説明

吸収性物品

【課題】表面の開孔部周辺に残った経血を吸収体側に誘導することによりドライタッチ感を維持し続けるようにする。
【解決手段】多数の開孔8…が形成された多孔プラスチック表面シート3と裏面シート2との間に吸収体4を介在し、多孔プラスチック表面シート3の下面側に親水性繊維層6を介在し、且つ少なくとも排血口対応部Hの両側に略長手方向に沿う左右一対の排血口対応エンボス11、11を形成する。前記多孔プラスチック表面シート3は、開孔8の周縁に沿って、それぞれ表面側と裏面側とに起立する起立縁部10を有する構造とする。前記排血口対応エンボス11、11で挟まれた領域には、吸収性物品1の長手方向に長手寸法を有する形状で開孔8…を形成し、排血口対応エンボス11、11の付加により多孔プラスチック表面シート3を幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した開孔8…から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは表面に残った経血を吸収体側に誘導することによりドライタッチ感を維持し続けるようにするとともに、所定部位以外では繊維が肌にまとわりつくのを防止した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
前記吸収性物品において、肌に対するドライタッチ感を満足するとともに、体液の吸収速度を速めるために、前記透液性表面シートとして熱融着性の疎水性多孔プラスチックシート(以下、メッシュシートともいう。)を使用し、前記透液性表面シートと吸収体との間にセカンドシートと言われる親水性繊維シートを介在し、所定のエンボスパターンにより前記メッシュシートとセカンドシートとを不連続に接合したものが提案されている。かかる構成を採用した吸収性物品としては、例えば下記特許文献1等を挙げることができる。
【0004】
一方、前記メッシュシートを表面材として使用した生理用ナプキンは、凹凸が無く肌に密着しビニール感がでて肌触りが悪いという不満があった。このような不満を解消するため、前記メッシュシートとして、開孔周縁に沿って表面側に起立する起立縁部を形成し、メッシュシートの表面に凹凸感を出して不織布のような肌触りとしたものが知られている。かかるメッシュシートとして例えば下記特許文献2には、シートの上面を形成する第1プラスチックフィルム層が互いに離間並行して一方向へ延びる第1平坦部分の縁部に、平坦部分の上面から上方へ立ち上がり概ね鋸歯状を呈して起状を繰り返す第1起立部分が形成される体液吸収性物品の透液性表面シートが開示されている。また、下記特許文献3には、微小開孔部は、ウェブの触感がほぼ柔軟かつ絹様となるように、表面変形部の各々の耐圧縮性および耐剪断性並びに観察者の皮膚との接触度を減少する比較的薄い不規則な形の花弁状部を有する噴火口状開孔部である微小開口化高分子ウェブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3989477号
【特許文献2】特開2000−342624号公報
【特許文献3】特許第2543502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2、3記載の表面シートでは、メッシュシートの開孔周縁に沿って表面側に起立する鋸歯状の第1起立部分又は花弁状部が形成されるため、図6に示されるように、この起立部分の周囲に溜まった経血は開孔を通じて吸収体に吸収されにくく、表面シート上に経血が残ってべた付き感や肌の汚れの原因となっていた。
【0007】
一方、排血口部及びその近傍以外の部位では、プラスチックシートから繊維シートの繊維の一部が突出していると、表面材としてプラスチックシートを使用したことの意義が低下し、繊維が肌にまとわりついて不快感を生じさせる場合があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、表面の開孔部周辺に残った経血を吸収体側に誘導することによりドライタッチ感を維持し続けるようにするとともに、所定の部位以外では繊維が肌にまとわりつくのを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、多数の開孔が形成された多孔プラスチック表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記多孔プラスチック表面シートの下面側に親水性繊維層が介在され、且つ少なくとも排血口対応部の両側に略長手方向に沿う左右一対の排血口対応エンボスが形成された吸収性物品において、
前記多孔プラスチック表面シートは、前記開孔の周縁に沿って、それぞれ表面側と裏面側とに起立する起立縁部を有する開孔が形成され、
前記排血口対応エンボスで挟まれた領域には、前記吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する形状で前記開孔を形成し、前記排血口対応エンボスの付加により前記多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔から前記親水性繊維層の繊維の一部を延出させてあることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、多数の開孔が形成された多孔プラスチック表面シートとして、前記開孔の周縁に沿って、それぞれ表面側と裏面側とに起立する起立縁部を有する開孔が形成された構造とする。そして、排血口対応部エンボスで挟まれた領域には、吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する形状で前記開孔を形成し、前記排血口対応エンボスの付加により前記多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させている。このため、表面側に起立する起立縁部を有する開孔の周囲に溜まった経血は、裏面側に起立する起立縁部を有する開孔から延出した親水性繊維層の繊維の毛管現象によって当該開孔に引き込まれ、吸収体に吸収されるようになる。従って、表面シート上に経血が残留しなくなり、ドライタッチ感が維持できるようになる。
