吸収性物品
【課題】吸収性物品の隆起部を、身体の溝に沿って隙間無く当接させることができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】生理用ナプキン1は、縦長の本体部10と、この本体部10の肌側表面に設けられ、縦方向の中心軸に沿って延びる立体部30とを備え、吸収体である液吸収層20のうちの立体部30の下方に位置する領域を、例えば部分的に低密度にすることにより、可撓部が形成されている。この可撓部が立体部30の隆起方向に沿って隆起することによって、立体部30を身体の溝に沿って隙間無く当接させることができる。
【解決手段】生理用ナプキン1は、縦長の本体部10と、この本体部10の肌側表面に設けられ、縦方向の中心軸に沿って延びる立体部30とを備え、吸収体である液吸収層20のうちの立体部30の下方に位置する領域を、例えば部分的に低密度にすることにより、可撓部が形成されている。この可撓部が立体部30の隆起方向に沿って隆起することによって、立体部30を身体の溝に沿って隙間無く当接させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な構造を有し、身体の形状に合わせて変形可能な吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性性器から排泄される経血を吸収し、保持する女性用生理用品として、吸収性物品が用いられている。吸収性物品は、一般的に、液透過性の表面材と、液不透過性の裏面材と、これら表面材及び裏面材の間に設けられた吸収体と、を有する縦長の形状である。着用時には、吸収性物品の表面材側が使用者の肌面に接し、裏面材側が、使用者が着用する下着の面に接する。
【0003】
ところで、経血の漏れを防ぐためには、吸収性物品を、膣口、及び湾曲した臀部の溝の形状に合わせて隙間無く当接させねばならない。以上のような状況の下、種々の吸収性物品が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の吸収性物品は、液透過性の表面材、及び液保持性の吸収材を具備する縦長の上層部と、液不透過性の裏面シートを具備する下層部と、を備え、上層部は、長手方向の両端部から弾性部材を介して下層部と連結される。また、特許文献2にも、前記特許文献1と同等の構成を有する吸収性物品としての生理用ナプキンが提案されている。これらの提案の吸収性物品によれば、上層部の両端に設けた弾性部材の収縮応力により、上層部と使用者の肌とを、使用者の動きに追随して当接できる。
【0005】
特許文献3に記載の吸収性物品としての生理用ナプキンは、液不透過性の裏面材と吸収体とを有する帯状の本体と、この本体の一側面に、長手方向に沿って立体部が固定されている。この立体部は、本体の幅方向に沿った断面が略三角形であり、内部には弾性を有する吸収体が設けられている。この吸収性物品によれば、立体部に設けられた吸収体の弾性特性により、この立体部を、使用者の体の輪郭に合致するように当接できる。
【0006】
特許文献4に記載の吸収性物品は、吸収体を有する帯状の本体に、折り曲げ線が予め形成されている。この折り曲げ線は、本体の中心軸上の後方に設けられる。また、特許文献5に記載の吸収性物品は、吸収体を有する帯状の本体に、長手方向に沿った一対の圧縮溝を形成し、さらに、これらの圧縮溝の間に、上述の特許文献4と同等の折り曲げ線が形成されている。これら特許文献4及び5に記載の吸収性物品によれば、使用者の太腿による幅方向の圧縮力を受けると、本体は折り曲げ線に沿って折れ曲がり、したがって、本体の表面には、この折り目を頂部として、使用者の肌面側に対して凸状に突出した部分が形成される。このようにして、帯状の本体を、膣口及び臀部の溝の形状に合わせて当接できる。
【0007】
また、特許文献6に記載の吸収性物品には、本体の後端に向けて、幅方向の両端に広がるように第1脚及び第2脚に分割された吸収体を有し、これら第1脚及び第2脚の間の、幅方向中心付近には、長手方向に延びる弾性部材が設けることが開示されている。
【特許文献1】特開平11−104168号公報
【特許文献2】特開2000−83993号公報
【特許文献3】特表平11−500940号公報
【特許文献4】特許03534768号
【特許文献5】特開2004−208919号公報
【特許文献6】特表2004−514537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品は、吸収体を凹状に湾曲させた状態で使用者の身体に当接させているため、弾性部材は伸張した状態にある。また、例えば、使用者が仰向けの姿勢などを取った場合、吸収体の湾曲はさらに大きなものになり、したがって、弾性部材はさらに伸張される。このように、吸収体が過剰に湾曲した状態では、弾性部材はたるみ、上層部を当接させるための収縮応力は低下してしまう。また、特許文献2に記載の吸収性物品に関しても、同様の課題が挙げられる。
【0009】
また、特許文献3に記載の吸収性物品は、立体部は、幅方向に沿って略三角形の断面を有する立体形状であるため、本体が長手方向に沿って過剰に湾曲されると、立体部は座屈してしまい、したがって、立体部と身体との間に隙間が生じてしまう。
【0010】
特許文献4及び5に記載の吸収性物品においては、吸収体は幅方向に一律の材料構成となっているため、折り曲げ線によって本体の長手方向に山折りになった場合は、長手方向に沿って真っ直ぐの折り曲げ線を形成し、もし身体に沿わせようとした場合、折り目の頂部が、身体の湾曲状態に合わせて変形しようとした際、頂部部分の距離がその左右幅方向周辺部に比べ減少するため、過剰な長さ分が座屈してしまい、屈曲した部分を生じさせ身体との間に隙間を生じてしまう。
【0011】
また、臀部の溝には、左右の臀部の肉が会合した極端に幅の狭い部分があり、このような幅の狭い部分にも経血が流れる場合がある。しかしながら、このような幅の狭い部分に対して、上述の吸収体を折り曲げて形成した凸部は厚みがありすぎ、したがって、臀部の溝に過剰の抵抗を与えて、使用者に違和感を与えてしまう。また、吸収体の厚みにより、凸部の先端は丸みをおびた形状になるため、使用者の細い溝と合致できずに、隙間が生じてしまうおそれがあった。
【0012】
特許文献6に記載の吸収性物品においては、製品後端部分に設けられた第一脚と第二脚の間の、相対的に薄く剛性が低い部分の幅方向中心付近に設けられた弾性材の作用により、製品を長さ方向に製品使用面側に隆起を形成する。隆起の形状は第一脚と第二脚の間の角度と間の薄い部分の剛性、弾性部材の収縮応力と配置位置によって決定され、製品装着時においては、あたかも立体的な成形物のような状態となるが、吸収体を伸縮部材の応力によって収縮させて身体の溝に進入可能な隆起を形成した場合、隆起の頂部付近の長さ方向の距離が減少し、不均一なシワを生じ、経血の流れを防止できないばかりでなく、剛性の高い素材がシワになることにより、使用者に対して多大な違和感を与えることになりかねない。
【0013】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、身体の幅方向中心、使用者の陰唇から会陰部(後陰唇交連)、肛門、及び尾てい骨に至る部分のうち、少なくとも一部の身体の溝に当接する立体形状を有する立体部が、安定して身体に当接するように肌方向に隆起し、かつ、この立体部が、長さ方向に湾曲しても不均一で大きなシワを生じない吸収性物品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、立体部の下方に、この立体部に追随する可撓部を設けることにより、立体部を身体の溝に沿って隙間無く当接させ、かつ、本体が長手方向に湾曲しても立体部に皺が生じない吸収性物品を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0015】
(1) 液透過性の表面材、液不透過性の裏面材、並びに、これら表面材及び裏面材の間に設けられた吸収体を有する実質的に縦長の本体部と、前記本体部のうち前記表面材側に設けられ、前記本体部の長手方向の中心軸に沿って伸びる立体部と、を備える吸収性物品であって、前記立体部の前記裏面材側の下方に位置する領域には、前記立体部の隆起方向に沿って隆起可能な可撓部が形成されている吸収性物品。
【0016】
(1)の吸収性物品によれば、本体部に対し、幅方向に圧縮力が作用すると、可撓部は、立体部の隆起方向にそって隆起する。可撓部が隆起すると、この可撓部から表面材側に位置する立体部を、使用者の身体側へ当接させる応力が作用するので、立体部を安定して接触させ続けることができる。
【0017】
(2) 前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の目付け及び/又は厚みを、前記領域以外の部分より減じることにより形成される(1)記載の吸収性物品。
【0018】
(2)の吸収性物品は、吸収体の目付け及び/又は厚みを減じることにより、可撓部を形成したことを特徴とする。したがって、本体部に対し、幅方向に圧縮力が作用すると、可撓部は、より確実に隆起する。
【0019】
(3) 前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の一部にスリット、エンボス、抜き部より選択される少なくとも一つを形成してなる(1)記載の吸収性物品。
【0020】
(3)の吸収性物品は、吸収体の一部に、スリット、エンボス、及び抜き部より選択される少なくとも一つが形成されていることを特徴とする。吸収体に、スリット、エンボス、及び抜き部などの加工を施すことで、吸収体の剛性を部分的に変えることができる。したがって、可撓部が隆起する場合に、この隆起の頂部となる位置が決まりやすくなり、安定な変形ができる。また、吸収体として剛性が高く曲がりにくいものを用いたとしても、部分的に剛性を変えられるので、容易に変形できる。
【0021】
(4) 前記領域には、前記長手方向に沿って収縮可能な弾性部材が配置される(1)記載の吸収性物品。
【0022】
(4)の吸収性物品は、可撓部が形成された領域に、長手方向に沿って収縮可能な弾性部材が配置されていることを特徴とする。このような弾性部材を配置することにより、縦方向に湾曲させる収縮応力が、本体部及び立体部に作用する。したがって、本体部に幅方向に力が作用して、可撓部が隆起し頂部を形成することにより、縦方向への湾曲が困難になった可撓部に対して、弾性部材による収縮応力が作用して、可撓部の縦方向への湾曲を容易にすることができる。
【0023】
(5) 前記可撓部は、前記領域における前記吸収体を設けないことにより形成される(1)記載の吸収性物品。
【0024】
(5)の吸収性物品は、部分的に吸収体を設けないことにより、可撓部を形成することを特徴とする。したがって、吸収体が設けられた領域と比較して、可撓部の剛性を格段に低くできる。したがって、可撓部の変形を容易にできる。
【0025】
(6) 前記可撓部の幅方向の左右には、前記領域内に、前記長手方向に沿って、補強材を配置される請求項1記載の吸収性物品。
【0026】
(6)の吸収性物品によれば、補強材を、可撓部の左右に位置する領域に設けることにより、幅方向に作用する力に対して、補強材は、可撓部が隆起する際のきっかけとして作用する。したがって、立体部は、安定した形状で隆起する。
【0027】
(7) 前記可撓部の幅方向の長さは、前記立体部の幅方向の長さよりも長くなるように形成される(1)から(6)いずれか記載の吸収性物品。
【0028】
(7)の吸収性物品によれば、立体部の幅は、可撓部の幅よりも狭く形成されているので、本体部に幅方向の力が作用し、可撓部が隆起すると、立体部が本体部と接する領域は、略平らなまま隆起する。これにより、立体部は可撓部の変形の影響を受けることなく変形できる。
【0029】
(8) 前記可撓部の幅方向の長さは、使用者の尾てい骨が当接する尾てい骨該当位置に比べて、使用者の臀部が当接する臀部該当位置のほうが長くなるように形成される(1)から(7)いずれか記載の吸収性物品。
【0030】
(8)の吸収性物品によれば、可撓部の幅方向の長さを、使用者の尾てい骨が当接する位置よりも、使用者の臀部が当接する位置のほうが長くなるように形成した。したがって、幅方向に作用する力に対して、尾てい骨が当接する位置よりも、臀部が当接する位置のほうが高く隆起する。これにより、立体部を、身体の溝の深さに合わせて隙間無く当接できる。
【0031】
(9) 前記立体部の両側縁近傍で前記長手方向に沿って、前記吸収体を圧縮してなる圧縮溝が設けられている(1)から(8)いずれか記載の吸収性物品。
【0032】
(9)の吸収性物品によれば、圧縮溝を設けることにより、本体部の剛性が高くなる。したがって、本体部を縦方向に湾曲させる力が作用した場合に、この本体部の折れを発生させずに、縦方向に沿って均一な曲率で湾曲させることができる。
【0033】
(10) 前記本体部の裏面材側のうち、前記可撓部が位置する部分には、ズレ止め手段を設けない(1)から(9)いずれか記載の吸収性物品。
【0034】
(10)の吸収性物品によれば、本体部の裏面材側のうち、可撓部が位置する部分には、ズレ止め手段が設けられていないので、下着を着用することによって、可撓部の隆起が妨げられることはない。
【0035】
(11) 前記本体部の幅方向の圧縮力に対して、前記領域の曲げ剛性は、前記領域を除く部分の曲げ剛性よりも低い(1)から(10)いずれか記載の吸収性物品。
【0036】
(12) 前記領域の幅方向におけるガーレー試験機による曲げ剛性が、前記領域を除く部分の曲げ剛性の80%以下である(11)記載の吸収性物品。
【0037】
(11)、(12)の吸収性物品によれば、本体部に対し、幅方向に圧縮力が作用すると、曲げ剛性が低く設けられた可撓部が優先的に隆起する。具体的には、他の領域と比較して、曲げ剛性が80%以下であれば、好ましく隆起する。
【0038】
(13) 前記領域の前記長手方向の湾曲時距離減少率試験における距離の減少率が30%以下である(1)から(12)いずれか記載の吸収性物品。
【0039】
(13)の吸収性物品によれば、標準的な体型の女性の臀部の曲率に基づいて、収縮倍率が設計された立体部を、座屈させるおそれはない。
【0040】
(14) 前記可撓部が隆起を形成した際の圧縮剛性試験による20%圧縮時の剛性が0.1Nから2.0Nである(1)から(13)いずれか記載の吸収性物品。
【0041】
(14)の吸収性物品によれば、可撓部の圧縮剛性は、理想的な剛性を有する。具体的には、可撓部が理想的な剛性を有することにより、使用者に対して異物感や違和感を生じさせることはなく、また、一般的な下着による圧縮力に対して可撓部の高さ変動が生じるおそれもない。
【発明の効果】
【0042】
膣口該当位置から臀部溝にかけての一部に存在する立体部が製品装着時の湾曲状態においても製品本体から押し当てる力を効果的に受けることで、安定的な接触を保つことが出来、経血の流れや漏れを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては同一符号を付し、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0044】
<第1実施形態>
[生理用ナプキンの全体構成]
図1ないし図4を参照して、本実施形態に係る生理用ナプキン1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る吸収性物品としての生理用ナプキン1を示すものであり、外力が作用していない状態の外観を示す斜視図である。
図2は、生理用ナプキン1を平坦に展開した状態を示すものであり、本体部10及び立体部30の配置を示す平面図である。
図3は、図1中のIII−III線の断面を示すものであり、本体部10及び立体部30を含む破断斜視図である。
図4は、図1中のIII−III線の断面を示すものであり、立体部30を含む部分破断斜視図である。
【0045】
以下においては、生理用ナプキン1を構成する各要素の2つの表面のうち、身体に向く表面を「肌側表面」とし、反対側の表面を「着衣側表面」とする。また、生理用ナプキン1の長手方向を「縦方向」とし、この縦方向と直交する方向を「横方向」とする。各要素の寸法は、特に明記しない限り、縦方向に測定した寸法を「長さ寸法」とし、横方向に測定した寸法を「幅寸法」とする。
【0046】
図1及び図2に示すように、生理用ナプキン1は、縦長の本体部10と、この本体部10の肌側表面に設けられ、縦方向の中心軸に沿って延びる立体部30と、を備える。
【0047】
図3及び図4に示すように、本体部10は、着衣側表面に位置する液不透過性の裏面材としての裏面シート11と、この裏面シート11の上に設けられた吸収体としての液吸収層20と、この液吸収層20を覆う液透過性の表面材としての表面シート12と、肌側表面の横方向の両端部に位置する側部シート13とを備える。これらの各部材は、ホットメルト型接着剤により互いに接着されている。
【0048】
本体部10の縦方向の両端部には、曲線形状の前縁部15aと、この前縁部15aと同じく曲線形状の後縁部15bと、が形成されている。
