説明

吸収性物品

【課題】側部ポケットの側壁部の剛性を高め、排泄物の重量による側壁部の変形を抑制する。
【解決手段】吸収性物品1では、前部吸収コア、一対の側部吸収コア222および後部吸収コアとバックシート部材23とのそれぞれの間に、開口25を通過した排泄物が収容される前部ポケット、一対の側部ポケット28および後部ポケットが形成される。吸収性物品1では、側部吸収コア222が起立ギャザー部341の内面に接合されるため、起立ギャザー部341が起立することにより、側部吸収コア222がバックシート部材23から大きく離間する。側部ポケット28の側壁部281は、サイドシート3や外装シート231の内側に側部吸収コア222が接合された構造とされる。このため、側部ポケット28の側壁部281の剛性を高くすることができる。これにより、側部ポケット28に収容された排泄物の重量による側壁部281の変形を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつ等の吸収性物品では、水分を多く含む軟便が排泄された場合に、軟便が着用者と吸収性物品との間で広がって着用者の肌に広範囲に亘って付着することを防止するため、様々な提案が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の使い捨ておむつでは、およそ全長に亘る第1コアの前方部上に第2コアが設けられ、第1コアと第2コアとの間の空間が排泄物を収容するポケットとされる。特許文献1の使い捨ておむつでは、第2コアの前端が第1コア上に固定され、第2コアの両側部と股下域側の遊離端部との交差部位が防漏カフの自由縁部に連結されており、防漏カフが起立することにより、第2コアの遊離端部が第1コアから離間してポケットの開口が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−209941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の使い捨ておむつでは、薄い不織布製の防漏カフによりポケットの側壁部が構成されるため、ポケットの側壁部の剛性が不足し、ポケット内に収容された大便の重量を支えることができない。このため、大便の重量により防漏カフの起立が阻害され、使い捨ておむつの側部からの尿等の漏出(いわゆる、横漏れ)が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、側部ポケットの側壁部の剛性を高め、排泄物の重量による側壁部の変形を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、着用者からの排泄物を受ける吸収性物品であって、バックシート部材と、前記バックシート部材上に重ねられて前記バックシート部材に外縁部が接合され、前記バックシート部材が露出する開口を着用者の股間部に対向する位置に有する吸収性シート部材と、前記吸収性シート部材の左右両側部上において長手方向に伸び、起立ギャザー弾性部材が長手方向に沿ってそれぞれ接合される一対の起立ギャザー部とを備え、前記吸収性シート部材が、前記着用者の前側および後側の一方に配置される第1吸収コアと、前記開口の左右方向の両側に配置される一対の第2吸収コアと、前記第1吸収コアおよび前記一対の第2吸収コアを被覆する透液性のコア被覆シートとを備え、前記第1吸収コアと前記バックシート部材との間に前記開口から前記長手方向に広がる主ポケットが形成され、前記一対の第2吸収コアと前記バックシート部材との間に前記開口から前記左右方向に広がる一対の側部ポケットが形成され、前記一対の第2吸収コアが前記一対の起立ギャザー部に前記コア被覆シートを介して接合される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の吸収性物品であって、前記吸収性シート部材が、前記一対の第2吸収コアの前記バックシート部材に対向する面に前記長手方向に沿って配置されて前記一対の第2吸収コアに収縮力を作用させる一対の第2吸収コア弾性部材をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の吸収性物品であって、前記一対の起立ギャザー部の自由端が、前記一対の起立ギャザー部と前記一対の第2吸収コアとの接合領域から離間しており、前記起立ギャザー部弾性部材が前記自由端と前記接合領域との間に配置され、前記一対の起立ギャザー部のそれぞれに、前記長手方向に沿って前記接合領域と重なりつつ他の起立ギャザー部弾性部材が接合される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の吸収性物品であって、前記一対の起立ギャザー部の自由端が、前記一対の起立ギャザー部と前記一対の第2吸収コアとの接合領域から離間しており、前