説明

吸収性物品

【課題】おりもの等の少量の体液を吸収する目的で長時間着用しても、蒸れ感やべたつき感がない吸収性物品及びそれに用いられる防漏シートを提供すること。
【解決手段】本発明の防漏シートは、一方の面の親水性が他方の面に比較して高められている、透湿性を有する。防漏シートは、一方の面に親水化剤が塗工されて、該面の親水性が他方の面に比較して高められている。或いは、防漏シートは、親水性不織布と透湿フィルムとのラミネート体からなり、該透湿フィルムの一方の面に該親水性不織布の構成繊維が露出していることで、当該面の親水性が高められている。本発明の吸収性物品は、前記防漏シートを備え、該防漏シートは、該防漏シートにおける親水性が高められた面が着用者の肌側に向くように配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性を有する防漏シートに関する。また本発明は、該防漏シートを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンティライナー(おりもの対策用シート)や脇パッド等の吸収性物品は、近年の女性の就業率の高まりや外出時間の長時間化等により、1枚の着用時間が半日程度と長くなっている。これらの物品では、大量の体液を外部に漏らさないことを目的として大きな吸収容量を確保することよりも、長時間着用しても蒸れやべたつきが発生せず、長時間に亘りサラット感を持続することが特に重要な機能となる。
【0003】
例えば透孔を有する表面シートと通気性の裏面シートとの間に、液透過抵抗性かつ通気性の中間層シートが介在してなるパンティライナーが提案されている(特許文献1参照)。このパンティライナーによれば、体液吸収後にも優れた通気性を維持できるとされている。しかし、このパンティライナーにおいては、吸収された体液が、中間層シートを透過せず裏面シートに達しないように構成されているため、体液が水蒸気となって裏面シートから蒸発する速度が十分とはいえない。そのため、着用者の肌に直接体液が接することに起因するべたつき感は改善されても、吸収性物品全体が体温で温められることで発生する水蒸気に起因する蒸れ感は依然として発生し易く、長時間着用したときにサラット感が持続し難い。
【0004】
これとは別に、本出願人は、セルロース系粉末を配合した透湿シートを提案した。この透湿シートは、樹脂フィルムに特有のシャリ感が低減され、布様の感触を呈するという特長を有する。しかしこの透湿シートは、その各面における親水性が同程度になっており、一方の面の親水性を他方の面よりも高めるための特別な操作は行っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−28222号公報
【特許文献2】特開平11−106536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、おりもの、汗、母乳等の少量の体液を吸収する目的で長時間着用しても、蒸れ感やべたつき感がなく、使用の最後までサラット感が持続し、快適に使用することができる吸収性物品を提供することにある。また本発明の目的は、かかる吸収性物品に好適に用いられる防漏シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一方の面の親水性が他方の面に比較して高められている、透湿性を有する防漏シートを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、前記防漏シートを備え、該防漏シートは、該防漏シートにおける親水性が高められた面が着用者の肌側に向くように配されている吸収性物品を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防漏シートは、(イ)湿気を外部に排出し、蒸れないこと、(ロ)水分を着衣側に染み出させないこと、という水分移動に関して相反する機能を両立している。本発明によれば、吸収性物品における防漏シートの2つの面のうち、着用者の肌側に向く面の親水性が高められているので、着用者の肌側に向く面の水分が、防漏シートの表面付近において展開し易い状態となり、水蒸気としての発散が促進される(すなわち、防漏シートの水蒸気透過に係わる領域が多くなる)。また、水分(体液)が、防漏シートの表面に濡れ広がることもできるため、水蒸気圧差の影響を受け易く、効率的に蒸散がおこる。その結果、吸収性物品内部に水分がこもり難く、水蒸気に起因する蒸れ感が発生し難く、着用中ずっとサラット感が持続する。特に、防漏シート上に、着用者の肌に当接する層よりも、防漏シートに対向する層の方が、繊維密度が密である複数層の繊維集合体から形成された透液層を配した場合には、透液層に吸収された体液が速やかに防漏層近傍に移動するようになる。その結果、透液層の肌当接面に液が残らず、肌当接面におけるべたつきが発生しづらくなる。
【0010】
