説明

含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法

【課題】 従来の方法では水素化が困難であった含硫黄環状不飽和ポリオレフィン類を水素化して高屈折率を有する光学用透明材料として期待される含硫黄環状飽和ポリオレフィンを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、フラビン系化合物を水素化触媒として用い、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化を行う、含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法に関するものであり、特に有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、フラビン系化合物を用い含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを水素化することにより透明耐熱樹脂として有用な含硫黄環状飽和ポリオレフィンを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料に用いられる透明耐熱樹脂として環状ポリオレフィン樹脂が注目されている(例えば非特許文献1参照。)。
【0003】
その中でも、テトラシクロデセン系化合物、ノルボルネン系化合物をメタセシス重合しポリテトラシクロデセン、ポリノルボルネンとし、その後水素添加した樹脂が提案されている(例えば特許文献1〜4参照。)。該水素化ポリテトラシクロデセン、該水素化ポリノルボルネンは、透明性、耐熱性、成形性に優れ、高アッベ数を有することから光学用透明材料としての優れた特徴を有する反面、屈折率が低いという課題を有するものであった。そこで、屈折率を高めるために、芳香環や硫黄原子の導入が試みられている(例えば特許文献5,6、非特許文献2参照。)。
【0004】
また、ポリノルボルネン、ポリテトラシクロデセンの水素化に際して、一般的には水素の存在下、パラジウム,ニッケル,コバルトなどの均一系又は不均一系の水素化触媒を用いて接触水素添加する方法が広く知られているが、該方法を含硫黄環状不飽和ポリオレフィンに適応した水素化方法についての適応例は報告されていない。
【0005】
一方、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化方法としては、パラトルエンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド系化合物を100℃以上の温度で熱分解し、生成するジイミンを水素化剤とし、水素化を行う方法が知られている(例えば非特許文献3参照。)。
【0006】
そして、近年フラビン系化合物を水素化触媒とし、安価なヒドラジンからジイミンを生成させ、不飽和結合を有するモノマーを水素化する方法が報告されている(例えば非特許文献4参照。)。
【0007】
【特許文献1】特許第3050196号公報
【特許文献2】特開昭60−26024号公報
【特許文献3】特開平1−132625号公報
【特許文献4】特許第3087421号公報
【特許文献5】特開平11−60706号公報
【特許文献6】特公平6−5323号公報
【非特許文献1】ポリファイル,9月号,p.36〜43(2004)
【非特許文献2】NIKKEI ELECTRONICS,p.79〜85(2004.9.13)
【非特許文献3】Journal of American Chemical Society Vol.83,p.4302(1961)
【非特許文献4】Journal of American Chemical Society Vol.127,No.42,p.14544〜14545(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら非特許文献3に開示された方法は、高い水素化率を達成するためには高価なスルホニルヒドラジド系化合物を不飽和結合1モルに対して5モル当量以上の大過剰に使用しなければならず極めて不経済な方法となるばかりか、スルホンエステルなどの副生物が大量に生成するという課題も有するものであった。また、非特許文献4に開示された方法は、酸素源として純酸素を使用し、溶媒としてヒドラジンと混和しやすい水性溶媒を用いるなどの極めて限られた反応条件でのみの開示しかなされておらず、水性媒体への溶解が困難でありより水素化反応の進行しにくいポリマー、特に含硫黄環状不飽和ポリオレフィンについてはその可能性が不明なものであった。
【0009】
そこで、本発明は、従来より水素化が困難とされてきた含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを効率的に水素化し、透明耐熱樹脂として有用な含硫黄環状飽和ポリオレフィンを経済的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フラビン系化合物を水素化触媒として用い含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを水素化する方法、特に有機溶媒、ヒドラジン、酸素の存在下、特定のフラビン系化合物を水素化触媒として用い、特定の含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化を行うことにより、効率よく優れた含硫黄環状飽和ポリオレフィンを製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、下記の一般式(1)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用い、下記の一般式(2)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化を行い、下記の一般式(3)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンとすることを特徴とする含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【0012】
【化1】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、R,Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、フェニル基、炭素数7〜10アルキルフェニル基、リビチル基、テトラ−o−置換リビチル基を表し、Rは無置換または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、xは0または1を表す。なお、Rが無置換の場合、xは0であり、Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基である場合、xは1を表す。)
【0013】
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、RとR及び/又はRとRとは環を形成していても良い。pは0または1の整数を表す。)
【0014】
【化3】

(式中、R10〜R13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R10とR11及び/又はR12とR13とは環を形成していても良い。qは0または1の整数を表す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法は、上記の一般式(1)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用い上記の一般式(2)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化を行い、上記の一般式(3)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンを製造する際に、有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、水素化反応を行うものである。
【0016】
