吸収体及びそれを用いた吸収性物品
【課題】高吸収性ポリマーが移動することを防止しつつ、ゲルブロッキングを防止し、吸収性能の向上した吸収体、及びその吸収体を用いた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品の例である生理用ナプキン1Aは、高吸収性ポリマー41を含む吸収材料40及び吸収材料40を担持する繊維シート5を備える吸収体4を用いている。繊維シート5は、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域5Tを分散配置して形成されている。繊維シート5の起毛領域5Tには、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。
【解決手段】本発明の吸収性物品の例である生理用ナプキン1Aは、高吸収性ポリマー41を含む吸収材料40及び吸収材料40を担持する繊維シート5を備える吸収体4を用いている。繊維シート5は、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域5Tを分散配置して形成されている。繊維シート5の起毛領域5Tには、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、失禁パッド、使い捨ておむつ等の吸収性物品に好ましく用いられる吸収体及びその吸収体を用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる吸収体として、高吸収性ポリマー及びパルプ繊維からなる複合体をティッシュペーパー等のコアラップシートで包んだものが用いられている。しかし、前記構成からなる吸収体では、ゲルブロッキングを防止し吸収性能を向上させることが難しかった。
【0003】
ゲルブロッキングの防止とは別に、特許文献1には、高吸収性ポリマーの粒子が移動することを防止するために、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーにより形成された吸収体と、ティッシュペーパー等の包装シートとの間に、毛羽立たせた保持シートを設けた使い捨ておむつが記載されている。また、特許文献2には、吸収速度を向上させるために、粒子状の吸水性樹脂と起毛させた基材繊維とを絡ませた吸収性複合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−75464号公報
【特許文献2】特開2008−237430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1にも特許文献2にも、高吸収性ポリマーが移動することを防止しつつ、ゲルブロッキングを防止することを考慮した、高吸収性ポリマーの平面配置について、何ら記載されていない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、高吸収性ポリマーが移動することを防止しつつ、ゲルブロッキングを防止し、吸収性能の向上した吸収体、及びその吸収体を用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高吸収性ポリマーを含む吸収材料及び該吸収材料を担持する繊維シートを備える吸収体であって、前記繊維シートは、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域を分散配置して形成されており、前記繊維シートの前記起毛領域には、該起毛領域以外の非起毛領域に比べて前記高吸収性ポリマーが多く担持されている吸収体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収体によれば、高吸収性ポリマーの移動が防止されつつ、ゲルブロッキングが防止されるので、吸収性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である生理用ナプキンの一部破断斜視図である。
【図2】図2は、図1のX1−X1線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す生理用ナプキンの備える繊維シートを示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す繊維シートの有する自由端部が太くなっている繊維を示す斜視図である。
【図5】図5は、図3に示す繊維シートの先端繊維径を測定する方法を示した模式図である。
【図6】図6は、図3に示す繊維シートの起毛している繊維の本数を測定する方法を示した模式図である。
【図7】図7は、図3に示す繊維シートを製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図8】図8は、図3に示す繊維シートを製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図9】図9は、図1に示す生理用ナプキンの備える吸収体を製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態である生理用ナプキンの一部破断斜視図である(図1相当図)。
【図11】図11は、図10のX2−X2線断面図である(図2相当図)。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態である生理用ナプキンの断面図である。
【図13】図13は、図12に示す生理用ナプキンの備える吸収体を製造するための好適な装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい第1実施形態に基づき、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0011】
第1実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキンであり、第1実施形態の生理用ナプキン1A(以下、「ナプキン1A」ともいう。)は、図1,図2に示すように、肌対向面(着用者の肌側に向けられる面)側に配された液透過性の表面シート2と、非肌対向面(着用者の肌側とは反対側に向けられる面)側に配された液難透過性の裏面シート3と、これらシート2,3間に配された縦長の吸収体4とを備えた実質的に縦長のものである。ナプキン1Aは、図1に示すように、ナプキン1Aの長手方向に延びる中心線CLに対して左右対称に形成されている。尚、各図に示す「Y方向」は、中心線CLに平行な方向であり、ナプキンの長手方向と同じ方向でもある。また各図に示す「X方向」は、中心線CLに直交する方向であり、ナプキンの幅方向と同じ方向でもある。
【0012】
ナプキン1Aについて、詳述すると、ナプキン1Aは、図1に示すように、表面シート2、裏面シート3、これらシート2,3間に配された吸収体4を備えた吸収性本体10を有している。ナプキン1Aの吸収性本体10は、図1に示すように、着用者の体液排出部(膣口等)に対向配置される領域である排泄部領域A、ナプキン1Aの着用時に排泄部領域Aより着用者の腹側に配される前方領域B、及びナプキン1Aの着用時に排泄部領域Aよりも着用者の背中側に配される後方領域Cに区分される。ここで、「排泄部領域A」とは、ナプキン1Aのように、所謂ウイング部を有していない場合には、生理用ナプキンが個装形態に折り畳まれた際に生じるY方向に直交する2つの折り線(不図示)で囲まれた領域を意味し、生理用ナプキンの製品長が長く3つの折線(不図示)が生じる場合には、Y方向の前端から数えて第1折り線と第2折り線とに囲まれた領域、又はY方向の前端から数えて第1折り線と第3折り線とに囲まれた領域を意味する。また、所謂ウイング部を有している場合には、「排泄部領域A」とは、ウイング部の位置する領域を意味する。ここで言うウイング部は、着用者のショーツの股下部で折り返して固定する部位を言う。ウイング部の非肌当接面側には通常ショーツに固定する為の周知のズレ止め材が塗布される。
【0013】
吸収性本体10を形成する表面シート2及び裏面シート3は、何れも、図1に示すように、吸収性本体10の長手方向(Y方向)に長い縦長の形状を有しており、吸収性本体10の排泄部領域A、前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおいて、吸収性本体10の輪郭と一致する輪郭を有している。このように、表面シート2及び裏面シート3は、ナプキン1Aにおいては、表面シート2と裏面シート3とが同形同大に形成されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれは、図1に示すように、吸収体4の肌対向面側の全面及び非肌対向面側の全面を覆っており、吸収体4の周縁から延出する延出部分を有しており、これら延出部分が熱エンボス加工によって接合されて、周縁部に周縁シール部6を形成している。
尚、ナプキン1Aにおいては、周縁シール部6が熱エンボス加工により形成されているが、超音波シールにより形成されていてもよく、ホットメルト等の接着剤等により形成されていてもよい。
【0014】
ナプキン1Aには配されていないが、表面シート2の肌対向面側であって、表面シート2の長手方向(Y方向)に沿う両側部全域に亘って、それぞれサイドシート(不図示)を配設固定してもよい。また、各サイドシート(不図示)の幅方向(X方向)内方側(中心線CL側)の端部近傍に、長手方向(Y方向)に伸長状態の弾性部材を配設固定して、着用時に、その弾性部材の収縮力により、前記端部から所定幅の部分が表面シート2から離間する立体ギャザー(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0015】
本発明の吸収性物品の有する吸収体4は、高吸収性ポリマー41を含む吸収材料40及び吸収材料40を担持する繊維シート5を備えている。具体的には、ナプキン1Aの吸収体4は、図1,図2に示すように、平面視して矩形状に形成されており、高吸収性ポリマー41及びパルプ層42からなる吸収材料40、繊維シート5、並びにコアラップシート43を備えている。吸収材料40のパルプ層42、繊維シート5及びコアラップシート43それぞれは、ナプキン1Aにおいては、吸収本4の輪郭と一致する輪郭を有している。ナプキン1Aの吸収体4は、図2に示すように、表面シート2側に繊維シート5が配され、繊維シート5の非肌対向面を被覆するようにパルプ層42が配され、パルプ層42の非肌対向面を被覆するようにコアラップシート43が配されて形成されている。
【0016】
吸収材料40を構成するパルプ層42としては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維等を積層して形成されたものが挙げられる。パルプ層42は、その目付が、30〜450g/m2であることが好ましい。また、吸収材料40は、薄型化可能である観点からパルプ層40を有さない構成であってもよい。
【0017】
コアラップシート43としては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、ティッシュペーパや液透過性の不織布等を特に制限なく用いることができる。尚、コアラップシート43に用いられる不織布としては、例えばスパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布が挙げられる。
【0018】
高吸収性ポリマー41としては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用できる。高吸収性ポリマー41の形状は、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり得るが、繊維シート5へ入り込み、そこへの担持のされ易さの観点から、塊状が好ましい。また、同様の観点から、高吸収性ポリマー41の大きさは、100〜1000μmであることが好ましく、200〜800μmであることが更に好ましい。
【0019】
本発明の吸収性物品の繊維シート5は、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域5Tを分散配置して形成されている。具体的には、ナプキン1Aの繊維シート5には、図1,図2に示すように、平面視して、複数個の起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Aの繊維シート5においては、図2に示すように、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域5Tが形成されている。起毛領域5Tは、繊維シート5においては、図2に示すように、平面視して、矩形状に形成されている。本願でいう「起毛領域」とは、後述する〔起毛している繊維の本数の測定法〕のよって測定した起毛している繊維の本数が5本/cm以上である領域を言う。
【0020】
各起毛領域5Tは、その面積が起毛によるシート破れを抑制し、高吸収性ポリマーの高い担持性発現の観点から、25〜1000mm2であることが好ましく、より好ましくは50〜800mm2であること、80〜600mm2であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Aの繊維シート5の起毛領域5Tは、その平面視形状が矩形状に形成されているが、上記好ましい面積の範囲を満たせば矩形状でなくてもよく、例えば、楕円形状でも、多角形状等であってもよい。
吸収体4の平面視における面積(ナプキン1Aにおいては繊維シート5の面積)S0に対する各起毛領域5Tの面積の総和S1(面積率)は、ナプキン1Aにおける吸収性(高吸収性ポリマーの担持量)と表面での液拡がり抑制(起毛領域5Tによる液通過性向上・非起毛領域5Nによる液拡散性)の観点から、30〜95%、より好ましくは40〜90%であること、50〜85%であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Aの繊維シート5は、起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されているが、上記好ましい面積率の範囲を満たせば千鳥配置でなくてもよく、例えば、X方向及びY方向それぞれに、起毛領域5Tが略等間隔を空けて規則的に分散して配されていてもよい。
【0021】
本発明の吸収性物品の繊維シート5の起毛領域5Tには、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。具体的には、ナプキン1Aの吸収体4は、起毛領域5Tの繊維密度が非起毛領域5Nの繊維密度に比べて繊維密度の低い繊維シート5を用い、ナプキン1Aの吸収体4は、図2に示すように、非肌対向面に複数個の起毛領域5Tが形成された繊維シート5とパルプ層42との間に、多数の高吸収性ポリマー41を配して形成されている。このように形成された吸収体4においては、繊維シート5の構成繊維同士の間に、高吸収性ポリマー41及びパルプからなる吸収材料40の一部が担持されている。また、吸収体4においては、繊維シート5の起毛領域5Tの繊維密度が起毛領域5T以外の非起毛領域5Nの繊維密度に比べて低いので、繊維シート5の起毛領域5Tにおける構成繊維同士の間に担持された高吸収性ポリマー41の量の方が、非起毛領域5Nにおける構成繊維同士の間に担持された高吸収性ポリマー41の量よりも多く担持されている。仮に、起毛領域5Tで液を保持した高吸収性ポリマー41がゲルブロッキングを起こしても、非起毛領域5Nで液の拡散性を発現し、吸収体4の吸収性能は低下しない。
【0022】
起毛領域5Tに担持された高吸収性ポリマー41の量は、液保持性と、非起毛領域5Nによる液拡散性の観点から、起毛領域5Tのみに高吸収性ポリマー41が配されているか、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量の3〜1000倍であることが好ましく、5〜100倍であることが更に好ましい。
尚、起毛領域5Tに担持された高吸収性ポリマー41の量は、10〜600g/m2であることが好ましく、30〜500g/m2であることが更に好ましい。
また、非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量は、0〜200g/m2であることが好ましく、0〜100g/m2であることが更に好ましい。
起毛領域5T及び非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量は、以下の方法で測定される。
【0023】
〔高吸収性ポリマーの担持量の測定法〕
22℃65%RH環境下にて、ナプキン1Aから表面シート2を取り除き、表面シート2を取り除いたサンプルから、該サンプルを平面視して起毛領域5Tに該当する領域のサンプル片を切り出し、寸法(面積m2)を測定する。
該サンプル片に存在する高吸収性ポリマー41の重量(単位:g)は、以下の方法により測定することが出来る。
該サンプル片を生理食塩水に30分間以上浸漬し、膨潤した高吸収性ポリマー41を該サンプル片の繊維シート5と吸収材料40から分別し、その後、高吸収性ポリマー41の遠心保持量を測定する(W1)。その値W1を高吸収性ポリマー41の単位重量当たりの遠心保持量(W2)で除して求める方法(この場合、高吸収性ポリマー41の重量は、W1/W2となる)。
求められた高吸収性ポリマー41の重量を前記寸法(面積m2)で除して、高吸収性ポリマー41の量を算出する。
非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量も、同様に、表面シート2を取り除いたサンプルから、該サンプルを平面視して非起毛領域5Nに該当する領域のサンプル片を切り出して算出する。
この操作を3回繰りかえてして平均値を求め、それぞれにおける高吸収性ポリマーの量とする。
【0024】
上述したように、繊維シート5は、その構成繊維が起毛した起毛領域5Tを分散配置して形成されている。起毛領域5Tの形成された繊維シート5としては、例えば、短繊維からなる不織布を元に該不織布を起毛処理したものや、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に該不織布を起毛処理したもの等が挙げられるが、強度が高く加工適正に優れ、しかも経済的であるとの観点から、ナプキン1Aにおいては、図2,図3に示すように、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に形成されている。起毛領域5Tは、不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定され、自由端部70bを有する起毛繊維70を備えていることが好ましく、高吸収性ポリマー41を絡めながら担持し易く、安定的に担持可能な観点からは、繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えていることが更に好ましい(図3,図4参照)。ここで、「長繊維」とは、30mm以上の繊維長を有するもので、繊維長150mm以上の所謂連続長繊維であると破断強度が高い不織布が得られる点で好ましい。
尚、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布としては、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布等が挙げられる。
また、繊維シート5は、液透過性の観点から高吸収性ポリマーを含まないことが好ましい。
【0025】
ナプキン1Aの備える吸収体4を構成する繊維シート5は、図3,図4に示すように、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に、スパンボンド不織布又は積層不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、スパンボンド不織布又積層不織布の有する繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えている。繊維シート5については、図3に示すように、構成繊維7の配向方向を見て、一般的に繊維の配向方向に沿うMD方向を長手方向(Y方向)、それと直交するCD方向を幅方向(X方向)と判断する。従って、以下の説明では、長手方向(Y方向)とMD方向とは同じ方向を意味し、幅方向(X方向)とCD方向は同じ方向を意味する。
【0026】
吸収体4を構成する繊維シート5は、安価であり、加工適正の観点から、その坪量が、5〜100g/m2であることが好ましく、5〜25g/m2であることが更に好ましい。
【0027】
吸収体4を構成する繊維シート5は、使用時の破れの防止、および加工適正の観点から、その破断強度の値が、5N/50mm以上であることが好ましく、8〜30N/50mmであることが更に好ましい。尚、元の不織布の破断強度の値は、同様の観点から、7N/50mm以上であることが好ましく、10〜50N/50mmであることが更に好ましい。このように、後述する起毛法により製造される吸収体4を構成する繊維シート5の破断強度の値は、他の起毛方法に比べて元の不織布の破断強度の値からの低下が少ない。吸収体4を構成する繊維シート5と、その元の不織布の破断強度は、X方向(CD方向)において前記の範囲を満たしていることが好ましい。吸収体4を構成する繊維シート5と、その元の不織布の破断強度の比(繊維シート5の破断強度/元の不織布の破断強度)は、0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。破断強度は以下の方法で測定される。
【0028】
〔破断強度の測定法〕
