説明

含窒素化合物の製造方法及びその装置

【課題】高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、環状ケトンから直接ラクタム化合物等の含窒素有機化合物を合成することを可能とする含窒素有機化合物の製造方法、及びその装置を提供する。
【解決手段】高温高圧水(温度200℃以上、圧力20MPa以上)を反応媒体とする流通式反応装置において、環状ケトン化合物から、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤との反応により直接ラクタム等の含窒素有機化合物を合成する含窒素有機化合物の製造方法、及びその装置。
【効果】例えば、ナイロン6の原料であるε−カプロラクタムを、シクロヘキサノンから一段工程により直接生産することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤との反応により直接含窒素有機化合物を合成する含窒素有機化合物の製造方法、及びその装置に関するものであり、更に詳しくは、亜臨界水ないし超臨界水を反応媒体とする流通式反応装置において、環状ケトン化合物から、一段工程により直接ラクタム化合物等を合成することを可能とするラクタム化合物等の含窒素有機化合物の新しい生産技術に関するものである。
【0002】
従来、環状ケトン化合物から二段階で触媒を使用して合成されていたラクタム化合物は、広範囲の分野における有機工業製品の出発原料又は中間体として用いられている重要な化合物であるが、それらの工業的製造方法では、多量の副生物の生成、製造装置の腐食損傷、環境汚染等の問題を抱えていた。本発明は、これらの従来技術の有する諸問題を根本的に解決することを可能とするとともに、一段工程により、触媒を使用することなく、短時間で直接ラクタム化合物等の含窒素有機化合物を製造することを可能とする新しいラクタム化合物等の合成技術を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
ε−カプロラクタムは、わが国で年間約50万トン(平成14年)製造されている含窒素有機化合物であり、そのほとんどが、ナイロン6の製造に使用されている。ナイロン6は、ナイロン66よりも安価で、成形しやすい性質があり、わが国におけるナイロンの生産の大部分を占めていることから、その原料化合物であるε−カプロラクタムは、今後も成長が期待される素材である。
【0004】
従来、ε−カプロラクタムの合成法は、シクロヘキサノンからシクロヘキサノンオキシムを合成し、これをベックマン転位によりε−カプロラクタムに転換する方法が主要な工業的方法である。シクロヘキサノンからシクロヘキサノンオキシムを合成する方法としては、例えば、チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノン、過酸化水素、及びアンモニアを反応させることによりシクロヘキサノンオキシムを製造する際に、反応系から使用済み触媒を取り出し、この使用済み触媒と未使用の触媒を併用して反応を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、シクロヘキサノンオキシムを、ベックマン転位によりε−カプロラクタムに転換するには、従来、化学量論的に過剰の発煙硫酸を反応剤として使用する方法が一般的に行われて来た。この方法では、生成したε−カプロラクタムが硫酸塩として得られるので、これを遊離させるためにはアンモニアで中和する必要があり、このとき、硫酸アンモニウムが、ε−カプロラクタム1トンあたり約1.7トン副生する問題があった。
【0006】
また、硫酸アンモニウムを副生しないε−カプロラクタムの合成方法として、例えば、シクロヘキサノンオキシムを、固体触媒の存在下に気相でベックマン転位反応によりε−カプロラクタムを製造する方法において、流動層形式のベックマン反応工程から触媒を取り出し再生する工程から転位反応工程へ戻される触媒中の窒素含有量を、特定範囲に制御して運転するε−カプロラクタムの製造方法(特許文献2参照)が提案されている。また、その他に、固体触媒として、表面に酸化ホウ素を蒸着したゼオライト触媒を使用するか、あるいは水熱合成反応によって得られたゼオライトをアルカリ処理した後に、空気中で仮焼したゼオライト触媒を使用して、気相反応条件下にシクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムを製造する方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0007】
また、従来のε−カプロラクタムの合成法として、シクロヘキサノンより、シクロヘキサノンオキシムを経由した二段階で触媒を使用して、ε−カプロラクタムを合成する方法が報告されている。この方法は、気相法と言われ、現在、稼動中の方法である。シクロヘキサノンから二段階で触媒を使用してε−カプロラクタムを合成する反応式を次に示す。
【0008】
【化1】

【0009】
また、他の従来法として、その表面に、対称的に配列されたOH基が存在するMFI−触媒の存在下で、気相で、シクロヘキサノンからε−カプロラクタムを製造する方法(特許文献4参照)が提案されている。
【0010】