本発明における水素化触媒としては、上記の一般式(1)で表されるフラビン系化合物、更には下記の一般式(4)で表されるフラビン系化合物であり、該範疇に属するものであれば如何なる構造を有するフラビン系化合物も用いることができる。ここで、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基であり、より具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基などを挙げることができる。R,Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基であり、より具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などを挙げることができる。Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、フェニル基、リビチル基、テトラ−o−置換リビチル基であり、より具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、リビチル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基、2,3,4,5−テトラブタノイルリビチル基等を例示することができる。Rは、無置換または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基であり、より具体的には、例えば無置換、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基などを例示することができ、xは0又は1である。また、Rが無置換の場合、xは0であり、Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基である場合、xは1である。
【0017】
【化4】

(式中、R14は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、R15,R16は、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基を表し、R17は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基、フェニル基を表し、R18は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表す。)
ここで、R14は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基であり、より具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基などを挙げることができる。R15,R16は、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基であり、より具体的には、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などを挙げることができる。R17は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、フェニル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基であり、より具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基等を例示することができる。R18は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基であり、より具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基などを例示することができる。
【0018】
該フラビン系化合物としては、具体的には、例えば7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン(リボフラビンと称することもある。)、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン(ルミフラビンと称することもある。)、リボフラビンテトラブチレート、3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン、3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン;5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−7,8,10−トリメチルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3−メチル−10−フェニルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3,10−ジメチルイソアロキサジニウムパークロレート、5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートなどを例示することができ、その中でも特に含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化効率に優れ、得られる含硫黄環状飽和ポリオレフィンが優れた光学用透明性材料となることから、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、リボフラビンテトラブチレート、3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン、3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン;5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート及び/又は5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートであることが好ましい。
【0019】
該フラビン系化合物は、本発明の目的が達成できる限りどのような方法で入手・製造してもよく、例えばAngew.Chem.Int.Ed.,44巻,1704〜1706頁(2005年)に記載の方法にしたがって製造することができる。
【0020】
本発明におけるフラビン系化合物の使用量としては、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化が可能である限りにおいて如何なる量を用いてもよく、その中でも効率よく含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化が可能となることから、含硫黄環状不飽和ポリオレフィン1モルに対して0.0001モル%〜30モル%、特に0.01モル%〜5モル%の範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明において用いられる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンとは、上記の一般式(2)で示される繰り返し単位からなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンであり、該範疇に属するものであれば如何なる構造を有する含硫黄環状不飽和ポリオレフィンも用いることができる。ここで、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基であり、RとR及び/又はRとRとは環を形成していても良く、より具体的には、例えば水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;チエニル基、ピリジル基等の複素環化合物基;シアノ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン基等を挙げることができ、pは0または1の整数を表す。
【0022】