22℃65%RH環境下にて、吸収体4を構成する繊維シート5、又は元の不織布(例えば、スパンボンド不織布)から、X方向(幅方向)に200mm、Y方向(長手方向)に50mmの寸法の長方形形状の測定片を切り出す。この切り出された長方形形状の測定片を測定サンプルとする。この測定サンプルを、X方向が引張方向となるように、引張試験機(例えば、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機「RTA−100」)のチャックに取り付ける。チャック間距離は150mmとする。測定サンプルを300mm/分で引っ張り、サンプル破断までの最大荷重点をX方向の破断強度とする。また、Y方向に200mm、X方向に50mmの寸法の長方形形状の測定片を切り出し、これを測定サンプルとする。この測定サンプルを、そのY方向が引張方向となるように引張試験機のチャックに取り付ける。上述したX方向の破断強度の測定方法と同様の手順によってY方向の破断強度を求める。
【0029】
本実施形態にナプキン1Aに使用される吸収体4を構成する繊維シート5は、自由端部70bを有する起毛繊維70を備えた面が肌に接した際に肌触りが良く、肌と接しないように用いた場合は、クッション性による装着感が良いことによっても特長付けられる。
従来肌触りを表す特性値は多く知られており、特にカトーテック株式会社製のKESでの特性値が一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、発行 昭和55年7月10日)。特にふっくら感を示すにはその中でも圧縮特性と呼ばれる三つの特性値のLC(圧縮荷重―圧縮ひずみ曲線の直線性)、WC(圧縮仕事量)、RC(圧縮レジリエンス)が知られている。これらの圧縮特性は荷重を0.5〜50gf/cm2(高感度測定では0.5〜10gf/cm2)かけたときの変形量から特性値を算出している。しかし目付けの小さい(5〜25g/m2)不織布などの大変薄い布では大きな差が出ず、肌触りとの相関は大きくなかった。さらに人間が吸収性物品を触る際の荷重は1g/cm2前後と大変軽い荷重で肌触りを感じており、本来の肌触りを表すためには従来の荷重よりも小さい範囲での特性値が有用であると考え、荷重が0.3gf/cm2から1gf/cm2の間の荷重とそのときの変形量から新しい特性値を見出した。この特性値はスパンボンド不織布とエアスルー不織布との肌触りの違いを如実に表す数値として示され、スパンボンド不織布の肌触りを表す新しい特性値として不織布を表すことができる。
【0030】
〔微小荷重時の圧縮特性値〕
22℃65%RH環境下にて、本明細書では微小荷重時の圧縮特性値を、肌触り及びクッション性を表す新しい特性値として定義している。測定は22℃65%RH環境下にて行った。微小荷重時の圧縮特性値の算出の元となるデータの測定はカトーテック株式会社製のKES FB3−AUTO−A(商品名)を用いた。吸収体4を構成する繊維シート5を20cm×20cmに3枚カットして測定サンプルを準備する。次にそのうちの1枚の測定サンプルを試験台に一方の面(起毛繊維70を備えた面)を上に向けて設置する(尚、起毛してない場合、または両面が起毛している場合は両方測定して小さいほうを採用する)。次に、面積2cm2の円形平面をもつ鋼板間で圧縮する。圧縮速度20μm/sec、最大圧縮荷重10gf/cm2、回復過程も同一速度で測定する。このとき、鋼板間の変位量をx(mm)とし、荷重をy(gf/cm2)とし、荷重を検知した点の位置をx=0として圧縮方向に測定する。xの値は圧縮されるほど大きくなる。
【0031】
微小荷重時の圧縮特性値は測定したデータ(x,y)より、微小荷重時の鋼板間の変形量を抽出して算出する。具体的には回復過程ではない一回目の、荷重が0.30gf/cm2から1.00gf/cm2の間の荷重とそのときの変形量のデータを抽出し、xとyとの関係について近似直線を最小二乗法により求め、そのときの傾きを上記特性値とする(単位(gf/cm2)/mm)。1枚の測定サンプルで3箇所測定し、3枚のサンプル合計9箇所の測定を行う。9箇所それぞれの特性値を算出して、それらの平均値をその不織布の微小荷重時の圧縮特性値とする。
【0032】
微小荷重時の圧縮特性値は肌触りと強い相関があることを見出し、特に元の不織布が同じ場合に強い相関性がある。(微小荷重時の)圧縮特性値は低い数値ほど、小さな荷重で潰れやすいことを示しており、人間の肌触りを感じる感覚(特にふっくら感)の良好さを表すことができる。例えば、後述する加工処理を施していない、通常の目付けが5〜25g/m2の元の不織布(例えば、スパンボンド不織布)の上記圧縮特性値は20.0(gf/cm2)/mm〜30.0(gf/cm2)/mmであるのに対し、元の不織布(例えば、スパンボンド不織布)に後述する加工処理を施した吸収体4を構成する繊維シート5は、表面が潰れやすくなり18.0(gf/cm2)/mm以下になる。つまり肌触りの観点から、5〜25g/m2の元の不織布(スパンボンド不織布)に加工処理を施した吸収体4を構成する繊維シート5の上記圧縮特性値は、18.0(gf/cm2)/mm以下であり、15.0(gf/cm2)/mm以下であることが好ましく、肌触りのよいエアスルー不織布に近い肌触りになる観点から、10.0(gf/cm2)/mm以下になることがさらに好ましい。目付けが5〜25g/m2の元の不織布(スパンボンド不織布)に加工処理を施した吸収体4を構成する繊維シート5の上記圧縮特性値の下限は特に制限されないが、製造上の観点からは、1.00(gf/cm2)/mm程度である。
【0033】
吸収体4を構成する繊維シート5を構成する長繊維7(元の不織布の構成繊維)は、熱可塑性樹脂を主として含み、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としてはナイロン等が挙げられる。ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニル等が挙げられる。ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これら各種樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることもでき、これら各種樹脂の変成物を用いることもできる。また長繊維7には、繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤など少量の添加物を付与した繊維を用いることもできる。長繊維7の繊径は、後述する加工前において、3〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。
【0034】
吸収体4を構成する繊維シート5を形成する元の不織布は、紡糸性の観点からポリオレフィン系樹脂であるポリプロピレン樹脂から形成されていることが好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、滑らかであり、破断のしやすさの観点から、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマーのいずれか1種以上を5〜100重量%、より好ましくは25重量%〜80重量%含んだ樹脂であることが好ましい。また、これらのコポリマーやホモポリマーを混合してもよいし、他の樹脂を混合してもよいが、成形時に糸切れし難いことから、ポリプロピレンのホモポリマーとランダムコポリマーの混合が好ましい。これにより、繊維の結晶性を低下させて起毛繊維自体の柔らかさと不織布強度との両立ができ、起毛繊維がエンボスなどの融着部で切断されやすくなるため、エンボス融着点などの繊維熱融着部8での剥離がなくなり、起毛繊維が短くなり、毛玉ができにくく、外観も良好なものが得られる。また、融点の分布が広くなるためシール性が良くなる。さらにはプロピレン成分をベースとしてランダムコポリマーとしてエチレンやα−オレフィンと共重合したものが好ましく、エチレンプロピレン共重合体樹脂が特に好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、同様な観点から、エチレンプロピレン共重合体樹脂を5重量%以上含んだ樹脂であることが好ましく、25重量%以上含んだ樹脂であることが更に好ましい。エチレンプロピレン共重合体樹脂中にはエチレン濃度が1〜20重量%含まれたものが好ましく、特に、べた付きがなく、しかも、延伸時に伸びやすく、毛羽抜けが少なく、破断強度が維持される点で、エチレン濃度が3〜8%であることがより好ましい。また、ポリプロピレン樹脂としては、環境の観点から、再生ポリプロピレン樹脂を25重量%以上含んだ樹脂であることが好ましく、50重量%以上含んだ樹脂であることが更に好ましい。尚、吸収体4を構成する繊維シート5が、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成されている場合も同様である。
【0035】
エンボスによる繊維熱融着部8は、肌触りや、加工適正の観点から、各繊維熱融着部8の面積が、0.05〜10mm2であることが好ましく、0.1〜1mm2であることが更に好ましい。繊維熱融着部8の数は、10〜250個/cm2であることが好ましく、35〜65個/cm2であることが更に好ましい。X方向に隣り合う繊維熱融着部8同士の中心間の距離は、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜3mmであることが更に好ましく、Y方向に隣り合う繊維熱融着部8同士の中心間の距離は、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜3mmであることが更に好ましい。
【0036】
繊維熱融着部8は、エンボス(エンボス凸ロールとフラットロールなどによる)による熱圧着により間欠的に形成されたものや、超音波融着によるもの、間欠的に熱風を加えて部分融着させたものなどが挙げられる。この中で熱圧着によるものが繊維を破断させやすい点で好ましい。繊維熱融着部8の形状は、特に制限されず、例えば、円形、菱形、三角形等の任意の形状であってもよい。吸収体4を構成する繊維シート5の一面の表面積に占める繊維熱融着部8の合計面積の割合は、5〜30%であることが好ましく、10〜20%であることが、毛玉が出来にくい点で更に好ましい。
【0037】
ナプキン1Aの吸収体4を構成する繊維シート5は、例えば、長繊維7からなるスパンボンド不織布を元に形成されており、長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70が形成されており、繊維70は自由端部70bが太くなっている繊維71を含んでいる(図3参照)。先端が太くなっているものとして、その先端部における断面が扁平状(楕円や潰れた形状)であるものが好ましい。これにより、高吸収性ポリマー41を絡めながら担持し易く、安定的に担持可能な繊維シート5となる。図3に示すように、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70は、他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71及び自由端部70bが太くなっていない繊維72からなる。ここで、「自由端部」とは、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70における「他端部」のことを意味し、言い換えれば「先端部」を意味する。自由端部70bが太くなっているか否かは、以下の測定法により繊維径を測定し、先端繊維径の増加割合を算出し判断する。
【0038】
〔繊維径の測定法〕
先ず、22℃65%RH環境下にて、図5(a)に示すように、測定する吸収体4を構成する繊維シート5から、鋭利なかみそりで、X方向に2cm、Y方向に2cmの大きさの測定片を切り出して、図5(b)に示すように、複数個の繊維熱融着部8を通るX方向に延びる折り返し線Zにて山折りした測定サンプルを、図5(c)に示すように、カーボンテープを載せた走査型電子顕微鏡(SEM)用アルミ製試料台に載せて固定する。次に、およそ750倍に拡大したSEM画像から、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70をランダムに10本選出し、それら繊維の自由端部の先端付近の写真撮影を行なう。得られた写真(図4参照)から、他端部側の自由端部70bの先端から120μm離れた位置での繊維70の繊維径(自由端部70bを除く部位での繊維70の径71a)をそれぞれ測定する。自由端部70bを除く部位での繊維70の径71aの測定時における傾きを、そのまま自由端部70b側に平行移動し、自由端部70bの先端と先端から20μm離れた位置との間に挟まれた領域において最も太くなっている位置での繊維71の繊維径(自由端部70bでの繊維71の径71b)を測定する。尚、先端部が扁平状である場合は観察角度によっては先端が太く見えない場合もあるが、その場合でも得られた写真でそのまま測定する。
【0039】
自由端部70bが太くなっている繊維71とは、先のランダムに選出した10本の繊維70の中で、10本の繊維70の写真それぞれから測定した、自由端部70bでの繊維70の径71bと、自由端部70bを除く部位での繊維70の径71aとから、下記の式(1)で求められる先端繊維径の増加割合の値が15%以上との要件を満たす繊維であることを意味し、繊維熱融着部8同士の間(繊維熱融着部8と繊維との境界を除く、繊維形態部分)での繊維の切断が抑えられ、破断強度の減少が抑えられる点から、20%以上大きくなっていることが好ましく、25%以上大きくなっていることが更に好ましい。
先端繊維径の増加割合(%)=[(71b−71a)÷71a)×100]・・・(1)
【0040】
吸収体4を構成する繊維シート5においては、破断強度とクッション性向上の観点から、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70(自由端部70bが太くなっている繊維71及び自由端部70bが太くなっていない繊維72)における、自由端部70bが太くなっている繊維71の割合が、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましい。自由端部70bが太くなっている繊維71の割合は、上述した繊維径の測定法において、ランダムに10本選んだ繊維70をおよそ750倍に拡大したSEM画像から、先端繊維径の増加割合をそれぞれ算出し、自由端部70bが太くなっている繊維71の割合を算出する。
また、吸収体4を構成する繊維シート5は、繊維熱融着部8の周辺部において切断されている繊維を含んでいる。破断強度の高い不織布が得られる点で、吸収体4を構成する繊維シート5の繊維熱融着部8をランダムに選んで繊維熱融着部8の周辺部(繊維熱融着部8と長繊維7との境界から外側及び内側へ100μm以内の範囲、総計10mm2分)を電子顕微鏡で観察する。長繊維が切断された跡(繊維熱融着部8により繊維が押し潰された形状と、押し潰されておらず繊維形状そのままの部分とが非連続になっている部分)を数えた場合に、この長繊維が切断された跡の数が多いと、極表面のみ起毛していることになり、起毛量の割には破断強度の高い不織布が得られる点で3ヶ所以上切断された不織布であることが好ましく、さらには5ヶ所〜15ヶ所切断された不織布であることが好ましい。
【0041】
吸収体4を構成する繊維シート5は、図3に示すように、繊維熱融着部8,8同士の間でループ状に起立するループ状の繊維73を有している。起立している「ループ状の繊維73」とは、上述した繊維径の測定法において図5(c)のように観察した際、他端部側に自由端部70bを有さず、折り返し線Zから0.5mm以上離れて起立している繊維を意味する。本明細書において、ループ状の繊維73とは前記起立しているループ状の繊維をいう。吸収体4を構成する繊維シート5を構成する繊維は、自由端部70bが太くなっている繊維71及び自由端部70bが太くなっていない繊維72からなる、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70と、繊維70以外に、繊維熱融着部8,8同士の間でループ状に起立するループ状の繊維73とを有している。吸収体4を構成する繊維シート5は、高吸収性ポリマー41の入り込みやすさ、担持のされ易さ、起毛部の構造安定性の観点から、吸収体4を構成する繊維シート5を構成する繊維のうち、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70及びループ状の繊維73の総数における、ループ状の繊維73の割合が、50%より少ないことが好ましく、45%以下であることが更に好ましく、40%以下であることが特に好ましい。ループ状の繊維73の割合は、上述した繊維径の測定法において、およそ50倍に拡大したSEM画像から、ランダムに10本繊維を選び、ランダムに選んだ10本の繊維から、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70(自由端部70bが太くなっている繊維71、自由端部70bが太くなっていない繊維72)、及びループ状の繊維73を抽出し、繊維71、繊維72及び繊維73の総数における繊維73(ループ状の繊維)の割合を算出して求める。尚、測定値は、別の部位のSEM画像9点からも同様に割合を求め、それらの10点平均により算出する。尚、ランダムに選んだ10本の繊維の中にループ状の繊維73が1本含まれる場合には、ループ状の繊維73は、1本として数えられる。
【0042】
吸収体4を構成する繊維シート5においては、自由度の比較的高くなった繊維を含むことによって繊維間の隙間が埋められて、表面の粗さが小さく滑らかになる。また、高吸収性ポリマーの担持構造(空間)の観点から、繊維径の分布(分散度)は、広ければ広いほど構造が潰れたり解かれたりしにくく好ましいが、高吸収性ポリマーの膨潤構造(空間)の観点からは、0.33以上であれば十分に満足すべき効果が得られ、0.35以上であれば更に満足すべき効果が得られる。繊維径の分布(分散度)は、特に上限はないが、100以下が好ましい。より好ましくは、繊維径の分布(分散度)は、0.33〜0.9であることが好ましい。ここでいう繊維径の分布(分散度)とは、吸収体4を構成する繊維シート5を構成するすべての繊維の繊維径の分布(分散度)を意味し、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70、ループ状の繊維73、及び両端部が繊維熱融着部8により固定されており、ループ状に起立していない繊維(後述する加工処理による影響を受けない繊維)全体の分布である。繊維径の分布(分散度)は以下の方法で測定される。
【0043】
繊維径の測定法〔繊維径の分布(分散度)の測定法〕
先ず、22℃65%RH環境下にて、測定する吸収体4を構成する繊維シート5から、鋭利なかみそりで、X方向に2cm、Y方向に2cmの大きさの測定片を切り出して、カーボンテープを載せた走査型電子顕微鏡(SEM)用アルミ製試料台に折り曲げずにそのまま載せて固定する。次に、およそ750倍に拡大したSEM画像から、ランダムに繊維を10本抽出し、自由端部70bを除く部位においてそれぞれの繊維径を測定する(尚、測定する吸収体4を構成する繊維シート5が、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成されている場合には、メルトブローンの層の繊維は選ばず、スパンボンドの層の繊維のみを選択する。)。1つの前記アルミ製試料台で10本の繊維径を上述のように測定し、測定された10本の繊維径d1〜d10から平均値daveを求め、得られた10本の繊維径d1〜d10と平均値daveとから、下記の式(2)で、ランダムに選んだ10本の繊維の繊維径の分布を求める。測定単位はμmとし、0.1μmの分解能で計測する。10本の繊維の繊維径の分布を、1つの吸収体4を構成する繊維シート5につき、6箇所前記アルミ製試料台を作成し、各箇所で得られた10本の繊維の繊維径の分布の平均値(下記の式(3)参照)を、吸収体4を構成する繊維シート5における繊維径の分布とする。尚、10本の繊維の繊維径の分布の算出には、マイクロソフト社の表計算ソフトexcel2003におけるVARPA関数を使用する。
10本の繊維の繊維径の分布=[(d1−dave)2+(d2−dave)2+・・・(d10−dave)2)]/10・・・(2)
吸収体4を構成する繊維シート5における繊維径の分布(分散度)=(上記式(2)で得られた10本の繊維の繊維径の分布の総和)/6・・・(3)
【0044】
吸収体4を構成する繊維シート5は、クッション性の向上と高吸収性ポリマー担持性の観点から、起毛している繊維が、8本/cm以上であることが好ましく、12本/cm以上であることが更に好ましい。起毛している繊維は、以下の測定法により測定する。
【0045】
〔起毛している繊維の本数の測定法〕
図6は、22℃65%RH環境下にて、吸収体4を構成する繊維シート5を構成する繊維の中で起毛している繊維の本数を測定する方法を示した模式図である。先ず、測定する不織布から、鋭利なかみそりで、20cm×20cmの測定片を切り出し、図6(a)に示すように、測定片の起毛した面において山折りして測定サンプル104を形成する。次に、この測定サンプル104を、A4サイズの黒い台紙の上に載せ、図6(b)に示すように、さらにその上に、縦1cm×横1cmの穴107をあけたA4サイズの黒い台紙を載せる。このとき、図6(b)に示すように、測定サンプル104の折り目105が、上側の黒い台紙の穴107から見えるように配置する。両台紙には、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いた。その後、上側の台紙の穴107の両側それぞれから、折り目105に沿って外方に5cmはなれた位置に、50gのおもりをそれぞれ載せ、測定サンプル104が完全に折りたたまれた状態を作る。次に、図6(c)に示すように、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX−900)を用いて、30倍の倍率で、台紙の穴107内を観察し、測定サンプル104の折り目105から0.2mm上方に平行移動した位置に形成される仮想線108よりも上方に存在している1cmあたりの繊維の本数を計測する。9箇所計測し、平均値(少数第二位を四捨五入)を起毛している繊維の本数とする。
【0046】