これに対して従来の防漏シートには、後述するような様々な方法で、極微細な孔を開けたフィルムが主に用いられている。これらのフィルムは、水蒸気(気体)は通過させるが、体液(液体)は通過も浸透もさせない材料である。従って、水蒸気が外部に排出する仕組みは、専ら吸収性内部に発生する水蒸気の蒸気圧が、着衣側の水蒸気圧より高いこと、即ち防漏シートを挟んで身体側と下着側とでの水蒸気圧の差に由来するガス拡散に依存している。また従来の防漏シートは、主成分である熱可塑性樹脂自身が疎水性であることから、水との接触性が低い。即ち、防漏シートの表面で体液が濡れ広がることもなければ、体液が防漏シートに密着することもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態としてのパンティライナーを示す斜視図であり、図1(b)は部分拡大縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示すパンティライナーを示す部分縦切断斜視図である。
【図3】図3は、図1に示すパンティライナーにおける防漏シート3の縦断面の構造を示す模式図である。
【図4】図4は、図1に示すパンティライナーにおける別の防漏シート3の縦断面の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品の一実施形態としてのパンティライナー1は、図1及び図2に示すように、複数層の繊維集合体から形成された透液層2と透湿性の防漏シート3とを備える。透液層2は、その底面22を防漏シート3に対向させて、接着剤(図示せず)を介して防漏シート3に接着されている。
【0013】
図3には、防漏シート3の縦断面の構造が模式的に示されている。防漏シート3は、第1の面31及び第2の面32を有する。第1の面31は、着用者の肌側に向く面である。第2の面32は、ショーツ等の下着側に向く面である。
【0014】
防漏シート3は透湿性を有し且つ液不透過性ないし液難透過性のものである。防漏シート3は、以下の2つの要件(ア)及び(イ)を満たせば、液不透過性ないし液難透過性であるということができる。
【0015】
(ア)JIS L 1092−1977(「繊維製品の防水性試験方法」記載B法(高水圧))に定める方法で測定した耐水圧が0.18kg/cm2以上であること。
【0016】
(イ)生理用品自主基準に定める、以下の防水試験において、染み出しを生じないこと。
防漏シートの身体側面を上にしてろ紙の上に載せ、更に直径50mmの滲出確認用ろ紙(ADVANTEC製、No.2)2枚を防漏シートの上に重ねる。これにコンゴーレッド溶液(コンゴーレッド0.2gをイオン交換水に溶解し、全容を100mLに調整した液)1mLを、ろ紙のほぼ中央部にスポイト等を使用して静かに流下させたのち、1分間静置する。その部分に直径50mmで重さ200gの荷重をかけたとき、防漏シートを通して滲出確認用ろ紙に該溶液が滲出したか否かを確認する。
【0017】
また、防漏シート3の透湿度(JIS Z0208)が2400g/m2・24h(1.0g/100cm2・hr)以上であれば、防漏シート3は実用上有効な透湿性を有するということができる。なお、吸収性物品内部の湿気を効果的に放出するには、防漏シート3の透湿度は3600g/m2・24h(1.5g/100cm2・hr)以上あることが更に好ましい。一方で透湿度を極端に高めると、前記防水試験で水の滲出を生じる可能性がある。この観点から、好ましい透湿度の範囲は2400〜9600g/m2・24h(1.0〜4.5g/100cm2・hr)、特に3600〜7200g/m2・24h(1.5〜3.0g/100cm2・hr)の範囲である。
【0018】
図3に示す防漏シート3は、1枚の透湿フィルムにおける第1の面31に親水化剤6が塗工されて、第1の面31の親水性が、第2の面32のそれよりも高められている。このように親水性が高められていると、着用者の肌に向く面である第1の面31側の水分量が、下着に向く面である第2の面32側よりも多くなる。従って、防漏シート3の内側と外側とで大きな湿度差が生じ、その湿度差が駆動力になり、パンティライナー内部にこもった水分が水蒸気として蒸散されやすくなる。特に、後述するように、透液層2の最下層(下層42)に水分が保持される場合には、防漏シート3からの水分の蒸散が一層促される。
【0019】
本実施形態で用いられる透湿フィルムとしては、例えば熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを含む樹脂組成物を溶融混練して押し出したフィルムを、所定の倍率に延伸して微細孔を開けた多孔性フィルムが挙げられる。透湿フィルムに十分な透湿性を付与するためには、フィルムの坪量と無機フィラー配合量とを適度にバランスさせればよい。高い透湿度と、着衣固定用ズレ止め粘着剤を使用しても破れない強さを両立するためには、好ましいフィルム坪量は、18〜70g/m2であり、より好ましくは25〜60g/m2である。また、好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の重量に対するフィラーの重量%として30〜65重量%であり、より好ましくは40〜60重量%である。
【0020】
透湿フィルムに含まれる無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、タルク、ゼオライト、カーボン、シリカ、ケイ酸塩鉱物等が挙げられる。一方、透湿フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。これらの樹脂は一般に疎水性なので、これらの樹脂から構成されるフィルムそのものは、その表面が疎水性である。本実施形態においては、このようなフィルムの一面に親水化剤を塗工して、疎水性の表面を親水化している。疎水性の表面は親水化剤とのなじみが良好でない場合があるので、疎水性の表面に、コロナ放電処理やプラズマ処理などの活性化処理を施して、該表面に親水基を生成させ、その濡れ性を高めることが好ましい。
