説明

吸収性物品

【課題】装着時における排泄部領域の面形状の安定性が高く、装着者の排泄部との密着性に優れた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】排泄部領域Aの両側部に、平面視して幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第1の溝71が形成されていると共に、該溝71それぞれの幅方向外方に、平面視して幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第2の溝72が形成されており、また、前方領域B及び後方領域Cそれぞれの両側部に、両溝71及び72とは繋がっていない一対の第3の溝73が形成されている。溝の本数は、排泄部領域Aと前方領域B及び後方領域Cそれぞれとの境界域D,Eにおいて最多、前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおける境界域D,E寄りの部分で最少となっている。第2の溝72は、第1の溝71よりも湾曲の程度が小さくなされていて、第2の溝72と第1の溝71との物品幅方向の離間距離L1が、物品長手方向外方に向かうに従って増加している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等のショーツ等の下着に固定して使用する吸収性物品に関する。以下、生理用ナプキンという場合には、パンティライナー、失禁パッドを含む。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキンにおいては、液保持性の吸収体及び該吸収体の肌当接面側に配置された表面シートを備えた、吸収層の肌当接面側における左側、右側、前側及び後側に、それぞれ離間した湾曲形状のエンボス溝を設けたものがある。例えば、特許文献1記載の吸収性物品においては、実質的に縦長の吸収層の肌当接面側における、排泄部領域(休守勢物品における、装着者の体液排泄部に当接される部分)の長手方向に沿う両側部に、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲する一対の左右溝が形成されていると共に、一対の該左右溝それぞれの幅方向外方に、平面視して幅方向内方に凸状に湾曲する一対のサイド溝が該第1の溝に沿って形成されており、また、前側及び後側にそれぞれ長手方向外側に凸に湾曲した前溝、後溝が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−195665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の吸収性物品は、特に、装着時における排泄部領域の肌当接面の面形状の安定性に改善の余地があり、装着時に、排泄部領域の肌当接面に皴が発生し、装着者の排泄部との密着性が不十分となる場合があった。
【0005】
従って本発明の課題は、装着時における排泄部領域の面形状の安定性が高く、装着者の排泄部との密着性に優れた吸収性物品(生理用ナプキン)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液保持性の吸収体及び該吸収体の肌当接面側に配置された表面シートを備え、実質的に縦長で、装着者の体液排泄部に当接される排泄部領域と、該体液排泄部の前方に延在する前方領域と、該体液排泄部の後方に延在する後方領域とを長手方向に有している吸収性物品であって、前記吸収性物品の肌当接面における、平面視において前記吸収体と重なる領域に、前記表面シート及び該吸収体が該吸収性物品の非肌当接面側に向かって一体的に凹陥した、物品長手方向に延びる線状の溝が形成されており、前記溝として、前記排泄部領域の物品長手方向に沿う両側部に、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第1の溝が形成されていると共に、一対の該第1の溝それぞれの物品幅方向外方に、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第2の溝が該第1の溝に沿って形成されており、また、前記前方領域及び前記後方領域それぞれの物品長手方向に沿う両側部に、前記第1の溝及び前記第2の溝とは繋がっていない一対の第3の溝が形成されており、前記溝の本数は、前記排泄部領域と前記前方領域及び前記後方領域それぞれとの境界域において最多、該前方領域及び該後方領域それぞれにおける該境界域寄りの部分で最少となっており、前記第2の溝は、前記第1の溝よりも湾曲の程度が小さくなされていて、該第2の溝と該第1の溝との物品幅方向の離間距離が、物品長手方向外方に向かうに従って増加している吸収性物品を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸収性物品(生理用ナプキン)によれば、装着時における排泄部領域の面形状の安定性が高く、装着者の排泄部との密着性に優れているため、体液の漏れが低減し、また、ヨレが発生し難く、吸収体のフィット性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの肌当接面側(表面シート側)を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示すナプキンの装着時における物品長手方向の変形を説明する図であり、図3(a)は、変形時の模式的な平面図、図3(b)は、変形時の模式的な側面図である。