該含硫黄環状不飽和ポリオレフィンとしては、得られる含硫黄環状飽和ポリオレフィンが成形加工性、機械的物性、透明性に特に優れるものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い標準ポリスチレン換算として測定した重量平均分子量が1×103〜1×10の範囲のものであることが好ましく、特に1×10〜5×10の範囲のものであることが好ましい。
【0023】
また、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンとしては、得られる含硫黄環状飽和ポリオレフィンが成形加工性、機械的物性、透明性に特に優れるものとなることから、上記の一般式(2)におけるpが0に相当する下記の一般式(5)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンであることが好ましい。
【0024】
【化5】

(式中、R19〜R22は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R19とR20及び/又はR21とR22とは環を形成していても良い。)
ここで、R19〜R22は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基であり、R19とR20及び/又はR21とR22とは環を形成していても良い。より具体的には、例えば水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;チエニル基、ピリジル基等の複素環化合物基;シアノ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン基等を挙げることができる。
【0025】
本発明の製造方法は、上記の一般式(2)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを水素化し、上記の一般式(3)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンを製造するものであり、該範疇に属するものであれば如何なる構造を有する含硫黄環状飽和ポリオレフィンであってもよい。ここで、R10〜R13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R10とR11及び/又はR12とR13とは環を形成していても良い。より具体的には、例えば水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;チエニル基、ピリジル基等の複素環化合物基;シアノ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン基等を挙げることができる。qは0または1の整数を表す。
【0026】
そして、該含硫黄環状飽和ポリオレフィンとしては、特に成形加工性、機械的物性、透明性に優れるものとなることから、上記の一般式(3)のqが0に相当する下記の一般式(6)に示す繰り返し単位よりなるものであることが好ましい。
【0027】
【化6】

(式中、R23〜R26は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R23とR24及び/又はR25とR26とは環を形成していても良い。)
ここで、R23〜R26は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R23とR24及び/又はR25とR26とは環を形成していても良い。より具体的には、例えば水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;チエニル基、ピリジル基等の複素環化合物基;シアノ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン基等を挙げることができる。
【0028】
本発明の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法は、上記の一般式(2)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを水素化する際に高い水素化率を示すものであり、特に耐熱性、透明性に優れる含硫黄環状飽和ポリオレフィンとなることから水素化率が90%以上、特に水素化率が95%以上を示すことが好ましい。なお、水素化率が90%以上の際、得られる含硫黄環状飽和ポリオレフィンは、上記の一般式(3)で示される繰り返し単位90モル%以上からなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンとなり、水素化率が95%以上の際、得られる含硫黄環状飽和ポリオレフィンは、上記の一般式(3)で示される繰り返し単位95モル%以上からなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンとなるものである。
【0029】
本発明で用いる溶媒としては、有機溶媒であり該範疇に属するものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能であり、その中でも、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを溶解するものが好ましく、その中でも特に効率良く含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化が可能となることから、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒が好ましい。
【0030】
本発明で用いるヒドラジンとしては、ヒドラジンであれば如何なる形態のものを用いても良く、通常は一水和物として使用されるが、無水物のほか溶媒や水で任意に希釈した後に用いることもできる。また、ヒドラジンの使用量としては、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化が可能である限りにおいて如何なる量を用いてもよく、その中でも特にその水素化効率に優れることから、含硫黄環状不飽和ポリオレフィン1モルに対して、1モル〜20モルの範囲であることが好ましく、特に2モル〜10モルの範囲であることが好ましい。
【0031】
また、ヒドラジンの添加方法としては、含硫黄環状不飽和ポリオレフィンと有機溶媒からなる溶液に所定量を一度に添加する方法;必要に応じて滴下する逐次的添加方法、更に必要に応じて反応途中に追加する方法、等の如何なる方法であってもよい。なお、一般的には、ヒドラジンと有機溶媒は溶解しない場合が多く、本発明の製造方法においても、ヒドラジンの添加により反応系が不均一となり、不均一系の水素化反応が進行するケースが多く見られる。
【0032】
本発明で用いる酸素とは、その酸素源として純酸素はもとより、空気、空気と純酸素の混合気体、純酸素と窒素,ヘリウム,アルゴンなどの不活性ガスからなる任意の混合気体を用いることができ、その中でも空気を酸素源とすることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法は、大気圧下でも実施する事が可能ではあるが、その水素化反応効率が優れることから加圧条件で行うことが好ましく、加圧する際の圧力としては、0.01MPa〜0.99MPaの範囲が好ましく、特に0.1MPa〜0.6MPaの範囲であることが好ましい。また、反応温度としては、水素化反応が可能であれば如何なる温度条件でも良く、特に水素化反応効率に優れることから20〜200℃の範囲であることが好ましく、特に50〜150℃の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法により得られる含硫黄環状飽和ポリオレフィンは、反応終了後の溶液を貧溶媒中に投入し、再沈殿により回収することができる。ここで、貧溶媒としては、含硫黄環状飽和ポリオレフィンが再沈殿可能であれば特に制限なく用いることが可能であり、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、等を挙げることができ、含硫黄環状飽和ポリオレフィンの回収率に特に優れることからアセトン、メタノールが好ましい。
【0035】