【0021】
親水化剤としては、各種界面活性剤を用いることができる。例えばαオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合物、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者に公知の物質を用いることができる。親水化剤の種類によっては、防漏シート3における第1の面31の全域に親水化剤を塗工すると、該第1の面31における水分の拡散(濡れ広がり)が甚だしくなり過ぎて、防漏シート3の周縁部から水分がにじみ出す可能性がある。そこで、親水化剤が塗工されている領域と塗工されていない領域を形成することが好ましい。具体的には、防漏シート3の第1の面31における中央部に親水化剤を塗工すると共に、その周縁部には親水化剤を塗工しないようにすることが好ましい。つまり、親水化剤が塗工されている領域が、該親水化剤が塗工されていない領域で囲繞されていることが好ましい。このように親水化剤を塗工することで、たとえ水分が濡れ広がり過ぎたとしても、非塗工部分が水分の濡れ広がりを阻止するバリア領域として作用するので、防漏シート3の周縁部からの水分のにじみ出しが効果的に防止される。
【0022】
防漏シート3に、文字、図形、記号等を印刷したい場合には、有色の親水性着色剤からなる親水化剤を用いることが好ましい。例えば、青色1号、青色2号、赤色2号等の親水性着色剤を、溶媒に溶解して塗工液を調製し、該塗工液を防漏シート3における第1の面31に印刷することができる。溶媒としては、水、アルコール類、又はこれらの混合物等が挙げられる。親水性着色剤の定着性を高める観点から、溶媒中にポリビニルアルコール等の水溶性バインダーを配合してもよい。親水性着色剤によって印刷された文字、図形、記号等は、防漏シート3における第2の面32側から透けて見える。また、透液層2が薄い場合には、該透液層2越しに透けて見える。つまり、親水性が高められた領域が親水性着色剤によって視認可能な状態なされている。なお、ここでいう有色とは、防漏シート3の下地の色と異なる色のことをいう。
【0023】
親水性着色剤を用いる場合には、該着色剤の種類によっては、該着色剤によって、透湿フィルムの微細孔が閉塞されてしまい、該透湿フィルムの透湿度が低下するおそれがある。そこで、親水性着色剤を用いる場合には、該着色剤をドット状に印刷して、透湿フィルムの微細孔が閉塞されにくくすることが好ましい。この場合、文字、図形、記号等は、親水性着色剤の多数のドットの集合体から形成される。
【0024】
親水性着色剤の印刷には、例えばフレキソ印刷やグラビア印刷を用いることができる。特に、版ドットのコントロールの点からフレキソ印刷を用いることが好ましい。
【0025】
親水性着色剤を用いて文字、図形、記号等を印刷する場合、水分によってその印刷がにじんでしまう場合や、印刷が消失する場合がある。そこで、油性着色剤と、親水性着色剤とを併用することが好ましい。この場合、主たる印刷部を、油性着色剤を塗工することで形成し、従たる印刷部を、親水性着色剤を塗工することで形成すれば、親水性着色剤に起因する印刷のにじみや消失を最小限にすることができる。親水性着色剤に代えて無色の親水化剤を用いることも可能である。無色の親水化剤を用いれば、該親水化剤のにじみ等の問題は生じない。
【0026】
防漏シート3における各面の親水性の違いは、各種液の水滴を滴下したときの接触角で観察することが可能である。基本手法は、イオン交換水を駒込ピペットで防漏シート3の片面に滴下し、接触角を拡大測定することである。従来の透湿防漏フィルムでは接触角が90度以上(疎水側)になる。同様の測定を両面について実施したとき、本実施形態においては、吸収性物品の内側を向く面(着衣当接面と反対の面)の接触角が小さく、90度以下になっている。
【0027】
より簡易な手法としては、和光純薬工業(株)製濡れ張力試験用混合液各種を、防漏シート3における各面に滴下して濡れ広がりを確かめてみることが有効である。一般の透湿防漏シート、及び本実施形態の防漏シート3における着衣当接面は、濡れ張力試験用混合液No.40(表面張力40.0mN/m)を用いた場合、当該液が濡れ広がらず水滴状になる。一方、本実施形態の防漏シート3における親水化された面(着衣当接面と反対面)は、同液が容易に濡れ広がる。
【0028】
図4には防漏シート3の別の実施形態が示されている。図4に示す実施形態の防漏シート3は、親水性不織布7と透湿フィルム8とのラミネート体からなり、透湿フィルム8の一方の面に親水性不織布7の構成繊維が露出していることで、当該面の親水性が高められている。防漏シート3においては、親水性不織布7の構成繊維が露出している面が第1の面31、即ち着用者の肌側に向く面になっている。また繊維が露出していない面が第2の面32、即ち下着側に向く面になっている。本実施形態の防漏シート3においては、親水性不織布7の構成繊維が露出している第1の面31における当該繊維によって、水分が防漏シート3の平面方向に濡れ広がる。
