説明

吸収性物品

【課題】漏れが生じ難く、吸収体の吸収能力を有効に活用でき、かつ、陰嚢のかぶれが生じ難い吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20と、を備えた吸収性物品1Aである。少なくとも表面が撥水性材料からなり、吸収性物品1Aの幅方向に延びるように配置され、その幅方向両側縁部がトップシート18に対して接合された陰茎固定シート50Aを複数枚備え、複数枚の陰茎固定シート50Aが、吸収性物品1Aの前後方向に向かって並列するように配置されている吸収性物品1A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体と、液透過性材料からなるトップシートと、液不透過性材料からなるバックシートと、を備えた吸収性物品に関するものである。詳しくは、着用者の陰茎を固定するための陰茎固定シートを更に備えた吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、おむつを交換する際の労力を軽減するため、使い捨ておむつと、尿パッド(「インナーパッド」、「補助パッド」等とも称される。)を併用することが行われている。尿パッドを併用することで、着用者が排泄した場合でも尿パッドのみを交換すれば足り、使い捨ておむつはそのまま使用することができる。このような方法は、排泄の度に使い捨ておむつ全体を交換する方法と比較すると交換が容易であるため、介護者の労力が軽減される。また、尿パッドは使い捨ておむつよりも安価であるため、排泄の度に使い捨ておむつ全体を交換する方法と比較してコスト的にも有利である。
【0003】
通常、尿パッドは、使い捨ておむつのトップシート側の面に尿パッドを平敷きし、尿パッドが積層された状態の使い捨ておむつを着用者の肌に宛がう方法で使用される。これに対し、男性用に特化した尿パッドとして、陰茎を被包し、或いは陰茎を袋内に挿入するタイプの尿パッドも知られている。例えば、粘着部が形成されていて、陰茎を尿パッドでコーン状(サック状)に被包した状態で固定することができるタイプの尿パッド(例えば、特許文献1〜3参照)や、予め袋状に形成されていて、その袋内に陰茎を挿入し得るように構成された尿パッド(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−280727号公報
【特許文献2】特開2001−129012号公報
【特許文献3】特開2007−068642号公報
【特許文献4】特開平9−299392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記のような尿パッドは、その構造上、装着が面倒であり、また、一旦装着した後も尿パッドが陰茎から外れ易く、尿パッドを宛がった状態を維持できないため漏れを生じ易いという問題があった。特に、高齢者のように陰茎が萎縮した人に使用した場合には、尿パッドを陰茎に対して十分に固定することが困難で、陰茎から尿パッドが外れてしまうおそれが高いという点が問題であった。
【0006】
前記の問題に対応するため、男性高齢者に対しては、女性と同様に、使い捨ておむつの内部に尿パッドを平敷きして使用する方法も行われている。しかし、このような使用方法では、使い捨ておむつ及び尿パッドを装着する際の陰茎の向きによって、尿パッドの前端部(腹側端部)や左右の側縁部から尿が漏れる場合があった。尿パッドの前端部や左右の側縁部から尿漏れが起きた場合、尿パッドは殆ど汚れておらず、また、吸収体の吸収能力に余力があるにも拘らず、漏れが発生するという不都合が生じる。更に、尿パッドを平敷きして使用すると、陰茎のみならず陰嚢も尿に曝されるため、陰嚢のかぶれが生じ易いという問題もあった。
【0007】
そして、装着する際の陰茎の向きによって、おむつの前端部や左右の側縁部から尿が漏れるという問題、及び陰嚢のかぶれが生じ易いという問題は、尿パッドに限らず、使い捨ておむつにおいても生じ得る。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、漏れが生じ難く、吸収体の吸収能力を有効に活用でき、かつ、陰嚢のかぶれが生じ難い吸収性物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、撥水性材料等からなり、吸収性物品の幅方向に延びる陰茎固定用のシートを複数枚付設するとともに、それらのシートを吸収性物品の前後方向に向かって並列するように配置し、各シートの間の何処からでも陰茎を挿入し得る構造とすることで、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の吸収性物品が提供される。
【0010】
[1] 吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備えた吸収性物品であって、少なくとも表面が撥水性材料からなり、前記吸収性物品の幅方向に延びるように配置され、その幅方向両側縁部が前記トップシートに対して接合された陰茎固定シートを複数枚備え、複数枚の前記陰茎固定シートが、前記吸収性物品の前後方向に向かって並列するように配置されている吸収性物品。
【0011】
[2] 前記陰茎固定シートの前端部が、隣接する一の陰茎固定シートの後端部と一部重畳するように配置されるとともに、前記陰茎固定シートの後端部が、隣接する他の陰茎固定シートの前端部と一部重畳するように配置される構造が繰り返されて、複数の前記陰茎固定シートが配置されている前記[1]に記載の吸収性物品。
【0012】
[3] 前記陰茎固定シートの前端部が、隣接する一の陰茎固定シートの後端部の上側に位置するように配置されるとともに、前記陰茎固定シートの後端部が、隣接する他の陰茎固定シートの前端部の下側に位置するように配置される構造が繰り返されて、複数の前記陰茎固定シートが配置されている前記[2]に記載の吸収性物品。
【0013】
[4] 前記陰茎固定シートの前端に沿って、伸張状態で固定された陰茎固定シート伸縮材が配置されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0014】
[5] 前記吸収体が、その幅方向中央部における、前記陰茎固定シートの下部に位置する部分に、陰茎収容用凹部が形成されたものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸収性物品。
【0015】
[6] 前記陰茎収容用凹部は、凹部前端の幅よりも凹部後端の幅の方が狭くなるように形成されている前記[5]に記載の吸収性物品。
【0016】
[7] 前記吸収体が、その幅方向中央部における、前記陰茎固定シートの下部に位置する部分から、前記吸収体の後端に向かって、前記吸収体の他の部分に比して吸収性能が高い高吸収部が形成されたものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸収性物品は、漏れが生じ難く、吸収体の吸収能力を有効に活用でき、かつ、陰嚢のかぶれが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の吸収性物品の一の実施形態を示す概略平面図である。
【図1B】図1Aに示す吸収性物品のA−A’断面を模式的に示す概略断面図である。
【図1C】図1Aに示す吸収性物品のB−B’断面を模式的に示す概略断面図である。
【図1D】図1Aに示す吸収性物品の使用状態におけるB−B’断面を模式的に示す概略断面図である。
【図2A】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す概略平面図である。
【図2B】図2Aに示す吸収性物品のA−A’断面を模式的に示す概略断面図である。
【図2C】図2Aに示す吸収性物品のB−B’断面を模式的に示す概略断面図である。
【図2D】図2Aに示す吸収性物品のC−C’断面を模式的に示す概略断面図である。
【図3A】本発明の吸収性物品の更に別の実施形態を示す概略平面図であり、吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を示す図である。
