説明

吸収性物品

【課題】サイド不織布に多数の開孔及び/又は切込みが形成された吸収性物品において、前記サイド不織布のヨレを防止するとともに、吸収体からの逆戻りを防止する。
【解決手段】サイド不織布6は内側縁部分に透液性表面シート3側に内折りされた積層シート部10を有するとともに、この積層シート10内部に吸収性材料が介在され、かつこの吸収性材料の上面に位置するサイド不織布6領域に多数の開孔11,11…が形成されている構造とする。前記透液性表面シート3は親水性不織布とされるとともに、両側縁部で夫々、外折りされ、この外折りされた延在シート部分が前記積層シート10内に挿入されることにより前記吸収性材料を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面両側部に夫々、内側縁が前記吸収体の側縁よりも内側に位置するように設けられるとともに、多数の開孔及び/又は切込みが形成されたサイド不織布を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッドなどの吸収性物品Nとしては、例えば図7および図8に示されるように、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる裏面シート50と、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シート51との間に綿状パルプなどからなる吸収体52を介在させるとともに、表面両側部に夫々、撥水性不織布からなるサイド不織布55を備えたものが知られている。
【0003】
前記サイド不織布55は、経血等の横漏れを防止するために吸収体52の両側部を覆うように配置されるものであるが、吸収面の面積を減少させるとともに、サイド不織布55上に乗り上がった経血等があると、吸収されずに外側まで流れ出てしまうという問題があった。
【0004】
上記問題点を解決するために、下記特許文献1では、図9に示されるように、透液性内面シートと不透液性外面シートとの間に吸液性パネルを介在させた積層体の両側部の上面にフラップ61をそれぞれ配置してある生理用ナプキン60において、前記積層体の前端側へ偏倚した部位で前記外面シート及び前記両フラップ61の一部を外側へ延出させてウイング部W、Wを形成するとともに、前記積層体及び前記両ウイング部W、Wを含む両フラップ61、61の外周縁を接合し、前記積層体の中間領域62における前記両フラップ61には液抵抗性を付与する一方、前記積層体の前後側領域63,64における前記両フラップ61,61には多数の開孔65,65…を設けることにより透液性を付与し、前記中間領域62における前記両フラップ61,61の内側縁に沿って弾性紐状物66、66を取り付けてあるナプキンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−93430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に係るナプキン1では、前後側領域63,64において、サイド不織布(フラップ61)に多数の開孔65,65…を形成してあるため、サイド不織布上に乗り上がった経血等があったとしても、前記開孔65,65…から吸収体に吸収されるようになるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、前記サイド不織布に多数の開孔65,65…を形成すると、ヨレが発生し易くなり堰き止め効果が低減するとともに、吸収体に体液が吸収されている状態で圧縮力を受けると、逆に前記開孔65,65から体液が逆戻りしてしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、サイド不織布上に乗り上がった体液があった場合に、この体液を吸収させるためにサイド不織布に多数の開孔及び/又は切込みが形成された吸収性物品において、前記サイド不織布のヨレを防止するとともに、吸収体からの逆戻りを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、表面側両側部に夫々、内側縁が前記吸収体の側縁よりも内側に位置するように設けられるとともに、多数の開孔及び/又は切込みが形成されたサイド不織布を備えた吸収性物品において、
前記サイド不織布は内側縁部分に表面シート側に内折りされた積層シート部を有するとともに、この積層シート内部に吸収性材料が介在され、かつこの吸収性材料の上面に位置するサイド不織布領域に前記多数の開孔及び/又は切込みが形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の本発明では、サイド不織布上に乗り上がった体液があった場合でも、この体液は前記開孔及び/又は切込みから吸収性材料に吸収される。また、前記積層シート部内に吸収性材料が介在されることにより、コシが出てヨレが発生し難くなる。更に、前記積層シート部においては、開孔及び/又は切込みは上層シート部分のみに形成され、下層シート側には形成されていないため吸収体からの逆戻りも防止できるようになる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記透液性表面シートは親水性不織布とされるとともに、両側縁部で夫々、外折りされ、この外折りされた延在シート部分が前記積層シート内に挿入されることにより前記吸収性材料を構成している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項2記載の本発明は、前記吸収性材料として、親水性不織布からなる表面シートの延在部分を積層シート部内に介在させるようにしたものである。
