説明

吸収性物品

【課題】保湿効果を有するスキンケア物質を肌に供給できるものでありながら、液残りによる装着感の悪化や肌トラブルの発生を抑制しうる吸収性物品を提供する。
【解決手段】表面シート3と吸収体4との間に、保湿剤としてホスホリルコリン基含有重合体が塗布された保湿剤保持シート6が介在されるとともに、表面シート3には保湿剤が塗布されておらず、表面シート3が保湿剤保持シート6に所定レベル以上の圧接力で圧接されたとき、繊維間隙や孔3cを介して保湿剤保持シート6の構成繊維が表面シート3の表面側に突出し、表面シート3が保湿剤保持シート6に圧接される力が所定レベル未満のときには、保湿剤保持シート6の表面シート3側部分が表面シート3の表面側に突出しないように構成された吸収性物品1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌トラブルを抑制する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、使い捨て紙おむつなどの吸収性物品は、一般に、ポリエチレンシート又はポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性シートと、不織布又は透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させた構造を有している。
この種の吸収性物品においても、近年は着用者の肌への優しさを求め、機能性物質、例えばスキンケア物質を表面シート等に添加したものが種々提案されている。例えば、長時間装着してもカブレを起こさないように油溶性ポリフェノールなどの油溶性皮膚収斂剤を用いるもの(特許文献1参照)や、おむつカブレを防止するために、吸収性基材にタンニン、没食子酸などのポリフェノールを保持させたもの(特許文献2参照)、カブレを防止するために、吸収性物品にpH調整剤を塗布したもの(特許文献3参照)、あるいは皮膚との刺激を少なくするためにローション組成物を含有させたもの(特許文献4参照)等が提案されている。
また、本発明者は、化学的或いは物理的刺激に対して敏感なアレルギー体質の人であっても肌トラブルを生じないように、肌接触シートにホスホリルコリン基含有重合体を塗布することを提案した(特許文献5)。ホスホリルコリン基含有重合体は、生体適合物質の一種であるとともに、保湿性、保護被膜形成能力、肌荒れ抑制効果を有するものであり、化学的或いは物理的刺激に対して敏感な人の場合であっても、カブレ、擦れ、肌荒れなどの肌トラブルを効果的に解消することができるため、吸収性物品の保湿剤として特に好ましいものである。
【特許文献1】特開2003−12490号公報
【特許文献2】特開平3−268751号公報
【特許文献3】特開平2−1265号公報
【特許文献4】特表2000−505682号公報
【特許文献5】特開2006−271652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、肌接触シートにホスホリルコリン基含有重合体を塗布すると、肌接触シートの親水性が向上し、排泄物の吸収時に肌接触シートに液残り(保水)が発生するということが、その後の研究開発過程で判明した。このような液残りがあると、湿り感やべとつき感が高くなり、装着感が悪化する。また肌接触シートにおける液残りは程度によっては肌トラブルの原因にもなる。
そこで本発明の課題は、保湿効果を有するスキンケア物質を肌に供給できるものでありながら、液残りによる装着感の悪化や肌トラブルの発生を抑制しうる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりのものである。
<請求項1記載の発明>
肌に接触する肌接触シートの裏面側に、保湿剤としてホスホリルコリン基含有重合体が塗布された保湿剤保持シートを有しており、
前記肌接触シートは少なくとも肌当接面側に保湿剤が塗布されておらず、
前記肌接触シートは表裏に貫通する通路を有しており、
前記肌接触シートが前記保湿剤保持シートに所定レベル以上の圧接力で圧接されたとき、前記通路を介して前記保湿剤保持シートの一部が前記肌接触シートの表面側に突出し、前記肌接触シートが前記保湿剤保持シートに圧接される力が所定レベル未満のときには、前記通路を介して前記保湿剤保持シートの一部が前記肌接触シートの表面側に突出しないように構成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0005】
(作用効果)
本発明では、肌接触シートは肌当接面側に保湿剤が塗布されておらず、装着者が座位をとるなどにより肌接触シートが保湿剤保持シートに所定レベル以上の圧接力で圧接されたとき、通路を介して保湿剤保持シートの一部が肌接触シートの表面側に突出し、当該突出部分が肌と当接することにより肌に保湿剤を供給する。装着者が立位でいる場合等、肌接触シートが保湿剤保持シートに圧接される力が所定レベル未満のときには、保湿剤保持シートの一部が肌接触シートの表面側に突出しない。よって、保湿効果を有するスキンケア物質を肌に供給できるものでありながら、吸収時に親水性が高くなる保湿剤塗布部位は肌から遠い位置に保持され、従来のように肌接触シートの親水性は高くならない。しかも、肌接触シートの裏面側に位置する保湿剤保持シートの親水性が高くなり、肌接触シートの液分が裏面側に移行し易くなる。よって、単に肌接触シートに保湿剤を塗布しない場合と比べて、肌接触シートの液残りによる装着感の悪化防止効果及び肌トラブルの予防効果がより一層のものとなる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