【図4】図4は、図1に示すナプキンの装着時における物品幅方向の変形を、図1のI−I線断面に基づいて説明する図であり、図4(a)は、物品幅方向の圧縮力が作用する前の模式的なI−I線断面の斜視図、図4(b)は、該圧縮力が作用したときの模式的なI−I線断面の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の生理用ナプキンの他の実施形態の要部(境界域)における溝の配置を示す平面図である。
【図6】図6は、図1に示すナプキンを包装材と共に折り畳んで個装体を得る過程を模式的に示す斜視図である。
【図7】図7は、図1に示すナプキンが備えている表面シートの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図8】図8は、図7に示す表面シートの肌当接面側の一部を拡大して模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、図1に示すように、液保持性の吸収体4及び該吸収体4の肌当接面側に配置された表面シート2を備え、実質的に縦長で、装着者の体液排泄部に当接される排泄部領域Aと、該体液排泄部Aの前方に延在する前方領域Bと、該体液排泄部Aの後方に延在する後方領域Cとを長手方向Yに有している。ナプキン1の装着時には、前方領域Bが装着者の前(腹)側に、後方領域Cが装着者の後(背)側に、それぞれ配される。
【0010】
尚、本明細書において、肌当接面は、生理用ナプキン又はその構成部材における、生理用ナプキンの装着時に装着者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、生理用ナプキン又はその部材における、生理用ナプキンの装着時に肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面である。また、長手方向は、生理用ナプキン又はその構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、物品幅方向であり、符号Yで示す方向は、物品長手方向である。
【0011】
更に説明すると、本実施形態のナプキン1は、図2に示すように、ナプキン1の肌当接面を形成する表面シート2、ナプキン1の非肌当接面を形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備し、図1に示す如き平面視において一方向に長い形状(略矩形形状)をしている。表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から延出し、それらの延出部の端部において互いにヒートシール等により接合されてシール部5を形成している。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収性コア4との間は接着剤によって接合されていても良い。裏面シート3の非肌当接面には、ナプキン1を下着等の着衣に固定する粘着部(図示せず)が設けられている。該粘着部は、ホットメルト粘着剤等を所定箇所に塗布することにより設けられており、ナプキン1の使用前においてはフィルム、不織布、紙などからなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、ナプキン1の肌当接面(表面シート2の肌当接面)における、該ナプキン1の平面視において吸収体4と重なる領域には、表面シート2及び吸収体4がナプキン1の非肌当接面側(裏面シート3側)に向かって一体的に凹陥した、物品長手方向Yに延びる線状の溝7が形成されている。ここで、「線状」とは、溝(凹陥部)の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。線状の溝7においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。線状の溝7の形成は、経血等の排泄液の拡散防止、装着時の身体に対する密着性の向上等に特に有効である。線状の溝7は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。
【0013】
本実施形態のナプキン1には、物品長手方向Yに延びる線状の溝7として、下記1)〜4)の溝が形成されている。下記の一対の第1、第2及び第3の溝は、それぞれ、ナプキン1を物品幅方向Xに二分する仮想直線(図示せず)を挟んで左右対称に配置されている。
1)排泄部領域Aの物品長手方向Yに沿う両側部に形成された、平面視して物品幅方向Xの外方に凸状に湾曲する一対の第1の溝71,71。
2)一対の第1の溝71,71それぞれの物品幅方向Xの外方に形成された、平面視して物品幅方向Xの外方に凸状に湾曲する一対の第2の溝72,72。
3)前方領域Bの物品長手方向Yに沿う両側部に形成された、第1の溝71及び第2の溝72とは繋がっていない一対の前方長手方向溝(第3の溝)73,73。
4)後方領域Cの物品長手方向Yに沿う両側部に形成された、第1の溝71及び第2の溝72とは繋がっていない一対の後方長手方向溝(第3の溝)74,74。
【0014】
また、ナプキン1の肌当接面における、該ナプキン1の平面視において吸収体4と重なる領域には、前記1)〜4)の物品長手方向Yに延びる線状の溝7に加えて、物品幅方向Xに延びる線状の溝8が形成されている。即ち、前方領域Bには、平面視において物品長手方向Yの外方に凸状に湾曲する前方幅方向溝81が、その凸状の頂部81aをナプキン1の物品幅方向Xの中央に一致させて形成されている。前方幅方向溝81は、その線状方向の両端部それぞれにおいて、一対の前方長手方向溝73,73に連接されており、これらの溝73,73,81全体として、平面視において物品長手方向Yの外方に凸の略U字状を形成している。また、後方領域Cには、平面視において物品長手方向Yの外方に凸状に湾曲する後方幅方向溝82が、その凸状の頂部82aを物品幅方向Xの中央に一致させて形成されている。後方幅方向溝82は、その線状方向の両端部それぞれにおいて、一対の後方長手方向溝74,74に連接されており、これらの溝74,74,82全体として、平面視において物品長手方向Yの外方に凸の略U字状を形成している。