一方、高温高圧水を反応場とするε−カプロラクタムの合成方法として、例えば、流通させている高温高圧水中にオキシムを導入することによって、加水分解反応を起こすことなくラクタムを選択的に合成するラクタムの製造方法が提案されている(特許文献5参照)。また、他の従来法として、有機溶媒を基質溶液として用いることによって、流通させている高温高圧水に高濃度オキシムを導入することを可能とし、それにより、高濃度ラクタムを効率的に合成するラクタムの製造方法(特許文献6参照)や、流通させている高温高圧流体にオキシムと酸を導入することによって、高濃度ラクタムを効率的に合成するラクタムの製造方法(特許文献7参照)が提案されている。高温高圧水を反応場としたシクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムを合成する反応式を次に示す。
【0011】
【化2】

【0012】
このように、超臨界水中では、シクロヘキサノンオキシムからε−カプロラクタムを触媒なしで合成できることが知られている。しかし、この場合の唯一の欠点は、原料のシクロヘキサノンオキシムの濃度を3%程度にしかできないことである。その主な理由は、シクロヘキサノンオキシムが水に溶けづらいためである。その溶解度を上げるためにアルコール等を添加した場合、例えば、超臨界水中にアルコールが存在した場合には、ベックマン反応は進行しない。従って、僅かではあるが硫酸触媒を添加しなければならない。超臨界水装置の冷却部は腐食損傷を起こす箇所として知られている。この触媒量の硫酸は、確実に装置の腐食を招く。
【0013】
また、この方法では、シクロヘキサノンの生成をできるだけ少なくしなければ収率的な面で経済性を失う。これらの問題を解決するために、シクロヘキサノンオキシムを溶融して直接導入する方法があるが、シクロヘキサノンオキシムは、鉄との衝撃で瞬間的な分解をするために、この方法では問題解決の手段とはならなかった。その他にも、例えば、高温高圧水下でアミノ酸を反応させることによりラクタムを合成する方法(特許文献8参照)、流通させている高温高圧水条件下の反応場に、反応基質としてオキシムと酸を導入してラクタムを連続製造する方法(特許文献9参照)が提案されている。しかし、従来、超臨界水条件でシクロヘキサノンから直接ε−カプロラクタムを合成する方法についての報告例は存在しなかった。
【0014】
【特許文献1】特開2004−307418号公報
【特許文献2】特開2000−229939号公報
【特許文献3】特開2001−213862号公報
【特許文献4】特開平9−12540号公報
【特許文献5】特開2002−265438号公報
【特許文献6】特開2003−201277号公報
【特許文献7】特開2003−201278号公報
【特許文献8】特開2002−356477号公報
【特許文献9】特開2002−193927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、多量の副生物を生成することなく効率的にラクタム等を合成することが可能な含窒素有機化合物の新しい合成技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、反応媒体中に導入することが容易なシクロへサノンから一段階で直接ラクタム等を合成できる新規合成技術を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、流通式超臨界水装置による超臨界水条件でシクロヘキサノンから直接ε−カプロラクタムを合成することが可能な含窒素有機化合物の製造方法及びその装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、流通式超臨界水装置による超臨界水条件で一段工程により、触媒を使用することなく、環状ケトン化合物から、直接ラクタム化合物、オキシム化合物、及び/又はアミノカルボン酸を合成できる、それらの化合物の合成方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、きわめて短い反応時間内で、連続して、高い収率で含窒素有機化合物を合成できるとともに、環境に優しい含窒素有機化合物の製造技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、環状ケトン化合物から、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤との反応により直接含窒素有機化合物を合成することを特徴とする含窒素有機化合物の製造方法。
(2)200℃以上、20MPa以上の高温高圧水を反応媒体とする上記(1)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(3)高温高圧水が、亜臨界水ないし超臨界水である上記(1)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(4)環状ケトン化合物が、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロノナノン、及びシクロドデカノンから選ばれる少なくとも一種以上の化合物である上記(1)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(5)ヒドロキシアンモニウム塩が、塩化ヒドロキシアンモニウム、シュウ酸ヒドロキシアンモニウム、及び硫酸ヒドロキシアンモニウムから選ばれる少なくとも一種以上の化合物である上記(1)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(6)含窒素有機化合物が、ラクタム化合物、オキシム化合物、及びアミノカルボン酸から選ばれる少なくとも一種以上の化合物である上記(1)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(7)ラクタム化合物が、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、又はω-ラウリンラクタムである上記(6)に記載の含窒素化合物の製造方法。
