説明

吸収性物品

【課題】健常者のみならず、視覚障害者でも、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により判断することができる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態であるおむつ1Aは、表面シート2と、裏面シート3と、これらのシート2,3間に配された長方形状の吸収体4とを備えている。おむつ1Aは、排泄物と接触することにより芳香を発する第1芳香部5及び第2芳香部6を有し、第1芳香部5及び第2芳香部6は、互いに異なる芳香が付与されている。第1芳香部5は装着者の排尿部に当接される受尿部Dに配され、第2芳香部6は、受尿部Dを避けて、吸収体4の長手方向端部4aに配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつには、装着者が排泄したか否かを色により判断するインジケーターが備えられている。また、視覚障害者でも判断できるように、香りにより判断するインジケーターを備えた使い捨ておむつも知られている。例えば、特許文献1には、吸収体とバックシートとの間に、芳香の発散性を有する揮発性物質を含有する水溶性樹脂の層を有する芳香発散層を備えた使い捨ておむつが記載されている。また、特許文献2には、受尿部及び受便部それぞれに、異なる香料成分を付与されたマイクロカプセルを配した使い捨ておむつが記載されている。
【0003】
上記特許文献1に記載の使い捨ておむつは、尿などの排泄物が芳香発散層に接触すると、芳香の発散性を有する揮発性物質が揮散し、おむつの外部へと放出されて、排泄があったことが知覚される。従って、健常者のみならず、視覚障害者でも排泄があったことが判断できる。しかしながら、特許文献1に記載の使い捨ておむつでは、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により判断したいとのニーズを満たすことができ難かった。
【0004】
上記特許文献2に記載の使い捨ておむつは、排尿や排便がマイクロカプセルに接触すると、受尿部及び受便部それぞれに配されたマイクロカプセルの香料成分が異なっているため、排尿又は排便があったことが知覚される。従って、健常者のみならず、視覚障害者でも排尿又は排便があったことが判断できる。しかしながら、特許文献2には、吸収した排泄物の量を知る手段については、何ら記載されておらず、特許文献2に記載の使い捨ておむつでは、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により判断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−369838号公報
【特許文献2】特開2007−268221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、健常者のみならず、視覚障害者でも、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により判断することができる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液透過性の表面シートと、液難透過性の裏面シートと、これらのシート間に配された長方形状の吸収体とを備えた吸収性物品であって、排泄物と接触することにより芳香を発する第1芳香部及び第2芳香部を有し、該第1芳香部及び該第2芳香部は、互いに異なる芳香が付与されており、前記第1芳香部は装着者の排尿部に当接される受尿部に配され、前記第2芳香部は、前記受尿部を避けて、前記吸収体の長手方向端部に配されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、健常者のみならず、視覚障害者でも、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である展開型の使い捨ておむつを表面シート側から見た平面図である。
【図2】図2は、図1のX1−X1線断面図である。
【図3】図3は、図1のY1−Y1線断面図である。
【図4】図4は、芳香拡散層からなる第1芳香部を説明する断面図である。
【図5】図5は、第2実施形態である展開型の使い捨ておむつのX1−X1線断面図である。
【図6】図6は、第3実施形態である展開型の使い捨ておむつのX1−X1線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい第1実施形態に基づき、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0011】
