説明

吸収性物品

【課題】トップシートが、綿の肌あたりの良さ、吸湿性、吸汗性を有しながら、表面の液残りによるべたつきを十分に防止でき、また、吸収した排泄液を十分に隠蔽できる、吸収性物品を提供する。
【解決手段】透液性トップシートが二層以上の不織布層を積層した不織布で構成される。不織布層のうち少なくとも肌側二層は、繊維材料に綿繊維を70%以上含む綿不織布層であり、綿不織布層の最も肌側の層には撥水剤が添加され、かつ、少なくとも排泄口部分には開口が設けられている。さらに、二層以上の綿不織布層の下層に向かうに従って、親水性が高くなり、開口サイズ及び開口率が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性バックシートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性トップシートとの間に綿状パルプ等からなる圧縮復元性を有する吸収体を介在したものが用いられている。
【0003】
トップシートは肌当接面を形成するものであるため、柔軟であることや、排泄液の吸収後でも乾燥した肌触りが得られること、肌に対して刺激が少ないこと等が要求されている。このような要求を満たす素材として、合成繊維の不織布、樹脂性メッシュシートが吸収性物品の分野、特に生理用ナプキンの分野で広く採用されている。しかし、合成繊維からなるトップシートは、痒みやかぶれ等の要因となる、という問題があった。
【0004】
これを解決するものとして、綿繊維(コットン)を素材としたトップシートが提案されているが、吸収性物品においては、トップシートが高い透液性を有し、素早く液を吸収体に到達させることが望まれるのに対し、通常の脱脂綿繊維をトップシートに含有させた場合、トップシート自体が高い保液性を有し、表面にべたつき感が残り易い、という問題があった。
【0005】
このような背景のもと、原綿に付着している天然油脂を残存させつつ漂泊した綿繊維と、少なくとも繊維表面がオレフィン系重合体からなる熱可塑性短繊維とから構成されたスパンレース不織布を、吸収性物品のトップシートとして使用することが提案されている(特許文献1参照)。この技術では、綿繊維に残存する天然油脂の弱い撥水性と、熱可塑性短繊維の優れた撥水性とにより、トップシートの保液性が抑制される。さらに、吸収した液をトップシートの下の吸収層へ速やかに移動させるために、トップシートに開口を多数設けることも提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−139594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるトップシートは、綿繊維全体に油剤が残存し、撥水性を有するため、綿の配合量に対して吸湿性の低いものであった。一方、トップシートの吸湿性を向上させるためには、脱脂処理した綿繊維を高配合とすることが想定し得るが、このようなトップシートは保液性が高く、肌当接面のべたつきの要因となりやすい。このように、トップシートに吸湿性と、肌当接面のべたつき軽減との両方の機能を保持させることは困難であった。
【0008】
本発明の主たる課題は、トップシートが、綿の肌あたりの良さ、吸湿性、吸汗性を有しながら、表面の液残りによるべたつきを十分に防止でき、また、吸収した排泄液を十分に隠蔽できる、吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
べたつきを抑制しつつ、綿の肌あたりの良さ、吸湿性を有する吸収性物品を提供するという、上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0010】
<請求項1記載の発明>
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシートは、綿繊維を70%以上含む繊維材料より形成された、二層の綿不織布層を含む不織布で構成され、
前記二層の綿不織布層のうち、上側の層は撥水剤を含有し、肌当接面の吸水度が0〜5mmで、且つ少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口が設けられ、
下側の層は親水性であり、上側の層に設けられた開口の大きさ以上の開口を有さず、かつ上側の層より低い開口率となるよう構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
このように、本発明のトップシートの肌当接面は、綿繊維が高配合された不織布層で構成されているため、肌あたりが良く、痒みやかぶれ等の要因になり難い等の利点を有する。
【0012】
しかも、肌に直接触れる上側の層に撥水剤を添加し、肌当接面の吸水度を低くすることにより、綿繊維の問題である表面の液残りは十分に改善される。ただし、単に吸水度を低くするだけでは、排泄物の液分はトップシートの上側の層を透過しづらく、横モレ等の要因となるため、上側の層における少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口を設ける。ここでいう「開口」とは、層形成時に繊維材料をメッシュ状支持体に担持させる、あるいは、層形成後にパンチ穴をあける、等の方法によって意図的に穿たれた孔を指し、不織布の繊維集合部分に存する繊維間隙を指すものではない。また、「開口率」とは、トップシートの全面積に占める開口の総面積の割合を意味する。
【0013】
