説明

吸収性物品

【課題】表面シートにおいて、体液の拡散性及び吸収性を高めるとともに、液の逆戻りを効果的に防止し、べた付きや不快感を低減した吸収性物品を提供する。
【解決手段】透液性の表面シート3と、裏面シート2との間に吸収体4が介在された吸収性物品1において、前記表面シート3は、所定パターンでエンボスが付与されることにより凹部8,8…及び凸部7,7…が交互に隣接形成され、前記凹部8,8…は親水性を有するとともに、前記凸部7,7…は疎水性を有し、かつ前記凹部8,8…は相対的に繊維密度の高い高密度領域Dとされ、前記凸部7,7…は相対的に繊維密度の低い低密度領域Dとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面シートにおいて、液の拡散性及び吸収性を高めるとともに、体液の逆戻りを効果的に防止し、べた付きや不快感を低減した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸収性物品の表面材として、肌への接触面積を低減させることにより湿り感を抑える、或いは質感を出すと共に感触性を高める、又は体液を吸収体に速やかに移行させるなど種々の目的に応じて適宜のエンボスパターンを付与したものが市場に提供されている。さらに、前記表面材として、排出された体液を下層の吸収体に素速く吸収させるため界面活性剤などの親水剤を塗布したものも市場に提供されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、透液性表面シートが、少なくとも2枚の短繊維不織布を熱エンボス圧着して形成されており、少なくとも最上層が親水性の不織布で形成されたものを使用した吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、平面部を有しないように多数の畝部と溝部とが交互に配列されており、上記畝部は凸状に湾曲し且つ上記溝部は凹状に湾曲しており、上記溝部は間隔をおいて配置された多数の開孔を有している不織布を表面シートとして使用した吸収性物品が開示されている。また、前記表面シートとして、上記畝部の最大シート厚さaと上記開孔の下端周縁部のシート厚さbとの差(a−b)が200μm以上である不織布が使用されている。
【特許文献1】特開2005−312601号公報
【特許文献2】特開平8−302555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、肌と接触する最上層の不織布全体が親水性の不織布で形成されているため、表面シート上に排出された体液が表面シート全体に拡散しやすくなるとともに、体液が表面シートに保持されやすくなり、液の逆戻りによるべた付き感や不快感の原因となっていた。
【0006】
一方、上記特許文献2記載の吸収性物品は、表面シートの坪量を全体として概ね均一としつつ、前記畝部の上端部と下端部との厚さに差を設けることによって、表面シート内に繊維密度の差(すなわち、毛管力の勾配)を生ぜしめ、これを駆動力として表面シート内の液移動性を一層向上せしめるというものである。ところが、表面シート内の繊維密度の差による毛管力の勾配だけでは体液の吸収速度に限界があり、より素速い体液の吸収が望まれていた。
【0007】
さらに、上記特許文献2記載の吸収性物品は、表面シートの溝部に多数の開孔が設けられているため、体液の素速い吸収が可能となるが、吸収後の体液がこの開孔部から逆戻りしてべた付き感や不快感を生じるおそれがあった。
【0008】
そこで本発明の課題は、表面シートにおいて、体液の拡散性及び吸収性を高めるとともに、液の逆戻りを効果的に防止し、べた付きや不快感を低減した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性の表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記表面シートは、所定パターンでエンボスが付与されることにより凹部及び凸部が交互に隣接形成され、前記凹部は親水性を有するとともに、前記凸部は疎水性を有し、かつ前記凹部は相対的に繊維密度の高い高密度領域とされるとともに、前記凸部は相対的に繊維密度の低い低密度領域とされていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明は、表面シートに所定パターンでエンボスを付与することにより凹部及び凸部を交互に隣接形成し、前記凹部は親水性を有するとともに、前記凸部は疎水性を有し、かつ前記凹部は相対的に繊維密度の高い高密度領域とされるとともに、前記凸部は相対的に繊維密度の低い低密度領域とされている吸収性物品である。これにより、表面シートに体液が排出されると、疎水性を有する凸部から親水性を有する凹部に体液が速やかに移動するため、体液の拡散性が良好となるとともに、表面側(凸部)に体液が保水されることがなく吸収体側(凹部)に移行するため、表面シートのべた付き感や不快感が解消されるようになる。
【0011】
