説明

吸収性物品

【課題】身体の動きに追従して身体との間に隙間が形成されにくく安定した密着性を確保するとともに、立体ギャザーが内側に倒れにくくする。
【解決手段】透液性表面シート3と裏面シート2との間に吸収体4が介在されるとともに、使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成された吸収性物品である。前記立体ギャザーBSは、少なくとも体液排出部位Hを含む股間部領域A1において、断面が中空のループ状立体ギャザー20と、その幅方向外側を起立基端とし先端が自由端とされた自由端状立体ギャザー21とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品においては、排泄された体液の横漏れを防止するため、吸収性物品の使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーが種々の形態で形成されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、表面層における長手方向の両側部に互いに離間して形成され、シート状部材により中空部を有するように構成される一対のギャザーを備え、前記一対のギャザーそれぞれは、前記シート状部材が、吸収性物品の肌当接面側に凸となるような立体形状部を有し、該立体形状部は、吸収性物品の長手方向に延びるように形成された接合部により表面層及び/又は裏面層に接合されるとともに、中空部を構成するようにして形成され、前記接合部は、前記立体形状部における幅方向内方側の端部を形成する第1接合端部と、該立体形状部における幅方向外方側の端部を形成する第2接合端部とを含み、前記立体形状部における前記第1接合端部から前記第2接合端部までの長さL1と、前記第1接合端部と前記第2接合端部との間の距離である接合端部間距離L2との比(L1/L2)は2以上である吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、吸収性本体の長手方向両側部それぞれに帯状の伸縮性シートを接合して形成された中空のループ状の防漏壁を備え、前記防漏壁それぞれは、装着者の体液排泄部に当接される排泄部領域を含む、該配設領域からその後方にかけての領域及び該排泄部領域からその前方にかけての領域の少なくとも何れか一方に、前記伸縮性シートの他側部が接合された接合部が、前記排泄部領域からその後方にかけての領域及び該排泄部領域からその前方にかけての領域の少なくとも何れか一方に、吸収性物品の幅方向の内側に向かって凸状に湾曲又は屈曲している内方凸部を有し、さらに前記伸縮性シートの一側部が接合された接合部が、他側部側の接合部が内方凸部を形成している部分において、吸収性物品の幅方向の外方に向かって凸状に湾曲又は屈曲している外方凸部を有していることにより、該防漏壁の高さが部分的に高い高壁部を有している吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−6065号公報
【特許文献2】特開2010−110558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、立体ギャザーの幅方向断面形状が接合端部間距離L2よりもギャザーの立体形状における最大幅L3の方が大きい略Ω形状を有しているため、中空の立体形状部は必ずしも十分な高さで形成され難く、身体との密着性が失われて横漏れを生じるおそれがあった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、伸縮性シートの接合部を蛇行させることによって中空のループ状の防漏壁の高さを部分的に高くした高壁部を形成しているが、この高壁部が装着時に内側に倒れる可能性があり、この場合には吸収体の上面が伸縮性シートによって覆われるため、体液の吸収機能が低下するおそれがあった。上記特許文献1記載の吸収性物品においても、特に吸収性物品の長手方向両端部側における接合端部間距離を吸収性物品の長手方向中央部における接合端部間距離よりも大きく形成した場合には同様の問題が生じ得る。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品において、身体の動きに追従して身体との間に隙間が形成されにくく安定した密着性を確保するとともに、立体ギャザーが内側に倒れにくくした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、少なくとも体液排出部位を含む股間部領域において、断面が中空のループ状立体ギャザーと、その幅方向外側を起立基端とし先端が自由端とされた自由端状立体ギャザーとから構成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、吸収性物品の使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って形成される立体ギャザーとして、少なくとも体液排出部位を含む股間部領域において、断面が中空のループ状立体ギャザーと、その幅方向外側を起立基端とし先端が自由端とされた自由端状立体ギャザーとによって構成されている。
【0012】