(8)オキシム化合物が、シクロヘキサノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、又はシクロドデカノンオキシムである上記(6)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(9)アミノカルボン酸が、6−アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、又は12−アミノドデカノイック酸である上記(6)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(10)反応系の組成、温度、圧力、及び/又は時間を調整して、目的化合物の選択率、転換率、及び/又は収率を制御する上記(1)に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
(11)高温高圧水を反応媒体とする流通式反応系を用いて含窒素有機化合物を合成するための流通式反応装置であって、反応器と、高温高圧水供給手段、環状ケトン化合物供給手段、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤供給手段と、これらの各手段から、上記高温高圧水、及び各化合物を上記反応器に供給するための高温高圧流路とを具備し、上記反応器内において、環状ケトン化合物から直接含窒素有機化合物を合成するようにしたことを特徴とする含窒素有機化合物の製造装置。
(12)200℃以上、20MPa以上の高温高圧水を反応媒体とする上記(11)に記載の含窒素有機化合物の製造装置。
(13)高温高圧水が、亜臨界水ないし超臨界水である上記(11)に記載の含窒素有機化合物の製造装置。
【0018】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、環状ケトン化合物から、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤との反応により直接含窒素有機化合物を合成する含窒素有機化合物の製造方法、及びその製造装置の点に特徴を有するものである。本発明では、例えば、次の一般式で示される反応式(式中、nは炭素数を表す。)に従って、環状ケトン化合物とヒドロキシアンモニウム化合物(式中では、塩化ヒドロキシアンモニウム)から、直接ラクタム化合物、アミノカルボン酸、及びオキシム化合物が合成される。
【0019】
【化3】

【0020】
本発明においては、反応媒体として、高温高圧条件の水が用いられるが、具体的には、例えば、温度200℃以上、圧力20MPa以上の高温高圧水であり、好適には、亜臨界水ないし超臨界水が反応媒体として用いられる。ここで、超臨界水とは、375℃以上の温度で、且つ、22.1MPa以上の圧力の条件にある水を言う。亜臨界水とは、超臨界水に近い高温高圧状態の水であり、通常、温度及び圧力が水の臨界近傍の状態にある水を意味し、例えば、温度300−370℃、圧力20−22MPa領域付近の水が例示される。水には、気体(水蒸気)、液体(水)、固体(氷)の三態があり、更に、臨界温度(Tc=373.95℃)を超え、且つ、臨界圧力(Pc=22.1MPa)を超えると、圧力をかけても水は凝縮せず、気体と液体の境界がなくなり、単一の流体相が出現する。この状態が超臨界状態と定義され、このような超臨界状態にある水ないし超臨界状態に近い亜臨界状態の高温高圧水は、液体や気体の通常の性質と異なる性質を示す。すなわち、超臨界状態ないし亜臨界状態の水の密度は液体に近く、粘度は気体に近く、熱伝導率と拡散係数は気体と液体の中間的性質を示し、化学反応の進行に特異な影響を与える。
【0021】
本発明で用いる超臨界水等の高温高圧水は、それ自体公知の方法によって製造され、その温度、圧力条件等は、例えば、その生成装置の外からヒーターや溶融塩等の加熱により、あるいは反応器内での内熱方式によって制御される。また、予め高温高圧水を製造しておき、外部から送水ポンプ等を用いて反応器内に注入して反応器内でその温度、圧力となるように調整することが可能であり、温度圧力条件の異なる二種類以上の高温高圧水を反応系に供給して反応条件を制御することも可能である。更に、流通式超臨界水装置において、反応容器内の圧力は、圧力調整弁で制御することができる。
【0022】