【0011】
一方、排血口対応エンボスで挟まれた領域以外の領域では、排血口対応エンボスの付加による表面シートの伸長等が起こりにくいため、開孔から親水性繊維層の繊維の一部が延出せず、繊維が肌にまとわりつくのが防止できる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記排血口対応エンボスの後部には、前記排血口対応エンボス間より幅狭の間隔で、略長手方向に沿う左右一対の臀部溝対応エンボスが形成され、
前記臀部溝対応エンボスで挟まれた領域には、前記吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する形状で前記開孔を形成し、前記臀部溝対応エンボスの付加により前記多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔から前記親水性繊維層の繊維の一部を延出させてある請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明は、前記排血口対応エンボスの後部に、この排血口対応エンボス間より幅狭の間隔で、略長手方向に沿う左右一対の臀部溝対応エンボスが形成されたものであり、排血口対応エンボス間の開孔と同様に、前記臀部溝対応エンボスで挟まれた領域においても、吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する形状で前記開孔を形成し、前記臀部溝対応エンボスの付加により前記多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔から前記親水性繊維層の繊維の一部を延出させるようにしたものである。これにより、排血口部から臀部溝を伝って表面シート3の後側に残留した経血を捕捉することができるようになる。また、臀部溝対応エンボスは、前記排血口対応エンボス間より幅狭の間隔で形成されるため、多孔プラスチック表面シートに強い張力が生じ、より長い繊維が開孔から延出するようになる。このため、開孔から延出した繊維が臀部溝の奥まで入り込み、この繊維によって肌を伝う経血を直接捕捉することができるようになる。
【0014】
請求項3に係る本発明として、少なくとも前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域の前記開孔は、前記吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する楕円形で形成してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域の開孔を、吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する楕円形で形成することにより、エンボスの付加により多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させたとき、幅方向に拡幅した開孔形状がほぼ円形になり、繊維が延出しやすくなる。
【0016】
請求項4に係る本発明として、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域以外の領域には、長手寸法と幅寸法とがほぼ同等の形状で前記開孔を形成してある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、前記エンボスで挟まれた領域以外の領域には、円形等の長手寸法と幅寸法とがほぼ同等の形状で開孔を形成しているため、この領域の肌あたりが柔らかくなる。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記吸収体は、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に、使用面側に高い吸収体の中高部を形成してある請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、前記吸収体として、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に、使用面側に高い吸収体の中高部を形成したものを使用することにより、エンボスの付加により多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させるとき、多孔プラスチック表面シートに大きな張力がかかり、開孔が開きやすくなるので、開孔から繊維の一部が延出しやすくなる。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記親水性繊維層には、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に起毛処理を施してある請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明では、前記親水性繊維層に、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に起毛処理を施すことにより、エンボス付加時に開孔から繊維の一部が延出しやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、表面の開孔部周辺に残った経血を吸収体側に誘導することによりドライタッチ感を維持し続けるようにするとともに、所定の部位以外では繊維が肌にまとわりつくのを防止した吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】表面側の要部拡大断面図である。