このため、身体の動きにより不意に立体ギャザーと身体とが離れる方向に動いた場合でも、動きに対する自由度が高い自由端状立体ギャザーが身体に追従して身体との間に隙間を作らず、安定した密着性が確保されるようになる。また、通常の装着時には、ループ状立体ギャザーが安定して身体との密着性を保つことができる。
【0013】
さらに、自由端状立体ギャザーがループ状立体ギャザーの外側に形成されているため、自由端状立体ギャザーが吸収体側に倒れ込むのを抑制することができ、体液の吸収機能を低下させることがなくなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記股間部領域より後側及び前側の領域において、前記自由端状立体ギャザーの先端部が前記ループ状立体ギャザーの表面側に接合されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、股間部領域より後側及び前側の領域において、自由端状立体ギャザーの先端部をループ状立体ギャザーの表面側に接合してあるため、おしり部分や下腹部分の違和感を低減できる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記自由端状立体ギャザーの起立高さは前記ループ状立体ギャザーの起立高さより高く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、自由端状立体ギャザーの起立高さをループ状立体ギャザーの起立高さより高く形成してあるため、自由端状立体ギャザーの身体への追従性が向上するようになる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記自由端状立体ギャザーを前記ループ状立体ギャザーの表面側に倒した状態で、前記自由端状立体ギャザーはループ状立体ギャザーの幅方向半分以上を覆うように形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、自由端状立体ギャザーをループ状立体ギャザーの幅方向半分以上を覆うように形成することにより、股間部領域では身体への追従性が向上するとともに、その前後領域ではループ状立体ギャザーから外側への体液の漏れが低減できる。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記ループ状立体ギャザーと自由端状立体ギャザーとはそれぞれ別体のシートによって構成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、ループ状立体ギャザーと自由端状立体ギャザーとをそれぞれ別体のシートで構成することにより、各立体ギャザーに応じた機能を備えた性質のものを採用することができるようになる。
【0022】
請求項6に係る本発明として、前記ループ状立体ギャザーは親水性を有し、前記自由端状立体ギャザーは撥水性を有するシートによって構成されている請求項5記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項6記載の発明は、ループ状立体ギャザーと自由端状立体ギャザーとをそれぞれ別体のシートで構成した場合、ループ状立体ギャザーを親水性、自由端状立体ギャザーを撥水性としたものである。これにより、体液排出部位側から流れてきた体液を内側の親水性を有するループ状立体ギャザーで吸収できるとともに、その外側の撥水性を有する自由端状立体ギャザーによってループ状立体ギャザーで吸収した体液のしみ出しや漏れが防止できるようになる。
【0024】
請求項7に係る本発明として、前記ループ状立体ギャザーのうち少なくとも幅方向内側には、部材長手方向に沿ってシート状吸収体が配設されている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
請求項8に係る本発明として、前記シート状吸収体が配設された部分のループ状立体ギャザーには、複数の開孔が設けられている請求項7記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記請求項7、8記載の発明では、ループ状立体ギャザーのうち少なくとも幅方向内側に、部材長手方向に沿ってシート状吸収体を配設し、必要に応じて前記シート状吸収体が配設された部分に複数の開孔を設けることにより、体液排出部位側から流れてきた体液をループ状立体ギャザーで確実に吸収するようにしている。
【発明の効果】
【0027】
以上詳説のとおり本発明によれば、使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品において、身体の動きに追従して身体との間に隙間が形成されにくく安定した密着性を確保するとともに、立体ギャザーが内側に倒れにくくした吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図である。
【図5】立体ギャザーBSの他の形態例を示す横断面図である。
【図6】立体ギャザーBSの他の形態例を示す横断面図である。