【0015】
第1の溝71は、図1に示すように、排泄部領域Aの物品長手方向Yの全長に亘っており、その凸状の頂部71aは、該溝71の物品長手方向Yの中央に位置している。第1の溝71の線状方向(線状の溝が延びている方向)の両端部71b,71bは、排泄部領域Aと前方領域Bとの境界域D及び排泄部領域Aと後方領域Cとの境界域Eにそれぞれ存している。境界域Dは、排泄部領域Aと前方領域Bとの境界線P1を物品長手方向Yに跨ぐ領域であり、排泄部領域A及び前方領域Bそれぞれの境界線P1の近傍部分からなる。また、境界域Eは、排泄部領域Aと後方領域Cとの境界線P2を物品長手方向Yに跨ぐ領域であり、排泄部領域A及び後方領域Cそれぞれの境界線P2の近傍部分からなる。通常、境界線P1は、ナプキン1を物品長手方向Yに二分する仮想直線Qを引いた場合に、仮想直線Qから前方領域Bに向かって25〜50mm離間した位置にあり、また、境界線P2は、仮想直線Qから後方領域Cに向かって25〜50mm離間した位置にある。第1の溝71は、仮想直線Qが該溝71の凸状の頂部71aを通過するように配置されている。
【0016】
第2の溝72は、図1に示すように、排泄部領域Aの物品長手方向Yの全長に亘っており、その凸状の頂部72aは、該溝72の物品長手方向Yの中央で且つ第1の溝71の物品長手方向Yの長さの範囲内に位置している。第2の溝72の線状方向の両端部72b,72bは、境界域D及び境界域Eにそれぞれ存している。第2の溝72は、第1の溝71と同様に、仮想直線Qが該溝72の凸状の頂部72aを通過するように配置されており、溝71の凸状の頂部71aと溝72の凸状72aの頂部とは、物品長手方向Yにおいて同位置にある。溝71と溝72とは物品長手方向Yの長さが略等しい。第2の溝72は、吸収体4の物品長手方向Yに沿う側縁4sから20mm以内の領域に配置されていることが好ましい。
【0017】
第2の溝72は、第1の溝71よりも湾曲の程度が小さくなされていて、図1に示すように、溝71と溝72との物品幅方向Xの離間距離L1が、物品長手方向Yの外方に向かうに従って増加している。離間距離L1は、溝71の凸状の頂部71aと溝72の凸状の頂部72aとに挟まれた部分(仮想直線Qの通過部分)において最小となっており、両溝71,72それぞれの線状方向の端部71b,72bが存している、境界域D及びEそれぞれにおいて最大となっている。そのため、第1の溝71と第2の溝72とは、それらの頂部71a,72aを起点として同じ方向に延びていない。溝71,72の湾曲の程度は、各溝の線状方向の中央部(仮想直線Qとの交点及び該交点の近傍)における曲率半径の大小によって評価することができる。第1の溝71との比較において湾曲の程度が小さい、第2の溝72は、その前記曲率半径が、第1の溝71の前記曲率半径よりも大きい。
【0018】
前記第3の溝である、前方長手方向溝73及び後方長手方向溝74は、それぞれ、図1に示すように、平面視して物品幅方向Xの外方に凸状に湾曲している。前方長手方向溝73の線状方向の両端部のうちの一方は、前方幅方向溝81に連接されており、他方(図中符合73bで示す)は、境界域Dに存している。また、後方長手方向溝74の線状方向の両端部のうちの一方は、後方幅方向溝82に連接されており、他方(図中符合74bで示す)は、境界域Eに存している。溝73及び74は、それぞれ、吸収体4の物品長手方向Yに沿う側縁4sから30mm以内の領域に配置されていることが好ましい。
【0019】
本実施形態のナプキン1は、主として、前述した、物品長手方向Yに延びる線状の溝7の存在により、装着時に装着者の身体に沿うように変形し、特に、排泄部領域Aの肌当接面に皴が発生し難く、該肌当接面が装着者の排泄部に密着する。斯かるナプキン1の装着時の変形は、主として、下記i)及びii)の構成を備えていることによる。
【0020】
i)排泄部領域Aの物品長手方向Yの前後に位置する境界域D及びEが、それぞれ、相対的に最も剛性の高い高剛性領域となっており、且つ前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおける境界域D,E寄りの部分が、それぞれ、相対的に最も剛性が低い低剛性領域となっている。
【0021】
ii)排泄部領域Aに、その物品長手方向Yの全長に亘って延びる第1の溝71と、該溝71に沿って延びる第2の溝72とが形成され、且つ該溝72の凸状の頂部72aが該溝71の物品長手方向Yの長さの範囲内に存し、且つ該溝71と該溝72との離間距離L1が、物品長手方向Yの外方に向かうに従って増加している。
【0022】
前記i)の構成に関し、斯かる物品長手方向Yの剛性分布は、物品長手方向Yに延びる線状の溝7の本数を制御することによってなされている。溝7は、表面シート2及び吸収体4が圧密化された部分であり、他の部分に比して硬く、剛性が高い。従って、溝7の本数が相対的に多い領域は、相対的に少ない領域に比して、剛性が高く、特に、溝7が物品長手方向Yに延びている溝であることから、物品長手方向Yに折り曲げ難い(即ち、物品幅方向Xに沿う折曲線で折り曲げ難い)。
【0023】
