説明

吸収体の製造方法及び製造装置

【課題】繊維材料を回転ドラムに向け飛散供給しこれを堆積させて吸収体を製造する際の上記特有の問題点を克服し、形状の一定な吸収体を安定して連続生産することができる吸収体の製造方法及びこれに好適に用いられる製造装置を提供する。
【解決手段】第1センサーを介して前記掻き取り前の堆積体が回転ドラム外周面もしくはそこから設定された判定高さを越え堆積しているか否かを判定し、他方、第2センサーを介して前記掻き取り後の堆積体の掻き取られた表面の前記回転ドラム外周面からの高低差を測定し該堆積体の凹凸情報を入手し、前記第1センサーを介して取得した前記堆積体の判定結果と前記第2センサーを介して取得した前記堆積体の凹凸情報に基づいて、該繊維供給制御部は前記供給適正量となるよう前記繊維材料の供給量を前記繊維供給部を介して制御して、前記吸収体の製造を行う吸収体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体の製造方法として、回転ドラム(積繊ドラム)を利用する方法がある。この方法においては、ダクト内を流れる空気流に随伴させて供給した繊維材料を、回転ドラムの外周面に設けた集積用凹部に吸引して堆積させる。その堆積体を、そのまま、あるいは紙や不織布等で被覆して吸収体とすることができる。このような吸収体の製造方法として、解繊機で解繊した繊維材料を集積用凹部に回転ドラム外周面を越えて堆積させ、その後、過剰量の繊維材料を掻き取る方法がある。さらに、この掻き取った繊維材料を、解繊機やダクトの入り口付近に戻して再利用する技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平6−143号公報
【特許文献2】特開2006−500155号公報
【特許文献3】特許3462232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した集積用凹部において回転ドラム外周面を越えて堆積した過剰量の繊維をそぎ落として再利用する技術は、材料を無駄なく利用できる利点を有する。しかし、この方法では、形状の一定な吸収体を安定して連続生産するための制御が容易ではない。具体的には、過剰量の繊維を掻き取って再利用する場合には、新たに供給する繊維の供給量を一定に維持したままだと、集積用凹部に堆積する繊維量が徐々に増加したり、逆に減少したりして、循環適正量からずれてしまうことがある。この量が増加しすぎると返戻管やダクト内に繊維の詰まりが生じたり、繊維の大きな塊が吸収体に混入したりする。減少しすぎると、必要量の繊維材料が十分に堆積せずに目標質量に満たないこととなる。
【0005】
単なる粉粒体と違って、吸収体に用いられるパルプ等は塊となりやすく供給ムラが発生しやすい。また、生産ラインは、製品仕様の切り替え等に伴う稼働や停止に応じて減速や加速等の運転速度の変化があり、それに合わせて供給側の速度も変化させているものの、その人的ないし個別的な制御には限界がある。さらに、このように吸収体の製造工程においてその製造条件が安定せずばらつき等が生じると、その影響をそこだけで止めることは通常難しい。吸収体は通常吸収性物品の中間製品であるため、これを組み込んで最終製品とした後に検査を行うのが実際的であり、そこで品質基準を外れるものがあると多くの工数及び多量の材料のロスにつながりかねない。
【0006】
特に、厚みの薄い吸収体を形成する場合や、前記集積用凹部の底面部に窪みのある積繊ドラムを利用した場合には、この制御が一層難しくなる。厚みの薄い吸収体は少しのばらつきでも影響が大きく、均一の厚みを得るためには、制御の精度が求められる。また、集積用凹部の底面部に窪みのある積繊ドラムを利用した場合(この状態を簡略化した断面図として図7に示す。)、繊維材料の堆積の状態について詳細は後述するが、図示したもののように窪み部11kのある底面部11を有する積繊ドラム2を用いた場合には、窪み部11kと非窪み部11jとで堆積量は然程変わらない。結果として、図7(a)の状態では、ドラム外周面2sからの堆積高さに差が出てしまい、窪み部11kのある中央では高さhがドラム外周面2sよりドラムの径方向にみて低くなり、他方、非窪み部11jの部分の高さhはドラム外周面2sより高くなる。これをスカッフィングロールでドラム外周面2sと一致する面で掻き取ると、図7(b)のように掻き取り後の堆積体7bの中央に凹み7kのある状態となってしまう。これでは目的形状に立体化された吸収体は得られない。