【図7】立体ギャザーBSの他の形態例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0030】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位Hから前後方向に所定の区間内において表面側(使用面側)に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するギャザー形成用不織布6とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延在している前記不透液性裏面シート2と、ギャザー形成用不織布6とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とギャザー形成用不織布6とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分に第2ウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0031】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非使用面側(外面)には1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0032】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、経血やおりもの等(以下、まとめて体液という。)が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0033】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0034】
本生理用ナプキン1の表面には、適宜の形状で圧搾溝8を形成することができる。図1に示される例では、ナプキン1の長手方向に細長く、かつ周方向に閉合する圧搾溝8が形成されている。
【0035】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、前記立体ギャザーBS、BSは前記透液性表面シート3とは別のギャザー形成用不織布6によって形成され、立体ギャザーBS、BSの外側には、前記不透液性裏面シート2の表面側に外側に延びるギャザー形成用不織布6が積層されている。これらギャザー形成用不織布6は、立体ギャザーの機能、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的等に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。かかる不織布6としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0036】
前記ギャザー形成用不織布6は、図2に示されるように、不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記ギャザー形成用不織布6と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側位置に第2ウイング状フラップW、Wを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよび第2ウイング状フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層10…,11…を備え、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。
【0037】
以下、前記立体ギャザーBSについて詳述する。
【0038】
〔立体ギャザーBSについて〕
図2に示されるように、立体ギャザーBSは、少なくとも体液排出部位Hを含む股間部領域A1において、断面が中空のループ状立体ギャザー20と、その生理用ナプキン1の幅方向外側を起立基端とし先端が自由端とされた自由端状立体ギャザー21とから構成されている。
【0039】
詳細には、図2に示されるように、ギャザー形成用不織布6のナプキン幅方向内側が二重に折り返され、この二重シート部分を内側接合部22の内縁部を基端としてナプキン幅方向外側であって表面から突出する起立側にループ状に折曲げるとともに外側接合部23で再び表面側に接合することによって、断面が中空のループ状とされたループ状立体ギャザー20を形成し、これに連続して前記外側接合部23の外縁部を起立基端として表面から突出する起立側に折り返すことによって、二重シート部分の折り返し部を自由端の先端とした自由端状立体ギャザー21を形成している。各立体ギャザーBSは、図2に示される断面視で、前記内側接合部22の内側縁から外側接合部23の外側縁までの離隔幅とほぼ同等の幅で形成されている。
【0040】
前記股間部領域A1とは、少なくとも体液排出部位Hを含む領域であって、後端が臀部の溝の開始付近、前端が下腹部にかかる付近までの領域を指す。
【0041】
また、図3に示されるように、前記股間部領域A1より後側領域A2及び前側領域A3では、自由端状立体ギャザー21の先端部をループ状立体ギャザー20の表面側に接合する接合部24が設けられ、自由端状立体ギャザー21の先端部の起立が抑制されている。
【0042】