第1実施形態の使い捨ておむつ1A(以下、「おむつ1A」ともいう。)は、図1に示すように、液透過性の表面シート2と、液難透過性の裏面シート3と、これらのシート2,3間に配された長方形状の吸収体4とを備えており、排泄物と接触することにより芳香を発する第1芳香部5及び第2芳香部6を有している。おむつ1Aは、図1に示すように、中心線CLに対して左右対称に形成されている。従って以下の説明では、左右対称な部分については、主に、右側について説明する。
【0012】
第1実施形態のおむつ1Aについて、詳述すると、おむつ1Aは、図1に示すように、装着時に装着者の腹側に位置する腹側部A、背側に位置する背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に配置される股下部Cを有する本体10を備え、背側部Bの両側部10bから幅方向(以下「X方向」という。X方向:中心線CLに直交する方向をいう。)外方に延出するサイドフラップ部11を備え、サイドフラップ部11における背側部Bにファスニングテープ12を備える、いわゆる展開型のおむつである。おむつ1Aは、全体視して、図1に示すように、その両側縁が、長手方向(以下「Y方向」という。Y方向:中心線CLに平行な方向をいう。)の中央部において内方に括れた形状を有しており、長手方向(Y方向)の両端部の幅が、長手方向(Y方向)中央部の幅よりも広くなっている。おむつ1Aは、図1に示すように、腹側部Aの外面に、ファスニングテープ12を止着するターゲットテープ13を有している。尚、おむつ1Aは、図1に示すように、平面状に拡げた状態において、本体10と同方向に長い形状を有している。おむつ1Aの本体10は、図1,図2に示すように、液透過性の表面シート2と、液難透過性又は撥水性の裏面シート3と、これらのシート2,3間に介在された液保持性の吸収体4とを有している。
【0013】
第1実施形態のおむつ1Aにおいては、吸収体4は、図1に示すように、長手方向(Y方向)に長い長方形状であり、図3に示すように、吸収体コア41、吸収体コア41を包むコアラップ42を有している。具体的には、図3に示すように、長方形状の吸収体4は、繊維集合体に吸収性ポリマーが均一に分散含有されてなる長方形状の吸収体コア41と、吸収体コア41の肌当接面側の全面及び非肌当接面側の全面を被覆するコアラップ42とを備えている。また、第1実施形態のおむつ1Aにおいては、図3に示すように、吸収体4は、吸収体コア41の肌当接面側の全面を覆うように、サブレイヤーシート43を備えている。
【0014】
第1実施形態のおむつ1Aにおいては、サブレイヤーシート43は、図3に示すように、Y方向に長い長方形状であり、吸収体コア41の肌当接面側に配されたコアラップ42と、吸収体コア41との間に配されている。サブレイヤーシート43は、或る程度の厚みを有する嵩高なシートであることが好ましい。サブレイヤーシート43によって、尿などの排泄物を拡散することができ、吸収体4で排泄物を効率的に吸収することができる。この観点から、サブレイヤーシート43は、その厚みが0.2〜5mmであることが好ましく、0.8〜2mmであることが更に好ましい。
【0015】
おむつ1Aの本体10は、図1,図3に示すように、排泄物と接触することにより芳香を発する第1芳香部5及び第2芳香部6を有している。第1芳香部5及び第2芳香部6は、互いに異なる芳香が付与されている。「互いに異なる芳香」については、後で詳しく説明する。以下、第1芳香部5及び第2芳香部6について、詳述する。
【0016】
第1芳香部5は、図1,図3に示すように、装着者の排尿部に当接される受尿部Dに配されている。ここで、受尿部Dとは、おむつ1Aにおいて、装着者の排尿部に当接される領域であり、おむつ1Aの股下部Cにおける長手方向(Y方向)中央部よりもやや腹側部A寄りに偏倚した位置にある。
【0017】
第1実施形態のおむつ1Aにおいては、第1芳香部5は、図3に示すように、表面シート2と表面シート2側のコアラップ42との間に配されているが、表面シート2側のコアラップ42と吸収体コア41との間に配されていてもよい。第1実施形態のおむつ1Aにおいては、上述したように、吸収体4にはサブレイヤーシート43が配されている為、第1芳香部5を、表面シート2側のコアラップ42と吸収体コア41との間に配する場合には、表面シート2側のコアラップ42とサブレイヤーシート43との間に配することが好ましい。装着者の排尿部と受尿部Dとの位置が、装着中に何らかの原因でズレ、受尿部Dと異なる位置で尿などをした場合でも、サブレイヤーシート43により尿を拡散させ、尿を確実に第1芳香部5に接触させることができるからである。
【0018】