前記肌接触シートは、原料繊維の繊度0.1〜10dtex、原料繊維の繊維長1mm以上、目付け10〜100g/m2、厚み0.1〜10mmの不織布であり、且つ
前記保湿剤保持シートは、原料繊維の繊度0.1〜10dtex、原料繊維の繊維長1mm以上、目付け10〜100g/m2、厚み0.1〜10mmの短繊維不織布である、
請求項1記載の吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
肌接触シート及び保湿剤保持シートは、それぞれ本項記載のような不織布であると、前述した突出作用において、保湿剤保持シートの繊維が肌接触シートの繊維間隙を通路として突出し、肌に接触するようになる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記保湿剤保持シートは、単位表面積あたりの長さ1mm以上の起毛本数が1〜100本/mm2である、請求項2記載の吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
保湿剤保持シートが起毛していることで、前述した突出作用がより一層発揮され易くなる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記通路の一部又は全部が、前記肌接触シートに複数形成された孔又はスリットである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
肌接触シートに孔を穿孔する或いはスリットを切断形成すると、当該部分が通路となって、保湿剤保持シートが肌接触シートの表面側に突出しやすくなるため好ましい。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記ホスホリルコリン基含有重合体が前記保湿剤保持シートに、固形分換算で0.021g/m2以上の割合で含有されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
ホスホリルコリン基含有重合体の含有量が本項記載の範囲であれば十分な効果が発揮される。本発明では、ホスホリルコリン基含有重合体の塗布量を増加させても、従来のような液残りは発生し難いため、従来よりも塗布量を増加させることができ、例えば0.35g/m2以上とすることもできる。
【0014】
<請求項6記載の発明>
透液性の表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在されてなるものであり、
前記肌接触シートは前記表面シートであり、
前記保湿剤保持シートは前記表面シートと吸収体との間に介在されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
本発明の肌接触シート及び保湿剤保持シートは、物品における部位により限定されるものではないが、特に本項記載のように、吸収体の表面側を覆う表面シートを本発明の肌接触シートとし、表面シートと吸収体との間に保湿剤保持シートを介在させた構造は、多くの種類の吸収性物品に容易に適用できるものである。特に、保湿剤保持シートの部位は、従来の多くの製品において、逆戻り等を改善するためのセカンドシート又は中間シート等と呼ばれるシートが介在されていた部位であるため、設備の大幅な変更なくして製造できるものである。
【0016】
<請求項7記載の発明>
前記吸収体における前記肌接触シート側の面に、前記肌接触シートの凹部が収容される窪み部及び前記肌接触シートの凹部の底部に当接する膨出部の少なくとも一方が設けられている、請求項6記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
この場合、吸収体の剛性が相対的に高いため、保湿剤保持シートのうち窪み部に収まる部分は所定レベル以上の圧力が加わらず、表面シートの表面側に突出せず、一方、膨出部に当接する部分はより強い圧力が加わり、より高く表面シートの表面側に突出する。具体的には吸収体における身体表面の凹部と対応する部分には膨出部を設け、吸収体における身体表面の凸部と対応する部分には窪み部を設けるのが好ましい。これにより、本発明の保湿剤供給作用を満遍なく発揮させることができる。
【0018】
<請求項8記載の発明>
前記吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、又は使い捨て紙おむつである請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