本実施形態においては、溝7の本数(本体幅方向Xの中央を境界として一方の側における溝7の本数)は、図1に示すように、排泄部領域Aでは、溝71及び溝72の計2本、境界域D及びEでは、それぞれ、溝71、溝72及び溝73の計3本、前方領域B及び後方領域Cでは、それぞれ、溝73又は溝74の計1本となっており、溝7の本数が多い順に、境界域D及びE、排泄部領域A、前方領域B及び後方領域Cとなっている。つまり、溝7の本数は、境界域D及びEにおいて最多、前方領域B及び後方領域Cそれぞれにおける境界域D,E寄りの部分で最少となっている。従って、本実施形態のナプキン1においては、剛性(物品長手方向Yへの折り曲げ難さ)の序列もこの順になっており、境界域D及びEは高剛性領域、前方領域B及び後方領域Cは低剛性領域であり、排泄部領域Aは、これらの中間の剛性を持つ中剛性領域となっている。
【0024】
このような、前記i)で規定する、物品長手方向Yにおける線状の溝7に起因する剛性の分布により、本実施形態のナプキン1においては、境界域D及びEが可撓軸となり難く、境界域Dよりも物品長手方向Yの外側に位置する前方領域A(低剛性領域)と、境界域Eよりも物品長手方向Yの外側に位置する後方領域C(低剛性領域)とが、装着者の肌側に折れ曲がり易く、また、境界域D及びEに挟まれた排泄部領域A(中剛性領域)は、物品長手方向Yに折れ曲がり難く、その面形状の安定性が高められていて、皴が発生し難い。従って、ナプキン1を常法通り下着のクロッチ部に固定して身体に装着したときには、図3(b)に示すように、ナプキン1は側面視において、身体に沿い易い舟形形状となり、安定した面形状の排泄部領域Aが装着者の排泄部に密着する。
【0025】
また、前記ii)の構成により、第1の溝71と第2の溝72とで挟まれた領域T(図4(a)参照)における表面シート2及び吸収体4は、溝71,72の形成時の圧密化により一体化されて他の部分に比して柔軟性が低下しているのに対し、一対の第1の溝71,71間の領域CT(図4(a)参照)における表面シート2及び吸収体4は、圧密化されておらず、柔軟性を保っている。従って、本実施形態のナプキン1は、装着時に、図4(b)に示すように、物品幅方向Xの中央に向かう圧縮力F(例えば、装着者の大腿部による締め付け時の圧力)が作用したときに、第1の溝71、第2の溝72及び領域Tを含む側方部が、可撓軸となり難く、左右一対の該側方部に挟まれた領域CTのみが装着者の排泄部側に隆起するため、排泄部領域Aと排泄部との密着性が向上し、体液の漏れが低減する。また、本実施形態のナプキン1は、物品幅方向Xにおいて、領域CTのみが隆起し、該領域CTの左右両側に位置する、前記第1の溝71、第2の溝72及び領域Tが、下着のクロッチ部分から離れ難いため、ヨレが発生し難く、吸収体のフィット性が向上する。
【0026】
特に、第1の溝71と第2の溝72との離間距離L1が、物品長手方向Yの外方に向かうに従って増加していることにより、領域T自体に剛性の分布が形成されており、斯かる領域Tにおける剛性の分布によって、排泄部領域Aと装着者の排泄部との密着性が一層高められている。即ち、領域Tにおいて、離間距離L1が最小値となる、溝71の凸状の頂部71aと溝72の凸状の頂部72aとに挟まれた領域T1は、領域Tで最も剛性が高く、圧縮力Fによって変形し難い変形難領域であるため、領域CTにおける、左右一対の領域T1,T1に挟まれた部分は、装着者の排泄部側に隆起し易いのに対し、離間距離L1が最大値となる、境界域D及びEに位置する領域T2は、領域Tで最も剛性が低く、圧縮力Fによって変形し易い変形容易領域であるため、装着者の大腿部の動き(特に上下動)に対応して柔軟に変形し、これにより、左右一対の領域T2,T2に挟まれた部分の変形が緩和される。この変形難領域T1と変形容易領域T2との作用により、排泄部領域Aの安定した面形状が得られ、排泄部領域Aの肌当接面における皴の発生が抑制され、その中央部分(装着者の排泄部に直接当たる部分)の身体へ密着性が高まり、安定した装着や吸収性の発現が可能となる。
【0027】
但し、前記i)及びii)の構成による前述した作用効果を得るためには、その前提として、排泄部領域Aの物品長手方向Yに沿う両側部それぞれに形成された二重の溝が、本実施形態における第1の溝71及び第2の溝72のように、何れも、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲している必要がある。斯かる構成を具備していないと、境界域D及びEが高剛性領域とはなり難く、また、二重の溝に挟まれた領域Tに起因する前述した作用も奏され難くなるため、排泄部領域Aの安定した面形状が得られず、フィット性や体液の漏れ防止性の向上は期待できない。
【0028】
例えば、特許文献1に記載の吸収性物品においては、排泄部対向部の両側部に形成された二重の溝が、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲する一対の左溝又は右溝と、該左溝又は右溝の幅方向外方に位置し且つ平面視して幅方向内方に凸状に湾曲するサイド溝とから構成されており、該左溝(右溝)の凸状の頂部と該サイド溝の凸状の頂部とが互いに向き合っているところ、特許文献1に記載の吸収性物品は、装着時に、排泄部領域Aの肌当接面に皴が発生し、安定した面形状を得るという点で改善の余地がある。その理由は定かではないが、特許文献1に記載の吸収性物品においては、左溝(右溝)の凸状の頂部と該サイド溝の凸状の頂部とが互いに向き合っていることによって、排泄部領域と前方領域及び後方領域との境界域における、左溝(右溝)とサイド溝との間隔が広がりすぎており、これにより、前述した、「物品長手方向における、物品長手方向に延びる線状の溝に起因する剛性の分布」が形成されないため等によるものと推察される。
【0029】