【図3B】図3Aに示す吸収性物品のX−X’断面を示す概略断面図である。
【図3C】図3Aに示す吸収性物品を正面側から見た状態を示す概略斜視図である。
【図3D】図3Aに示す吸収性物品から吸収性本体を除去し、外装シートの部分のみを示す概略平面図である。
【図4】本発明の吸収性物品の更にまた別の実施形態を示す概略断面図であり、使用状態において幅方向中心線に沿って切断した断面を模式的に示す図である。
【図5】本発明の吸収性物品の別の実施形態を示す概略断面図であり、使用状態において幅方向中心線に沿って切断した断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の吸収性物品を実施するための形態について尿パッド及びパンツ型使い捨ておむつの例により具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
[1]定義等:
「尿パッド」とは、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのように、吸収体22と、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20とを備えるが、使い捨ておむつとは異なり、着用者の腰周りを被包する部分を持たない吸収性物品を意味する。「尿パッド」はインナーパッド、補助パッドとも称され、下着の内面や使い捨ておむつのトップシートの表面に載置した状態で用いることが一般的である。
【0021】
「パンツ型使い捨ておむつ」とは、図3A及び図3Cに示す吸収性物品1Cのように、前身頃2と後身頃2の対応する側縁2a,2b(6a,6b)同士を接合することによって、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12(12a,12b)が形成され、予めパンツ型に構成された使い捨ておむつを意味する。
【0022】
そして、図3A〜図3Dに示す吸収性物品1Cのように、トップシート18とバックシート20との層間に吸収体22が内包され、パッド状に形成された吸収性本体14と、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12が形成されたパンツ型を呈する外装シート16とを備え、外装シート16の内側に吸収性本体14が配置・固定された「2ピースタイプ」のものがよく用いられる。
【0023】
本明細書においては、図1Aで示すように、吸収性物品1Aのうち着用者の腹側に宛がわれる部分を「前身頃(図中、符号2)」、着用者の股下に宛がわれる部分を「股下部(図中、符号4)」、着用者の背側(尻側)に宛がわれる部分を「後身頃(図中、符号6)」と称する。
【0024】
また、本明細書において、陰茎固定シートに関し「長さ」というときは、図1Aにより説明すると、シート形状に拘らず、陰茎固定シート50Aが吸収性物品1Aに接合された状態における吸収性物品1Aの前端E1側の端部から吸収性物品1Aの後端E2側の端部までの長さ(前後方向の長さ)を意味する。また、同様に、陰茎固定シートに関し、「幅」というときは、シート形状に拘らず、陰茎固定シート50Aが吸収性物品1Aに接合された状態における吸収性物品1Aの一の側縁E3から吸収性物品1Aの他の側縁E4までの長さ(左右方向の長さ)を意味するものとする。
【0025】
[2]本発明の吸収性物品の構成:
本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Dに示す吸収性物品1Aのように、少なくとも表面が撥水性材料からなり、吸収性物品1Aの幅方向に延びるように配置され、その幅方向両側縁部がトップシート18に対して接合された陰茎固定シート50Aを複数枚備え、複数枚の陰茎固定シート50Aが、吸収性物品1Aの前後方向に向かって並列するように配置されているものである。
【0026】
図1Dに示すように、陰茎固定シート50Aを備えていると、吸収性物品1Aを装着する際に、陰茎Pの向きを吸収性物品1Aの後端E2側(股下側、背側)に向かうように固定することができる。従って、陰茎Pが吸収性物品1Aの前端E1側や側縁E3,E4側を向き難く、前端E1や側縁E3,E4からの尿漏れを有効に防止することができる。そして、陰茎Pの向きに従って、尿Uが吸収性物品1Aの後端E2側(股下側、背側)に向かって流れるので、吸収性物品1Aの股下部4及び後身頃6に配置された吸収体22の吸収能力も十分に発揮させることができる。
【0027】
また、図1Dに示すように、陰茎固定シート50Aを複数枚備え、その複数枚の陰茎固定シート50Aが吸収性物品1Aの前後方向に向かって並列するように配置されていると、各々の陰茎固定シート50Aの間の何処からでも陰茎Pを挿入することができる。この構造により、着用者の体格・体型に適した陰茎挿入位置を選択することが可能となる。従って、陰茎固定シート50Aから陰茎Pが外れ難くなり、吸収性物品1Aの前端E1や側縁E3,E4からの尿漏れを有効に防止することができる。この構造は、予めウエスト周り開口部や脚周り開口部によって装着位置が決まっており、尿パッドのように装着位置を前後にずらすことが困難なテープ型使い捨ておむつ、パンツ型使い捨ておむつに適用すると特に有効である。
【0028】
更に、陰茎固定シート50Aによって形成される陰茎挿入部54Aに陰茎Pを挿入すると、陰嚢Sは陰茎固定シート50Aの表面に当接する形となり、トップシート18から離隔される。また、陰茎固定シート50Aの少なくとも表面(図示の例では陰茎固定シート50A全体)が撥水性シートから構成されていると、トップシート18に付着する尿Uが陰茎固定シート50Aから染み出してくることを抑制することができる。従って、尿Uが陰嚢Sに直接接触し難く、陰嚢Sのかぶれを有効に防止することができる。
【0029】
なお、本発明の吸収性物品を吸収性物品1Aのような平敷きタイプの尿パッドに適用すると、陰茎を被包するタイプの尿パッドや袋内に陰茎を挿入するタイプの尿パッドと比べて尿パッドの装着が容易であり、また、尿パッドの外れが生じ難い。従って、尿パッドを宛がった状態を維持し易く、漏れを有効に防止することができる。
【0030】
[2−1]陰茎固定シート:
本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Dに示す吸収性物品1Aのように、陰茎固定シート50Aを備えている。この陰茎固定シート50Aによって、陰茎Pは吸収性物品1Aの股下側(ないしは背側)に向かうように固定される。
【0031】
陰茎固定シート50Aは、吸収性物品1Aの前端E1側に、吸収性物品1Aの幅方向に延びるように配置される。「吸収性物品の前端側」とは、吸収性物品1Aをその長手方向中心線で2分割した場合に、前端E1側の領域に陰茎固定シート50Aが配置されていることを意味する。陰茎固定シート50Aを吸収性物品1Aの前端E1側に配置するのは、陰茎固定シート50Aによって形成される陰茎挿入部54Aに対して、吸収性物品1Aの前端E1側から陰茎Pを挿入する構造とするためである。
【0032】
また、「吸収性物品の幅方向」とは、吸収性物品1Aの前後方向と直交する方向を意味する。通常、吸収性物品は、前後方向に長い形状に構成されるから、その長手方向が前後方向、短手方向が幅方向(左右方向)となる。陰茎固定シート50Aを吸収性物品1Aの幅方向に延びるように配置することで、陰茎Pが吸収性物品1Aの後端E2側(股下側、背側)に向くように固定することができる。なお、陰茎固定シート50Aは、通常、吸収性物品1Aの幅方向中央部に配置される。そして、固定された陰茎Pから排泄される尿Uを十分に吸収させるという観点から、吸収性物品1Aの吸収体22配置部位の上部に配置することが好ましい。
【0033】