さらに、トップシートを構成する不織布は二層の不織布層が積層されてなり、下側の層は、上側の層より親水性であり、開口の大きさ、開口率、とも上側の層より小さいものとする。下側の層には開口処理、撥水処理を行わないことがより好ましい。このような構成とすることで、トップシートの下側の層は前記開口部分より肌側に露出し、排泄液とともに肌表面から発生する汗、湿気を吸収することができる。加えて、上側の層と下側の層で凹部を形成することから、下側の層が直接肌に触れることはないため、下側の層が保水性を有していても、肌のベタつき感の要因にはならない。
【0014】
その結果、本発明によれば、綿の肌あたりのよさ、吸湿性、吸汗性を有し、かつ表面の液残りによるべたつきを十分に防止できる吸収性物品の提供が可能になる。
また、上側の層は、それ自体が撥水性を有するため、吸収した排泄液が表面に戻り難く且つ保液し難いことと、綿繊維による透明性の低さとが相まって、吸収した排泄液を十分に隠蔽できるようになる。
なお、本発明において、肌に近い側を「上側」としている。また、本発明における「吸水度」とは、JIS L 1907 バイレック法の規定により測定される吸水度を意味し、「排泄口部分」とは、排泄口(生理用ナプキンにあっては排血口)と対向する部分を意味する。
【0015】
<請求項2記載の発明>
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシートは、綿繊維を70%以上含む繊維材料より形成された、綿不織布層を三層以上含む不織布で構成され、
前記三層以上の綿不織布層のうち、少なくとも最下層以外の層は撥水剤を含有し、かつ少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口が設けられ、
前記開口は下層へ向かうに従って小さくなり、かつ開口率が低くなり、
綿不織布層の最下層が最上層開口から肌側に露出するように各層の開口の少なくとも一部が重なり、
綿不織布層の最上層の肌当接面の吸水度が0〜5mmで、各層の上層当接面の吸水度が上層より高くなるように構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
トップシートを綿繊維で形成された三層以上の綿不織布層を有する積層不織布とし、綿不織布層の下層に向かうに従って親水性が高くなるように構成することで、吸収体表面のクッション性、柔軟性を増すとともに、表面からの排泄液の引き込みを良好にすることができる。
【0017】
<請求項3記載の発明>
前記綿不織布層の最上層は、厚みが0.05〜1.0mm、繊維目付けが10〜30g/m2、個々の開口の面積が0.5〜8.0mm2、開口率が15〜65%であり、
前記撥水剤は、ステアリン酸化合物を含み、
前記綿不織層の最上層への前記撥水剤の添加量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部であり、
生理用ナプキンである、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
生理用ナプキンの場合、このような構成を採用するのが好ましい。特に、撥水剤添加量が多過ぎたり、個々の開口の面積が小さ過ぎたり、開口率が低過ぎたりするトップシートの最上層を液が透過し難くなり、個々の開口の面積が大き過ぎると、一度開口を透過して吸収体側に移動した排泄液が開口を通じて逆戻りするおそれがある。よって、上記の各数値範囲の組み合わせが非常に重要である。
【0019】
<請求項4記載の発明>
前記綿不織布層の最下層は、厚みが0.05〜1.0mm、繊維目付けが10〜30g/m2であり、開口を有さず、撥水剤を含まないよう構成された、請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
綿不織布層の最下層をこのような構成とすることで、より綿の有する吸湿性の効果を高めることが可能となる。
【0021】
<請求項5記載の発明>
前記トップシートを構成する不織布の綿不織布層の下側に、親水性化処理された合成繊維を30重量%以上含む繊維材料よりなる熱融着性不織布層がさらに積層された、請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
高配合の綿を含む不織布は熱融着性が良好ではなく、トップシートと吸収体との間の熱圧着によるフィットエンボス部の形成ができず、排泄液の堰き止め効果が得られない、という問題がある。本発明は、トップシートの最下層に熱融着性を有する不織布層を配することで、トップシートと吸収体との熱圧着を可能とする。依然、肌当接面は綿の配合が高いため、肌あたりの良さ、吸湿性は良好な状態を保つことができる。
【0023】
<請求項6記載の発明>
前記トップシートと前記吸収体とが少なくとも部分的に直接接触し、
前記吸収体が、少なくとも前記トップシートと接触する部分に熱融着性繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。
【0024】
(作用効果)
吸収体の、少なくともトップシートと接触する部分に熱融着性繊維を混入することで、熱融着性不織布層との熱圧着の効果がより高くなる。
【0025】
<請求項7記載の発明>
前記吸収体が包装シートで包まれており、
前記トップシートと前記包装シートとが少なくとも部分的に直接接触し、