また、起毛している繊維の数を数える際には、例えば、図6(c)に示す繊維106aのように、折り目105から0.2mm上方にある仮想線108を2回横切る繊維がある場合、その繊維は2本と数える。具体的には、図6(c)に示す例では、仮想線108を1回横切る繊維が4本、仮想線108を2回横切る繊維106aが1本存在するが、2回横切る繊維106aは2本と数え、起毛した繊維の本数は6本となる。
【0047】
吸収体4を構成する繊維シート5は、高吸収性ポリマーを担持し易い観点から、起毛している繊維(仮想線108を横切る繊維)の平均繊維径が、同じ面の起毛していない部位の表面繊維(仮想線108を横切らず、仮想線108に至っていない繊維)の平均繊維径より小さいことが好ましい。また、このように、起毛している部位の繊維の平均繊維径が、同じ面の起毛していない部位の表面繊維の平均繊維径より小さければ、構成繊維の起毛している部位と起毛していない部位を有する凹凸形状の繊維シート5を他の材料と重ね合せた際に、起毛している部位の構成繊維が倒れ易く、過度に繊維シート5の凹凸形状が反映され過ぎることを抑制できる。平均繊維径は、起毛している繊維、及び起毛していない繊維それぞれ12箇所の繊維径を顕微鏡(光学顕微鏡、またはSEM等)で計測した繊維径のことをいう。起毛している繊維の繊維径は、起毛していない繊維の97%〜40%が好ましく、90%〜40%であることが、より好ましい。
【0048】
また、吸収体4を構成する繊維シート5は、クッション性の向上の観点、毛玉になりにくいことによる高吸収性ポリマーの入り込み易さの観点から、起毛している繊維の高さが、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることが更に好ましい。上記観点からは、低ければ低いほど好ましいが、0.2mm以上であれば十分に満足すべき効果が得られる。また、クッション性向上、及び高吸収性ポリマーの担持性の観点から、起毛している繊維の高さが2mm以下であり且つ起毛している繊維が8本/cm以上でることが好ましく、起毛している繊維の高さが1mm以下且つ起毛している繊維が15本/cm以上であることが更に好ましい。ここで、繊維の高さとは、繊維の長さと異なり、繊維を測定時に引っ張ることなく、自然状態での繊維の高さのことを意味する。起毛している繊維の長さの値が大きい場合や繊維の剛性が高いと、起毛している繊維の高さが高くなる傾向にある。起毛している繊維の高さは、以下の測定法により測定する。
【0049】
〔起毛している繊維の高さの測定法〕
起毛している繊維の高さは、起毛している繊維の本数を測定する際に、同時に測定する。具体的には、図6(c)に示すように、台紙の穴107内を観察し、折り目105から平行に線を0.05mmごとに起毛繊維が交わらなくなるところまで引く。次に、上述のように測定した起毛している繊維の本数(0.2mm上方にある仮想線108より判断)に比べて、平行な線に交わる繊維が半分になる平行線を選び、そこから折り目までの距離を起毛高さとする。以上の操作を測定する不織布に対して3枚分計測し、1枚につき3箇所、3枚で計9箇所の平均をとり、起毛している繊維の高さとする。
【0050】
起毛している繊維の高さ、及び起毛している繊維に加えて、吸収体4を構成する繊維シート5のバルクソフトネスが8.0cN以下であることが、装着感と追従性の観点から好ましく、0.5〜3.0cNであること更に好ましい。バルクソフトネスは、以下の測定法により測定する。
【0051】
〔バルクソフトネスの測定方法〕
吸収体4を構成する繊維シート5のバルクソフトネスは、吸収体4を構成する繊維シート5をMD方向に150mm、CD方向に30mm切り出し、直径45mmのリング状に、ステープラーを用いて端部を上下2箇所で止める。このときステープラーの芯はMD方向に長くなるようにする。引張試験機(例えば、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機「RTA−100」)を用いて、試料台の上に前記リングを筒状に立て、上方から台とほぼ平行な平板にて圧縮速度10mm/分の速度で圧縮していった際の最大荷重を測定し、CD方向のバルクスフトネスとする。次に、MD方向とCD方向を変えてリングを作製し、同様にMD方向のバルクソフトネスを測定する。MD方向及びCD方向それぞれ2本ずつリングを作製して測定し、これらのCD方向とMD方向の平均値を、吸収体4を構成する繊維シート5のバルクスフトネスとする。
【0052】
吸収体4を構成する繊維シート5を形成する元の不織布に、柔軟剤を練りこんだり、塗布したりすれば、高吸収性ポリマーの起毛構造への入り込み性の効果がより効果的である。柔軟剤としては、例えばワックスエマルジョン、反応型柔軟剤、シリコーン系、界面活性剤などを使用することができる。特にアミノ基含有シリコーン、オキシアルキレン基含有シリコーン、界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤としては、カルボン酸塩系のアニオン界面活性剤、スルホン酸塩系のアニオン界面活性剤、硫酸エステル塩系のアニオン界面活性剤、リン酸エステル塩系のアニオン界面活性剤(特にアルキルリン酸エステル塩)等のアニオン界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット蜜ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の、非イオン系界面活性剤:第4級アンモニウム塩、アミン塩又はアミン等のカチオン界面活性剤;カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体、又は複素環式第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体等の、両性イオン界面活性剤などを使用することができる。また、必要に応じて、公知の薬剤を副次的添加剤(少量成分)として柔軟剤に添加することができる。
柔軟剤を含むことにより、毛羽抜けが少なく、表面の肌摩擦も低く、破断強度も高くなる。また、起毛領域5Tは、親水性を発現する界面活性剤が用いられる事が通液性の観点から好ましい。
【0053】
また、吸収体4を構成する繊維シート5が、後述するスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成されており、該積層不織布のスパンボンドの層が複数層からなる、例えば、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布等を用いる場合には、一層のスパンボンドの層のみに上記柔軟剤を練りこむことが好ましく、全てのスパンボンドの層に練りこむ等してもよい。一層のスパンボンドの層に柔軟剤を練りこんだ場合には、その層側に後述の加工処理を施し、自由端部が太くなっている繊維を備えるようにすると、破断強度も高い点で好ましい。このように、吸収体4を構成する繊維シート5は、破断強度の調整がし易い点からは、スパンボンド不織布単体を元に形成するよりも、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成する方が好ましい。
【0054】
次に、ナプキン1Aに用いる吸収体4を構成する繊維シート5の好適な製造方法について、図7,図8を参照しながら説明する。吸収体4を構成する繊維シート52の製造方法に好ましく用いられる製造装置は、プレ加工部200と、プレ加工部200の下流側に配される起毛加工部300とに大別される。
【0055】
プレ加工部200は、図7に示すように、互いに噛み合う凸部211と凹部221とが周面に設けられた一対のロール210,220からなるスチールマッチングエンボスローラー230を備えている。図7に示すように、スチールマッチングエンボスローラー230は、ロール210の周面に設けられた複数個の凸部211とロール220の周面に設けられた複数個の凹部221とが、互いに噛み合うように形成されており、複数個の凸部211は、ロール210の回転軸方向及び周方向にそれぞれ均一に且つ規則的に配されている。一対のロール210,220は、何れか一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。また、プレ加工部200は、たとえば図7に示すように、スチールマッチングエンボスローラー230の上流側及び下流側に、原料シート50を搬送する搬送ロール250,260を備えている。
【0056】
ロール210の各凸部211は、ロール210の周面から凸部211の頂点までの高さが、1〜10mmであることが好ましく、2〜7mmであることが更に好ましい。回転軸方向に隣り合う凸部211同士の距離(ピッチ)は、0.01〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることが更に好ましく、周方向に隣り合う凸部211同士の距離(ピッチ)は、0.01〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることが更に好ましい。ロール210の各凸部211の頂部表面の形状に特に制限はなく、例えば、円形、多角形、楕円形等が用いられ、各凸部211の頂部表面の面積は、0.01〜500mm2であることが好ましく、0.1〜10mm2であることが更に好ましい。ロール220の各凹部221は、ロール210の各凸部211に対応する位置に配されている。ロール210の各凸部211とロール220の各凹部221との噛み合いの深さ(各凸部211と各凹部221とが重なっている部分の長さ)は、0.1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることが更に好ましい。
【0057】
起毛加工部300は、図8に示すように、周面に凸部311が設けられた凸ロール310を備え、凸ロール310の上流側及び下流側に、原料シート50’を搬送する搬送ロール320,330を備えている。凸ロール310の凸部311は、製造される繊維シート5に配されている各起毛領域5Tに対応する位置に、複数個が集まって、凸部311領域を形成している。各凸部311領域は、凸ロール310の周面に設けられている。凸ロール310は、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。
【0058】
凸ロール310の各凸部311は、凸ロール310の周面から凸部311の頂点までの高さが、0.001〜3mmであることが好ましく、0.001〜0.1mmであることが更に好ましい。各凸部311領域においては、回転軸方向に隣り合う凸部311同士の距離(ピッチ)は、0.1〜50mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることが更に好ましく、周方向に隣り合う凸部311同士の距離(ピッチ)は、0.1〜50mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることが更に好ましい。凸ロール310の各凸部311の頂部表面の形状に特に制限はなく、例えば、円形、多角形、楕円形等が用いられ、各凸部311の頂部表面の面積は、0.001〜20mm2であることが好ましく、0.01〜1mm2であることが更に好ましい。
【0059】
このような構成のプレ加工部200及び起毛加工部300を備える製造装置においては、先ず、吸収体4を構成する繊維シート5の原料である、例えば帯状のスパンボンド不織布(原料シート50)を、ロール(不図示)から巻き出して、搬送ロール250,260により、原料シート50をスチールマッチングエンボスローラー230の一対のロール210,220間に搬送する。プレ加工部200においては、図7に示すように、原料シート50を一対のロール210,220間で挟圧し、原料シート50にダメージを与える。ダメージを与える際、スパンボンド不織布の構成繊維間で熱融着を起こさない観点から、スチールマッチングエンボスローラー230の一対のロール210,220は、積極的に加熱をしないか、または原料シート50を構成する繊維の成分のうち最も低い融点を示す成分の融点以下の温度で、特に、該融点よりさらに70℃以上低い温度でスチールマッチエンボス加工することが好ましい。
【0060】
次に、図8に示すように、ダメージが与えられた原料シート50’を、搬送ロール320,330により、周面に複数の凸部311領域が設けられた凸ロール310に搬送する。起毛加工部300においては、ダメージを与えられた原料シート50’の表面の一部分を、凸ロール310により加工し、複数個の起毛領域5Tを有する吸収体4を構成する繊維シート5の連続体を形成する。このように形成された繊維シート5の起毛領域5Tにおいては、スパンボンド不織布を構成する長繊維7の一部を破断し、一端部70aのみがスパンボンド不織布の繊維熱融着部8により固定されている繊維70を有している(図3参照)。長繊維7の一部を破断し、図3に示す繊維70を有する繊維シート5を効率よく形成する観点から、凸ロール310の回転方向を、原料シート50’の搬送方向に対して逆方向に回転させることが好ましく、原料シート50’の搬送速度に対し、0.3〜10倍の速度で凸ロール310を回転させることが好ましい。また周方向(搬送方向に対して順方向)に回転させる場合には1.5〜20倍の速度で凸ロール310を回転させることが好ましい。ここで、凸ロール310の速度は、凸ロール310の周面での周速度のことを意味する。
【0061】
長繊維7の一部を更に効率よく破断し、図3に示す繊維70を有する繊維シート5を更に効率よく形成する観点から、図8に示すように、凸ロール310より搬送ロール330の位置を高く設定し、ダメージを与えられた原料シート50’が凸ロール310の接触面に、10〜180°の抱き角αで接触していることが好ましく、30〜120°の抱き角αで接触していることが、不織布のネックインによる幅減少が抑えられるため、更に好ましい。
【0062】
尚、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70を、吸収体4を構成する繊維シート5の両面に形成する場合には、凸ロール310により加工した原料シート50’の表面と異なる表面(裏面)を、更に、別の凸ロール310により加工することにより得られる。
【0063】
本発明者は、スチールマッチングエンボスローラー230によりスパンボンド不織布(原料シート50)を延伸し、スパンボンド不織布(原料シート50)の繊維熱融着部8に弱化点を形成し、その後、凸ロール310により表面を加工するため、繊維熱融着部8の極表面の弱化点から長繊維7が破断され、繊維熱融着部8から切断された繊維が形成されると推測している。本発明者は、この繊維熱融着部8から切断された繊維が、自由端部70bが太くなっている繊維71であると推測している。また、本発明者は、凸ロール310により、繊維熱融着部8の弱化点から長繊維7が剥離され、この繊維熱融着部8から剥離された繊維が、繊維熱融着部8,8同士の間でループ状に起立するループ状の繊維73になると推測している。また、本発明者は、凸ロール310により表面を加工する際に、繊維熱融着部8,8同士の間で長繊維7が破断され、自由端部70bの太くなっていない繊維72が形成されると推測している。上述した吸収体4を構成する繊維シート5の好適な製造方法により製造される不織布は、従来の起毛方法により製造される不織布に比べ、ループ状の繊維73や、太くなっていない繊維72の割合が少ないのが特徴である。従来の起毛方法により製造される不織布のように、太くなっていない繊維72が多く存在すると、エンボス部とエンボス部との間などの繊維熱融着部8間で破断されて、繊維熱融着部8間でいわゆる切れ目(裂け目、穴)ができることになる。これにより起毛していないベースの繊維を傷つけずに起毛でき、破断強度の高いものが得られる。逆に、弱化点が形成されていない状態で起毛しようとすると、より強い力で繊維表面を擦らないと繊維が起毛され難く、起毛していない極表面以外のベースの繊維まで起毛時に傷つけてしまうことになるため、不織布全体が破断しやすく強度が保持されにくい。一方、上述した吸収体4を構成する繊維シート5の好適な製造方法により製造される不織布は、太くなっていない繊維72の割合が少ないので、破断強度を保持することができる。これにより、突き抜け強度の高い不織布が得られる。また弱化点が形成されていない状態で起毛すると、繊維熱融着部からの繊維剥離が生じ、起毛繊維の本数が少なくなるとともに、起毛高さが高くなる傾向にある。このため、毛羽になりやすい等の問題が生じやすくなる。
【0064】
また、スチールマッチングエンボスローラー230によって、繊維熱融着部8と繊維熱融着部8の間の繊維が延伸されるとともに、繊維熱融着部8の周辺部において弱化点が形成され易い。弱化点の調整は、スチールマッチングエンボスローラー230の上下一対のロール210,220のかみ合い量によって調整される。弱化点は、延伸方向に対して繊維熱融着部8と繊維熱融着部8の間の繊維長さが短いものに形成されやすい。この弱化点が形成されることで、脆弱部ができ、起毛加工部300による起毛時において繊維が弱化点より切断されやすくなるため、起毛繊維の短いものが得られ、外観上もケバが目立たず、毛玉になりにくく、破断強度も高い起毛不織布が得られる点で好ましい。同時に、繊維熱融着部8と繊維熱融着部8の間の繊維を延伸することで繊維が細くなり、また、繊維熱融着部8も柔らかくなって肌触りの良い不織布が得られる。特に、スチールマッチングエンボスローラー230によって、繊維が細く延伸され、長く伸びることにより、繊維間の距離が増し通気性が向上する。これに加え、起毛加工部300によって起毛処理することで起毛した表面の繊維のかさ密度が低下するため、同じ目付けの不織布でも起毛した不織布の方が、通気度が向上する。上述したように、繊維の延伸と起毛処理とを組み合わせることにより、通気度が元の不織布に比べ1.2〜2.0倍、より好ましくは、1.3〜1.8倍に向上する。通気度は、カトーテック製AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER KES−F8−AP1により通気抵抗を測定し、その逆数として求められる。得られた不織布の通気度は24m/(kPa・s)以上となっていることが好ましい。
通気度の良好な原料シート50のスパンボンド不織布としては、メルトブローン層を含まない、スパンボンド層のみが積層されたもの(例えば、スパンボンド−スパンボンド−スパンボンド)から構成されている不織布が好ましい。
【0065】
上述したように、プレ加工部200と起毛加工部300とを有する装置を用いて処理を行い製造された繊維シート5の帯状部材から、ナプキン1Aの備える吸収体4の好ましい製造方法を、図9を参照しながら説明する。
図9に示すように、先ず、上述のようにして製造した繊維シート5の連続体を搬送ロール410,420を用いて搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面に、吸水性ポリマー41の粒子をポリマー添加装置430を用いて添加する。ここで、搬送ロール410,420により搬送される繊維シート5の連続体は、図9に示すように、傾斜して搬送されるため、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに添加された高吸収性ポリマー41は移動し易く、繊維シート5の起毛領域5Tには高吸収性ポリマー41が担持され易い。このような観点から、搬送ロール410,420の搬送による繊維シート5の連続体の傾斜角度βは、10〜60°であることが好ましい。また、繊維シート5の連続体の起毛面に吸水性ポリマーを添加する際には、非起毛領域5Nの繊維密度に比べて繊維密度の低い起毛領域5Tにおける構成繊維どうしの間に高吸収性ポリマー41をより多く担持させる観点から、エアーで吹き付けることが好ましい。
【0066】
次に、図9に示すように、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持された起毛領域5Tを有する繊維シート5の連続体を搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面上に、パルプ積繊装置440を用いてパルプを連続的に積繊させ、パルプ層42を形成する。このように、高吸収性ポリマー41の担持された起毛領域5T上にパルプを積繊させるので、繊維シート5の連続体には、特に起毛領域5Tに、高吸収性ポリマー41及びパルプからなる吸収材料が担持されるようになる。
【0067】
次に、図9に示すように、高吸収性ポリマー41の担持された起毛面上のパルプ層42上に、更に、別途コアラップシート43の原反から搬送されてきたコアラップシート43の連続体を配して、パルプ層42の上面を覆い、一対のロール450,460間に供給して、吸収体4の連続体を製造する。
【0068】
ナプキン1Aは、上述したプロセスによって製造された吸収体4の連続体を用いて、後の工程では、従来の、いわゆる縦流れ方式の生理用ナプキンの製造方法と同様にして製造される。具体的には、吸収体4の連続体を、公知の技術を用いて、所定の大きさにカットして、複数個の吸収体4を連続的に製造する。次に、表面シート2の連続体、裏面シート3の連続体、及び両シートの連続体間に、繊維シート5が表面シート2側に配されるように、吸収体4を間欠的に配して、吸収性本体10の連続体を製造し、その連続体を各吸収体4毎にエンボスしながら切断加工して、ナプキン1Aを連続的に製造する。ナプキン1Aの製造方法に関し、特に説明しない点は、従来の、縦流れ方式の生理用ナプキンの製造方法と同様にして製造することができる。
【0069】
本実施形態のナプキン1Aの形成材料について説明する。
吸収性本体10を構成する表面シート2及び裏面シート3としては、それぞれ、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布等を用いることができ、裏面シート3としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。
【0070】