本実施形態のナプキン1においては、図1に示すように、一対の第1の溝71,71が互いに分離しており、平面視で繋がっていないため、前述した、一対の第1の溝71,71間の領域CT(図4(a)参照)の隆起が容易し易い。一対の第1の溝71,71が繋がっていて平面視で閉じた環状となっている(全周溝を形成している)構成は、領域CTの隆起が起こり難くするため、好ましくない。領域CTの隆起を容易にする観点から、一対の第1の溝71,71それぞれの線状方向の端部71bの離間距離L2(図1参照)は、好ましくは5〜50mm、更に好ましくは10〜30mmである。
【0030】
また、本実施形態のナプキン1においては、図1に示すように、境界域D及びEそれぞれに、第1の溝71の端部71b、第2の溝72の端部72b及び第3の溝73の端部73bが存しており、且つ端部73が、端部71bと端部72bとの間に位置している。即ち、境界域D及びEにおいては、ナプキン1の物品幅方向Xの中央から外方に向かって、第1の溝71、第3の溝73、第2の溝72の順に、それらの線状方向の端部が並んでいる。境界域D及びEにおいて各線状の溝7の線状方向の端部がこのように配置されていると、前記i)及びii)の構成による前述した作用効果が得られ易く、特に、前述した領域T2の可撓性が向上し、領域T2の装着者の大腿部の動きに対する柔軟な変形が一層容易になるため、排泄部領域Aの安定した面形状が得られやすくなる。
【0031】
尚、境界域D及びEにおける各溝7の配置形態は、図1に示す実施形態に限定されず、適宜設定可能であり、例えば、図5に示す実施形態のようにすることもできる。尚、図5は、図1において、境界域Dの左側部分における各溝の端部が集まった部分の変形例を示しているが、図5に示す実施形態においては、境界域Dの右側部分及び境界域Eの両側部分についても、図5と同様に構成されている。図5に示す実施形態においては、境界域D及びEそれぞれに、第1の溝71の端部71b及び第3の溝73の端部73bが存しており、且つ端部73bが、端部71bよりも物品幅方向Xの内方に位置している。第2の溝72は、境界域D(境界域E)を超えて前方領域B(後方領域C)に達しており、その端部72bは、境界域D(境界域E)に位置していない。図5に示す実施形態は、斯かる溝の端部の配置形態により、特に、前述した領域T2の可撓性が向上しており、領域T2が、装着者の大腿部の動きに対応して柔軟に変形するという点で、図1に示す実施形態と遜色のないものである。但し、排泄部領域A(領域CT)の装着時の隆起形状を適切に制御するには、図1に示すように、境界域D,Eにおいて、第1の溝71の端部71bが最も物品幅方向Xの内方に位置していることが好ましいところ、図5に示す実施形態では、境界域D,Eにおいて、第3の溝73の端部73bが最も物品幅方向Xの内方に位置しているため、総合的には、図1に示す実施形態が好ましい。
【0032】
本実施形態のナプキン1による前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、各部の寸法等は、次の通りに設定することが好ましい。
第1の溝71の曲率半径(仮想直線Qとの交点及び該交点の近傍における曲率半径)は、好ましくは30〜200mm、更に好ましくは50〜150mmである。
また、第2の溝72の曲率半径(仮想直線Qとの交点及び該交点の近傍における曲率半径)は、好ましくは50〜500mm、更に好ましくは100〜450mmである。
また、溝71の曲率半径と溝72の曲率半径との比(溝71/溝72)は、好ましくは
0.30〜0.80、更に好ましくは0.35〜0.75である。
また、第1の溝71については、複数の異なる曲率半径を持つ曲線により構成されていても良く、その場合、溝の両端部とその中央を通る3点から、該曲線の曲率半径を導けば良い。曲線は溝71を境に同じ側に曲率中心を持つことが好ましいが、溝71に比べて充分小さな曲率半径の組合せ(波状等)においては、同じ側になくとも良い。
【0033】
離間距離L1の最小値(溝71の凸状の頂部71aと溝72の凸状の頂部72aとに挟まれた部分の物品幅方向Xの長さ)は、好ましくは2〜11mm、更に好ましくは
3〜10mmである。
また、離間距離L1の最大値(境界域D,Eそれぞれにおける溝71と溝72との離間距離)は、好ましくは5〜25mm、更に好ましくは10〜20mmである。
【0034】
また、第1の溝71の物品長手方向Yの長さ(L71)は、好ましくは50〜100mm、更に好ましくは60〜80mmである。
また、第2の溝72の物品長手方向Yの長さ(L72)は、好ましくは50〜100mm、更に好ましくは60〜80mmである。
また、長さL71と長さL72との比(L71/L72)は、好ましくは0.75〜1.35、更に好ましくは0.80〜1.25である。
また、溝71,72の幅(線状方向と直交する方向の長さ)は、好ましくは1〜4mm、更に好ましくは1〜2mmである。
【0035】
前方長手方向溝73の線状方向の端部73b及び後方長手方向溝74の線状方向の端部74bそれぞれから物品長手方向Yの内方に向かって該線状方向に延びる仮想直線(図示せず)を引いたときに、各該仮想直線と第1の溝71とのなす角度は、好ましくは60〜170°、更に好ましくは90〜150°である。
また、溝73及び74の物品長手方向Yの長さは、それぞれ、好ましくは50〜100mm、更に好ましくは40〜80mmである。また、溝73,74の幅(線状方向と直交する方向の長さ)は、溝71,72の幅と同様に設定することができる。
【0036】