本発明において用いられる一般式(2)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンとしては、如何なる製造方法により得られたものであってもよく、例えば下記の一般式(7)で表される含硫黄環状化合物を公知のメタセシス重合触媒を用いてメタセシス重合することでメタセシス重合体として製造することができる。
【0036】
【化7】

(式中、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R27とR28及び/又はR29とR30とは環を形成していても良い。rは1または2の整数を表す。)
ここで、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R27とR28及び/又はR29とR30とは環を形成していても良い。より具体的には、例えば水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;チエニル基、ピリジル基等の複素環化合物基;シアノ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン基等を挙げることができる。rは1または2の整数を表す。
【0037】
一般式(7)で表される含硫黄環状化合物としては、例えば2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジメチル−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジエチル−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジプロピル−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジブチル−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジオクチル−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジドデシル−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジメトキシ−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジエトキシ−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジシアノ−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジ(2−チエニル)−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジ(2−ピリジル)−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジ(4−ピリジル)−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジクロロ−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジブロモ−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、2−チア−1,3−ジヨード−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン等の無置換もしくは置換基を有する2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン類を挙げることができる。
【0038】
メタセシス重合触媒としては公知のものを用いることができ、例えばルテニウム化合物、パラジウム化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、白金化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物、レニウム化合物から選ばれた少なくとも1種の金属化合物(I)及び周期表1,2,3,4族の金属化合物(II)からなる重合触媒を挙げることができる。
【0039】
メタセシス重合の際には溶剤を用いてもよく、該溶媒としては、例えばペンタン、オクタン、ノナン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化アルカン類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン等の環状エーテル;線状ジアルキルエーテル等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の方法により、従来の方法では水素化が困難であった含硫黄環状不飽和ポリオレフィン類を水素化することにより、高屈折率を有し光学用透明材料として期待される含硫黄環状飽和ポリオレフィンを効率よく製造することが可能となる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0042】
<分析・測定>
〜数平均分子量・重量平均分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名HLC8020GPC)を用い、クロロホルムを溶媒として40℃で測定した溶出曲線より標準ポリスチレン換算値として数平均分子量・重量平均分子量を測定した。
【0043】
〜NMRスペクトルの測定〜
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子製、商品名GSX270WB)を用い、重溶媒に重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシドを用い測定した。
【0044】
〜GC−MSの測定〜
ガスクロマトグラフィー−質量分析計(ヒューレットパッカード製、商品名質量分析計5971シリーズ)を用い、カラムに外径0.25mm、長さ30mのキャピラリーカラム(GLサイエンス製,商品名DB−1)を用いて測定を行った。
【0045】
〜IRの測定〜
赤外分光光度計(日立製作所製、商品名270−30形赤外分光光度計)を用い測定を行った。
【0046】
〜UV−Visの測定〜
紫外可視分光光度計(日本分光製、製品名UVIDEC−650)を用い測定を行った。
【0047】
合成例1(2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成)
<5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イソプロピルエステルの合成>
200mlオートクレーブに、ジシクロペンタジエン27.1g(0.2mol)、ジイソプロピルフマレート80.4g(0.4mol)を仕込み、窒素で系内を十分に置換した後、170℃で5時間反応した。反応液を0.4kPaの減圧下で蒸留し124〜126℃の留分88gを得た。この留分は、H−NMRスペクトル及びGC−MSより、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イソプロピルエステルであることを確認した。収率83%。
【0048】
270MHz H−NMR δ(CDCl)による測定結果:1.2(12H)、1.4〜1.6(2H)、2.6(1H)、3.1〜3.4(3H)、5.0(2H)、6.1〜6.3(2H)
EI−MS:266(M)
<5−ノルボルネン−2,3−ジメタノールの合成>
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けたガラス製の1000ml四つ口フラスコに、リチウムアルミニウムハイドライド25.8g(0.68mol)を仕込み、窒素で系内を十分に置換した後、氷水浴で冷却しながらテトラヒドロフラン(以後、THFと記す。)450mlをゆっくり加えた。ここに、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イソプロピルエステル37.8g(0.14mol)とTHF50mlの混合液を反応系の温度が10℃を超えないように滴下した。滴下終了後、THFの還流温度で5時間反応した。反応終了後、再び氷水浴で反応系を5℃まで冷却し、3%NaOH水溶液150gを約1時間かけて滴下した。約30分撹拌を続け、沈殿物を吸引ろ過した。