【0007】
このような状況を防ぐために、図7(c)のように繊維材料の供給量を増やすと確かに堆積体の高さh,hはいずれの箇所もドラム外周面2sを越え、掻き取り後の堆積体の形状は、断面において直線的なものとなる(掻き取り予定面5c参照)。しかし、ここまで多くの繊維材料を系内に供給し、返戻搬送路を介して循環させると、上述したように詰まりを生じたり、繊維の塊が吸収体に混入したりしやすくなる。このような状態は上記底面部に窪み部を有する回転ドラムを用いたときにのみ生じるものではないが、近時、立体的に複雑に成形された吸収体が開発され、その性能の高さから好評であり、これに対応することが上記繊維材料の供給制御を一層困難にすることとなる。
【0008】
上記の点に鑑み、本発明は、繊維材料を回転ドラムに向け飛散供給しこれを堆積させて吸収体を製造する際の上記特有の問題を克服し、形状の一定な吸収体を安定して連続生産することができる吸収体の製造方法及びこれに好適に用いられる製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムの前記外周面に向け繊維材料を飛散状態で繊維供給部より供給し、該繊維材料を前記集積用凹部に前記回転ドラム外周面を越えて堆積させ堆積体とし、該回転ドラム外周面を越えて堆積した過剰量の繊維材料を掻き取り、掻き取った繊維材料を返戻搬送路を介して繊維材料の供給経路に戻すとともに、該集積用凹部内に残る堆積体を吸収体として該集積用凹部内から離型し吸収体とする吸収体の製造方法であって、
第1センサーを介して前記掻き取り前の堆積体が前記回転ドラム外周面もしくはそこから設定された判定高さを越え堆積しているか否かを判定し、他方、第2センサーを介して前記掻き取り後の堆積体の掻き取られた表面の前記回転ドラム外周面からの高低差を測定して該堆積体の凹凸情報を入手し、
前記第1センサーを介して取得した前記堆積体の判定結果と前記第2センサーを介して取得した前記堆積体の凹凸情報に基づいて、該繊維供給制御部は前記供給適正量となるよう前記繊維材料の供給量を前記繊維供給部を介して制御して、前記吸収体の製造を行う吸収体の製造方法に関する。
また、本発明は上記製造方法を使用する製造装置であって、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、該回転ドラムの外周面に向けて繊維材料を飛散状態にて供給するダクトと、該ダクトに繊維材料を供給する繊維材料供給部と、前記集積用凹部に前記回転ドラム外周面を越えて堆積された過剰量の繊維材料を掻き取るスカッフィングロールと、スカッフィングロールで掻き取った繊維材料を前記ダクト内又は前記繊維材料供給部に戻す返戻搬送路とを有する吸収体の製造装置であって、
前記掻き取り前の堆積体の繊維材料の堆積状況を検知する第1センサーと、前記掻き取り後の堆積体の繊維材料の堆積状況を検知する第2センサーとを有し、
前記第1センサーを介して取得した前記掻き取り前の堆積体が前記回転ドラム外周面を越えて堆積しているか否かの判定結果と前記第2センサーを介して取得した前記掻き取り後の堆積体の凹凸情報とに基づいて、該繊維供給適正量となるよう前記繊維材料の供給量を前記繊維供給部を介して制御する繊維供給量制御部とを備えた吸収体の製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法及び製造装置によれば、繊維材料を回転ドラムに向け飛散供給しこれを堆積させて吸収体を製造するに当たり、形状の一定な吸収体を安定して連続生産することができる。また、本発明の製造方法及び製造装置によれば、特に中央に突出した部分を有するものなど立体化された吸収体や厚みの薄い吸収体等であってもその成形にも好適に対応して、中間製品におけるばらつきや製造装置内の詰まり等の不具合を低減し、かつ製造条件の自動制御を実現して製造効率を改善することがきる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の製造方法に用いられる吸収体の製造装置の一実施形態を模式化した側断面で示す装置説明図である。