本発明は、これらの吸収性物品に特に好適である。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり本発明によれば、保湿効果を有するスキンケア物質を肌に供給できるものでありながら、液残りによる装着感の悪化や肌トラブルの発生を抑制しうるようになる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、使い捨て紙おむつ等の吸収性物品に用いられるものである。図1は薄型生理用ナプキン1の一部破断斜視図である。この生理用ナプキン1は、不透液性裏面シート2と、透液性表面シート3(以下、単に表面シートという。)との間に、吸収体4または同図に示されるように、クレープ紙5によって囲繞された吸収体4が介在されるとともに、表面シート3と吸収体4との間に本発明に係る保湿剤保持シート6を配置した構造となっている。吸収体4の周囲においては、不透液性裏面シート2と表面シート3とがホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されている。
【0022】
不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0023】
吸収体4としては、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙等の吸収シート5によって包むのが望ましい。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0024】
高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0025】
吸収体4におけるパルプ目付けは50〜600g/m2程度、厚みは1〜50mm程度であるのが望ましい。また、高吸水性樹脂の目付けは1〜600g/m2程度であるのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が少な過ぎると、十分な吸収能を与えることができず、多過ぎるとパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、ヨレや割れ等が発生し易くなる。
【0026】
表面シート3は、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックフィルムシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。又、プラスチックフィルムシートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル、ナイロン等のポリアミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などを好適に使用することができる。
【0027】
特徴的には、表面シート3は、裏面側の保湿剤保持シートの一部を表面側に突出させるための通路を有する。この通路は、表面シート3が不織布等の繊維集合シートの場合にはその繊維間隙により形成することができる。これに代えて又はこれとともに、表面シート3に孔3cを穿孔する、あるいはスリットを入れることにより通路を形成することもできる。
【0028】
表面シート3の繊維間隙を通路として用いる場合、その素材としては原料繊維の繊度0.1〜10dtex、原料繊維の繊維長1mm以上(特に1〜700mm)、目付け10〜100g/m2、厚み0.1〜10mmの不織布が好適であり、特にエアスルー不織布やポイントボンド不織布が好適である。長繊維不織布を用いる場合には繊維間隙を確保し難いため、孔3c等を設けるのが好ましい。
【0029】
孔3c等を設ける場合、その寸法は特に限定されないが、例えば、孔の開口面積は0.1〜30mm2、特に1〜10mm2であるのが好ましく、スリットの長さは1〜10mm、特に2〜5mmであるのが好ましい。スリットは十字等に交差させて形成することもできる。孔3c等の寸法が大き過ぎると、保湿剤保持シートが意図しないレベルの圧力でも突出し易くなり、小さ過ぎると孔を設けることによる効果が乏しくなる。
【0030】
また、孔3c等の数及び配置も特に限定されないが、上述した寸法の場合、幅方向の配置間隔d1が0.1〜10mm、且つ前後方向の配置間隔d2が0.1〜10mmとなるように数及び配置を定めるのが好ましい。間隔d1,d2が広すぎると肌に対する保湿剤供給量にムラが生じやすくなり、狭すぎると孔3c等の数が多くなりすぎ、表面シート3に保湿剤を塗布した従来のものに近くなるため好ましくない。なお、孔3c等の配置は、千鳥状配置(図示例)としたり、格子状(行列状)配置としたりできる他、他の規則的あるいは不規則な配置を採用することもできる。また、孔3c等は表面シート3の一部の領域にのみ設けることができる。
【0031】