【0049】
本体部10の横方向の両端部には、本体部10前方において、液吸収層20の両側端部22cよりも横方向に突出した前方フラップ部16と、この前方フラップ部16よりも後方において、横方向に突出した折り返しフラップ部17と、この折り返しフラップ部17よりもさらに後方において、横方向に突出した後方フラップ部18と、が形成されている。また、これら前方フラップ部16、折り返しフラップ部17、及び後方フラップ部18は、裏面シート11と側部シート13とを重ねてホットメルト型接着剤で互いに接合することにより形成されている。
【0050】
液吸収層20は、帯状の吸収体であり、単一のラップ材23で包まれた状態で、裏面シート11と、表面シート12及び側部シート13と、の間に挟まれ、液吸収層20の長手方向と本体部10の縦方向とを一致させて本体部10の略中央に設けられている。また、液吸収層20は、液吸収層用のホットメルト型接着剤により、裏面シート11及び表面シート12に接合されている。
【0051】
液吸収層20の縦方向の両端部には、曲線形状の前端部21aと、この前端部21aと同じく曲線形状の後端部21bと、が形成されている。液吸収層20の横方向の両端部には、それぞれが縦方向基準線Oyと平行な側端部22cが形成されている。ただし、液吸収層20の各端部21a,21b,22cの形状は、本実施形態に限られるものではない。また、液吸収層20は、前端部21aが本体部10の前縁部15aのやや後方に位置し、かつ、後端部21bが本体部10の後縁部15bのやや前方に位置するように設けられている。
【0052】
横方向の両側に位置する側部シート13の、互いに向き合う縁部14cは、液吸収層20の両側端部22cよりも内側に位置するように設けられている。この側部シート13を設けることにより、液吸収層20により吸収された経血が滲み出すことを防止できる。
【0053】
図1及び図2には、複数の基準線が示されている。このうち、縦方向基準線Oyは、本体部10の横方向の中心を示し、前縁部15aの略中央から後縁部15bの略中央へ縦方向に延びる基準線である。
【0054】
膣対向基準線X1は、互いに対向する折り返しフラップ部17の略中央の間を、縦方向基準線Oyと垂直な方向に延びる基準線である。膣対向基準線X1と縦方向基準線Oyとの交点が、膣口対向基準位置である。この膣口対向基準位置とは、生理用ナプキン1を下着に固着させた状態で股間部に装着するときに、膣の中心に対向する目安となる基準位置を示している。この目安は、生理用ナプキン1を肌側表面から見たときの全体形状や、肌側表面に形成されている圧縮溝19の形状などの、全体のデザインによって誘導されるものである。
【0055】
尾てい骨対向基準線X2は、液吸収層の後端部21bよりやや前方にて、縦方向基準線Oyと垂直な方向に延びる基準線である。尾てい骨対向基準線X2と縦方向基準線Oyとの交点が、尾てい骨対向基準位置である。この尾てい骨対向基準位置とは、上記の膣口対向基準位置と同様に、生理用ナプキン1を装着するときに、尾てい骨に対向する目安となる基準位置を示している。
【0056】
図3及び図4に示すように、立体部30は、柔軟な不織布で形成された外側シート34a及び内側シート34bが重ねられた積層シート34と、これら外側シート34aと内側シート34bとの間に挟まれた複数の弾性部材32と、を備え、この積層シート34の両端をホットメルト型接着材33で接合することにより形成された中空の筒状の部材である。
【0057】
弾性部材32は、伸張させた状態では収縮力が作用する線状の弾性体である。外側シート34aと内側シート34bとの間には、3本の弾性部材が、伸張された状態で、等間隔に配置されている。これら弾性部材32は、後述のように立体部30を本体部10に接合した場合に、本体部10の膣口対向基準位置から尾てい骨対向基準位置までの範囲で、立体部30の肌側表面の方向へ収縮応力が作用するように、弾性部材固定用ホットメルト型接着剤で外側シート34a及び内側シート34bに接合されている。
【0058】
このように形成された立体部30は、立体部30が延びる方向を縦方向基準線Oyに合わせて、本体部10の表面シート12の肌側表面に設けられている。生理用ナプキン1を平坦に展開した状態における立体部30の幅、すなわち、筒状の立体部30を折りたたんだ状態における立体部30の幅は、液吸収層20の幅と比較して狭くなるように形成されている。また、立体部30と表面シート12とは、ホットメルト型接着剤41aにより、立体部30の着衣側表面に設けられた固定領域31において接合されている。
【0059】
具体的には、この固定領域30は、前方固定領域31a、後方固定領域31b、中央固定領域31cの3つの領域に分割され、このうち、前方固定領域31aは、本体部10の前縁部15aから膣口対向基準位置のやや後方に位置する領域内に設けられ、中央固定領域31cは、前方固定領域31aの後端から尾てい骨対向基準位置に位置する領域内に設けられ、また、後方固定領域31bは、中央固定領域31cの後端から本体部10の後縁部15bに位置する領域内に設けられている。
【0060】
前方固定領域31a及び後方固定領域31bの幅はほぼ等しく、かつ、生理用ナプキン1を平坦に展開した状態における立体部30の幅と比較して、やや狭く設けられている。また、中央固定領域31cの幅は、これら前方固定領域31a及び後方固定領域31bの幅と比較して狭く、かつ、後述の可撓部25の幅よりも狭く設けられている。
【0061】
上記のように、立体部30と表面シート12とは、立体部30の固定領域31において、ホットメルト型接着剤41aにより接合されている。具体的には、各固定領域31a,31b,31cの領域内に、ホットメルト型接着材が縦方向基準線Oyの方向に帯状に塗工されており、これらの塗工された面で、立体部30は表面シート12に固定されている。このように立体部30を表面シート12に固定することにより、立体部30の中央固定領域31cに対応する部分、すなわち、立体部30の膣口対向基準位置付近から尾てい骨対向基準位置までの範囲に対応する部分は、自由に変形することが可能になる。
【0062】
また、上述のように、立体部30の膣口対向基準位置付近から尾てい骨対向基準位置までの範囲に対応する部分では、立体部30に設けられた弾性部材32の収縮応力が肌側表面の方向へ作用する。このため、立体部30の膣口対向基準位置付近から尾てい骨対向基準位置までの範囲に対応する部分は、肌側表面へ向けて隆起した形状となる。この立体部30の隆起の形状については、後に図5を参照して詳述する。
【0063】
図1ないし図3に示すように、生理用ナプキン1の肌側表面には、表面シート12と液吸収層20とを重ねた状態で、表面シート12の肌側表面から圧縮し、加熱した2本の圧縮溝19が形成されている。これら圧縮溝19は、液吸収層20の両側端部22c,22cからやや縦方向基準線Oyに近い位置に、縦方向基準線Oyと略平行に形成されている。
【0064】
このような圧縮溝19を設けることによって、本体部10の剛性が高まり、弾性部材32の収縮応力が本体部10に作用した場合に、この本体部10に折れを発生させずに、縦方向に沿って均一な曲率で湾曲させることができる。
【0065】
図3及び図4に示すように、裏面シート11の着衣側表面には、生理用ナプキン1を使用者の下着に固着するための感圧接着剤層42が、縦方向基準線Oyの左右両側において、縦方向基準線Oyと略平行に帯状に塗工されている。また、これら感圧接着剤層42は、後述の可撓部25が設けられた部分には、塗工されていない。
【0066】
本体部10の前縁部15aから膣対向基準線X1までの縦方向基準線Oyに沿った長さ寸法L1は、後方へ100mm以上200mm以下の範囲内で、好ましくは前縁部15aから後方へ100mm以上140mm以下の範囲内に位置している。本実施形態では、長さ寸法L1は約120mmである。
【0067】
本体部10の前縁部15aから後縁部15bへの、縦方向基準線Oyに沿った長さ寸法L1+L2は、少なくとも使用者の外性器の前端から、肛門位置付近を覆う必要があるため、280mm以上450mm以下であることが好ましい。本実施形態では、長さ寸法L1+L2は350mmである。
【0068】
液吸収層20の両側端部22cの間の幅寸法W1は、女性の身体形状、特に股間幅を考慮し、無理なく装着が可能な幅寸法であることが好ましい。本実施形態では、幅寸法W1は75mmである。
【0069】
[膣口対向基準位置と尾てい骨対向基準位置との間の構造]
図5ないし図7を参照して、本実施形態に係る生理用ナプキン1の、膣口対向基準位置と尾てい骨対向基準位置との間の構造について説明する。
図5は、図1中のVI−VI線の断面を示すものであり、本体部10及び立体部30を含む破断斜視図である。
図6は、図1中のVI−VI線の断面を示すものであり、生理用ナプキン1が縦方向に湾曲し、かつ、幅方向の圧縮力が作用した状態を示す破断斜視図である。
図7は、図6中の立体部30を取り除いた状態を示す破断斜視図である。
【0070】
図5に示すように、液吸収層20の中心部には、部分的に低密度にすることにより、可撓部25が形成されている。より詳細には、図2に示すように、液吸収層20のうち、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を低密度にすることにより、液吸収層20の中心部には、図2中肌側表面から見て帯状の可撓部25が形成される。
【0071】
図6及び図7に示すように、液吸収層20の可撓部25が設けられた部分は、液吸収層20のその他の部分よりも低密度であるので、両側から幅方向に中心へ向かう力に対して容易に屈曲する。生理用ナプキン1の装着時には、使用者の太腿や下着から、このような圧縮力が作用し、これにより、可撓部25は、図6中縦方向から見て三角形に屈曲し、本体部10及び立体部30を、使用者の身体側へ隆起させる。
【0072】
このように、可撓部25を設けることにより、生理用ナプキン1の装着時には、立体部25に、肌側表面の方向へ力が作用するので、したがって、立体部30が身体の溝に入り込み、立体部30と身体の溝との隙間が無くなる。
【0073】
表面シート12の可撓部25が設けられた部分のうち、中央固定領域31cと接する部分は、その他の部分よりも剛性が高く変形しにくい。本実施形態では、中央固定領域31cの幅は、可撓部25の幅よりも狭く形成されているので、図6及び図7に示すように、本体部10に幅方向の力が作用し、可撓部25が折れ曲がり、本体部10が隆起する場合、表面シート12の中央固定領域31cと接する領域は、略平らなまま隆起する。これにより、立体部30は可撓部25の変形の影響を受けることなく肌側表面へ隆起できる。
【0074】
また、図6及び図7に示すように、本体部10の肌側表面のうち、可撓部25が設けられた位置の幅方向左右には、上述のように圧縮溝19,19が設けられており、これにより、圧縮溝19が設けられた領域は、剛性が高くなる。したがって、本体部10に、幅方向の両側から中心へ圧縮力が作用すると、圧縮溝19は折れ曲がりのきっかけとして作用し、可撓部25は、図6中縦方向から見て、左右対称の三角形の断面形状で座屈し、本体部10及び立体部30を、使用者の身体側へ隆起させる。
【0075】
[可撓部の曲げ剛性]
上述のように、幅方向に力が作用した場合に、液吸収層20が可撓部25において優先的に屈曲するためには、液吸収層20の可撓部25が設けられた部分と、その他の部分(例えば、図5中の可撓部25の両側付近)とに、適度な曲げ剛性の差が必要である。より詳細には、ガーレー剛軟度試験に準拠した測定による液吸収層20の可撓部25の曲げ剛性値が、その他の部分(例えば、図5中の可撓部25の両側付近)の曲げ剛性値に対して、80%以下、より好ましくは60%以下である場合には、可撓部25が優先的に屈曲する。ここで、ガーレー剛軟度試験とは、紙パルプ技術協会が発行しているJ.TAPPI(JAPAN TAPPI)の「紙パルプ試験方法」NO.40−83に記載の「加重曲げ法による紙及び板紙のこわさ試験方法(ガーレー法)」のことである。
本実施形態の液吸収層20の曲げ剛性値を、ガーレー柔軟度試験機を用いて測定した結果、液吸収層20の可撓部25の曲げ剛性値は、その他の部分(例えば、図5中の可撓部25の両側付近)の曲げ剛性値に対して、40%の値であった。
【0076】
[構成素材の好ましい例]
第1実施形態の生理用ナプキン1の構成素材の好ましい例を説明する。
本体部10の着衣側表面を構成する裏面シート11は、目付量が23g/m2のポリエチレンフィルムである。表面シート12は、合成樹脂繊維を熱風で接合したスルーエア不織布であり、芯部がポリエステル樹脂で鞘部がポリエチレン樹脂で、繊度が2.2dtexの芯鞘型複合合成繊維で形成されている。側部シート13は、芯部がポリプロピレン樹脂で鞘部がポリエチレン樹脂で繊度が2.2dtexの複合合成繊維で形成されたスパンボンド不織布であり、例えば目付量が22g/m2である。液吸収層20は、針葉樹クラフトパルプと高吸水性ポリマーとが混合されたものであり、高吸水性ポリマーは、液吸収層20の重量の3%程度含まれている。液吸収層20の目付量は、可撓部25が形成された領域は、150g/m2程度であり、その他の領域は400g/m2程度である。この液吸収層20を包むラップ材23は、目付量が15g/m2程度のティッシュである。
【0077】
積層シート34を構成している外側シート34aと内側シート34bとは、例えば、共に芯部がポリエステル樹脂で鞘部がポリエチレン樹脂で、繊度が2.2dtexの芯鞘型複合合成繊維で形成された目付量が20g/m2程度のスルーエア不織布である。弾性部材32は、ポリウレタン弾性糸であり、繊度が1880dtexのものが使用される。
【0078】
[装着時の作用]
上記実施形態の生理用ナプキン1の装着時の作用について、図8ないし図13を参照して説明する。
図8は、外力が作用していない自由な状態の生理用ナプキン1を示す側面図である。
図9は、幅方向に圧縮力が作用した状態の生理用ナプキン1を示す側面図である。
図10は、図9中のIV−IV線の断面を示す概略図である。
図11は、図9中のV−V線の断面を示す概略図である。
図12は、図9中のVI−VI線の断面を示す概略図である。
図13は、図9中のVII−VII線の断面を示す概略図である。
【0079】
図8に示すように、生理用ナプキン1を身体に装着する前の状態では、生理用ナプキン1の本体部10は、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間で凹状に湾曲し、この範囲において、立体部30の頂部35は使用者の肌側へ隆起している。
【0080】
また、図9に示すように、生理用ナプキン1を身体に装着した状態では、使用者の太腿や下着から、幅方向に圧縮力が作用し、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間に設けられた可撓部25は座屈する。これにより、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間に位置する立体部30には、肌側表面の方向へ向かう力が作用し、立体部30は使用者の身体側へ隆起する。
【0081】
図10に示すように、膣対向基準線X1の付近では、立体部30はほぼ平坦な状態でその高さが低くなっているため、立体部30は膣口に違和感無く当接できるようになる。また、図11ないし図13に示すように、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間では、立体部30が高く立ち上がっており、しかも頂部35に向けて幅寸法が除々に小さくなる形状であるため、この部分で立体部30が肛門付近の溝内及び臀裂部の溝内に抵抗無く入り込むことができる。また、膣対向基準線X1と尾てい骨基準線X2との中点において立体部30の立ち上がりが最も大きくなっている部分が臀裂部の最深部に入り込むようになる。
【0082】
[変形例1]
図14を参照して、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン1aについて説明する。図14は、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン1aを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0083】
図14に示すように、液吸収層20aの中心部には、部分的に他の部分とは異なる剛性の低い素材で置き換えることにより、可撓部25aが形成されている。より詳細には、図14に示すように、液吸収層20aのうち、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を、剛性の低い素材で置き換えることにより、液吸収層20aの中心部には、肌側表面から見て帯状の可撓部25aが形成される。具体的には、液吸収層20aの可撓部25aの素材には、目付量が200g/m2で、化繊配合率が30%のエアレイドパルプとし、液吸収層20aのその他の部位は、目付量が400g/m2のフラップパルプで構成する。このように、可撓部25aを剛性の低い素材で設けたため、上述の効果と同等の効果を奏することができる。