表面シート2、裏面シート3及び吸収体4の固定には、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等の融着手段が用いられる。
【0071】
上述した本発明の第1実施形態の生理用ナプキン1Aを使用した際の作用効果について説明する。
ナプキン1Aは、図1,図2に示すように、起毛した複数の起毛領域5Tを有する繊維シート5を具備する吸収体4を備えており、繊維シート5に分散配置された起毛領域5Tには、高吸収性ポリマー41が非起毛領域5Nに比べて多く担持されている。その為、ナプキン1Aの備える吸収体4は、高吸収性ポリマー41の移動が起毛繊維により防止されつつ、ゲルブロッキングが防止されるので、吸収性能が向上する。また、ナプキン1Aにおいては、図2に示すように、吸収体4の具備する繊維シート5の起毛領域5Tは、非起毛領域5Nに比べて繊維密度が低く形成されているので、起毛領域5Tにおける構成繊維どうしの間に高吸収性ポリマー41が入り込み易く、非起毛領域5Nに比べて多く担持され易い。従って、ナプキン1Aの起毛領域5Tにおいては、高吸収性ポリマー41の移動が更に防止され、ゲルブロッキングが更に防止されるので、吸収性能が更に向上する。
【0072】
また、ナプキン1Aにおいては、図2,図3に示すように、吸収体4の具備する繊維シート5が、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に形成されており、起毛領域5Tは、長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えている。その為、起毛領域5Tにおいては、繊維71の太くなっている自由端部70bで、高吸収性ポリマー41が担持され易く、高吸収性ポリマー41の移動が更に防止され、ゲルブロッキングが更に防止されるので、吸収性能が更に向上する。
【0073】
次に、本発明の吸収性物品を、その好ましい第2実施形態に基づき、図10〜図11を参照しながら説明する。
【0074】
第2実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキンであり、第2実施形態の生理用ナプキン1B(以下、「ナプキン1B」ともいう。)については、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、ナプキン1Aと同様であり、ナプキン1Aの説明が適宜適用される。
【0075】
ナプキン1Bの備える吸収体4は、図10,図11に示すように、1枚の繊維シート5と、繊維シート5は別に、構成繊維が起毛した起毛領域を有する1枚の起毛シート9とを備えている。ナプキン1Bの備える吸収体4は、図10,図11に示すように、ナプキン1Aの備える吸収体4に比べて、パルプ層42及びコアラップシート43を備えておらず、起毛シート9を備えており、高吸収性ポリマー41を担持する繊維シート5の非肌対向面を被覆するように起毛シート9が配されて形成されている。
【0076】
ナプキン1Bの繊維シート5は、ナプキン1Aの繊維シート5と同様に、図10,図11に示すように、平面視して、複数個の起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Bの繊維シート5においては、ナプキン1Aの繊維シート5と同様に、図11に示すように、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域5Tが形成されており、繊維シート5の起毛領域5Tには、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。
【0077】
ナプキン1Bの起毛シート9は、ナプキン1Bにおいては、吸収本4の輪郭と一致する輪郭を有しており、繊維シート5と同形同大に形成されている。起毛シート9は、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域9Tを分散配置して形成されている。具体的には、ナプキン1Bの起毛シート9は、図10,図11に示すように、平面視して、複数個の起毛領域9Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Bの起毛シート9においては、図11に示すように、肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域9Tが形成されている。起毛領域9Tは、ナプキン1Bの起毛シート9においては、図10に示すように、平面視して、矩形状に形成されている。
【0078】
起毛シート9の各起毛領域9Tは、その面積が液通過性による表面での液拡がり・液残り抑制と、高吸収性ポリマーへの導液性、ゲルブロッキング抑制の観点から、25〜1000mm2であることが好ましく、50〜800mm2であることがより好ましく、80〜600mm2であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Bの起毛シート9の起毛領域9Tは、その平面視形状が矩形状に形成されているが、上記好ましい面積の範囲を満たせば矩形状でなくてもよく、例えば、楕円形状でも、多角形状等であってもよい。
【0079】
ナプキン1Bの起毛シート9は、繊維シート5と同様に、例えば、短繊維からなる不織布を元に該不織布を起毛処理したものや、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に該不織布を起毛処理したもの等が挙げられるが、強度が高く加工適正に優れ、しかも経済的であるとの観点から、ナプキン1Bにおいては、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に形成されている。起毛シート9の起毛領域9Tは、繊維シート5の起毛領域5Tと同様に、不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定され、自由端部70bを有する起毛繊維70を備えていることが好ましく、繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えていることが更に好ましい(図3,図4参照)。
【0080】
ナプキン1Bの備える吸収体4を構成する起毛シート9は、繊維シート5と同様に、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に、スパンボンド不織布又は積層不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、スパンボンド不織布又積層不織布の有する繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えている。
ナプキン1Bの起毛シート9は、繊維シート5と同様にして製造することができる。
【0081】
ナプキン1Bの備える吸収体4は、図10,図11に示すように、非肌対向面に高吸収性ポリマー41を多く担持する起毛領域5Tが千鳥状に配置された繊維シート5と、肌対向面に起毛領域9Tが千鳥状に配置された起毛シート9とを重ね合わせて形成されている。図10,図11に示すように、繊維シート5の起毛領域5Tは、起毛シート9の非起毛領域9Nの位置に対応するように、規則的に分散して千鳥状に配置されており、起毛シート9の起毛領域9Tは、繊維シート5の非起毛領域5Nの位置に対応するように、規則的に分散して千鳥状に配置されている。
【0082】
ナプキン1Bの備える吸収体4の好ましい製造方法について述べると、先ず、ナプキン1Aの備える吸収体4と同様に、図7に示すプレ加工部200と図8に示す起毛加工部300とを有する装置を用いて、繊維シート5の帯状部材を製造し、更に、繊維シート5の帯状部材とは別に、同様にして、起毛シート9の帯状部材を製造する。次に、搬送ロール410,420を用いて搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面に、吸水性ポリマーの粒子をポリマー添加装置430を用いて添加する(図9参照)。
次に、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持された起毛領域5Tを有する繊維シート5の連続体を搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面上に、起毛シート9の帯状部材を配することにより、吸収体4の連続体を製造することができる。
尚、ナプキン1Bは、上述したプロセスによって製造された吸収体4の連続体を用いて、ナプキン1Aと同様にして製造される。
【0083】
第2実施形態のナプキン1Bの形成材料について説明する。第2実施形態のナプキン1Bについては、起毛シート9以外、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの形成材料と同様である。
【0084】
上述した本発明の第2実施形態のナプキン1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態のナプキン1Bの効果については、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの効果と同様であり、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0085】
ナプキン1Bは、図10,図11に示すように、高吸収性ポリマー41の担持された繊維シート5の非肌対向面を被覆するように起毛シート9を配して形成された吸収体4を備えている。その為、起毛領域が粗である事による通液性と高吸収性ポリマーへの導液性、及び非起毛部領域による体液の拡散性の向上(ゲルブロッキング抑制)によるモレを抑制され易い構造が形成される。
【0086】
次に、本発明の吸収性物品を、その好ましい第3実施形態に基づき、図12〜図13を参照しながら説明する。
【0087】
第3実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキンであり、第3実施形態の生理用ナプキン1C(以下、「ナプキン1C」ともいう。)については、第1実施形態の使い捨てナプキン1A及び第2実施形態の使い捨てナプキン1Bと異なる点について説明する。特に説明しない点は、ナプキン1A及びナプキン1Bと同様であり、ナプキン1A及びナプキン1Bの説明が適宜適用される。
【0088】
ナプキン1Cの備える吸収体4は、図12に示すように、1枚の繊維シート5と2枚の起毛シート9D,9Uとを備えている。ナプキン1Cの備える吸収体4は、図12に示すように、裏面シート3側に繊維シート5を配し、繊維シート5の表面シート2側の面上に2枚の起毛シート9D,9Uを配して、繊維シート5及び起毛シート9D,9Uを重ね合わせて形成されている。ナプキン1Cにおいては、図12に示すように、1枚の繊維シート5及び2枚の起毛シート9D,9Uは、1枚のシートから形成されている。即ち、ナプキン1Cの備える吸収体4は、図12に示すように、1枚の前記シートにおける繊維シート5となる領域の表面シート2側の面(肌対向面)上に、パルプ層42を配し、パルプ層42を包むように、1枚の前記シートにおける起毛シート9Dとなる領域を折り返して配し、折り返された起毛シート9Dの肌対向面上に、1枚の前記シートにおける起毛シート9Uとなる領域を折り返して配して形成されている。
【0089】
ナプキン1Cの繊維シート5には、ナプキン1A,1Bの繊維シート5と同様に、図12に示すように、平面視して、複数個の起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Cの繊維シート5においては、図12に示すように、肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域5Tが形成されており、繊維シート5の起毛領域5Tには、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。
【0090】
ナプキン1Cの起毛シート9D,9Uは、ナプキン1Cの繊維シート5と同様に、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域9Tを分散配置して形成されている。ナプキン1Cの下層側の起毛シート9Dにおいては、図12に示すように、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域9DTが形成されており、ナプキン1Cの上層側の起毛シート9Uにおいても、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域9UTが形成されている。起毛領域9DT,9UTは、ナプキン1Cの起毛シート9D,9Uにおいては、平面視して、矩形状に形成されている。
【0091】
起毛シート9D,9Uの各起毛領域9DT,9UTは、その面積が体液の一時保持構造として、また液通過性向上による表面での液拡がり・液残り抑制と高吸収性ポリマーへの導液性向上の観点から、25〜1000mm2であることが好ましく、50〜800mm2であることがより好ましく、80〜600mm2であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Cの起毛シート9D,9Uの各起毛領域9DT,9UTは、その平面視形状が矩形状に形成されているが、上記好ましい面積の範囲を満たせば矩形状でなくてもよく、例えば、楕円形状でも、多角形状等であってもよい。
【0092】
ナプキン1Cの備える吸収体4の好ましい製造方法について述べると、先ず、ナプキン1A,1Bの備える吸収体4と同様に、図7に示すプレ加工部200と図8に示す起毛加工部300とを有する装置を用いて、搬送方向に沿って起毛領域5Tが断続的に配された起毛列5Lを、幅方向に5列配した帯状部材を製造する。このように製造された5列の起毛列5Lを有する帯状部材を、図9,図13に示すように、搬送ロール410,420を用いて傾斜させて搬送しながら、該帯状部材の幅方向内方に位置する2列の起毛列5Lに、吸水性ポリマー41の粒子をポリマー添加装置430を用いて添加し、2列の起毛列5Lにおける各起毛領域5Tに高吸収性ポリマー41を担持させる。尚、この吸水性ポリマー41の添加された2列の起毛列5Lを有する領域が、ナプキン1Cの吸収体4における繊維シート5となる。
【0093】
次に、図9,図13に示すように、吸水性ポリマー41の添加された2列の起毛列5L上に、パルプ積繊装置440を用いてパルプを連続的に積繊させ、パルプ層42を形成する。このように、高吸収性ポリマー41の担持された起毛領域5T上にパルプを積繊させるので、起毛領域5Tに、高吸収性ポリマー41及びパルプからなる吸収材料が担持されるようになる。
【0094】
次に、図13に示すように、2列の起毛列5L上に配されたパルプ層42を包むように、2列の起毛列5Lの幅方向外方に位置する一方の1列の起毛列5Lを、ターンバー(不図示)を用いて折り返す。折り返す際には、図13に示すように、2列の起毛列5Lの間に、1列の起毛列5Lが位置するように折り返す。この折り返される一方の1列の起毛列5Lを有する領域が、ナプキン1Cの吸収体4における起毛シート9Dとなる。
【0095】
そしてその後、更に、パルプ層42を包むように、2列の起毛列5Lの幅方向外方に位置する他方の2列の起毛列5Lを、ターンバー(不図示)を用いて折り返す。折り返す際には、図13に示すように、繊維シート5となる2列の起毛列5Lに、他方の2列の起毛列5Lが重なるように折り返す。この折り返される他方の2列の起毛列5Lを有する領域が、ナプキン1Cの吸収体4における起毛シート9Uとなる。
以上の工程を経ることにより、ナプキン1Cの吸収体4の連続体を製造する。
尚、ナプキン1Cは、上述したプロセスによって製造された吸収体4の連続体を用いて、ナプキン1Aと同様にして製造される。
【0096】
第3実施形態のナプキン1Cの形成材料について説明する。第3実施形態のナプキン1Cについては、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの形成材料と同様である。
【0097】
上述した本発明の第3実施形態のナプキン1Cを使用した際の作用効果について説明する。
第3実施形態のナプキン1Cの効果については、第1実施形態の使い捨てナプキン1A及び第2実施形態の使い捨てナプキン1Bの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の使い捨てナプキン1A及び第2実施形態の使い捨てナプキン1Bの効果と同様であり、ナプキン1A,1Bの効果の説明が適宜適用される。
【0098】
ナプキン1Cは、図12,図13に示すように、裏面シート3側に繊維シート5を配し、繊維シート5の表面シート2側の面上に2枚の起毛シート9D,9Uを配して、繊維シート5及び起毛シート9D,9Uを重ね合わせて形成された吸収体4を備えている。その為、起毛領域とそれにより形成された空間により、体液の一時保持構造が形成され、モレを抑制できる。また、非起毛領域ではゲルブロッキングが抑制されるのに加え、起毛領域は、繊維密度が粗になっていることから優先的に導液され、表面から高吸収性ポリマーへ体液が導かれ易い構造を形成される。
【0099】
本発明の吸収性物品は、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A、第2実施形態の生理用ナプキン1B、第3実施形態のナプキン1Cに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A,第2実施形態の生理用ナプキン1B、第3実施形態のナプキン1Cにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0100】
例えば、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A、第2実施形態の生理用ナプキン1B及び第3実施形態の生理用ナプキン1Cの備える吸収体4を形成する繊維シート5は、図2,図11,図12に示すように、1枚であるが、複数枚であってもよい。また、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A、第2実施形態の生理用ナプキン1B及び第3実施形態の生理用ナプキン1Cの備える吸収体4を形成する繊維シート5は、図2,図11,図12に示すように、吸収体4の内方に向かって構成繊維7が起毛しているが、吸収体4の外方に向かって構成繊維7が起毛する起毛領域を更に形成していてもよい。
【0101】
本発明の吸収性物品は、生理用ナプキン以外の展開型の使い捨ておむつやパンツ型使い捨ておむつであってもよいし、ライナー等であってもよい。本発明の吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、幼児又は成人用の使い捨ておむつであってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1A,1B,1C 生理用ナプキン
10 吸収性本体
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
40 吸収材料,41 高吸収性ポリマー,42 パルプ層
5 繊維シート
5T 起毛領域,5N 非起毛領域
5L 起毛列
6 周縁シール部
7 長繊維
70 起毛繊維
70a 一端部,70b 自由端部
71 自由端部70bが太くなっている繊維
71a 自由端部70bを除く部位での繊維71の径
71b 自由端部70bでの繊維71の径
72 自由端部70bが太くなっていない繊維
73 ループ状の繊維
8 繊維熱融着部
9 起毛シート
9T 起毛領域,9N 非起毛領域
9U 上層側の起毛シート
9UT 起毛領域
9D 下層側の起毛シート
9DT 起毛領域
104 測定サンプル
105 折り目
106a 2回横切る繊維
107 穴
108 仮想線
200 プレ加工部
210,220 一対のロール
211 凸部
230 スチールマッチングエンボスローラー
250,260 搬送ロール
300 起毛加工部
310 凸ロール
311 凸部
320,330 搬送ロール
50,50’ 原料シート
410,420 搬送ロール
430 ポリマー添加装置
440 パルプ積繊装置
450,460 ロール
A 排泄部領域、B 前方領域、C 後方領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、失禁パッド、使い捨ておむつ等の吸収性物品に好ましく用いられる吸収体及びその吸収体を用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる吸収体として、高吸収性ポリマー及びパルプ繊維からなる複合体をティッシュペーパー等のコアラップシートで包んだものが用いられている。しかし、前記構成からなる吸収体では、ゲルブロッキングを防止し吸収性能を向上させることが難しかった。
【0003】
ゲルブロッキングの防止とは別に、特許文献1には、高吸収性ポリマーの粒子が移動することを防止するために、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーにより形成された吸収体と、ティッシュペーパー等の包装シートとの間に、毛羽立たせた保持シートを設けた使い捨ておむつが記載されている。また、特許文献2には、吸収速度を向上させるために、粒子状の吸水性樹脂と起毛させた基材繊維とを絡ませた吸収性複合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−75464号公報
【特許文献2】特開2008−237430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1にも特許文献2にも、高吸収性ポリマーが移動することを防止しつつ、ゲルブロッキングを防止することを考慮した、高吸収性ポリマーの平面配置について、何ら記載されていない。
【0006】