本発明の吸収性物品は、図1A、図1C及び図1Dに示す吸収性物品1Aのように、陰茎固定シート50Aを複数枚備え、その複数枚の陰茎固定シート50Aが、吸収性物品1Aの前後方向に向かって並列するように配置されている。陰茎固定シート50Aの枚数はその形状やサイズによっても異なるが、3〜10枚とすることが好ましい。3枚未満であると、複数箇所から陰茎を挿入することができるという効果が不十分となる場合がある。10枚を超えると、陰茎をより適切な位置から挿入し得る点では好ましいものの、構造が複雑になるため製造工程が煩雑になるおそれがある。
【0034】
本発明の吸収性物品においては、前記条件を満たす限り、複数の陰茎固定シートの配置形態について特に制限はない。例えば、複数の陰茎固定シートを、陰茎固定シート同士が重畳しないように間隔(隙間)を空けて配置してもよい。しかし、各々の陰茎固定シートの間に隙間が存する場合、陰茎を挿入し易くなる利点はあるものの、前記隙間から尿が漏れ出して陰茎固定シートの表面を濡らしてしまうおそれもある。万が一、陰嚢に尿が付着した場合、陰嚢のかぶれを有効に防止することができなくなるため好ましくない。
【0035】
従って、本発明の吸収性物品は、図1A、図1C及び図1Dに示す吸収性物品1Aのように、陰茎固定シート50Aの前端部が、隣接する一の陰茎固定シート50Aの後端部と一部重畳するように配置されるとともに、陰茎固定シート50Aの後端部が、隣接する他の陰茎固定シート50Aの前端部と一部重畳するように配置される構造が繰り返されて、複数の陰茎固定シート50Aが配置されていることが好ましい。
【0036】
このように、複数の陰茎固定シート50Aを前後に配置される陰茎固定シート50Aと一部を重畳させながら配置することで、各々の陰茎固定シート50Aの間の隙間がなくなるため、尿の漏れ出しを有効に防止することができる。ひいては、陰茎固定シートの表面が尿で濡れ難くなり、陰嚢のかぶれを有効に防止することができる。
【0037】
隣接する陰茎固定シート50Aとの重畳部分の長さ(前後方向の長さ)は、5〜50mmとすることが好ましい。5mm未満とすると、陰茎固定シート50A同士を重畳させた効果が得られ難い。一方、50mmを超えると、陰茎固定シート50A同士の重畳部分が長くなり過ぎて、陰茎固定シート50Aが吸収体22の表面を大きく覆ってしまう。従って、吸収体表面からの尿吸収が阻害され、吸収性物品の吸収性能を十分に活用することができなくなるおそれがある。
【0038】
前記のように、複数の陰茎固定シートを前後に配置される陰茎固定シートと一部を重畳させながら配置する場合、陰茎固定シートを重畳させる形態について特に制限はない。例えば、図4に示す吸収性物品1Dのように、陰茎固定シート50Dの前端部が、隣接する一の陰茎固定シート50Dの後端部の下側に位置するように配置されるとともに、陰茎固定シート50Dの後端部が、隣接する他の陰茎固定シート50Dの前端部の上側に位置するように配置される構造が繰り返されて、複数の陰茎固定シート50Dが配置されている形態を挙げることができる。
【0039】
しかし、図4に示す形態の場合、重畳された2枚の陰茎固定シート50Dの層間隙間が尿Uの流れ方向に向かって開口しているため、尿勢によっては陰茎固定シート50Dの表面を伝って尿Uが漏れ出すことも考えられる。従って、本発明の吸収性物品は、図1A、図1C及び図1Dに示すように、陰茎固定シート50Aの前端部が、隣接する一の陰茎固定シート50Aの後端部の上側に位置するように配置されるとともに、陰茎固定シート50Aの後端部が、隣接する他の陰茎固定シート50Aの前端部の下側に位置するように配置される構造が繰り返されて、複数の陰茎固定シート50Aが配置されていることが好ましい。
【0040】
図4に示す形態とは異なり、図1Dに示す構造では重畳された2枚の陰茎固定シート50Aの層間隙間が尿Uの流れ方向とは反対側に向かって開口している。この構造では、図1Dに示すように、尿Uが多量かつ勢いよく排泄されても尿Uは各々の陰茎固定シート50Aの裏面を伝ってトップシート18の表面に流れ落ち、重畳された2枚の陰茎固定シート50Aの層間隙間から尿Uが漏れ出すことを有効に防止することができる。また、陰茎挿入部54Aが下向きに開口するように形成されるので、陰茎Pを陰茎挿入部54Aに挿入し易いという利点もある。
【0041】
陰茎固定シートの形状は特に限定されず、前後方向の長さに比して幅が大であるもの、前後方向の長さに比して幅が小であるもののいずれでもよい。例えば、図1Aに示す陰茎固定シート50Aは、前後方向の長さに比して幅が大である矩形状(短冊状)のシートを用いた例である。
【0042】
陰茎固定シートの幅は60mm以上であって、吸収性物品の幅以下とすることが好ましい。60mm未満とすると、陰茎挿入部の幅も狭くならざるを得ず、陰茎を挿入し難くなる。また、陰茎挿入部の幅が狭くなると、吸収性物品の装着位置が若干左右にずれただけでも陰茎をうまく挿入できなくなる場合がある。即ち、吸収性物品の左右の位置ずれに対する許容幅が狭くなり使い勝手が悪くなるおそれがある。一方、陰茎固定シートの長さは、10〜100mmとすることが好ましい。10mm未満とすると、隣接する陰茎固定シート50Aに対して十分に重畳させた配置とすることが困難となり、陰茎固定シート同士を重畳させた効果が得られ難くなる。100mmを超えると、着用者の体格・体型に適した陰茎挿入位置を選択することができるという効果が減殺されるおそれがある。
【0043】
なお、複数枚の陰茎固定シートを配置した際にその最前端から最後端間での長さを100mm以上に構成すると、陰茎固定シートによって陰嚢、その他の着用者の肌が覆われる面積が増加する。従って、陰嚢等がトップシートの表面に接触し難くなり、かぶれ等のスキントラブルをより効果的に防止することができるというメリットがある。しかし、複数の陰茎固定シート全体としてあまりに長く配置しても前記効果の増大を期待できず、却って陰茎固定シートによって股下部の着用感が悪化する場合があるため、陰茎固定シートが吸収性物品の長手方向中心を超える部分には存しないように配置することが好ましい。
【0044】
但し、陰茎固定シートの形状は、前記のような矩形状に限定されるものではない。例えば、図2Aに示す陰茎固定シート50Bのように、陰茎固定シート50Bの後端における幅方向中央部が、陰茎固定シート50Bの前端側に向かって円弧状に切り欠かれた形状となっており、幅方向中央部の長さよりも、幅方向両側縁部の長さの方が長くなるように形成されているものも好ましい。
【0045】
陰茎固定シート50Bのように、幅方向中央部を幅方向両側縁部よりも凹んでいるように形成することによって、陰茎固定シートを単純な矩形状に形成した場合と比較して陰茎挿入部54Bに陰茎を挿入し易くなり、フィットもしやすくなる。また、陰茎固定シート50Bのように、幅方向両側縁側を長く構成することで、陰茎の先端部が吸収性物品1Bの左右側を向いてしまった場合でも左右の側縁E3,E4からの横漏れを有効に防止することができる。更にまた、陰茎固定シートの両側縁側においては他の陰茎固定シートと十分に重畳させることができる。従って、着用時のように吸収性物品を湾曲形状とした場合でも重畳させた陰茎固定シート同士が離間して重畳部が大きく開口してしまうことが少ない。
【0046】
この際、陰茎固定シートの幅方向中央部は幅方向両側縁部よりも20〜50mm凹んでいることが好ましい。20mm未満とすると、凹みが小さ過ぎて陰茎挿入部に陰茎を挿入し易くなる等の効果が得られ難くなる。一方、50mmを超えると、陰茎固定シートが中央部に比して両側縁部が極端に長い形状となり易い。このような形状の陰茎固定シートを複数枚重畳させると、両側縁部における陰茎固定シートの重畳枚数が必要以上に多くなってしまうことが多い。従って、陰茎固定シートの両側縁部における触感が硬くなり、着用感を低下させるおそれがある。
【0047】
陰茎固定シートを構成する材料は特に限定されないが、少なくとも表面については撥水性材料によって構成する。例えば、撥水性の不織布シートを用いることが好ましい。前記構成により、トップシートに付着した尿が陰茎固定シートを透過して陰嚢に達することが少なくなり、陰嚢のかぶれをより効果的に防止することができる。
【0048】
