説明

吸収性物品

【課題】長手方向とこれに直交する幅方向とを有する吸収体を適用した吸収性物品において、着用者が排泄時に感じるヌレ感を低減させ、横漏れを防止しつつ前記吸収体の長手方向への液拡散を促進させることで吸収体全面を効率よく液体の吸収に活用しうる吸収性物品を提供する。
【手段】長手方向とこれに直交する幅方向とを有する吸収体3を具備する吸収性物品10であって、トップシート1と前記吸収体3との間に液透過性の中間シート4が配置され、該中間シート4は、前記吸収体3の長手方向に延び前記トップシート1側に開放した多条の溝部41をなすよう立体的に賦型され、かつその肌当接面側の全域が前記トップシート1に覆われており、前記中間シート4には、前記吸収体3の長手方向に沿った低液透過領域とこれより液透過性の高い高液透過領域とがある吸収性物品10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンや紙おむつ、失禁用パッドといった吸収性物品においては、長手方向とそれよりも短く長手方向に直交する幅方向とを有する吸収体が適用されることが多く、その寸法との関係から、どうしても体液が製品長手方向に十分拡散する前に幅方向の端縁にまで広がりやすくなる。そのため、体液の排泄が多いときなどには吸収性物品の幅方向端部からのモレを生じさせることがある。特許文献1には、蛇腹状に折り畳んだ疎水性繊維からなるクッション層を、その折り目が長手方向に沿うようにして吸収体の上に配置した生理用ナプキンが開示されている。この生理用ナプキンには排泄ポイントに当たる位置の表面シートが切り抜かれた開口部が設けられており、上記のクッション層が直接排泄液を受ける状態とされている。このように製品長手方向に溝状構造を持つ疎水性繊維からなるクッション層が直接排泄液を受け止めることで、体液を製品幅方向に広げずに長手方向に効果的に拡散させ、横漏れを抑え十分な吸収性能を実現するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−39718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている生理用ナプキンでは、排泄ポイントにトップシートが存在せず、クッション層は疎水性繊維から構成されており、一方、液の引き込み性や逆戻り性については特に工夫がなされておらず、体液が着用者の肌に直接触れ、ヌレ感を感じさせてしまうおそれがある。
本発明は、長手方向とこれに直交する幅方向とを有する吸収体を適用した吸収性物品において、着用者が排泄時に感じるヌレ感を低減させ、かつ横漏れを防止しつつ前記吸収体の長手方向への液拡散を促進させることで吸収体全域を効率よく液体の吸収に活用しうる吸収性物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題に対し発明者らは、肌当接面を形成するトップシート、非肌当接面を形成するバックシート、及び該両シート間に介在された長手方向とこれに直交する幅方向とを有する吸収体を具備する吸収性物品について、前記トップシートと前記吸収体との間に液透過性の中間シートが配置され、該中間シートは、前記吸収体の長手方向に延び前記トップシート側に開放した多条の溝部をなすよう立体的に賦型され、かつその肌当接面側の全域が前記トップシートに覆われており、前記中間シートには、前記吸収体の長手方向に沿った低液透過領域とこれより液透過性の高い高液透過領域とがある構成を導入することにより解決しうることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吸収性物品は、長手方向とこれに直交する幅方向とを有する吸収体を適用した吸収性物品において、着用者が排泄時に感じるヌレ感を低減させ、横漏れを防止しつつ前記吸収体の長手方向への液拡散を促進させることで吸収体全域を効率よく液体の吸収に活用することができるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の吸収性物品の実施形態としての失禁パッドを模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示した軽失禁パッドの平面図であり表面シートを剥離した状態で示している。
【図3】図1に示した軽失禁パッドのIII-III線断面の拡大断面図である。
【図4】図3の断面の一部をさらに拡大した断面図である(但し、液の図示は省略している。)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の吸収性物品の好ましい実施形態を、失禁パッドを例にとり、図面を参照して説明する。