上記反応媒体の高温高圧水を製造するために用いる水は、特に制限はなく、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、地下水等を用いることが可能であるが、溶存空気が反応に悪影響を与える場合があるので、予め窒素ガス、ヘリウムガス等でバブリングし、除去しておくことが望ましい。更に、配管や反応管の閉塞を招かないためにも、無機塩等の存在を除去しておくことが望ましい。本発明の方法は、従来の合成法とは異なり、金属触媒や有機溶媒を使用することなく、含窒素化合物を合成することができるので、触媒や有機溶媒は必要としないが、それらの使用を必ずしも妨げるものではない。本発明では、例えば、触媒を用いる場合には、触媒の添加やその除去工程を適宜付加することができる。触媒としては、一般に、この種の反応に使用される触媒であれば何れのものも使用でき、例えば、シクロヘキサノンオキシムの合成反応、及びベックマン転位反応を促進するものであれば、適宜のものを使用することができる。
【0023】
本発明では、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩又はアンモニアと酸化剤、及び高温高圧の反応媒体を反応器に導入し、所定の時間保持することにより、環状ケトン化合物が含窒素有機化合物に変換される。反応基質としての環状ケトン化合物及びヒドロキシアンモニウム化合物は、一種類に限定されるものではなく、二種類以上の化合物を用いても反応は好適に進行する。環状ケトン化合物としては特に限定されるものではなく、例えば、上記反応式(化3)に記載の飽和脂肪族環状ケトンが例示されるが、具体的には、例えば、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロノナノン、及びシクロドデカノン等が例示される。また、これらの環状ケトン化合物は、本発明の含窒素化合物への反応を阻害しない範囲で置換基を有することができる。このような置換基としては、好適には、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基が例示される。

【0024】
本発明のヒドロキシアミン塩としては、具体的には、例えば、塩酸ヒドロキシアンモニウム、シュウ酸ヒドロキシアンモニウム、硫酸ヒドロキシアンモニウムが例示されるが、これらに限定されるものではない。本発明の反応では、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤の存在下にラクタム等の合成反応を行うことが好適であり、例えば、アンモニアと過酸化水素の組み合わせが好適なものとして例示される。
【0025】
本発明の目的化合物である含窒素有機化合物は、原料の環状ケトン化合物に対応した化学構造を有する化合物であり、例えば、上記反応式(化3)に記載の一般式で表される環状ケトン化合物からは、ラクタム化合物、オキシム化合物、及び/又はアミノカルボン酸が得られる。本発明で得られる、ラクタム化合物としては、例えば、ε−カプロラクタム、δ-バレロラクタム、ω-ラウリンラクタムが例示され、オキシム化合物としては、例えば、シクロヘキサノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロドデカノンオキシムが例示され、また、アミノカルボン酸としては、例えば、6-アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、12−アミノドデカノイック酸が例示される。しかし、本発明の生成物はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0026】
本発明において、含窒素有機化合物を合成するには、目的とする化合物に応じて、反応器中での環状ケトン化合物の濃度、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤の濃度を任意に調整することができる。本発明では、反応器中での反応基質の反応が効率良く進行するため、過剰量の試薬の使用を避けることができ、反応混合物から目的とする化合物を分離することが容易であり、多量の高濃度の副生物の生成、廃液の処理を避けることができる。
【0027】
本発明では、流通式反応装置として、好適には、例えば、400−700℃、20−50MPaの高温高圧水を供給できる高温高圧水供給装置であって、所定の設定温度に少なくとも1秒以下の時間内で到達することが可能な機構を有する流通式高温高圧反応装置が用いられる。これらを含む反応装置は、合成する含窒素有機化合物の種類、装置の大きさ等に応じて任意に設計することができる。
【0028】
本発明において、好適な反応条件は、反応温度200−400℃、反応圧力20−50MPa、反応時間2秒以下の短時間(瞬時)であり、反応器内に、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤、及び高温高圧反応媒体を導入し、これらを所定の設定反応温度に少なくとも0.02−0.05秒で到達させることが好ましい。これにより、例えば、バッチ式反応装置(1−5時間)、及び従来の連続式反応装置(10−120秒)と比べて、設定反応温度に至る経過時間が極端に短縮される。こうすることによって、反応収率、及び生成物の選択性を高めることができる。
【0029】