第2芳香部6は、第1芳香部5と異なる芳香が付与されているものであり、図1,図3に示すように、受尿部Dを避けて、吸収体4の長手方向(Y方向)端部4aに配されている。即ち、第2芳香部6と第1芳香部5とは、吸収体4の長手方向(Y方向)に互いに重ならない位置に配されている。第1実施形態のおむつ1Aにおいては、第2芳香部6は、図1,図3に示すように、吸収体4の長手方向(Y方向)両端部4a,4aそれぞれに配されているが、受尿部Dが股下部Cの中央部よりもやや腹側部A寄りに偏倚した位置に配されているため、少なくとも、腹側部A側の端部4aに配されていることが好ましい。
【0019】
第1実施形態のおむつ1Aにおいては、第2芳香部6は、図3に示すように、裏面シート3と裏面シート3側のコアラップ42との間に配されているが、裏面シート3側のコアラップ42と吸収体コア41との間に配されていてもよい。図3に示すように、第1実施形態のおむつ1Aにおいては、第2芳香部6は、吸収体4の長手方向(Y方向)両端部4a,4aそれぞれに配されているため、製造工程の都合に配慮し、一方の第2芳香部6を、裏面シート3と裏面シート3側のコアラップ42との間に配し、他方の第2芳香部6を、裏面シート3側のコアラップ42と吸収体コア41との間に配してもよい。
【0020】
第1芳香部5は、図4に示すように、芳香の発散性を有する揮発性物質を含有する水溶性樹脂の層51と、水溶性樹脂の層51の一面に設けられた、前記揮発性物質を実質的に含有しない水溶性樹脂の層52とを有する芳香発散層である。芳香発散層からなる第1芳香部5は、図1に示すように、X方向に長い長方形状のものであり、吸収体4のX方向の両端間に亘って配されている。第1実施形態のおむつ1Aにおいては、図4に示すように、第1芳香部5は、3層構造をなしている。3層構造のうちの中間層は、芳香の発散性を有する揮発性物質を含有する水溶性樹脂の層51であり、層51の表面シート2対向面には、揮発性物質を実質的に含有しない水溶性樹脂の層52が配され、層51の吸収体4対向面にも、揮発性物質を実質的に含有しない水溶性樹脂の層52が配されている。このように、3層構造の第1芳香部5は、すべて水溶性樹脂の層から構成されているので、おむつ1Aに尿などの排泄物が排泄され、水溶性樹脂が排泄物と接触することにより溶解し、水溶性樹脂の層51に配された芳香の発散性を有する揮発性物質が揮散し、おむつ1の外部へと放出されて芳香する。以上のとおりの構成を有する芳香発散層としては、例えば特開2002−369838号公報に記載のもの等を用いることができる。第1実施形態のおむつ1Aにおいては、第2芳香部6も、第1芳香部5と同様に、3層構造の芳香発散層であり、図1に示すように、X方向に長い長方形状のものであり、吸収体4のX方向の両端間に亘って配されている。
【0021】
第1芳香部5と第2芳香部6とは、互いに異なる芳香が付与されている。ここで「互いに異なる芳香」とは、フルーティ調、シトラス調、ウッディムスキー調、グリーン調等の香料の調子の異なる揮発性物質を付与することや、香料の調子が同じであったとしても、揮発性物質の含有量を異ならせて付与することを意味する。取り替え時期を判断させる観点から、第2芳香部6の芳香を強い傾向の調子とし、第1芳香部5の芳香を弱い傾向の調子とすることが好ましく、香料の調子が同じである場合には、第2芳香部6の芳香の揮発性物質の含有量を多くし、第1芳香部5の芳香の揮発性物質の含有量を、第2芳香部6の芳香の揮発性物質の含有量より少なくすることが好ましい。具体的には、第2芳香部6の芳香に、フルーティ調の芳香を用い、第1芳香部5の芳香に、シトラス調の芳香を用いることが好ましく、例えば、互いにシトラス調の芳香を用い用いた場合には、第2芳香部6の芳香の揮発性物質を、芳香発散層の単位面積当たり、0.2〜3g/m2含有させ、第1芳香部5の芳香の揮発性物質を、芳香発散層の単位面積当たり、0.02〜1g/m2含有させることが好ましい。
【0022】
おむつ1Aの本体10においては、表面シート2及び裏面シート3それぞれが、図1,図2に示すように、吸収体4の肌当接面側の全面及び非肌当接面側の全面を覆っており、吸収体4の周縁から延出している。また、表面シート2は、図2に示すように、幅方向(X方向)の長さが裏面シート3よりも短くなっている。
【0023】
おむつ1Aの本体10には、図1,図2に示すように、長手方向(Y方向)の側部10bに、表面シート2を介してサイドシート14が配されている。サイドシート14は、図1に示すように、本体10(表面シート2)の肌当接面側であって、側部10bの長手方向(Y方向)の全域に亘って覆っている。サイドシート14は、図2に示すように、本体10(表面シート2)の幅方向(X方向)外方の端部において、表面シート2と接合され、固定部15を形成している。固定部15は、長手方向(Y方向)に直線状に延びて形成されている。サイドシート14の幅方向(X方向)内方の端部は、図2に示すように、自由端となっており、図1に示すように、股下部Cにおける自由端近傍には立体ギャザー形成用の弾性部材16が長手方向(Y方向)に伸長状態で配設固定されており、着用時には、その弾性部材16の収縮力により、自由端から所定幅の部分が表面シート2から離間して立体ギャザーを形成する。