【0084】
[変形例2]
図15を参照して、本実施形態の変形例2に係る生理用ナプキン1bについて説明する。図15は、本実施形態の変形例2に係る生理用ナプキン1bを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0085】
図15に示すように、液吸収層20の表面のうち、可撓部25の左右に位置する領域には、縦方向に延びる補強材27が、さらに設けられている。補強材27の材質としては、繊度が2.2dtex以上10.0dtex以下の範囲内のポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル繊維からなる不織布(目付け80から200g/m2相当)に熱エンボス加工を施し、厚みを0.5〜2.0mmに圧縮した素材や、50〜200g/m2のエアレイドパルプ(化繊配合率30〜70%)を同様に熱エンボス処理したものなどが好ましい。
【0086】
このような補強材27を、可撓部25の左右に位置する領域に設けることにより、幅方向に作用する力に対して、補強材27は、可撓部25が隆起する際のきっかけとして作用する。したがって、可撓部25は、安定した形状で隆起する。
【0087】
<第2実施形態>
図16を参照して、本発明の第2実施形態に係る生理用ナプキン101について説明する。本実施形態では、液吸収層120に形成された可撓部125の構造が第1実施形態と異なる。
【0088】
図16は、本発明の第2実施形態に係る生理用ナプキン101を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0089】
図16に示すように、液吸収層120の中心部には、部分的に低密度にすることにより、可撓部125が形成されている。より詳細には、図16に示すように、液吸収層20のうち、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を、幅方向中心に向かうにしたがい低密度にすることにより、液吸収層120の中心部には、帯状の可撓部125が形成される。
【0090】
具体的には、フラッフパルプで構成された液吸収層120のうち、可撓部125が形成された領域の幅方向の中心は厚みが5mmで、目付量が150g/m2としたのに対し、その他の領域は、厚みが7mmで、目付量が450g/m2とした。
【0091】
このようにして、液吸収層120を、幅方向の中心に向かうにしたがい低密度にして、可撓部125を形成することにより、可撓部125の剛性は、幅方向の中心へ向かうにしたがい低くなる。したがって、本体部110は、幅方向の両側から中心に作用する力に対して、縦方向から見て、左右対称の三角形の断面形状で容易に座屈する。
【0092】
<第3実施形態>
図17ないし図22を参照して、本発明の第3実施形態に係る生理用ナプキン201について説明する。本実施形態では、可撓部225の構造が第1実施形態と異なる。
【0093】
図17は、本発明の第3実施形態に係る生理用ナプキン201を、平坦に展開した状態を示す平面図である。
図18は、図17中のVIII−VIII線の断面を示すものであり、液吸収層220の可撓部225の部分破断斜視図である。
図19は、液吸収層220aを示す平面図である。
図20は、液吸収層220bを示す平面図である。
図21は、液吸収層220cを示す平面図である。
図22は、液吸収層220dを示す平面図である。
【0094】
図17及び図18に示すように、本実施形態の液吸収層220には、第1実施形態の液吸収層20と同様に、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を低密度に形成し、さらに、この低密度の領域に複数のスリット226を刻設することにより、可撓部225が形成されている。具体的には、これらのスリット226は、幅方向に延びる切込みを、縦方向に沿って間欠的に設けられ、また、これらスリット226の幅方向の中心には、肌側表面から見てひし形の形状の抜き部227が形成されている。
【0095】
このように、可撓部225を構成している素材の一部に、間欠的にスリット226及び抜き部227を設けることで、液吸収層220に、目付の高いエアレイドパルプなどの曲げ剛性が高く曲がりにくい素材を用いた場合であっても、幅方向に作用する力に対して容易に隆起させることができる。また、このように隆起させた状態で縦方向に湾曲させた場合であっても、各スリット226に抜き部227が形成されているので、可撓部225に皺が寄りにくく、したがって、容易に湾曲させることができる。
【0096】
また、図22に示すように、縦方向に延びるスリット226dを刻設してもよく、このようにすれば、幅方向に作用する力に対して、このスリット226dが刻設された位置を頂部として隆起し易くなるため、可撓部225dを安定して変形させることができる。
【0097】
液吸収層220に刻設するスリット及び抜き部のパターンは、上述の図17及び図18に示されるようなパターンに限られるものではない。また、スリット及び抜き部に限らず、エンボス加工を施してもよく、液吸収層の素材の座屈強度を減少させる手段であればよい。例えば、図19ないし図22に示されたようなパターンのスリット、抜き部、及びエンボス加工を施しても、上述の効果と同等の効果を奏することができる。
【0098】
<第4実施形態>
図23および図24を参照して、本発明の第4実施形態に係る生理用ナプキン301aについて説明する。本実施形態では、立体部330aの構造が第1実施形態と異なる。
【0099】
図23は、本発明の第4実施形態に係る生理用ナプキン301aを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
図24は、図23中の立体部330aのみを示した部分破断斜視図である。
【0100】
図23及び図24に示すように、立体部330aは、柔軟な不織布で形成された外側シート34a及び内側シート34bが重ねられた積層シート34と、これら外側シート34aと内側シート34bとの間に挟まれた複数の弾性部材32及び固定領域用弾性部材337aと、を備え、この積層シート34の両端をホットメルト型接着材33で接合することにより形成された中空の筒状の部材である。
【0101】
固定領域用弾性部材337aは、外側シート34aと内側シート34bとの間に、伸張した状態で複数配置されている。これら固定領域用弾性部材337aは、立体部330aを本体部10に接合した場合に、可撓部25が形成された部分の上層に位置するようにして、外側シート34aと内側シート34bとの間に配置されている。
【0102】
このような固定領域用弾性部材337aの素材に、本実施形態では、繊度が1880dtexのポリウレタン弾性糸を用いた。また、立体部330aの肌側に位置する弾性部材32と、立体部330aの中央固定領域31c側に位置する固定領域用弾性部材337aとは、それぞれ異なる伸張倍率を有することが好ましく、具体的には、本実施形態では、弾性部材32の伸縮倍率を1.5倍であるのに対して、固定領域用弾性部材337aの伸張倍率を1.35倍とした。
【0103】
このように固定領域用弾性部材337aを設けることにより、縦方向に湾曲させる収縮応力が、本体部10及び立体部330aに作用する。したがって、幅方向に力が作用して可撓部25が座屈し頂部を形成することにより、縦方向への湾曲が困難になった可撓部25に対して、上述のような固定領域用弾性部材337aの収縮応力が作用して、可撓部25の縦方向への湾曲を容易にすることができる。
【0104】
[変形例1]
図25及び図26を参照して、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン301bについて説明する。
【0105】
図25は、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン301bを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
図26は、図25中の立体部30のみを示した部分破断斜視図である。
【0106】
図25及び図26に示すように、表面シート12のうち、立体部30の中央固定領域31cと接する部分には、複数の固定領域用弾性部材337bが、縦方向に伸張した状態で設けられている。具体的には、2本の固定領域用弾性部材337bが、表面シート12の内面から、固定シート338bにより固定されている。
【0107】
このように固定領域用弾性部材337bを設けることにより、縦方向に湾曲させる収縮応力が、本体部10及び立体部30に作用するので、上述の第4実施形態に係る生理用ナプキン301aによる効果と同等の効果を奏することができる。
【0108】
<第5実施形態>
図27を参照して、本発明の第5実施形態に係る生理用ナプキン401について説明する。本実施形態では、立体部430を設ける位置が第1実施形態と異なる。
【0109】
図27は、本発明の第5実施形態に係る生理用ナプキン401を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0110】
図27に示すように、立体部430は、表面シート412と液吸収層20との間に、立体部430の中央固定領域31cが液吸収層20の可撓部25に含まれるようにして、設けられている。また、液吸収層20は、ラップ材23で包まれており、立体部30の各固定領域31a,31b,31cは、このラップ材23に、ホットメルト型接着剤で接合されている。また、立体部430の変形を容易にするために、表面シート412と液吸収層20との間には、圧縮溝は形成されていない。
【0111】
なお、立体部430は、表面シート412の下層に設けられているので、立体部430を構成する外側シート34a及び内側シート34bに、吸収性を有する素材を用いてもよい。具体的には、目付量が60g/m2で、バインダー含有量が30%のエアレイドパルプなどの吸収性の素材を用いるのが好ましい。このようにすることで、液体の連通性の高い、吸収力に優れた構成にできる。
【0112】
このように、立体部430を表面シート412の下層に設けることにより、生理用ナプキン401の肌側表面には、立体部430と本体部410との界面が無くなるので、生理用ナプキン401を滑らかな立体形状にできる。また、このように滑らかな立体形状にすることにより、使用者の身体と生理用ナプキン401との間に隙間が生じにくくなる。
【0113】
<第6実施形態>
図28を参照して、本発明の第6実施形態に係る生理用ナプキン501について説明する。本実施形態では、立体部530の構造が第1実施形態と異なる。
【0114】
図28は、本発明の第6実施形態に係る生理用ナプキン501を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0115】
図28に示すように、立体部530は、本体部510と一体に形成されている。
積層シート534は、表面シート512及び内側シート34bを重ねて形成される。また、これら表面シート512と内側シート34bとの間には、複数の弾性部材32が伸張した状態で設けられている。また、この積層シート534の幅方向の両端は、液吸収層20の幅方向の両端に固定される。また、液吸収層20の可撓部25が設けられた位置では、この積層シート534を筒状に折ることにより、立体部530が形成されている。
【0116】
このように、立体部530と本体部510とを一体に設けることにより、生理用ナプキン501の肌側表面には、立体部530と本体部510との界面が無くなるので、生理用ナプキン501を滑らかな立体形状にできる。また、このように滑らかな立体形状にすることにより、使用者の身体と生理用ナプキン501との間に隙間が生じにくくなる。
【0117】
本実施形態の生理用ナプキン501によれば、上述の第5実施形態に係る生理用ナプキン401と同等の効果を奏することができる。
【0118】
<第7実施形態>
図29を参照して、本発明の第7実施形態に係る生理用ナプキン601について説明する。本実施形態では、立体部30と表面シート12との間の構造が第1実施形態と異なる。
【0119】
図29は、本発明の第7実施形態に係る生理用ナプキン601を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0120】
図29に示すように、立体部30と表面シート12との間は、離間されている。具体的には、立体部30の各固定領域31a,31b,31cのうち、前方固定領域31a及び後方固定領域31bにのみホットメルト型接着剤が塗工されており、これらの塗工された面でのみ、立体部30は表面シート12に接合されている。すなわち、立体部30の中央固定領域31cと表面シート12との間は離間されている。
【0121】
このように、立体部30と表面シート12との間を離間させることにより、立体部30の離間された部分は遊動できるので、使用者の身体と生理用ナプキン601との相対的な位置の変化が生じても、立体部30を使用者の身体の同じ位置に当接させ続けることができる。
【0122】
<第8実施形態>
図30及び図31を参照して、本発明の第8実施形態に係る生理用ナプキン701a,701bについて説明する。本実施形態では、可撓部725aの形状が第1実施形態と異なる。
【0123】
図30は、本発明の第8実施形態に係る生理用ナプキン701aを、平坦に展開した状態を示す平面図である。
図31は、生理用ナプキン701bを、平坦に展開した状態を示す平面図である。
【0124】
図30に示すように、液吸収層720aには、縦方向に沿って、幅が一様でない可撓部725aが形成されている。具体的には、この可撓部725aの前方部分は、膣口対向基準位置のやや後方にて、幅が最大になるように形成され、また、可撓部725aの後方部分は、中央固定領域31cの幅よりもやや広い幅で形成されている。
【0125】
このように、可撓部725aの幅を縦方向に沿って変えることにより、可撓部725aの各部分は、幅方向に作用する力に対して異なった高さで隆起する。具体的には、幅方向に作用する力に対して、可撓部725aのうち膣口対向基準位置のやや後方では、可撓部725aの幅に応じて高く隆起し、可撓部725aのうち尾てい骨対向基準位置のやや前方では、可撓部725aの幅に応じて低く隆起する。特に、膣口対向基準位置のやや後方では、使用者の身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れやすく、また、尾てい骨対向基準位置のやや前方では、身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れにくいので、以上のように、可撓部725aの幅を縦方向に沿って変えることにより、生理用ナプキン701aの立体部30を、身体の溝の形状に合わせて隙間無く当接できる。
【0126】
特に、膣口対向基準位置の後方10mm以上100mm以下の範囲内においては、使用者の身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れやすいため、可撓部725aの幅を広く形成し、また、膣口対向基準位置の後方140mm以上160mm以下の範囲内においては、身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れにくいため、可撓部725aの幅を狭く形成することが好ましい。
【0127】
また、可撓部の形状は、上述の図30に示された形状に限らない。例えば、図31に示すように、可撓部725bを、尾てい骨対向基準位置から膣口対向基準位置へ向かうにしたがい、幅が広くなるように形成してもよい。このような可撓部725bが形成された液吸収層720bを有する生理用ナプキン701bであっても、上述の生理用ナプキン701aによる効果と同等の効果を奏することができる。
【0128】
<第9実施形態>
図32及び図33を参照して、本発明の第9実施形態に係る生理用ナプキン801について説明する。本実施形態では、液吸収層820の構造が第1実施形態と異なる。
【0129】
図32は、本発明の第9実施形態に係る生理用ナプキン801を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
図33は、図32中の液吸収層820のみを示した部分破断斜視図である。
【0130】
図32及び図33に示すように、液吸収層820の中心部には、部分的に切り抜くことにより、可撓部825が形成されている。より詳細には、図30及び31に示すように、液吸収層820のうち、中央固定領域が位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を、切り抜くことにより、液吸収層820の中心部には、肌側表面から見て帯状の可撓部825が形成される。
【0131】