記一対の起立ギャザー部が、前記自由端と前記接合領域との間にて前記長手方向に伸びる折り返し線にて前記左右方向の外側に折り返されており、前記起立ギャザー部弾性部材が、前記一対の起立ギャザー部のそれぞれの前記自由端と前記折り返し線との間に配置される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記第1吸収コアの前記開口近傍または前記開口に接するコアエッジが、前記左右方向の中央にて前記長手方向に凹状となる凹状部を有する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収性シート部材が、前記左右方向の中央領域において前記長手方向に沿って前記第1吸収コアに接合されて前記第1吸収コアに収縮力を作用させる第1吸収コア弾性部材をさらに備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の吸収性物品であって、前記第1吸収コアが、前記中央領域において前記第1吸収コア弾性部材に重なる弱化線を有する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記第1吸収コアと前記一対の第2吸収コアとが前記長手方向に連続して一体的に形成される。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記第1吸収コアが、前記着用者の前側に配置される前部吸収コアである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収性シート部材が、前記着用者の前側および後側の他方に配置される第3吸収コアをさらに備え、前記第3吸収コアと前記バックシート部材との間にもう1つのポケットが形成される。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の吸収性物品であって、着用者が着用する外装物品の内側に取り付けられる補助吸収具である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、側部ポケットの側壁部の剛性を高め、排泄物の重量による側壁部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】吸収性物品の平面図である。
【図2】吸収性物品の断面図である。
【図3】吸収性物品の断面図である。
【図4】吸収性物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る吸収性物品1を長手方向(すなわち、図1中の上下方向)に広げた状態にて示す平面図である。吸収性物品1は、着用者が着用する外装物品である使い捨ておむつ等の内側に取り付けられ、着用者からの軟便等の排泄物を受ける補助吸収具である。図1では、着用者に接する面(すなわち、着用者側)を手前側にして吸収性物品1を描いている。
【0021】
図1に示すように、吸収性物品1は、平面視において略矩形状である略シート状の本体部2、および、本体部2の長手方向に垂直な左右方向(本体部2の幅方向であり、図1中の左右方向に一致する。)の両側において長手方向のおよそ全長に亘って設けられた一対のサイドシート3を備える。
【0022】
本体部2の図1中における上側の部位201および下側の部位203はそれぞれ、着用者の腹側および背側の肌に接する部位であり、以下の説明では、「前方部201」および「後方部203」と呼ぶ。また、前方部201と後方部203との間において前方部201および後方部203から連続するとともに着用者の股間部に対向する部位202を「中間部202」と呼ぶ。
【0023】
図2および図3はそれぞれ、吸収性物品1を、図1中に示すA−Aの位置、および、B−Bの位置にて、吸収性物品1の長手方向(すなわち、図1中の上下方向)に垂直な面で切断した断面図であり、図4は、吸収性物品1をC−Cの位置にて吸収性物品1の左右方向に垂直な面で切断した断面図である。なお、吸収性物品1では、後方部203の構造は前方部201の構造とほぼ同様であり、後方部203の長手方向に垂直な断面図は図2と同様である。
【0024】
図1ないし図3に示すように、一対のサイドシート3はそれぞれ、本体部2の左右両側部上に接合される帯状の固定部33、固定部33に連続するとともに少なくとも一部が起立するギャザー部34、および、ギャザー部34に長手方向に沿って接合される複数の起立ギャザー部弾性部材32a〜32cを備える。サイドシート3は、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)を、長手方向に伸びる折り曲げ線にて2つ折りにし、折り重ねられた2つの部位の間に起立ギャザー部弾性部材32a〜32cを挟むことにより形成される。起立ギャザー部弾性部材32a〜32cとしては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が用いられ、本実施の形態ではポリウレタン糸が利用される。