【図2】図2(a)は図1に示す製造装置における集積用凹部の拡大斜視図であり、図2(b)は該集積用凹部に対応する立体形状の吸収体を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3(a)は回転ドラム上の掻き取り前の堆積体を加工方向前方からみて模式的に示した断面図あり、図3(b)は前記堆積体をスカッフィングロールで掻き取るときの状態を模式的に示した断面図であり、図3(c)は掻き取った後の回転ドラム上の堆積体を模式的に示す断面図である。
【図4】スカッフィングロールで集積用凹部から過剰量の繊維材料を掻き取る様子を模式的に示す側断面図である。
【図5】堆積体を掻き取る前後において第1センサー及び第2センサーで所定の項目を測定する様子を模式的に示した斜視図である。
【図6】掻き取った後の堆積体の表面凹凸を第2センサーで測定する様子を模式的に示した斜視図であり、図6(a)は表面凹凸のない堆積体の測定、図6(b)は表面凹凸のある堆積体の測定を示す。
【図7】堆積体の堆積した状態及びこれを掻き取る様子を模式的に示した断面図であり、図7(a)が堆積量が少ないときの状態、図7(b)が図7(a)の堆積体の過剰量の繊維材料を掻き取った状態、図7(c)が堆積量が多いときの状態を示す。 なお、図中、「MD方向」とはMachine Direction方向の略称であり、製造装置における流れ方向であることを意味する。「CD方向」とはCross Direction方向の略称であり、上記MD方向に直交する方向を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の製造方法に用いられる一実施形態としての吸収体の製造装置10は、図1に示すように、外周面に複数の集積用凹部1(堆積部)が所定の間隔で形成された回転ドラム2を備えている。そして、この回転ドラム2の外周面2sに向けて、繊維材料42を飛散状態にて供給するダクト3と、ダクト3に繊維材料4を供給する繊維材料供給部4とが設けられ、これらにより集積用凹部1に繊維材料4を前記回転ドラム外周面を越えるように堆積させる。繊維材料供給部4は解繊機41を備えており、パルプシート等のシート状の原料43を、原料供給用のニップローラ44,44を駆動モータ45で駆動することにより解繊機41に導入し、解繊された繊維材料42をダクト3内に供給するように構成されている。
【0013】
さらに製造装置10は、前記回転ドラム外周面を越えるように堆積させた過剰量の繊維材料からなる堆積体7a(図3参照)から過剰分の繊維材料を掻き取るスカッフィングロール5を具備し、このスカッフィングロール5で掻き取った繊維材料42bをダクト3内に戻す返戻搬送路6を備えている。ダクト3内に戻された繊維材料42bは、回転ドラム2の外周面2sに向け再供給される。
【0014】
回転ドラム2は、円筒状をなし、図1中の矢印で示したMD方向に一定速度で回転する。回転ドラム2の外周面2sには、製造する吸収体70の形状に対応する形状の集積用凹部1,1・・が形成されている。図2には、図1に示す装置における集積用凹部1及び該集積用凹部1に対応する立体形状の吸収体70が示されている。図2に示す吸収体70は、生理用ナプキンや失禁パッド等の吸収性物品の吸収体であり、該吸収性物品に組み込まれて使用される際に、着用者の液排泄部又は臀裂に対向配置される部位に凸部(中高部)72を有している。凸部72は、吸収体70の他の部分73と一体成形されており、両者間に境界面が存在しない。
【0015】