【0013】
請求項3に係る本発明として、前記吸収性材料が吸収性繊維および高吸収性ポリマーが混合されたエアレイド吸収体とされる請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項3記載の本発明は、前記吸収性材料として、エアレイド吸収体を介在させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、開孔及び/又は切込みを形成したサイド不織布のヨレを防止するとともに、サイド不織布上に乗り上がった体液があったとしてもこの体液を吸収させるとともに、吸収体からの逆戻りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】本発明ナプキンの構造例を示す模式断面図であり、(A)は第1形態例、(B)は第2形態例である。
【図4】開孔パターン例を示す要部拡大平面図である。
【図5】開孔パターン例を示す要部拡大平面図である。
【図6】サイド不織布にサイドエンボスを有するナプキン平面図である。
【図7】従来の生理用ナプキンNの展開図である。
【図8】その横断面図である。
【図9】特許文献1に係るナプキンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0018】
図1に示される生理用ナプキン1は、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布6,6とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、その上下端縁部では、前記裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイド不織布6とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。
【0019】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0020】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法、エアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。一方、前記透液性表面シート3の上面には、排血対応部位を跨ぐ両側部にそれぞれ、略長手方向に沿うフィットエンボス7,7が形成されているとともに、前後部にそれぞれ弧状エンボス8,8が形成されている。前記表面シート3の下面にはセカンドシートと呼ばれる親水性不織布を配置するようにしてもよい。
【0021】
前記裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0022】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布6,6が設けられ、このサイド不織布6,6の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された裏面シート2の一部とにより、外方に延在するウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0023】
前記サイド不織布6としては、吸収体から滲み出しを防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。このサイド不織布6の内側縁は前記吸収体4の側縁よりも内側に位置するように設けられている。
【0024】
本生理用ナプキン1では、図1及び図2に示されるように、前記サイド不織布6は内側縁部分に表面シート3側に内折りされた積層シート部10を有するとともに、この積層シート10内部に吸収性材料が介在され、かつこの吸収性材料の上面に位置するサイド不織布6の領域に多数の開孔11,11…が形成されているものである。
【0025】
以下、上記サイド不織布構造について更に具体的に詳述する。
(第1形態例)
図1及び図2に示される第1形態例に係る構造を図3(A)の模式断面図に基づいて詳述する。
【0026】
前記サイド不織布6は、内方縁側において所定幅で表面シート3側に内折りされた積層シート部10を有する。一方、表面シート3としては、親水処理された親水性不織布が使用されており、両側縁部で夫々、外側に折り返され、この外折りされた延在シート部分12が前記積層シート10内に挿入されることにより、前記吸収性材料を構成している。そして、前記表面シート3の挿入部分の上面に位置するサイド不織布6の領域に前記多数の開孔11,11…が形成されている。前記親水処理は、例えば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた方法などを採用することができる。
【0027】
前述したサイド不織布構造の場合は、サイド不織布6上に乗り上がった体液があった場合でも、この体液は前記開孔11,11…から親水性表面シート3に吸収される。また、前記積層シート部10に親水性表面シート3が介在されることにより、コシが出てヨレが発生し難くなる。更に、前記積層シート部10において、開孔11は上層シート部分のみに形成され、下層シート側には形成されていないため吸収体4からの逆戻りも防止できるようになる。