【0049】
エバポレーターで溶媒を除去し、真空乾燥機で室温、5時間乾燥して淡橙色の粘性液体20.4gを得た。この粘性液体は、H−NMRスペクトル及びGC−MSより5−ノルボルネン−2,3−ジメタノールであることを確認した。収率98%。
【0050】
270MHz H−NMR δ(CDCl)による測定結果:1.3(1H)、1.6〜2.0(2H)、2.5〜3.1(5H)、3.4〜3.8(4H)、6.0〜6.2(2H)
EI−MS:154(M)
<5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール−ジメタンスルホネートの合成>
そして、撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けたガラス製500ml四つ口フラスコに、ピリジン140mlを仕込み、窒素で系内を十分に置換した後、氷水浴で冷却し系内の温度を3℃まで下げた。この中に、メタンスルホン酸クロライド50.3g(0.44mol)を約1時間かけて滴下した。この溶液を1時間撹拌した後、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール30g(0.2mol)とピリジン125mlの混合液を系内温度が5℃を超えないように5時間かけてゆっくり加えた。反応系は褐色のスラリー状となりそのまま15時間反応を行なった。
【0051】
反応液は、4%のHCl氷水溶液にゆっくり加え、析出した茶色の固体を吸引ろ過した。得られた茶色の固体は、500mlの純水で2回洗浄した後、真空乾燥機中、50℃で8時間乾燥して54.5gの薄茶色の固体を得た。
【0052】
H−NMRスペクトルより5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール−ジメタンスルホネートであることを確認した。収率90%。
【0053】
270MHz H−NMR δ(CDCl)による測定結果:1.2〜1.4(2H)、2.7(2H)、3.0(8H)、3.9〜4.1(4H)、6.1(2H)
<2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの合成>
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けたガラス製500ml四つ口フラスコに、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール−ジメタンスルホネート25g(0.08mol)、メタノール250mlを仕込み、窒素で系内を十分に置換した後、加熱還流下に5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール−ジメタンスルホネートを溶解した。この溶液に、硫化ナトリウム・9水和物62g(0.26mol)を純水150mlに溶解した水溶液を約4時間かけて滴下した。滴下終了後そのまま2時間反応した。反応液は、冷却後にジエチルエーテル100mlで2回抽出した。ジエチルエーテル層は10%NaOH水溶液100mlで1回洗浄し、分液後、ジエチルエーテルをロータリーエバポレーターで除去して10.6gの黒色液体を得た。この液体を、0.1kPaの減圧下で蒸留し59〜60℃の留分を3.8g得た。H−NMRスペクトル及びGC−MSより2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン(一般式(7)においてR27〜R30が水素原子、rが1である化合物)であることを確認した。収率31%。
【0054】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(CDCl):1.62〜1.80(2H)、2.26〜2.42(2H)、2.60〜2.82(2H)、3.08〜3.28(2H)、6.11(2H)
EI−MS:152(M)
合成例2(2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンのメタセシス重合)
磁気回転子が入った100mlシュレンク管を減圧下にヒートガンで乾燥し、窒素で十分置換した。ここに、下記の一般式(8)で示されるルテニウム錯体21mg(25μmol)を入れた。このシュレンク管に乾燥クロロホルム46mlとフェニルビニルスルフィド34mg(0.25mmol)をシリンジで秤入れ、メタセシス重合触媒溶液を調製した。次に、合成例1で得られた2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン3.8g(25mmol)を仕込み、60℃に調整したオイルバスに浸け、5時間重合を行なった。
【0055】
その後、重合溶液に2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを0.1%含んだアセトン150mlに流し込みポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、室温で8時間乾燥し、1.1gのポリマーを得た。
【0056】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体であることを確認した。
【0057】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(CDCl):1.4〜3.6(10H)、5.2〜5.6(2H)
このポリマーの重量平均分子量(Mw)は50000であった。
【0058】
【化8】

合成例3(3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン、及び、5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートの合成)
<7,8−ジメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンの合成>
磁気回転子を付した200mlのフラスコにリボフラビン(東京化成製、9.4g)を採り、濃塩酸15mlと37%ホルマリン溶液23mlを加えた。この混合液を窒素雰囲気下、60℃で48時間加熱撹拌した。反応後の濃い茶色の溶液をエバポレーターにて減圧下で濃縮後、1mmHgの減圧下で2時間真空乾燥し、15.6gの黒褐色粉体を得た。
【0059】
この黒褐色粉体をメタノールを溶離液として中性アルミナ(メルク社製)400gによりカラム精製を行い、メタノールを減圧除去して4.4gの黄色粉体を得た。
【0060】
得られた黄色粉体は、H−NMRスペクトル分析より、7,8−ジメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンであることを確認した。
【0061】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(CDCl): 2.44(3H)、2.55(3H)、3.54−3.61(3H)、4.17−4.30(2H)、4.62−4.69(2H)、4.91−5.10(4H)、7.56(1H)、8.06(1H)
<3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンの合成>
磁気回転子を付した1リットルの四つ口フラスコに炭酸カリウム15.2g(和光純薬製)、ジメチルホルムアミド(和光純薬製)1000mlを加えた。このスラリー溶液に合成した7,8−ジメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン4.4g(10.9mmol)を溶解させた後、ヨウ化メチル(関東化学製)6.9ml(0.11mol)をシリンジで加えた。ヨウ化メチルを加えた後、室温で24時間撹拌した。反応終了後、吸引濾過により余剰の炭酸カリウムを濾別し、得られたジメチルホルムアミド溶液からエバポレーターにてジメチルホルムアミドを減圧除去し、5.2gの褐色液体を得た。得られた褐色液体を、クロロホルムを溶離液として中性アルミナ(メルク社製)200gによりカラム精製を行い、1.65gの黄色粉体を得た。