図1に示す実施形態の失禁パッド10は、不織布や有孔フィルム等からなる液透過性のトップシート1と液不透過性で且つ蒸気透過性のバックシート2、及び両シート間に液保持性の吸収体3を介在させたものである。ここで、トップシート1とバックシート2とは周縁シール部でその外周が強固に接合され、内部の吸収体等を封止する構造とされている。本実施形態の失禁パッドにおいては、さらにトップシート1と吸収体3との間に、断面において波状ないしコルゲート状に立体賦型された液透過性の中間シート4が配置されている。中間シート4は、製品長手方向(方向X)に沿う複数条の線状の溝部41をなす構造に立体賦型されており、隣り合った2つの線状溝構造の間には中間シートの頂部(稜線部)6をなすようにされている(図1、3、4参照)。このように複数条の溝41をなす構造によって、液体の排泄aを受けたとき、製品長手方向(方向X)への液拡散aを促進し、一方で幅方向への拡散aは適度に抑えその端部からのモレを防止することを可能にしている(図1、図2参照)。そして、本実施形態の中間シート4は、その肌当接面側がトップシート1で全面的に覆われているため、長手方向への液拡散によるヌレ感を着用者に与えにくい。また、該中間シート4は、柔軟な素材で構成されかつ表面が凸凹形状であることから線で柔らかく肌に対応し、そのクッション性により装着感がよい。
【0009】
なお、本明細書において「肌当接面」とは着用者の肌と接触する面、「非肌当接面」とは着用者肌と接触しない面を意味し、特定部材において「肌当接面側」とは着用者の肌に近い方の部位・面を、「非肌当接面側」とは着用者の肌から遠い方の部位・面を指す、相対的な位置関係を意味する用語である。また、長手方向は部材ないし製品の平面視において長さのある方向であり、典型的には長方形の長辺に沿う方向をいう。幅方向は前記長手方向に直交しこれより短い部材幅の方向をいう。本実施形態においては吸収体の長手方向と製品(失禁パッド)の長手方向とが一致しているが、本発明においては吸収体の長手方向と製品長手方向とが一致しない形態の吸収性物品であってもよい。
【0010】
中間シート4に設けられた溝部41は、長手方向に沿った一部領域(以下、低透過領域[L]と呼ぶ)の液透過性が、他の周囲の領域(以下、高液透過領域[H]と呼ぶ)と比べて低くなされている。このようにすることによって、低透過領域[L]に沿って液が拡散されやすくなっている。ここで「液透過性が他の領域と比べて低くなされている」とは、典型的には、全体は液透過性であるが、(i)低透過領域(一部領域)[L]の液透過速度がその高液透過領域(周囲領域)[H]と比べて遅い場合、(ii)高液透過領域(周囲領域)[H]は液透過性であるが、低液透過領域(一部領域)[L]は撥水性、液難透過性又は液不透過性である場合を意味する。
【0011】
長手方向に液を効果的に拡散させる観点から、低透過領域[L]は底部5及び/又はその近傍の谷部4cに設けられていることが好ましい。また、これらに加えて、又は単独で、頂部6及び/又はその近傍の山部4aに設けられていてもよい。本実施形態においては、低透過領域[L]が底部5と頂部6の双方に設けられている(図4の梨地模様部分参照)。底部5に設けられた低液透過領域[L]によって、トップシート1を透過してきた排泄液が溝部41に適度の溜まるようにして(液11参照)、この部分に沿って製品長手方向(X方向)に拡散しやすくなり(図3参照)、一層長手方向への液の移行拡散性が良化する。一方、頂部6に設けられた低透過領域[L]は、トップシートを透過した排泄液を素早く底部5の方向へ導くのに有用である。したがって、排泄液を製品長手方向Xに沿って拡散性を高めるという観点からは、低透過領域[L]を底部5に設けていれば十分であるが、頂部6に設けることによってその効果がより発揮されやすく好ましい。なお、図3では溝部41及び溝空間部42に溜まった液(液11,12)を模式的に示しているが、説明の便宜を考慮してモデル的に示したものであり、この図示及び説明により本発明が限定して解釈されるものではない。
【0012】
また、溝部41における中間シートの壁部4bにも低透過領域[L]を設けることもできる。この場合には、トップシート1を透過した排泄液が溝部41における壁部4bから通過しにくくなることによって、排泄液が溝部41に沿って製品長手方向Xに拡散されやすくなる。この効果は、中間シートの壁部4bが底部5に対して垂直に起立する構造よりも、図3に示すように、底部5に対して鈍角で斜め上方に起立した構造の場合に発揮されやすい。この角度θの範囲は特に限定されるものではないが、効果的な液体の拡散性を考慮し45〜85°に設定することが好ましい。
【0013】
また、壁部4bに設けられた低透過領域[L]は、中間シートと吸収体の間の溝空間部42に充填された液12がトップシート1側へ液戻りすることを抑制する観点から、壁部の高さd(図3)の底部5側からみて10〜70%の範囲(図4に示した形態との関係では一部山部4aないし谷部4cを含んでもよい。)に設けられていることが好ましい。このとき壁部4b全域ではなく、その一部の領域の液透過性を低めることで、体液で溝部41が充填される前に、吸収体に吸収される、もしくは、隣り合う溝部41に体液が蓄積され、トップシート側への液流れを効果的に抑止することができ好ましい。底部5側に低透過領域[L]を設ける場合には、壁部4bには低透過領域[L]を設けないか、せいぜい壁部高さdの底部5側から10%以下の範囲(一部谷部4cに差し掛かってもよい。)に設けることが好ましい。なお、図4では底部5及び頂部6の低液透過領域[L]を梨地模様により示したが、壁部4bの低液透過領域[L]は図示していない。