【0025】
ギャザー部34は、長手方向の両端部にて本体部2上に接合される。吸収性物品1では、起立ギャザー部弾性部材32a〜32cが収縮することにより、ギャザー部34の長手方向の両端部を除く部位341(以下、「起立ギャザー部341」という。)が、図2および図3に示すように、本体部2の側方において着用者側に向かって起立し、着用時に着用者の足の付け根近傍に当接する立体ギャザーが形成される。また、起立ギャザー部341が、長手方向に伸びる折り返し線342にて左右方向の外側へと広がるように折り返されることにより、立体ギャザーの自由端343(すなわち、着用者側の端部)側の部位が着用者の肌の広い範囲に亘って密着する。
【0026】
図3に示すように、起立ギャザー部341には、自由端343から離間した位置に後述する側部吸収コア222が接合されており、起立ギャザー部弾性部材32cは、起立ギャザー部341と側部吸収コア222との接合領域344に重なる。起立ギャザー部341の折り返し線342は、自由端343と接合領域344との間に位置し、起立ギャザー部弾性部材32a,32bは、起立ギャザー部341の自由端343と折り返し線342との間に配置される。起立ギャザー部弾性部材32a,32bは、自由端343と折り返し線342との間に配置されるのであれば、自由端343において自由端343に沿って配置されてもよく、折り返し線342上において折り返し線342に沿って配置されてもよい。本実施の形態では、起立ギャザー部弾性部材32a,32bはそれぞれ、起立ギャザー部341の自由端343および折り返し線342上に配置される。起立ギャザー部341が折り返し線342にて折り返されない場合には、起立ギャザー部弾性部材32a,32bは、起立ギャザー部341の自由端343と接合領域344との間に配置される(上記と同様に、自由端343に配置される場合も含む。)。
【0027】
図1ないし図4に示すように、本体部2は、バックシート部材23、および、バックシート部材23上(すなわち、バックシート部材23の着用者側)に重ねられて外縁部がバックシート部材23に接合される吸収性シート部材20を備える。図1および図3に示すように、吸収性シート部材20の長手方向の中央よりも後側(すなわち、図1中の下側)には、着用者の股間部に対向する位置に開口25が形成されており、開口25の幅は、吸収性物品1の幅よりも小さい。バックシート部材23は、吸収性シート部材20の開口25から露出して着用者の股間部に直接対向する露出領域234を有する。開口25の左右両側では、一対の起立ギャザー部341が吸収性シート部材20の左右両側部上において長手方向に伸びる。
【0028】
吸収性シート部材20は、図1に示すように、吸収性物品1の着用時に着用者の前側(腹側)に配置される前部吸収コア221、開口25の左右方向の両側に配置される一対の側部吸収コア222、および、着用者の後側に配置される後部吸収コア223を備える。前部吸収コア221の長手方向の長さは、後部吸収コア223の長手方向の長さよりも大きい。前部吸収コア221、一対の側部吸収コア222および後部吸収コア223は、吸収性シート部材20の長手方向(バックシート部材23の長手方向でもある。)に連続して一体的に形成されており、以下の説明では、前部吸収コア221、一対の側部吸収コア222および後部吸収コア223をまとめて、「吸収コア22」ともいう。図1中では、図の理解を容易にするために、吸収コア22の輪郭を太い破線にて描く。
【0029】
吸収性シート部材20は、また、図2ないし図4に示すように、吸収コア22のそれぞれの上面および下面(すなわち、前部吸収コア221、側部吸収コア222および後部吸収コア223のそれぞれの着用者側およびバックシート部材23側)を被覆する透液性のコア被覆シート21を備える。コア被覆シート21は、吸収コア22の上面を覆う第1被覆シート211、および、吸収コア22の下面を覆う第2被覆シート212を備える。
【0030】
吸収コア22は、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維に粒状の吸水性ポリマー(例えば、SAP(Super Absorbent Polymer))を混合したものをティッシュペーパーや透液性不織布等により包み込んで形成され、コア被覆シート21を透過した水分を吸収して迅速に固定する。親水性繊維を包むティッシュペーパーや透液性不織布等は、親水性繊維および吸水性ポリマーとホットメルト接着剤により接合されて、親水性繊維の型崩れ、および、吸水性ポリマーの脱落(特に、吸水後における脱落)を防止する。本実施の形態では、吸収コア22はパルプ繊維およびSAPを含む。