撥水性の不織布シートとしては、後述する立体ギャザーと同様の素材を用いることができる。また、本発明の吸収性物品は、陰茎固定シートの少なくとも表面が撥水性材料で構成されていればよいため、陰茎固定シートの表面(着用者の陰嚢が当たる面)を撥水性シートにより構成するとともに、前記撥水性シートの裏面(トップシートと対向する側の面)に、吸収性をもたせた形態も好ましい。例えば、1)陰茎固定シートを構成する撥水性シートの裏面に吸収体が内張りされた形態、2)陰茎固定シートを構成する撥水性シートの裏面に吸収体が内張りされ、更に、前記吸収体の裏面に、トップシート同様の液透過性(即ち親水性)不織布シートが内張りされた形態等を挙げることができる。これらの形態で用いる吸収体はパルプ(フラッフパルプ等)とSAPからなるものであってもよいし、ティシュや吸収紙のみからなる簡易的な吸収体であってもよい。
【0049】
なお、陰茎固定シートには、陰茎の固定力を向上させるため、伸縮材を付設してもよい。このような構成では、陰茎固定シートの幅方向に向かって伸張状態の伸縮材を付設することにより、陰茎の固定力を向上させることができる。この形態は、後述する立体ギャザーに準じて構成することができる。
【0050】
陰茎固定シートに伸縮材を付設する場合、伸縮材の配置位置は特に限定されない。例えば、陰茎固定シートの後端に沿って、或いは陰茎固定シートの前端と後端の間に配置する形態を挙げることができる。また、これらの位置の各々に伸縮材を配置し、全体として複数本の伸縮材が配置されるように構成してもよい。
【0051】
但し、本発明の吸収性物品においては、図5に示す吸収性物品1Eのように、陰茎固定シート50Eの前端に沿って、伸張状態で固定された陰茎固定シート伸縮材66が配置されていることが好ましい。このような形態は、陰茎固定シートが挿入する陰茎の形状に追従するように変形し易い。また、2枚の陰茎固定シートを重畳的に配置した場合でも、層間隙間が形成され難く前記層間隙間からの漏れを有効に防止することができる。
【0052】
なお、「陰茎固定シートの前端に沿って」とは、陰茎固定シート伸縮材66が陰茎固定シート50Eの前端と概ね平行するように配置され、かつ、陰茎固定シートを長手方向中心線で2分割した場合に、少なくとも陰茎固定シート前端側の領域に陰茎固定シート伸縮材が配置されていることを意味する。より具体的には、陰茎固定シートの前端から0〜10mmの範囲内に配置されていることが好ましい。
【0053】
陰茎固定シートの前端に沿って陰茎固定シート伸縮材を配置し、更に陰茎固定シートの後端に沿って陰茎固定シート伸縮材を配置する形態も考えられる。このような形態は陰茎固定シートを陰茎にフィットさせ易いという利点がある。しかし、伸縮材の伸張率等によっては、1)陰茎を陰茎挿入部に挿入する際の抵抗が大きくなる、2)吸収性物品を装着中に陰茎を必要以上に圧迫するおそれがある、3)尿は下側に向かって流れるので、陰茎固定シートの後端側に伸縮材を配置しても漏れ防止効果が小さい等の理由から、陰茎固定シートの前端のみに沿って陰茎固定シート伸縮材を配置することが好ましい。
【0054】
陰茎固定シート伸縮材の配置方法、固定方法については、立体ギャザー伸縮材、脚周り伸縮材等を配置・固定する方法を採用することができる。図5に示す吸収性物品1Eは、陰茎固定シート50Eの前端側を一部折り返し、その折り返し部分の層間に陰茎固定シート伸縮材66を挟み込んで接着剤により固定した例である。
【0055】
[2−2]接合部:
本発明の吸収性物品は、図1A及び図1Bに示す吸収性物品1Aのように、陰茎固定シート50Aの幅方向両側縁部がトップシート18に対して接合されている。より具体的には、陰茎固定シート50Aの一の側縁部を接合する第1接合部52Aと、陰茎固定シート50Aの他の側縁部を接合する第2接合部52Bとが形成されている。
【0056】
陰茎固定シート50Aの両側縁部(即ち、2箇所)をトップシート18に対して接合することで、陰茎固定シート50Aとトップシート18によって区画された陰茎挿入部54Aが形成される。「接合部」は、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いた接着、加熱による熱接合(ヒートシール等)、超音波融着等により形成することができる。
【0057】
「陰茎固定シートの両側縁部」とは、陰茎固定シートの最も長い部分を基準(全幅)として、各々の縁部から40%長さまでの部分を意味するものとする。本発明においては、陰茎固定シート50Aが容易に剥離しない限りにおいて、陰茎固定シート50Aの両側縁部の全領域がトップシート18の表面に接合されている必要はなく、陰茎固定シート50Aの両側縁部のうち少なくとも一部の領域がトップシート18の表面に接合されていればよい。但し、確実な接合を確保するためには、図1Aに示す吸収性物品1Aのように、陰茎固定シート50Aの前端から後端に至るまで連続的に第1接合部52A、第2接合部52Bが形成されていることが好ましい。
【0058】
陰茎固定シートとトップシートとの確実な接合を図る上では、第1接合部及び第2接合部を連続する面状に形成する形態が好ましい。但し、本発明の吸収性物品は、図2A〜図2Cに示す吸収性物品1Bのように、第1接合部52C及び第2接合部52Dが、陰茎固定シート50Bの前後方向に延びるように配置された、複数本の線状接合部56a,58a,60a,62a,56b,58b,60b,62bから形成されていてもよい。このように、接合部を複数本の線状接合部の集合として構成する形態は、接合部全体を面状に構成する形態と比較して、吸収性物品を連続生産する際に高速生産が行い易く、また、接合に用いる接着剤の量も少なくすることができるため、コスト的に有利である点において好ましい。
【0059】
図2A〜図2Cに示す形態においては、複数本の線状接合部56a,58a,60a,62a,56b,58b,60b,62bが、陰茎固定シート50Bの幅方向中央側に配置されたもの(線状接合部56a,58a,56b,58b)の長さよりも、陰茎固定シート50Bの側縁側に配置されたもの(線状接合部60a,62a,60b,62b)の長さの方が長くなるように配置されていることが好ましい。
【0060】
前記のような形態は、線状接合部の長さを全て等しい長さに形成したものと比較して、陰茎挿入部の幅が陰茎固定シートの前端側(腹側)から後端側(股下側及び背側)に向かうにつれて狭くなる。従って、排泄された尿が吸収性物品の幅方向中央部に向かって収束され易い。また、陰茎固定シートの両側縁側の線状接合部が長いため、尿パッドの左右両側縁からの横漏れを有効に防止することができる点において好ましい。なお、図2Aに示す吸収性物品1Bにおいては、線状接合部60a,62a,60b,62bの長さを等しく形成しているが、このような形態には限定されない。例えば、線状接合部60a,60bの長さを、線状接合部58a,58bと線状接合部62a,62bの中間の長さとし、陰茎固定シート50Bの幅方向中央側から側縁側に向かうにつれて、徐々に線状接合部の長さが長くなるように構成してもよい。
【0061】
線状接合部の幅は1〜20mmとすることが好ましい。1mm未満とすると、接合強度が低くなり、トップシートから陰茎固定シートが外れてしまうおそれがある。20mmを超えると、配置可能な線状接合部の本数が少なくなるため、線状接合部の本数が多い場合と比較して各線状接合部の長さを徐々に変化させることが難しくなる。即ち、複数の線状接合部が陰茎固定シートの幅方向側縁側から中央側に向かって急速に短くなっていく形態を採用せざるを得ず、吸収性物品の幅方向中央部に尿をスムーズに収束させることが困難となる。
【0062】
線状接合部を幅1〜20mmで形成した場合、複数の線状接合部を配置する間隔は、1〜20mmとすることが好ましい。1mm未満とすると、線状接合部同士の間隔が狭過ぎて連続的な面状に塗布したものと大差がなくなるため、吸収性物品を連続生産する際に高速生産を行い難くなり、接合に用いる接着剤の量も効果的に減らすことができず、生産コスト面でのメリットを得難くなる。20mmを超えると、線状接合部同士の間隔が広すぎるために、吸収性物品の幅方向中央部に排泄した尿をうまく収束させることができない場合がある。
【0063】
