説明

吸い殻搬送装置

【課題】パチンコ機、スロット機等の遊技機に付設して、遊技者が灰皿に投入した煙草の吸い殻を所定の回収位置まで搬送するために使用するに適した吸い殻搬送装置であって、構造的に簡単で、騒音等の発生の少ないものを提供する。
【解決手段】
遊技機の前に設けられたカウンターの灰皿から、該カウンターの下側に設けられた樋状の受け容器内に投入される吸い殻を所定の位置まで搬送するための吸い殻搬送装置であって、前記樋状の受け容器の軸方向に沿って配置されたコイルバネと、該コイルバネを所定方向に回転駆動する駆動装置とを備えている吸い殻搬送装置。コイルバネの一方の端部は、受け容器の端部に取り付けられたエンドユニットに回転自在に支承された回転軸に取り付けられ、他方の端部が駆動装置を構成するモータの回転軸に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機等の遊戯機に付設されている灰皿に投入された吸い殻を、所定の場所に運んで処理するために使用するに適した搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機やスロット機を設置した遊技店では、シマと呼ばれるブロックに複数の遊技機を並列に設置し、その前に共通の長いカウンターを設けて、該カウンターの各遊技機に対向する位置にそれぞれ灰皿を配置している。この灰皿は、椀状の容器の底に吸い殻が落下する通孔を設けたもので、前記カウンターに設けた取付け穴に嵌め込まれている。
【0003】
前記カウンターの下側には、該カウンターに沿う樋状の受け容器(シュート)が取り付けられていて、前記灰皿から通孔を通って落とし込まれた吸い殻が、この受け容器内に収容されるようになっている。樋状の受け容器内に収容された吸い殻は、そのままでは悪臭や煙を発して店内環境を損なうので、適宜所定の処理装置まで移送回収して処理している。
【0004】
受け容器内に落とし込まれた吸い殻を処理装置の位置まで搬送する搬送装置として従来採用されてきたのは、ベルトコンベア式の搬送装置、スクリューコンベア式の搬送装置、スクレーパ式の搬送装置等であった。しかしながら、ベルトコンベア式の装置には、ベルトと受け容器内面との間に吸い殻が詰まりやすいという問題があり、スクリューコンベア式装置には、スクリューと受け容器内面との間の隙間に吸い殻が残りやすいという問題があり、スクレーパ式装置の場合は、チェーンが外れる等の故障が生じやすく、しかも騒音が発生するという問題があった。このような問題点を解決するものとして、下記特許文献に記載の装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2821675号公報
【特許文献2】特開平08−10437号公報
【特許文献3】特開平10−99538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている装置は、シマの左右中央部に駆動ボックスを設置し、該駆動ボックスから左右にスクリュー羽根を備えたスクリューロッドをそれぞれ片持ち状に伸び出させたもので、左右のスクリュー羽根は押進方向が逆方向となっているものである。この構成であると、全体を1本のスクリューロッドで構成する場合にくらべて、シマの中央部から伸び出す各スクリューロッドの長さを短くすることができるので、支持力や駆動力が小さくてすみ、先端部の垂れ下がりも少なくてすむと考えられる。また、上記特許文献2に開示されている装置は、カウンターの下側に開閉自在な樋状のカバーを設け、該カバーの内部にスクリューを設けたものである。さらに、上記特許文献3に開示されている装置は、弾性体に圧電セラミックスを二層貼り合わせて形成した搬送ユニットを直線的に複数接続したもので、前記圧電セラミックスに移送のずれた交流電圧を印加することにより、弾性体の表面に進行波を形成し、該進行波を利用して吸い殻を所定方向に搬送するものである。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されている装置は、いずれもスクリューロッドを用いるものであるから、騒音が生じやすく、依然として吸い殻が隙間に残りやすいという問題を含むものと考えられる。また、上記特許文献3に記載の装置は、圧電セラミックスによる弾性体の変形を利用するものであるから、構造的に複雑であり、搬送力もそれほど大きくなく、吸い殻の回収装置として十分に満足できるものであるとは考えられない。
【0008】
なお、上記のようなスクリューロッドではなく、ベルトコンベアで吸い殻を搬送する装置も、騒音が発生するという問題点がある。特に、パチンコ等の遊技機では、パチンコ玉の重量でテーブルや受け容器が撓むことがあり、樋状の受け容器が変形すると、その内部に設けられている吸い殻搬送装置が吸い殻をうまく搬送できなくなったり、異常な騒音が発生するという問題点があった。そこで本発明は、比較的簡単な構造ながら、吸い殻をうまく搬送でき、しかも騒音の少ない搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような構成を採用した。すなわち、本発明に係る吸い殻搬送装置は、パチンコ等の遊技機のカウンターに設けられている灰皿から該カウンターの下側に設けられた樋状の受け容器内に落とし込まれた吸い殻を所定の位置まで搬送する吸殻搬送装置であって、前記樋状の受け容器の軸方向に沿って該受け容器の底面上に配置されたコイルバネと、該コイルバネを所定方向に回転駆動する駆動装置とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る搬送装置は、樋状の受け容器内にその軸方向に沿って配置されたコイルバネを軸回りに回転させることにより、吸い殻殻を螺旋状に巻かれた当該コイルバネを構成する線材で押して搬送するものであるから、構造的に簡単であり、しかも大きな騒音が発生しない。