液吸収層820は、ラップ材823で包まれた状態で、裏面シート11と、表面シート12及び側部シート13と、の間に挟まれ、液吸収層820の長手方向と本体部810の縦方向とを一致させて、本体部810の略中央に設けられている。
【0132】
具体的には、幅方向に力が作用した場合に、可撓部825が隆起形状を維持できるように、ラップ材823には、やや座屈強度が高い素材である繊度5.5dtex、ポリエチレン、ポリプロピレン繊維からなる40g/m2の不織布スルーエア不織布や、60g/m2の化繊率30〜70%のエアレイドパルプなどを用いることが好ましい。
【0133】
液吸収層820を、部分的に切り抜くことにより、可撓部825を形成したので、液吸収層820の他の部分と比較して、剛性を格段に低くできる。したがって、液吸収層820の可撓部825における変形を容易にできる。
【0134】
<試験例1>
試験例1では、表面シート、液吸収層、裏面シートに適した素材を決定するための試験として、湾曲時距離減少試験を行う。この湾曲時距離減少試験は、後述の頂部の高さ、及び距離減少率の2つの量の測定に基づく。
【0135】
図34ないし図36を参照して、湾曲時距離減少試験について説明する。
図34は、サンプル80の斜視図である。
【0136】
図34に示すように、サンプル80は、直方体形状の試験用台紙82と、この試験用台紙82に取り付けられたサンプルの試験片81と、からなる。
【0137】
サンプルの試験片81は、表面シートと、可撓部が形成された液吸収層と、裏面シートとを、5g/m2のゴム系ホットメルト型接着剤で層状に接合し、これを、可撓部が略中央に位置するように、縦方向が100mm、横方向が60mmの長さの直方体形状に切り取って作成される。
【0138】
試験用台紙82は、縦方向が120mm、横方向が60mmの長さの直方体形状の厚紙であり、目付けは310g/m2である。試験用台紙82の幅方向の両端から15mmの位置には、縦方向に沿って2つの基準線X3,X4が記されている。
【0139】
図34に示すように、サンプル80は、サンプルの試験片81を幅方向に屈曲させた状態で、その幅方向の両端を試験用台紙82の2つの基準線X3,X4に合わせて取り付けて作成される。
【0140】
図35は、サンプル80を、縦方向から見た図である。上述の頂部の高さは、図35に示すように、サンプルの試験片81の頂部83から、試験用台紙82へ垂下した線の長さに対応する。
【0141】
図36は、サンプル80を、測定台90に固定した状態を示す側面図である。測定台90は、身体の湾曲率を模型化したものであり、半径が110mmの半円弧状の湾曲面が形成された台である。試験例1では、上述の距離減少率は、この測定台90を用いて測定する。
【0142】
幅方向に力が作用し、可撓部が隆起を形成した状態で、縦方向に沿って湾曲させた場合、隆起により形成された頂部83の縦方向の長さは、平坦にした状態の長さと比較して短くなる。距離減少率とは、このように、湾曲した状態での頂部の長さに対する、平坦にした状態での頂部の長さの割合のことをさす。
【0143】
距離減少率の測定は、試験例1では、以下の手順で行われる。まず、サンプル80を、その縦方向と測定台90の湾曲方向とをそろえた状態で測定台90に固定する。このように、湾曲に沿って固定されたサンプル80の頂部には、皺が形成される。
【0144】
図36に示すように、固定されたサンプル80の頂部83において、皺が形成された部分を含むように、前後方向の任意の位置において、直線距離で20mmに印をつける。次に、サンプル80を、平坦な台に固定し、サンプル80が湾曲していない状態で、印間の距離を測定する。このような測定を、各サンプルに対し5回ずつ測定する。
【0145】
このようにして測定した湾曲時の印間の距離、すなわち湾曲した状態の頂部の長さを、平坦な状態での印間の距離、すなわち平坦にした状態での頂部の長さで割ることにより、距離減少率を得ることができる。
【0146】
また、試験例1では、湾曲時距離減少試験を実施するサンプルとして、サンプル1ないしサンプル5を作成し、これらのサンプルに関して測定を行った。以下において、サンプル1ないしサンプル5の試験片を構成する素材について説明する。
【0147】
サンプル1の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として25g/m2のスルーエア不織布を用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0148】
サンプル2の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として60g/m2のエアレイドパルプを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0149】
サンプル3の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として、200g/m2のフラッフパルプを15g/m2のティッシュで被覆したものを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0150】
サンプル4の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として、50g/m2のエアレイドパルプを4枚重ね、これを15g/m2のティッシュで被覆したものを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0151】
サンプル5の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として、600g/m2のフラッフパルプを15g/m2のティッシュで被覆したものを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0152】
<試験例1の評価>
上述のサンプル1ないしサンプル5のそれぞれについて、上述の湾曲時距離減少試験を行い、各サンプルの頂部の高さ、及び皺発生部の距離減少率について測定した。この測定結果を表1に示す。なお、表1中、仮想距離減少率とは、頂部の高さをh(mm)とすると、仮想距離減少率=100−{(110−h)/110}(%)、で表される値である。
【0153】
また、測定の結果、各サンプルは、2つの判定基準を満たしているか否かに応じて、生理用ナプキンに適した素材であるか否かの評価が行われる。2つの判断基準とは、距離減少率が30%以下であるか否か、及び、距離減少率が仮想距離減少率を下回るか否か、であり、両判断基準を満たしている場合にのみ、サンプルの素材が生理用ナプキンに適したものであると評価している。
【0154】
上記判断基準のうち、距離減少率が30%以下であるか否かという基準は、立体部の物性に基づいている。具体的には、距離減少率が30%以上である場合には、標準的な体型の女性の臀部の曲率に基づいて収縮倍率が設計された立体部では、座屈するおそれがある。また、距離減少率が仮想距離減少率を上回る場合は、可撓部は、身体の曲率に合わない程大きく湾曲するため、立体部が身体に沿わなくなってしまう。以上のような理由により、判断基準は設けられている。
【0155】
【表1】
【0156】
測定の結果、サンプル2、サンプル3、及びサンプル5は、距離減少率が30%以下で、かつ、距離減少率が仮想距離減少率を下回るという結果が得られた。したがって、湾曲時の頂部の距離減少率の観点からは、サンプル2、サンプル3、サンプル5を構成する素材は、生理用ナプキンの表面シート、液吸収層、及び裏面シートとして、適した素材であるといえる。
【0157】
<試験例2>
試験例2では、可撓部が隆起を形成した際の圧縮剛性試験とその結果について説明する。具体的には、この圧縮剛性試験では、可撓部の隆起に対する圧縮剛性の測定を行う。なお、測定対象には、上述の試験例1で用いられたサンプル1ないしサンプル5と同じものを用いる。
【0158】
圧縮剛性の測定には、測定台と測定用端子を備える圧縮試験機を用いる。具体的には、この圧縮試験機は、測定台に載置された対象物に、測定用端子を圧接(圧縮)させることにより、応力を測定するものである。
【0159】
圧縮剛性の測定は、試験例2では、以下の手順で行われる。まず、サンプル80の頂部の高さを測定する。次いで、このサンプル80を、隆起した可撓部を測定端子に向けて、測定台の上に載置する。そして、測定端子を、サンプル中央の隆起に向けて20mm/minの速度で圧接を開始し、可撓部の隆起の高さの変化に応じた応力を測定する。また、この測定では、測定端子に加重が加わった時点を基準位置として、事前に測定された頂部の高さに対して、可撓部の隆起の高さが約20%の位置における加重(応力)を測定する。また、この測定は5回繰返す。
【0160】
<試験例2の評価>
試験例1で用いられたサンプル1ないしサンプル5の圧縮剛性の測定結果を表2に示す。
【0161】
また、測定の結果、各サンプルは、可撓部の隆起を20%に圧縮したときにおける荷重(表2中の20%圧縮時の荷重)が0.1N以上2.0N以下の範囲内であるか否かに応じて、生理用ナプキンに適した素材であるか否かの評価が行われる。20%圧縮時の荷重が0.1Nより小さい場合は、可撓部の圧縮剛性が小さすぎて、一般的な下着による圧縮力に対して、可撓部の高さの変動が生じるおそれがある。また、20%圧縮時の荷重が2.0Nより大きい場合は、可撓部の圧縮剛性が大きすぎて、使用者に対して異物感や違和感を生じさせてしまう。
【0162】
【表2】
【0163】
測定の結果、サンプル2、サンプル3、及びサンプル4は、20%圧縮時の荷重が0.1N以上2.0N以下の範囲内にあるという結果が得られた。したがって、可撓部の圧縮剛性の観点からは、サンプル2、サンプル3、サンプル4を構成する素材は、生理用ナプキンの表面シート、液吸収層、及び裏面シートとして、適した素材であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生理用ナプキンの外観を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る生理用ナプキンを平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図3】図1中のIII−III線の破断斜視図である。
【図4】図1中のIII−III線の部分破断斜視図である。
【図5】図1中のVI−VI線の破断斜視図である。
【図6】図1中のVI−VI線の破断斜視図である。
【図7】図6中の立体部を取り除いた状態を示す破断斜視図である。
【図8】外力が作用していない自由な状態の生理用ナプキンを示す側面図である。
【図9】幅方向の外力が作用した状態の生理用ナプキンを示す側面図である。
【図10】図9中のIV−IV線の断面を示す概略図である。
【図11】図9中のV−V線の断面を示す概略図である。
【図12】図9中のVI−VI線の断面を示す概略図である。
【図13】図9中のVII−VII線の断面を示す概略図である。
【図14】第1実施形態の変形例1に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図15】第1実施形態の変形例2に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図16】第2実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図17】第3実施形態に係る生理用ナプキンを平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図18】図17中のVIII−VIII線の断面を示す部分破断斜視図である。
【図19】液吸収層を示す平面図である。
【図20】液吸収層を示す平面図である。
【図21】液吸収層を示す平面図である。
【図22】液吸収層を示す平面図である。
【図23】第4実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図24】図23中の立体部のみを示した部分破断斜視図である。
【図25】第4実施形態の変形例1に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図26】図25中の立体部のみを示した部分破断斜視図である。
【図27】第5実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図28】第6実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図29】第7実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図30】第8実施形態に係る生理用ナプキンを平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図31】生理用ナプキンを、平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図32】第9実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図33】図32中の液吸収層を示した部分破断斜視図である。
【図34】試験例に用いたサンプルの斜視図である。
【図35】試験例に用いたサンプルを縦方向から見た図である。
【図36】試験例に用いたサンプルを測定台に固定した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0165】
1,1a,1b,101,201,301a,301b,401 生理用ナプキン
501,601,701a,701b,801 生理用ナプキン
10,110,410,510,810 本体部
11 裏面シート
12,412,512 表面シート
19 圧縮溝
20,20a,120 液吸収層
25,25a,125,225,225d,725a 可撓部
30,330,330a,430 立体部
337a,337b 固定領域用弾性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的な構造を有し、身体の形状に合わせて変形可能な吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、女性性器から排泄される経血を吸収し、保持する女性用生理用品として、吸収性物品が用いられている。吸収性物品は、一般的に、液透過性の表面材と、液不透過性の裏面材と、これら表面材及び裏面材の間に設けられた吸収体と、を有する縦長の形状である。着用時には、吸収性物品の表面材側が使用者の肌面に接し、裏面材側が、使用者が着用する下着の面に接する。
【0003】
ところで、経血の漏れを防ぐためには、吸収性物品を、膣口、及び湾曲した臀部の溝の形状に合わせて隙間無く当接させねばならない。以上のような状況の下、種々の吸収性物品が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の吸収性物品は、液透過性の表面材、及び液保持性の吸収材を具備する縦長の上層部と、液不透過性の裏面シートを具備する下層部と、を備え、上層部は、長手方向の両端部から弾性部材を介して下層部と連結される。また、特許文献2にも、前記特許文献1と同等の構成を有する吸収性物品としての生理用ナプキンが提案されている。これらの提案の吸収性物品によれば、上層部の両端に設けた弾性部材の収縮応力により、上層部と使用者の肌とを、使用者の動きに追随して当接できる。
【0005】
特許文献3に記載の吸収性物品としての生理用ナプキンは、液不透過性の裏面材と吸収体とを有する帯状の本体と、この本体の一側面に、長手方向に沿って立体部が固定されている。この立体部は、本体の幅方向に沿った断面が略三角形であり、内部には弾性を有する吸収体が設けられている。この吸収性物品によれば、立体部に設けられた吸収体の弾性特性により、この立体部を、使用者の体の輪郭に合致するように当接できる。
【0006】
特許文献4に記載の吸収性物品は、吸収体を有する帯状の本体に、折り曲げ線が予め形成されている。この折り曲げ線は、本体の中心軸上の後方に設けられる。また、特許文献5に記載の吸収性物品は、吸収体を有する帯状の本体に、長手方向に沿った一対の圧縮溝を形成し、さらに、これらの圧縮溝の間に、上述の特許文献4と同等の折り曲げ線が形成されている。これら特許文献4及び5に記載の吸収性物品によれば、使用者の太腿による幅方向の圧縮力を受けると、本体は折り曲げ線に沿って折れ曲がり、したがって、本体の表面には、この折り目を頂部として、使用者の肌面側に対して凸状に突出した部分が形成される。このようにして、帯状の本体を、膣口及び臀部の溝の形状に合わせて当接できる。
【0007】
また、特許文献6に記載の吸収性物品には、本体の後端に向けて、幅方向の両端に広がるように第1脚及び第2脚に分割された吸収体を有し、これら第1脚及び第2脚の間の、幅方向中心付近には、長手方向に延びる弾性部材が設けることが開示されている。