【0029】
図4に示す防漏シート3は、例えば次の方法(1)及び(2)に従い製造することができる。
(1)親水性不織布に、無孔性の透湿フィルムを溶融ラミネートする。
(2)伸長性を有する親水性不織布に、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを含む樹脂組成物を溶融ラミネートし、得られたラミネート体を一軸又は二軸延伸する。
【0030】
(1)の方法において用いられる親水性不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布などが挙げられる。これらの不織布の構成繊維には、親水化処理が施されており、それによって、これらの不織布は親水性を有している。これらの不織布は、液の引き込み性を高める目的で、エンボス加工されていてもよい。これらの不織布の坪量は、12〜40g/m2、特に14〜30g/m2であることが、十分な親水性の発現及び強度維持の観点から好ましい。
【0031】
(1)の方法において用いられる無孔性の透湿フィルムとしては、親水基の多いポリウレタン系フィルムなどが挙げられる。例えば日本ポリケム製のフレックマーなどを用いることができる。この透湿フィルムの坪量は16〜45g/m2であることが好ましい。
【0032】
(2)の方法において用いられる伸長性を有する親水性不織布としては、ポリウレタンを構成繊維とする不織布や、三次元捲縮を有する繊維を構成繊維とする不織布が挙げられる。これらの不織布は、その構成繊維の樹脂自体が弾性を有するか(ポリウレタンの場合)、又は樹脂自体が弾性を有していなくても、その構成繊維の形態に起因する弾性(三次元捲縮繊維の場合)によって伸長性を有する。これらの不織布の構成繊維には、親水化処理が施されており、それによって、これらの不織布は親水性を有している。延伸処理後の不織布の坪量は、12〜40g/m2、特に14〜30g/m2であることが好ましい。
【0033】
(2)の方法において用いられる熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを含む樹脂組成物としては、図3に示す防漏シート3に用いられる樹脂組成物と同様のものを用いることができる。この樹脂組成物を用い溶融ラミネートによって形成されたフィルムは、多数の微細孔を有する多孔性フィルムとなる。延伸処理後のフィルムの坪量は16〜45g/m2であることが好ましい。
【0034】
本実施形態の防漏シート3、即ちフィルムと不織布の複合シートでは、各面の親水性の違いを接触角で観察することは容易でない。しかし、不織布側の面(着衣当接面と反対側)に対する各種液の浸透性試験によって、親水性を目視することが可能である。基本手法は、イオン交換水を駒込ピペットで不織布面に滴下することである。本実施形態に係るフィルムと不織布の複合シートでは、イオン交換水は水滴として表面にとどまることはなく、5秒以内に完全に吸収される(もしくは濡れ広がる)。また、濡れ張力試験用混合液各種を不織布表面に滴下したとき、少なくとも、濡れ張力試験用混合液No.51(表面張力51.0mN/m)の液が完全に濡れ広がり、液滴として残存することはない。
【0035】
次に、防漏シート3上に配された透液層2について説明する。透液層2は、複数層の繊維集合体からなる。透液層2は、その肌に当接する層(以下「最上層」ともいう)よりもその防漏シート3に対向する層(以下「最下層」ともいう)の方が、繊維密度が密であることが好ましい。ここでいう「繊維密度」とは、透液層2の各層における構成繊維の体積密度を意味する。各層において、層全体の体積に対する構成繊維の総体積の比率Pが大きいことを「繊維密度が密」という。その反対に該比率Pが小さいことを「繊維密度が疎」いう。本実施形態においては、透液層2は、最上層である上層41と、最下層である下層42との2層からなる。
【0036】
繊維密度を密にするには、例えば、層における構成繊維の間隙を小さく設定すればよい。本実施形態においては、下層42における構成繊維の間隙を、上層41における構成繊維の間隙よりも小さく設定している。このように、上層41の繊維密度を疎にし、下層42の繊維密度を密に設定すると、下層42の方が上層41よりも毛管力が大きくなる。なお本実施形態においては、透液層2を、3層以上の繊維集合体から形成してもよい。3層以上の繊維集合体からなる透液層2においては、最上層から最下層に順に繊維密度が密になるように構成することができる。また、このような疎密関係を有していなくても、最上層の繊維密度(疎)<最下層の繊維密度(密)の関係を有し、且つ最上層に吸収された体液が最下層に移行することができれば、最上層と最下層との間の中間層(1層又は2層以上)の繊維密度の疎密関係に制限はない。特に好ましい形態は、最上層から最下層に順に繊維密度が密になるように構成することである。
【0037】
上述したような繊維密度の疎密関係を形成するには、後述するように繊維集合体の繊度を変える(最上層を細く、最下層を太く)、最上層と最下層で熱融着性繊維の比率を変える(最下層の方が熱融着量が多い)、上層と下層で繊維の捲縮度を変える(下層の方が、捲縮が多く、繊維集合が疎)、繊維集合体を下層側から熱プレスする(最下層を集中的に押しつぶす)といった方法を用いることができる。このうちの最後の方法のように、繊維密度が層間で明確に異なるのではなく、最上層から最下層に向けて連続的に(或いは段階的に)繊維密度が高まるような疎密関係も好ましく選択可能である。