本発明では、上記した反応条件を採用することにより、例えば、反応時間0.001秒から60秒の短時間で環状ケトン化合物から含窒素有機化合物が合成できる。流通式反応装置では、反応時間は、反応温度、反応圧力、高温高圧水の流速、反応基質の導入流速、反応器の形状、反応器内径、反応器の流通経路の長さ等を制御することによって反応時間をコントロールできる。より好適には、反応時間として0.001秒から30秒の範囲の値を選択でき、最も好適には0.05秒から10秒の範囲の値を選択できるが、本発明は、これらの値に限定されるものではない。これによって、その設定反応温度に至る経過時間内での複雑な反応が生じにくく、シャープな反応が可能となる。すなわち、設定温度に至る経過時間が長くなると、複雑な反応が生じて、目的化合物を高選択率で合成することが困難となるが、本発明では、反応時間が短いため、小型の装置で、短時間のうちに大量の生成物を得ることが可能であり、生産効率の高い含窒素有機化合物の製造方法及びその装置を構築することができる。
【0030】
流通方式による場合には、例えば、連続的に供給される超臨界水に対し、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤を個別に、あるいは混合した後、これらを連続的に加える方法、また、所定量のヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤を溶解した水を、送液ポンプにより送液し、予備加熱器を通過させて反応温度まで昇温するとともに、送液ポンプにより環状ケトン化合物を送液し、予備加熱器を通過した水溶液と合流させる方法等が採用でき、それにより、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤を、所定温度の超臨界水が流通する反応器に高速で通過させ、所定時間、設定温度、圧力下で反応させて、目的生成物を選択的に得ることができる。生成物については、高速液体クロマトグラフィー質量分析装置、ガスクロマトグラフ分析装置、核磁気共鳴スペクトル測定装置、赤外分光光度計等を適宜利用することにより、その化学種を同定することができる。
【0031】
生成した反応混合物には目的とする含窒素有機化合物の他に、未反応の原料又は副生物等の不純物が含まれることがあるので、これらを分離精製することにより、所望とする化合物を得ることができる。分離精製の方法は、特に限定されず、工業的に通常用いられる蒸留、抽出、シリカゲルやイオン交換樹脂カラム等が適用できる。
【0032】
本発明の含窒素有機化合物の製造装置は、例えば、反応器を所定の温度に保持するための恒温装置、反応器、高温高圧水供給装置、基質供給装置、及び反応生成物の取出し装置を有し、反応器及び各供給装置類は高温高圧流路により接続されている。その一例を図1に示す。反応器の一端の上流側には、高温高圧水供給装置、第一基質供給装置、第二基質供給装置に通じる高温高圧流路が接続され、他端の下流側には、反応生成物の取出し装置に通じる高温高圧流路が接続されている。
【0033】
この流路に接続して設けられた各供給装置から、高温高圧水、環状ケトン化合物、及びヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤からなる基質、が反応器に供給される。それらの温度、圧力、流量、流速等を制御することにより、反応器内が所定の反応条件に調整され、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤は、反応器内で所定の温度、圧力の下に反応して含窒素有機化合物に変換される。反応混合液は、反応生成物の取出し装置により、減圧、冷却されて回収される。また、本発明の含窒素有機化合物の製造装置には、緊急時に装置を冷却することができる緊急冷却用ポンプ等の安全装置、装置内を洗浄するための洗浄用のポンプ等の付帯設備を適宜設けることができる。
【0034】
本発明により合成される含窒素有機化合物は、広範囲にわたる有機工業製品の製造原料又は中間体として重要な化合物であり、例えば、ε−カプロラクタムは、ナイロン6の製造に用いられ、例えば、繊維、有機樹脂製品の製造に有用である。従来、高温高圧水を反応媒体とするε−カプロラクタムの合成方法は、例えば、シクロヘキサノンオキシムを出発原料とする有機合成法が知られているが、本発明は、それらの反応が有する問題点を克服した新しい反応方式を提供することを実現するものである。
【0035】
また、本発明は、高温高圧水(200℃、20MPa以上)、例えば、亜臨界水ないし超臨界水を反応媒体とした流通式反応方式により、含窒素有機化合物を、一段工程により、簡単な製造装置により連続して効率良く合成すること、短時間で大量に合成すること、及び高い選択率で合成すること、を可能とするものである。本発明では、反応系の組成、温度、圧力、及び/又は時間を調整して、目的化合物の選択率、転換率、及び/又は収率を制御することができる。
【0036】