前記包装シートが、少なくとも前記トップシートと接触する部分に熱融着性繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の発明。
【0026】
(作用効果)
吸収体を包装シートで包むことにより、形状及びポリマー粉末の保持が可能となる。さらに、包装シートに熱融着繊維を含ませることで、請求項6と同様の効果がみられる。
【0027】
<請求項8記載の発明>
二層または三層以上を含む不織布は、各不織布層を形成して重ね合わせ、高圧水流により層間の繊維を交絡させることによって形成される、
請求項1〜7のいずれかに記載の吸収性物品。
【0028】
(作用効果)
多層構造を有する不織布の形成において、積層時に接着剤を使用せず、スパンレース法(水流交絡法)を使用することで、接着剤による風合いの劣化を防止し、肌への刺激性を低減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、吸収性物品において、トップシート表面が高配合の綿繊維を含む繊維材料で形成されることで、肌あたりがよく、かつ吸湿性、吸汗性に優れる、痒みやかぶれ等の要因になり難い等の綿繊維の数々の特徴を有しつつも、表面の液残りによるべたつきを十分に防止でき、また、吸収した排泄液を十分に隠蔽できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】生理用ナプキンの展開図である。
【図2】その横断面図(図1のII−II線矢視図)である。
【図3】その横断面図(図1のIII−III線矢視図)である。
【図4】トップシートの断面図である。(A)トップシートの第1の形態、(B)トップシートの第2の形態、(C)トップシートの第3の形態。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
<生理用ナプキンの基本構造の一例>
図1は本発明に係る吸収性物品として、生理用ナプキンの一例を示した展開図である。図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図である。図中に例示される生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性バックシート2と、肌当接面3Fをなし、経血やおりものなどを速やかに透過させるトップシート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4,5と、吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部を含むように前後方向に所定の区間内において表面側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSとから主に構成され、かつ吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では不透液性バックシート2とトップシート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している不透液性バックシート2と、立体ギャザーBSを形成しているサイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性バックシート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップWB、WBが形成されている。図示例においては、吸収体4,5は、吸収体4の部分が中高部を形成する二層構造となっているが、一層構造としてもよく、また、同一の大きさ、形状の吸収体を重ねた二層構造としてもよい。
【0032】
不透液性バックシート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。不透液性バックシート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。不透液性バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0033】
吸収体4,5としては、体液を吸収・保持し得るものであれば良く、通常はフラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。吸収体4,5は形状及びポリマー粉末保持等のために包装シート4L,5Lによって囲繞するのが望ましい。包装シート4L,5Lは、クレープ紙、親水性不織布等の公知のシートを使用できるが、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体といった熱融着性を有する合成繊維を混入させたシートとすることがより好ましい。熱融着繊維は、少なくともトップシートと直接接触する部分に混入させればよいが、製造効率等より、全体的に混入させることがより好ましい。図示例では、下層吸収体4の上側における幅方向中央部に沿って上層吸収体5が設けられているが、上層吸収体5及びその包装シート5Lを省略し、単一の吸収体4のみとする等、公知の吸収体構造を採用することができる。この場合、吸収体4,5の少なくともトップシートと直接接触する部分に熱融着繊維を含有させることが好ましく、吸収体全体に熱融着繊維を含有させることがより好ましい。
【0034】