【0038】
繊維密度は、該当する繊維集合体各層の坪量(m2あたりの重量)を測定し、更に各層の厚みを測定し、それらの比(坪量/厚み)で計算できる。厚みは、布地の圧縮試験(初期厚み)の考え方〔「風合い評価の標準化と解析(第2版)」、川端季雄著、社団法人 日本繊維機械学会 風合い計量と規格化研究委員会発行(昭和55年7月10日発行)〕を準用し、0.5g/cm2荷重下の厚みを代表値とした。測定にはカトーテック製KES−FB3圧縮試験機を用いた。各層に凹凸構造がある場合も同様の測定を行い、最大厚みを代表値に用いる。
【0039】
各層が密着しており、剥離で厚みが変わってしまう場合は、以下のようにして各層の厚みを測定した。
(1)前述のように、全体の厚みを前記圧縮試験機で測定する。
(2)この厚みになるように繊維集合体を保持しながら、断面を拡大観察し、各層の厚みを計測する。各層の厚みは、断面厚みが最大となるポイントで計測する。
(3)以上の測定を20箇所で行って、その平均値を代表値に用いた。
【0040】
透液層2は、図1及び図2に示すように、その全層に亘って、体液を局所集中させるための多数の凹部52を有していることが好ましい。詳述すると、透液層2においては、上層41と下層42とは積層されて所定パターンの多数の接合部43で部分的に接合されている。接合部43は、平面視円形でそれぞれ不連続に形成され、千鳥格子状のパターンで配されている。接合部43は、圧密化されており、透液層2における他の部位に比して厚みが小さく且つ密度が大きくなっている。接合部43は、例えば熱エンボス、超音波エンボス、接着剤による接着等の各種接合手段によって形成される。接合部43の形状は、円形の他、楕円形、三角形、矩形又はこれらの組み合わせ等であってもよい。また接合部43を、連続した形状、例えば直線や曲線等の線状、格子状等に形成してもよい。
【0041】
上層41は、下層42と接合している接合部43以外の部分が凸状に突出しており、それにより多数の凸部51が透液層2の上層41側に形成されている。各凸部51の内部は、上層41を構成する繊維で満たされている。凸部51の形状は、主として、上層41の形態及び接合部43のパターンにより決まる。そして、凸部51間が凹部52となっている。凹部52の底部には接合部43が位置している。透液層2全体として見ると、底面(防漏シート3に対向する面)22が平坦状で、上面(肌当接面)21に多数の凹凸が形成された凹凸構造となっている。
【0042】
このように透液層2の全層に亘って多数の凹部52が形成されることによって、透液層2の全層(本実施形態においては2層)が一体化すると共に、凹部52に向けて体液が集中することになる。その結果、体液は、透液層2の面方向に移行し難くなり、凹部52の深さ方向に沿って移行するようになる。つまり、体液が、最上層(上層41)から最下層(下層42)に向かう方向性が生じる。また、透液層2が凹凸構造となっているので、着用者の肌と透液層2の上面(肌当接面)21とが密着し難くなる。その結果、通気性が向上する。
【0043】
更に、透液層2は、最上層(上層41)よりも最下層(下層42)の方が、親水性が高くなるように構成されることが好ましい。このように構成すると、最上層(上層41)から最下層(下層42)への毛管力勾配が更に向上する。なお透液層2が3層以上の繊維集合体からなる場合において、最上層と最下層との間の中間層(1層又は2層以上)についての親水性の大小関係は、透液層2が3層以上の繊維集合体からなる場合における中間層についての繊維密度の疎密関係と同様である。
【0044】
なお、このように凹凸構造を持つときは、前述したように凸部51で最大厚みを測定し、この最大厚みで凹部52も含めた全体の繊維密度を代表させる(見かけ密度を用いる)。
【0045】
透液層2の各層の構成繊維を親水化処理する方法としては、当該技術分野において常用されている方法を適宜用いることができる。例えば、レーヨンやパルプ繊維等の親水繊維を所定の割合で混合して不織布を得ることで、繊維集合体全体の親水性を高めることが可能である。より一般的な方法は、構成繊維として代表的に用いる熱可塑性繊維を、ウェブ形成前に予め親水化しておくことである。
【0046】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、又はこれらの複合繊維を作製し、これを所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、複合繊維に各種親水化処理剤を塗工する。親水化処理剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合物、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、並びにこれらの混合物等、当業者公知の親水化処理剤を用いることができる。
【0047】