【0062】
得られた黄色粉体は、H−NMRスペクトル分析より、3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンであることを確認した。
【0063】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(DMSO−d6):2.44(3H)、2.55(3H)、3.52(3H)、3.54−3.61(3H)、4.17−4.30(2H)、4.62−4.69(2H)、4.91−5.10(4H)、7.56(1H)、8.06(1H)
<5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートの合成>
磁気回転子を付した300ml四つ口フラスコに、シアノトリヒドロほう酸ナトリウム(和光純薬製)3.36g(0.05mol)を採り、四つ口フラスコ内を窒素パージした後、窒素雰囲気とした。ジメチルホルムアミド80mlを用いて2.1gの3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジンを溶解させ、四つ口フラスコに移した。更に40mlのジメチルホルムアミドを加えた後、更に酢酸(和光純薬製)1.5mlをシリンジで加えた。最後に90%アセトアルデヒド(和光純薬製)溶液25g(0.5mol)を一度に加え、オイルバスを用いて内部温度を60℃とした。そのままの温度で2時間撹拌し、黄色スラリーを得た。この反応液を室温まで放冷した後、水300ml、クロロホルム600mlを加え抽出をした。クロロホルム溶液は、更に飽和食塩水300mlを用いて洗浄した。得られたクロロホルム溶液からクロロホルム及びジメチルホルムアミドを減圧下で留去した。得られた残渣をエタノールに溶解させ、更に10%アンモニア水溶液を加えた後、この混合液を0℃まで冷却した。0℃で該混合液に4モル/リットル過塩素酸水溶液60ml、亜硝酸ナトリウム1.4g及び過塩素酸ナトリウム3.1gを加えた。得られた紫色のスラリー液を室温まで戻して2時間撹拌した後、濾過して5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレートを紫色粉体として1.1g得た。
融点測定結果:206−208℃
UV測定結果:(CH3CN)λmax418nm、559nm
IR測定結果:(KBr)1710、1650、1600、1560、1460、1440、1360、1180、1120、1100
合成例4(7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン、及び、5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートの合成)
ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ 98巻 p.830〜835(1976)およびリービッヒ アナーレン デール ケミー,p.1388〜1415(1973)記載の方法に従い、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン、及び、5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートの合成を行った。
<7,8,10−トリメチルイソアロキサジン>
黄色粉体として7,8,10−トリメチルイソアロキサジン1.76gを得た。
【0064】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(DMSO−d6):2.41(3H)、2.48(3H)、3.91(3H)、7.80(1H)、7.92(1H)、11.30(1H)
<3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン>
山吹色粉体として3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン1.85gを得た。
【0065】
270MHz H−NMRの測定結果;δ(CDCl):2.42(3H)、2.48(3H)、3.54(3H)、4.17(3H)、7.42(1H)、8.06(1H)
<5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート>
赤紫粉体として5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート0.35gを得た。
融点測定結果:220〜225℃
UV測定結果:(CH3CN)λmax412nm、555nm
IR測定結果:(KBr)1700、1650、1100
実施例1
磁気回転子が入った50mlのステンレスオートクレーブに、合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体152mg(1mmol)と1,1,2−トリクロロエタン4mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、ヒドラジン一水和物240mg(4.8mmol)及びフラビン系化合物として合成例3で合成した5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)を入れ、空気を0.2MPaGまで加圧し、100℃に加温したオイルバスに浸けて4時間撹拌しながら水素添加反応を行なった。尚、反応の途中で空気の入れ替えを1時間置きに3回行った。反応終了後、反応液をアセトン80mlに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過した後、クロロホルム5mlに溶解し、不溶分をろ過した。濾液は、メタノール50mlに投入し再びポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0066】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は97%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0067】
実施例2
磁気回転子が入った50mlステンレスオートクレーブに、合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体152mg(1mmol)と1,2−ジクロロエタン4mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、ヒドラジン0.36g(7.2mmol)及びフラビン系化合物として合成例3で合成した5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)を入れ、0.4MPaで、80℃で8時間、加熱撹拌を行なった。反応終了後、反応液をアセトン80mlに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーはろ過した後、クロロホルム5mlに溶解し、不溶分をろ過した。濾液は、メタノール80mlに投入し再びポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、60℃で5時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率98%)。
【0068】
得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より、水素化率は96%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0069】
実施例3