中間シート6は、図示例では筒状に折り畳まれて2層構造となっているが、折り畳まずに単層構造としても良い。中間シート6は、肌当接面の全体にわたり設けても良いが、幅方向中央且つ前後方向中間部(特に股間部)にのみ設けるのが好ましい。中間シート6の素材は液透過性を有するものであれば良いが、親水性を有するものが好適である。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水性化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。
【0035】
図示例では、トップシート3は吸収体4の幅よりも若干幅が広い程度とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、トップシート3の幅方向外側は、トップシート3の両側部表面から延在するサイド不織布7(トップシートとは別の部材)により覆われている。サイド不織布7の幅方向中央側の部分は、立体ギャザーBSを形成している。サイド不織布7としては、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いることができる。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0036】
サイド不織布7は、図2および図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性バックシート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これらサイド不織布7と不透液性バックシート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイングフラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップWB、WBを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップWB、WBの外面側にはそれぞれ粘着剤層12…,13…を備え、ショーツに対する装着時に、ウイング状フラップW、Wが折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0037】
一方、サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材19が配設されるとともに、糸状弾性伸縮部材19の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材20,20が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、糸状弾性伸縮部材19配設部位を屈曲点として、断面くの字状に内側に開口を向けたポケットを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0038】
他方、本生理用ナプキン1においては、詳細には図4に示されるように、下層吸収体4の使用面側には、幅方向中央部にナプキン長手方向に細長く、かつ周方向に閉じた環状のエンボス凹部8によって区画される領域に、周囲に対して使用面側に高く隆起する上層吸収体5による中高部が形成されている。エンボス凹部8は、トップシート3の表面から吸収体4内まで食い込むように形成されている。中高部の厚みは、厚くし過ぎると下層吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜20mm、好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。また、エンボス凹部8の後側には、エンボス凹部8に対して所定の間隔を空けて略逆傘形状の後端独立エンボス9が形成されている。
【0039】
<トップシートの第1の形態>
トップシート3は、吸収体4、5の表面側を覆う部分である肌当接面3Fを形成する。
トップシート3の第1の形態の断面図を図4(A)に示す。トップシート3の不織布は、綿繊維を90重量%以上含む繊維材料より形成された綿不織布層41,42を二層積層して形成される。綿不織上層41が肌側、綿不織下層42が吸収体側に配される。綿不織布層41,42に含まれる繊維は、好ましくは95重量%以上、より好ましくは100%を綿繊維とする。
【0040】
トップシート3の上側の綿不織上層41の厚みは0.05〜1.0mm、好適には0.2〜0.6mm、繊維目付けは10〜30g/m2、好適には15〜20g/m2とする。繊維目付けが10g/m2未満であると排泄液の隠蔽性に劣るようになり、30g/m2を超えると排泄液を保持し易くなるという問題がある。
【0041】
下側の綿不織下層42の厚みは0.05〜1.0mm、好適には0.2〜0.6mm、繊維目付けは10〜30g/m2、好適には15〜20g/m2とする。
【0042】
綿繊維としては、木綿の原綿、精練・漂白した綿繊維あるいは精練・漂白後、染色を施した綿繊維、さらには糸もしくは布帛になったものを解繊した反毛等、あらゆる綿繊維を使用できるが、特に精練・漂白した脱脂綿繊維が好ましい。
綿不織布層41,42を構成する合成繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体を使用することができる。使用される繊維の繊維長は、長繊維、短繊維、あるいはこれらを混合したもののうち、いずれを使用してもよい。繊度は、1.0〜3.0dtexが好ましい。
【0043】