【0014】
<液透過性の測定法>
本発明において液透過性は、特に断らない限り以下の手順により測定した値を言う。
0.9質量% 生理食塩水0.5 mLを測定サンプルに滴下した際の、液滴が消滅するまでの時間を各10箇所測定する。その平均値を液透過性の指標とする。したがってこの値が小さいほど、液透過性が良好であること(透過速度が速いこと)を意味する。このとき、液透過性を測定する領域を底面として、パルプ/ポリマーの坪量が、それぞれ(150g/m)/(150g/m)から構成する吸収体上に設置し、37g/cmの荷重条件下、5分間静置させ、上記測定サンプルとする。
【0015】
本実施形態に好適に用いられる中間シート4は、低透過領域が、上記測定方法で、滴下後、液滴が消滅するまでの平均時間が5秒以上であり、周囲領域が滴下後、液滴が消滅するまでの平均時間が5秒未満であることが好ましい。中間シート4における低透過領域[L]を、谷部4c、山部4a、壁部4bのうち、複数個所に設ける場合には、その液透過性を各部位で異ならせてもよい。たとえば、液透過性を谷部4c(底部5)、山部4a(頂部6)、壁部4bの順に高くすることで、トップシート1を透過した排泄液が底部で透過されにくく、製品長手方向Xに沿って拡散されるが、頂部からの透過がしやすくなるので、排泄液が多量の場合には都合が良い。一方で、壁部4bを介して壁内の溝空間部42に透過された排泄液12は、頂部を通じて着用者側にもれ難い構造となっているから、着用者に濡れ感を与えにくい。
【0016】
中間シート4の低液透過領域(一部領域)[L]の液透過性を低める手段として、溝状の熱エンボスにより、該中間シートを吸収体に接合させる方法、疎水性の接着剤により、該中間シートを吸収体に接合させる方法、疎水性の剤を塗布する方法などが挙げられる。疎水性の剤としては、フッ素系化合物、パラフィン系のワックス類、長鎖(例えば、アルキル鎖長18以上)アルキル硫酸金属塩等の界面活性剤を挙げることができる。また、相対的に一部領域の液透過性を低くする方法としては、中間シート4の構成繊維を疎水性又は撥水性のものとし、一部領域以外の部分に親水化剤を付与する方法が挙げられる。疎水性又は撥水性の繊維としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維が挙げられる。親水化剤としては、親水性の界面活性剤が挙げられ、具体的には、HLB7以上のノニオン界面活性剤、平均アルキル鎖長16以下のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩などのアニオン界面活性剤等が好適に使用できる。
【0017】
中間シート4は製品長手方向端への液拡散を抑制しモレ防止性能を向上させる観点から、平面視において吸収体3より小さくその中央に配置されていることが好ましい。本実施形態に即して換言すると、その配置領域は、製品長手方向(X方向)において、中間シート4の前後端は吸収体3の製品長手方向前後端よりも内側の領域で、幅方向中央部にあることが好ましい。
【0018】
中間シート4は、コストや、トップシート側からの液流れを効果的に防止させる観点から、図3、4に断面を示したような1枚のシートで、壁内の溝空間部42が中空状構造となるように構成されることが好ましい。この変形例として溝空間部42が繊維で充填されている形態を挙げることができるが、図示したもののように1枚のシートにより構成され中空構造を有している方が、一度に大量の体液が排泄された場合であっても、体液が溝部41(液体11)及び溝空間部42(液体12)に一旦保持されるので、トップシート側への液戻りや液漏れが一層効果的に防止される。
【0019】
壁部4bは、その高液透過領域(周囲領域)の中でもさらに高い超高液透過領域を含むことが好ましい。すなわち、中間シートにおいて、低液透過領域(一部領域)[L]、高液透過領域(周囲領域)[H]、超高液透過領域[S]の3つの領域が存在する構成としてもよい。超高液透過領域[S]は、中間シートの高さdの頂部6側から又は底部5側から10〜30%(谷部4bに存在していてもよい。)まで至る領域であることが好ましい。このように超高液透過領域[S]があることにより、体液で溝部41が充満する前に、溝空間部42に移行しさらに吸収体3に吸収保持され、より素早く液体を引き込み、効果的にトップシート側への液戻りを抑止することができる。中間シートに超高液透過領域[S]を設ける方法として、中間シートに孔を設ける方法、親水性の界面活性剤を塗布する方法等が挙げられる。親水性の界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系の界面活性剤の様々な分子量のものを単独もしくは組み合わせて用いることが好ましい。
【0020】