また、本発明は、例えば、流通式超臨界水装置による超臨界水条件で、シクロヘキサノンから直接ε−カプロラクタムを合成することが可能な反応方式であり、従来、水反応系に導入することが困難なシクロヘキサンオキシムを、該系に導入が容易なその前駆物質であるシクロヘキサノンとして導入することにより、最終的に超臨界水中で、ε−カプロラクタムを合成することができる新しい反応方式を実現するものである。本発明は、流通式の反応方式によって、環状ケトン化合物から含窒素有機化合物を選択的に合成することを可能とすることを特徴とするものであり、後記する実施例と同じ反応条件で行ったバッチ方式の実験では、目的とする化合物は全く合成されなかった。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置に、環状ケトン化合物と、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤を高速で導入することによって、短時間で、しかも一段工程で含窒素有機化合物を製造することができる。
(2)硫酸等の酸を触媒としないので、反応装置の腐食損傷を起こさない含窒素有機化合物の製造装置を提供することができる。
(3)大量の副生物を生成しないでラクタム等の含窒素有機化合物を製造することが可能な製造方法及びその装置を提供することができる。
(4)本発明は、反応時間が短いため、短時間で大量の含窒素有機化合物を合成する方法として好適に使用することができる。
(5)反応に高い選択性があり、目的とする化合物が高収率で得られる。
(6)反応媒体として水を使用し、有機溶媒、触媒を使用しなくてもよいため、製造工程から廃酸等の廃物、廃液の排出が少なく、それらの処理が不要となり、環境との調和が良好で、生産コストを軽減化することが可能な含窒素有機化合物の製造方法及びその製造装置を提供することができる。
(7)従来法に代替し得るラクタム等の含窒素有機化合物の新しい生産技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
図1に示す流通式超臨界水高速有機反応装置を用い、反応温度369−381℃、反応圧力30−40MPa、及び密度0.539−0.626g/cmの亜臨界−超臨界水領域でシクロヘキサノン(和光純薬社製、特級)とヒドロキシアンモニウム塩酸塩(和光純薬社製、特級)を反応させ、直接ε−カプロラクタムの連続合成を試みた。本反応の反応式を次に示す。
【0040】
【化4】

【0041】
反応器材料は、合金インコネル625製の管で、外径1/16インチ、内径0.5mm、反応器長さ50cmであり、従って、反応器容積は0.098cmと算出された。各導入調製液は高圧ポンプで注入した。反応に使用した水は蒸留水を使用し、窒素ガスでバブリングして溶存酸素を追い出したキャリヤー水を2.5−5ml/minの流速で通水した。同様に処理した蒸留水を用い、シクロヘキサノン(0.05M)及びヒドロキシアンモニウム塩酸塩(0.5M)の基質溶液を調製し、この基質溶液を1ml/minの流速で反応器に導入した。反応時間は1.063−0.536秒であり、反応後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置で調べたところ、シクロヘキサノンに窒素原子が取り込まれた6−アミノヘキサン酸とε−カプロラクタムが生成していることを確認した。
【0042】
6−アミノヘキサン酸の含有濃度は6.3−13.8mMであり、その反応収率は75.7−97.0%であった。ε−カプロラクタムの含有濃度は0.4−2.0mMであり、その反応収率は3.0−24.3%であった。また、本実施例においては、シクロヘキサノンオキシムは全く検出されなかった。シクロヘキサノンオキシムが全く検出されない主な原因は、塩化ヒドロキシアンモニウムの使用により生成される塩酸と超臨界水による触媒作用によって、シクロヘキサノンオキシムの変換が進行したためと考えられる。なお、ここで得られる6−アミノヘキサン酸は、脱水反応によって容易にε−カプロラクタムに導くことができる。表1に、実験結果を示す。
【0043】
【表1】

【実施例2】
【0044】
図1に示す流通式超臨界水高速有機反応装置を用い、反応温度353−381℃、圧力30−40MPa、及び密度0.534−0.635g/cmの亜臨界−超臨界水領域で、実施例1のヒドロキシアンモニウム塩酸塩(和光純薬社製、特級)を、ヒドロキシアンモニウム蓚酸塩(和光純薬社製、特級)に代えて反応させ、直接ε−カプロラクタムの連続合成を試みた。本反応の反応式を次に示す。
【0045】
【化5】

【0046】
各導入調製液は高圧ポンプで注入した。反応に使用した水は蒸留水を使用し、窒素ガスでバブリングして溶存酸素を追い出したキャリヤー水を2.5−5ml/minの流速で通水した。同様に処理した蒸留水を用い、シクロヘキサノン(0.05M)、及びヒドロキシアンモニウム蓚酸塩(0.5M)の基質溶液を調製し、この基質溶液を1ml/minの流速で反応器に導入した。反応時間は1.084−0.572秒であり、反応後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置で調べたところ、シクロヘキサノンに窒素原子が取り込まれたε−カプロラクタムが生成していることを確認した。
【0047】
ε−カプロラクタムの含有濃度は6.3−11.9mMであり、その反応収率は44.2−85.5%であった。6−アミノヘキサン酸の含有濃度は0.2−1.6mMであり、その反応収率は1.4−11.2%であった。シクロヘキサノンオキシムの含有濃度は0.6−7.7mMであり、その反応収率は5.0−54.4%であった。本実施例においては、シクロヘキサノンオキシムと6−アミノヘキサン酸が合成されるが、前者は温度が低くなると多く分析されることから、この反応は、シクロヘキサンよりシクロヘキサノンオキシムが合成され、しかる後に、ラクタムと6−アミノヘキサン酸が合成されると考えられる。