また、凹部に集まるように拡散した体液は、その後、親水性を有するように構成された体液透過性の高いこの凹部を通過して吸収体に速やかに吸収されるので、吸収性を高めることができるようになる。
【0012】
さらに、前記凹部は、開孔などを設けることによらずに、親水性を備えることによって吸水性を向上させているので、吸収体に吸収された体液が、その後に圧力を受けたとしても、逆戻りが防止されるようになる。
【0013】
また、前記凹部を高密度領域、前記凸部を低密度領域として繊維密度勾配を設けることにより、前述の凹部を親水性、凸部を疎水性とすることによる凸部から凹部への体液の移行をさらに促進し、凹部側により速やかに体液が移動して拡散性がより良好となる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記表面シートを構成する素材繊維として疎水性を有する不織布を使用し、エンボス付与と同時に、前記凹部となる領域に親水化剤を塗布してある請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記表面シートを構成する素材繊維として疎水性を有する不織布を使用し、エンボス付与と同時に、前記凹部となる領域に親水化剤を塗布するものである。すなわち、表面シートの凸部は、常時肌と接触する部分であるので、前記撥水化剤が肌と常時接することを避けるため、表面シートを構成する素材繊維として疎水性を有するものを用い、凹部に親水処理を施すことにようにすることが望ましい。また、エンボス付与と同時に親水化剤を凹部に塗布するため、エンボスによる圧力作用によって親水化剤をある程度の範囲に染み渡らせることが可能となる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記表面シートの下面側には、多数の開孔が形成された多孔プラスチックフィルム又は前記表面シートよりも親水度が高い不織布シートからなるセカンドシートが配設されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、前記表面シートの下面側に、多数の開孔が形成された多孔プラスチックフィルム又は前記表面シートよりも親水度が高い不織布シートからなるセカンドシートを配設することにより、表面シートにおいて体液が凹部に集まるように拡散した後、その多くが下層側に配置された体液透過性の高い多孔プラスチックフィルム又は不織布シートからなるセカンドシートを通過して吸収体に至るとともに、その後に圧力を受けたとしても、逆戻りが防止されるようになる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記表面シートは、複層の不織布によって構成され、使用面側に配設される表層不織布の繊度に対して、吸収体側の各層の不織布の繊度が順次小さくなるように設定される請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、前記表面シートを複層の不織布によって構成する。そして、この積層不織布は、使用面側に配設される表層不織布の繊度に対して、吸収体側の各層の不織布の繊度が順次小さくなるように設定される。
【0020】
従って、前記表面シートには、吸収方向に繊度による密度勾配が形成されるため、使用面側に排出され、前記凹部に移行した体液は、繊度による密度勾配によって吸収体側の各層に速やかに移動し、表面シート及びセカンドシートを通過して吸収体に速やかに吸収されるようになるとともに、表面のさらっと感が持続し易くなる。
【0021】
請求項5に係る本発明として、前記表面シートは、複層の不織布によって構成され、使用面側に配設される表層不織布の繊維密度に対して、吸収体側の各層の不織布の繊維密度が順次高くなるように設定されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項5記載の発明では、前記表面シートを複層の不織布によって構成する。そして、この積層不織布は、圧縮処理等によって使用面側に配設される表層不織布の繊維密度に対して、吸収体側の各層の不織布の繊維密度が順次高くなるように設定されている。
【0023】
従って、前記表面シートには、吸収方向に繊維密度の勾配が形成されるため、使用面側に排出され、前記凹部に移行した体液は、繊維密度の勾配によって吸収体側の各層に速やかに移動し、表面シート及びセカンドシートを通過して吸収体に速やかに吸収されるようになるとともに、表面のさらっと感が持続し易くなる。
【0024】
請求項6に係る本発明として、前記表面シートの使用面側に、繊度が前記表層不織布の繊度より小さく薄いカバー不織布が配設されている請求項4、5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項6記載の発明では、表層不織布の繊度が大きいと、肌触り感が悪化することに鑑みて、前記表面シートの使用面側に、前記表層不織布の繊度より小さく薄いカバー不織布を配設するようにしたものである。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、液の拡散性及び吸収性を高めるとともに、体液の逆戻りを効果的に防止し、べた付きや不快感を低減した吸収性物品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断斜視図である。