前記集積用凹部1内に堆積し、ドラム外周面を越えて堆積した繊維材料42cを、スカッフィングロール5が掻き取る。スカッフィングロールは図3及び図4に示すように、円柱状のロール本体51と、ロール本体51の外周面に立設された掻き取り用の多数の突起52とを有しており、図4中に矢印Eで示す一方向に回転しながら、堆積体7aから突起52でそのドラム外周面を越えて堆積した部分を掻き取る。ここで用語と図中の符号との関係を確認しておくと、掻き取る前の堆積体を7aとし、掻き取った後の堆積体を7bとし、掻き取り途中の堆積体を7cとし、それらの総称を堆積体7として示している。繊維材料については堆積する前の飛散する繊維材料を42aとし、堆積体より掻き取った繊維材料を42b、堆積体を構成している繊維材料を42cとして区別している。ただし、繊維材料42は掻き取られた後、返戻搬送路で戻され再度堆積させるため、掻き取られた繊維材料42bは返戻され堆積させる繊維材料42aになる。
【0016】
図3(a)に示すように、集積用凹部1に堆積した掻き取り前の堆積体7aは、非窪み部11jに対応する部分で高さhをなし、窪み部11kに対応する部分で高さhをなしている。したがって同図に示した実施態様においては、いずれの箇所においても堆積体7aの高さが、回転ドラムの外周面2sの高さhを越えて堆積した状態とされている。この状態において、図3(b)に示すように、スカッフィングロール5がその回転軸を中心に回転し、ブラシから構成されている突起52の先端が掻き取り予定面5cの上方を通過し、そこから外方の過剰な繊維材料42cを掻き取っていく。このようにして図3(c)に示すように、掻き取られた後の堆積体7bは、その掻き取られた表面7sが、回転ドラム2の外周面2sの高さhと同じ高さに位置している。このようにして所定の形状に立体化された堆積体7bが成形され、さらに回転ドラム2から離型され、吸収体70として搬送ベルト91に載置されて次工程に送られる(図1参照)。上記各工程ないし機器のさらに詳細について後述する。
【0017】
ここで本発明の吸収体における繊維材料の供給制御機構8について説明する。図5は、堆積体を掻き取る前後において第1センサー81及び第2センサー82で測定する様子を模式的に示した斜視図である。上述のようにスカッフィングロール5によりドラム外周面を越えて堆積した部分の繊維材料42cが掻き取られるが、本実施態様においては、その掻き取り前の堆積体7aがドラム外周面2sもしくはそこから所定の高さを越えているか否かの繊維材料の堆積状況を第1センサー81によって検知する。この第1センサー81は一対の右側センサー81aと左側センサー81bとからなる。本実施態様の場合、第1センサー81aが投光部とされ、第2センサー81bが受光部とされている。どちらを投光側・受光側としてもよいが、両センサー81a,81bの間に発せられる赤外線81v(その他、可視光線、レーザー等であってもよい。)を物体が遮るように横切ったときに、そのことを感知しうる設定にされている。ここで、赤外線81vが通過するドラム外周面2sからの高さhj(以下この高さを「判定高さ」という。)は、ドラム外周面から好ましくは5mm〜50mm、さらに好ましくは10mm〜20mmである。このとき、立体形状の堆積体を成形するのに十分堆積させ、かつ、スカッフィングする繊維材料42aが多すぎてダクト内で詰まりが発生しないような、ちょうど良い高さhjを維持するように設定することが好ましい。堆積体が過剰量になり上記判定高さを超えた場合、つまり図3(a)でいうと集積用凹部1の非窪み部11jにおける高さhが上記設定された赤外線81vの判定高さhjを越えると、その通過をセンサー81が感知する。ここで検知された信号は、繊維供給量制御部83に送られる。
【0018】
本実施態様の第1センサーによる制御についてさらに詳述すると、第1センサーから送られてくる信号に基づき、繊維供給量制御部83では判定高さhjを越えているか否かを判定し、掻き取り前の繊維材料42cが積もり過ぎないように、その判定結果に基づき新たに供給する繊維材料42aの供給量を制御する。繊維材料42cの有無をON・OFFで測定するセンサーの場合(判定高さhjを越えた場合はON)は、ONと判定する回数に応じて供給量を減らす信号を繊維材料供給部4に送り繊維材料の供給量を制御する。これとは別に、透過光量を測定するタイプのセンサーの場合、繊維材料の堆積状況を透過光量により検知するが、繊維供給量制御部83では得られる透過光量の変化を示す波形において、透過光量の閾値を設けるか、または波形を積分することによって、供給量を抑制する信号を繊維材料供給部4に送る制御を行うことができる。さらには、上記透過光量の波形が示す単位時間あたりの平均値や標準偏差を常時算出し、一定値を超えたら供給量を抑制する信号を繊維材料供給部4に送るといった手法も挙げられる。中央が凹んだ集積用凹部においては、その周囲に繊維材料42cが積もるため、断面は縦方向、横方向ともにピークが2つになり、測定する側部は一かたまりの凸形状になる。そのことを考慮した測定条件の設定やセンサーの配置とすることが好ましい。