特に、コイルバネは弾性を有するので、無理な力が加わって一時的に変形しても、当該無理な力が解消すると弾性により自然に元の状態に復帰するので、吸い殻が詰まってしまうようなおそれが少ない。また、受け容器に対する組み付け精度はそれほど厳密なものでなくてもよく、しかも、剛的構造ではないので、使用中に受け容器が若干撓んでも、うまく搬送することができ、大きな騒音も発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、本発明に係る吸い殻搬送装置が設置されたパチンコ機の列(シマ)を例示するもので、複数のパチンコ機1,…が並列に設置され、その前に共通の長いカウンター(テーブル)2が設けられている。カウンター2の下側には、樋状の受け容器3(シュート)が取り付けられており、カウンター2のパチンコ機1,…に対応させて、それぞれの位置に灰皿5が取り付けられている。灰皿5は、図2に示すように、概略椀状であり、その底部には上下に通ずる穴6が穿孔されている。この穴6の大きさは、吸殻が支障なく落下する大きさとなっている。灰皿5は、カウンター2に設けた取り付け穴7に嵌め込むことによって取り付けられており、その上端部の鍔の部分が取り付け穴7の周縁部に引っ掛かって保持されている。
【0012】
受け容器3は、図4に示すように断面概略U字状であり、その長手方向において複数に分割されている。受け容器3は、その両側の上縁部にフランジ状張出部3a,3bが設けられ、該張出部によってカウンター2の下面にビスで固定されている。受け容器3の搬送方向終端側の部分3Aは、図5に示すようなエンドユニット10に取り付けられ、該エンドユニット10によって支持される。
【0013】
複数に分割された受け容器3の接続部には、図7に示すように半円状のベルト15が巻き付けられる。このベルト15は、両端部に内向き突起16が設けられていて、受け容器3の接続部に巻き付けた状態で前記突起16を受け容器3の上部に形成されている溝に係合することにより、接続部に固定され、該接続部をカバーするようになっている。なお、このベルト15の内面には、接続部の隙間を閉塞するようにシリコンを塗布しておく。
【0014】
この受け容器3には、図1及び図3以下に示すように、搬送装置20が付設されている。この搬送装置20は、受け容器3内に該受け容器の軸方向に沿わせて配置されたコイルバネ21と、該コイルバネ21を所定方向に回転駆動する駆動装置としてのモータ22を備えている。
【0015】
前記コイルバネ21は、バネ鋼の線材を螺旋状に巻いたもので、一方の端部が搬送方向終端側に設けられた前記エンドユニット10の回転軸12に取り付けられ、他方の端部がモータ22の回転軸25に取り付けられた状態で受け容器3の底面上に直線状に支持されていて、該コイルバネ21の下部は、受け容器3の内面と軽く接した状態となっている(微小な隙間が存在してもよい)。コイルバネ21の全長は、シマの長さに相当するもので、通常は15〜18mである。コイルバネは、通常は密に巻かれた状態であるが、本発明では、ピッチを粗くして使用する。実際は、密に巻かれたコイルバネを引き伸ばして使用すればよい。例えば密に巻かれた長さ60cm程度の市販のコイルバネを15m程度に引き伸ばして使用することができる。このようにすると、工事現場への持ち運びを簡単に行うことができるという利点がある。コイルバネ21の線材の太さは直径3mm以下とするのが好ましく、1.5〜2mmとするのがより好ましい。吸い殻の場合は、線形が細かいほどうまく搬送する傾向がある。なお、直径3mm以上の線材を使用すると、重くなるため騒音が発生する。
【0016】
また、コイルバネ21の巻き径(コイルの直径)とピッチは、ともに35〜42mm程度とするのが好ましい。この巻き径とピッチが大きすぎると、吸い殻が線材と線材の隙間に溜まって、うまく運ばれなくなる。逆に小さ過ぎると、吸い殻のフィルターが縦方向に数珠つなぎ状態となり、吸い殻がコイルの線材に乗り上げてその場所で回転運動をするだけとなり、うまく搬送できなくなる。なお、コイルバネ21の線材には、200℃以上の耐熱性を有し、加熱されてもガスの出ない樹脂被覆を施しておくのが好ましい。
【0017】
図8、図9に示すように、回転軸12は、エンドユニット10のカバープレート13に設けた軸受けによって回転自在に支持されており、その外周部には、軸方向に沿う溝12aが形成され、該溝12aよりも回転方向後側には係合凹部12bが形成されている。
【0018】
コイルバネ21の取り付けは、まず、図8に示すように、回転軸12の溝12aにコイルバネ21の直角に屈曲させた屈曲端部21aを嵌合し、回転軸12の端面とカバープレート13との隙間まで移動させる。そして、回転軸12を図8の矢印方向に回転させると、回転軸12に形成されている前記係合凹部12bがコイルバネ21の屈曲端部21aの位置にくるので、該屈曲端具21aをこの係合凹部12bに係合させる。これにより、図9に示すように、コイルバネ21の一方の端部が回転軸12に取り付けられる。
【0019】