【0031】
コア被覆シート21は、透液性のシート材料であり、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収コア22へと移動させる。コア被覆シート21としては、例えば、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)にて形成された透液性の不織布(ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンボンド不織布等)が利用される。なお、コア被覆シート21として、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)が利用されてもよい。
【0032】
図1に示すように、前部吸収コア221の開口25近傍のコアエッジ2211、および、開口25の前部吸収コア221側の前部エッジ252は、左右方向の中央にて長手方向に凹状となる(すなわち、後部吸収コア223から離れる方向に凹状となる)凹状部を有する。また、後部吸収コア223の開口25近傍のコアエッジ2231、および、開口25の後部吸収コア223側の後部エッジ253も、左右方向の中央にて長手方向に凹状となる(すなわち、前部吸収コア221から離れる方向に凹状となる)凹状部を有する。なお、前部吸収コア221のコアエッジ2211、および、後部吸収コア223のコアエッジ2231はそれぞれ、開口25の前部エッジ252および後部エッジ253に重なっていてもよい。換言すれば、前部吸収コア221のコアエッジ2211、および、後部吸収コア223のコアエッジ2231は開口25に接していてもよい。
【0033】
吸収性シート部材20は、左右方向の中央領域において長手方向に沿って前部吸収コア221に接合される前部吸収コア弾性部材241、および、当該中央領域において長手方向に沿って後部吸収コア223に接合される後部吸収コア弾性部材243を備える。吸収性シート部材20では、前部吸収コア弾性部材241が収縮することにより前部吸収コア221に長手方向の収縮力が作用し、後部吸収コア弾性部材243が収縮することにより後部吸収コア223に長手方向の収縮力が作用する。
【0034】
前部吸収コア221には、上記中央領域においてコアエッジ2211から長手方向に沿って伸びるスリット2212(すなわち、前部吸収コア221においてパルプ繊維やSAPが存在しない領域)が形成されており、スリット2212は前部吸収コア弾性部材241に重なる。したがって、前部吸収コア弾性部材241は、正確には、前部吸収コア221が設けられる領域において、前部吸収コア221の上面および下面を被覆する第1被覆シート211および第2被覆シート212に接合される(図2参照)。後部吸収コア223には、上記中央領域においてコアエッジ2231から長手方向に沿って伸びるスリット2232が形成されており、スリット2232は後部吸収コア弾性部材243に重なる。したがって、後部吸収コア弾性部材243は、正確には、後部吸収コア223が設けられる領域において、後部吸収コア223の上面および下面を被覆する第1被覆シート211および第2被覆シート212に接合される。
【0035】
前部吸収コア221および後部吸収コア223では、スリット2212,2232が、周囲の部位よりも剛性が低い弱化線として設けられるが、スリット2212,2232に代えて、周囲の部位よりもパルプ繊維等の厚さが薄い、あるいは、パルプ繊維等の密度が低い弱化線が、前部吸収コア弾性部材241および後部吸収コア弾性部材243に重ねて設けられてもよい。
【0036】
吸収性シート部材20は、また、図1および図3に示すように、開口25の左右方向の両側に長手方向に沿って配置される二対の(すなわち、左右2本ずつの)側部吸収コア弾性部材242を備える。側部吸収コア弾性部材242としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が用いられ、本実施の形態では、ポリウレタン糸が使用される。
【0037】
二対の側部吸収コア弾性部材242は、平面視において一対の側部吸収コア222に重なっており、側部吸収コア222のバックシート部材23に対向する面に配置される。本実施の形態では、各側部吸収コア弾性部材242は、側部吸収コア222とコア被覆シート21の第2被覆シート212との間に配置され、側部吸収コア222および第2被覆シート212に伸張状態にて接合されて側部吸収コア222に収縮力を収縮させる。側部吸収コア弾性部材242の長手方向の前側の部位は前部吸収コア221に重なっており、後側の部位は後部吸収コア223に重なっている。
【0038】