中間シート4と表面シート1の液透過性の関係は特に限定されないが、上記立体賦型された中間シート4の液体拡散作用及び逆戻り防止作用を一層効果的に引き出す観点から、中間シート4の高液透過領域[H]の液透過性より表面シート1の液透過性が低いことが好ましい。
【0021】
各シート及びその各部位の液透過性の程度は特に限定されず、上記液体拡散作用及び逆戻り防止作用を考慮して適宜調節することができる。一般的な失禁パッドにおける部材や使用条件、排泄液の量等を考慮して一例を示すと、前記超高液透過領域[S]の液透過性Ts、高液透過領域[H]の液透過性Th、低液透過領域[L]の液透過性Tl、トップシートの液透過性Ttの序列は、Ts>Th>Tt>Tlであることが好ましい。
【0022】
中間シート4は、吸収体3側への液引き込み力を向上させる観点から、吸収体3と接合されていることが好ましい。接合法としては、熱エンボスや接着剤で接合する方法が挙げられる。接着剤は、疎水性であることが好ましく、例えば、SBS系、SEBS系、オレフィン系ホットメルト等を用いることができる。中間シート4は、コスト及び必要とする引っ張り強度の観点から、その坪量が10〜100g/mであることが好ましく、15〜50g/mであることがより好ましい。中間シート4は、体圧に対する潰れ強度及び液漏れを防止させる観点から、底部から頂部の高さdが、1〜10mmであることが好ましく、着用時の装着感の観点から3〜8mmであることが更に好ましい。さらに、中間シート4は、体圧によって凸凹形状が過度に変形することを防止させる観点から、圧縮復元性を有していることが好ましい。具体的には、中間シート4は、その圧縮回復率が10%以上、特に30%以上であることが好ましい。所望の圧縮回復性を備える中間シート4としては、多孔製ポリウレタンをシートとしたり、嵩高の繊維製の不織布を使用する方法等が挙げられる。
【0023】
<圧縮回復率>
本明細書において圧縮回復率とは、特に断らない限り以下の手順で測定した値をいう。
ストロークスピードを50回/分として、シートに50gf/cmの荷重をかけて圧縮したときの圧縮仕事量Wc(gf・cm/cm)及び圧縮回復仕事量Wc’をもとに下記式から算出する。例えばカートテック(株)製のKES−TB3(商品名)を用いて測定することができる。
圧縮回復率(%)= (Wc’/Wc)×100・・・式1
【0024】
中間シートの立体賦型の形態は複数条の溝部をなすものであれば特に限定されず、本実施形態のように一枚のシートを折り曲げ加工したものであっても、厚みのあるシート状物を部分的に圧縮加工したり、溝部の部分を切除する加工を施したりしたものであってもよい。立体賦型された中間シートの厚みdは特に限定されないが、一般的な失禁パッドの寸法を考慮すると、1〜10mmが好ましい。1つの溝部の幅dとの関係でいうと、特に限定されるものではないが、dとdとの比(d/d)が0.5〜2であることが好ましい。吸収体の厚みdとの関係でいうと、これも特に限定されるものではないが、両者の比(d/d)が0.1〜7であることが好ましい。
中間シートの配置位置は上述のように吸収体に対して平面視で中央にあることが好ましい。その寸法の関係は特に限定されるものではないが、具体的に吸収体の長さsに対して中間シートの長さs(図2参照)が30〜90%であることが好ましく、50〜70%であることがより好ましい。吸収体の幅rに対して中間シートの幅rが30〜90%であることが好ましく、50〜70%であることがより好ましい。
【0025】
さらに、上述した実施形態においては、低液透過領域[L]を底部5及び頂部6の長手方向全体に設ける場合について説明したが、本発明ではこれらの実施形態に限られるものではなく、例えば長手方向における排泄領域にのみ設けてあってもよい。また、低液透過領域[L]の形状としては、直線状に設けるものの他、長手方向に間欠的に設けるものであったり、らせん状、ジグザグ形状に設けるものであったりしてもよい。
【0026】
以下に、上記実施形態の軽失禁パッドに好適に採用される材料について説明する。
中間シート4を構成する素材は、溝状構造の賦形が可能で、液透過性を一部領域に付与できるものであれば、特に制限はなく、例えば紙や不織布、フィルム、発泡体等を用いることができる。不織布等の繊維集合体やフィルムの場合は、スチレン系、ウレタン系、オレフィン系、エステル系、メタロセン触媒超低密度ポリエチレン等の熱可塑性エラストマー等から成されていると弾力性を有するシートとなるために好ましい。また、発泡体の場合は、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン等など弾力性のあるシートが好ましい。このうち、エステル系エラストマー及びメタロセン触媒超低密度ポリエチレンの繊維集合体、フィルムまたは、発泡ウレタンのシートが液透過性及び弾力性の観点から特に好ましい。
【0027】