【0024】
おむつ1Aには、図1,図2に示すように、固定部15から幅方向(X方向)外方に延出したサイドシート14と裏面シート3とが接合され、サイドフラップ部11が形成されている。サイドフラップ部11は、図1,図2に示すように、腹側部A及び背側部Bにおいて、本体10の側縁10bよりも幅方向(X方向)外方に延出している部分であり、サイドフラップ部11の肌当接面側及び非肌当接面側は、それぞれ、サイドシート14及び裏面シート3から形成されている。
【0025】
おむつ1Aには、図1に示すように、股下部Cにおいて、固定部15から幅方向(X方向)外方に、幅方向(X方向)外方に延出したサイドシート14と裏面シート3とが接合され、レッグフラップ部17が形成されている。レッグフラップ部17には、図1に示すように、股下部Cにおいて、レッグギャザー形成用の弾性部材18が長手方向(Y方向)に伸長状態で、長手方向(Y方向)に配設固定されており、着用時には、その弾性部材18の収縮力により、レッグギャザーが形成される。
【0026】
第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3、サイドシート14としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、裏面シート3としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。サイドシート14としては、伸縮性のフィルム、不織布、織物またはそれらの積層シート等を用いることができる。
【0027】
サブレイヤーシート43としては、親水性不織布や親水性の短繊維集合体からなるものが挙げられる。不織布としては、吸収性の観点から、嵩高なもの、具体的には、エアスルー不織布やエアレイド不織布を用いることが好ましい。親水性の短繊維集合体としては、密度の高いパルプシートを用いることが好ましい。
【0028】
立体ギャザー形成用の弾性部材16、レッグギャザー形成用の弾性部材17としては、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる糸状の伸縮性材料を用いることができる。
【0029】
立体ギャザー形成用の弾性部材16、レッグギャザー形成用の弾性部材17の固定に使用する接着剤としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。表面シート2とサイドシート14との固定部15は、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる接着剤、熱融着等により表面シート2とサイドシート14とを接合することにより形成される。
【0030】
ファスニングテープ12としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、「マジックテープ(登録商標)」(クラレ社製)、「クイックロン(登録商標)」(YKK社製)、「マジクロス(登録商標)」(カネボウベルタッチ社製)等におけるオス部材等を用いることができる。ターゲットテープ13としては、フック材の係合突起(不図示)に係合可能な表面構造を有するループ材からなり、このようなループ材としては、フック材を押しつけることにより、フック材を止着可能なものを特に制限なく用いることができる。例えば、例えば上述した各種公知の機械的面ファスナーにおけるメス部材を用いることができる。
【0031】
上述した本発明の第1施形態の使い捨ておむつ1Aを使用した際の作用効果について説明する。