【図4】多孔プラスチック表面シート3の平面図である。
【図5】他の形態に係る生理用ナプキン1’の展開図である。
【図6】従来例に係る表面側の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
生理用ナプキン1は、主にはパンティライナー、生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッドなどの用途に供されるもので、例えば図1に示されるように、不透液性裏面シート2と、多数の開孔8、8…が形成された疎水性の多孔プラスチック表面シート3との間に、吸収体4または同図に示されるように、図示例ではクレープ紙5によって囲繞された吸収体4が介在されるとともに、前記多孔プラスチック表面シート3と吸収体4との間に親水性繊維シート6を配置した構造となっている。また、表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って形成されたサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7、7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。前記吸収体4の周囲においては、前記不透液性裏面シート2と多孔プラスチック表面シート3とがホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されている。
【0026】
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0027】
前記多孔プラスチック表面シート3としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の素材シートが好適に使用されるが、ポリエステルや、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、EVA、アクリル樹脂なども使用することができる。
【0028】
前記多孔プラスチック表面シート3の面には、排血口対応部などを区画し、表面側にきっちりと膨出させるとともに、吸収した体液を封じ込める、および後述する吸収体の中高部を形成した場合、該中高部を所定位置に保持する等のために、少なくとも排血口対応部Hの両側に略長手方向に沿う左右一対の排血口対応エンボス11、11が形成されている。なお、図1に示される例では、その前後に装飾等のため適宜の形状で装飾エンボスが形成されている。
【0029】
前記不透液性裏面シート2と多孔プラスチック表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0030】
また、前記吸収体4に合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
前記多孔プラスチック表面シート3と吸収体4との間に配置される親水性繊維シート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。前記親水性繊維シート6としては、繊維層を有するものであれば限定はないが、好ましくは不織布をそのまま用いることができる。不織布は製法によってスパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布等、種々の不織布が存在するが、これらの不織布の中でもエアースルー不織布を使用するのが望ましい。
【0032】
後段で詳述するように前記多孔プラスチック表面シート3の開孔8、8…から親水性繊維シート6の繊維の一部を延出させるため、前記親水性繊維シート6が短繊維を含んでいることが必要である。具体的には、長さ2mm以下、好ましくは1mm以下の短繊維を全体重量(親水性繊維シート6の全重量)に対して30〜100%、好ましくは60〜80%含んでいることが望ましい。また、親水性繊維層6の厚みは0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.4mmとし、坪量は10〜50g/m、好ましくは25〜40g/mとする。
【0033】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0034】
本発明に係る生理用ナプキン1に使用される前記多孔プラスチック表面シート3は、前記開孔8の周縁に沿って、それぞれ表面側と裏面側とに起立する起立縁部10を有する開孔8、8…が複数形成されている。即ち、図3に示されるように、表面側に起立する起立縁部10Aを有する開孔8Aと、裏面側に起立する起立縁部10Bを有する開孔8Bとがそれぞれ複数形成されている。
【0035】