本発明の吸収性物品は、図2A〜図2Cに示す吸収性物品1Bのように、第1接合部52Cと第2接合部52Dとの間に形成される陰茎挿入部54Bの幅W1,W2が、吸収性物品1Aの前端E1側から後端E2側に向かうにつれて(即ち、腹側から股下側、背側に向かうにつれて)狭くなるように構成されていることが好ましい(W1>W2)。このような構成は、陰茎挿入部54B内部で尿が排泄された場合でも、尿は吸収性物品1Bの幅方向中央部に向かって収束される。従って、吸収性物品1Bの側縁E3,E4からの尿漏れを有効に防止することができる。また、陰茎が萎縮した人(男性高齢者等)のように、陰茎固定シート50Bによって陰茎を十分に固定することができず、陰茎挿入部54Bの内部で陰茎が遊動し易い着用者に対して好適に用いることができる。
【0064】
本発明においては、図2Aに示すように、複数の陰茎固定シート50Bの最後端における陰茎挿入部54Bの幅W2(即ち、陰茎挿入部54Bの出口幅)が、複数の陰茎固定シート50Bの最前端における陰茎挿入部54Bの幅W1(即ち、陰茎挿入部54Bの入口幅)よりも狭くなっていればよい。狭さの程度については特に限定されず、複数の陰茎固定シート50Bの最前端における陰茎挿入部54Bの幅W1に対し、複数の陰茎固定シート50Bの最後端における陰茎挿入部54Bの幅W2が30〜80%の幅となっていることが好ましい。
【0065】
30%未満とすると、幅W2が狭過ぎて、排尿時の尿勢によっては陰茎固定シート50Bの後端側(陰茎挿入部54Bの出口側)から尿を十分に排出させることができない場合がある。従って、陰茎固定シート50Bの前端側(陰茎挿入部54Bの入口側)から尿があふれてしまうおそれがある。80%を超えると幅W2が広過ぎて、陰茎固定シート50Bの後端側(陰茎挿入部54Bの出口側)で十分に尿を収束させることができない場合がある。また、後述のように吸収体の幅方向中央部において吸収性能が高い高吸収部を形成する構成を採用する場合に、高吸収部を幅狭く効率的に配置することができず、前記構成の効果を十分に発揮させることができないおそれがある。
【0066】
複数の陰茎固定シートの最後端における陰茎挿入部の幅が、複数の陰茎固定シートの最前端における陰茎挿入部の幅よりも狭くなっている限り、陰茎挿入部の幅の変化の態様についても特に制限はない。例えば、陰茎挿入部の幅を、複数の陰茎固定シートの最前端から中途までは一定の幅を保ち、中途から連続的にその幅が狭くなり、複数の陰茎固定シートの最後端において最小幅に至るように構成してもよい。但し、図2Aに示す吸収性物品1Bにおける陰茎挿入部54Bの幅は、複数の陰茎固定シート50Bの最前端における幅W1から徐々にその幅が狭くなり、中途から複数の陰茎固定シート50Bの最後端に至るまでは一定の幅W2を保つように構成されている。
【0067】
[2−3]吸収体:
以下、吸収体の構成のうち、本発明の吸収性物品に固有の構成について説明する。吸収体の一般的な構成については別項で述べる。
【0068】
本発明の吸収性物品は、吸収体が、その幅方向中央部における、陰茎固定シートの下部に位置する部分から、吸収体の後端に向かって、吸収体の他の部分に比して吸収性能が高い高吸収部が形成されたものであることが好ましい。このような構成によれば、吸収性物品の幅方向中央部に多量の尿が収束された場合でもその尿を吸収体に十分に吸収させることができる。従って、尿の吸収が間に合わず漏れを生ずる事態を有効に防止することができる。また、吸収体全体の吸収性能を高く構成することも考えられるが、高い吸収性能を要求される尿の収束部のみに高吸収部を形成した方がSAP等の効率的な利用を図ることができ、生産コストの面でも有利である。
【0069】
図2Aにより説明すると、高吸収部は吸収体22の幅方向中央部における、陰茎固定シート50Bの下部に位置する部分から、吸収体22の後端に向かって形成される。中でも、高吸収部の幅が陰茎挿入部54Bの出口側の幅W2の50〜150%の範囲であって、吸収体22の陰茎固定シート50B最前端(陰茎挿入部54Bの入口)の直下に位置する部分を起点とし、吸収体22全長の50%長さの部分まで形成されていることが好ましい。
【0070】
高吸収部の幅が陰茎挿入部の出口側の幅W2の50%未満であると、収束された多量の尿を高吸収部で十分に吸収できず、高吸収部を形成したメリットを享受することができない場合がある。一方、高吸収部の幅が陰茎挿入部の出口側の幅W2の150%を超えると、吸収性物品の幅方向中央部に収束された尿に対して高吸収部の幅が広過ぎて、余分な高吸収部が多くなり非効率的である。
【0071】
吸収体の陰茎固定シート前端(陰茎挿入部の入口)より吸収体の前端側、或いは吸収体全長の50%長さを超える部分まで高吸収部が形成されていても、その部分に尿が接触することが少なく非効率的である。
【0072】
高吸収部は、例えば、吸収体に含有させるSAPの量を局部的に増加させることにより形成することができる。SAPの量を局部的に増加させる方法としては、例えば、吸収体の幅方向中心線を中心とした幅狭い領域のみに限定的にSAPを散布することによって、その領域のSAP量を増加させる方法や、SAP量を増加させたい領域に、予めSAPを高密度に担持させたSAPシート等の高吸収性を有するシートを配置する等の方法を挙げることができる。
【0073】
本発明の吸収性物品は、図2A〜図2Cに示す吸収性物品1Bのように、吸収体22の幅方向中央部であって、かつ、陰茎固定シート50Bの下部に位置する部分に陰茎収容用凹部64が形成されたものが好ましい。このような形態は、凹部を形成しない場合と比較して、陰茎収容用凹部64に陰茎が収まり易く、陰茎を下向き(吸収性物品の股下側、後端側)に固定し易い。従って、吸収性物品1Bの側縁E3,E4からの横漏れを有効に防止することができる点において好ましい。
【0074】
この場合において、陰茎収容用凹部は陰茎固定シートの最前端に相当する部分から吸収体の前端側にはみ出すように形成してもよい。このような形態は、陰茎収容用凹部が陰茎固定シートの下部のみに形成された形態と比較すると、陰茎を陰茎固定シートの最前端から挿入する場合に、下向き(吸収性物品1Bの股下側、後端側)に固定された陰茎が陰茎固定シート50Bによって圧迫され難い。従って、陰茎を下向きに固定した状態を保持し易い点で好ましい。
【0075】
陰茎収容用凹部64の深さは特に限定されないが、吸収体22の全厚に対し20〜75%の深さであることが好ましい。20%未満とすると、凹部が浅過ぎるため、陰茎固定シートによって陰茎が圧迫され易く、陰茎を下向きに固定した状態を保持し難くなる場合がある。75%を超えると、陰茎収容用凹部64直下の吸収体が薄くなり過ぎるため、その部分における吸収性能が低下し、吸収されなかった尿により陰茎にかぶれ等のスキントラブルが発生するおそれがある。より具体的には、吸収体22の一般的な厚さが4〜20mm程度であるので、陰茎収容用凹部64の深さを1〜15mmとすることが好ましい。
【0076】
陰茎収容用凹部64の幅は、その前端から後端に至るまで一定の幅であってもよいが、図2A〜図2Cに示す吸収性物品1Bのように、陰茎収容用凹部64前端の幅W3よりも陰茎収容用凹部64後端の幅W4の方が狭くなるように形成されていることが好ましい。この構成によれば、陰茎収容用凹部64の幅を一定幅とした形態と比較して、排泄された尿が吸収性物品1Bの幅方向中央部に収束し易いことに加え、吸収性物品1Bの装着位置が若干左右にずれた場合でも陰茎が陰茎収容用凹部64に収まり易い点で好ましい。
【0077】
陰茎収容用凹部64前端の幅W3に対する陰茎収容用凹部64後端の幅W4の狭さの程度については特に限定されない。但し、幅W3に対し、幅W4が70%以下の幅となっていることが好ましい。70%を超えると、幅W3から幅W4への減少率が小さくなり、排泄された尿を吸収性物品1Bの幅方向中央部に収束させる効果が不十分となる場合がある。
【0078】
本発明の吸収性物品は、吸収体の形状について特に制限はない。例えば、図1Aに示す吸収体22のように、略矩形状に形成されたものを例示することができる。また、図1Aに示す吸収体22のように、矩形の角部がRカットされて曲線状に構成されていてもよい。