このとき、上下層間での体液の液移動を促すために、上層よりも下層の親水性を高めると一層効果的である。例えば、(イ)下層に一層多くの量の親水化処理剤を塗工する、(ロ)下層の親水化処理剤の親水度を高める、(ハ)下層の親水化処理剤の親水耐久性を高める等、各層の親水化処理の程度を変えることが可能である。具体的には、各層の親水化処理に、体液への溶解性の低い親水化処理剤を用いるか、又は親水化処理剤を繊維表面に固定することにより行い、最上層から最下層へ向かって親水性が高くなるように親水化処理剤を選択し、最上層から最下層に至るまでの体液の性質を変化させずに最下層へ導く方法が挙げられる。
【0048】
また、透液層2の親水化処理の別の方法として、体液の表面張力を低下させて体液の最下層(下層42)への移行を促進するために、最上層(上層41)における親水化処理剤として液への溶解性が高いものを用い、親水化処理剤を体液に溶け込ませ、体液の表面張力が下がり易くなるようにする方法が挙げられる。
【0049】
透液層2は、その底面22が平坦状となっている。ここでいう「平坦状」とは、巨視的に視て平面状であることを意味し、底面22に若干の凹凸がある場合や底面22が若干、波状となっている場合も含む。透液層2の底面22を平坦状にする方法としては、例えば、カレンダー処理(即ち、表面の平滑な加圧ロールの間に透液層の繊維集合体を通過させて平坦に押しつぶす方法)が挙げられる。
【0050】
カレンダー処理は、例えば、表面が平坦な金属ロールと、表面が平坦なゴムロールを同一周速で接触させ、その間に透液層の繊維集合体を通すことで行われる。このとき、透液層の最下層側に金属ロールを対向させることで、透液層の底面の平坦性を高めることができる。また、金属ロールを適宜加熱することで、透液層の底面の平坦性を更に高めることができる。このとき、熱可塑繊維の設計と金属ロール温度との関係によって、透液層2の疎密構造を制御することも可能である。
【0051】
具体的には、透液層全体に、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘がポリエチレン(PE、融点110℃)の芯鞘繊維を用い、金属ロールの表面温度を110℃以上とする。このようにすると、最下層の芯鞘繊維が熱融着して繊維密度が密になり、上層に行くに従って連続的に熱融着が弱まって繊維密度が疎になる。また、透液層の最下層に上記芯鞘繊維を多量に配合し、上層には、より高融点の芯鞘繊維(例えば、芯がPET,鞘が124℃程度と高い融点のPE等)を用い、表面温度が110℃近傍の金属ロールを用いると、繊維密度の疎密の差がより強まる。このように、カレンダー処理は、透液層の底面の平坦性を高める他、透液層の疎密構造の形成にも寄与することができる。
【0052】
防漏シート3からの水分の蒸散を促進するには、水分の一時保持層となる最下層(下層42)は、できるだけ防漏シート3の近傍に集中していることが好ましい。即ち、最下層(下層42)は、薄い方が好ましい。同じく防漏シート3からの水分の蒸散を促進するには、蒸発面積が広い方が好ましい。即ち、体液ができるだけ最下層で濡れ広がる方が好ましい。一方、肌に体液が付着することに起因する濡れた感じや蒸れた感じがしないようにするためには、透液層2における肌に当接する面側の体液の濡れ広がりは小さい方が好ましい。即ち、体液は、最上層では濡れ広がらず、一方最下層では十分に濡れ広がり、全体として最下層における防漏シート3近傍に集中的に存在することが望ましい。この観点から、透液層2全体の厚み(t0)に対する最下層(下層42)の厚み(t1)の比率(t1/t0)は、好ましくは5%〜40%、更に好ましくは7%〜30%である。
【0053】
最も理想的な実施形態は、透液層における肌に当接する面における体液の濡れ広がりが多数の凹部によって阻止され、且つ最下層の体液の濡れ広がりが凹部に影響されない形態である。このためには透液層の繊維密度の大小関係が、「最上層<<凹部≦最下層」であることが最も好ましい。この観点から、前記厚みの比率(t1/t0)は、上層側の厚みが60%〜85%、凹部の厚みが5〜40%、最下層の厚みが上記の如く5〜40%で、凹部と最下層の厚みがほぼ同じであることが実施可能な形態として好ましい。これらの厚みは、前述したように、前記圧縮試験と拡大観察とを併用することで測定できる。
【0054】
透液層2の構成繊維は、吸収された体液を、最下層(下層42)に移行、集中させ、更に防漏シート3に伝搬させて速やかに蒸散させるために、繊維自身で液保持性を実質的に有していない繊維を主体としていることが好ましい。そのような繊維としては、例えば、疎水性繊維、化学処理パルプが挙げられる。特に好ましい繊維としては、本来的に疎水性で且つ熱融着性である熱可塑性繊維を、親水化処理剤で親水化した繊維が挙げられる。
【0055】
前述した親水化処理剤のうち、体液への溶解性が低いもの又は繊維表面に固定されてものを用いた場合には、最下層に至った体液の性質変化が少なく、平面拡散の抑制により防漏層との接触機会が増え、蒸散の効率が高くなる。また、体液への溶解性が高い親水処理剤を用いた場合には、最下層において体液を適度に拡散させて蒸散の効率を高めることができる。更に、最下層にアセテートトウのような本来的に親水性であり吸収性が低く、長手方向に繊維配向した繊維層を配すると、選択的に長手方向への拡散を起こすことができる。
【0056】