【0028】
前記開孔11としては、同じ開孔形状の配置パターン、異なる開孔形状の組合せ等、任意のパターンで形成することができる。図1に示される例は、円孔を2列の千鳥配置で形成した例であり、図3の例は1列で形成した例である。更に、図4に示される例は、円孔14と楕円孔15とを交互に列状に配置した例であり、図5に示される例は花びら模様の開孔16と楕円孔17とを交互に列状に配置した例である。これらの開孔は、肌触り感を良好とするために熱を掛けずに形成するのが望ましい。
【0029】
また、開孔の形成範囲は、図示例では吸収体4のほぼ全長に亘って形成したが、排血部を含む所定の区間に限定して形成することでもよい。上記開孔11、14〜17等は切り抜きによって形成したが、ピンを突き刺して開孔を形成することもできる。更に、前記開孔11,14〜17に代えて、或いはこれらの開孔と共に、切込みを形成してもよい。切込みはナプキンの幅方向としておけば、サイド不織布6が製造ラインで配置される際、サイド不織布6に掛かったライン方向の張力によって拡開され開孔となる。また、図1に示されるウイング付ナプキンの場合は、ウイングW部分では、ナプキン長手方向の切込みとしておけば、ウィングWを引っ張ってショーツの外面に貼着する際、この張力によって切込みが拡開して開孔となる。
【0030】
(第2形態例)
次いで、第2形態例について図3(B)の模式断面図に基づいて詳述する。
前記サイド不織布6は、内方縁側において所定幅で表面シート3側に内折りされた積層シート部10を有する点は上記第1形態例と同様である。本第2形態例では、前記積層シート部10内に、前記吸収性材料として、吸収性繊維および高吸収性ポリマーが混合されたエアレイド吸収体13が介在され、このエアレイド吸収体13の上面に位置するサイド不織布6領域に前記多数の開孔11,11…が形成されている。前記エアレイド吸収体13の保持のためには、吸湿性のあるホットメルトによって接着することが可能である。なお、この態様の場合は、表面シート3としては、メッシュシートを用いることが可能である。効果について、上記第1形態例と同様である。
【0031】
(第3形態例)
更に、図6に示される第3形態例は、サイド不織布6の上面からエンボスを付与することにより、体液の滞留を促し伝い漏れを防止するようにしたナプキンの例である。図示されるナプキン1’では、前記サイド不織布6,6のそれぞれに、実質的に、比較的長周期の略単振動波形(以下「長周期波形」という。)に比較的短周期の略単振動波形(以下「短周期波形」という。)を重ね合わせた複合波状線のエンボス20が、生理用ナプキン1’の長手方向に沿うとともに、前記吸収体4の側方端縁を跨いで行き来するように、かつ前記生理用ナプキン1’の長手方向中心線に対して線対称となるように表面側から付与されており、少なくとも排血口部に対応する側部領域で前記エンボスの比較的長周期の略単振動波形成分が内側に凸となるように配置されているものである。また、エンボス20の長周期波形成分によって外側に凸となるエンボス領域において、その内側であって、該エンボスから離間した近接位置に、独立した点状エンボス21又は象形エンボス22を付与してある。
【0032】
かかる生理用ナプキン1’に対して、本発明に係るサイド不織布構造を適用する場合は、前記エンボス20よりも内側縁側に開孔11,11…を形成するようにする。この場合、前記エンボス20の一部と開孔11,11…とは重なっていてもよい。
【0033】
〔その他の形態例〕
(1)上記形態例ではウイング状フラップW、Wを有するナプキンの例を示したが、ウイング状フラップW、Wを有しないナプキンにも同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…サイド不織布、10…積層シート部、11・14〜17…開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、表面側両側部に夫々、内側縁が前記吸収体の側縁よりも内側に位置するように設けられるとともに、多数の開孔及び/又は切込みが形成されたサイド不織布を備えた吸収性物品において、
前記サイド不織布は内側縁部分に表面シート側に内折りされた積層シート部を有するとともに、この積層シート内部に吸収性材料が介在され、かつこの吸収性材料の上面に位置するサイド不織布領域に前記多数の開孔及び/又は切込みが形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記透液性表面シートは親水性不織布とされるとともに、両側縁部で夫々、外折りされ、この外折りされた延在シート部分が前記積層シート内に挿入されることにより前記吸収性材料を構成している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収性材料が吸収性繊維および高吸収性ポリマーが混合されたエアレイド吸収体とされる請求項1記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−220913(P2010−220913A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73194(P2009−73194)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】