さらに特徴的には、表面シート3と吸収体4との間には保湿剤保持シート6が配置される。保湿剤保持シート6は、ホットメルト接着剤や超音波シール、ヒートシール、ヒートエンボス等により表面シート3に接合することができる。保湿剤保持シート6としては、不織布を基材とし、その少なくとも表面シート3側面に保湿剤をスプレーやロール転写等により塗布したものが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維及び加工方法としては表面シート3と同様のものを用いることができる。特に原料繊維の繊度0.1〜10dtex、原料繊維の繊維長1mm以上(特に1〜200mm)、目付け10〜100g/m2、厚み0.1〜10mmの短繊維不織布が好適であり、特にエアスルー不織布やポイントボンド不織布が好適である。また、保湿剤保持シート6の表面シート3側面には、エンボス加工等の凹凸加工を施したり、不織布の場合には起毛を形成するのが好ましい。表面シート3が上記繊度、繊維長、目付け及び厚みの不織布である場合、単位表面積あたりの長さ1mm以上の起毛本数が1〜100本/mm2であるのが好ましい。また、起毛を設ける場合に非捲縮繊維を用いると、肌に当たってチクチクするため、捲縮繊維を用いるのが好ましい。なお、保湿剤保持シート6の親水性は、保湿剤の塗布及び原料繊維の種類の選定により、表面シート3よりも高くなっているのが好ましい。
【0032】
表面シート3が保湿剤保持シート6に所定レベル以上の圧接力で圧接されたときには、表面シート3の繊維間隙や孔等を介して保湿剤保持シート6の一部(不織布の場合には構成繊維)が表面シート3の表面側に突出し、当該突出部分が肌と当接することにより肌に保湿剤が転写される。装着者が立位でいる場合等、表面シート3が保湿剤保持シート6に圧接される力が所定レベル未満のときには、保湿剤保持シート6の一部が表面シート3の表面側に突出しない。よって、保湿剤を肌に供給できるものでありながら、吸収時に親水性が高くなる保湿剤塗布部位は肌から遠く、表面シート3の裏面側に保持され、従来のように表面シート3の親水性は高くならない。しかも、表面シート3の裏面側に位置する保湿剤保持シート6の親水性が高くなり、表面シート3の液分が裏面側に移行し易くなる。よって、単に表面シート3に保湿剤を塗布しない場合と比べて、表面シート3の液残りによる装着感の悪化防止効果及び肌トラブルの予防効果がより一層のものとなる。
【0033】
ここで、表面シート3に加わる厚み方向の圧力の程度は、接触する身体表面の部位によって異なるものである。よって、吸収体4における表面シート3側の面に、保湿剤保持シート6が収容される窪み部4c及び保湿剤保持シート6の裏面に当接する膨出部4bの少なくとも一方を設けるのも好ましい形態である。このような形態では、吸収体4の剛性が相対的に高いため、保湿剤保持シート6のうち窪み部4cに収まる部分は所定レベル以上の圧力が加わらず、表面シート3の表面側に突出せず、一方、膨出部4bに当接する部分はより強い圧力が加わり、より高く表面シート3の表面側に突出する。よって、例えば女性用の場合、吸収体4における排尿口、排血口、排便口と対応する部分には膨出部4bを設け、男性用の場合には吸収体4における排尿口の部分には窪み部4cを設け、排便口と対応する部分には膨出部4bを設けると、保湿剤保持シート6の突出による保湿剤供給作用を満遍なく発揮させることができる。なお、このような吸収体4の窪み部4c及び膨出部4bは、吸収体4をパルプの積繊体とする場合には積繊時の成形形状を変更するだけで容易に製造できるため、好ましいものである。
【0034】
本発明の保湿剤としては、ホスホリルコリン基含有重合体が用いられる。ホスホリルコリン基含有重合体は、一分子中に生体膜の構成成分であるリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)と重合性を有するメタクリロイル基とを併せ持つ2−メタクリロイルオキシエチルホスホコリン(MPC)の重合体(以下、MPCポリマーという。)である。MPCポリマーを皮膚に付着させることによって優れた保湿効果を与えることができ、さらにMPCポリマーが皮膚表面に水和被膜を形成することにより、擦れなどの物理的刺激及び体液などにより化学的刺激をブロックすることができ、カブレやかゆみ、擦れ、肌荒れ等の肌トラブルを効果的に防止することができる。特に、このMPCポリマーは、生体適合性が高いため、アレルギー体質の人であっても同様の効果が望めるようになる。MPCポリマーの塗布部分における単位面積あたりの含有量は、固形分換算で0.021g/m2以上であるのが望ましい。塗布量が少な過ぎると皮膚刺激抑制効果が期待できない。MPCポリマーの塗布量は多いほど好ましいが、費用対効果の観点からは1.0g/m2以下、特に0.5g/m2以下とするのが好ましい。
【0035】
(その他)
上記例では、肌との当接面が表面シート3のみである生理用ナプキンについて説明したが、図2に示されるように、表面側両側に、サイド不織布9,9を有するとともに、このサイド不織布によって立体ギャザー7,7が形成されている生理用ナプキン1Aの場合には、表面シート3の裏面側に上記例と同様の保湿剤保持シート6を介在させる他、立体ギャザー7,7及び/又はサイド不織布9,9の裏面側に上記例と同様の保湿剤保持シート6を介在させてもよい。つまり、このような立体ギャザー7,7及びサイド不織布9,9は、表面シート3と異なり、裏面側に吸収体4を有しないものであるが、肌に接触するものであり、本発明の肌接触シートに含まれるものである。これら立体ギャザー7,7及びサイド不織布9,9においても、場合によっては排泄物の液分が浸透する部分となるため、本発明を適用することに技術的意義があるものである。