トップシート1としては、排泄された体液を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と肌触りのよさの観点とから親水性のサーマルボンド不織布が好ましく、特にエアスルー不織布が好ましい。トップシート1は親水化処理された熱可塑性樹脂繊維であり、かつ、該繊維が2次クリンプ又は3次クリンプのような立体捲縮がなされた繊維であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、及びこれらの複合繊維を作成し、所定の長さにカットしてステープルを形成する前の段階で、各種親水化剤を塗工する。親水化剤としては、αオレフィンスルホン酸塩に代表される各種アルキルスルホン酸塩、アクリル酸塩、アクリル酸塩/アクリルアミド共重合体、エステルアミド、エステルアミドの塩、ポリエチレングリコール及びその誘導物、水溶性ポリエステル樹脂、各種シリコーン誘導物、各種糖類誘導物、及びこれらの混合物など、当業者公知の親水化剤による親水化処理を用いることができる。
【0028】
バックシート2は、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布を貼り合わせたもの、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100cmhrの範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5にあることが最も好ましい。また、透湿性のフィルムを使用する場合、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m、より好ましくは25〜60g/mである。
【0029】
吸収体3はパルプ繊維を主体とし、パルプ繊維中には高吸収性ポリマーの粒子が均一に混合、分散されている。吸収体3は、失禁パッドの長手方向と同方向に縦長に形成されており、該吸収体3の長手方向の両端は、失禁パッドの長手方向両端の位置よりも若干内側に位置している。吸収体3をトップシート1から見た平面視形状は、長手方向の両端縁が円弧状に形成された略矩形状である。トップシート1及び裏面シート2は吸収体3の長手方向の両端から延出しており、その延出部分において互いに接合されている。トップシート1の両側縁部は、該吸収体3の非肌当接面側において裏面シート2に接合されている。
【0030】
上記実施形態においては失禁パッドを例に本発明の構成について説明したが、これに限られず、本発明はその他の吸収性物品、例えばパンティライナ、生理用ナプキン、成人用の吸収パッド、成人用ないし乳幼児用の使い捨ておむつ等に好適に適用することができ、上述した優れた作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0031】
1.トップシート
2.バックシート
3.吸収体
4.中間シート
41.溝部
42.溝空間部
4a.山部
4b.壁部
4c.谷部
5.底部
6.頂部
9.周縁シール部
10.失禁パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面を形成するトップシート、非肌当接面を形成するバックシート、及び該両シート間に介在された長手方向とこれに直交する幅方向とを有する吸収体を具備する吸収性物品であって、
前記トップシートと前記吸収体との間に液透過性の中間シートが配置され、該中間シートは、前記吸収体の長手方向に延び前記トップシート側に開放した多条の溝部をなすよう立体的に賦型され、かつその肌当接面側の全域が前記トップシートに覆われており、
前記中間シートには、前記吸収体の長手方向に沿った低液透過領域とこれより液透過性の高い高液透過領域とがある吸収性物品。
【請求項2】
前記中間シートの低液透過領域が、前記長手方向に延びる溝部の底をなす中間シート底部に配置されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中間シートの低液透過領域が、前記長手方向に延びる溝部の間に存在する中間シート頂部に配置されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中間シートは平面視において前記吸収体より小さく、かつ前記吸収体の長手方向及び幅方向において中央に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
少なくとも前記溝部の底をなす前記中間シートの底部が前記吸収体と接着されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記中間シートと前記吸収体との間には、該吸収体の長手方向に延び前記吸収体側に開放する複数条の溝空間部が存在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−120654(P2011−120654A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278897(P2009−278897)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】