【0079】
但し、本発明の吸収性物品は、図2Aに示す吸収性物品1Bのように、吸収体22が、吸収体22前端及び吸収体22後端の幅よりも、陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅が広くなるように構成されていることが好ましい。
【0080】
前記のような形状は、横漏れがし難く、更には吸収性物品1Bの装着位置がずれ難いため着用感にも優れる。具体的には、吸収体22前端側を幅狭く構成することで、吸収性物品1Bもその前端E1を幅狭く構成することが可能となる。このような形態は、吸収性物品1Bの前身頃2によって着用者の腹部が過剰に覆われることがなくなり、着用感が向上する。また、吸収性物品が尿パッドである場合、尿パッドの前端側が不必要に大きいと装着時にパッド前端側の角部が折れてしまうことも多い。そのような場合、尿パッドが折れた部分から尿漏れが起こったり、その部分が着用者の肌に当たって着用感が低下したりするおそれがある。吸収体22の前端、ひいては吸収性物品1Bの前端E1を幅狭く構成すればそのような不具合が生じ難い。
【0081】
更に、吸収性物品1Bが尿パッドである場合に、吸収体22後端側を幅狭く構成することで、吸収性物品1Bもその後端E2側を幅狭く構成することが可能となる。このような形態では、着用者の股下に差し込まれる吸収性物品1Bの股下部4及び後身頃6の幅を狭く構成することができる。従って、吸収性物品1Bの股下部4及び後身頃6の両側縁が着用者の内腿に当たり難くなり、着用感が向上する。更に、吸収体22の陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅を広く構成することで、幅狭い股下や臀溝が存在する背側と比較して平面的な形状の腹側に吸収性物品1Bを幅広く当接させることができるので着用者が動いても吸収性物品1Bの装着位置がずれ難いという効果を奏する。
【0082】
前記の効果を考慮すると、吸収体22の陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅に対し、吸収体22前端の幅及び後端の幅がいずれも40〜80%の幅となっていることが好ましい。
【0083】
なお、吸収体22前端及び吸収体22後端の幅よりも、陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅が広くなるように吸収体22を構成した場合、吸収体22前端の幅と吸収体22後端の幅を同一幅とすると、吸収性物品1Bを連続生産する際の生産速度を高速化することができる点において好ましい。
【0084】
なお、図2Aに示す吸収性物品1Bのように、吸収体22の陰茎固定シート50Bが配置された部分のみならず、当該部分より吸収性物品1Bの後端E2側の部分も連続して幅広に構成することが好ましい。このような形態は、吸収体22の陰茎固定シート50Bが配置された部分のみを幅広に構成し、それより吸収体22後端側の領域を幅狭く構成した形態と比較して、第1接合部52C、第2接合部52Dによって吸収性物品1Bの幅方向中央部に収束された尿を幅広い吸収体22によって十分に吸収させることができ、漏れを生じ難くさせることができる点において好ましい。
【0085】
[3]吸収性物品の他の構成部材:
本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのように、吸収体22と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体22の表面を被覆するように配置されたトップシート18と、液不透過性材料からなり、吸収体22の裏面を被覆するように配置されたバックシート20と、を備えるものである。
【0086】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の尿等を吸収し、保持するための部材であり、吸収性材料によって構成される。通常、吸収体はトップシートとバックシートの間に挟みこまれ、両シートと一体化された状態で用いられる。
【0087】
「吸収性材料」としては、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。「フラッフパルプ」としては、木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、「SAP」としては、ポリアクリル酸ナトリウムを、「親水性シート」としては、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0088】
吸収体は、1種又は2種以上の吸収性材料を単層又は複層のマット状に成形したものを用いることが好ましい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させるか、フラッフパルプのマットの層間に層状に配置して用いればよい。
【0089】
[3−2]トップシート:
トップシートは、着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0090】
「液透過性材料」としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0091】
「不織布」としては、エアスルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。「親水化処理」は、界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0092】
トップシートは、「少なくとも一部」、具体的には、トップシートを平面的に見た場合に、少なくとも吸収体の表面近傍は液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0093】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(尿パッドの装着時において着用者の肌から遠い側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿が尿パッド外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0094】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体で吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の存在する部分にバックシートが配置されていることが好ましい。
【0095】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0096】
なお、バックシートの外表面側にカバーシートを貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0097】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0098】
[3−4]立体ギャザー:
本発明の吸収性物品は、図3A及び図3Bに示す吸収性物品1Cのように、撥水性シート32からなり、吸収体22の両側に配置された少なくとも一対の立体ギャザー26(26a,26b)を備えていることが好ましい。
【0099】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、尿パッドに使用される構成を採用することができる。例えば、撥水性シート32の層間に伸縮材(立体ギャザー伸縮材36)を挟み込んで固定し、その立体ギャザー伸縮材36の収縮力によってギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。撥水性シートは、カードエンボス、スパンボンド等の製法により製造された不織布であってもよいが、防水性の高いSMS、SMMS等の不織布シートが更に好ましい。
【0100】
なお、立体ギャザーは、立体ギャザー用の撥水性シートを別途付設してもよいし、尿パッドを構成するシート材(例えば、バックシート)の一部によって形成してもよい。