なお、図4に示されるように、前記後側領域A2の後端部及び前側領域A3の前端部では、ループ状立体ギャザー20及び自由端状立体ギャザー21を折り畳むようにして積層した上で、適宜、接合部30、30で接合することにより、ループ状立体ギャザー20及び自由端状立体ギャザー21の起立をなくした非起立部とされている。ループ状立体ギャザー20を折り畳む際、内側接合部22近傍の起立基端より内側に突出しないように折り畳み、折り畳むことによる弛み分は全て外側接合部23の外側に突出させるようにすることが望ましい。これにより、股間部領域A1等において、ループ状立体ギャザー20が身体に押し付けられることによって内側に倒れるのが防止できる。
【0043】
一方、図2及び図3に示されるように、ループ状立体ギャザー20及び自由端状立体ギャザー21にはそれぞれ、前記ギャザー形成用不織布6の二重シート内部の所定位置に、表面から突出する起立側中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された複数条の弾性伸縮部材25…、26…が配設されている。
【0044】
このように前記立体ギャザーBSをループ状立体ギャザー20と自由端状立体ギャザー21とから構成することによって、身体の動きにより不意に立体ギャザーBSと身体とが離れる方向に動いた場合でも、動きに対する自由度が高い自由端状立体ギャザー21が身体に追従して身体との間に隙間を作らず、安定した密着性が確保できるようになる。このため、体液の漏れ防止効果に優れるようになる。
【0045】
また、通常の装着時には、ループ状立体ギャザー20によって安定して身体との密着性が保たれるので、漏れ防止効果に優れるようになる。
【0046】
さらに、自由端状立体ギャザー21がループ状立体ギャザー20の外側に形成されているため、自由端状立体ギャザー21が吸収体側(ナプキン幅方向内側)に倒れ込むのが抑制でき、体液の吸収機能を低下するおそれがなくなる。
【0047】
一方、図2に示されるように、股間部領域A1において、自由端状立体ギャザー21の起立高さT2は、ループ状立体ギャザー20の起立高さT1より高く形成することが好ましい(T1、T2は、いずれも生理用ナプキン1の表面から起立頂部までの高さ。)。これにより、ループ状立体ギャザー20から大きくずれるような身体の動きがあっても、自由端状立体ギャザー21が身体の動きに追従できるため、身体との間に隙間が形成されにくくなる。
【0048】
また、自由端状立体ギャザー21をループ状立体ギャザー20の表面側に倒した状態で、自由端状立体ギャザー21はループ状立体ギャザー20の幅方向半分以上を覆うように形成することが好ましい。
【0049】
一方、図3に示されるように、股間部領域A1の後側領域A2及び前側領域A3において自由端状立体ギャザー21の先端部をループ状立体ギャザー20の表面側に接合する際には、図示例のように、自由端状立体ギャザー21とループ状立体ギャザー20との間にやや外側に広がった空間部27が形成されるように接合部24の位置を調整することが好ましい。これにより、一体化された立体ギャザーBSの高さ方向の頂部が、立体ギャザーBSの幅方向中心より外側に形成されるため、この立体ギャザーBSが身体に押し付けられたとき、全体的に外側に押しひろげられるように変形するため、立体ギャザーBSが内側に倒れ込むのが防止でき、体液の吸収面を狭めて吸収機能を低下するのが防止できる。
【0050】
立体ギャザーBSの他の形態例として、上記形態例ではループ状立体ギャザー20及び自由端状立体ギャザー21を連続する同一のギャザー形成用不織布6によって形成していたが、図5に示されるように、ループ状立体ギャザー20と自由端状立体ギャザー21とをそれぞれ別体のシートによって構成することもできる。詳細には、ナプキン幅方向外側から内側方向に延在した自由端状立体ギャザー形成用不織布6Aが内側位置で表面から突出する起立側に折り曲げられるとともに、その先端部が二重に折り返され、この二重シート部分によって自由端状立体ギャザー21が形成されている。また、二重シートに折り返したループ状立体ギャザー形成用不織布6Bの折り返し基端側が透液性表面シート3と前記自由端状立体ギャザー形成用不織布6Aの内側折り返し部分との間に介在されるとともに、幅方向内側位置で表面から突出する起立側であってナプキン幅方向外側にループ状に折り曲げられ、二重シートの折り返し先端部が内側に折り曲げられ、この折曲げ部分が前記自由端状立体ギャザー21より内側位置であって自由端状立体ギャザー形成用不織布6Aの表面に接合されている。
【0051】
自由端状立体ギャザー形成用不織布6A、ループ状立体ギャザー形成用不織布6Bは、同じ性質を有するものを用いてもよいが、ループ状立体ギャザー形成用不織布6Bは親水性を有し、自由端状立体ギャザー形成用不織布6Aは撥水性を有するものを用いることができる。これによって、体液排出部位H側から流れてきた経血を内側の親水性を有するループ状立体ギャザー20で吸収できるとともに、その外側の撥水性を有する自由端状立体ギャザー21によってループ状立体ギャザー20で吸収した体液のしみ出しや漏れが防止できる。
【0052】
前記不織布6A、6Bとしては、両方とも親水性又は撥水性を有するものを用いることもできる。親水性の不織布としては、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維からなる親水処理不織布を用いることができる。また、撥水性の不織布としては、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることができる。