【0048】
なお、ここで得られる6−アミノヘキサン酸は脱水反応によって容易にε−カプロラクタムに変換でき、シクロヘキサノンオキシムも、同様にε−カプロラクタムに変換される化合物である。表2に、実験結果を示す。
【0049】
【表2】

【実施例3】
【0050】
図1に示す流通式超臨界水高速有機反応装置を用い、反応温度200−400℃、圧力30−40MPa、及び密度0.418−0.880g/cmの亜臨界−超臨界水領域で、実施例1のシクロヘキサノンに代えて、シクロペンタノンをヒドロキシアンモニウム塩酸塩(和光純薬社製、特級)と反応させ、直接バレロラクタムの連続合成を試みた。本反応の反応式を次に示す。
【0051】
【化6】

【0052】
各導入調製液は高圧ポンプで注入した。反応に使用した水は蒸留水を使用し、窒素ガスでバブリングして溶存酸素を追い出したキャリヤー水を5ml/minの流速で通水した。同様に処理した蒸留水を用い、シクロペンタノン(0.1M)及びヒドロキシアンモニウム蓚酸塩(0.2M)の基質溶液を調製し、この基質溶液を1ml/minの流速で反応器に導入した。反応時間は0.880−0.418秒であり、反応後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置で調べたところ、シクロペンタノンに窒素原子が取り込まれたδ-バレロラクタムが生成していることを確認した。
【0053】
δ-バレロラクタムの含有濃度は0.8−15.5mMであり、その反応収率は4.9−90.8%であった。5−アミノ吉草酸の含有濃度は0−8.9mMであり、その反応収率は0−52.4%であった。シクロペンタノンオキシムの含有濃度は0.1−16.2mMであり、その反応収率は0.3−95.1%であった。なお、ここで得られる、5−アミノ吉草酸は、脱水によって容易にδ−バレロラクタムに変換でき、シクロペンタノンオキシムも同様にδ−バレロラクタムに変換される化合物である。
【実施例4】
【0054】
図1に示す流通式超臨界水高速有機反応装置を用い、反応温度400℃、圧力40MPa、及び密度0.5237g/cmの亜臨界−超臨界水領域で、実施例1のシクロヘキサノンに代えて、シクロドデカノンをヒドロキシアンモニウム塩酸塩(和光純薬社製、特級)と反応させ、ω-ラウリンラクタムの連続合成を試みた。
【0055】
各導入調製液は高圧ポンプで注入した。反応に使用した水は蒸留水を使用し、窒素ガスでバブリングして溶存酸素を追い出したキャリヤー水を5ml/minの流速で通水した。同様に処理した蒸留水を用い、シクロドデカノン(0.1M)及びヒドロキシアンモニウム蓚酸塩(0.2M)の基質溶液を調製し、この基質溶液を1ml/minの流速で反応器に導入した。反応時間は0.880秒であり、反応後の水溶液を高速液体クロマトグラフィー質量分析装置で調べたところ、シクロドデカノンに窒素原子が取り込まれたω-ラウリンラクタムが生成していることを確認した。更に、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトルで確認した。図2に、ω−ラウリンラクタムの合成サンプルと既知サンプルの赤外線スペクトルを示す。図3に、ω−ラウリンラクタムの合成サンプルと既知サンプルの核磁気共鳴スペクトルを示す。
【0056】
ω−ラウリンラクタムの含有濃度は15.5mMであり、その反応収率は90.8%であった。他に、12−アミノドデカノイック酸、シクロドデカノンオキシムが得られるが、12−アミノドデカノイック酸は、脱水によって容易にω-ラウリンラクタムに変換でき、シクロドデカノンオキシムも同様に、ω-ラウリンラクタムに変換される化合物である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上詳述したように、本発明は、高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、環状ケトン化合物から、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤との反応により直接含窒素有機化合物を合成することを特徴とする含窒素有機化合物の製造方法、及びその製造装置に係るものであり、本発明により、従来の含窒素有機化合物の工業的製造方法や、超臨界水を反応場とする含窒素有機化合物の製造方法における不可避的な問題点を確実に解消することを可能とする、新しい含窒素有機化合物の製造方法、及びその製造装置を提供することができる。
【0058】
ラクタム等の含窒素有機化合物は、医薬、農薬、染料、樹脂等の広範囲にわたる有機工業製品の出発原料又は中間体として重要な化合物であり、例えば、ε−カプロラクタムは、そのほとんどがナイロン6の原料として使用され、ナイロン6は、繊維あるいは樹脂として、衣料、自動車、電気部品、食品包装用フィルムとしてその用途は多岐にわたっている。従来、その製造には、大量の硫酸を必要とし、多量の硫酸アンモニウムを副生した。また、超臨界水を反応場とする製造方法では、硫酸触媒が不可欠であり製造装置の腐食損傷が発生する、等の様々な技術上の問題を有し、これらの解決が強く求められていた。
【0059】