【0019】
第2センサーはスカッフィングされた表面の前記ドラム外周面からの高低差を測定することで繊維材料の堆積状況を検知し、その変化から表面の凹凸状態を精度良く検出することができるものであることが好ましい。例えば、上記測定によって第2センサーから送られてくる信号に基づき、繊維供給量制御部83では凹みがあるか否かを判定し、凹みがあると判断された場合には、供給量を増やす信号を繊維材料供給部4に送ることが挙げられる。平滑であれば供給量を維持する信号を繊維材料供給部4に送り連続高速生産を継続する。堆積体表面の凹凸の測定は凹状集積部に対して垂直に測定光を当てるようなセンサーが適しており、例えばキーエンス社製(LK−Gシリーズ)のレーザー変位センサーが挙げられる。得られる変位データはドラム外周面を基準として、そこからプラス及びマイナスする波形が得られる。繊維供給量制御部83では、第2センサーを介して得られた該堆積体の凹凸情報であるこの波形の平均値、または標準偏差、または積分値を算出することで、凹凸の状態を把握し、決まった値以上であればスカッフィング後の表面に凹みが生じていると判断し、供給量を増やす信号を繊維材料供給部4に送ることとなる。
【0020】
以上のとおり、前記第1センサーを介して取得した掻き取り前の堆積体がドラム外周面を越えるか否かの判定結果に基づき前記供給適正量を下方修正し、前記第2センサーを介して取得した掻き取り後の堆積体の表面の凹凸情報に基づき前記供給適正量を上方修正することが好ましい。このような制御を通じて、例えば、前記繊維材料を100〜5000g/分の間で自動調節して供給する、あるいは吸収体を100〜2000個/分の速さで製造する高速連続生産にも好適に対応することができる。
第1センサー及び第2センサーとして使用しうるセンサーは特に限定されないが、第1センサー81は透過型の光電管センサー(赤外線、可視光線)や反射型の光電管センサー、レーザーセンサーを用いることができる。第2センサーはレーザーセンサー(変位を測定できるもの)が適しており好ましい。また、第1センサー81を第2センサー82のように上方から測定してもよい。例えば、同じ変位センサーを用いてドラム外周面からの繊維材料42C表面までの距離を測定して積もりすぎか、適切かを判断し、上記実施態様と同様に供給量制御が可能である。この場合は供給量を抑える制御だけでなく、もしスカッフィング前に基準となるドラム外周面の高さより低く繊維材料が積もっていたら、供給量を増やす制御も行うことができる。また第1センサー及び第2センサーはそれぞれ更に多数のセンサーを組み合わせたものであってもよい。
【0021】
さらに本実施態様の制御機構によれば、上記一部に窪み部のある凹状集積部のみならず、底面に凹部のない場合にも同様の制御が可能である。特に薄い吸収体を加工する場合、前述のようにパルプ等の繊維材料はムラが多いので薄く均等に積層させることが難しく、そこで多めに凹状集積部に繊維を堆積させ、ドラム外周面を越えて堆積したものの表面を掻き取ることで均等な薄型吸収体を加工することができる。
【0022】
本実施態様においては、回転ドラムの外表面2s側に向け赤外線を発する第2センサー82が、スカッフィングロール5によって掻き取られた後の堆積体7bが通過する位置に対応して設置されている。この第2センサーは堆積体7aの掻き取られた表面7sの幅方向中央に当たるようにされ、通過していく堆積体7bの長手方向における表面7sの凹凸を検知している。図6(a)は、上記のように堆積体7bの表面7sの高さが全体において均一になり、ドラムの外表面2sの高さh(図3参照)と堆積体表面7sの高さとが一致した例である。このような状態であれば、堆積体の通過によってその表面において凹凸は検出されず、良品と判定することができる。