バックシート部材23は、図2ないし図4に示すように、撥水性または不透液性の外装シート231、外装シート231上(すなわち、外装シート231の着用者側)に設けられた非常に薄い吸収シート233、並びに、外装シート231および吸収シート233上に積層された親水性シート232を備える。図2ないし図4では、図示の都合上、吸収シート233を太実線にて示している。
【0039】
外装シート231としては、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルム、あるいは、これらの不織布とプラスチックフィルムとが積層された積層シートが利用され、バックシート部材23に到達した排泄物の水分等が、本体部2の外側にしみ出すのを防止する。外装シート231にプラスチックフィルムが利用される場合、吸収性物品1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0040】
吸収シート233は、2枚のシート、および、当該2枚のシートの間に設けられた高吸収性樹脂層を備え、高吸収性樹脂層は、SAP等の粒状の吸水性ポリマーをホットメルト接着剤により2枚のシートに固定することにより形成される。2枚のシートとしては、親水性繊維により形成される不織布、親水処理した疎水性繊維により形成される不織布、あるいは、ティッシュ等が利用される。高吸収性樹脂層(すなわち、粒状の吸水性ポリマー)は、上記2枚のシートの間で長手方向に伸びるストライプ状に配置される。換言すれば、長手方向に伸びる複数の高吸収性樹脂層のそれぞれの間に、吸水性ポリマーが存在しない領域が設けられる。そして、吸水性ポリマーが存在しない領域において2枚のシートが接合されることにより、複数の高吸収性樹脂層がそれぞれ封止される。
【0041】
なお、吸収シート233に代えて、SAP等の粒状の吸水性ポリマーを外装シート231上に散布し、ホットメルト接着剤等により外装シート231に接着することにより、高吸収性樹脂層が外装シート231上に直接形成されてもよい。また、親水性シート232としては、好ましくは、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)、あるいは、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された透液性の不織布が利用される。
【0042】
吸収性物品1では、上述のように、吸収性シート部材20の外縁部がバックシート部材23に接合され、吸収コア22のバックシート部材23と対向する面がバックシート部材23と非接合とされる。これにより、図2および図4に示すように、前部吸収コア221とバックシート部材23との間(すなわち、吸収性シート部材20の前部吸収コア221に対応する部位とバックシート部材23との間)に、開口25から長手方向の前側に広がる前部ポケット26が形成され、図3に示すように、一対の側部吸収コア222とバックシート部材23との間に、開口25から左右方向に広がる一対の側部ポケット28が形成される。また、図4に示すように、前部ポケット26と同様に、後部吸収コア223とバックシート部材23との間に、開口25から長手方向の後側に広がる後部ポケット27が形成される。一対の側部ポケット28は、前部ポケット26および後部ポケット27と連続している。
【0043】
図1に示す吸収性物品1では、着用者から排泄された軟便等の排泄物が、開口25を介してバックシート部材23へと向かい、バックシート部材23の露出領域234にて受けられる。露出領域234にて受けられた排泄物は、前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27の内部空間へと移動して収容される。本実施の形態では、開口25が吸収性シート部材20の長手方向の中央よりも後側に設けられており、上述のように、前部吸収コア221が後部吸収コア223よりも長くなっている。このため、前部ポケット26の長手方向の長さが後部ポケット27の長手方向の長さよりも大きくなり、前部ポケット26が、排泄物を主に収容する主ポケットとなる。
【0044】
吸収性物品1では、上述のように、一対の側部吸収コア222が一対の起立ギャザー部341の内面(すなわち、バックシート部材23と対向する面)にコア被覆シート21を介して接合される(図3参照)。このため、一対の起立ギャザー部弾性部材32a、および、もう一対の起立ギャザー部弾性部材32bが収縮することにより、起立ギャザー部341が大きく起立するとともに側部吸収コア222がバックシート部材23から大きく離間する。これにより、開口25近傍における吸収性シート部材20とバックシート部材23との間の厚さ方向の距離を大きく維持することができる。その結果、吸収性物品1では、排泄物を前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27に確実に収容して保持することができ、排泄物が着用者の肌に広範囲に亘って付着することが防止される。
