説明

吸収性物品

【課題】繊維タッチ感を損なわずに、表面の液残りを生じ難くする。
【解決手段】プラスチックフィルムからなる表面シート3と不透液性の裏面シート2との間に吸収体4が介在された生理用ナプキン1である。前記表面シート3は、開孔周縁に沿って前記プラスチックフィルムの基面3aから表面側に起立する起立縁部8aを有する多数の微細開孔8…と、前記微細開孔8…が形成されたプラスチックフィルムに表面側からの加熱エンボスを施すことにより形成された裏面側に起立する起立縁部を有しない多数のパターン開孔9…とを備え、隣接する前記パターン開孔9、9間の前記表面シート3の基面3aをなだらかな曲線状に湾曲して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維タッチ感を付与した多孔プラスチックフィルムを表面シートに使用した吸収性物品において、表面の液残りを生じにくくした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリーなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
前記吸収性物品において、肌に対するドライタッチ感を満足するとともに、体液の吸収速度を速めるために、前記透液性表面シートとして熱融着性の疎水性多孔プラスチックシート(以下、メッシュシートともいう。)を使用し、前記透液性表面シートと吸収体との間にセカンドシートと言われる親水性繊維シートを介在し、所定のエンボスパターンにより前記メッシュシートとセカンドシートとを不連続に接合したものが提案されている。かかる構成を採用した吸収性物品としては、例えば下記特許文献1等を挙げることができる。
【0004】
一方、前記メッシュシートを表面材として使用した生理用ナプキンは、凹凸が無く肌に密着しビニール感がでて肌触りが悪いという不満があった。このため、前記メッシュシートとして、開孔周縁に沿って表面側に起立する起立縁部を形成し、メッシュシートの表面に凹凸感を出して不織布のような繊維タッチ感を付与したものが知られている。かかるメッシュシートとして例えば下記特許文献2には、微小開孔部として、ウェブの触感がほぼ柔軟かつ絹様となるように、表面変形部の各々の耐圧縮性および耐剪断性並びに観察者の皮膚との接触度を減少する比較的薄い不規則な形の花弁状部を有する噴火口状開孔部とした微小開口化高分子ウェブが開示されている。また、下記特許文献3には、多数の肉眼で見える拡張された開孔部であって、ウェブへ出された体液を通過する開孔部を有する中央部分と、柔らかくシルクのような触感を示す複数の微細開孔部を有する外側部分であって、前記微細開孔部の縁を形成する微細開孔表面変状が外側に方向付けられており、前記微細開孔部が前記中央部分に広がっていない外側部分を含むウェブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3989477号
【特許文献2】特許第2543502号
【特許文献3】特許第3880615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2記載のウェブでは、前記微小開孔部が表面側に突出する噴火口状に形成されているため、この微小開孔部の周辺に溜まった経血は吸収体側に透過されず、表面に液残りが生じるという問題があった。これに対し、上記特許文献3では、中央部分に微細開孔部を形成しないため、この中央部分において液残りが生じ難くなることが期待できる。ところが、中央部分に微細開孔部が形成されないため、繊維タッチ感が得られず肌に密着して肌触りが悪くなる問題があった。
【0007】
一方、上記特許文献2、3には、吸収体側に体液を通過させるため、「巨視的に拡張された三次元パターン」又は「肉眼で見える拡張された開口部」が形成されている。この拡張された開口部は、開口部の周縁に裏面側にほぼ垂直に突出する突出部分が形成されるとともに、前記開口部間がほぼ平坦に形成されることにより、ほぼ矩形状の断面が連続した立体的なシート断面となっている(図8参照)。このため、前述の拡張された開口部及びその近傍では、微小開口部の周辺に溜まった経血が拡張された開口部側へ流れ、下層の吸収体に吸収されるようになるが、開口部間の平坦部分では、経血が滞留しやすく、液残りが生じていた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、繊維タッチ感を付与したプラスチックフィルムを表面シートに使用した吸収性物品において、繊維タッチ感を損なわずに、表面の液残りを生じ難くした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、プラスチックフィルムからなる表面シートと不透液性の裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記表面シートと吸収体との間にセカンドシートが配設された吸収性物品において、
前記表面シートは、開孔周縁に沿って前記プラスチックフィルムの基面から表面側に起立する起立縁部を有する多数の微細開孔と、前記微細開孔が形成されたプラスチックフィルムに表面側からの加熱エンボスを施すことにより形成された裏面側に起立する起立縁部を有しない多数のパターン開孔とを備え、隣接する前記パターン開孔間の前記表面シートの基面がなだらかな曲線状に湾曲して形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、表面シートとしてプラスチックフィルムを使用し、このプラスチックフィルムには、開孔周縁に沿って基面から表面側に起立する起立縁部を有する多数の微細開孔と、この微細開孔が形成されたプラスチックフィルムに表面側からの加熱エンボスを施すことにより形成された裏面側に起立する起立縁部を有しない多数のパターン開孔との2種類の開孔が備えられている。前記微細開孔によってプラスチックフィルムに繊維タッチ感が付与され、主に前記パターン開孔によって液透過性が与えられるようになっている。