【特許文献1】特開平11−104168号公報
【特許文献2】特開2000−83993号公報
【特許文献3】特表平11−500940号公報
【特許文献4】特許03534768号
【特許文献5】特開2004−208919号公報
【特許文献6】特表2004−514537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品は、吸収体を凹状に湾曲させた状態で使用者の身体に当接させているため、弾性部材は伸張した状態にある。また、例えば、使用者が仰向けの姿勢などを取った場合、吸収体の湾曲はさらに大きなものになり、したがって、弾性部材はさらに伸張される。このように、吸収体が過剰に湾曲した状態では、弾性部材はたるみ、上層部を当接させるための収縮応力は低下してしまう。また、特許文献2に記載の吸収性物品に関しても、同様の課題が挙げられる。
【0009】
また、特許文献3に記載の吸収性物品は、立体部は、幅方向に沿って略三角形の断面を有する立体形状であるため、本体が長手方向に沿って過剰に湾曲されると、立体部は座屈してしまい、したがって、立体部と身体との間に隙間が生じてしまう。
【0010】
特許文献4及び5に記載の吸収性物品においては、吸収体は幅方向に一律の材料構成となっているため、折り曲げ線によって本体の長手方向に山折りになった場合は、長手方向に沿って真っ直ぐの折り曲げ線を形成し、もし身体に沿わせようとした場合、折り目の頂部が、身体の湾曲状態に合わせて変形しようとした際、頂部部分の距離がその左右幅方向周辺部に比べ減少するため、過剰な長さ分が座屈してしまい、屈曲した部分を生じさせ身体との間に隙間を生じてしまう。
【0011】
また、臀部の溝には、左右の臀部の肉が会合した極端に幅の狭い部分があり、このような幅の狭い部分にも経血が流れる場合がある。しかしながら、このような幅の狭い部分に対して、上述の吸収体を折り曲げて形成した凸部は厚みがありすぎ、したがって、臀部の溝に過剰の抵抗を与えて、使用者に違和感を与えてしまう。また、吸収体の厚みにより、凸部の先端は丸みをおびた形状になるため、使用者の細い溝と合致できずに、隙間が生じてしまうおそれがあった。
【0012】
特許文献6に記載の吸収性物品においては、製品後端部分に設けられた第一脚と第二脚の間の、相対的に薄く剛性が低い部分の幅方向中心付近に設けられた弾性材の作用により、製品を長さ方向に製品使用面側に隆起を形成する。隆起の形状は第一脚と第二脚の間の角度と間の薄い部分の剛性、弾性部材の収縮応力と配置位置によって決定され、製品装着時においては、あたかも立体的な成形物のような状態となるが、吸収体を伸縮部材の応力によって収縮させて身体の溝に進入可能な隆起を形成した場合、隆起の頂部付近の長さ方向の距離が減少し、不均一なシワを生じ、経血の流れを防止できないばかりでなく、剛性の高い素材がシワになることにより、使用者に対して多大な違和感を与えることになりかねない。
【0013】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、身体の幅方向中心、使用者の陰唇から会陰部(後陰唇交連)、肛門、及び尾てい骨に至る部分のうち、少なくとも一部の身体の溝に当接する立体形状を有する立体部が、安定して身体に当接するように肌方向に隆起し、かつ、この立体部が、長さ方向に湾曲しても不均一で大きなシワを生じない吸収性物品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、立体部の下方に、この立体部に追随する可撓部を設けることにより、立体部を身体の溝に沿って隙間無く当接させ、かつ、本体が長手方向に湾曲しても立体部に皺が生じない吸収性物品を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0015】
(1) 液透過性の表面材、液不透過性の裏面材、並びに、これら表面材及び裏面材の間に設けられた吸収体を有する実質的に縦長の本体部と、前記本体部のうち前記表面材側に設けられ、前記本体部の長手方向の中心軸に沿って伸びる立体部と、を備える吸収性物品であって、前記立体部の前記裏面材側の下方に位置する領域には、前記立体部の隆起方向に沿って隆起可能な可撓部が形成されている吸収性物品。
【0016】
(1)の吸収性物品によれば、本体部に対し、幅方向に圧縮力が作用すると、可撓部は、立体部の隆起方向にそって隆起する。可撓部が隆起すると、この可撓部から表面材側に位置する立体部を、使用者の身体側へ当接させる応力が作用するので、立体部を安定して接触させ続けることができる。
【0017】
(2) 前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の目付け及び/又は厚みを、前記領域以外の部分より減じることにより形成される(1)記載の吸収性物品。
【0018】
(2)の吸収性物品は、吸収体の目付け及び/又は厚みを減じることにより、可撓部を形成したことを特徴とする。したがって、本体部に対し、幅方向に圧縮力が作用すると、可撓部は、より確実に隆起する。
【0019】
(3) 前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の一部にスリット、エンボス、抜き部より選択される少なくとも一つを形成してなる(1)記載の吸収性物品。
【0020】
(3)の吸収性物品は、吸収体の一部に、スリット、エンボス、及び抜き部より選択される少なくとも一つが形成されていることを特徴とする。吸収体に、スリット、エンボス、及び抜き部などの加工を施すことで、吸収体の剛性を部分的に変えることができる。したがって、可撓部が隆起する場合に、この隆起の頂部となる位置が決まりやすくなり、安定な変形ができる。また、吸収体として剛性が高く曲がりにくいものを用いたとしても、部分的に剛性を変えられるので、容易に変形できる。
【0021】
(4) 前記領域には、前記長手方向に沿って収縮可能な弾性部材が配置される(1)記載の吸収性物品。
【0022】
(4)の吸収性物品は、可撓部が形成された領域に、長手方向に沿って収縮可能な弾性部材が配置されていることを特徴とする。このような弾性部材を配置することにより、縦方向に湾曲させる収縮応力が、本体部及び立体部に作用する。したがって、本体部に幅方向に力が作用して、可撓部が隆起し頂部を形成することにより、縦方向への湾曲が困難になった可撓部に対して、弾性部材による収縮応力が作用して、可撓部の縦方向への湾曲を容易にすることができる。
【0023】
(5) 前記可撓部は、前記領域における前記吸収体を設けないことにより形成される(1)記載の吸収性物品。
【0024】
(5)の吸収性物品は、部分的に吸収体を設けないことにより、可撓部を形成することを特徴とする。したがって、吸収体が設けられた領域と比較して、可撓部の剛性を格段に低くできる。したがって、可撓部の変形を容易にできる。
【0025】
(6) 前記可撓部の幅方向の左右には、前記領域内に、前記長手方向に沿って、補強材を配置される請求項1記載の吸収性物品。
【0026】
(6)の吸収性物品によれば、補強材を、可撓部の左右に位置する領域に設けることにより、幅方向に作用する力に対して、補強材は、可撓部が隆起する際のきっかけとして作用する。したがって、立体部は、安定した形状で隆起する。
【0027】
(7) 前記可撓部の幅方向の長さは、前記立体部の幅方向の長さよりも長くなるように形成される(1)から(6)いずれか記載の吸収性物品。
【0028】
(7)の吸収性物品によれば、立体部の幅は、可撓部の幅よりも狭く形成されているので、本体部に幅方向の力が作用し、可撓部が隆起すると、立体部が本体部と接する領域は、略平らなまま隆起する。これにより、立体部は可撓部の変形の影響を受けることなく変形できる。
【0029】
(8) 前記可撓部の幅方向の長さは、使用者の尾てい骨が当接する尾てい骨該当位置に比べて、使用者の臀部が当接する臀部該当位置のほうが長くなるように形成される(1)から(7)いずれか記載の吸収性物品。
【0030】
(8)の吸収性物品によれば、可撓部の幅方向の長さを、使用者の尾てい骨が当接する位置よりも、使用者の臀部が当接する位置のほうが長くなるように形成した。したがって、幅方向に作用する力に対して、尾てい骨が当接する位置よりも、臀部が当接する位置のほうが高く隆起する。これにより、立体部を、身体の溝の深さに合わせて隙間無く当接できる。
【0031】
(9) 前記立体部の両側縁近傍で前記長手方向に沿って、前記吸収体を圧縮してなる圧縮溝が設けられている(1)から(8)いずれか記載の吸収性物品。
【0032】
(9)の吸収性物品によれば、圧縮溝を設けることにより、本体部の剛性が高くなる。したがって、本体部を縦方向に湾曲させる力が作用した場合に、この本体部の折れを発生させずに、縦方向に沿って均一な曲率で湾曲させることができる。
【0033】
(10) 前記本体部の裏面材側のうち、前記可撓部が位置する部分には、ズレ止め手段を設けない(1)から(9)いずれか記載の吸収性物品。
【0034】
(10)の吸収性物品によれば、本体部の裏面材側のうち、可撓部が位置する部分には、ズレ止め手段が設けられていないので、下着を着用することによって、可撓部の隆起が妨げられることはない。
【0035】
(11) 前記本体部の幅方向の圧縮力に対して、前記領域の曲げ剛性は、前記領域を除く部分の曲げ剛性よりも低い(1)から(10)いずれか記載の吸収性物品。
【0036】
(12) 前記領域の幅方向におけるガーレー試験機による曲げ剛性が、前記領域を除く部分の曲げ剛性の80%以下である(11)記載の吸収性物品。
【0037】
(11)、(12)の吸収性物品によれば、本体部に対し、幅方向に圧縮力が作用すると、曲げ剛性が低く設けられた可撓部が優先的に隆起する。具体的には、他の領域と比較して、曲げ剛性が80%以下であれば、好ましく隆起する。
【0038】
(13) 前記領域の前記長手方向の湾曲時距離減少率試験における距離の減少率が30%以下である(1)から(12)いずれか記載の吸収性物品。
【0039】
(13)の吸収性物品によれば、標準的な体型の女性の臀部の曲率に基づいて、収縮倍率が設計された立体部を、座屈させるおそれはない。
【0040】
(14) 前記可撓部が隆起を形成した際の圧縮剛性試験による20%圧縮時の剛性が0.1Nから2.0Nである(1)から(13)いずれか記載の吸収性物品。
【0041】
(14)の吸収性物品によれば、可撓部の圧縮剛性は、理想的な剛性を有する。具体的には、可撓部が理想的な剛性を有することにより、使用者に対して異物感や違和感を生じさせることはなく、また、一般的な下着による圧縮力に対して可撓部の高さ変動が生じるおそれもない。
【発明の効果】
【0042】
膣口該当位置から臀部溝にかけての一部に存在する立体部が製品装着時の湾曲状態においても製品本体から押し当てる力を効果的に受けることで、安定的な接触を保つことが出来、経血の流れや漏れを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては同一符号を付し、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0044】
<第1実施形態>
[生理用ナプキンの全体構成]
図1ないし図4を参照して、本実施形態に係る生理用ナプキン1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る吸収性物品としての生理用ナプキン1を示すものであり、外力が作用していない状態の外観を示す斜視図である。
図2は、生理用ナプキン1を平坦に展開した状態を示すものであり、本体部10及び立体部30の配置を示す平面図である。
図3は、図1中のIII−III線の断面を示すものであり、本体部10及び立体部30を含む破断斜視図である。
図4は、図1中のIII−III線の断面を示すものであり、立体部30を含む部分破断斜視図である。
【0045】
以下においては、生理用ナプキン1を構成する各要素の2つの表面のうち、身体に向く表面を「肌側表面」とし、反対側の表面を「着衣側表面」とする。また、生理用ナプキン1の長手方向を「縦方向」とし、この縦方向と直交する方向を「横方向」とする。各要素の寸法は、特に明記しない限り、縦方向に測定した寸法を「長さ寸法」とし、横方向に測定した寸法を「幅寸法」とする。
【0046】
図1及び図2に示すように、生理用ナプキン1は、縦長の本体部10と、この本体部10の肌側表面に設けられ、縦方向の中心軸に沿って延びる立体部30と、を備える。
【0047】
図3及び図4に示すように、本体部10は、着衣側表面に位置する液不透過性の裏面材としての裏面シート11と、この裏面シート11の上に設けられた吸収体としての液吸収層20と、この液吸収層20を覆う液透過性の表面材としての表面シート12と、肌側表面の横方向の両端部に位置する側部シート13とを備える。これらの各部材は、ホットメルト型接着剤により互いに接着されている。
【0048】
本体部10の縦方向の両端部には、曲線形状の前縁部15aと、この前縁部15aと同じく曲線形状の後縁部15bと、が形成されている。
【0049】
本体部10の横方向の両端部には、本体部10前方において、液吸収層20の両側端部22cよりも横方向に突出した前方フラップ部16と、この前方フラップ部16よりも後方において、横方向に突出した折り返しフラップ部17と、この折り返しフラップ部17よりもさらに後方において、横方向に突出した後方フラップ部18と、が形成されている。また、これら前方フラップ部16、折り返しフラップ部17、及び後方フラップ部18は、裏面シート11と側部シート13とを重ねてホットメルト型接着剤で互いに接合することにより形成されている。
【0050】
液吸収層20は、帯状の吸収体であり、単一のラップ材23で包まれた状態で、裏面シート11と、表面シート12及び側部シート13と、の間に挟まれ、液吸収層20の長手方向と本体部10の縦方向とを一致させて本体部10の略中央に設けられている。また、液吸収層20は、液吸収層用のホットメルト型接着剤により、裏面シート11及び表面シート12に接合されている。
【0051】
液吸収層20の縦方向の両端部には、曲線形状の前端部21aと、この前端部21aと同じく曲線形状の後端部21bと、が形成されている。液吸収層20の横方向の両端部には、それぞれが縦方向基準線Oyと平行な側端部22cが形成されている。ただし、液吸収層20の各端部21a,21b,22cの形状は、本実施形態に限られるものではない。また、液吸収層20は、前端部21aが本体部10の前縁部15aのやや後方に位置し、かつ、後端部21bが本体部10の後縁部15bのやや前方に位置するように設けられている。
【0052】
横方向の両側に位置する側部シート13の、互いに向き合う縁部14cは、液吸収層20の両側端部22cよりも内側に位置するように設けられている。この側部シート13を設けることにより、液吸収層20により吸収された経血が滲み出すことを防止できる。
【0053】
図1及び図2には、複数の基準線が示されている。このうち、縦方向基準線Oyは、本体部10の横方向の中心を示し、前縁部15aの略中央から後縁部15bの略中央へ縦方向に延びる基準線である。
【0054】
膣対向基準線X1は、互いに対向する折り返しフラップ部17の略中央の間を、縦方向基準線Oyと垂直な方向に延びる基準線である。膣対向基準線X1と縦方向基準線Oyとの交点が、膣口対向基準位置である。この膣口対向基準位置とは、生理用ナプキン1を下着に固着させた状態で股間部に装着するときに、膣の中心に対向する目安となる基準位置を示している。この目安は、生理用ナプキン1を肌側表面から見たときの全体形状や、肌側表面に形成されている圧縮溝19の形状などの、全体のデザインによって誘導されるものである。
【0055】
尾てい骨対向基準線X2は、液吸収層の後端部21bよりやや前方にて、縦方向基準線Oyと垂直な方向に延びる基準線である。尾てい骨対向基準線X2と縦方向基準線Oyとの交点が、尾てい骨対向基準位置である。この尾てい骨対向基準位置とは、上記の膣口対向基準位置と同様に、生理用ナプキン1を装着するときに、尾てい骨に対向する目安となる基準位置を示している。
【0056】
図3及び図4に示すように、立体部30は、柔軟な不織布で形成された外側シート34a及び内側シート34bが重ねられた積層シート34と、これら外側シート34aと内側シート34bとの間に挟まれた複数の弾性部材32と、を備え、この積層シート34の両端をホットメルト型接着材33で接合することにより形成された中空の筒状の部材である。
【0057】
弾性部材32は、伸張させた状態では収縮力が作用する線状の弾性体である。外側シート34aと内側シート34bとの間には、3本の弾性部材が、伸張された状態で、等間隔に配置されている。これら弾性部材32は、後述のように立体部30を本体部10に接合した場合に、本体部10の膣口対向基準位置から尾てい骨対向基準位置までの範囲で、立体部30の肌側表面の方向へ収縮応力が作用するように、弾性部材固定用ホットメルト型接着剤で外側シート34a及び内側シート34bに接合されている。
【0058】