【0045】
また、図3に示すように、側部ポケット28の側壁部281が、サイドシート3や外装シート231の内側に側部吸収コア222が接合された構造とされることにより、側部ポケット28の側壁部281の剛性を高くすることができる。これにより、側部ポケット28に収容された排泄物の重量による側壁部281の変形を抑制することができ、側壁部281の変形に起因する吸収性物品1の側方からの尿等の漏出(いわゆる、横漏れ)を抑制することができる。さらに、側部吸収コア222がパルプ繊維を含むことにより、側壁部281の剛性がより高くなる。開口25の左右両側では、側壁部281の内面に側部吸収コア222による吸収性を付与することにより、尿等の横漏れをさらに抑制することができる。
【0046】
このように、吸収性物品1は、着用者の肌の比較的狭い範囲のみを覆うにも拘わらず排泄物を確実に収容して保持することができるため、使い捨ておむつ等の外装物品の内側に取り付けられて容易に交換可能な補助吸収具に特に適している。
【0047】
ところで、吸収性物品1の着用者は、仰臥位や側臥位または座位等の体位を取ることが多いため、着用者の前側には体圧がほとんど加わらない。吸収性物品1では、上述のように、着用者の前側に配置される前部吸収コア221とバックシート部材23との間に形成された前部ポケット26が、排泄物を主に収容する主ポケットとされる。したがって、吸収性物品1は、仰臥位や側臥位または座位等、様々な体位を取る着用者からの排泄物の収容に特に適しているといえる。
【0048】
吸収性物品1では、長手方向に伸びる二対の側部吸収コア弾性部材242を一対の側部吸収コア222に重ねて配置することにより、側部ポケット28の側壁部281の剛性をさらに高くして側壁部281の変形をより一層抑制することができる。また、これらの側部吸収コア弾性部材242により一対の側部吸収コア222に収縮力を作用させることにより、側部吸収コア222をバックシート部材23からより大きく離間させることができる。さらに、側部吸収コア弾性部材242を側部吸収コア222のバックシート部材23に対向する面に配置することにより、側部吸収コア222をバックシート部材23からさらに大きく離間させることができる。なお、吸収性シート部材20には一対の側部吸収コア弾性部材242のみが設けられてもよい。この場合、一対の側部吸収コア弾性部材242は、左右方向において開口25近傍(すなわち、側部吸収コア222の左右方向の中央よりも開口25に近い側)に配置されることが好ましく、これにより、側部ポケット28の開口25近傍の部位をバックシート部材23からより大きく離間することができる。
【0049】
一対の起立ギャザー部341では、上述のように、長手方向に伸びる一対の起立ギャザー部弾性部材32cを、一対の起立ギャザー部341と一対の側部吸収コア222との接合領域344に重ねて配置することにより、側部ポケット28の側壁部281の剛性をさらに高くして側壁部281の変形をより一層抑制することができる。また、これらの起立ギャザー部弾性部材32cの収縮力により一対の起立ギャザー部341の起立を大きくし、側部吸収コア222をバックシート部材23からより大きく離間させることができる。
【0050】
吸収性物品1では、前部吸収コア221のコアエッジ2211、および、後部吸収コア223のコアエッジ2231が左右方向の中央にて長手方向に凹状となる凹状部を有することにより、左右方向の中央における開口25の長手方向の大きさを大きく確保しつつ、側部ポケット28の側壁部281の長手方向の長さを短くすることができる。これにより、側壁部281の剛性をさらに高めることができる。
【0051】
また、前部吸収コア221および後部吸収コア223の左右方向の中央領域に、長手方向に伸びる前部吸収コア弾性部材241および後部吸収コア弾性部材243が接合されて前部吸収コア221および後部吸収コア223に収縮力を作用させることにより、前部吸収コア221および後部吸収コア223の中央領域がバックシート部材23から大きく離間する。さらに、前部吸収コア221および後部吸収コア223の左右方向の中央領域に、前部吸収コア弾性部材241および後部吸収コア弾性部材243にそれぞれ重なるスリット2212,2232が設けられることにより、前部吸収コア221および後部吸収コア223が着用者側に凸状となるように変形しやすくなるため、前部吸収コア221および後部吸収コア223の中央領域がバックシート部材23からより大きく離間する。その結果、前部ポケット26および後部ポケット27の収容力が増大する。
【0052】