第1実施形態のおむつ1Aは、図1,図3に示すように、第1芳香部5が、受尿部Dに配され、第1芳香部5と異なる芳香が付与された第2芳香部6が、受尿部Dを避けて、吸収体4の長手方向(Y方向)端部4aに配されている。このように、第2芳香部6と第1芳香部5とは、吸収体4の長手方向(Y方向)に互いに重ならない位置に配されている。その為、装着者の排尿部に当接する受尿部Dに、尿が排泄された場合には、先ず、受尿部Dに配された第1芳香部5に尿が接触し、第1芳香部5の芳香が発せられる。ここで、尿が少量の場合には、受尿部Dに位置する吸収体4で尿が保持される為、第1芳香部5と重ならない位置に配されている第2芳香部6の芳香が発せられることはない。次に、吸収体4で保持される尿の量が多量となり、吸収体4の長手方向(Y方向)端部4aにまで尿が達すると、尿が第2芳香部6に接触し、第2芳香部6の芳香が発せられる。このように、第2芳香部6の芳香が発せられたということは、吸収体4全体の領域で尿を保持しなければならないほど吸収した状態であり、おむつを交換する時期でもある。従って、第1芳香部5と第2芳香部6とを、上述したように配することにより、健常者のみならず、視覚障害者でも、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により判断することができる。
【0032】
また、第1実施形態のおむつ1Aにおいては、図3に示すように、第1芳香部5は、表面シート2と表面シート2側のコアラップ42との間に配されており、第2芳香部6は、裏面シート3と裏面シート3側のコアラップ42との間に配されている。即ち、第1芳香部5が吸収体4の上方に配され、第2芳香部6が吸収体4の下方に配されている。その為、吸収体4全体の領域でも尿を保持できないほど吸収し、液難透過性の裏面シート3にまで達した尿のみが第2芳香部6に接触し、第2芳香部6の芳香が発せられる。このように、第2芳香部6の芳香が発せられたということは、吸収体4全体の領域で尿を保持できないほど吸収した状態である。従って、第1芳香部5と第2芳香部6とを、上述したように配することにより、健常者のみならず、視覚障害者でも、おむつを交換する時期か否かを、吸収した排泄物の量により更に判断することができる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態の使い捨ておむつについて、図5に基づいて説明する。
第2実施形態の使い捨ておむつ1B(以下、「おむつ1B」ともいう)については、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aと同様であり、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの説明が適宜適用される。
【0034】
第2実施形態のおむつ1Bにおいては、図5に示すように、吸収体4にサブレイヤーシート43が配されておらず、第1芳香部5が芳香発散層ではない点が、おむつ1Aと異なる。以下、具体的に説明する。
【0035】
第2実施形態のおむつ1Bにおいては、図5に示すように、第1芳香部5が、受尿部Dにおける吸収体4の内部に混在している。具体的には、第1芳香部5は、芳香の成分を含み、排泄物と接触することにより該芳香の成分が流出するマイクロカプセルである。マイクロカプセルである第1芳香部5が、図5に示すように、受尿部Dに位置する吸収体4の領域において、吸収性ポリマーと共に、繊維集合体に均一に分散されることにより、吸収体4の内部に混在している。マイクロカプセルとしては、例えば特開昭59−106501号公報に記載のものや、特開2007−268221号公報に記載のもの等を用いることができる。
【0036】
第2実施形態のおむつ1Bにおいては、第2芳香部6は、上述したマイクロカプセルを繊維シートで挟んでなる芳香シートである。繊維シートとしては、親水性不織布や親水性の短繊維集合体からなるシートが挙げられ、二枚の繊維シート間に、第1芳香部5と異なる芳香成分をゼラチン等により皮膜して形成されたマイクロカプセルを配することにより、芳香シートが形成される。
【0037】
第2実施形態の使い捨ておむつ1Bの形成材料について説明する。第2実施形態のおむつ1Bについては、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの形成材料と同様である。
【0038】
上述した本発明の第2実施形態の使い捨ておむつ1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態のおむつ1Bの効果については、第1実施形態のおむつ1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のおむつ1Aの効果と同様であり、第1実施形態の展開型の使い捨ておむつ1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0039】
第2実施形態のおむつ1Bにおいては、疎水性である揮発性物質がシート状に存在する第1実施形態と異なり、尿が吸収体4に到達することが阻害されない。
【0040】
次に、本発明の第3実施形態の使い捨ておむつについて、図6に基づいて説明する。