したがって、本発明の課題は、高吸収性ポリマーが移動することを防止しつつ、ゲルブロッキングを防止し、吸収性能の向上した吸収体、及びその吸収体を用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高吸収性ポリマーを含む吸収材料及び該吸収材料を担持する繊維シートを備える吸収体であって、前記繊維シートは、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域を分散配置して形成されており、前記繊維シートの前記起毛領域には、該起毛領域以外の非起毛領域に比べて前記高吸収性ポリマーが多く担持されている吸収体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収体によれば、高吸収性ポリマーの移動が防止されつつ、ゲルブロッキングが防止されるので、吸収性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である生理用ナプキンの一部破断斜視図である。
【図2】図2は、図1のX1−X1線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す生理用ナプキンの備える繊維シートを示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す繊維シートの有する自由端部が太くなっている繊維を示す斜視図である。
【図5】図5は、図3に示す繊維シートの先端繊維径を測定する方法を示した模式図である。
【図6】図6は、図3に示す繊維シートの起毛している繊維の本数を測定する方法を示した模式図である。
【図7】図7は、図3に示す繊維シートを製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図8】図8は、図3に示す繊維シートを製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図9】図9は、図1に示す生理用ナプキンの備える吸収体を製造するための好適な装置を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態である生理用ナプキンの一部破断斜視図である(図1相当図)。
【図11】図11は、図10のX2−X2線断面図である(図2相当図)。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態である生理用ナプキンの断面図である。
【図13】図13は、図12に示す生理用ナプキンの備える吸収体を製造するための好適な装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい第1実施形態に基づき、図1〜図9を参照しながら説明する。
【0011】
第1実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキンであり、第1実施形態の生理用ナプキン1A(以下、「ナプキン1A」ともいう。)は、図1,図2に示すように、肌対向面(着用者の肌側に向けられる面)側に配された液透過性の表面シート2と、非肌対向面(着用者の肌側とは反対側に向けられる面)側に配された液難透過性の裏面シート3と、これらシート2,3間に配された縦長の吸収体4とを備えた実質的に縦長のものである。ナプキン1Aは、図1に示すように、ナプキン1Aの長手方向に延びる中心線CLに対して左右対称に形成されている。尚、各図に示す「Y方向」は、中心線CLに平行な方向であり、ナプキンの長手方向と同じ方向でもある。また各図に示す「X方向」は、中心線CLに直交する方向であり、ナプキンの幅方向と同じ方向でもある。
【0012】
ナプキン1Aについて、詳述すると、ナプキン1Aは、図1に示すように、表面シート2、裏面シート3、これらシート2,3間に配された吸収体4を備えた吸収性本体10を有している。ナプキン1Aの吸収性本体10は、図1に示すように、着用者の体液排出部(膣口等)に対向配置される領域である排泄部領域A、ナプキン1Aの着用時に排泄部領域Aより着用者の腹側に配される前方領域B、及びナプキン1Aの着用時に排泄部領域Aよりも着用者の背中側に配される後方領域Cに区分される。ここで、「排泄部領域A」とは、ナプキン1Aのように、所謂ウイング部を有していない場合には、生理用ナプキンが個装形態に折り畳まれた際に生じるY方向に直交する2つの折り線(不図示)で囲まれた領域を意味し、生理用ナプキンの製品長が長く3つの折線(不図示)が生じる場合には、Y方向の前端から数えて第1折り線と第2折り線とに囲まれた領域、又はY方向の前端から数えて第1折り線と第3折り線とに囲まれた領域を意味する。また、所謂ウイング部を有している場合には、「排泄部領域A」とは、ウイング部の位置する領域を意味する。ここで言うウイング部は、着用者のショーツの股下部で折り返して固定する部位を言う。ウイング部の非肌当接面側には通常ショーツに固定する為の周知のズレ止め材が塗布される。
【0013】
吸収性本体10を形成する表面シート2及び裏面シート3は、何れも、図1に示すように、吸収性本体10の長手方向(Y方向)に長い縦長の形状を有しており、吸収性本体10の排泄部領域A、前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおいて、吸収性本体10の輪郭と一致する輪郭を有している。このように、表面シート2及び裏面シート3は、ナプキン1Aにおいては、表面シート2と裏面シート3とが同形同大に形成されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれは、図1に示すように、吸収体4の肌対向面側の全面及び非肌対向面側の全面を覆っており、吸収体4の周縁から延出する延出部分を有しており、これら延出部分が熱エンボス加工によって接合されて、周縁部に周縁シール部6を形成している。
尚、ナプキン1Aにおいては、周縁シール部6が熱エンボス加工により形成されているが、超音波シールにより形成されていてもよく、ホットメルト等の接着剤等により形成されていてもよい。
【0014】
ナプキン1Aには配されていないが、表面シート2の肌対向面側であって、表面シート2の長手方向(Y方向)に沿う両側部全域に亘って、それぞれサイドシート(不図示)を配設固定してもよい。また、各サイドシート(不図示)の幅方向(X方向)内方側(中心線CL側)の端部近傍に、長手方向(Y方向)に伸長状態の弾性部材を配設固定して、着用時に、その弾性部材の収縮力により、前記端部から所定幅の部分が表面シート2から離間する立体ギャザー(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0015】
本発明の吸収性物品の有する吸収体4は、高吸収性ポリマー41を含む吸収材料40及び吸収材料40を担持する繊維シート5を備えている。具体的には、ナプキン1Aの吸収体4は、図1,図2に示すように、平面視して矩形状に形成されており、高吸収性ポリマー41及びパルプ層42からなる吸収材料40、繊維シート5、並びにコアラップシート43を備えている。吸収材料40のパルプ層42、繊維シート5及びコアラップシート43それぞれは、ナプキン1Aにおいては、吸収本4の輪郭と一致する輪郭を有している。ナプキン1Aの吸収体4は、図2に示すように、表面シート2側に繊維シート5が配され、繊維シート5の非肌対向面を被覆するようにパルプ層42が配され、パルプ層42の非肌対向面を被覆するようにコアラップシート43が配されて形成されている。
【0016】
吸収材料40を構成するパルプ層42としては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維等を積層して形成されたものが挙げられる。パルプ層42は、その目付が、30〜450g/m2であることが好ましい。また、吸収材料40は、薄型化可能である観点からパルプ層40を有さない構成であってもよい。
【0017】
コアラップシート43としては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、ティッシュペーパや液透過性の不織布等を特に制限なく用いることができる。尚、コアラップシート43に用いられる不織布としては、例えばスパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布が挙げられる。
【0018】
高吸収性ポリマー41としては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用できる。高吸収性ポリマー41の形状は、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり得るが、繊維シート5へ入り込み、そこへの担持のされ易さの観点から、塊状が好ましい。また、同様の観点から、高吸収性ポリマー41の大きさは、100〜1000μmであることが好ましく、200〜800μmであることが更に好ましい。
【0019】
本発明の吸収性物品の繊維シート5は、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域5Tを分散配置して形成されている。具体的には、ナプキン1Aの繊維シート5には、図1,図2に示すように、平面視して、複数個の起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Aの繊維シート5においては、図2に示すように、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域5Tが形成されている。起毛領域5Tは、繊維シート5においては、図2に示すように、平面視して、矩形状に形成されている。本願でいう「起毛領域」とは、後述する〔起毛している繊維の本数の測定法〕のよって測定した起毛している繊維の本数が5本/cm以上である領域を言う。
【0020】
各起毛領域5Tは、その面積が起毛によるシート破れを抑制し、高吸収性ポリマーの高い担持性発現の観点から、25〜1000mm2であることが好ましく、より好ましくは50〜800mm2であること、80〜600mm2であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Aの繊維シート5の起毛領域5Tは、その平面視形状が矩形状に形成されているが、上記好ましい面積の範囲を満たせば矩形状でなくてもよく、例えば、楕円形状でも、多角形状等であってもよい。
吸収体4の平面視における面積(ナプキン1Aにおいては繊維シート5の面積)S0に対する各起毛領域5Tの面積の総和S1(面積率)は、ナプキン1Aにおける吸収性(高吸収性ポリマーの担持量)と表面での液拡がり抑制(起毛領域5Tによる液通過性向上・非起毛領域5Nによる液拡散性)の観点から、30〜95%、より好ましくは40〜90%であること、50〜85%であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Aの繊維シート5は、起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されているが、上記好ましい面積率の範囲を満たせば千鳥配置でなくてもよく、例えば、X方向及びY方向それぞれに、起毛領域5Tが略等間隔を空けて規則的に分散して配されていてもよい。
【0021】
本発明の吸収性物品の繊維シート5の起毛領域5Tには、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。具体的には、ナプキン1Aの吸収体4は、起毛領域5Tの繊維密度が非起毛領域5Nの繊維密度に比べて繊維密度の低い繊維シート5を用い、ナプキン1Aの吸収体4は、図2に示すように、非肌対向面に複数個の起毛領域5Tが形成された繊維シート5とパルプ層42との間に、多数の高吸収性ポリマー41を配して形成されている。このように形成された吸収体4においては、繊維シート5の構成繊維同士の間に、高吸収性ポリマー41及びパルプからなる吸収材料40の一部が担持されている。また、吸収体4においては、繊維シート5の起毛領域5Tの繊維密度が起毛領域5T以外の非起毛領域5Nの繊維密度に比べて低いので、繊維シート5の起毛領域5Tにおける構成繊維同士の間に担持された高吸収性ポリマー41の量の方が、非起毛領域5Nにおける構成繊維同士の間に担持された高吸収性ポリマー41の量よりも多く担持されている。仮に、起毛領域5Tで液を保持した高吸収性ポリマー41がゲルブロッキングを起こしても、非起毛領域5Nで液の拡散性を発現し、吸収体4の吸収性能は低下しない。
【0022】
起毛領域5Tに担持された高吸収性ポリマー41の量は、液保持性と、非起毛領域5Nによる液拡散性の観点から、起毛領域5Tのみに高吸収性ポリマー41が配されているか、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量の3〜1000倍であることが好ましく、5〜100倍であることが更に好ましい。
尚、起毛領域5Tに担持された高吸収性ポリマー41の量は、10〜600g/m2であることが好ましく、30〜500g/m2であることが更に好ましい。
また、非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量は、0〜200g/m2であることが好ましく、0〜100g/m2であることが更に好ましい。
起毛領域5T及び非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量は、以下の方法で測定される。
【0023】
〔高吸収性ポリマーの担持量の測定法〕
22℃65%RH環境下にて、ナプキン1Aから表面シート2を取り除き、表面シート2を取り除いたサンプルから、該サンプルを平面視して起毛領域5Tに該当する領域のサンプル片を切り出し、寸法(面積m2)を測定する。
該サンプル片に存在する高吸収性ポリマー41の重量(単位:g)は、以下の方法により測定することが出来る。
該サンプル片を生理食塩水に30分間以上浸漬し、膨潤した高吸収性ポリマー41を該サンプル片の繊維シート5と吸収材料40から分別し、その後、高吸収性ポリマー41の遠心保持量を測定する(W1)。その値W1を高吸収性ポリマー41の単位重量当たりの遠心保持量(W2)で除して求める方法(この場合、高吸収性ポリマー41の重量は、W1/W2となる)。
求められた高吸収性ポリマー41の重量を前記寸法(面積m2)で除して、高吸収性ポリマー41の量を算出する。
非起毛領域5Nに担持された高吸収性ポリマー41の量も、同様に、表面シート2を取り除いたサンプルから、該サンプルを平面視して非起毛領域5Nに該当する領域のサンプル片を切り出して算出する。
この操作を3回繰りかえてして平均値を求め、それぞれにおける高吸収性ポリマーの量とする。
【0024】
上述したように、繊維シート5は、その構成繊維が起毛した起毛領域5Tを分散配置して形成されている。起毛領域5Tの形成された繊維シート5としては、例えば、短繊維からなる不織布を元に該不織布を起毛処理したものや、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に該不織布を起毛処理したもの等が挙げられるが、強度が高く加工適正に優れ、しかも経済的であるとの観点から、ナプキン1Aにおいては、図2,図3に示すように、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に形成されている。起毛領域5Tは、不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定され、自由端部70bを有する起毛繊維70を備えていることが好ましく、高吸収性ポリマー41を絡めながら担持し易く、安定的に担持可能な観点からは、繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えていることが更に好ましい(図3,図4参照)。ここで、「長繊維」とは、30mm以上の繊維長を有するもので、繊維長150mm以上の所謂連続長繊維であると破断強度が高い不織布が得られる点で好ましい。
尚、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布としては、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布等が挙げられる。
また、繊維シート5は、液透過性の観点から高吸収性ポリマーを含まないことが好ましい。
【0025】
ナプキン1Aの備える吸収体4を構成する繊維シート5は、図3,図4に示すように、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に、スパンボンド不織布又は積層不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、スパンボンド不織布又積層不織布の有する繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えている。繊維シート5については、図3に示すように、構成繊維7の配向方向を見て、一般的に繊維の配向方向に沿うMD方向を長手方向(Y方向)、それと直交するCD方向を幅方向(X方向)と判断する。従って、以下の説明では、長手方向(Y方向)とMD方向とは同じ方向を意味し、幅方向(X方向)とCD方向は同じ方向を意味する。
【0026】
吸収体4を構成する繊維シート5は、安価であり、加工適正の観点から、その坪量が、5〜100g/m2であることが好ましく、5〜25g/m2であることが更に好ましい。
【0027】
吸収体4を構成する繊維シート5は、使用時の破れの防止、および加工適正の観点から、その破断強度の値が、5N/50mm以上であることが好ましく、8〜30N/50mmであることが更に好ましい。尚、元の不織布の破断強度の値は、同様の観点から、7N/50mm以上であることが好ましく、10〜50N/50mmであることが更に好ましい。このように、後述する起毛法により製造される吸収体4を構成する繊維シート5の破断強度の値は、他の起毛方法に比べて元の不織布の破断強度の値からの低下が少ない。吸収体4を構成する繊維シート5と、その元の不織布の破断強度は、X方向(CD方向)において前記の範囲を満たしていることが好ましい。吸収体4を構成する繊維シート5と、その元の不織布の破断強度の比(繊維シート5の破断強度/元の不織布の破断強度)は、0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。破断強度は以下の方法で測定される。
【0028】
〔破断強度の測定法〕
22℃65%RH環境下にて、吸収体4を構成する繊維シート5、又は元の不織布(例えば、スパンボンド不織布)から、X方向(幅方向)に200mm、Y方向(長手方向)に50mmの寸法の長方形形状の測定片を切り出す。この切り出された長方形形状の測定片を測定サンプルとする。この測定サンプルを、X方向が引張方向となるように、引張試験機(例えば、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機「RTA−100」)のチャックに取り付ける。チャック間距離は150mmとする。測定サンプルを300mm/分で引っ張り、サンプル破断までの最大荷重点をX方向の破断強度とする。また、Y方向に200mm、X方向に50mmの寸法の長方形形状の測定片を切り出し、これを測定サンプルとする。この測定サンプルを、そのY方向が引張方向となるように引張試験機のチャックに取り付ける。上述したX方向の破断強度の測定方法と同様の手順によってY方向の破断強度を求める。
【0029】
本実施形態にナプキン1Aに使用される吸収体4を構成する繊維シート5は、自由端部70bを有する起毛繊維70を備えた面が肌に接した際に肌触りが良く、肌と接しないように用いた場合は、クッション性による装着感が良いことによっても特長付けられる。
従来肌触りを表す特性値は多く知られており、特にカトーテック株式会社製のKESでの特性値が一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、発行 昭和55年7月10日)。特にふっくら感を示すにはその中でも圧縮特性と呼ばれる三つの特性値のLC(圧縮荷重―圧縮ひずみ曲線の直線性)、WC(圧縮仕事量)、RC(圧縮レジリエンス)が知られている。これらの圧縮特性は荷重を0.5〜50gf/cm2(高感度測定では0.5〜10gf/cm2)かけたときの変形量から特性値を算出している。しかし目付けの小さい(5〜25g/m2)不織布などの大変薄い布では大きな差が出ず、肌触りとの相関は大きくなかった。さらに人間が吸収性物品を触る際の荷重は1g/cm2前後と大変軽い荷重で肌触りを感じており、本来の肌触りを表すためには従来の荷重よりも小さい範囲での特性値が有用であると考え、荷重が0.3gf/cm2から1gf/cm2の間の荷重とそのときの変形量から新しい特性値を見出した。この特性値はスパンボンド不織布とエアスルー不織布との肌触りの違いを如実に表す数値として示され、スパンボンド不織布の肌触りを表す新しい特性値として不織布を表すことができる。
【0030】
〔微小荷重時の圧縮特性値〕
22℃65%RH環境下にて、本明細書では微小荷重時の圧縮特性値を、肌触り及びクッション性を表す新しい特性値として定義している。測定は22℃65%RH環境下にて行った。微小荷重時の圧縮特性値の算出の元となるデータの測定はカトーテック株式会社製のKES FB3−AUTO−A(商品名)を用いた。吸収体4を構成する繊維シート5を20cm×20cmに3枚カットして測定サンプルを準備する。次にそのうちの1枚の測定サンプルを試験台に一方の面(起毛繊維70を備えた面)を上に向けて設置する(尚、起毛してない場合、または両面が起毛している場合は両方測定して小さいほうを採用する)。次に、面積2cm2の円形平面をもつ鋼板間で圧縮する。圧縮速度20μm/sec、最大圧縮荷重10gf/cm2、回復過程も同一速度で測定する。このとき、鋼板間の変位量をx(mm)とし、荷重をy(gf/cm2)とし、荷重を検知した点の位置をx=0として圧縮方向に測定する。xの値は圧縮されるほど大きくなる。