本実施形態のナプキン1は、通常のこの種の生理用ナプキンと同様に、包装材と共に折り畳まれ、個別包装(個装)されて個装体として市販等される。図6には、ナプキン1の個装体15を得る過程が示されている。包装材10は、個装体15の外面を形成するシートであり、平面視において矩形形状をしており、ナプキン1よりも大きく、その中央にナプキン1を載置したときに、該ナプキン1の周縁から包装材10が延出するようになされている。包装材10は、ナプキン1の非肌当接面(裏面シート3の非肌当接面)の所定箇所に設けられている前記粘着部(図示せず)を介して、ナプキン1に剥離可能に粘着している。包装材10としては、樹脂製フィルム、不織布、紙等を用いることができる。
【0037】
個装体15を得るには、図6に示すように、先ず、包装材10が粘着したナプキン1の後方領域Cを、物品幅方向Xに延びる折曲線S1に沿って、包装材10と共に排泄部領域Aの肌当接面側に折り返し、次いで、前方領域Bを、物品幅方向Xに延びる折曲線S2に沿って、包装材10と共に排泄部領域Aの肌当接面側に折り返し、既に折り返されている後方領域Cの上に重ね、公知のタブテープ11を止着する。必要に応じ、折り畳まれた状態のナプキン1の両側縁から幅方向外方に延出する包装材10の両側縁を、エンボス加工等の公知の接合方法により封止する。ナプキン1は、このようにして包装材10と共に長手方向に2つ折りされ、個装体15とされる。尚、個装体15を得る方法(ナプキン1の折り畳み方法)としては、前記とは逆に、先ず、前方領域Bを排泄部領域Aの肌当接面側に折り返し、次いで、後方領域Cを排泄部領域Aの肌当接面側に折り返し、既に折り返されている前方領域Bの上に重ねる方法でも良い。
【0038】
個装体15において、ナプキン1は、第1の溝71の端部71bよりも物品長手方向Yの外方に位置し且つ物品幅方向Xに延びる折曲線S1及びS2に沿って、物品長手方向Yに折り畳まれている。折曲線S1及びS2は、特に、境界域D及びEよりも物品長手方向Yの外方に位置する、前方領域B又は後方領域Cを、物品幅方向Xに横断していることが好ましい。前述したように、第1の溝71の端部71bよりも物品長手方向Yの外方は、相対的に剛性が最も低い低剛性領域であり、斯かる低剛性領域でナプキン1を物品長手方向Yに折り曲げることにより、折り曲げが容易となり、折り曲げに起因する皴が発生しにくくなる。
【0039】
本実施形態のナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、親水性且つ液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、裏面シート3としては、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。
【0040】
吸収体4を構成する材料としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の高吸水性樹脂を保持させたもの等を用いることができる。また吸収体4は、該繊維集合体等からなる液保持性の吸収性コア(図示せず)と、該吸収性コアを被覆する液透過性のコアラップシート(図示せず)とを含んで構成されていても良く、その場合、吸収性コアとコアラップシートとの間は、所定の部位においてホットメルト粘着剤等の接合手段により接合されていても良い。吸収性コアを被覆するコアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布、開孔フィルム等を用いることができる。
【0041】
本実施形態のナプキン1は、公知の生理用ナプキンと同様に下着に装着して使用する。本実施形態のナプキン1は、主として、物品長手方向Yに延びる線状の溝7(第1の溝71、第2の溝72、第3の溝73)の作用により、排泄部領域Aの肌当接面に皴が発生し難く、その面形状が安定した状態で、該肌当接面が装着者の排泄部に密着するため、体液の漏れが低減されており、ヨレが発生し難く、吸収体のフィット性が向上している。
【0042】
ところで、前述した、本実施形態のナプキン1の装着時の特徴的な変形は、物品長手方向Yに延びる溝7の作用によるところが大きいが、表面シート2によってもある程度制御することができる。即ち、表面シート2が、物品幅方向Xに延びにくいシートであると、第1の溝71と外側溝72とで挟まれた領域Tの表面シート2及び吸収体4は、溝71,72の形成時の圧密化により、更に一体化され易い。そのため、第1の溝71、第2の溝72及び領域Tは、可撓軸に更になり難く、前述した領域CTの肌側への隆起が更に容易になり、装着者の排泄部との密着性が更に向上し、体液の漏れが低減する。
【0043】
物品幅方向Xに延びにくい表面シートとは、具体的には、物品幅方向Xの10%伸長時の引張強度が150cN以上、特に200〜400cNの表面シートである。引張強度は次のようにして測定される。
【0044】
<10%伸長時の引張強度の測定方法>
温度23℃、湿度50%の試験室にて、JIS L1096(一般織物試験方法)に規定されたA法(ストリップ法)を参考に、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTC−1210A)を使用して、試験片(表面シート)の10%伸長時の引張強度を測定する。テンシロン引張試験機の上下チャック間の距離を100mmに調整し、該上下のチャックに試験片を、引張強度の測定方向(物品幅方向)がチャックの上下方向に一致するように挟み、下チャックを固定した状態で上チャックを一定速度300mm/minで上昇させて上下チャック間の距離を拡げ、試験片が10%伸張した時の強度を測定する。測定は5回行い、その平均値を算出して、当該測定方向の10%伸長時の引張強度とした。尚、試験片については、特に予備乾燥はせず室温にて放置された試験片を長さ200mm、幅50mmに裁断したものを試験片とした。