このように形成された立体部30は、立体部30が延びる方向を縦方向基準線Oyに合わせて、本体部10の表面シート12の肌側表面に設けられている。生理用ナプキン1を平坦に展開した状態における立体部30の幅、すなわち、筒状の立体部30を折りたたんだ状態における立体部30の幅は、液吸収層20の幅と比較して狭くなるように形成されている。また、立体部30と表面シート12とは、ホットメルト型接着剤41aにより、立体部30の着衣側表面に設けられた固定領域31において接合されている。
【0059】
具体的には、この固定領域30は、前方固定領域31a、後方固定領域31b、中央固定領域31cの3つの領域に分割され、このうち、前方固定領域31aは、本体部10の前縁部15aから膣口対向基準位置のやや後方に位置する領域内に設けられ、中央固定領域31cは、前方固定領域31aの後端から尾てい骨対向基準位置に位置する領域内に設けられ、また、後方固定領域31bは、中央固定領域31cの後端から本体部10の後縁部15bに位置する領域内に設けられている。
【0060】
前方固定領域31a及び後方固定領域31bの幅はほぼ等しく、かつ、生理用ナプキン1を平坦に展開した状態における立体部30の幅と比較して、やや狭く設けられている。また、中央固定領域31cの幅は、これら前方固定領域31a及び後方固定領域31bの幅と比較して狭く、かつ、後述の可撓部25の幅よりも狭く設けられている。
【0061】
上記のように、立体部30と表面シート12とは、立体部30の固定領域31において、ホットメルト型接着剤41aにより接合されている。具体的には、各固定領域31a,31b,31cの領域内に、ホットメルト型接着材が縦方向基準線Oyの方向に帯状に塗工されており、これらの塗工された面で、立体部30は表面シート12に固定されている。このように立体部30を表面シート12に固定することにより、立体部30の中央固定領域31cに対応する部分、すなわち、立体部30の膣口対向基準位置付近から尾てい骨対向基準位置までの範囲に対応する部分は、自由に変形することが可能になる。
【0062】
また、上述のように、立体部30の膣口対向基準位置付近から尾てい骨対向基準位置までの範囲に対応する部分では、立体部30に設けられた弾性部材32の収縮応力が肌側表面の方向へ作用する。このため、立体部30の膣口対向基準位置付近から尾てい骨対向基準位置までの範囲に対応する部分は、肌側表面へ向けて隆起した形状となる。この立体部30の隆起の形状については、後に図5を参照して詳述する。
【0063】
図1ないし図3に示すように、生理用ナプキン1の肌側表面には、表面シート12と液吸収層20とを重ねた状態で、表面シート12の肌側表面から圧縮し、加熱した2本の圧縮溝19が形成されている。これら圧縮溝19は、液吸収層20の両側端部22c,22cからやや縦方向基準線Oyに近い位置に、縦方向基準線Oyと略平行に形成されている。
【0064】
このような圧縮溝19を設けることによって、本体部10の剛性が高まり、弾性部材32の収縮応力が本体部10に作用した場合に、この本体部10に折れを発生させずに、縦方向に沿って均一な曲率で湾曲させることができる。
【0065】
図3及び図4に示すように、裏面シート11の着衣側表面には、生理用ナプキン1を使用者の下着に固着するための感圧接着剤層42が、縦方向基準線Oyの左右両側において、縦方向基準線Oyと略平行に帯状に塗工されている。また、これら感圧接着剤層42は、後述の可撓部25が設けられた部分には、塗工されていない。
【0066】
本体部10の前縁部15aから膣対向基準線X1までの縦方向基準線Oyに沿った長さ寸法L1は、後方へ100mm以上200mm以下の範囲内で、好ましくは前縁部15aから後方へ100mm以上140mm以下の範囲内に位置している。本実施形態では、長さ寸法L1は約120mmである。
【0067】
本体部10の前縁部15aから後縁部15bへの、縦方向基準線Oyに沿った長さ寸法L1+L2は、少なくとも使用者の外性器の前端から、肛門位置付近を覆う必要があるため、280mm以上450mm以下であることが好ましい。本実施形態では、長さ寸法L1+L2は350mmである。
【0068】
液吸収層20の両側端部22cの間の幅寸法W1は、女性の身体形状、特に股間幅を考慮し、無理なく装着が可能な幅寸法であることが好ましい。本実施形態では、幅寸法W1は75mmである。
【0069】
[膣口対向基準位置と尾てい骨対向基準位置との間の構造]
図5ないし図7を参照して、本実施形態に係る生理用ナプキン1の、膣口対向基準位置と尾てい骨対向基準位置との間の構造について説明する。
図5は、図1中のVI−VI線の断面を示すものであり、本体部10及び立体部30を含む破断斜視図である。
図6は、図1中のVI−VI線の断面を示すものであり、生理用ナプキン1が縦方向に湾曲し、かつ、幅方向の圧縮力が作用した状態を示す破断斜視図である。
図7は、図6中の立体部30を取り除いた状態を示す破断斜視図である。
【0070】
図5に示すように、液吸収層20の中心部には、部分的に低密度にすることにより、可撓部25が形成されている。より詳細には、図2に示すように、液吸収層20のうち、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を低密度にすることにより、液吸収層20の中心部には、図2中肌側表面から見て帯状の可撓部25が形成される。
【0071】
図6及び図7に示すように、液吸収層20の可撓部25が設けられた部分は、液吸収層20のその他の部分よりも低密度であるので、両側から幅方向に中心へ向かう力に対して容易に屈曲する。生理用ナプキン1の装着時には、使用者の太腿や下着から、このような圧縮力が作用し、これにより、可撓部25は、図6中縦方向から見て三角形に屈曲し、本体部10及び立体部30を、使用者の身体側へ隆起させる。
【0072】
このように、可撓部25を設けることにより、生理用ナプキン1の装着時には、立体部25に、肌側表面の方向へ力が作用するので、したがって、立体部30が身体の溝に入り込み、立体部30と身体の溝との隙間が無くなる。
【0073】
表面シート12の可撓部25が設けられた部分のうち、中央固定領域31cと接する部分は、その他の部分よりも剛性が高く変形しにくい。本実施形態では、中央固定領域31cの幅は、可撓部25の幅よりも狭く形成されているので、図6及び図7に示すように、本体部10に幅方向の力が作用し、可撓部25が折れ曲がり、本体部10が隆起する場合、表面シート12の中央固定領域31cと接する領域は、略平らなまま隆起する。これにより、立体部30は可撓部25の変形の影響を受けることなく肌側表面へ隆起できる。
【0074】
また、図6及び図7に示すように、本体部10の肌側表面のうち、可撓部25が設けられた位置の幅方向左右には、上述のように圧縮溝19,19が設けられており、これにより、圧縮溝19が設けられた領域は、剛性が高くなる。したがって、本体部10に、幅方向の両側から中心へ圧縮力が作用すると、圧縮溝19は折れ曲がりのきっかけとして作用し、可撓部25は、図6中縦方向から見て、左右対称の三角形の断面形状で座屈し、本体部10及び立体部30を、使用者の身体側へ隆起させる。
【0075】
[可撓部の曲げ剛性]
上述のように、幅方向に力が作用した場合に、液吸収層20が可撓部25において優先的に屈曲するためには、液吸収層20の可撓部25が設けられた部分と、その他の部分(例えば、図5中の可撓部25の両側付近)とに、適度な曲げ剛性の差が必要である。より詳細には、ガーレー剛軟度試験に準拠した測定による液吸収層20の可撓部25の曲げ剛性値が、その他の部分(例えば、図5中の可撓部25の両側付近)の曲げ剛性値に対して、80%以下、より好ましくは60%以下である場合には、可撓部25が優先的に屈曲する。ここで、ガーレー剛軟度試験とは、紙パルプ技術協会が発行しているJ.TAPPI(JAPAN TAPPI)の「紙パルプ試験方法」NO.40−83に記載の「加重曲げ法による紙及び板紙のこわさ試験方法(ガーレー法)」のことである。
本実施形態の液吸収層20の曲げ剛性値を、ガーレー柔軟度試験機を用いて測定した結果、液吸収層20の可撓部25の曲げ剛性値は、その他の部分(例えば、図5中の可撓部25の両側付近)の曲げ剛性値に対して、40%の値であった。
【0076】
[構成素材の好ましい例]
第1実施形態の生理用ナプキン1の構成素材の好ましい例を説明する。
本体部10の着衣側表面を構成する裏面シート11は、目付量が23g/m2のポリエチレンフィルムである。表面シート12は、合成樹脂繊維を熱風で接合したスルーエア不織布であり、芯部がポリエステル樹脂で鞘部がポリエチレン樹脂で、繊度が2.2dtexの芯鞘型複合合成繊維で形成されている。側部シート13は、芯部がポリプロピレン樹脂で鞘部がポリエチレン樹脂で繊度が2.2dtexの複合合成繊維で形成されたスパンボンド不織布であり、例えば目付量が22g/m2である。液吸収層20は、針葉樹クラフトパルプと高吸水性ポリマーとが混合されたものであり、高吸水性ポリマーは、液吸収層20の重量の3%程度含まれている。液吸収層20の目付量は、可撓部25が形成された領域は、150g/m2程度であり、その他の領域は400g/m2程度である。この液吸収層20を包むラップ材23は、目付量が15g/m2程度のティッシュである。
【0077】
積層シート34を構成している外側シート34aと内側シート34bとは、例えば、共に芯部がポリエステル樹脂で鞘部がポリエチレン樹脂で、繊度が2.2dtexの芯鞘型複合合成繊維で形成された目付量が20g/m2程度のスルーエア不織布である。弾性部材32は、ポリウレタン弾性糸であり、繊度が1880dtexのものが使用される。
【0078】
[装着時の作用]
上記実施形態の生理用ナプキン1の装着時の作用について、図8ないし図13を参照して説明する。
図8は、外力が作用していない自由な状態の生理用ナプキン1を示す側面図である。
図9は、幅方向に圧縮力が作用した状態の生理用ナプキン1を示す側面図である。
図10は、図9中のIV−IV線の断面を示す概略図である。
図11は、図9中のV−V線の断面を示す概略図である。
図12は、図9中のVI−VI線の断面を示す概略図である。
図13は、図9中のVII−VII線の断面を示す概略図である。
【0079】
図8に示すように、生理用ナプキン1を身体に装着する前の状態では、生理用ナプキン1の本体部10は、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間で凹状に湾曲し、この範囲において、立体部30の頂部35は使用者の肌側へ隆起している。
【0080】
また、図9に示すように、生理用ナプキン1を身体に装着した状態では、使用者の太腿や下着から、幅方向に圧縮力が作用し、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間に設けられた可撓部25は座屈する。これにより、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間に位置する立体部30には、肌側表面の方向へ向かう力が作用し、立体部30は使用者の身体側へ隆起する。
【0081】
図10に示すように、膣対向基準線X1の付近では、立体部30はほぼ平坦な状態でその高さが低くなっているため、立体部30は膣口に違和感無く当接できるようになる。また、図11ないし図13に示すように、膣対向基準線X1と尾てい骨対向基準線X2との間では、立体部30が高く立ち上がっており、しかも頂部35に向けて幅寸法が除々に小さくなる形状であるため、この部分で立体部30が肛門付近の溝内及び臀裂部の溝内に抵抗無く入り込むことができる。また、膣対向基準線X1と尾てい骨基準線X2との中点において立体部30の立ち上がりが最も大きくなっている部分が臀裂部の最深部に入り込むようになる。
【0082】
[変形例1]
図14を参照して、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン1aについて説明する。図14は、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン1aを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0083】
図14に示すように、液吸収層20aの中心部には、部分的に他の部分とは異なる剛性の低い素材で置き換えることにより、可撓部25aが形成されている。より詳細には、図14に示すように、液吸収層20aのうち、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を、剛性の低い素材で置き換えることにより、液吸収層20aの中心部には、肌側表面から見て帯状の可撓部25aが形成される。具体的には、液吸収層20aの可撓部25aの素材には、目付量が200g/m2で、化繊配合率が30%のエアレイドパルプとし、液吸収層20aのその他の部位は、目付量が400g/m2のフラップパルプで構成する。このように、可撓部25aを剛性の低い素材で設けたため、上述の効果と同等の効果を奏することができる。
【0084】
[変形例2]
図15を参照して、本実施形態の変形例2に係る生理用ナプキン1bについて説明する。図15は、本実施形態の変形例2に係る生理用ナプキン1bを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0085】
図15に示すように、液吸収層20の表面のうち、可撓部25の左右に位置する領域には、縦方向に延びる補強材27が、さらに設けられている。補強材27の材質としては、繊度が2.2dtex以上10.0dtex以下の範囲内のポリプロピレンやポリエチレン、ポリエステル繊維からなる不織布(目付け80から200g/m2相当)に熱エンボス加工を施し、厚みを0.5〜2.0mmに圧縮した素材や、50〜200g/m2のエアレイドパルプ(化繊配合率30〜70%)を同様に熱エンボス処理したものなどが好ましい。
【0086】
このような補強材27を、可撓部25の左右に位置する領域に設けることにより、幅方向に作用する力に対して、補強材27は、可撓部25が隆起する際のきっかけとして作用する。したがって、可撓部25は、安定した形状で隆起する。
【0087】
<第2実施形態>
図16を参照して、本発明の第2実施形態に係る生理用ナプキン101について説明する。本実施形態では、液吸収層120に形成された可撓部125の構造が第1実施形態と異なる。
【0088】
図16は、本発明の第2実施形態に係る生理用ナプキン101を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0089】
図16に示すように、液吸収層120の中心部には、部分的に低密度にすることにより、可撓部125が形成されている。より詳細には、図16に示すように、液吸収層20のうち、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を、幅方向中心に向かうにしたがい低密度にすることにより、液吸収層120の中心部には、帯状の可撓部125が形成される。
【0090】
具体的には、フラッフパルプで構成された液吸収層120のうち、可撓部125が形成された領域の幅方向の中心は厚みが5mmで、目付量が150g/m2としたのに対し、その他の領域は、厚みが7mmで、目付量が450g/m2とした。
【0091】
このようにして、液吸収層120を、幅方向の中心に向かうにしたがい低密度にして、可撓部125を形成することにより、可撓部125の剛性は、幅方向の中心へ向かうにしたがい低くなる。したがって、本体部110は、幅方向の両側から中心に作用する力に対して、縦方向から見て、左右対称の三角形の断面形状で容易に座屈する。
【0092】
<第3実施形態>
図17ないし図22を参照して、本発明の第3実施形態に係る生理用ナプキン201について説明する。本実施形態では、可撓部225の構造が第1実施形態と異なる。
【0093】
図17は、本発明の第3実施形態に係る生理用ナプキン201を、平坦に展開した状態を示す平面図である。
図18は、図17中のVIII−VIII線の断面を示すものであり、液吸収層220の可撓部225の部分破断斜視図である。
図19は、液吸収層220aを示す平面図である。
図20は、液吸収層220bを示す平面図である。
図21は、液吸収層220cを示す平面図である。
図22は、液吸収層220dを示す平面図である。
【0094】
図17及び図18に示すように、本実施形態の液吸収層220には、第1実施形態の液吸収層20と同様に、中央固定領域31cが位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を低密度に形成し、さらに、この低密度の領域に複数のスリット226を刻設することにより、可撓部225が形成されている。具体的には、これらのスリット226は、幅方向に延びる切込みを、縦方向に沿って間欠的に設けられ、また、これらスリット226の幅方向の中心には、肌側表面から見てひし形の形状の抜き部227が形成されている。