【0028】
〔吸収性物品1の構造〕
生理用ナプキン1は、主にはパンティライナー、生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッドなどの用途に供されるもので、例えば図1に示されるように、不透液性裏面シート2と、透液性表面シート3(以下、単に表面シートという。)との間に、吸収体4または同図に示されるように、好ましくはクレープ紙5によって囲繞された吸収体4が介在されるとともに、前記表面シート3と吸収体4との間であって、表面シート3の下面側に多数の開孔が形成された多孔プラスチックフィルム又は不織布シートからなるセカンドシート6を配置した構造となっている。なお、前記吸収体4の周囲においては、前記不透液性裏面シート2と表面シート3とがホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されている。
【0029】
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0030】
前記表面シート3は、熱融着性繊維の不織布からなり、所定パターンでエンボスが付与されることにより凹部8,8…及び凸部7,7…が交互に隣接形成されるとともに、前記凹部8,8…が親水性とされ、前記凸部7,7…が疎水性とされたものである。この表面シート3については後段でさらに具体的に詳述する。
【0031】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、粒状の高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0032】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0033】
前記高吸水性樹脂9は、図5に示されるように、裏面シート2側よりもセカンドシート6側の含有量が多くなるように偏在して混入するのが望ましい。これにより、セカンドシート6に到達した体液を吸収体4に効果的に引き込むことが可能となる。
【0034】
前記透液性表面シート3と吸収体4との間に配置されるセカンドシート6は、前記表面シート3よりも親水度が高く、かつ多数の開孔6a、6a…が形成されたフィルムシートである。フィルムの素材は、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系の熱可塑性樹脂フィルムが好適に使用されるが、ポリエステル、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、EVAなども使用することができる。
【0035】
前記開孔6aの径は、0.05〜2.0mm、好適には0.1〜1.0mmとし、その開孔数は200〜600個/cm程度とするのが望ましい。前記開孔6aを形成するには、合成樹脂シートを軟化温度付近に軟化させて、多数の開孔を有する支持体の上面に位置させた状態で、支持体の下方から吸引したり、支持体の上面から空気圧を加圧したりする方法や、合成樹脂シート素材に多数のスリットを刻印した後に、シート素材を延伸して開孔させる方法、更には多数のニードル(加熱針)を突き刺すことによって開孔を形成する方法など多種の方法があり、適宜の方法によって形成することができるが、一旦通過した体液の逆戻りを防止するためには、前記ニードルによる開孔方法によって、図4に示されるように、表面シート3側の開孔径d1が吸収体4側の開孔径d2よりも大きい漏斗状に形成するのが望ましい。なお、図4(A)は逆円錐台状に開孔を形成した態様であり、図4(B)は異形に開孔を形成した態様である。また、添付図面では上記図4以外は開孔が省略されている。
【0036】
〔表面シート3及びセカンドシート6からなる表層構造〕
前記表面シート3は、前述したように、所定パターンでエンボスが付与されることにより凹部8,8…及び凸部7,7…が長手方向及び短手方向に交互に隣接形成され、前記凹部が親水性を有する親水性領域Wとされ、前記凸部が疎水性を有する疎水性領域Wとされている。さらに、前記凹部8,8…は相対的に繊維密度の高い高密度領域Dとされ、前記凸部7,7…は相対的に繊維密度の低い低密度領域Dとする。
【0037】
この表面シート3を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の疎水性を有する合成繊維とすることができる。一方、前記表面シート3を構成する素材繊維として、たとえばレーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等の親水性を有するものを使用することもできる。
【0038】