磁気回転子が入った50mlステンレスオートクレーブに、合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体152mg(6.6mmol)と1,1,2−トリクロロエタン4mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、ヒドラジン0.36g(7.2mmol)及びフラビン系化合物として合成例4で合成した5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレート(1.0mg/2.5μmol)を入れ、0.2MPaで、100℃で2時間、加熱撹拌を行なった。反応終了後、反応液をアセトン80mlに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーはろ過した後、クロロホルム5mlに溶解し、不溶分をろ過した。濾液は、メタノール80mlに投入し再びポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、60℃で5時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率98%)。
【0070】
得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より、水素化率は97%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0071】
実施例4
磁気回転子が入った50mlステンレスオートクレーブに、合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体152mg(1mmol)と1,1,2−トリクロロエタン6mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、ヒドラジン0.36g(7.2mmol)及びフラビン系化合物として5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)を入れ、空気圧0.2MPaで、120℃で4時間、加熱撹拌を行なった。反応終了後、反応液をアセトン80mlに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーはろ過した後、クロロホルム5mlに溶解し、不溶分をろ過した。濾液は、メタノール80mlに投入し再びポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、60℃で5時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率98%)。
【0072】
得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より、水素化率は99%以上である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0073】
比較例1
磁気回転子が入った100ml4つ口フラスコに、合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体1.52g(10mmol)と1,1,2−トリクロロエタン40mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、p−トルエンスルホニルヒドラジド(東京化成製)5.4g(30mmol)及びN,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン(和光純薬製)3.9g(30mmol)を入れ、110℃で4時間反応を行なった。反応終了後、反応液は室温まで冷却しメタノール150mlに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーはろ過した後、クロロホルム(和光純薬製)50mlに溶解し、不溶分をろ過した。濾液は、メタノール150mlに投入し再びポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、100℃で5時間乾燥し、1.45gのポリマーを得た。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より、水素化率は55%であった。
【0074】
比較例2
合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体1.52g(10mmol)とo−ジクロロベンゼン(和光純薬製、特級)20mlを仕込み、ルテニウムヒドリドトリフェニルホスフィン錯体25mg(NEケムキャット製)を150ccのステンレスオートクレーブに仕込み攪拌して、均一なポリマー溶液を得た。引き続き、水素ガス圧1MPa、温度150℃において、4時間攪拌下、水素添加反応を行った。反応溶液を冷却後、過剰な水素を放出、脱圧後、反応溶液を大量の塩酸−メタノール溶液に注ぎ、ポリマーを分離した。得られたポリマーを50℃で一昼夜減圧乾燥して1.49gのポリマーを得た。得られたポリマーのH−NMRスペクトル分析より、水素化率は0%であった。
【0075】
実施例5
磁気回転子が入った50mlのステンレスオートクレーブに、合成例2で得た2−チア−1,2−ジヒドロジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合体152mg(1mmol)と1,1,2−トリクロロエタン4mlを仕込み室温で撹拌溶解した。この溶液に、ヒドラジン一水和物120mg(2.4mmol)及びフラビン系化合物として合成例3で得られた5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)を入れ、空気を0.2MPaGまで加圧し、100℃に加温したオイルバスに浸けて4時間撹拌しながら水素添加反応を行なった。尚、反応開始2時間後に室温まで冷却後、120mg(2.4mmol)のヒドラジン一水和物を追加した。更に反応の途中で室温まで冷却し、空気の入れ替えを1時間置きに3回行った。反応終了後、反応液をアセトン80mlに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過した後、クロロホルム5mlに溶解し、不溶分をろ過した。濾液は、メタノール50mlに投入し再びポリマーを析出させた。ろ過後、回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0076】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は97%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0077】
実施例6
5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)の代わりに、フラビン化合物として7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン(東京化成製)(0.9mg/2.5μmol)を用いた以外は、実施例5と同様に操作を行った。回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0078】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は96%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0079】
実施例7
5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)の代わりに、フラビン化合物として合成例4で得られた7,8,10−トリメチルイソアロキサジン(0.6mg/2.5μmol)を用いた以外は、実施例5と同様に操作を行った。回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0080】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は95%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0081】
実施例8
5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)の代わりにリボフラビンテトラブチレート(東京化成製)(1.6mg/2.5μmol)を用いた以外は、実施例5と同様に操作を行った。回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0082】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は97%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0083】