第3実施形態の使い捨ておむつ1C(以下、「おむつ1C」ともいう)については、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aと同様であり、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの説明が適宜適用される。
【0041】
第3実施形態のおむつ1Cにおいては、図6に示すように、吸収体4にサブレイヤーシート43が配されておらず、第1芳香部5及び第2芳香部6以外に、装着者の排便部に当接される受便部Eに第3芳香部7が配されている点が、おむつ1Aと異なる。以下、具体的に説明する。
【0042】
第3実施形態のおむつ1Cにおいては、図6に示すように、第3芳香部7が、装着者の排便部に当接される受便部Eに配されている。ここで、受便部Eとは、おむつ1Cにおいて、装着者の排便部に当接される領域であり、おむつ1Cの股下部Cにおける長手方向(Y方向)中央部よりもやや背側部B寄りに偏倚した位置にある。第1芳香部5、第2芳香部6及び第3芳香部それぞれは、吸収体4の長手方向(Y方向)に互いに重ならない位置に配されている。
【0043】
第3実施形態のおむつ1Cにおいては、第3芳香部7は、図6に示すように、表面シート2と表面シート2側のコアラップ42との間に配されているが、表面シート2側のコアラップ42と吸収体コア41との間に配されていてもよい。第1実施形態のおむつ1Aのように、吸収体4にサブレイヤーシート43が配されている場合には、装着者の排便部と受便部Eとの位置が、装着中に何らかの原因でズレ、受便部Eと異なる位置で便などをした場合でも、サブレイヤーシート43により軟便や水様便等の水分を拡散させ、その水分を確実に第3芳香部7に接触させることができる観点から、第3芳香部7を、表面シート2側のコアラップ42とサブレイヤーシート43との間に配することが好ましい。第3芳香部7は、第1実施形態のおむつ1Aの第1芳香部5と同様に、3層構造の芳香発散層であり、図1に示すように、X方向に長い長方形状のものであり、吸収体4のX方向の両端間に亘って配されている。
【0044】
第3芳香部7は、第1芳香部5及び第2芳香部6と異なる芳香が付与されている。第1芳香部5、第2芳香部6及び第3芳香部7それぞれに、互いに異なる芳香が付与されているとは、第1実施形態のおむつ1Aと同様に、フルーティ調、シトラス調、ウッディムスキー調、グリーン調等の香料の調子の異なる揮発性物質をそれぞれに付与することや、香料の調子が同じであったとしても、揮発性物質の含有量をそれぞれに異ならせて付与することを意味する。取り替え時期を判断させる観点から、第2芳香部6の芳香を強い傾向の調子とし、第1芳香部5及び第3芳香部7の芳香を弱い傾向の調子とすることが好ましく、香料の調子が同じである場合には、第2芳香部6の芳香の揮発性物質の含有量を多くし、第1芳香部5及び第3芳香部7の芳香の揮発性物質の含有量を、第2芳香部6の芳香の揮発性物質の含有量より少なくすることが好ましい。具体的には、第2芳香部6の芳香に、フルーティ調の芳香を用い、第1芳香部5の芳香に、シトラス調の芳香を用い、第3芳香部7の芳香に、グリーン調の芳香を用いることが好ましく、例えば、それぞれにシトラス調の芳香を用い用いた場合には、第2芳香部6の芳香の揮発性物質を、芳香発散層の単位面積当たり、0.2〜3g/m2含有させ、第1芳香部5の芳香の揮発性物質を、芳香発散層の単位面積当たり、0.02〜1g/m2含有させ、第3芳香部7の芳香の揮発性物質を、芳香発散層の単位面積当たり、0.02〜1g/m2含有させることが好ましい。
【0045】
第3実施形態の使い捨ておむつ1Cの形成材料について説明する。第3実施形態のおむつ1Cについては、第1実施形態の使い捨ておむつ1Aの形成材料と同様である。
【0046】
上述した本発明の第3実施形態の使い捨ておむつ1Cを使用した際の作用効果について説明する。
第3実施形態のおむつ1Cの効果については、第1実施形態のおむつ1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のおむつ1Aの効果と同様であり、第1実施形態の展開型の使い捨ておむつ1Aの効果の説明が適宜適用される。
【0047】
第3実施形態のおむつ1Cにおいては、第1芳香部5及び第2芳香部6と異なる芳香の付与された第3芳香部が、図5に示すように、受便部Eに配されているので、軟便や水様便等の下痢気味の便の場合に、第3芳香部7の芳香が発せられる。従って、第1芳香部5、第2芳香部6及び第3芳香部を、上述したように配することにより、健常者のみならず、視覚障害者でも、便の状態による体調の具合を判断することができる。
【0048】