すなわち、前記凹部8,8…が親水性領域W、凸部7,7…が疎水性領域Wとなるような表面シート3とするためには、以下のように適宜、親水処理又は撥水処理を施すようにする。具体的には、表面シート3を構成する素材繊維として前述の疎水性を有するものを使用した場合には、エンボス付与により凹部となる領域に親水化剤を塗布して親水処理を施すことによって、前記凹部8,8…を親水性領域Wとした表面シート3を得ることができる。一方、表面シート3を構成する素材繊維として前述の親水性を有するものを使用した場合には、エンボス付与により凸部となる領域に撥水化剤を塗布して撥水処理を施すことによって、前記凸部7,7…を疎水性領域Wとした表面シート3を得ることができる。ここで、表面シート3の凸部7,7…は、常時肌と接触する部分であるので、前記撥水化剤が肌と常時接することを避けるため、表面シート3を構成する素材繊維として疎水性を有するものを用い、凹部8,8…に親水処理を施すことによって前記親水性領域W、疎水性領域Wをそれぞれ形成することが望ましい態様である。したがって、以下この態様を中心に詳述する。
【0039】
かかる表面シート3は、エアスルー法、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布とすることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、エアスルー法、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。これらの中でも、繊維密度勾配を付けやすいエアスルー不織布を使用するのが望ましい。
【0040】
不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0041】
前記親水化剤(界面活性剤)としては、例えば陰イオン性界面活性剤、カルボン酸塩、アシル化加水分解タンパク質、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ポリアルキレノキシドブロック共重合物、陽イオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、イミダゾリニウム誘導体等が挙げられ、この他にも繊維に塗布される界面活性剤として公知の界面活性剤であればどのようなものを適用しても良い。
【0042】
前記撥水化剤としては、例えば、酸クロライド型撥水剤、イソシアネート型撥水剤、ケテンダイマー型撥水剤、ピリジン縮合型撥水剤、エチレン尿素型撥水剤、メチロール化合物型撥水剤、エチレンオキサイド型撥水剤、珪素化合物型撥水剤、クロム錯化合物型撥水剤、チタン含有化合物型撥水剤、ジルコニウム含有化合物型撥水剤、フッ素化合物型撥水剤、ケイ素化合物型撥水剤などを用いることができる。その他の撥水化剤として、油脂(植物油、動物油、植物脂、動物脂)、高級脂肪族化合物(飽和或いは不飽和の酸、アルコール、エステル、アミン、アミド、塩類)、ワックス(植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス、変性ワックス)等を挙げることができ、あるいはその変成物、さらにはこれらの混合物などを用いることができる。
【0043】
前記表面シート3に対して、凹部8,8…及び凸部7,7…が交互に隣接形成されるとともに、前記凹部8,8…が相対的に繊維密度の高い高密度領域とされ、前記凸部7,7…が相対的に繊維密度の低い低密度領域とされるようにエンボスを付与するには、図6に示されるように、凸状部10a、10a…と凹状部10b、10b…が多数配列された第1エンボスロール10と、凸状部11a、11a…と凹状部11b、11b…とが多数配列された第2エンボスロール11とから構成されるとともに、噛み合わせた状態で前記第1エンボスロール10の凸状部10aと、第2エンボスロール11の凹状部11bが接触するか近接するようにしたものを用い、これら第1エンボスロール10と第2エンボスロール11との間に前記表面シート3を通過させることにより、凹部8,8…及び凸部7,7…が交互に隣接形成するとともに、凹状部8、8…が高圧縮されることにより凸部7よりも繊維密度が高くなるようにすることができる。
【0044】
前記凹部8,8…の間隔Pは、2〜6mm、好ましくは3〜5mmとされ、その中間に凸部7,7…が存在するように形成される。また、凹部8,8…と凸部7,7…とは隣接して形成されることが望ましい。また、高低差hは、0.3〜2mm、好ましくは0.5〜1.0mmとするのが望ましい。
【0045】
このようにして形成される凹部8,8…に前述の親水処理を施すには、図6に示されるように、第1エンボスロール10の凸状部10aの先端から親水化剤を吐出するための吐出口10cを設け、第1エンボスロール10と第2エンボスロール11との間での表面シート3の圧縮時に、前記吐出口10cから親水化剤を吐出し、凹部8に塗布することによってなされる。このような吐出口は、第2エンボスロール11の凹部に形成してもよく、また第1エンボスロール10の凸状部10a及び第2エンボスロール11の凹状部11bの両方に形成してもよい。