実施例9
5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)の代わりに、合成例3で得られた3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン(1.1mg/2.5μmol)を用いた以外は、実施例5と同様に操作を行った。回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0084】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は96%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。
【0085】
実施例10
5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート(1.3mg/2.5μmol)の代わりに、合成例4より得られた3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジン(0.7mg/2.5μmol)を用いた以外は、実施例5と同様に操作を行った。回収したポリマーは真空乾燥機中、80℃で4時間乾燥し、150mgのポリマーを得た(回収率99%)。
【0086】
得られたポリマーは、H−NMRスペクトル分析より、水素化率は96%である含硫黄環状飽和ポリオレフィン(一般式(3)において、R10〜R13が水素原子、qが0である繰り返し単位よりなる重合体)であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、ヒドラジン及び酸素の存在下、下記の一般式(1)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用い、下記の一般式(2)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンの水素化を行い、下記の一般式(3)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンとすることを特徴とする含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、R,Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、フェニル基、炭素数7〜10アルキルフェニル基、リビチル基、テトラ−o−置換リビチル基を表し、Rは無置換または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、xは0または1を表す。なお、Rが無置換の場合、xは0であり、Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基である場合、xは1を表す。)
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、RとR及び/又はRとRとは環を形成していても良い。pは0または1の整数を表す。)
【化3】

(式中、R10〜R13は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R10とR11及び/又はR12とR13とは環を形成していても良い。qは0または1の整数を表す。)
【請求項2】
下記の一般式(4)で表わされるフラビン系化合物を水素化触媒として用いることを特徴とする請求項1に記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【化4】

(式中、R14は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表し、R15,R16は、各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,アルコキシ基を表し、R17は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基,シクロアルキル基、2,4:3,5−ジ−o−メチレンリビチル基、フェニル基を表し、R18は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数7〜12のフェニルアルキル基を表す。)
【請求項3】
含硫黄環状不飽和ポリオレフィンとして、下記の一般式(5)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状不飽和ポリオレフィンを用い、下記の一般式(6)で示される繰り返し単位よりなる含硫黄環状飽和ポリオレフィンとすることを特徴とする請求項1または2に記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【化5】

(式中、R19〜R22は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R19とR20及び/又はR21とR22とは環を形成していても良い。)
【化6】

(式中、R23〜R26は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R23とR24及び/又はR25とR26とは環を形成していても良い。)
【請求項4】
含硫黄環状不飽和ポリオレフィンとして、下記の一般式(7)で示される含硫黄環状化合物のメタセシス重合体を用いることを特徴とする請求項1〜3に記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【化7】

(式中、R27〜R30は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基,アラルキル基,芳香族基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基,複素環化合物、ハロゲン基を表し、R27とR28及び/又はR29とR30とは環を形成していても良い。rは1または2の整数を表す。)
【請求項5】
有機溶媒がハロゲン系溶媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【請求項6】
酸素源として、空気を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【請求項7】
フラビン系化合物が、5−エチル−3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジニウムパークロレート及び/又は5−エチル−3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジニウムパークロレートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。
【請求項8】
フラビン系化合物が、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、7,8,10−トリメチルイソアロキサジン、リボフラビンテトラブチレート、3,7,8−トリメチル−10−(2’,4’:3’,5’−ジ−o−メチレンリビチル)イソアロキサジン及び/又は3,7,8,10−テトラメチルイソアロキサジンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の含硫黄環状飽和ポリオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2008−106222(P2008−106222A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116564(P2007−116564)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】