【0101】
[3−5]各種伸縮材:
本発明の吸収性物品には、着用者の肌へのフィット性を向上させるために各種伸縮材を配置してもよい。
【0102】
例えば、図1A〜図1Cに示す吸収性物品1Aのように、吸収性物品が尿パッドである場合には、その両側縁部等に側縁伸縮材48を配置してもよい。この伸縮材を配置することによって、尿パッドの両側縁部に伸縮性に富むギャザーを形成することができる。従って、尿パッドの両側縁部に隙間が形成され難くなり、いわゆる横漏れを効果的に防止することができる。
【0103】
また、本発明の吸収性物品が使い捨ておむつである場合は、脚周り伸縮材を配置し、ウエスト周り伸縮材を配置することが好ましい。
【0104】
脚周り開口部に沿って脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。また、ウエスト周り開口部に沿ってウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。更に、パンツ型使い捨ておむつでは、ウエスト周り開口部と脚周り開口部との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に腹周り伸縮材を配置することによって、着用者の腹周りに伸縮性に富むタミーギャザーを形成することができる。
【0105】
例えば、図3A〜図3Dに示す吸収性物品1Cは、パンツ型使い捨ておむつであり、2枚の撥水性不織布シート(インナーシート16a、アウターシート16b)を貼り合わせて外装シート16を構成しており、インナーシート16aとアウターシート16bの層間に各種伸縮材が挟みこまれて固定されている例である。この例では、おむつの脚周り開口部12のカーブに沿って曲線的に脚周り伸縮材40を配置し、おむつのウエスト周り開口部10の開口端に沿って複数本のウエスト周り伸縮材42を配置し、ウエスト周り開口部10と脚周り開口部12との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に、着用者の腹周りを取り囲むように複数本の腹周り伸縮材44を配置している。
【0106】
伸縮材については、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0107】
伸縮材としては、従来の使い捨ておむつや尿パッドで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0108】
伸縮材は、十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、伸縮材が天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴムの弾性糸からなる糸ゴムである場合には、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させることが可能となる。
【0109】
前記のような伸縮材は、吸収性物品の他の構成部材に対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0110】
[4]適用対象:
なお、本発明の吸収性物品は、図1A〜図1Dに示す吸収性物品1Aのような尿パッド、図3A〜図3Dに示す吸収性物品1Cのようなパンツ型使い捨ておむつの他、テープ型使い捨ておむつにも適用することができる。即ち、テープ型使い捨ておむつにおいて、トップシートに対して複数枚の陰茎固定シートを付設することで本発明の効果を享受することができる。
【0111】
「テープ型使い捨ておむつ」とは、吸収体と、トップシートと、バックシートとを備え、後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前身頃と後身頃とを固定するための止着テープを更に備えた使い捨ておむつである。止着テープのファスニング部材としては、粘着ファスナーの他、メカニカルファスナー(面状ファスナー)等が用いられる。
【実施例】
【0112】
本発明の吸収性物品について、図面を参照しながら更に具体的に説明する。但し、本発明の吸収性物品は、その発明特定事項を備えた吸収性物品を全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
〔実施例1〕
実施例1の尿パッドとして、図1A〜図1Dに示す吸収性物品1Aを作製した。この吸収性物品1Aは、成人用の尿パッドであり、長さを490mm、幅を210mmの略矩形状とした。吸収体は厚さ4mmのものを用いた。
【0114】
吸収性物品1Aには、陰茎固定シート50Aを付設した。陰茎固定シート50Aは、撥水性の不織布シートにより構成した。サイズは、幅130mm、長さ50mmの矩形状とした。また、陰茎固定シート50Aは、吸収性物品1Aの前端E1から、60mm離れた位置に、陰茎固定シート50Aの最前端が位置するように配置した。なお、陰茎固定シート50Aは、吸収性物品1Aの吸収体22配置部位の上部に配置した。
【0115】
陰茎固定シート50Aは、その両側縁部をホットメルト接着剤により、トップシート18の表面に接合した。この際、各々の陰茎固定シート50Aは前端部及び後端部が、隣接する陰茎固定シート50Aと長さ10mmだけ重畳するように配置する構造を繰り返して、4枚の陰茎固定シート50Aを配置した。
【0116】
また、図1C及び図1Dに示すように、4枚の陰茎固定シート50Aは、前端部が隣接する一の陰茎固定シート50Aの後端部の上側に、後端部が隣接する他の陰茎固定シート50Aの前端部の下側に位置するように配置する構造を繰り返して配置した。
【0117】
なお、第1接合部52A、第2接合部52Bは、各々を幅10mmの帯状に形成した。この際、第1接合部52Aと第2接合部52Bとの間に形成される陰茎挿入部54Aの幅が100mmとなるように形成した。
【0118】
〔実施例2〕
実施例2の尿パッドとして、図2A〜図2Dに示す吸収性物品1Bを作製した。この吸収性物品1Bは、成人用の尿パッドであり、長さを490mm、陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅を290mm、前端E1の幅を210mm、後端E2の幅を210mmに形成した。吸収体は厚さ4mmのものを用いた。
【0119】
吸収性物品1Bには、陰茎固定シート50Bを付設した。陰茎固定シート50Bは、撥水性の不織布シートにより構成した。サイズは、幅200mm、長さ70mmの矩形状をベースとし、陰茎固定シート50Bの後端における幅方向中央部が、陰茎固定シート50Bの前端側に向かって円弧状に切り欠かれた形状のものとした。陰茎固定シート50Bの幅方向中央部の長さは30mmとした。
【0120】
また、吸収性物品1Bの幅方向中心線上において、吸収体22の前端と陰茎固定シート50Bの最前端との間隔が3cm離れるように、陰茎固定シート50Bを配置した。
【0121】
陰茎固定シート50Bは、その両側縁部をホットメルト接着剤により、トップシート18の表面に接合した。この際、陰茎固定シート50Bの前端部及び後端部が、隣接する陰茎固定シート50Bと長さ30mmだけ重畳するように配置する構造を繰り返して、4枚の陰茎固定シート50Bを配置した。
【0122】
また、図2A及び図2Dに示すように、4枚の陰茎固定シート50Bは、前端部が隣接する一の陰茎固定シート50Bの後端部の上側に、後端部が隣接する他の陰茎固定シート50Bの前端部の下側に位置するように配置する構造を繰り返して配置した。
【0123】
第1接合部52C及び第2接合部52Dは、陰茎固定シート50Bの前後方向に延びるように配置された、各4本の線状接合部56a,58a,60a,62a,56b,58b,60b,62bから形成した。
【0124】