本発明は、このような従来法の問題点を解決することを可能とするとともに、高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、一段工程により、効率的に、選択的に含窒素有機化合物を合成することを可能とする含窒素有機化合物の新しい合成方法を提供するものである。また、本発明は、廃酸、廃液等の排出が殆どなく、環境に優しい含窒素有機合物の製造技術を提供することができる。更に、本発明は、医薬、農薬、染料、樹脂等の広範囲にわたる化学工業製品の原料及び中間体となる含窒素有機化合物の新しい製造技術を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の流通式超臨界水高速有機反応装置の一例を示す。
【図2】ω−ラウリンラクタムの合成サンプルと既知サンプルの赤外線スペクトルを示す。
【図3】ω−ラウリンラクタムの合成サンプルと既知サンプルの核磁気共鳴スペクトルを示す。
【符号の説明】
【0061】
1a−1d:高圧ポンプ
2a−2d:タンク(2a、2d:水、2b:第一基質、2c:第二基質)
3:圧力計
4:安全装置
5:超臨界水供給装置
6a、6b:熱電対
7:オーブン
8:反応器
9:冷却器
10:背圧弁
11:秤量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧水を反応媒体とする流通式反応装置を用いて、環状ケトン化合物から、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤との反応により直接含窒素有機化合物を合成することを特徴とする含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項2】
200℃以上、20MPa以上の高温高圧水を反応媒体とする請求項1に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項3】
高温高圧水が、亜臨界水ないし超臨界水である請求項1に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項4】
環状ケトン化合物が、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロノナノン、及びシクロドデカノンから選ばれる少なくとも一種以上の化合物である請求項1に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項5】
ヒドロキシアンモニウム塩が、塩化ヒドロキシアンモニウム、シュウ酸ヒドロキシアンモニウム、及び硫酸ヒドロキシアンモニウムから選ばれる少なくとも一種以上の化合物である請求項1に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項6】
含窒素有機化合物が、ラクタム化合物、オキシム化合物、及びアミノカルボン酸から選ばれる少なくとも一種以上の化合物である請求項1に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項7】
ラクタム化合物が、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、又はω-ラウリンラクタムである請求項6に記載の含窒素化合物の製造方法。
【請求項8】
オキシム化合物が、シクロヘキサノンオキシム、シクロペンタノンオキシム、又はシクロドデカノンオキシムである請求項6に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項9】
アミノカルボン酸が、6−アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、又は12−アミノドデカノイック酸である請求項6に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項10】
反応系の組成、温度、圧力、及び/又は時間を調整して、目的化合物の選択率、転換率、及び/又は収率を制御する請求項1に記載の含窒素有機化合物の製造方法。
【請求項11】
高温高圧水を反応媒体とする流通式反応系を用いて含窒素有機化合物を合成するための流通式反応装置であって、反応器と、高温高圧水供給手段、環状ケトン化合物供給手段、ヒドロキシアンモニウム、その塩、又はアンモニアと酸化剤供給手段と、これらの各手段から、上記高温高圧水、及び各化合物を上記反応器に供給するための高温高圧流路とを具備し、上記反応器内において、環状ケトン化合物から直接含窒素有機化合物を合成するようにしたことを特徴とする含窒素有機化合物の製造装置。
【請求項12】
200℃以上、20MPa以上の高温高圧水を反応媒体とする請求項11に記載の含窒素有機化合物の製造装置。
【請求項13】
高温高圧水が、亜臨界水ないし超臨界水である請求項11に記載の含窒素有機化合物の製造装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−204407(P2007−204407A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23938(P2006−23938)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】