吸収性物品1では、上述のように、一対の側部吸収コア222が前部吸収コア221と長手方向に連続して一体的に形成されるため、起立ギャザー部341の起立により側部吸収コア222がバックシート部材23から大きく離間する際に、前部吸収コア221の開口25近傍の部位もバックシート部材23から大きく離間する。また、一対の側部吸収コア222が後部吸収コア223とも長手方向に連続して一体的に形成されるため、起立ギャザー部341の起立により側部吸収コア222がバックシート部材23から大きく離間する際に、後部吸収コア223の開口25近傍の部位もバックシート部材23から大きく離間する。その結果、前部ポケット26および後部ポケット27の収容力がより増大する。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0054】
例えば、吸収コア22は必ずしもパルプ繊維を含む必要はなく、比較的厚く剛性が高い透液性の不織布やプラスチックフィルム上にホットメルト接着剤等によりSAPが直接接合されたものが吸収コア22として利用されてもよい。
【0055】
吸収性物品1では、前部ポケット26および後部ポケット27の開口25近傍の部位をバックシート部材23から十分に離間させることができる場合は、例えば、前部吸収コア221、一対の側部吸収コア222および後部吸収コア223がそれぞれ個別に形成され、開口25を形成するように隣接して配置されて(すなわち、コア被覆シート21の開口の周囲に配置されて)コア被覆シート21により被覆されてもよい。また、側部吸収コア222をバックシート部材23から十分に離間させることができる場合は、例えば、側部吸収コア弾性部材242は側部吸収コア222の上側(着用者側)にて側部吸収コア222とコア被覆シート21の第1被覆シート211との間に接合されてもよい。
【0056】
吸収性物品1では、排泄物の収容力を大きくするためには、吸収性シート部材20とバックシート部材23との間に前部ポケット26、側部ポケット28および後部ポケット27が設けられることが好ましい。ただし、排泄物の収容力が十分確保されるのであれば、主ポケットである前部ポケット26、および、一対の側部ポケット28のみが吸収性シート部材20とバックシート部材23との間に設けられ、後部ポケット27は省略されてもよい。後部ポケット27が設けられない場合、吸収性シート部材20の開口25よりも後側の部位は、およそ全面に亘ってバックシート部材23に接合される。なお、この場合、吸収性シート部材20から後部吸収コア223が省略されてもよい。
【0057】
一方、吸収性物品1が、腹臥位等、前側に体圧が加わりやすい体位を取ることが多い着用者に使用される場合、後部吸収コア223とバックシート部材23との間に形成される後部ポケット27が主ポケットとされてもよい。後部ポケット27が主ポケットとされる場合、前部ポケット26や前部吸収コア221は省略されてもよい。
【0058】
換言すれば、吸収コア22のうち、着用者の前側および後側の一方に配置されてバックシート部材23との間で主ポケットを形成する部位を第1吸収コアと呼び、バックシート部材23との間で一対の側部ポケット28を形成する一対の側部吸収コア222を一対の第2吸収コアと呼び、着用者の前側および後側の他方に配置されて主ポケットおよび側部ポケット28ではない体圧が加わるもう1つのポケットをバックシート部材23との間に形成する部位を第3吸収コアと呼ぶと、吸収性物品1では、第3吸収コアおよび第3吸収コアとバックシート部材23との間のポケットは省略されてもよい。
【0059】
吸収性シート部材20では、コア被覆シート21は1枚のシート部材であってもよく、この場合、当該シート部材の吸収コア22の着用者側を覆う部位が第1被覆シート211に相当し、吸収コア22のバックシート部材23側を覆う部位が第2被覆シート212に相当する。また、コア被覆シート21は、少なくとも吸収コア22の着用者側を覆っていればよい。
【0060】
バックシート部材23は、少なくとも撥水性または不透液性の外装シート231を備えていればよく、親水性シート232および吸収シート233のいずれか一方または両方が省略されてもよい。
【0061】
上述の吸収性物品の構造は、外装物品の内側に取り付けられる補助吸収具以外にも、例えば、上端に胴部開口を有し、下部に一対の脚部開口を有するパンツタイプの使い捨ておむつや、着用者の腹側に当接する部位と背側に当接する部位とを腰回りで止着して着用するオープンタイプの使い捨ておむつに適用されてよい。
【符号の説明】
【0062】
1 吸収性物品
20 吸収性シート部材
21 コア被覆シート
23 バックシート部材
25 開口
26 前部ポケット
27 後部ポケット
28 側部ポケット
32a〜32c 起立ギャザー部弾性部材
221 前部吸収コア
222 側部吸収コア
223 後部吸収コア
241 前部吸収コア弾性部材
242 側部吸収コア弾性部材
243 後部吸収コア弾性部材
341 起立ギャザー部
342 折り返し線
343 自由端
344 接合領域