【0031】
微小荷重時の圧縮特性値は測定したデータ(x,y)より、微小荷重時の鋼板間の変形量を抽出して算出する。具体的には回復過程ではない一回目の、荷重が0.30gf/cm2から1.00gf/cm2の間の荷重とそのときの変形量のデータを抽出し、xとyとの関係について近似直線を最小二乗法により求め、そのときの傾きを上記特性値とする(単位(gf/cm2)/mm)。1枚の測定サンプルで3箇所測定し、3枚のサンプル合計9箇所の測定を行う。9箇所それぞれの特性値を算出して、それらの平均値をその不織布の微小荷重時の圧縮特性値とする。
【0032】
微小荷重時の圧縮特性値は肌触りと強い相関があることを見出し、特に元の不織布が同じ場合に強い相関性がある。(微小荷重時の)圧縮特性値は低い数値ほど、小さな荷重で潰れやすいことを示しており、人間の肌触りを感じる感覚(特にふっくら感)の良好さを表すことができる。例えば、後述する加工処理を施していない、通常の目付けが5〜25g/m2の元の不織布(例えば、スパンボンド不織布)の上記圧縮特性値は20.0(gf/cm2)/mm〜30.0(gf/cm2)/mmであるのに対し、元の不織布(例えば、スパンボンド不織布)に後述する加工処理を施した吸収体4を構成する繊維シート5は、表面が潰れやすくなり18.0(gf/cm2)/mm以下になる。つまり肌触りの観点から、5〜25g/m2の元の不織布(スパンボンド不織布)に加工処理を施した吸収体4を構成する繊維シート5の上記圧縮特性値は、18.0(gf/cm2)/mm以下であり、15.0(gf/cm2)/mm以下であることが好ましく、肌触りのよいエアスルー不織布に近い肌触りになる観点から、10.0(gf/cm2)/mm以下になることがさらに好ましい。目付けが5〜25g/m2の元の不織布(スパンボンド不織布)に加工処理を施した吸収体4を構成する繊維シート5の上記圧縮特性値の下限は特に制限されないが、製造上の観点からは、1.00(gf/cm2)/mm程度である。
【0033】
吸収体4を構成する繊維シート5を構成する長繊維7(元の不織布の構成繊維)は、熱可塑性樹脂を主として含み、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としてはナイロン等が挙げられる。ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニル等が挙げられる。ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これら各種樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることもでき、これら各種樹脂の変成物を用いることもできる。また長繊維7には、繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤など少量の添加物を付与した繊維を用いることもできる。長繊維7の繊径は、後述する加工前において、3〜50μmであることが好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。
【0034】
吸収体4を構成する繊維シート5を形成する元の不織布は、紡糸性の観点からポリオレフィン系樹脂であるポリプロピレン樹脂から形成されていることが好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、滑らかであり、破断のしやすさの観点から、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマーのいずれか1種以上を5〜100重量%、より好ましくは25重量%〜80重量%含んだ樹脂であることが好ましい。また、これらのコポリマーやホモポリマーを混合してもよいし、他の樹脂を混合してもよいが、成形時に糸切れし難いことから、ポリプロピレンのホモポリマーとランダムコポリマーの混合が好ましい。これにより、繊維の結晶性を低下させて起毛繊維自体の柔らかさと不織布強度との両立ができ、起毛繊維がエンボスなどの融着部で切断されやすくなるため、エンボス融着点などの繊維熱融着部8での剥離がなくなり、起毛繊維が短くなり、毛玉ができにくく、外観も良好なものが得られる。また、融点の分布が広くなるためシール性が良くなる。さらにはプロピレン成分をベースとしてランダムコポリマーとしてエチレンやα−オレフィンと共重合したものが好ましく、エチレンプロピレン共重合体樹脂が特に好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、同様な観点から、エチレンプロピレン共重合体樹脂を5重量%以上含んだ樹脂であることが好ましく、25重量%以上含んだ樹脂であることが更に好ましい。エチレンプロピレン共重合体樹脂中にはエチレン濃度が1〜20重量%含まれたものが好ましく、特に、べた付きがなく、しかも、延伸時に伸びやすく、毛羽抜けが少なく、破断強度が維持される点で、エチレン濃度が3〜8%であることがより好ましい。また、ポリプロピレン樹脂としては、環境の観点から、再生ポリプロピレン樹脂を25重量%以上含んだ樹脂であることが好ましく、50重量%以上含んだ樹脂であることが更に好ましい。尚、吸収体4を構成する繊維シート5が、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成されている場合も同様である。
【0035】
エンボスによる繊維熱融着部8は、肌触りや、加工適正の観点から、各繊維熱融着部8の面積が、0.05〜10mm2であることが好ましく、0.1〜1mm2であることが更に好ましい。繊維熱融着部8の数は、10〜250個/cm2であることが好ましく、35〜65個/cm2であることが更に好ましい。X方向に隣り合う繊維熱融着部8同士の中心間の距離は、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜3mmであることが更に好ましく、Y方向に隣り合う繊維熱融着部8同士の中心間の距離は、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜3mmであることが更に好ましい。
【0036】
繊維熱融着部8は、エンボス(エンボス凸ロールとフラットロールなどによる)による熱圧着により間欠的に形成されたものや、超音波融着によるもの、間欠的に熱風を加えて部分融着させたものなどが挙げられる。この中で熱圧着によるものが繊維を破断させやすい点で好ましい。繊維熱融着部8の形状は、特に制限されず、例えば、円形、菱形、三角形等の任意の形状であってもよい。吸収体4を構成する繊維シート5の一面の表面積に占める繊維熱融着部8の合計面積の割合は、5〜30%であることが好ましく、10〜20%であることが、毛玉が出来にくい点で更に好ましい。
【0037】
ナプキン1Aの吸収体4を構成する繊維シート5は、例えば、長繊維7からなるスパンボンド不織布を元に形成されており、長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70が形成されており、繊維70は自由端部70bが太くなっている繊維71を含んでいる(図3参照)。先端が太くなっているものとして、その先端部における断面が扁平状(楕円や潰れた形状)であるものが好ましい。これにより、高吸収性ポリマー41を絡めながら担持し易く、安定的に担持可能な繊維シート5となる。図3に示すように、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70は、他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71及び自由端部70bが太くなっていない繊維72からなる。ここで、「自由端部」とは、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70における「他端部」のことを意味し、言い換えれば「先端部」を意味する。自由端部70bが太くなっているか否かは、以下の測定法により繊維径を測定し、先端繊維径の増加割合を算出し判断する。
【0038】
〔繊維径の測定法〕
先ず、22℃65%RH環境下にて、図5(a)に示すように、測定する吸収体4を構成する繊維シート5から、鋭利なかみそりで、X方向に2cm、Y方向に2cmの大きさの測定片を切り出して、図5(b)に示すように、複数個の繊維熱融着部8を通るX方向に延びる折り返し線Zにて山折りした測定サンプルを、図5(c)に示すように、カーボンテープを載せた走査型電子顕微鏡(SEM)用アルミ製試料台に載せて固定する。次に、およそ750倍に拡大したSEM画像から、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70をランダムに10本選出し、それら繊維の自由端部の先端付近の写真撮影を行なう。得られた写真(図4参照)から、他端部側の自由端部70bの先端から120μm離れた位置での繊維70の繊維径(自由端部70bを除く部位での繊維70の径71a)をそれぞれ測定する。自由端部70bを除く部位での繊維70の径71aの測定時における傾きを、そのまま自由端部70b側に平行移動し、自由端部70bの先端と先端から20μm離れた位置との間に挟まれた領域において最も太くなっている位置での繊維71の繊維径(自由端部70bでの繊維71の径71b)を測定する。尚、先端部が扁平状である場合は観察角度によっては先端が太く見えない場合もあるが、その場合でも得られた写真でそのまま測定する。
【0039】
自由端部70bが太くなっている繊維71とは、先のランダムに選出した10本の繊維70の中で、10本の繊維70の写真それぞれから測定した、自由端部70bでの繊維70の径71bと、自由端部70bを除く部位での繊維70の径71aとから、下記の式(1)で求められる先端繊維径の増加割合の値が15%以上との要件を満たす繊維であることを意味し、繊維熱融着部8同士の間(繊維熱融着部8と繊維との境界を除く、繊維形態部分)での繊維の切断が抑えられ、破断強度の減少が抑えられる点から、20%以上大きくなっていることが好ましく、25%以上大きくなっていることが更に好ましい。
先端繊維径の増加割合(%)=[(71b−71a)÷71a)×100]・・・(1)
【0040】
吸収体4を構成する繊維シート5においては、破断強度とクッション性向上の観点から、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70(自由端部70bが太くなっている繊維71及び自由端部70bが太くなっていない繊維72)における、自由端部70bが太くなっている繊維71の割合が、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましい。自由端部70bが太くなっている繊維71の割合は、上述した繊維径の測定法において、ランダムに10本選んだ繊維70をおよそ750倍に拡大したSEM画像から、先端繊維径の増加割合をそれぞれ算出し、自由端部70bが太くなっている繊維71の割合を算出する。
また、吸収体4を構成する繊維シート5は、繊維熱融着部8の周辺部において切断されている繊維を含んでいる。破断強度の高い不織布が得られる点で、吸収体4を構成する繊維シート5の繊維熱融着部8をランダムに選んで繊維熱融着部8の周辺部(繊維熱融着部8と長繊維7との境界から外側及び内側へ100μm以内の範囲、総計10mm2分)を電子顕微鏡で観察する。長繊維が切断された跡(繊維熱融着部8により繊維が押し潰された形状と、押し潰されておらず繊維形状そのままの部分とが非連続になっている部分)を数えた場合に、この長繊維が切断された跡の数が多いと、極表面のみ起毛していることになり、起毛量の割には破断強度の高い不織布が得られる点で3ヶ所以上切断された不織布であることが好ましく、さらには5ヶ所〜15ヶ所切断された不織布であることが好ましい。
【0041】
吸収体4を構成する繊維シート5は、図3に示すように、繊維熱融着部8,8同士の間でループ状に起立するループ状の繊維73を有している。起立している「ループ状の繊維73」とは、上述した繊維径の測定法において図5(c)のように観察した際、他端部側に自由端部70bを有さず、折り返し線Zから0.5mm以上離れて起立している繊維を意味する。本明細書において、ループ状の繊維73とは前記起立しているループ状の繊維をいう。吸収体4を構成する繊維シート5を構成する繊維は、自由端部70bが太くなっている繊維71及び自由端部70bが太くなっていない繊維72からなる、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70と、繊維70以外に、繊維熱融着部8,8同士の間でループ状に起立するループ状の繊維73とを有している。吸収体4を構成する繊維シート5は、高吸収性ポリマー41の入り込みやすさ、担持のされ易さ、起毛部の構造安定性の観点から、吸収体4を構成する繊維シート5を構成する繊維のうち、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70及びループ状の繊維73の総数における、ループ状の繊維73の割合が、50%より少ないことが好ましく、45%以下であることが更に好ましく、40%以下であることが特に好ましい。ループ状の繊維73の割合は、上述した繊維径の測定法において、およそ50倍に拡大したSEM画像から、ランダムに10本繊維を選び、ランダムに選んだ10本の繊維から、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70(自由端部70bが太くなっている繊維71、自由端部70bが太くなっていない繊維72)、及びループ状の繊維73を抽出し、繊維71、繊維72及び繊維73の総数における繊維73(ループ状の繊維)の割合を算出して求める。尚、測定値は、別の部位のSEM画像9点からも同様に割合を求め、それらの10点平均により算出する。尚、ランダムに選んだ10本の繊維の中にループ状の繊維73が1本含まれる場合には、ループ状の繊維73は、1本として数えられる。
【0042】
吸収体4を構成する繊維シート5においては、自由度の比較的高くなった繊維を含むことによって繊維間の隙間が埋められて、表面の粗さが小さく滑らかになる。また、高吸収性ポリマーの担持構造(空間)の観点から、繊維径の分布(分散度)は、広ければ広いほど構造が潰れたり解かれたりしにくく好ましいが、高吸収性ポリマーの膨潤構造(空間)の観点からは、0.33以上であれば十分に満足すべき効果が得られ、0.35以上であれば更に満足すべき効果が得られる。繊維径の分布(分散度)は、特に上限はないが、100以下が好ましい。より好ましくは、繊維径の分布(分散度)は、0.33〜0.9であることが好ましい。ここでいう繊維径の分布(分散度)とは、吸収体4を構成する繊維シート5を構成するすべての繊維の繊維径の分布(分散度)を意味し、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70、ループ状の繊維73、及び両端部が繊維熱融着部8により固定されており、ループ状に起立していない繊維(後述する加工処理による影響を受けない繊維)全体の分布である。繊維径の分布(分散度)は以下の方法で測定される。
【0043】
繊維径の測定法〔繊維径の分布(分散度)の測定法〕
先ず、22℃65%RH環境下にて、測定する吸収体4を構成する繊維シート5から、鋭利なかみそりで、X方向に2cm、Y方向に2cmの大きさの測定片を切り出して、カーボンテープを載せた走査型電子顕微鏡(SEM)用アルミ製試料台に折り曲げずにそのまま載せて固定する。次に、およそ750倍に拡大したSEM画像から、ランダムに繊維を10本抽出し、自由端部70bを除く部位においてそれぞれの繊維径を測定する(尚、測定する吸収体4を構成する繊維シート5が、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成されている場合には、メルトブローンの層の繊維は選ばず、スパンボンドの層の繊維のみを選択する。)。1つの前記アルミ製試料台で10本の繊維径を上述のように測定し、測定された10本の繊維径d1〜d10から平均値daveを求め、得られた10本の繊維径d1〜d10と平均値daveとから、下記の式(2)で、ランダムに選んだ10本の繊維の繊維径の分布を求める。測定単位はμmとし、0.1μmの分解能で計測する。10本の繊維の繊維径の分布を、1つの吸収体4を構成する繊維シート5につき、6箇所前記アルミ製試料台を作成し、各箇所で得られた10本の繊維の繊維径の分布の平均値(下記の式(3)参照)を、吸収体4を構成する繊維シート5における繊維径の分布とする。尚、10本の繊維の繊維径の分布の算出には、マイクロソフト社の表計算ソフトexcel2003におけるVARPA関数を使用する。
10本の繊維の繊維径の分布=[(d1−dave)2+(d2−dave)2+・・・(d10−dave)2)]/10・・・(2)
吸収体4を構成する繊維シート5における繊維径の分布(分散度)=(上記式(2)で得られた10本の繊維の繊維径の分布の総和)/6・・・(3)
【0044】
吸収体4を構成する繊維シート5は、クッション性の向上と高吸収性ポリマー担持性の観点から、起毛している繊維が、8本/cm以上であることが好ましく、12本/cm以上であることが更に好ましい。起毛している繊維は、以下の測定法により測定する。
【0045】
〔起毛している繊維の本数の測定法〕
図6は、22℃65%RH環境下にて、吸収体4を構成する繊維シート5を構成する繊維の中で起毛している繊維の本数を測定する方法を示した模式図である。先ず、測定する不織布から、鋭利なかみそりで、20cm×20cmの測定片を切り出し、図6(a)に示すように、測定片の起毛した面において山折りして測定サンプル104を形成する。次に、この測定サンプル104を、A4サイズの黒い台紙の上に載せ、図6(b)に示すように、さらにその上に、縦1cm×横1cmの穴107をあけたA4サイズの黒い台紙を載せる。このとき、図6(b)に示すように、測定サンプル104の折り目105が、上側の黒い台紙の穴107から見えるように配置する。両台紙には、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いた。その後、上側の台紙の穴107の両側それぞれから、折り目105に沿って外方に5cmはなれた位置に、50gのおもりをそれぞれ載せ、測定サンプル104が完全に折りたたまれた状態を作る。次に、図6(c)に示すように、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX−900)を用いて、30倍の倍率で、台紙の穴107内を観察し、測定サンプル104の折り目105から0.2mm上方に平行移動した位置に形成される仮想線108よりも上方に存在している1cmあたりの繊維の本数を計測する。9箇所計測し、平均値(少数第二位を四捨五入)を起毛している繊維の本数とする。
【0046】
また、起毛している繊維の数を数える際には、例えば、図6(c)に示す繊維106aのように、折り目105から0.2mm上方にある仮想線108を2回横切る繊維がある場合、その繊維は2本と数える。具体的には、図6(c)に示す例では、仮想線108を1回横切る繊維が4本、仮想線108を2回横切る繊維106aが1本存在するが、2回横切る繊維106aは2本と数え、起毛した繊維の本数は6本となる。
【0047】
吸収体4を構成する繊維シート5は、高吸収性ポリマーを担持し易い観点から、起毛している繊維(仮想線108を横切る繊維)の平均繊維径が、同じ面の起毛していない部位の表面繊維(仮想線108を横切らず、仮想線108に至っていない繊維)の平均繊維径より小さいことが好ましい。また、このように、起毛している部位の繊維の平均繊維径が、同じ面の起毛していない部位の表面繊維の平均繊維径より小さければ、構成繊維の起毛している部位と起毛していない部位を有する凹凸形状の繊維シート5を他の材料と重ね合せた際に、起毛している部位の構成繊維が倒れ易く、過度に繊維シート5の凹凸形状が反映され過ぎることを抑制できる。平均繊維径は、起毛している繊維、及び起毛していない繊維それぞれ12箇所の繊維径を顕微鏡(光学顕微鏡、またはSEM等)で計測した繊維径のことをいう。起毛している繊維の繊維径は、起毛していない繊維の97%〜40%が好ましく、90%〜40%であることが、より好ましい。
【0048】
また、吸収体4を構成する繊維シート5は、クッション性の向上の観点、毛玉になりにくいことによる高吸収性ポリマーの入り込み易さの観点から、起毛している繊維の高さが、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることが更に好ましい。上記観点からは、低ければ低いほど好ましいが、0.2mm以上であれば十分に満足すべき効果が得られる。また、クッション性向上、及び高吸収性ポリマーの担持性の観点から、起毛している繊維の高さが2mm以下であり且つ起毛している繊維が8本/cm以上でることが好ましく、起毛している繊維の高さが1mm以下且つ起毛している繊維が15本/cm以上であることが更に好ましい。ここで、繊維の高さとは、繊維の長さと異なり、繊維を測定時に引っ張ることなく、自然状態での繊維の高さのことを意味する。起毛している繊維の長さの値が大きい場合や繊維の剛性が高いと、起毛している繊維の高さが高くなる傾向にある。起毛している繊維の高さは、以下の測定法により測定する。
【0049】
〔起毛している繊維の高さの測定法〕
起毛している繊維の高さは、起毛している繊維の本数を測定する際に、同時に測定する。具体的には、図6(c)に示すように、台紙の穴107内を観察し、折り目105から平行に線を0.05mmごとに起毛繊維が交わらなくなるところまで引く。次に、上述のように測定した起毛している繊維の本数(0.2mm上方にある仮想線108より判断)に比べて、平行な線に交わる繊維が半分になる平行線を選び、そこから折り目までの距離を起毛高さとする。以上の操作を測定する不織布に対して3枚分計測し、1枚につき3箇所、3枚で計9箇所の平均をとり、起毛している繊維の高さとする。