本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつは、上述の第1,第2,第3実施形態の使い捨ておむつに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1,第2,第3実施形態の使い捨ておむつにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0049】
例えば、上述の第1,第2,第3実施形態の使い捨ておむつは、図1に示すように、展開型の使い捨ておむつであるが、パンツ型の使い捨ておむつでもよい。
【0050】
また、上述の第1,第2,第3実施形態の使い捨ておむつにおいては、第1芳香部5、第2芳香部6及び第3芳香部7は、3層構造の芳香発散層であるが、3層構造でなくてもよく、第1芳香部5、第2芳香部6及び第3芳香部7は、図1に示すように、吸収体4のX方向の両端間に亘って配されているが、X方向の中央領域にのみ配されていてもよい。
【0051】
また、吸収性物品は、幼児又は成人用の使い捨ておむつであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
4a 吸収体の長手方向(Y方向)の端部
41 吸収体コア
42 コアラップ
43 サブレイヤーシート
5 第1芳香部
6 第2芳香部
7 第3芳香部
10 本体
10b 本体の長手方向(Y方向)の側部
11 サイドフラップ
12 ファスニングテープ
13 ターゲットテープ
14 サイドシート
15 固定部
16,18 弾性部材
17 レッグフラップ部
A 腹側部,B 背側部,C 股下部,D 受尿部,E 受便部
CL おむつの長手方向に延びる中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液難透過性の裏面シートと、これらのシート間に配された長方形状の吸収体とを備えた吸収性物品であって、
排泄物と接触することにより芳香を発する第1芳香部及び第2芳香部を有し、該第1芳香部及び該第2芳香部は、互いに異なる芳香が付与されており、
前記第1芳香部は装着者の排尿部に当接される受尿部に配され、前記第2芳香部は、前記受尿部を避けて、前記吸収体の長手方向端部に配されている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、吸収体コアと、該吸収体コアを包むコアラップとを有しており、
前記第1芳香部は、前記表面シートと該表面シート側の前記コアラップとの間、又は前記表面シート側の前記コアラップと前記吸収体コアとの間に配されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1芳香部は、前記受尿部における前記吸収体の内部に混在している請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、吸収体コアと、該吸収体コアを包むコアラップとを有しており、
前記第2芳香部は、前記裏面シートと該裏面シート側の前記コアラップとの間、又は前記裏面シート側の前記コアラップと前記吸収体コアとの間に配されている請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1芳香部及び/又は前記第2芳香部は、芳香の発散性を有する揮発性物質を含有する水溶性樹脂の層と、該水溶性樹脂の層の一面に設けられた、前記揮発性物質を実質的に含有しない水溶性樹脂の層とを有する芳香発散層である請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1芳香部及び/又は前記第2芳香部は、芳香の成分を含み、排泄物と接触することにより該芳香の成分が流出するマイクロカプセルである請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第1芳香部及び/又は前記第2芳香部は、前記マイクロカプセルを繊維シートで挟んでなる芳香シートである請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
排泄物と接触することにより芳香を発する第3芳香部を有し、該第3芳香部は、前記第1芳香部及び前記第2芳香部と異なる芳香が付与されており、
前記第3芳香部は装着者の排便部に当接される受便部に配されている請求項1〜7の何れかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103923(P2011−103923A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259078(P2009−259078)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】