一方、図6(b)に示したものでは、堆積体7b’の中央に凹み7kが形成されている。このような凹みが生じる理由については、図7(a)及び(b)に基づいて述べたとおりであり、堆積する繊維材料の量が少なすぎる場合に生じる。このような堆積体の凹み7kはその通過時に第2センサー82によって、表面の凹凸として検知され、その情報が繊維供給量制御部83(図1参照)に送られる。
【0023】
上述のようにして送られてきた、第1センサー81で取得された掻き取る前の堆積体の高さの情報I(以下、単に「堆積高さ情報」という。)と、第2センサー82で取得された掻き取った後の堆積体の表面の凹凸に関する情報I(以下、単に「表面凹凸情報」という)は、繊維供給量制御部83に送られる。繊維供給量制御部83には情報処理手段としてコンピュータが組み込まれており、所定のプログラムにより、適宜上記堆積高さ情報Iと表面凹凸情報Iとを演算又は加工するように設定されている。この演算等を経て、供給量制御部83は供給適正量を算出し、この供給適正量に関する情報Iを電圧や電流・デジタル信号等として駆動モータ45に送り、この情報Iに応じて駆動モータ45と連動するニップロールの回転速度が減速ないし加速される。典型的には、堆積高さ情報Iに基づき繊維材料42aの供給量の過剰を判定し駆動モータを介してニップロール44の回転を減速して供給量を低下させ、他方、表面凹凸情報Iに基づき繊維材料42aの供給不足を判定し駆動モータを介してニップロールの回転を加速して供給量を増加させる。さらに、返戻搬送路内に繊維材料の通過センサーを設置し、ここから得られる返戻繊維量の情報I(図示せず)と組み合わせて、さらに高次の制御を行ってもよい。本実施態様においては、上記のようにして繊維材料の供給量における自動制御を可能とする第1センサー81、第2センサー82、及び繊維供給量制御部83により繊維供給制御機構8が構成されている。
【0024】
再度、図1に戻って本実施態様における吸収体の製造過程及び製造装置の詳細について説明する。
回転ドラム2の内側(回転軸側)の非回転部分には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内側の仕切られた空間B及びCを負圧に維持可能である。個々の集積用凹部1の底面部11は、メッシュプレートにより構成され、多数の細孔を有している。個々の集積用凹部1が、負圧に維持された空間B,C上を通過している間、各集積用凹部1の底面部の細孔が吸引孔として機能する。本実施形態における集積用凹部1の底面部11は、図2(a)に示すように窪み部11k及び非窪み部11jとからなり、その一部が吸収体70の凸部72に対応する形状に窪んでいる。なお、底面部11をなすメッシュプレートには細孔11aがあり、そこを介して吸引fがなされる。
【0025】
回転ドラム2における空間Bは、ダクト3に覆われた部分の内側に位置する。空間Bは、ダクト3に覆われた部分を通る集積用凹部1の底面部に強い吸引力を発生させ、それにより集積用凹部1に繊維材料を集積させたり、繊維材料を搬送する空気流をダクト3内に発生させたりする。空間Cを負圧に維持するのは、集積用凹部1内に、堆積物ないし吸収体を保持しつつ搬送するためである。
【0026】
スカッフィングロール5の好ましい諸元についていえば、突起52の先端から外周面2sまでの距離が0mm〜5mm、好ましくは0.5mm〜2mmとなるようにスカッフィングロール5を設置するのがよい。前記距離をマイナス(突起52の先端がドラム外周面2sの位置を超えて集積用凹部内に入り込む場合をマイナスとする)にしないことにより、突起52によってドラム外周面自体を削ってしまうことを防止することができ、前記距離が遠すぎないことにより、集積用凹部から繊維材料がはみ出し形状が不明瞭になることを防止することができる。
【0027】