【0036】
また、上記例では、肌との当接面が表面シート3のみである生理用ナプキンについて説明したが、図2に示されるように、表面側両側に、サイド不織布9,9を有するとともに、このサイド不織布によって立体ギャザー7,7が形成されている生理用ナプキン1Aの場合には、表面シート3に凹凸を設けて上記例と同様に保湿剤を塗布する他、立体ギャザー7,7及び/又はサイド不織布9,9に凹凸を設けて上記例と同様に保湿剤を塗布してもよい。つまり、このような立体ギャザー7,7及びサイド不織布9,9は、表面シート3と異なり、裏面側に吸収体を有しないものであるが、肌に接触するものであり、本発明の肌接触シートに含まれるものである。これら立体ギャザー7,7及びサイド不織布9,9においても、場合によっては排泄物の液分が浸透する部分となるため、本発明を適用することに技術的意義があるものである。
【0037】
また、上記例では、生理用ナプキンを例にとり本発明を適用した場合について述べたが、図3に示されるように、使い捨て紙おむつ1Bに対しても全く同様に適用することが可能である。よって、同図中に同じ符号を付して説明は省略する。さらに図示しないが、本発明は、パンティライナーや失禁パッド等、他の吸収性物品にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】生理用ナプキンの一部破断斜視図である。
【図2】生理用ナプキンの他例を示す平面図である。
【図3】使い捨ておむつの一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…保湿剤保持シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に接触する肌接触シートの裏面側に、保湿剤としてホスホリルコリン基含有重合体が塗布された保湿剤保持シートを有しており、
前記肌接触シートは少なくとも肌当接面側に保湿剤が塗布されておらず、
前記肌接触シートは表裏に貫通する通路を有しており、
前記肌接触シートが前記保湿剤保持シートに所定レベル以上の圧接力で圧接されたとき、前記通路を介して前記保湿剤保持シートの一部が前記肌接触シートの表面側に突出し、前記肌接触シートが前記保湿剤保持シートに圧接される力が所定レベル未満のときには、前記通路を介して前記保湿剤保持シートの一部が前記肌接触シートの表面側に突出しないように構成されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記肌接触シートは、原料繊維の繊度0.1〜10dtex、原料繊維の繊維長1mm以上、目付け10〜100g/m2、厚み0.1〜10mmの不織布であり、且つ
前記保湿剤保持シートは、原料繊維の繊度0.1〜10dtex、原料繊維の繊維長1mm以上、目付け10〜100g/m2、厚み0.1〜10mmの短繊維不織布である、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記保湿剤保持シートは、単位表面積あたりの長さ1mm以上の起毛本数が1〜100本/mm2である、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記通路の一部又は全部が、前記肌接触シートに複数形成された孔又はスリットである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ホスホリルコリン基含有重合体が前記保湿剤保持シートに、固形分換算で0.021g/m2以上の割合で含有されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
透液性の表面シートと、裏面シートとの間に吸収体が介在されてなるものであり、
前記肌接触シートは前記表面シートであり、
前記保湿剤保持シートは前記表面シートと吸収体との間に介在されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体における前記肌接触シート側の面に、前記肌接触シートの凹部が収容される窪み部及び前記肌接触シートの凹部の底部に当接する膨出部の少なくとも一方が設けられている、請求項6記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、使い捨て紙おむつのいずれかである請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−5859(P2009−5859A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169630(P2007−169630)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】