前記開孔8の大きさは、表面側に起立する起立縁部10Aを有する開孔8Aと裏面側に起立する起立縁部10Bを有する開孔8Bとを同等の大きさで形成することも可能であるが、前記開孔8Aと8Bとを異なる大きさで形成してもよい。図3に示される例では、前記開孔8Aを開孔8Bより小さい寸法で形成している。具体的に前記開孔8Aの長手方向寸法は0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmであり、その開孔数は100〜600個/cm、好ましくは300〜500個/cm程度であるのが望ましい。また前記開孔8Bの長手方向寸法は0.5〜3.0mm、好ましくは0.6〜2.0mmであり、その開孔数は10〜30個/cm、好ましくは15〜20個/cm程度であるのが望ましい。
【0036】
このような開孔処理を施すには、シートの裏面側からのエンボス(開孔8A)を施すための多数のピンエンボスが形成されたエンボスロールとアンビルロールとの間に前記表面シート3を通過させた後、シートの表面側からのエンボス(開孔8B)を施すための多数のピンエンボスが形成されたエンボスロールとアンビルロールとの間に前記表面シート3を通過させることにより、又は多数のピンエンボスがそれぞれ形成された一対のエンボスロール間に、前記表面シート3を通過させることにより、前述の通りそれぞれ表面側と裏面側とに起立する起立縁部10A、10Bを有する開孔8A、8Bを形成することができる。
【0037】
本生理用ナプキン1では、図3に詳細に示されるように、前記排血口対応エンボス11、11で挟まれた領域には、生理用ナプキン1の長手方向に長手寸法を有する形状で多孔プラスチック表面シート3の開孔8、8…を形成し、前記排血口対応エンボス11の付加により前記多孔プラスチック表面シート3を幅方向に伸長させた条件下で、この領域の幅方向に拡幅した前記開孔8、8…から前記親水性繊維層6の繊維の一部を延出させてある。このため、表面側に起立する起立縁部10Aを有する開孔8Aの周囲に溜まった経血は、裏面側に起立する起立縁部10Bを有する開孔8Bから表面側に延出した親水性繊維層6の繊維の毛管現象によって当該開孔8Bに引き込まれ、吸収体4に吸収されるようになる。従って、多孔プラスチック表面シート3上に経血が残留しなくなり、常時、ドライタッチ感が維持できるようになる。また、表面側に起立する起立縁部10Aを有する開孔8Aから繊維を延出させることにより、起立縁部10Aの先端が直接肌に接触するのを軽減できるため、不織布様なソフトな肌触り感が得られるようになる。
【0038】
一方、排血口対応エンボス11、11で挟まれた領域以外の領域では、排血口対応エンボス11、11の付加による多孔プラスチック表面シート3の伸長等が起こり難いため、開孔8…から繊維がほとんど延出しない。従ってこの領域において繊維が肌にまとわりつくのを防止することができる。
【0039】
前記開孔8の形状は、少なくとも前記排血口対応エンボス11、11で挟まれた領域(開孔から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる領域)では、楕円形、長方形、菱形等の生理用ナプキン1の長手方向に長手寸法を有する形状で形成する。この内、楕円形で形成することが望ましい。楕円形で形成することにより、図4に示されるように、両側からエンボス付加による張力を受けた場合、楕円形の開孔8、8…が二点鎖線で示されるように円形に変形するため、開孔8、8…から親水性繊維層6の繊維の一部が延出しやすくなる。仮に、前記開口8を円形で形成した場合は、エンボス付加による張力を受けた場合、横長の楕円形となってしまうため、開口8から繊維の一部が延出しずらくなってしまう。
【0040】
前記開孔形状は、シート全面に亘って同一の開孔形状としても良いし、前記排血口対応エンボス11、11で挟まれた領域(開孔から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる領域)と、それ以外の領域(開孔から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる領域以外の領域)とで異ならせても良い。開孔形状を領域毎に異ならせる場合、開孔から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる領域以外の領域では、肌あたりを良くするため、円形、正方形等の長手寸法と幅寸法とがほぼ同等の形状で形成することが好ましい。
【0041】
前記吸収体4は、図2に示されるように、前記開孔9、9…から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に、使用面側に高い吸収体の中高部4Aを形成しておくことが好ましい。前記中高部4Aを設ける場合、排血口対応エンボス11は、この中高部4Aを所定位置に保持するために、中高部4Aの周縁に沿って形成する。この中高部4Aによって表面側に高い段差ができるので、エンボス11、11の付加により多孔プラスチック表面シート3を幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した開孔8、8…から親水性繊維層6の繊維の一部がより一層延出しやすくなる。
【0042】
一方、前記親水性繊維層6の表面側には、前記開孔8、8…から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に起毛処理を施すことが好ましい。前記起毛処理は、親水性繊維層6を起毛機に通し、その表面に起毛針を当てて掻くことにより施すことができる。これにより、親水性繊維層6の表面側の繊維が起立するようになるので、開孔8、8…から親水性繊維層6の繊維の一部が延出しやすくなる。
【0043】