【0095】
このように、可撓部225を構成している素材の一部に、間欠的にスリット226及び抜き部227を設けることで、液吸収層220に、目付の高いエアレイドパルプなどの曲げ剛性が高く曲がりにくい素材を用いた場合であっても、幅方向に作用する力に対して容易に隆起させることができる。また、このように隆起させた状態で縦方向に湾曲させた場合であっても、各スリット226に抜き部227が形成されているので、可撓部225に皺が寄りにくく、したがって、容易に湾曲させることができる。
【0096】
また、図22に示すように、縦方向に延びるスリット226dを刻設してもよく、このようにすれば、幅方向に作用する力に対して、このスリット226dが刻設された位置を頂部として隆起し易くなるため、可撓部225dを安定して変形させることができる。
【0097】
液吸収層220に刻設するスリット及び抜き部のパターンは、上述の図17及び図18に示されるようなパターンに限られるものではない。また、スリット及び抜き部に限らず、エンボス加工を施してもよく、液吸収層の素材の座屈強度を減少させる手段であればよい。例えば、図19ないし図22に示されたようなパターンのスリット、抜き部、及びエンボス加工を施しても、上述の効果と同等の効果を奏することができる。
【0098】
<第4実施形態>
図23および図24を参照して、本発明の第4実施形態に係る生理用ナプキン301aについて説明する。本実施形態では、立体部330aの構造が第1実施形態と異なる。
【0099】
図23は、本発明の第4実施形態に係る生理用ナプキン301aを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
図24は、図23中の立体部330aのみを示した部分破断斜視図である。
【0100】
図23及び図24に示すように、立体部330aは、柔軟な不織布で形成された外側シート34a及び内側シート34bが重ねられた積層シート34と、これら外側シート34aと内側シート34bとの間に挟まれた複数の弾性部材32及び固定領域用弾性部材337aと、を備え、この積層シート34の両端をホットメルト型接着材33で接合することにより形成された中空の筒状の部材である。
【0101】
固定領域用弾性部材337aは、外側シート34aと内側シート34bとの間に、伸張した状態で複数配置されている。これら固定領域用弾性部材337aは、立体部330aを本体部10に接合した場合に、可撓部25が形成された部分の上層に位置するようにして、外側シート34aと内側シート34bとの間に配置されている。
【0102】
このような固定領域用弾性部材337aの素材に、本実施形態では、繊度が1880dtexのポリウレタン弾性糸を用いた。また、立体部330aの肌側に位置する弾性部材32と、立体部330aの中央固定領域31c側に位置する固定領域用弾性部材337aとは、それぞれ異なる伸張倍率を有することが好ましく、具体的には、本実施形態では、弾性部材32の伸縮倍率を1.5倍であるのに対して、固定領域用弾性部材337aの伸張倍率を1.35倍とした。
【0103】
このように固定領域用弾性部材337aを設けることにより、縦方向に湾曲させる収縮応力が、本体部10及び立体部330aに作用する。したがって、幅方向に力が作用して可撓部25が座屈し頂部を形成することにより、縦方向への湾曲が困難になった可撓部25に対して、上述のような固定領域用弾性部材337aの収縮応力が作用して、可撓部25の縦方向への湾曲を容易にすることができる。
【0104】
[変形例1]
図25及び図26を参照して、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン301bについて説明する。
【0105】
図25は、本実施形態の変形例1に係る生理用ナプキン301bを示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
図26は、図25中の立体部30のみを示した部分破断斜視図である。
【0106】
図25及び図26に示すように、表面シート12のうち、立体部30の中央固定領域31cと接する部分には、複数の固定領域用弾性部材337bが、縦方向に伸張した状態で設けられている。具体的には、2本の固定領域用弾性部材337bが、表面シート12の内面から、固定シート338bにより固定されている。
【0107】
このように固定領域用弾性部材337bを設けることにより、縦方向に湾曲させる収縮応力が、本体部10及び立体部30に作用するので、上述の第4実施形態に係る生理用ナプキン301aによる効果と同等の効果を奏することができる。
【0108】
<第5実施形態>
図27を参照して、本発明の第5実施形態に係る生理用ナプキン401について説明する。本実施形態では、立体部430を設ける位置が第1実施形態と異なる。
【0109】
図27は、本発明の第5実施形態に係る生理用ナプキン401を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0110】
図27に示すように、立体部430は、表面シート412と液吸収層20との間に、立体部430の中央固定領域31cが液吸収層20の可撓部25に含まれるようにして、設けられている。また、液吸収層20は、ラップ材23で包まれており、立体部30の各固定領域31a,31b,31cは、このラップ材23に、ホットメルト型接着剤で接合されている。また、立体部430の変形を容易にするために、表面シート412と液吸収層20との間には、圧縮溝は形成されていない。
【0111】
なお、立体部430は、表面シート412の下層に設けられているので、立体部430を構成する外側シート34a及び内側シート34bに、吸収性を有する素材を用いてもよい。具体的には、目付量が60g/m2で、バインダー含有量が30%のエアレイドパルプなどの吸収性の素材を用いるのが好ましい。このようにすることで、液体の連通性の高い、吸収力に優れた構成にできる。
【0112】
このように、立体部430を表面シート412の下層に設けることにより、生理用ナプキン401の肌側表面には、立体部430と本体部410との界面が無くなるので、生理用ナプキン401を滑らかな立体形状にできる。また、このように滑らかな立体形状にすることにより、使用者の身体と生理用ナプキン401との間に隙間が生じにくくなる。
【0113】
<第6実施形態>
図28を参照して、本発明の第6実施形態に係る生理用ナプキン501について説明する。本実施形態では、立体部530の構造が第1実施形態と異なる。
【0114】
図28は、本発明の第6実施形態に係る生理用ナプキン501を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0115】
図28に示すように、立体部530は、本体部510と一体に形成されている。
積層シート534は、表面シート512及び内側シート34bを重ねて形成される。また、これら表面シート512と内側シート34bとの間には、複数の弾性部材32が伸張した状態で設けられている。また、この積層シート534の幅方向の両端は、液吸収層20の幅方向の両端に固定される。また、液吸収層20の可撓部25が設けられた位置では、この積層シート534を筒状に折ることにより、立体部530が形成されている。
【0116】
このように、立体部530と本体部510とを一体に設けることにより、生理用ナプキン501の肌側表面には、立体部530と本体部510との界面が無くなるので、生理用ナプキン501を滑らかな立体形状にできる。また、このように滑らかな立体形状にすることにより、使用者の身体と生理用ナプキン501との間に隙間が生じにくくなる。
【0117】
本実施形態の生理用ナプキン501によれば、上述の第5実施形態に係る生理用ナプキン401と同等の効果を奏することができる。
【0118】
<第7実施形態>
図29を参照して、本発明の第7実施形態に係る生理用ナプキン601について説明する。本実施形態では、立体部30と表面シート12との間の構造が第1実施形態と異なる。
【0119】
図29は、本発明の第7実施形態に係る生理用ナプキン601を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【0120】
図29に示すように、立体部30と表面シート12との間は、離間されている。具体的には、立体部30の各固定領域31a,31b,31cのうち、前方固定領域31a及び後方固定領域31bにのみホットメルト型接着剤が塗工されており、これらの塗工された面でのみ、立体部30は表面シート12に接合されている。すなわち、立体部30の中央固定領域31cと表面シート12との間は離間されている。
【0121】
このように、立体部30と表面シート12との間を離間させることにより、立体部30の離間された部分は遊動できるので、使用者の身体と生理用ナプキン601との相対的な位置の変化が生じても、立体部30を使用者の身体の同じ位置に当接させ続けることができる。
【0122】
<第8実施形態>
図30及び図31を参照して、本発明の第8実施形態に係る生理用ナプキン701a,701bについて説明する。本実施形態では、可撓部725aの形状が第1実施形態と異なる。
【0123】
図30は、本発明の第8実施形態に係る生理用ナプキン701aを、平坦に展開した状態を示す平面図である。
図31は、生理用ナプキン701bを、平坦に展開した状態を示す平面図である。
【0124】
図30に示すように、液吸収層720aには、縦方向に沿って、幅が一様でない可撓部725aが形成されている。具体的には、この可撓部725aの前方部分は、膣口対向基準位置のやや後方にて、幅が最大になるように形成され、また、可撓部725aの後方部分は、中央固定領域31cの幅よりもやや広い幅で形成されている。
【0125】
このように、可撓部725aの幅を縦方向に沿って変えることにより、可撓部725aの各部分は、幅方向に作用する力に対して異なった高さで隆起する。具体的には、幅方向に作用する力に対して、可撓部725aのうち膣口対向基準位置のやや後方では、可撓部725aの幅に応じて高く隆起し、可撓部725aのうち尾てい骨対向基準位置のやや前方では、可撓部725aの幅に応じて低く隆起する。特に、膣口対向基準位置のやや後方では、使用者の身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れやすく、また、尾てい骨対向基準位置のやや前方では、身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れにくいので、以上のように、可撓部725aの幅を縦方向に沿って変えることにより、生理用ナプキン701aの立体部30を、身体の溝の形状に合わせて隙間無く当接できる。
【0126】
特に、膣口対向基準位置の後方10mm以上100mm以下の範囲内においては、使用者の身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れやすいため、可撓部725aの幅を広く形成し、また、膣口対向基準位置の後方140mm以上160mm以下の範囲内においては、身体と生理用ナプキン701aの表面との間は離れにくいため、可撓部725aの幅を狭く形成することが好ましい。
【0127】
また、可撓部の形状は、上述の図30に示された形状に限らない。例えば、図31に示すように、可撓部725bを、尾てい骨対向基準位置から膣口対向基準位置へ向かうにしたがい、幅が広くなるように形成してもよい。このような可撓部725bが形成された液吸収層720bを有する生理用ナプキン701bであっても、上述の生理用ナプキン701aによる効果と同等の効果を奏することができる。
【0128】
<第9実施形態>
図32及び図33を参照して、本発明の第9実施形態に係る生理用ナプキン801について説明する。本実施形態では、液吸収層820の構造が第1実施形態と異なる。
【0129】
図32は、本発明の第9実施形態に係る生理用ナプキン801を示すものであり、図5と同様に中央固定領域31cが設けられた部分で切断した破断斜視図である。
図33は、図32中の液吸収層820のみを示した部分破断斜視図である。
【0130】
図32及び図33に示すように、液吸収層820の中心部には、部分的に切り抜くことにより、可撓部825が形成されている。より詳細には、図30及び31に示すように、液吸収層820のうち、中央固定領域が位置する部分に、この中央固定領域31cよりもやや幅が広い領域を、切り抜くことにより、液吸収層820の中心部には、肌側表面から見て帯状の可撓部825が形成される。
【0131】
液吸収層820は、ラップ材823で包まれた状態で、裏面シート11と、表面シート12及び側部シート13と、の間に挟まれ、液吸収層820の長手方向と本体部810の縦方向とを一致させて、本体部810の略中央に設けられている。
【0132】
具体的には、幅方向に力が作用した場合に、可撓部825が隆起形状を維持できるように、ラップ材823には、やや座屈強度が高い素材である繊度5.5dtex、ポリエチレン、ポリプロピレン繊維からなる40g/m2の不織布スルーエア不織布や、60g/m2の化繊率30〜70%のエアレイドパルプなどを用いることが好ましい。
【0133】
液吸収層820を、部分的に切り抜くことにより、可撓部825を形成したので、液吸収層820の他の部分と比較して、剛性を格段に低くできる。したがって、液吸収層820の可撓部825における変形を容易にできる。
【0134】
<試験例1>
試験例1では、表面シート、液吸収層、裏面シートに適した素材を決定するための試験として、湾曲時距離減少試験を行う。この湾曲時距離減少試験は、後述の頂部の高さ、及び距離減少率の2つの量の測定に基づく。
【0135】
図34ないし図36を参照して、湾曲時距離減少試験について説明する。
図34は、サンプル80の斜視図である。
【0136】
図34に示すように、サンプル80は、直方体形状の試験用台紙82と、この試験用台紙82に取り付けられたサンプルの試験片81と、からなる。
【0137】
サンプルの試験片81は、表面シートと、可撓部が形成された液吸収層と、裏面シートとを、5g/m2のゴム系ホットメルト型接着剤で層状に接合し、これを、可撓部が略中央に位置するように、縦方向が100mm、横方向が60mmの長さの直方体形状に切り取って作成される。
【0138】
試験用台紙82は、縦方向が120mm、横方向が60mmの長さの直方体形状の厚紙であり、目付けは310g/m2である。試験用台紙82の幅方向の両端から15mmの位置には、縦方向に沿って2つの基準線X3,X4が記されている。
【0139】
図34に示すように、サンプル80は、サンプルの試験片81を幅方向に屈曲させた状態で、その幅方向の両端を試験用台紙82の2つの基準線X3,X4に合わせて取り付けて作成される。
【0140】
図35は、サンプル80を、縦方向から見た図である。上述の頂部の高さは、図35に示すように、サンプルの試験片81の頂部83から、試験用台紙82へ垂下した線の長さに対応する。
【0141】
図36は、サンプル80を、測定台90に固定した状態を示す側面図である。測定台90は、身体の湾曲率を模型化したものであり、半径が110mmの半円弧状の湾曲面が形成された台である。試験例1では、上述の距離減少率は、この測定台90を用いて測定する。
【0142】
幅方向に力が作用し、可撓部が隆起を形成した状態で、縦方向に沿って湾曲させた場合、隆起により形成された頂部83の縦方向の長さは、平坦にした状態の長さと比較して短くなる。距離減少率とは、このように、湾曲した状態での頂部の長さに対する、平坦にした状態での頂部の長さの割合のことをさす。
【0143】
距離減少率の測定は、試験例1では、以下の手順で行われる。まず、サンプル80を、その縦方向と測定台90の湾曲方向とをそろえた状態で測定台90に固定する。このように、湾曲に沿って固定されたサンプル80の頂部には、皺が形成される。
【0144】
図36に示すように、固定されたサンプル80の頂部83において、皺が形成された部分を含むように、前後方向の任意の位置において、直線距離で20mmに印をつける。次に、サンプル80を、平坦な台に固定し、サンプル80が湾曲していない状態で、印間の距離を測定する。このような測定を、各サンプルに対し5回ずつ測定する。
【0145】
このようにして測定した湾曲時の印間の距離、すなわち湾曲した状態の頂部の長さを、平坦な状態での印間の距離、すなわち平坦にした状態での頂部の長さで割ることにより、距離減少率を得ることができる。
【0146】
また、試験例1では、湾曲時距離減少試験を実施するサンプルとして、サンプル1ないしサンプル5を作成し、これらのサンプルに関して測定を行った。以下において、サンプル1ないしサンプル5の試験片を構成する素材について説明する。
【0147】
サンプル1の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として25g/m2のスルーエア不織布を用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0148】