【0011】
さらに、上述の通り前記微細開孔が形成されたプラスチックフィルムに、表面側からの加熱エンボスによって裏面側に起立する起立縁部を有しない多数の前記パターン開孔を形成してあるため、前記加熱エンボスによってパターン開孔部分が若干窪み、隣接する前記パターン開孔間の前記表面シートの基面がなだらかな曲線状に湾曲するようになる。従って、表面シートの微細開孔間に溜まった経血は、パターン開孔に向けて流れやすくなり、表面の液残りが生じ難くなる。
【0012】
よって、本発明に係る吸収性物品では、表面シートのほぼ全面に亘って繊維タッチ感が得られるとともに、表面の液残りが生じ難くなる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記表面シートは、前記微細開孔を形成した状態の前記吸収性物品の表裏方向の高さをHとし、これに前記パターン開孔を形成した状態の前記吸収性物品の表裏方向の高さをHとしたとき、次式(1)の関係で形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
(H−H)/H×100%<100% ・・・・(1)
上記請求項2記載の発明は、前記微細開孔を施した表面シートの厚みに対して、パターン開孔を施した表面シートの厚みを所定の範囲内で形成するようにしたものである。具体的には、前記微細開孔を形成した状態の前記吸収性物品の表裏方向の高さをHとし、これに前記パターン開孔を形成した状態の前記吸収性物品の表裏方向の高さをHとしたとき、上式(1)の関係となるように形成する。これにより、従来のようにパターン開孔の周縁に裏面側に突出する突出部分とパターン開孔間の平坦部分とが形成される立体的な表面シートではなく、基面がなだらかな曲線状に湾曲するほぼ平面的な表面シートとなり、表面の液残りが生じ難くなる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記微細開孔が施された表面シートと前記セカンドシートとを積層した状態で前記加熱エンボスを施し、前記パターン開孔を形成してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、前記微細開孔が施された表面シートと前記セカンドシートとを積層した状態で前記加熱エンボスによるパターン開孔を形成することにより、表面シートとセカンドシートとを一体化できるとともに、表面シートの基面をパターン開孔に向けてなだらかな曲線状に湾曲させやすくなる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記パターン開孔は、前記吸収性物品の長手方向に縦長の形状で形成されたものが千鳥状に複数配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記パターン開孔は、2種以上の開孔形状を有するものが複数配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4、5記載の発明は、液透過性及び液誘導性などを考慮して、パターン開孔の開孔形状及び配置パターンを規定したものである。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、繊維タッチ感を付与したプラスチックフィルムを表面シートに使用した吸収性物品において、繊維タッチ感を損なわずに、表面の液残りを生じ難くした吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【図2】そのII−II線矢視図である。
【図3】表面シート3の拡大平面図である。
【図4】表面シート3及びセカンドシート6の断面図である。
【図5】表面シート3の製造要領を示す工程図である。
【図6】パターン開孔9の形成要領図である。
【図7】表面シート3の拡大平面図である。
【図8】従来の表面シートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
生理用ナプキン1は、主にはパンティライナー、生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッドなどの用途に供されるもので、例えば図1及び図2に示されるように、不透液性裏面シート2と、プラスチックフィルムからなる表面シート3との間に、吸収体4または同図に示されるように、図示例ではクレープ紙5によって囲繞された吸収体4が介在されるとともに、前記表面シート3と吸収体4との間にセカンドシート6を配置した構造となっている。また、表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って形成されたサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7、7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。前記吸収体4の周囲においては、前記不透液性裏面シート2と表面シート3とがホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されている。
【0024】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0025】
前記表面シート3としては、プラスチックフィルムが用いられる。このプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の熱可塑性樹脂フィルムが好適に使用されるが、ポリエステルや、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、EVAなども使用することができる。
【0026】