各綿不織布層は、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって形成することができるが、少なくとも肌に直接触れる綿不織上層41は、柔軟性に富むスパンレース法で形成することが好ましい。
【0044】
綿不織上層41の透液性を高めるため、層を貫通する多数の開口P1を設ける。スパンレース法で不織布層41を形成する場合には、開口は、スパンレース法の水流交絡工程において、繊維材料をメッシュ状支持体に担持させることで形成することができる。この場合、使用するメッシュの条件を変更することで、個々の開口のサイズ、開口率を調整することが可能である。製造後の不織布にパンチ(打ち抜き)加工を施して開口を形成しても良い。開口は、トップシート全体に設けても、排泄口(生理用ナプキンの場合は排血口)と対応する部位にのみ設けてもよい。個々の開口は0.5〜8.0mm2、好ましくは約5mm2とし、開口率は15〜65%とする。開口が0.5mm2未満であれば経血が下層へ移行しにくくトップシート表面の液残りの要因となり、8.0mm2を超えると開口からの液の逆戻りの要因となる。
【0045】
綿不織下層42の開口及び開口率は、常に綿不織上層41より小さいものとする。好ましくは、綿不織下層42には開口を設けないこととする。
【0046】
綿不織上層41には、撥水剤が添加される。撥水剤の添加は、不織布層形成前の綿繊維にあらかじめ撥水剤による表面処理を行っても、不織布層形成後に外添塗布を行ってもよい。塗布を行う場合、塗布方法は、転写、噴霧、刷毛塗り、含浸、ディッピング等の既知の方法を適宜使用できる。
【0047】
撥水剤としては、パラフィン系、シリコン系等の既知のもののうち、肌への刺激性の少ないものを適宜選択して使用することができるが、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム等の刺激性の少ない油脂を適宜選択して使用することがより好ましい。生理用ナプキンにおいてステアリン酸化合物を含む撥水剤を用いる場合、その添加量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部とするのが好ましい(両面塗布の場合は両面の塗布量合計)。より好ましい添加量は約0.08〜0.12重量部である。撥水剤添加量は、0.05重量部未満であると撥水効果が不足することがあり、0.15重量部を超えると撥水性が高すぎ、かえって水分を透過しづらくなる。
このような綿繊維より形成されることで、綿不織上層41の肌当接面の吸水度(JIS L 1907 バイレック法)は、0〜5mm、好適には0〜2mmとなるようにする。
【0048】
綿不織下層42は、綿不織上層41より吸水度が高く、その上層当接面の吸水度(JIS L 1907 バイレック法)は、5mm以上であるのが好ましい。より好ましくは、撥水処理を施さずに形成される。
【0049】
トップシート3を構成する不織布層の積層は、高圧水流による交絡(スパンレース法)や接着剤による接着等、公知の積層方法を適宜選択できるが、柔らかな風合いを保つため、スパンレース法を使用することが好ましい。
【0050】
<トップシートの第2の形態>
トップシート3の第2の形態の断面図を図4(B)に示す。本形態において、トップシート3は、綿不織布層41,42の間に一層以上(図示例は一層)の綿不織中間層43を有し、これらの三層以上の綿不織布層を積層して得られる。
【0051】
綿不織中間層43は、綿繊維を70重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは100%含む繊維材料より形成される。
【0052】
綿不織中間層43の開口P2の大きさ及び開口率は、綿不織上層41より小さく、綿不織下層42より大きなものとする。さらに、綿不織中間層43の開口P2は綿不織上層41のP1の少なくとも一部と重なるように配置し、綿不織下層42が開口P1,P2との重なり部分の開口P3を介して肌側に露出する構成とする。開口P3の面積ができるだけ大きくなるよう綿不織布層41,43を重ねることが望ましい。開口P1とP2の中心を合わせ、P2がP1を介して肌当接面に対して完全に開口するようにしてもよい。
【0053】
綿不織中間層43を二層以上とする場合は、開口及び開口率は下層に向かうほど小さくし、かつ二層の開口の少なくとも一部が重なるように配置する(図示せず)。
綿不織中間層43は、一層か二層以上であるかにかかわらず、全厚が0.05〜1.0mm、全厚の目付けが10〜30g/m2であると好ましい。
綿不織中間層43には、撥水剤が添加される。撥水剤の添加は、不織布層形成前の綿繊維にあらかじめ撥水剤による表面処理を行っても、不織布層形成後に外添塗布を行ってもよいが、層内の吸水度を一定にするため、あらかじめ繊維を撥水化処理する方法の使用が好ましい。撥水剤は、綿不織布層41と同じ撥水剤を使用しても異なる撥水剤を使用してもよい。
【0054】
綿不織中間層43は、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって形成することができる。
本形態の他の特性については、第1の実施形態と同様とする。
【0055】
<トップシートの第3の形態>
トップシート3の第3の形態の断面図を図4(C)に示す。本形態において、トップシート3は、二層以上の綿不織布層(図中は二層)の吸収体側に熱融着不織布層44が積層された構造である。
【0056】