【0045】
本実施形態においては、物品幅方向Xに延びにくい表面シート2として、以下に説明するものを用いている。即ち、本実施形態に係る表面シート2は、図7に示すように、その肌当接面2a側に、該表面シート2の構成繊維が圧着又は接着されて形成された線状の凹部20が多数形成されており、該線状の凹部20は少なくとも物品幅方向Xに連続している。また、線状の凹部20は格子状に形成されており、該線状の凹部20によって表面シート2が多数の領域22に区画化されて区画領域が形成されている。
【0046】
表面シート2において、線状の凹部20は少なくとも物品幅方向Xに連続している。ここで、「物品幅方向に連続している」とは、線状の凹部20の延びている方向に関し、物品長手方向Yに対して交差する方向であれば良い(即ち、物品長手方向Yと平行な方向のみを除く)ことを意味する。また、「線状」とは、凹部20の形状が平面視において図7に示す如き直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも良く、あるいは平面視において長方形、正方形、菱形、円形、十字等の多数の窪み部(エンボス部)が間隔を置かずに連なって全体として連続線を形成していても良い。
【0047】
表面シート2は、単層構造の不織布(立体賦形不織布)からなり、その一面2aが多数の凹部20及び凸部23を有する凹凸形状となっており、他面2bが略平坦となっている。一面2aは、ナプキン1の肌当接面を形成する面である。凸部23は凹部20間に位置している。凸部23内は、表面シート20の構成繊維で満たされている。
【0048】
線状の凹部20は、構成繊維が圧着又は接着されて形成されている。ここで、繊維を圧着する手段としては、熱を伴うか又は伴わないエンボス加工、超音波エンボス加工等が挙げられる。一方、繊維を接着する手段としてはホットメルトや各種接着剤による結合が挙げられる。本実施形態に係る表面シート2における線状の凹部20は、カード法によって形成した繊維ウエブに熱エンボス加工を施して形成されている。線状の凹部20においては、表面シート2又はそれを構成する不織布の構成繊維である熱融着性繊維が熱融着により一体化している。線状の凹部20における熱融着性繊維は、熱融着成分が溶融して繊維の形態を維持していない。
【0049】
このように、表面シート2には、物品幅方向Xに連続している線状の凹部20が多数形成されているため、表面シート2は、物品幅方向Xに引っ張られても該幅方向Xに延び難くなっている。特に、本実施形態においては、図7に示すように、線状の凹部20が、物品幅方向Xのみならず、物品長手方向Yにも連続しており、そのため、表面シート2は、物品長手方向Yに引っ張られても該長手方向Yに延び難くなっている。即ち、表面シート2は、物品幅方向X及び長手方向Yの両方向に延び難い。ここで、「物品長手方向に連続している」とは、線状の凹部20の延びている方向に関し、物品幅方向Xに対して交差する方向であれば良い(即ち、物品幅方向Xと平行な方向のみを除く)ことを意味する。
【0050】
多数の線状の凹部20は、図7に示すように格子状に形成されている。より具体的には、表面シート2は、図8に示すように、線状の凹部20として、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第1線状の凹部20aと、互いに平行に且つ所定の間隔で形成された多数本の第2線状の凹部20bとを有しており、第1線状の凹部20aと第2線状の凹部20bとが角度αをなして互いに交差している。このように、多数の線状の凹部20が格子状に形成されていると、表面シート2の物品幅方向Xへの延びにくさがより一層高められる。更に、線状の凹部20で囲まれた部分では、表面シートの厚み変化が少なく、当初の性能が得られやすい。第1線状の凹部20aの幅W1と第2線状の凹部20bの幅は同じであり、第1線状の凹部20aどうし間の間隔W2と第2線状の凹部20bどうし間の間隔も同じである。
【0051】
第1及び第2線状の凹部20a,20bの幅W1(一方のみ図示)は、該線状のエンボスにおいて繊維を確実に固定するために0.1〜1.5mm、特に0.3〜0.9mmであることが好ましく、第1線状の凹部20aどうし間の間隔W2及び第2線状の凹部20bどうし間の間隔は、2〜14mm、特に2〜8mmであることが好ましい。W1及びW2は、線に対して直交する方向に計測される。線の幅は交点部分から変化があっても良いが、W1は交点と交点の中点で計測される。W2は後述する区画領域22の対辺同士を結ぶ線で計測される。
【0052】
このように、表面シート2には多数の線状の凹部20が格子状に形成されており、該線状の凹部20によって表面シート2が多数の領域に区画化され、区画領域22,22・・が形成されている。個々の区画領域22は、それぞれ周囲を線状の凹部20に囲まれた領域であり、平面視において菱形形状である。各区画領域22の中央部は、該区画領域22を囲む凹部20に対して相対的に隆起して凸部23となっている。菱形の区画領域22の対角線D1(ナプキン幅方向Yに延びる対角線)とD2(ナプキン長手方向Xに延びる対角線)との比(D1/D2)は、0.2〜3.0、特に0.3〜1.7であることが好ましい。
【0053】
個々の区画領域22の面積は、0.25〜2cm2であることが好ましい。また、線状の凹部20の面積率は16%以下、特に14%以下であることが、表面シート2中に液が残りにくくなることから好ましい。凹部20の面積率が高すぎると、シートの凸部23が押さえ付けられて、表面シート2の中に液が残り易くなる。また、凹部20の面積率は、10%以上、特に11%以上であることが、液の吸い込み性が向上することから好ましい。凹部20の面積率が低すぎると、線状の凹部20の幅が細くなり該部分のエンボスの強度が確保できないので、液の吸い込み性が悪化する。凹部20の面積率は、実物の写真を画像解析して得ることができる。このとき、凹部20に繊維の欠損部分がある場合は手動補正を行い、繊維があるものと仮定して測定する。