【0046】
次に、前記エンボスの付与パターンについて図7〜図10に基づいて詳述する。図7〜図10は、表面シート3に付与されるエンボスパターンの例を示す平面図であり、付与されるエンボスの内、前記親水性領域Wとされる凹部8,8…を黒色で表示したものである。
【0047】
第1形態例は、図7に示されるように、凹部8,8…がドット状に形成され、四隅をドット状凹部8,8…で囲まれた中間部に凸部7を形成するようにしたものである。親水性領域Wの凹部8,8…がドット状に形成され、その他の部分が疎水性領域Wとされるため、親水性の体液が保水されやすい部分が小さくなり、べた付きや不快感を生じることなく、サラッと感を高めることができる。
【0048】
第2形態例は、図8に示されるように、長手方向に亘る凹部8,8…と凸部7,7…とが交互に縞状に形成されたものであり、これによって表面シート3は全体的に幅方向に波状に形成されるようにしたものである。凸部7,7…が長手方向に亘って設けられるため、長手方向に溝状の凹部8,8…が形成され、体液がこの溝状の凹部8,8…に移行しやすくなり、体液の拡散性及び吸収性を高めることができる。
【0049】
第3形態例は、図9に示されるように、凹部8,8…が格子状に形成されるとともに、この格子で囲まれた部分に凸部7が形成されるものである。親水性領域Wの凹部8,8…を格子状とすることにより、親水性領域Wを連続的に形成することができ、体液の拡散性を高めることができるとともに、吸収性が向上する。
【0050】
第4の形態例は、図10に示されるように、凹部8,8…を長手方向に沿った非連続ライン状又は点線状としたものである。本形態例は、前記第1形態例のドット状と同様の考え方であるが、親水性領域Wの凹部8,8…での長手方向の拡散が期待できる。
【0051】
一方、前記表面シート3の下面側に積層されるセカンドシート6は、多数の開孔が形成された多孔プラスチックフィルム又は不織布シートによって構成されている。かかるセカンドシート6は、前記表面シート3よりも親水度が高くなるように親水化剤による処理などが施されている。かかる親水性の付与は、前記セカンドシート6の表裏面に対して親水化剤(界面活性剤)を塗布することにより成される。前記親水化剤(界面活性剤)としては、前述の表面シート3に使用する親水化剤(界面活性剤)と同様のものを使用することができる。
【0052】
前記界面活性剤の塗布方法としては、例えばスプレーによる塗布、グラビア印刷やフレキソ印刷による塗工、各種コータによるカーテン塗工を上げることができる。親水度の調整は、前記界面活性剤の塗布量を調整することにより行うことが可能である。
【0053】
また、前記セカンドシート6においては、図5に示されるように、吸収体4側の面の親水度を表面シート3側の面よりも高く設定し、表面側から裏面側にかけて親水度勾配を持たせるようにしてもよい。親水度勾配を持たせることにより、セカンドシート6の上面に存在する体液を効果的に吸収体4側に引込みできるようになる。
【0054】
前記表面シート3が単独の状態でエンボスが付与された後、前記セカンドシート6と積層され、好ましくは前記表面シート3の各凹部8,8…において互いに接合されていることが望ましい。接合方法は、熱融着、超音波融着、接着剤等任意の方法を採用することができる。この場合は、接合部となる凹部8,8…以外の凸部7,7…ではセカンドシート6との間に空間が存在することになるため、高いクッション性を有するようになる。
【0055】
以上詳述した表層構造の場合は、図3に示されるように、前記凸部7,7…が相対的に繊維密度の低い低密度領域Dとされ、前記凹部8,8…が相対的に繊維密度の高い高密度領域Dとされ、前記低密度領域Dから前記高密度領域Dに至る繊維密度勾配が形成される。その結果、前記表面シート3に体液が排出されると、凸部7,7…に存在する体液は、繊維密度勾配によって凹部8,8…側に速やかに移動するため体液の拡散性が良好となるとともに、表面側(低密度領域D側)に体液が保水されることがなくなるため、べた付き感が解消されるようになる。また、下層側には透過性の高いセカンドシート6が配設されているとともに、該セカンドシート6は前記表面シート3よりも親水度が高く設定されているため、体液が凹部8,8…に集まるように拡散した後、その多くが下層側に配置された透水性の高いセカンドシート6を透過して吸収体4に至るとともに、その後に圧力を受けた場合でも逆戻りが防止されるようになる。
【0056】
ところで、前記表面シート3及びセカンドシート6は、それぞれ単層の不織布又は多層の不織布によって構成されるとともに、相互に積層されることによって積層不織布とされることが好ましい。図2に示される例では、前記表面シート3が使用面側に配設される表層不織布3Aとその下層の下層不織布3Bの2層の不織布からなり、セカンドシート6が単層の不織布によって構成された3層構造となっている。そして、前記表層不織布3Aの繊度に対して、その下層の吸収体4側に配設される下層不織布3Bの繊度が順次小さくなるように設定されるか、或いは前記表層不織布3Aの繊維密度に対して、その下層の吸収体4側に配設される下層不織布3Bの繊維密度が順次高くなるように設定されるようにすることが好ましい。