透液層2には、その一部に親水性で液保持性の繊維が配合されていてもよい。しかし、十分な毛管力を確保するためには、透液層2全体に対する、液保持性を実質的に有していない繊維の比率を、70重量%以上とすることが好ましい。親水性で液保持性の繊維としては、パルプ、レーヨン、その他各種天然繊維の他、吸水性樹脂繊維(即ちアクリル酸、アクリル酸塩重合体架橋物からなる繊維)等が挙げられる。これらの繊維は、特に最下層に集中的に配合することが、体液の集中的な移行を促す意味で効果的であるが、その場合も最下層への配合量は、体液を保持・貯留せず速やかに蒸散する観点より(最下層全体の繊維量に対する比率として)10重量%以内が好ましく、5重量%以内が更に好ましい。これらの繊維を含まず、別の工夫で体液の移行を促すことも好適に用いられる。
【0057】
透液層全体の坪量は、液漏れせず一時保持できる観点及びヨレ防止の観点より、好ましくは50〜150g/m2、より好ましくは60〜100g/m2である。上層41の坪量は、体液を過度に広げず、よれにくく、柔らかい感触を維持する観点から、好ましくは25〜80g/m2である。下層42の坪量は、薄くても十分な毛管力を発現する観点から好ましくは25〜70g/cm2である。また、上層41の構成繊維の繊度は、毛管力があまり大きくなく(低液保持性)、且つ高感触(ざらつかず滑らか)であるために、好ましくは2.2〜6.0dtexである。下層42の構成繊維の繊度は、毛管力が十分高い観点から、上層41よりも繊度が小さいことが好ましい。更に好ましくは4.0dtex以下、現実に入手可能でより好ましい範囲では1.8〜4.0dtexである。
【0058】
透液層2の底面22は、防漏シート3の上面(透液層2に対向する面)31に接着剤(図示せず)により接着されている。透液層2と防漏シート3との当接面に全面的に接着剤が塗工されていると、透液層2から防漏シート3へ水分が移行し難くなるので、接着剤は部分的に塗工されていることが好ましい。
【0059】
透液層2と防漏シート3とは、接着剤が塗工されていない領域において密着していることが好ましい。透液層2と防漏シート3とは、接着剤が薄く塗工され、透液層2の底面22及び防漏シート3の上面31が平坦状であれば、通常密着する。
【0060】
接着剤の塗工方法としては、例えば、通常(140〜200μm)より細い線径(60〜120μm)のホットメルト接着剤を、スパイラルパターンで、少なくとも凹部52のパターン密度よりも細かい密度で塗工する方法が挙げられる。このような塗工方法によれば、透液層2と防漏シート3との密着性が向上する。ホットメルト接着剤の塗工パターンとしては、スパイラルパターン以外にも、例えば、ドットパターン、Ω状パターン、線状パターンが挙げられる。これらのパターンは、ホットメルト接着剤のスパイラルスプレー塗工、スロットスプレー塗工、コントロールウィーブ塗工、グラビア塗工等で形成可能である。特に、コントロールの容易さ、防漏シート3へのダメージの小ささ等の観点から、スパイラルスプレー塗工やコントロールウィーブ塗工が好適に用いられる。ホットメルト接着剤の塗工量は、好ましくは2〜15g/m2、より好ましくは3〜10g/m2である。
【0061】
本実施形態のパンティライナー1は、図1及び図2に示すように、複数層の繊維集合体からなる透液層2と、透湿性の防漏シート3と、これらを接着する接着剤(図示せず)のみからなることが特に好ましいが、これに制限されない。ここでいう「のみ」とは、吸収された水分が一時的に保持されても吸収性物品に永続的には保持されず、水蒸気となって速やかに外部に排出されるという本発明の効果を阻害するような、高い液保持性を有する吸収体等を具備していないという意味である。従って、本発明の効果を阻害しないような部材が設けられている形態は除外されておらず、例えば、着衣に固定するための粘着剤(通常、防漏シート3における第2の面32側に設けられる)等を具備していてもよい。
【0062】
本実施形態のパンティライナー1は、複数層の透液層2と透湿性の防漏シート3とからなり、透液層2の底面22が防漏シート3に接着されており、透液層2の肌に当接する層41が防漏層に対向する層42よりも繊維密度が密であるので、透液層2に吸収された体液は、速やかに防漏シート3の近傍に移動し、透液層2の肌当接面(上面)21に残らず、肌当接面21におけるべたつきが発生しづらい。また、防漏シート3においては、その透液層2に対向する第1の面31側の水分量が非常に多く(湿度が高く)、下着に向く第2の面32側の水分量が少ない(その湿度は低く、外気における湿度とほぼ同じ)という、防漏シート3の内側と外側との湿度差(平衡蒸気圧の差)が駆動力になって、パンティライナー1の内部にこもった水分を水蒸気として蒸散する効果が高くなる。その結果、パンティライナー1の内部に水分がこもり難く、水蒸気に起因する蒸れ感が発生し難く、着用中ずっとサラット感が持続する。
【0063】
また、透液層2の全層に亘って体液を局所集中させるための多数の凹部52を有しているので、透液層2の全層が厚み方向に一体化すると共に、凹部52に向けて体液が集中することになる。従って、体液は、透液層2の面方向には移行し難くなり、凹部52の深さ方向に沿って移行するようになる。その結果、体液には上層41から下層42に向かう方向性が生じるので、透液層2における体液の移行性が向上している。それに加えて、透液層2は、その肌に当接する層41よりもその防漏シート3に対向する層42の方が、親水性が高くなっているので、透液層2における体液の移行性が一層向上している。