熱融着不織布層44は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等、もしくはその複合繊維、共重合体、ブレンド体といった合成繊維を親水性化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維より形成することができるが、前記の親水性を付与した合成繊維を構成繊維中に30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上含むものとする。熱融着不織布層44を構成する繊維は、長繊維、短繊維、あるいはこれらの混合のいずれも使用できる。繊度は、1.0〜7.0dtexであることが好ましい。
【0057】
熱融着不織布層44は、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって形成することができる。目付けは、10〜30g/m2が好ましい。
本形態の他の特性については、第1の実施形態または第2の実施形態と同様とする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、尿吸収パッド、使い捨ておむつ等の使い捨て吸収性物品全般に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0059】
1…生理用ナプキン、2…不透液性バックシート、3…トップシート、4…下層吸収体、5…上層吸収体、6…中間シート、7…サイド不織布、8…エンボス凹部、9…後端独立エンボス、41,42,43…綿不織布層、44…熱融着不織布層、BS…立体ギャザー、W…ウイング状フラップ、WB…臀部側ウイング状フラップ、P1,P2,P3…開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシートは、綿繊維を70%以上含む繊維材料より形成された、二層の綿不織布層を含む不織布で構成され、
前記二層の綿不織布層のうち、上側の層は撥水剤を含有し、肌当接面の吸水度が0〜5mmで、且つ少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口が設けられ、
下側の層は親水性であり、上側の層に設けられた開口の大きさ以上の開口を有さず、かつ上側の層より低い開口率となるよう構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートの間に吸収体が介在されてなる吸収性物品において、
前記トップシートは、綿繊維を70%以上含む繊維材料より形成された、綿不織布層を三層以上含む不織布で構成され、
前記三層以上の綿不織布層のうち、少なくとも最下層以外の層は撥水剤を含有し、かつ少なくとも排泄口部分に、表裏を貫通する多数の開口が設けられ、
前記開口は下層へ向かうに従って小さくなり、かつ開口率が低くなり、
綿不織布層の最下層が最上層開口から肌側に露出するように各層の開口の少なくとも一部が重なり、
綿不織布層の最上層の肌当接面の吸水度が0〜5mmで、各層の上層当接面の吸水度が上層より高くなるように構成された、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記綿不織布層の最上層は、厚みが0.05〜1.0mm、繊維目付けが10〜30g/m2、個々の開口の面積が0.5〜8.0mm2、開口率が15〜65%であり、
前記撥水剤は、ステアリン酸化合物を含み、
前記綿不織層の最上層への前記撥水剤の添加量は、繊維100重量部に対して、0.05〜0.15重量部であり、
生理用ナプキンである、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記綿不織布層の最下層は、厚みが0.05〜1.0mm、繊維目付けが10〜30g/m2であり、開口を有さず、撥水剤を含まないよう構成された、請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートを構成する不織布の綿不織布層の下側に、親水性化処理された合成繊維を30重量%以上含む繊維材料よりなる熱融着性不織布層がさらに積層された、請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシートと前記吸収体とが少なくとも部分的に直接接触し、
前記吸収体が、少なくとも前記トップシートと接触する部分に熱融着性繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体が包装シートで包まれており、
前記トップシートと前記包装シートとが少なくとも部分的に直接接触し、
前記包装シートが、少なくとも前記トップシートと接触する部分に熱融着性繊維を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の発明。
【請求項8】
二層または三層以上を含む不織布は、各不織布層を形成して重ね合わせ、高圧水流により層間の繊維を交絡させることによって形成される、
請求項1〜7のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279621(P2010−279621A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136612(P2009−136612)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】