【0054】
表面シート2の構成繊維としては、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性繊維が好ましく用いられる。熱伸長性繊維を含んだ表面シート2は、熱伸長性繊維を含むウエブに常法に従って線状の凹部20を形成した後、加熱処理することにより製造することができる。表面シート2としては、例えば、本出願人の先の出願に係る特願2009−239846に記載されている、熱伸長性繊維を含んだシートを用いることができる。表面シート2の坪量は、好ましくは18〜60g/m2、更に好ましくは25〜40g/m2である。
【0055】
本発明に係る表面シートは、図7に示す形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、区画領域22の平面視形状は、図7に示す如き菱形に制限されず、長方形、正方形、平行四辺形、楕円形、三角形等の任意の形状とすることができる。また、一枚の表面シートに、菱形形状の区画領域と平行四辺形状の区画領域とを組み合わせて設ける等、平面視形状の異なる複数種類の区画領域を設けることもできる。但し、区画領域22を包囲する、線状の凹部20が、物品幅方向Xに連続していることが必要である。
【0056】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の適用例の一つとして生理用ナプキンを挙げたが、例えば、使い捨ておむつ、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等にも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
7 物品長手方向に延びる線状の溝
8 物品幅方向Xに延びる線状の溝
10 包装材
15 個装体
71 第1の溝
71b 第1の溝の端部
72 第2の溝
72b 第2の溝の端部
73,74 第3の溝
73b,74b 第3の溝の端部
81 前方幅方向溝
82 後方幅方向溝
A 排泄部領域
B 前方領域
C 後方領域
D 排泄部領域と前方領域との境界域
E 排泄部領域と後方領域との境界域
P1,P2 境界線
S1,S2 折曲線
X 物品幅方向
Y 物品長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液保持性の吸収体及び該吸収体の肌当接面側に配置された表面シートを備え、実質的に縦長で、装着者の体液排泄部に当接される排泄部領域と、該体液排泄部の前方に延在する前方領域と、該体液排泄部の後方に延在する後方領域とを長手方向に有している吸収性物品であって、
前記吸収性物品の肌当接面における、平面視において前記吸収体と重なる領域に、前記表面シート及び該吸収体が該吸収性物品の非肌当接面側に向かって一体的に凹陥した、物品長手方向に延びる線状の溝が形成されており、
前記溝として、前記排泄部領域の物品長手方向に沿う両側部に、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第1の溝が形成されていると共に、一対の該第1の溝それぞれの物品幅方向外方に、平面視して物品幅方向外方に凸状に湾曲する一対の第2の溝が該第1の溝に沿って形成されており、また、前記前方領域及び前記後方領域それぞれの物品長手方向に沿う両側部に、前記第1の溝及び前記第2の溝とは繋がっていない一対の第3の溝が形成されており、
前記溝の本数は、前記排泄部領域と前記前方領域及び前記後方領域それぞれとの境界域において最多、該前方領域及び該後方領域それぞれにおける該境界域寄りの部分で最少となっており、
前記第2の溝は、前記第1の溝よりも湾曲の程度が小さくなされていて、該第2の溝と該第1の溝との物品幅方向の離間距離が、物品長手方向外方に向かうに従って増加している吸収性物品。
【請求項2】
前記境界域に、前記第1の溝、前記第2の溝及び前記第3の溝それぞれの端部が存しており、且つ該第3の溝の端部が、該第1の溝の端部と該第2の溝の端部との間に位置している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記境界域に、前記第1の溝及び前記第3の溝それぞれの端部が存しており、且つ該第3の溝の端部が、該第1の溝の端部よりも物品幅方向内方に位置している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記表面シートの物品幅方向の10%伸長時の引張強度が150cN以上である請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品を包装材と共に折り畳んでなる、吸収性物品の個装体であって、
前記吸収性物品は、前記第1の溝の端部よりも物品長手方向外方に位置し且つ物品幅方向に延びる折曲線に沿って、物品長手方向に折り畳まれている、吸収性物品の個装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−125360(P2011−125360A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283598(P2009−283598)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】