【0064】
更に、透液層2は、その底面22が平坦状であり、その底面22が防漏シート3に密着しているので、透液層2から防漏シート3への水分の移行性が向上している。しかも、防漏シート3は、着用者の肌に向く面31側の親水性が高められているので、透液層2の下層42に一時保持された水分が防漏シート3となじみ易く、防漏シート3からの水分の蒸散が促される。
【0065】
本発明の吸収性物品及び防漏シートは、前記の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。例えば、本発明の吸収性物品及び防漏シートは、先に説明したパンティライナーの他に、脇パッド、母乳パッド、軽失禁パッド、生理用ナプキン、おむつ等にも適用することができる。また透液層には、体液を局所集中させるための多数の凹部を設けなくてもよい。更に透液層の構成に依存せず、様々な構成の吸収性物品に対し本発明の防漏シートを組み合わせることができる。
【0066】
また透液層の構造は前記実施形態に限られず、例えば透液層として単層構造のものを用いることができる。
【0067】
また、本発明の防漏シートの片面を親水化する手段は、前記実施形態の方法に限定されず、様々な方法で達成することが可能である。例えば、先に述べたプラズマ処理やコロナ放電処理によって親水化することも可能である。特に、近年実用化された常温プラズマ法によれば、高い親水レベルを得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0068】
1 パンティライナー(吸収性物品)
2 透液層
21 上面(肌当接面)
22 底面
3 防漏シート
31 第1の面
32 第2の面
41 上層(肌に当接する層)
42 下層(防漏層に対向する層)
51 凸部
52 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の親水性が他方の面に比較して高められている、透湿性を有する防漏シート。
【請求項2】
一方の面に親水化剤が塗工されて、該面の親水性が他方の面に比較して高められている請求項1記載の防漏シート。
【請求項3】
前記親水化剤が塗工されている領域と塗工されていない領域を有する請求項2記載の防漏シート
【請求項4】
前記親水化剤が塗工されている領域が、該親水化剤が塗工されていない領域で囲繞されている請求項3記載の防漏シート。
【請求項5】
親水性着色剤からなる前記親水化剤によって前記一方の面の親水性が高められており、親水性が高められた領域が該親水性着色剤によって視認可能な状態なされている請求項2ないし4の何れかに記載の防漏シート
【請求項6】
親水性が高められた前記一方の面に、更に油性着色剤が塗工されている請求項2〜5記載の防漏シート。
【請求項7】
前記防漏シートが、親水性不織布と透湿フィルムとのラミネート体からなり、該透湿フィルムの一方の面に該親水性不織布の構成繊維が露出していることで、当該面の親水性が高められている請求項1記載の防漏シート。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載の防漏シートを備え、該防漏シートは、該防漏シートにおける親水性が高められた面が着用者の肌側に向くように配されている吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が、複数層の繊維集合体から形成された透液層と、前記防漏シートとからなり、
前記透液層は、その底面を前記防漏シートに対向させて、接着剤を介して該防漏シートに接着されており、
複数層の前記透液層は、その肌に当接する層よりもその前記防漏シートに対向する層の方が、繊維密度が密である請求項8記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記複数層の透液層は、その全層に亘って、体液を局所集中させるための多数の凹部を有する請求項9記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記透液層は、その底面が平坦状である請求項9又は10記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記透液層は、その底面が前記防漏シートに密着している請求項11記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記複数層の透液層は、その肌に当接する層よりもその前記防漏シートに対向する層の方が、親水性が高い請求項9ないし12の何れかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−63935(P2010−63935A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293243(P2009−293243)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【分割の表示】特願2005−203707(P2005−203707)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】