2211,2231 コアエッジ
2212,2232 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者からの排泄物を受ける吸収性物品であって、
バックシート部材と、
前記バックシート部材上に重ねられて前記バックシート部材に外縁部が接合され、前記バックシート部材が露出する開口を着用者の股間部に対向する位置に有する吸収性シート部材と、
前記吸収性シート部材の左右両側部上において長手方向に伸び、起立ギャザー弾性部材が長手方向に沿ってそれぞれ接合される一対の起立ギャザー部と、
を備え、
前記吸収性シート部材が、
前記着用者の前側および後側の一方に配置される第1吸収コアと、
前記開口の左右方向の両側に配置される一対の第2吸収コアと、
前記第1吸収コアおよび前記一対の第2吸収コアを被覆する透液性のコア被覆シートと、
を備え、
前記第1吸収コアと前記バックシート部材との間に前記開口から前記長手方向に広がる主ポケットが形成され、前記一対の第2吸収コアと前記バックシート部材との間に前記開口から前記左右方向に広がる一対の側部ポケットが形成され、前記一対の第2吸収コアが前記一対の起立ギャザー部に前記コア被覆シートを介して接合されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性シート部材が、前記一対の第2吸収コアの前記バックシート部材に対向する面に前記長手方向に沿って配置されて前記一対の第2吸収コアに収縮力を作用させる一対の第2吸収コア弾性部材をさらに備えることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記一対の起立ギャザー部の自由端が、前記一対の起立ギャザー部と前記一対の第2吸収コアとの接合領域から離間しており、前記起立ギャザー部弾性部材が前記自由端と前記接合領域との間に配置され、
前記一対の起立ギャザー部のそれぞれに、前記長手方向に沿って前記接合領域と重なりつつ他の起立ギャザー部弾性部材が接合されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の吸収性物品であって、
前記一対の起立ギャザー部の自由端が、前記一対の起立ギャザー部と前記一対の第2吸収コアとの接合領域から離間しており、前記一対の起立ギャザー部が、前記自由端と前記接合領域との間にて前記長手方向に伸びる折り返し線にて前記左右方向の外側に折り返されており、前記起立ギャザー部弾性部材が、前記一対の起立ギャザー部のそれぞれの前記自由端と前記折り返し線との間に配置されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記第1吸収コアの前記開口近傍または前記開口に接するコアエッジが、前記左右方向の中央にて前記長手方向に凹状となる凹状部を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記吸収性シート部材が、前記左右方向の中央領域において前記長手方向に沿って前記第1吸収コアに接合されて前記第1吸収コアに収縮力を作用させる第1吸収コア弾性部材をさらに備えることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収性物品であって、
前記第1吸収コアが、前記中央領域において前記第1吸収コア弾性部材に重なる弱化線を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記第1吸収コアと前記一対の第2吸収コアとが前記長手方向に連続して一体的に形成されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記第1吸収コアが、前記着用者の前側に配置される前部吸収コアであることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の吸収性物品であって、
前記吸収性シート部材が、前記着用者の前側および後側の他方に配置される第3吸収コアをさらに備え、
前記第3吸収コアと前記バックシート部材との間にもう1つのポケットが形成されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の吸収性物品であって、
着用者が着用する外装物品の内側に取り付けられる補助吸収具であることを特徴とする吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−224081(P2011−224081A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95143(P2010−95143)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】