【0050】
起毛している繊維の高さ、及び起毛している繊維に加えて、吸収体4を構成する繊維シート5のバルクソフトネスが8.0cN以下であることが、装着感と追従性の観点から好ましく、0.5〜3.0cNであること更に好ましい。バルクソフトネスは、以下の測定法により測定する。
【0051】
〔バルクソフトネスの測定方法〕
吸収体4を構成する繊維シート5のバルクソフトネスは、吸収体4を構成する繊維シート5をMD方向に150mm、CD方向に30mm切り出し、直径45mmのリング状に、ステープラーを用いて端部を上下2箇所で止める。このときステープラーの芯はMD方向に長くなるようにする。引張試験機(例えば、オリエンテック社製テンシロン引張り試験機「RTA−100」)を用いて、試料台の上に前記リングを筒状に立て、上方から台とほぼ平行な平板にて圧縮速度10mm/分の速度で圧縮していった際の最大荷重を測定し、CD方向のバルクスフトネスとする。次に、MD方向とCD方向を変えてリングを作製し、同様にMD方向のバルクソフトネスを測定する。MD方向及びCD方向それぞれ2本ずつリングを作製して測定し、これらのCD方向とMD方向の平均値を、吸収体4を構成する繊維シート5のバルクスフトネスとする。
【0052】
吸収体4を構成する繊維シート5を形成する元の不織布に、柔軟剤を練りこんだり、塗布したりすれば、高吸収性ポリマーの起毛構造への入り込み性の効果がより効果的である。柔軟剤としては、例えばワックスエマルジョン、反応型柔軟剤、シリコーン系、界面活性剤などを使用することができる。特にアミノ基含有シリコーン、オキシアルキレン基含有シリコーン、界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤としては、カルボン酸塩系のアニオン界面活性剤、スルホン酸塩系のアニオン界面活性剤、硫酸エステル塩系のアニオン界面活性剤、リン酸エステル塩系のアニオン界面活性剤(特にアルキルリン酸エステル塩)等のアニオン界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット蜜ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等の、非イオン系界面活性剤:第4級アンモニウム塩、アミン塩又はアミン等のカチオン界面活性剤;カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体、又は複素環式第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体等の、両性イオン界面活性剤などを使用することができる。また、必要に応じて、公知の薬剤を副次的添加剤(少量成分)として柔軟剤に添加することができる。
柔軟剤を含むことにより、毛羽抜けが少なく、表面の肌摩擦も低く、破断強度も高くなる。また、起毛領域5Tは、親水性を発現する界面活性剤が用いられる事が通液性の観点から好ましい。
【0053】
また、吸収体4を構成する繊維シート5が、後述するスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成されており、該積層不織布のスパンボンドの層が複数層からなる、例えば、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布等を用いる場合には、一層のスパンボンドの層のみに上記柔軟剤を練りこむことが好ましく、全てのスパンボンドの層に練りこむ等してもよい。一層のスパンボンドの層に柔軟剤を練りこんだ場合には、その層側に後述の加工処理を施し、自由端部が太くなっている繊維を備えるようにすると、破断強度も高い点で好ましい。このように、吸収体4を構成する繊維シート5は、破断強度の調整がし易い点からは、スパンボンド不織布単体を元に形成するよりも、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に形成する方が好ましい。
【0054】
次に、ナプキン1Aに用いる吸収体4を構成する繊維シート5の好適な製造方法について、図7,図8を参照しながら説明する。吸収体4を構成する繊維シート52の製造方法に好ましく用いられる製造装置は、プレ加工部200と、プレ加工部200の下流側に配される起毛加工部300とに大別される。
【0055】
プレ加工部200は、図7に示すように、互いに噛み合う凸部211と凹部221とが周面に設けられた一対のロール210,220からなるスチールマッチングエンボスローラー230を備えている。図7に示すように、スチールマッチングエンボスローラー230は、ロール210の周面に設けられた複数個の凸部211とロール220の周面に設けられた複数個の凹部221とが、互いに噛み合うように形成されており、複数個の凸部211は、ロール210の回転軸方向及び周方向にそれぞれ均一に且つ規則的に配されている。一対のロール210,220は、何れか一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。また、プレ加工部200は、たとえば図7に示すように、スチールマッチングエンボスローラー230の上流側及び下流側に、原料シート50を搬送する搬送ロール250,260を備えている。
【0056】
ロール210の各凸部211は、ロール210の周面から凸部211の頂点までの高さが、1〜10mmであることが好ましく、2〜7mmであることが更に好ましい。回転軸方向に隣り合う凸部211同士の距離(ピッチ)は、0.01〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることが更に好ましく、周方向に隣り合う凸部211同士の距離(ピッチ)は、0.01〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることが更に好ましい。ロール210の各凸部211の頂部表面の形状に特に制限はなく、例えば、円形、多角形、楕円形等が用いられ、各凸部211の頂部表面の面積は、0.01〜500mm2であることが好ましく、0.1〜10mm2であることが更に好ましい。ロール220の各凹部221は、ロール210の各凸部211に対応する位置に配されている。ロール210の各凸部211とロール220の各凹部221との噛み合いの深さ(各凸部211と各凹部221とが重なっている部分の長さ)は、0.1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることが更に好ましい。
【0057】
起毛加工部300は、図8に示すように、周面に凸部311が設けられた凸ロール310を備え、凸ロール310の上流側及び下流側に、原料シート50’を搬送する搬送ロール320,330を備えている。凸ロール310の凸部311は、製造される繊維シート5に配されている各起毛領域5Tに対応する位置に、複数個が集まって、凸部311領域を形成している。各凸部311領域は、凸ロール310の周面に設けられている。凸ロール310は、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。
【0058】
凸ロール310の各凸部311は、凸ロール310の周面から凸部311の頂点までの高さが、0.001〜3mmであることが好ましく、0.001〜0.1mmであることが更に好ましい。各凸部311領域においては、回転軸方向に隣り合う凸部311同士の距離(ピッチ)は、0.1〜50mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることが更に好ましく、周方向に隣り合う凸部311同士の距離(ピッチ)は、0.1〜50mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることが更に好ましい。凸ロール310の各凸部311の頂部表面の形状に特に制限はなく、例えば、円形、多角形、楕円形等が用いられ、各凸部311の頂部表面の面積は、0.001〜20mm2であることが好ましく、0.01〜1mm2であることが更に好ましい。
【0059】
このような構成のプレ加工部200及び起毛加工部300を備える製造装置においては、先ず、吸収体4を構成する繊維シート5の原料である、例えば帯状のスパンボンド不織布(原料シート50)を、ロール(不図示)から巻き出して、搬送ロール250,260により、原料シート50をスチールマッチングエンボスローラー230の一対のロール210,220間に搬送する。プレ加工部200においては、図7に示すように、原料シート50を一対のロール210,220間で挟圧し、原料シート50にダメージを与える。ダメージを与える際、スパンボンド不織布の構成繊維間で熱融着を起こさない観点から、スチールマッチングエンボスローラー230の一対のロール210,220は、積極的に加熱をしないか、または原料シート50を構成する繊維の成分のうち最も低い融点を示す成分の融点以下の温度で、特に、該融点よりさらに70℃以上低い温度でスチールマッチエンボス加工することが好ましい。
【0060】
次に、図8に示すように、ダメージが与えられた原料シート50’を、搬送ロール320,330により、周面に複数の凸部311領域が設けられた凸ロール310に搬送する。起毛加工部300においては、ダメージを与えられた原料シート50’の表面の一部分を、凸ロール310により加工し、複数個の起毛領域5Tを有する吸収体4を構成する繊維シート5の連続体を形成する。このように形成された繊維シート5の起毛領域5Tにおいては、スパンボンド不織布を構成する長繊維7の一部を破断し、一端部70aのみがスパンボンド不織布の繊維熱融着部8により固定されている繊維70を有している(図3参照)。長繊維7の一部を破断し、図3に示す繊維70を有する繊維シート5を効率よく形成する観点から、凸ロール310の回転方向を、原料シート50’の搬送方向に対して逆方向に回転させることが好ましく、原料シート50’の搬送速度に対し、0.3〜10倍の速度で凸ロール310を回転させることが好ましい。また周方向(搬送方向に対して順方向)に回転させる場合には1.5〜20倍の速度で凸ロール310を回転させることが好ましい。ここで、凸ロール310の速度は、凸ロール310の周面での周速度のことを意味する。
【0061】
長繊維7の一部を更に効率よく破断し、図3に示す繊維70を有する繊維シート5を更に効率よく形成する観点から、図8に示すように、凸ロール310より搬送ロール330の位置を高く設定し、ダメージを与えられた原料シート50’が凸ロール310の接触面に、10〜180°の抱き角αで接触していることが好ましく、30〜120°の抱き角αで接触していることが、不織布のネックインによる幅減少が抑えられるため、更に好ましい。
【0062】
尚、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定されている繊維70を、吸収体4を構成する繊維シート5の両面に形成する場合には、凸ロール310により加工した原料シート50’の表面と異なる表面(裏面)を、更に、別の凸ロール310により加工することにより得られる。
【0063】
本発明者は、スチールマッチングエンボスローラー230によりスパンボンド不織布(原料シート50)を延伸し、スパンボンド不織布(原料シート50)の繊維熱融着部8に弱化点を形成し、その後、凸ロール310により表面を加工するため、繊維熱融着部8の極表面の弱化点から長繊維7が破断され、繊維熱融着部8から切断された繊維が形成されると推測している。本発明者は、この繊維熱融着部8から切断された繊維が、自由端部70bが太くなっている繊維71であると推測している。また、本発明者は、凸ロール310により、繊維熱融着部8の弱化点から長繊維7が剥離され、この繊維熱融着部8から剥離された繊維が、繊維熱融着部8,8同士の間でループ状に起立するループ状の繊維73になると推測している。また、本発明者は、凸ロール310により表面を加工する際に、繊維熱融着部8,8同士の間で長繊維7が破断され、自由端部70bの太くなっていない繊維72が形成されると推測している。上述した吸収体4を構成する繊維シート5の好適な製造方法により製造される不織布は、従来の起毛方法により製造される不織布に比べ、ループ状の繊維73や、太くなっていない繊維72の割合が少ないのが特徴である。従来の起毛方法により製造される不織布のように、太くなっていない繊維72が多く存在すると、エンボス部とエンボス部との間などの繊維熱融着部8間で破断されて、繊維熱融着部8間でいわゆる切れ目(裂け目、穴)ができることになる。これにより起毛していないベースの繊維を傷つけずに起毛でき、破断強度の高いものが得られる。逆に、弱化点が形成されていない状態で起毛しようとすると、より強い力で繊維表面を擦らないと繊維が起毛され難く、起毛していない極表面以外のベースの繊維まで起毛時に傷つけてしまうことになるため、不織布全体が破断しやすく強度が保持されにくい。一方、上述した吸収体4を構成する繊維シート5の好適な製造方法により製造される不織布は、太くなっていない繊維72の割合が少ないので、破断強度を保持することができる。これにより、突き抜け強度の高い不織布が得られる。また弱化点が形成されていない状態で起毛すると、繊維熱融着部からの繊維剥離が生じ、起毛繊維の本数が少なくなるとともに、起毛高さが高くなる傾向にある。このため、毛羽になりやすい等の問題が生じやすくなる。
【0064】
また、スチールマッチングエンボスローラー230によって、繊維熱融着部8と繊維熱融着部8の間の繊維が延伸されるとともに、繊維熱融着部8の周辺部において弱化点が形成され易い。弱化点の調整は、スチールマッチングエンボスローラー230の上下一対のロール210,220のかみ合い量によって調整される。弱化点は、延伸方向に対して繊維熱融着部8と繊維熱融着部8の間の繊維長さが短いものに形成されやすい。この弱化点が形成されることで、脆弱部ができ、起毛加工部300による起毛時において繊維が弱化点より切断されやすくなるため、起毛繊維の短いものが得られ、外観上もケバが目立たず、毛玉になりにくく、破断強度も高い起毛不織布が得られる点で好ましい。同時に、繊維熱融着部8と繊維熱融着部8の間の繊維を延伸することで繊維が細くなり、また、繊維熱融着部8も柔らかくなって肌触りの良い不織布が得られる。特に、スチールマッチングエンボスローラー230によって、繊維が細く延伸され、長く伸びることにより、繊維間の距離が増し通気性が向上する。これに加え、起毛加工部300によって起毛処理することで起毛した表面の繊維のかさ密度が低下するため、同じ目付けの不織布でも起毛した不織布の方が、通気度が向上する。上述したように、繊維の延伸と起毛処理とを組み合わせることにより、通気度が元の不織布に比べ1.2〜2.0倍、より好ましくは、1.3〜1.8倍に向上する。通気度は、カトーテック製AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER KES−F8−AP1により通気抵抗を測定し、その逆数として求められる。得られた不織布の通気度は24m/(kPa・s)以上となっていることが好ましい。
通気度の良好な原料シート50のスパンボンド不織布としては、メルトブローン層を含まない、スパンボンド層のみが積層されたもの(例えば、スパンボンド−スパンボンド−スパンボンド)から構成されている不織布が好ましい。
【0065】
上述したように、プレ加工部200と起毛加工部300とを有する装置を用いて処理を行い製造された繊維シート5の帯状部材から、ナプキン1Aの備える吸収体4の好ましい製造方法を、図9を参照しながら説明する。
図9に示すように、先ず、上述のようにして製造した繊維シート5の連続体を搬送ロール410,420を用いて搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面に、吸水性ポリマー41の粒子をポリマー添加装置430を用いて添加する。ここで、搬送ロール410,420により搬送される繊維シート5の連続体は、図9に示すように、傾斜して搬送されるため、起毛領域5T以外の非起毛領域5Nに添加された高吸収性ポリマー41は移動し易く、繊維シート5の起毛領域5Tには高吸収性ポリマー41が担持され易い。このような観点から、搬送ロール410,420の搬送による繊維シート5の連続体の傾斜角度βは、10〜60°であることが好ましい。また、繊維シート5の連続体の起毛面に吸水性ポリマーを添加する際には、非起毛領域5Nの繊維密度に比べて繊維密度の低い起毛領域5Tにおける構成繊維どうしの間に高吸収性ポリマー41をより多く担持させる観点から、エアーで吹き付けることが好ましい。
【0066】
次に、図9に示すように、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持された起毛領域5Tを有する繊維シート5の連続体を搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面上に、パルプ積繊装置440を用いてパルプを連続的に積繊させ、パルプ層42を形成する。このように、高吸収性ポリマー41の担持された起毛領域5T上にパルプを積繊させるので、繊維シート5の連続体には、特に起毛領域5Tに、高吸収性ポリマー41及びパルプからなる吸収材料が担持されるようになる。
【0067】
次に、図9に示すように、高吸収性ポリマー41の担持された起毛面上のパルプ層42上に、更に、別途コアラップシート43の原反から搬送されてきたコアラップシート43の連続体を配して、パルプ層42の上面を覆い、一対のロール450,460間に供給して、吸収体4の連続体を製造する。
【0068】
ナプキン1Aは、上述したプロセスによって製造された吸収体4の連続体を用いて、後の工程では、従来の、いわゆる縦流れ方式の生理用ナプキンの製造方法と同様にして製造される。具体的には、吸収体4の連続体を、公知の技術を用いて、所定の大きさにカットして、複数個の吸収体4を連続的に製造する。次に、表面シート2の連続体、裏面シート3の連続体、及び両シートの連続体間に、繊維シート5が表面シート2側に配されるように、吸収体4を間欠的に配して、吸収性本体10の連続体を製造し、その連続体を各吸収体4毎にエンボスしながら切断加工して、ナプキン1Aを連続的に製造する。ナプキン1Aの製造方法に関し、特に説明しない点は、従来の、縦流れ方式の生理用ナプキンの製造方法と同様にして製造することができる。
【0069】
本実施形態のナプキン1Aの形成材料について説明する。
吸収性本体10を構成する表面シート2及び裏面シート3としては、それぞれ、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布等を用いることができ、裏面シート3としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。
【0070】
表面シート2、裏面シート3及び吸収体4の固定には、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等の融着手段が用いられる。
【0071】
上述した本発明の第1実施形態の生理用ナプキン1Aを使用した際の作用効果について説明する。
ナプキン1Aは、図1,図2に示すように、起毛した複数の起毛領域5Tを有する繊維シート5を具備する吸収体4を備えており、繊維シート5に分散配置された起毛領域5Tには、高吸収性ポリマー41が非起毛領域5Nに比べて多く担持されている。その為、ナプキン1Aの備える吸収体4は、高吸収性ポリマー41の移動が起毛繊維により防止されつつ、ゲルブロッキングが防止されるので、吸収性能が向上する。また、ナプキン1Aにおいては、図2に示すように、吸収体4の具備する繊維シート5の起毛領域5Tは、非起毛領域5Nに比べて繊維密度が低く形成されているので、起毛領域5Tにおける構成繊維どうしの間に高吸収性ポリマー41が入り込み易く、非起毛領域5Nに比べて多く担持され易い。従って、ナプキン1Aの起毛領域5Tにおいては、高吸収性ポリマー41の移動が更に防止され、ゲルブロッキングが更に防止されるので、吸収性能が更に向上する。
【0072】
また、ナプキン1Aにおいては、図2,図3に示すように、吸収体4の具備する繊維シート5が、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に形成されており、起毛領域5Tは、長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えている。その為、起毛領域5Tにおいては、繊維71の太くなっている自由端部70bで、高吸収性ポリマー41が担持され易く、高吸収性ポリマー41の移動が更に防止され、ゲルブロッキングが更に防止されるので、吸収性能が更に向上する。
【0073】
次に、本発明の吸収性物品を、その好ましい第2実施形態に基づき、図10〜図11を参照しながら説明する。
【0074】
第2実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキンであり、第2実施形態の生理用ナプキン1B(以下、「ナプキン1B」ともいう。)については、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、ナプキン1Aと同様であり、ナプキン1Aの説明が適宜適用される。
【0075】
ナプキン1Bの備える吸収体4は、図10,図11に示すように、1枚の繊維シート5と、繊維シート5は別に、構成繊維が起毛した起毛領域を有する1枚の起毛シート9とを備えている。ナプキン1Bの備える吸収体4は、図10,図11に示すように、ナプキン1Aの備える吸収体4に比べて、パルプ層42及びコアラップシート43を備えておらず、起毛シート9を備えており、高吸収性ポリマー41を担持する繊維シート5の非肌対向面を被覆するように起毛シート9が配されて形成されている。
【0076】