【0053】
なお、生理用ナプキン1の外縁にまで延在させる不織布として、自由端状立体ギャザー形成用不織布6Aの代わりにループ状立体ギャザー形成用不織布6Bとしてもよいし、これらの不織布6A、6Bとは別体の不織布を配設してもよい。
【0054】
図6に示されるように、ループ状立体ギャザー20のうち少なくとも幅方向内側には、薄いシート状吸収体28を部材長手方向に沿って配設することができる。図示例では、前記シート状吸収体28は、二重シートに折り返されたループ状立体ギャザー形成用不織布6Bの二重シート間に介在させている。前記シート状吸収体28は、図示例では、ループ状立体ギャザー20のほぼ半分の幅方向内側に設けられているが、幅方向外側にも延在して配設するようにしてもよい。このとき、ループ状立体ギャザー形成用不織布6Bとして透液性の素材を使用するか、図7に示されるように、シート状吸収体28が配設された部分のループ状立体ギャザー形成用不織布6Bに複数の開孔29、29…を設けることが好ましい。図示例では、前記開孔29、29…は、二重シートのループ状立体ギャザー形成用不織布6Bのうち、シート状吸収体28より表面側の不織布に対して設けられている。
【0055】
前記シート状吸収体28を配設することにより、体液排出部位H側から流れてきた経血等をループ状立体ギャザー20で確実に吸収することができ、ループ状立体ギャザー形成用不織布6Bに開孔29、29…を設けることにより、吸収効果をより一層高めることができるようになる。
【0056】
シート状吸収体28としては、例えばエアレイド等の薄い吸収体、好ましくは1mm以下の厚みとすたものを用いるのが望ましい。また、前記シート状吸収体28としてはクレープ紙などを用いるようにしてもよい。
【0057】
前記シート状吸収体28をループ状立体ギャザー20のほぼ内側半分に配設した場合、前述のように自由端状立体ギャザー21をループ状立体ギャザー20の表面側に倒した状態で、自由端状立体ギャザー21がループ状立体ギャザー20の幅方向半分以上を覆うように形成すると、シート状吸収体28に吸収された体液が幅方向外側に漏れ出るのを防止するという点でより有効である。
【符号の説明】
【0058】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…ギャザー形成用不織布、20…ループ状立体ギャザー、21…自由端状立体ギャザー、25・26…弾性伸縮部材、BS…立体ギャザー、W…ウイング状フラップ、W…第2ウイング状フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、使用面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って使用面側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、少なくとも体液排出部位を含む股間部領域において、断面が中空のループ状立体ギャザーと、その幅方向外側を起立基端とし先端が自由端とされた自由端状立体ギャザーとから構成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記股間部領域より後側及び前側の領域において、前記自由端状立体ギャザーの先端部が前記ループ状立体ギャザーの表面側に接合されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記自由端状立体ギャザーの起立高さは前記ループ状立体ギャザーの起立高さより高く形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記自由端状立体ギャザーを前記ループ状立体ギャザーの表面側に倒した状態で、前記自由端状立体ギャザーはループ状立体ギャザーの幅方向半分以上を覆うように形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ループ状立体ギャザーと自由端状立体ギャザーとはそれぞれ別体のシートによって構成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ループ状立体ギャザーは親水性を有し、前記自由端状立体ギャザーは撥水性を有するシートによって構成されている請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ループ状立体ギャザーのうち少なくとも幅方向内側には、部材長手方向に沿ってシート状吸収体が配設されている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記シート状吸収体が配設された部分のループ状立体ギャザーには、複数の開孔が設けられている請求項7記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−205638(P2012−205638A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71668(P2011−71668)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】