スカッフィングロール5と回転ドラム2の線速はスカッフィングロール5が速いことが好ましい。スカッフィングロール5の線速は突起52の先端、回転ドラム2の線速はドラム外周面における接線方向速度である。集積用凹部1内に残った堆積体7の集積用凹部1からの離型は、回転ドラム2内の仕切られた空間Dを図示しない加圧手段により陽圧に維持する等して行う。
このとき本実施態様においては、さらに、集積用凹部1の底面部の細孔から空気を吹き出させるとともに、搬送ベルト91側から吸引機92により吸引することにより行う。堆積体7の離型は搬送ベルト91に対して行う。図1に示す例においては、搬送ベルト91上に被覆シート93を供給し、その被覆シート93上に向け堆積体7を離型している。それにより堆積体7が離型された吸収体70は被覆シート93に下面側(凸部とは反対側)から被覆される。
【0028】
返戻搬送路6は、両端に開口部を有する返戻管64から形成されている。返戻搬送路6は、一端部61がスカッフィングロール5の近傍に開口し、他端部62がダクト3の長手方向(空気流が流れる方向と略同じ)の略中央部において、ダクト3内に向け開口している。返戻搬送路6の一端部61は、図1に示すように、ブロア(強制送気手段)63を設け該強制送気手段により、あるいはその他の手段により繊維材料42bを搬送する空気流を発生させる。
この実施態様は、返戻搬送路6の長さが比較的長い場合や、返戻搬送路6に屈曲部を多く設ける場合、返戻搬送路6の一端部61と他端部62との間の圧力差が生じにくい場合等に適している。これに限らず本実施態様においては、仕切り板65によってダクト3内の他の部分と仕切られた空間内に開口し、集積用凹部1の底面部からの吸引により、返戻搬送路6の一端部61と他端部62との間に圧力差が生じさせる。この圧力差によっても、返戻搬送路6内に空気流が生じる。
【0029】
スカッフィングロール5により掻き取られた繊維材料42bは、この空気流により返戻搬送路6内を流れて他端部62からダクト3内に導入され、回転ドラム2の外周面に向けて再供給される。本実施形態における返戻管64は、断面略円形であるが、断面形状が楕円や矩形等任意の形状のものを用いることもできる。なお、集積用凹部の吸引力はBの区間内において、繊維材料が余り堆積していない上流側が強く、十分に堆積した下流側は弱くなる。そのため、返戻搬送路の一端部62の吸引力が強く、他端部61の吸引力は弱くなる。
【0030】
前記被覆機構(図示せず)は、集積用凹部1から離型した吸収体70の上下面を、公知の機構により被覆シート93で被覆する機構である。本実施形態においては、1枚の帯状被覆シート93の幅方向中央部に吸収体70を載置した後(図1参照)、帯状被覆シート93の両側部を、公知の折り返し機構(図示せず)により折り返し、吸収体70の上下面を一枚の被覆シート93で被覆している。なお、吸収体70の上下面を被覆シート93で被覆する方法としては、各種公知の方法を採用でき、帯状被覆シート93上に吸収体70を載置した後(図1参照)、吸収体70の上面側を前記被覆シート93とは別体の他の被覆シートで被覆してもよい。被覆シートとしては、薄葉紙(ティッシュペーパ)や液透過性の不織布等を用いることができる。上下面を一枚又は複数枚の帯状の被覆シート93で被覆された吸収体70は、後の工程において、任意の切断手段により、配置された吸収体70間において被覆シート93を切断し、吸収性物品一つ分の長さとなる。本実施形態では、堆積体7の成形を中心に説明したため、離型された堆積体7を吸収体70とし、該吸収体と被覆シート93を別に説明したが、離型された堆積体7を被覆シート93で被覆したものを吸収体と解してもよい。
【0031】
本発明で用いる繊維材料としては、従来、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、繊維材料は、全体又は一部がパルプ繊維であることが好ましく、繊維材料中のパルプ繊維の割合は50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%であり、更に好ましくは100質量%である。なお、ダクト内には、繊維材料以外に、吸収性ポリマーを供給してもよく、また、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じ供給してよい。