複数本の線状接合部56a,58a,60a,62a,56b,58b,60b,62bは、全て幅10mmに形成し、5mm間隔で各4本の線状接合部を配置した。そして、陰茎固定シート50Bの幅方向中央側に配置された線状接合部56a,56bは長さ40mm、58a,58bは長さ120mm、陰茎固定シート50Bの側縁側に配置された線状接合部60a,62a,60b,62bは長さ190mmに形成した。
【0125】
これにより、第1接合部52Cと第2接合部52Dとの間に形成される陰茎挿入部54Bの幅W1,W2が、吸収性物品1Bの前端E1側から後端E2側に向かうにつれて狭くなるように構成した。陰茎固定シート50Bの前端における陰茎挿入部54Bの幅W1は140mm、陰茎固定シート50Bの後端における陰茎挿入部54Bの幅W2は80mmであり、幅W1に対する幅W2の比率は、57%の幅となっている。
【0126】
吸収性物品1Bには、吸収体22の幅方向中央部における、陰茎固定シート50Bの下部に位置する部分に、陰茎収容用凹部64を形成した。具体的には、陰茎固定シート50Bの最前端から15mmだけ吸収体後端寄りの部分を起点とし、最後端に位置する陰茎固定シート50Bの切り欠き部から吸収体後端側に30mmだけ、はみ出すように形成した。
【0127】
陰茎収容用凹部64の深さは、吸収体22の全厚(4mm)に対し50%の深さ(2mm)とした。陰茎収容用凹部64の幅は、陰茎収容用凹部64前端の幅W3を80mm、陰茎収容用凹部64後端の幅W4を40mmとし、幅W3より幅W4の方が狭くなるように形成した。即ち、幅W3に対し、幅W4が50%の幅となるように形成した。
【0128】
吸収性物品1Bは、吸収体22が、吸収体22前端及び吸収体22後端の幅よりも、陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅が広くなるように構成した。具体的には、吸収体22の陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅を230mm、吸収体22前端の幅を150mm、吸収体22後端の幅を150mmとした。即ち、吸収体22の陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅に対し、吸収体22前端の幅が65%の幅、吸収体22後端の幅が65%の幅となるように構成した。なお、吸収性物品1Bにおいては、陰茎固定シート50Bが配置された部分の幅が最大幅であり、この最大幅の部分が長さ200mm分だけ存在するように吸収体22を構成した。
【0129】
〔実施例3〕
実施例3の吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつを作製した。具体的な構造は、図3A〜図3Dに示す吸収性物品1Cの構造とした。この吸収性物品1Cは、成人用Mサイズのものであり、前後方向長さを780mm、後身頃6の幅(側縁6a,6b間の長さ)を580mmとした。吸収体は厚さ4mmのものを用いた。
【0130】
吸収性物品1Cには、陰茎固定シート50Cを付設した。陰茎固定シート50Cは、撥水性の不織布シートにより構成した。サイズは、幅160mm、長さ30mmの矩形状とした。また、陰茎固定シート50Cは、吸収性本体14の前端から、30mm離れた位置に、陰茎固定シート50Cの最前端が位置するように配置した。なお、陰茎固定シート50Cは、吸収性物品1Cの吸収体22配置部位の上部に配置した。
【0131】
陰茎固定シート50Cは、その両側縁部をホットメルト接着剤により、トップシート18の表面に接合した。より具体的には、立体ギャザーを構成する撥水性シート32で側縁を包み込むようにしてトップシート18の表面に接合した。この際、陰茎固定シート50Cの前端部及び後端部が、隣接する陰茎固定シート50Cと長さ10mmだけ重畳するように配置する構造を繰り返して、4枚の陰茎固定シート50Cを配置した。
【0132】
また、図3Aに示すように、4枚の陰茎固定シート50Cは、前端部が隣接する一の陰茎固定シート50Cの後端部の上側に、後端部が隣接する他の陰茎固定シート50Cの前端部の下側に位置するように配置する構造を繰り返して配置した。陰茎挿入部54Cの幅は130mmとなるように構成した。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の吸収性物品は、男性用の吸収性物品、具体的には尿パッド、パンツ型使い捨ておむつ又はテープ型使い捨ておむつ等として利用することができる。また、陰茎が萎縮した男性高齢者用の尿パッドとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0134】
1A,1B,1C,1D,1E:吸収性物品、2:前身頃、4:股下部、6:後身頃、10:ウエスト周り開口部、12,12a,12b:脚周り開口部、16:外装シート、16a:インナーシート、16b:アウターシート、18:トップシート、20:バックシート、22:吸収体、26,26a,26b:立体ギャザー、32:撥水性シート、36:立体ギャザー伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、44:腹周り伸縮材、48:側縁伸縮材、50A,50B,50C,50D,50E:陰茎固定シート、52A,52C:第1接合部、52B,52D:第2接合部、54A,54B,54C,54D,54E:陰茎挿入部、56a,56b,58a,58b,60a,60b,62a,62b:線状接合部、64:陰茎収容用凹部、66:陰茎固定シート伸縮材、E1:前端、E2:後端、E3,E4:側縁、W1,W2,W3,W4:幅、P:陰茎、S:陰嚢、U:尿。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備えた吸収性物品であって、
少なくとも表面が撥水性材料からなり、前記吸収性物品の幅方向に延びるように配置され、その幅方向両側縁部が前記トップシートに対して接合された陰茎固定シートを複数枚備え、
複数枚の前記陰茎固定シートが、前記吸収性物品の前後方向に向かって並列するように配置されている吸収性物品。
【請求項2】
前記陰茎固定シートの前端部が、隣接する一の陰茎固定シートの後端部と一部重畳するように配置されるとともに、前記陰茎固定シートの後端部が、隣接する他の陰茎固定シートの前端部と一部重畳するように配置される構造が繰り返されて、複数の前記陰茎固定シートが配置されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記陰茎固定シートの前端部が、隣接する一の陰茎固定シートの後端部の上側に位置するように配置されるとともに、前記陰茎固定シートの後端部が、隣接する他の陰茎固定シートの前端部の下側に位置するように配置される構造が繰り返されて、複数の前記陰茎固定シートが配置されている請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記陰茎固定シートの前端に沿って、伸張状態で固定された陰茎固定シート伸縮材が配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体が、その幅方向中央部における、前記陰茎固定シートの下部に位置する部分に、陰茎収容用凹部が形成されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記陰茎収容用凹部は、凹部前端の幅よりも凹部後端の幅の方が狭くなるように形成されている請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体が、その幅方向中央部における、前記陰茎固定シートの下部に位置する部分から、前記吸収体の後端に向かって、前記吸収体の他の部分に比して吸収性能が高い高吸収部が形成されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179028(P2010−179028A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27097(P2009−27097)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】