また、コイルバネ21の他方の端部は、図10(図の向きは図8、図9と逆向きとなっている)に示すように、モータ22の回転軸23に取り付けられる。この回転軸23も前記回転軸12と同様に溝と係合凹部が形成されており、上記と同様にしてコイルバネ21の屈曲端部を当該回転軸23に取り付ける。これにより、コイルバネ21が受け容器3内に取り付けられたことになるが、このコイルバネ21の取り付けに際しては、当該コイルバネ21が引き伸ばされないように、500〜1000g程度の張力で引っ張るのが好ましい。
【0020】
図3は、吸い殻搬送装置1の組み立て手順を表すもので、並列に設置された遊技機の前に設けられているカウンター2の下側に細長いガイドプレート30を取り付け、そのガイドプレート30に下側から受け容器3を取り付ける。受け容器3の内部にはコイルバネ21を配置し、該受け容器3の一方の端部をエンドユニット10に取り付け、他方にモータ22を取り付ける。受け容器3は複数に分割されていて、互いに接続されていることは上述のとおりである。上記エンドユニット10の下側には送られてきた吸い殻を収容する吸い殻回収容器35が配置される。
【0021】
この吸い殻搬送装置1の使用に際しては、モータ22を起動し、回転軸23に取り付けられているコイルバネを所定方向に回転させる。この回転方向は、螺旋状に巻かれているコイルバネ21の巻き方向と同じである。通常のコイルバネは右巻きであるから、これを使用する場合は、回転方向も右方向である。モータ22の回転は、例えば1/60程度の減速ギヤ装置を介して回転軸23に伝えられるので、コイルバネの回転数は30rpm程度である。この回転数が小さ過ぎると非能率的であり、大きすぎると、空回りが生じて搬送状態が悪くなるとともに騒音が発生するおそれがある。カウンター2の灰皿5から受け容器3内に落とし込まれた吸い殻は、コイルバネ21の螺旋状の線材に押されて、徐々に回収容器35が設置されている側に搬送される。エンドユニット10まで運ばれた吸い殻は、該エンドユニット10に形成されている開口から落下し、回収容器35内に回収され、消火等の処置を経た後廃棄される。
【0022】
この吸い殻搬送装置1は、螺旋状に巻かれたコイルバネ21の回転によって吸い殻を所定方向に移動させるものであるから、構造が簡単であり、コストも低く抑えることができる。コイルバネ21を回転させるためのモータ22の出力は1W程度と小さいものでよい。また、コイルバネ21は弾性変形可能であるので、組み付け精度も比較的粗くてもよい。したがって、例えば螺旋翼やベルトコンベアで搬送する搬送装置に比べて、設置工事も楽である。また、受け容器に多少の曲がりがあっても搬送機能を維持することができ、騒音の発生も少ないので、パチンコ玉の重量によりカウンター等に撓みが生じやすい遊技機の吸い殻搬送装置として優れたものである。なお、以上の説明では、遊技機に付設して吸い殻を運ぶ装置として使用する場合について述べたが、他の物品の搬送装置として使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る搬送装置は、パチンコ機、スロット機等の遊技店において、吸い殻を所定の処理位置まで搬送する装置として好適に利用できるが、これ以外の種々の物品の直線方向への搬送に使用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】パチンコ店のシマの外観図である。
【図2】灰皿の外観図である。
【図3】搬送装置の分解状態を表す斜視図である。
【図4】受け容器の断面図である。
【図5】受け容器の端部を取り付けるエンドユニットの斜視図である。
【図6】エンドユニットと受け容器端部をカウンターに取り付ける説明図である。
【図7】受け容器の接続部にベルトを取り付ける説明図である。
【図8】コイルバネの端部を取り付ける回転軸の斜視図である。
【図9】コイルバネを取り付けた回転軸の斜視図である。
【図10】コイルバネの反対側端部をモータに取り付ける説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 遊技機(パチンコ機)
2 カウンター
3 受け容器
10 エンドユニット
20 搬送装置
21 コイルバネ
22 モータ(駆動装置)
23 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ等の遊技機のカウンターに設けられている灰皿から該カウンターの下側に設けられた樋状の受け容器内に落とし込まれた吸い殻を所定の位置まで搬送する吸い殻搬送装置であって、前記樋状の受け容器の軸方向に沿って該受け容器の底面上に配置されたコイルバネと、該コイルバネを所定方向に回転駆動する駆動装置とを備えていることを特徴とする吸い殻搬送装置。
【請求項2】
コイルバネの一方の端部が、受け容器の端部に取り付けられたエンドユニットに回転自在に支承された回転軸に取り付けられ、他方の端部が駆動装置を構成するモータの回転軸に取り付けられている請求項1に記載の吸い殻搬送装置。
【請求項3】
コイルバネの線材の直径が1.5〜2mmである請求項1又は2に記載の吸い殻搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−295954(P2008−295954A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148359(P2007−148359)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(505212588)株式会社スターベックス (7)
【Fターム(参考)】