【0032】
上述した実施形態における集積用凹部1は、回転ドラム2の外周面2sに、その周方向に一定の間隔を開けて複数形成されていたが、集積用凹部は、回転ドラムの外周面に、その周方向に連続するように形成されていてもよい。また、スカッフィングロール5の回転方向は、図4中に矢印Eで示す方向(回転ドラム2の回転方向と同方向)に代えて、それとは逆方向とすることもできる。
【0033】
上述した実施形態では生理用ナプキンに組み込まれる吸収体を例に説明したが、この他、吸収パッドや、おむつ等の吸収体であってもよく、上述した吸収体製造に関する繊維材料の好適な供給制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 集積用凹部
11 底面部
2 回転ドラム
3 ダクト
4 繊維材料供給部
42 繊維材料
43 シート状の原料
5 スカッフィングロール
6 返戻搬送路
7 堆積体
70 吸収体
8 繊維供給量制御機構
81 第1センサー
82 第2センサー
83 繊維供給量制御部
10 吸収体の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムの前記外周面に向け繊維材料を飛散状態で繊維供給部より供給し、該繊維材料を前記集積用凹部に前記回転ドラム外周面を越えて堆積させ堆積体とし、該回転ドラム外周面を越えて堆積した過剰量の繊維材料を掻き取り、掻き取った繊維材料を返戻搬送路を介して繊維材料の供給経路に戻すとともに、該集積用凹部内に残る堆積体を吸収体として該集積用凹部内から離型し吸収体とする吸収体の製造方法であって、
第1センサーを介して前記掻き取り前の堆積体が前記回転ドラム外周面もしくはそこから設定された判定高さを越え堆積しているか否かを判定し、他方、第2センサーを介して前記掻き取り後の堆積体の掻き取られた表面の前記回転ドラム外周面からの高低差を測定して該堆積体の凹凸情報を入手し、
前記第1センサーを介して取得した前記堆積体の判定結果と前記第2センサーを介して取得した前記堆積体の凹凸情報とに基づいて、該繊維供給制御部は前記供給適正量となるよう前記繊維材料の供給量を前記繊維供給部を介して制御して、前記吸収体の製造を行う吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記集積用凹部は、その底面部の一部に窪み部を有し、該窪み部に対応する部分が突出した吸収体を製造する請求項1に記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記第1センサーを介して取得した掻き取り前の堆積体が前記回転ドラム外周面を越えているか否かの判定結果に基づき前記供給適正量を下方修正し、前記第2センサーを介して取得した掻き取り後の堆積体の凹凸情報に基づき前記供給適正量を上方修正する請求項1又は2に記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、該回転ドラムの外周面に向けて繊維材料を飛散状態にて供給するダクトと、該ダクトに繊維材料を供給する繊維材料供給部と、前記集積用凹部に前記回転ドラム外周面を越えて堆積された過剰量の繊維材料を掻き取るスカッフィングロールと、スカッフィングロールで掻き取った繊維材料を前記ダクト内又は前記繊維材料供給部に戻す返戻搬送路とを有する吸収体の製造装置であって、
前記掻き取り前の堆積体の繊維材料の堆積状況を検知する第1センサーと、前記掻き取り後の堆積体の繊維材料の堆積状況を検知する第2センサーとを有し、
前記第1センサーを介して取得した前記掻き取り前の堆積体が前記回転ドラム外周面を越えて堆積しているか否かの判定結果と前記第2センサーを介して取得した前記掻き取り後の堆積体の凹凸情報とに基づいて、該繊維供給適正量となるよう前記繊維材料の供給量を前記繊維供給部を介して制御する繊維供給量制御部とを備えた吸収体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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