ナプキン1Bの繊維シート5は、ナプキン1Aの繊維シート5と同様に、図10,図11に示すように、平面視して、複数個の起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Bの繊維シート5においては、ナプキン1Aの繊維シート5と同様に、図11に示すように、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域5Tが形成されており、繊維シート5の起毛領域5Tには、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。
【0077】
ナプキン1Bの起毛シート9は、ナプキン1Bにおいては、吸収本4の輪郭と一致する輪郭を有しており、繊維シート5と同形同大に形成されている。起毛シート9は、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域9Tを分散配置して形成されている。具体的には、ナプキン1Bの起毛シート9は、図10,図11に示すように、平面視して、複数個の起毛領域9Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Bの起毛シート9においては、図11に示すように、肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域9Tが形成されている。起毛領域9Tは、ナプキン1Bの起毛シート9においては、図10に示すように、平面視して、矩形状に形成されている。
【0078】
起毛シート9の各起毛領域9Tは、その面積が液通過性による表面での液拡がり・液残り抑制と、高吸収性ポリマーへの導液性、ゲルブロッキング抑制の観点から、25〜1000mm2であることが好ましく、50〜800mm2であることがより好ましく、80〜600mm2であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Bの起毛シート9の起毛領域9Tは、その平面視形状が矩形状に形成されているが、上記好ましい面積の範囲を満たせば矩形状でなくてもよく、例えば、楕円形状でも、多角形状等であってもよい。
【0079】
ナプキン1Bの起毛シート9は、繊維シート5と同様に、例えば、短繊維からなる不織布を元に該不織布を起毛処理したものや、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に該不織布を起毛処理したもの等が挙げられるが、強度が高く加工適正に優れ、しかも経済的であるとの観点から、ナプキン1Bにおいては、長繊維7からなるウェブを繊維熱融着部8により固定した不織布を元に形成されている。起毛シート9の起毛領域9Tは、繊維シート5の起毛領域5Tと同様に、不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、一端部70aのみが繊維熱融着部8により固定され、自由端部70bを有する起毛繊維70を備えていることが好ましく、繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えていることが更に好ましい(図3,図4参照)。
【0080】
ナプキン1Bの備える吸収体4を構成する起毛シート9は、繊維シート5と同様に、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布を元に、スパンボンド不織布又は積層不織布を構成する長繊維7の一部が破断されて、スパンボンド不織布又積層不織布の有する繊維熱融着部8により、一端部70aのみが固定され、且つ他端部側の自由端部70bが太くなっている繊維71を備えている。
ナプキン1Bの起毛シート9は、繊維シート5と同様にして製造することができる。
【0081】
ナプキン1Bの備える吸収体4は、図10,図11に示すように、非肌対向面に高吸収性ポリマー41を多く担持する起毛領域5Tが千鳥状に配置された繊維シート5と、肌対向面に起毛領域9Tが千鳥状に配置された起毛シート9とを重ね合わせて形成されている。図10,図11に示すように、繊維シート5の起毛領域5Tは、起毛シート9の非起毛領域9Nの位置に対応するように、規則的に分散して千鳥状に配置されており、起毛シート9の起毛領域9Tは、繊維シート5の非起毛領域5Nの位置に対応するように、規則的に分散して千鳥状に配置されている。
【0082】
ナプキン1Bの備える吸収体4の好ましい製造方法について述べると、先ず、ナプキン1Aの備える吸収体4と同様に、図7に示すプレ加工部200と図8に示す起毛加工部300とを有する装置を用いて、繊維シート5の帯状部材を製造し、更に、繊維シート5の帯状部材とは別に、同様にして、起毛シート9の帯状部材を製造する。次に、搬送ロール410,420を用いて搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面に、吸水性ポリマーの粒子をポリマー添加装置430を用いて添加する(図9参照)。
次に、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持された起毛領域5Tを有する繊維シート5の連続体を搬送しながら、繊維シート5の連続体の起毛面上に、起毛シート9の帯状部材を配することにより、吸収体4の連続体を製造することができる。
尚、ナプキン1Bは、上述したプロセスによって製造された吸収体4の連続体を用いて、ナプキン1Aと同様にして製造される。
【0083】
第2実施形態のナプキン1Bの形成材料について説明する。第2実施形態のナプキン1Bについては、起毛シート9以外、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの形成材料と同様である。
【0084】
上述した本発明の第2実施形態のナプキン1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態のナプキン1Bの効果については、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの効果と同様であり、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0085】
ナプキン1Bは、図10,図11に示すように、高吸収性ポリマー41の担持された繊維シート5の非肌対向面を被覆するように起毛シート9を配して形成された吸収体4を備えている。その為、起毛領域が粗である事による通液性と高吸収性ポリマーへの導液性、及び非起毛部領域による体液の拡散性の向上(ゲルブロッキング抑制)によるモレを抑制され易い構造が形成される。
【0086】
次に、本発明の吸収性物品を、その好ましい第3実施形態に基づき、図12〜図13を参照しながら説明する。
【0087】
第3実施形態の吸収性物品は、生理用ナプキンであり、第3実施形態の生理用ナプキン1C(以下、「ナプキン1C」ともいう。)については、第1実施形態の使い捨てナプキン1A及び第2実施形態の使い捨てナプキン1Bと異なる点について説明する。特に説明しない点は、ナプキン1A及びナプキン1Bと同様であり、ナプキン1A及びナプキン1Bの説明が適宜適用される。
【0088】
ナプキン1Cの備える吸収体4は、図12に示すように、1枚の繊維シート5と2枚の起毛シート9D,9Uとを備えている。ナプキン1Cの備える吸収体4は、図12に示すように、裏面シート3側に繊維シート5を配し、繊維シート5の表面シート2側の面上に2枚の起毛シート9D,9Uを配して、繊維シート5及び起毛シート9D,9Uを重ね合わせて形成されている。ナプキン1Cにおいては、図12に示すように、1枚の繊維シート5及び2枚の起毛シート9D,9Uは、1枚のシートから形成されている。即ち、ナプキン1Cの備える吸収体4は、図12に示すように、1枚の前記シートにおける繊維シート5となる領域の表面シート2側の面(肌対向面)上に、パルプ層42を配し、パルプ層42を包むように、1枚の前記シートにおける起毛シート9Dとなる領域を折り返して配し、折り返された起毛シート9Dの肌対向面上に、1枚の前記シートにおける起毛シート9Uとなる領域を折り返して配して形成されている。
【0089】
ナプキン1Cの繊維シート5には、ナプキン1A,1Bの繊維シート5と同様に、図12に示すように、平面視して、複数個の起毛領域5Tが規則的に分散して千鳥状に配置されている。ナプキン1Cの繊維シート5においては、図12に示すように、肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域5Tが形成されており、繊維シート5の起毛領域5Tには、非起毛領域5Nに比べて高吸収性ポリマー41が多く担持されている。
【0090】
ナプキン1Cの起毛シート9D,9Uは、ナプキン1Cの繊維シート5と同様に、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域9Tを分散配置して形成されている。ナプキン1Cの下層側の起毛シート9Dにおいては、図12に示すように、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域9DTが形成されており、ナプキン1Cの上層側の起毛シート9Uにおいても、非肌対向面に、構成繊維の起毛した起毛領域9UTが形成されている。起毛領域9DT,9UTは、ナプキン1Cの起毛シート9D,9Uにおいては、平面視して、矩形状に形成されている。
【0091】
起毛シート9D,9Uの各起毛領域9DT,9UTは、その面積が体液の一時保持構造として、また液通過性向上による表面での液拡がり・液残り抑制と高吸収性ポリマーへの導液性向上の観点から、25〜1000mm2であることが好ましく、50〜800mm2であることがより好ましく、80〜600mm2であることが更に好ましい。尚、上述したように、ナプキン1Cの起毛シート9D,9Uの各起毛領域9DT,9UTは、その平面視形状が矩形状に形成されているが、上記好ましい面積の範囲を満たせば矩形状でなくてもよく、例えば、楕円形状でも、多角形状等であってもよい。
【0092】
ナプキン1Cの備える吸収体4の好ましい製造方法について述べると、先ず、ナプキン1A,1Bの備える吸収体4と同様に、図7に示すプレ加工部200と図8に示す起毛加工部300とを有する装置を用いて、搬送方向に沿って起毛領域5Tが断続的に配された起毛列5Lを、幅方向に5列配した帯状部材を製造する。このように製造された5列の起毛列5Lを有する帯状部材を、図9,図13に示すように、搬送ロール410,420を用いて傾斜させて搬送しながら、該帯状部材の幅方向内方に位置する2列の起毛列5Lに、吸水性ポリマー41の粒子をポリマー添加装置430を用いて添加し、2列の起毛列5Lにおける各起毛領域5Tに高吸収性ポリマー41を担持させる。尚、この吸水性ポリマー41の添加された2列の起毛列5Lを有する領域が、ナプキン1Cの吸収体4における繊維シート5となる。
【0093】
次に、図9,図13に示すように、吸水性ポリマー41の添加された2列の起毛列5L上に、パルプ積繊装置440を用いてパルプを連続的に積繊させ、パルプ層42を形成する。このように、高吸収性ポリマー41の担持された起毛領域5T上にパルプを積繊させるので、起毛領域5Tに、高吸収性ポリマー41及びパルプからなる吸収材料が担持されるようになる。
【0094】
次に、図13に示すように、2列の起毛列5L上に配されたパルプ層42を包むように、2列の起毛列5Lの幅方向外方に位置する一方の1列の起毛列5Lを、ターンバー(不図示)を用いて折り返す。折り返す際には、図13に示すように、2列の起毛列5Lの間に、1列の起毛列5Lが位置するように折り返す。この折り返される一方の1列の起毛列5Lを有する領域が、ナプキン1Cの吸収体4における起毛シート9Dとなる。
【0095】
そしてその後、更に、パルプ層42を包むように、2列の起毛列5Lの幅方向外方に位置する他方の2列の起毛列5Lを、ターンバー(不図示)を用いて折り返す。折り返す際には、図13に示すように、繊維シート5となる2列の起毛列5Lに、他方の2列の起毛列5Lが重なるように折り返す。この折り返される他方の2列の起毛列5Lを有する領域が、ナプキン1Cの吸収体4における起毛シート9Uとなる。
以上の工程を経ることにより、ナプキン1Cの吸収体4の連続体を製造する。
尚、ナプキン1Cは、上述したプロセスによって製造された吸収体4の連続体を用いて、ナプキン1Aと同様にして製造される。
【0096】
第3実施形態のナプキン1Cの形成材料について説明する。第3実施形態のナプキン1Cについては、第1実施形態の使い捨てナプキン1Aの形成材料と同様である。
【0097】
上述した本発明の第3実施形態のナプキン1Cを使用した際の作用効果について説明する。
第3実施形態のナプキン1Cの効果については、第1実施形態の使い捨てナプキン1A及び第2実施形態の使い捨てナプキン1Bの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の使い捨てナプキン1A及び第2実施形態の使い捨てナプキン1Bの効果と同様であり、ナプキン1A,1Bの効果の説明が適宜適用される。
【0098】
ナプキン1Cは、図12,図13に示すように、裏面シート3側に繊維シート5を配し、繊維シート5の表面シート2側の面上に2枚の起毛シート9D,9Uを配して、繊維シート5及び起毛シート9D,9Uを重ね合わせて形成された吸収体4を備えている。その為、起毛領域とそれにより形成された空間により、体液の一時保持構造が形成され、モレを抑制できる。また、非起毛領域ではゲルブロッキングが抑制されるのに加え、起毛領域は、繊維密度が粗になっていることから優先的に導液され、表面から高吸収性ポリマーへ体液が導かれ易い構造を形成される。
【0099】
本発明の吸収性物品は、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A、第2実施形態の生理用ナプキン1B、第3実施形態のナプキン1Cに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A,第2実施形態の生理用ナプキン1B、第3実施形態のナプキン1Cにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0100】
例えば、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A、第2実施形態の生理用ナプキン1B及び第3実施形態の生理用ナプキン1Cの備える吸収体4を形成する繊維シート5は、図2,図11,図12に示すように、1枚であるが、複数枚であってもよい。また、上述の第1実施形態の使い捨てナプキン1A、第2実施形態の生理用ナプキン1B及び第3実施形態の生理用ナプキン1Cの備える吸収体4を形成する繊維シート5は、図2,図11,図12に示すように、吸収体4の内方に向かって構成繊維7が起毛しているが、吸収体4の外方に向かって構成繊維7が起毛する起毛領域を更に形成していてもよい。
【0101】
本発明の吸収性物品は、生理用ナプキン以外の展開型の使い捨ておむつやパンツ型使い捨ておむつであってもよいし、ライナー等であってもよい。本発明の吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、幼児又は成人用の使い捨ておむつであってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1A,1B,1C 生理用ナプキン
10 吸収性本体
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
40 吸収材料,41 高吸収性ポリマー,42 パルプ層
5 繊維シート
5T 起毛領域,5N 非起毛領域
5L 起毛列
6 周縁シール部
7 長繊維
70 起毛繊維
70a 一端部,70b 自由端部
71 自由端部70bが太くなっている繊維
71a 自由端部70bを除く部位での繊維71の径
71b 自由端部70bでの繊維71の径
72 自由端部70bが太くなっていない繊維
73 ループ状の繊維
8 繊維熱融着部
9 起毛シート
9T 起毛領域,9N 非起毛領域
9U 上層側の起毛シート
9UT 起毛領域
9D 下層側の起毛シート
9DT 起毛領域
104 測定サンプル
105 折り目
106a 2回横切る繊維
107 穴
108 仮想線
200 プレ加工部
210,220 一対のロール
211 凸部
230 スチールマッチングエンボスローラー
250,260 搬送ロール
300 起毛加工部
310 凸ロール
311 凸部
320,330 搬送ロール
50,50’ 原料シート
410,420 搬送ロール
430 ポリマー添加装置
440 パルプ積繊装置
450,460 ロール
A 排泄部領域、B 前方領域、C 後方領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸収性ポリマーを含む吸収材料及び該吸収材料を担持する繊維シートを備える吸収体であって、
前記繊維シートは、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域を分散配置して形成されており、
前記繊維シートの前記起毛領域には、該起毛領域以外の非起毛領域に比べて前記高吸収性ポリマーが多く担持されている吸収体。
【請求項2】
前記繊維シートの前記起毛領域は、前記非起毛領域に比べて繊維密度が低い請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記繊維シートは、長繊維からなるウェブを繊維熱融着部により固定した不織布を元に形成されており、
前記起毛領域は、前記長繊維の一部が破断されて、一端部のみが該繊維熱融着部により固定され、且つ他端部側の自由端部が太くなっている繊維を備えている請求項1又は2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記繊維シートは、高吸収性ポリマーを含まない請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記吸収体は、1枚以上の前記繊維シートと、構成繊維が起毛した起毛領域を有する1枚以上の起毛シートとを備え、該繊維シート及び該起毛シートを重ね合わせて形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
前記吸収材料は、パルプ繊維を含まない請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の吸収体を備える吸収性物品。
【請求項8】
請求項5に記載の吸収体、該吸収体を挟持する液透過性の表面シート及び液難透過性の裏面シートを備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、1枚の前記繊維シートと複数枚の前記起毛シートとを備え、前記裏面シート側に該繊維シートを配し、該繊維シートの前記表面シート側の面上に複数枚の該起毛シートを配して、該繊維シート及び該起毛シートを重ね合わせて形成されている吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が生理用ナプキンである請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項1】
高吸収性ポリマーを含む吸収材料及び該吸収材料を担持する繊維シートを備える吸収体であって、
前記繊維シートは、平面視して、その構成繊維が起毛した起毛領域を分散配置して形成されており、
前記繊維シートの前記起毛領域には、該起毛領域以外の非起毛領域に比べて前記高吸収性ポリマーが多く担持されている吸収体。
【請求項2】
前記繊維シートの前記起毛領域は、前記非起毛領域に比べて繊維密度が低い請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記繊維シートは、長繊維からなるウェブを繊維熱融着部により固定した不織布を元に形成されており、
前記起毛領域は、前記長繊維の一部が破断されて、一端部のみが該繊維熱融着部により固定され、且つ他端部側の自由端部が太くなっている繊維を備えている請求項1又は2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記繊維シートは、高吸収性ポリマーを含まない請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記吸収体は、1枚以上の前記繊維シートと、構成繊維が起毛した起毛領域を有する1枚以上の起毛シートとを備え、該繊維シート及び該起毛シートを重ね合わせて形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
前記吸収材料は、パルプ繊維を含まない請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の吸収体を備える吸収性物品。
【請求項8】
請求項5に記載の吸収体、該吸収体を挟持する液透過性の表面シート及び液難透過性の裏面シートを備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、1枚の前記繊維シートと複数枚の前記起毛シートとを備え、前記裏面シート側に該繊維シートを配し、該繊維シートの前記表面シート側の面上に複数枚の該起毛シートを配して、該繊維シート及び該起毛シートを重ね合わせて形成されている吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が生理用ナプキンである請求項7に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−5880(P2013−5880A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139731(P2011−139731)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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