇温した。滴下ロートから原料を1時間かけて滴下しながら反応を継続した。精留塔の塔頂の温度が26℃に達してから30分間後に、還流比20(オープン/クローズ)=3/60secで内容物の抜き出しを開始した。留分はガラス製受器に捕集した。精留塔のコンデンサー内での還流が認められなくなったところで、反応器の温度を徐々に昇温し、精留塔登頂部の温度が153℃(N、N−ジメチルホルムアミドの沸点)に達したところで抜き出しを止め、反応器を冷却した。ガラス製受器に捕集された留分をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、98.5GC面積%の1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテンが32部(収率73%)得られた。
【0029】
1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテンのスペクトルデータ
19F−NMR(CFCl,CDCl):δ−103.87(s、C=CF),−113.45(s、2F)、−118.88(s、2F)
H−NMR(TMS,CDCl):δ5.94(m、1H)
GC−MS(EI−MS):m/z 144,125,75
【0030】
[比較例1]
トリフルオロメタンスルホン酸カリウムを添加しないこと以外は実施例1と同様に反応を行った。得られた1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンは18部(収率31%)であった。
【0031】
[比較例2]
トリフルオロメタンスルホン酸カリウムを添加しないこと以外は実施例4と同様に反応を行った。得られた1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテンは8部(収率19%)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を金属フッ化物、及びアルキルスルホン酸塩と接触させて、式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物を得る製造方法。
【化1】

ただし、式(1)中、nは0〜3の整数であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子。
【化2】

ただし、式(2)中、nは0〜3の整数である。
【請求項2】
アルキルスルホン酸塩がトリフルオロメタンスルホン酸カリウムであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(2)で表される化合物が1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテン又は1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテンであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−43034(P2010−43034A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208986(P2008−208986)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】