上述の構成は、図5に示されるように他の形態に係る生理用ナプキン1’にも採用可能である。具体的に前記生理用ナプキン1’では、排血口対応エンボス11、11の後部に、該排血口対応エンボス11、11間より幅狭の間隔で、略長手方向に沿う左右一対の臀部溝対応エンボス12、12が形成されている。図示例では、前記臀部溝対応エンボス12、12は前記排血口対応エンボス11、11の後端部から連続して形成され、この排血口対応エンボス11、11の前端及び臀部溝対応エンボス12、12の後端がそれぞれ弧状エンボスで接続されることにより、全体として閉曲線状に形成されている。
【0044】
より具体的には、前記排血口対応エンボス11、11及び臀部溝対応エンボス12、12でそれぞれ囲まれた領域には、生理用ナプキン1の長手方向に長手寸法を有する楕円形状等で前記開孔8、8…を形成し、排血口対応エンボス11、11及び臀部溝対応エンボス12、12の付加により多孔プラスチック表面シート3を幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔8、8…から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させている。
【0045】
前記臀部溝対応エンボス12、12で挟まれた領域において前記開孔8、8…から親水性繊維層6の繊維の一部を延出させることにより、排血口部から臀部溝を伝って表面シート3の後側に残留した経血を捕捉することができるようになる。また、臀部溝対応エンボス12、12間は排血口対応エンボス11、11間より幅狭の間隔で形成されるため、臀部溝対応エンボス12、12を付加する際に多孔プラスチック表面シート3に強い張力が生じ、開孔から延出する繊維を排血口部のものより長くすることができる。このため、開孔から延出した繊維が臀部溝の奥まで入り込み、この繊維によって肌を伝う経血を直接捕捉することができるようになる。
【0046】
なお、他の形態例に係る生理用ナプキン1’においても、上記と同様に、前記臀部溝対応エンボス12、12間に吸収体4の中高部を形成したり、臀部溝対応エンボス12、12間の親水性繊維層6に起毛処理を施したりすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1・1’…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…多孔プラスチック表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…親水性繊維層、7…サイド不織布、8…開孔、10…開孔縁部、11…排血口対応エンボス、12…臀部溝対応エンボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開孔が形成された多孔プラスチック表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記多孔プラスチック表面シートの下面側に親水性繊維層が介在され、且つ少なくとも排血口対応部の両側に略長手方向に沿う左右一対の排血口対応エンボスが形成された吸収性物品において、
前記多孔プラスチック表面シートは、前記開孔の周縁に沿って、それぞれ表面側と裏面側とに起立する起立縁部を有する開孔が形成され、
前記排血口対応エンボスで挟まれた領域には、前記吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する形状で前記開孔を形成し、前記排血口対応エンボスの付加により前記多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔から前記親水性繊維層の繊維の一部を延出させてあることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記排血口対応エンボスの後部には、前記排血口対応エンボス間より幅狭の間隔で、略長手方向に沿う左右一対の臀部溝対応エンボスが形成され、
前記臀部溝対応エンボスで挟まれた領域には、前記吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する形状で前記開孔を形成し、前記臀部溝対応エンボスの付加により前記多孔プラスチック表面シートを幅方向に伸長させた条件下で、幅方向に拡幅した前記開孔から前記親水性繊維層の繊維の一部を延出させてある請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
少なくとも前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域の前記開孔は、前記吸収性物品の長手方向に長手寸法を有する楕円形で形成してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域以外の領域には、長手寸法と幅寸法とがほぼ同等の形状で前記開孔を形成してある請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に、使用面側に高い吸収体の中高部を形成してある請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記親水性繊維層には、前記開孔から親水性繊維層の繊維の一部を延出させる領域に対応する範囲に起毛処理を施してある請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10884(P2012−10884A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149398(P2010−149398)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】