サンプル2の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として60g/m2のエアレイドパルプを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0149】
サンプル3の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として、200g/m2のフラッフパルプを15g/m2のティッシュで被覆したものを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0150】
サンプル4の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として、50g/m2のエアレイドパルプを4枚重ね、これを15g/m2のティッシュで被覆したものを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0151】
サンプル5の試験片の素材には、表面シートとして25g/m2のスルーエア不織布を用い、液吸収層として、600g/m2のフラッフパルプを15g/m2のティッシュで被覆したものを用い、また、裏面シートとして23g/m2の非通気ポリエチレンフィルムを用いた。
【0152】
<試験例1の評価>
上述のサンプル1ないしサンプル5のそれぞれについて、上述の湾曲時距離減少試験を行い、各サンプルの頂部の高さ、及び皺発生部の距離減少率について測定した。この測定結果を表1に示す。なお、表1中、仮想距離減少率とは、頂部の高さをh(mm)とすると、仮想距離減少率=100−{(110−h)/110}(%)、で表される値である。
【0153】
また、測定の結果、各サンプルは、2つの判定基準を満たしているか否かに応じて、生理用ナプキンに適した素材であるか否かの評価が行われる。2つの判断基準とは、距離減少率が30%以下であるか否か、及び、距離減少率が仮想距離減少率を下回るか否か、であり、両判断基準を満たしている場合にのみ、サンプルの素材が生理用ナプキンに適したものであると評価している。
【0154】
上記判断基準のうち、距離減少率が30%以下であるか否かという基準は、立体部の物性に基づいている。具体的には、距離減少率が30%以上である場合には、標準的な体型の女性の臀部の曲率に基づいて収縮倍率が設計された立体部では、座屈するおそれがある。また、距離減少率が仮想距離減少率を上回る場合は、可撓部は、身体の曲率に合わない程大きく湾曲するため、立体部が身体に沿わなくなってしまう。以上のような理由により、判断基準は設けられている。
【0155】
【表1】
【0156】
測定の結果、サンプル2、サンプル3、及びサンプル5は、距離減少率が30%以下で、かつ、距離減少率が仮想距離減少率を下回るという結果が得られた。したがって、湾曲時の頂部の距離減少率の観点からは、サンプル2、サンプル3、サンプル5を構成する素材は、生理用ナプキンの表面シート、液吸収層、及び裏面シートとして、適した素材であるといえる。
【0157】
<試験例2>
試験例2では、可撓部が隆起を形成した際の圧縮剛性試験とその結果について説明する。具体的には、この圧縮剛性試験では、可撓部の隆起に対する圧縮剛性の測定を行う。なお、測定対象には、上述の試験例1で用いられたサンプル1ないしサンプル5と同じものを用いる。
【0158】
圧縮剛性の測定には、測定台と測定用端子を備える圧縮試験機を用いる。具体的には、この圧縮試験機は、測定台に載置された対象物に、測定用端子を圧接(圧縮)させることにより、応力を測定するものである。
【0159】
圧縮剛性の測定は、試験例2では、以下の手順で行われる。まず、サンプル80の頂部の高さを測定する。次いで、このサンプル80を、隆起した可撓部を測定端子に向けて、測定台の上に載置する。そして、測定端子を、サンプル中央の隆起に向けて20mm/minの速度で圧接を開始し、可撓部の隆起の高さの変化に応じた応力を測定する。また、この測定では、測定端子に加重が加わった時点を基準位置として、事前に測定された頂部の高さに対して、可撓部の隆起の高さが約20%の位置における加重(応力)を測定する。また、この測定は5回繰返す。
【0160】
<試験例2の評価>
試験例1で用いられたサンプル1ないしサンプル5の圧縮剛性の測定結果を表2に示す。
【0161】
また、測定の結果、各サンプルは、可撓部の隆起を20%に圧縮したときにおける荷重(表2中の20%圧縮時の荷重)が0.1N以上2.0N以下の範囲内であるか否かに応じて、生理用ナプキンに適した素材であるか否かの評価が行われる。20%圧縮時の荷重が0.1Nより小さい場合は、可撓部の圧縮剛性が小さすぎて、一般的な下着による圧縮力に対して、可撓部の高さの変動が生じるおそれがある。また、20%圧縮時の荷重が2.0Nより大きい場合は、可撓部の圧縮剛性が大きすぎて、使用者に対して異物感や違和感を生じさせてしまう。
【0162】
【表2】
【0163】
測定の結果、サンプル2、サンプル3、及びサンプル4は、20%圧縮時の荷重が0.1N以上2.0N以下の範囲内にあるという結果が得られた。したがって、可撓部の圧縮剛性の観点からは、サンプル2、サンプル3、サンプル4を構成する素材は、生理用ナプキンの表面シート、液吸収層、及び裏面シートとして、適した素材であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生理用ナプキンの外観を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る生理用ナプキンを平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図3】図1中のIII−III線の破断斜視図である。
【図4】図1中のIII−III線の部分破断斜視図である。
【図5】図1中のVI−VI線の破断斜視図である。
【図6】図1中のVI−VI線の破断斜視図である。
【図7】図6中の立体部を取り除いた状態を示す破断斜視図である。
【図8】外力が作用していない自由な状態の生理用ナプキンを示す側面図である。
【図9】幅方向の外力が作用した状態の生理用ナプキンを示す側面図である。
【図10】図9中のIV−IV線の断面を示す概略図である。
【図11】図9中のV−V線の断面を示す概略図である。
【図12】図9中のVI−VI線の断面を示す概略図である。
【図13】図9中のVII−VII線の断面を示す概略図である。
【図14】第1実施形態の変形例1に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図15】第1実施形態の変形例2に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図16】第2実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図17】第3実施形態に係る生理用ナプキンを平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図18】図17中のVIII−VIII線の断面を示す部分破断斜視図である。
【図19】液吸収層を示す平面図である。
【図20】液吸収層を示す平面図である。
【図21】液吸収層を示す平面図である。
【図22】液吸収層を示す平面図である。
【図23】第4実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図24】図23中の立体部のみを示した部分破断斜視図である。
【図25】第4実施形態の変形例1に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図26】図25中の立体部のみを示した部分破断斜視図である。
【図27】第5実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図28】第6実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図29】第7実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図30】第8実施形態に係る生理用ナプキンを平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図31】生理用ナプキンを、平坦に展開した状態を示す平面図である。
【図32】第9実施形態に係る生理用ナプキンの、中央固定領域が設けられた部分で切断した破断斜視図である。
【図33】図32中の液吸収層を示した部分破断斜視図である。
【図34】試験例に用いたサンプルの斜視図である。
【図35】試験例に用いたサンプルを縦方向から見た図である。
【図36】試験例に用いたサンプルを測定台に固定した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0165】
1,1a,1b,101,201,301a,301b,401 生理用ナプキン
501,601,701a,701b,801 生理用ナプキン
10,110,410,510,810 本体部
11 裏面シート
12,412,512 表面シート
19 圧縮溝
20,20a,120 液吸収層
25,25a,125,225,225d,725a 可撓部
30,330,330a,430 立体部
337a,337b 固定領域用弾性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面材、液不透過性の裏面材、並びに、これら表面材及び裏面材の間に設けられた吸収体を有する実質的に縦長の本体部と、
前記本体部のうち前記表面材側に設けられ、前記本体部の長手方向の中心軸に沿って伸びる立体部と、を備える吸収性物品であって、
前記立体部の前記裏面材側の下方に位置する領域には、前記立体部の隆起方向に沿って隆起可能な可撓部が形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の目付け及び/又は厚みを、前記領域以外の部分より減じることにより形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の一部にスリット、エンボス、抜き部より選択される少なくとも一つを形成してなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記領域には、前記長手方向に沿って収縮可能な弾性部材が配置される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記可撓部は、前記領域における前記吸収体を設けないことにより形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記可撓部の幅方向の左右には、前記領域内に、前記長手方向に沿って、補強材を配置される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記可撓部の幅方向の長さは、前記立体部の幅方向の長さよりも長くなるように形成される請求項1から6いずれか記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記可撓部の幅方向の長さは、使用者の尾てい骨が当接する尾てい骨該当位置に比べて、使用者の臀部が当接する臀部該当位置のほうが長くなるように形成される請求項1から7いずれか記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記立体部の両側縁近傍で前記長手方向に沿って、前記吸収体を圧縮してなる圧縮溝が設けられている請求項1から8いずれか記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記本体部の裏面材側のうち、前記可撓部が位置する部分には、ズレ止め手段を設けない請求項1から9いずれか記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記本体部の幅方向の圧縮力に対して、前記領域の曲げ剛性は、前記領域を除く部分の曲げ剛性よりも低い請求項1から10いずれか記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記領域の幅方向におけるガーレー試験機による曲げ剛性が、前記領域を除く部分の曲げ剛性の80%以下である請求項11記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記領域の前記長手方向の湾曲時距離減少率試験における距離の減少率が30%以下である請求項1から12いずれか記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記可撓部が隆起を形成した際の圧縮剛性試験による20%圧縮時の剛性が0.1Nから2.0Nである請求項1から13いずれか記載の吸収性物品。
【請求項1】
液透過性の表面材、液不透過性の裏面材、並びに、これら表面材及び裏面材の間に設けられた吸収体を有する実質的に縦長の本体部と、
前記本体部のうち前記表面材側に設けられ、前記本体部の長手方向の中心軸に沿って伸びる立体部と、を備える吸収性物品であって、
前記立体部の前記裏面材側の下方に位置する領域には、前記立体部の隆起方向に沿って隆起可能な可撓部が形成されている吸収性物品。
【請求項2】
前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の目付け及び/又は厚みを、前記領域以外の部分より減じることにより形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記可撓部は、前記領域における前記吸収体の一部にスリット、エンボス、抜き部より選択される少なくとも一つを形成してなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記領域には、前記長手方向に沿って収縮可能な弾性部材が配置される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記可撓部は、前記領域における前記吸収体を設けないことにより形成される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記可撓部の幅方向の左右には、前記領域内に、前記長手方向に沿って、補強材を配置される請求項1記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記可撓部の幅方向の長さは、前記立体部の幅方向の長さよりも長くなるように形成される請求項1から6いずれか記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記可撓部の幅方向の長さは、使用者の尾てい骨が当接する尾てい骨該当位置に比べて、使用者の臀部が当接する臀部該当位置のほうが長くなるように形成される請求項1から7いずれか記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記立体部の両側縁近傍で前記長手方向に沿って、前記吸収体を圧縮してなる圧縮溝が設けられている請求項1から8いずれか記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記本体部の裏面材側のうち、前記可撓部が位置する部分には、ズレ止め手段を設けない請求項1から9いずれか記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記本体部の幅方向の圧縮力に対して、前記領域の曲げ剛性は、前記領域を除く部分の曲げ剛性よりも低い請求項1から10いずれか記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記領域の幅方向におけるガーレー試験機による曲げ剛性が、前記領域を除く部分の曲げ剛性の80%以下である請求項11記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記領域の前記長手方向の湾曲時距離減少率試験における距離の減少率が30%以下である請求項1から12いずれか記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記可撓部が隆起を形成した際の圧縮剛性試験による20%圧縮時の剛性が0.1Nから2.0Nである請求項1から13いずれか記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2007−89818(P2007−89818A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283074(P2005−283074)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]