【0057】
すなわち、上記構成により、表面シート3には、各層に亘って繊度、或いは圧縮処理等によって密度勾配が形成されるようになる。このため、凹部8,8…に移行した体液は、繊度又は繊維密度の勾配によって吸収体側の各層に速やかに移動し、表面シート3及びセカンドシート6を通過して吸収体4に速やかに吸収されるようになると同時に、吸収体4に吸収された体液が、その後に圧力を受けたとしても逆戻りが防止されるようになる。また、さらっと感が持続し易くなる。
【0058】
一方、前記表面シート3には、前述の通り、繊度等による密度勾配によって体液の吸収がより効果的に行われるようにする目的で、その表面側に繊度の大きな表層不織布3Aが配設されているため、肌触り感が悪化するおそれがある。そこで、前記表面シート3の使用面側に、繊度が前記表層不織布3Aの繊度より小さく薄いカバー不織布を配設することが好ましい。前記カバー不織布によって肌触り感が良好となる一方で、下層側は繊維密度勾配を設けてあるため体液の速やかな吸収が阻害されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る吸収性物品1の一部破断斜視図である。
【図2】その要部拡大横断面図である。
【図3】作用効果を説明するための表面シート3の要部拡大断面図である。
【図4】(A)(B)は共に多孔プラスチックフィルムからなるセカンドシート6の開孔態様を示す要部拡大断面図である。
【図5】本吸収性物品1の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図6】第1エンボスロール10と、第2エンボスロール11との噛み合わせ状態を示す図である。
【図7】表面シート3のエンボスパターン(その1)を示す平面図である。
【図8】表面シート3のエンボスパターン(その2)を示す平面図である。
【図9】表面シート3のエンボスパターン(その3)を示す平面図である。
【図10】表面シート3のエンボスパターン(その4)を示す平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…吸収性物品(生理用ナプキン)、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…凸部、8…凹部、9…高吸水性樹脂、10…第1エンボスロール、10a…凸状部、10b…凹状部、11…第2エンボスロール、11a…凸状部、11b…凹状部、12…第2不織布シート、20…積層不織布、D…低密度領域、D…高密度領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記表面シートは、所定パターンでエンボスが付与されることにより凹部及び凸部が交互に隣接形成され、前記凹部は親水性を有するとともに、前記凸部は疎水性を有し、かつ前記凹部は相対的に繊維密度の高い高密度領域とされるとともに、前記凸部は相対的に繊維密度の低い低密度領域とされていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートを構成する素材繊維として疎水性を有する不織布を使用し、エンボス付与と同時に、前記凹部となる領域に親水化剤を塗布してある請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記表面シートの下面側には、多数の開孔が形成された多孔プラスチックフィルム又は前記表面シートよりも親水度が高い不織布シートからなるセカンドシートが配設されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートは、複層の不織布によって構成され、使用面側に配設される表層不織布の繊度に対して、吸収体側の各層の不織布の繊度が順次小さくなるように設定される請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートは、複層の不織布によって構成され、使用面側に配設される表層不織布の繊維密度に対して、吸収体側の各層の不織布の繊維密度が順次高くなるように設定されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表面シートの使用面側に、繊度が前記表層不織布の繊度より小さく薄いカバー不織布が配設されている請求項4、5いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−268559(P2009−268559A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119457(P2008−119457)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】