前記表面シート3の面には、排血口対応部などを区画し、表面側にきっちりと膨出させるとともに、吸収した体液を封じ込めるなどのために、少なくとも排血口対応部Hの両側に略長手方向に沿う左右一対の排血口対応エンボス11、11が形成されている。また、前記エンボス11は、吸収体の中高部を形成した場合には、該中高部を所定位置に保持する目的もある。なお、図1に示される例では、その前後に装飾等のため適宜の形状で装飾エンボスが形成されている。
【0027】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されたパルプ積繊、嵩を小さくできるエアレイド吸収体などを用いることができる。また、前記パルプ積繊の場合、使用面側に高い吸収体の中高部を形成しても良い。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0028】
また、前記吸収体4に合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0029】
前記表面シート3と吸収体4との間に配置されるセカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。前記セカンドシート6としては、繊維層を有するものであれば限定はないが、好ましくは不織布をそのまま用いることができる。不織布は製法によってスパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布等、種々の不織布が存在するが、後述するパターン開孔9でのスポット吸収性を重視するならエアスルー不織布が望ましく、経血の拡散性を重視するならスパンボンド不織布が望ましい。
【0030】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0031】
本発明に係る生理用ナプキン1では、前記表面シート3は、図3及び図4に示されるように、開孔周縁に沿ってプラスチックフィルムの基面3aから生理用ナプキン1の表面側に起立する起立縁部8aを有する多数の微細開孔8、8…と、この微細開孔8、8…が形成されたプラスチックフィルムに表面側からの加熱エンボスを施すことにより形成された裏面側に起立する起立縁部を有しない多数のパターン開孔9、9…との2種類の開孔が備えられている。
【0032】
前記微細開孔8、8…は、表面シート3のほぼ全面に亘って形成され、主としてプラスチックフィルムに繊維タッチ感を与えるためのものであり、前記パターン開孔9、9…は、前記微細開孔8より大きな開孔面積及び開孔間隔で形成され、主としてプラスチックフィルムに液透過性を与えるためのものである。
【0033】
前記表面シート3に開孔を形成するには、図5に示されるように、前記微細開孔8を形成した後、前記パターン開孔9を形成する。前記微細開孔8の形成は、周面に多数の突出ピンが設けられたピンエンボスロールとアンビルロールとを対向配置し、これらロール間に前記プラスチックフィルムを通過させる方法、前記プラスチックフィルムを軟化温度付近に軟化させて、多数の開孔を有する支持体の上面に位置させた状態で、支持体の下方から吸引したり、支持体の上面から空気圧で加圧したりする方法、多数の高圧液体ジェットノズルから噴出される液体の高圧ジェットによって開孔する方法などを挙げることができるが、適宜の方法によって形成することができる。かかる方法により形成した微細開孔8には、該微細開孔8の周縁に沿って一方面側(生理用ナプキン1の表面側)に突出する突出縁部8a(いわゆる「ばり」)が形成されるようになる。
【0034】
前記パターン開孔9の形成は、プラスチックフィルムの基面3aから裏面側に起立する起立縁部を有しない孔形成方法が採用される。具体的には、図6に示されるように、ロール表面に周方向に多数の凸条20aを有するとともに、プラスチックフィルムの軟化点まで加熱されたエンボスロール20と、表面が平坦なアンビルロール21とを対向配置し、両ロール20、21間にプラスチックフィルムを通過させる方法を採用する。これに対して、ニードルピンが設けられたピンロールとアンビルロールとを対向配置し、これらロール間にプラスチックフィルムを通過させる方法や、多数の開孔を有する支持体の上面に位置させた状態で、支持体の下方から吸引したり、支持体の上面から空気圧で加圧したりする方法、高圧液体ジェットノズルから噴出される液体の高圧ジェットによって開孔する方法などは、開孔周縁に沿って裏面側に突出する「ばり」が形成されるため、パターン開孔9の形成方法からは除外される。
【0035】
上記のように、表面側に起立する起立縁部8aを有する微細開孔8を形成した後、表面側からの加熱エンボスによる裏面側に起立する起立縁部を有しない多数のパターン開孔9を形成することによって、図4に示されるように、加圧を受けたパターン開孔9部分及びその近傍が裏面側に窪むため、パターン開孔9、9間の表面シート3の基面3aがなだらかな曲線状に湾曲して形成されるようになる。
【0036】
従って、表面シート3の微細開孔8、8間に一時的に溜まった経血は、基面3aのなだらかな曲線状に湾曲する傾斜面に沿ってパターン開孔9に向けて流れやすくなり、表面の液残りが生じ難くなる。よって、表面シート3のほぼ全面に亘って繊維タッチ感が得られるようになるとともに、表面の液残りを生じ難くすることができる。
【0037】
前記表面シート3の断面形状を規定する手段として、前記パターン開孔9の形成前後のシート断面の高さの割合を所定範囲に制限する方法を用いることができる。すなわち、図5に示されるように、前記表面シート3は、前記微細開孔8を形成した状態の生理用ナプキン1の表裏方向の高さをHとし、これに前記パターン開孔9を形成した状態のナプキン1の表裏方向の高さをHとしたとき、次式(1)の関係で形成されることが好ましい。この厚みの割合は、次式(1)では100%未満としてあるが、好ましくは50〜100%、より好ましくは50〜80%である。
【0038】
(H−H)/H×100%<100% ・・・・(1)
このように、パターン開孔9の形成前後のシート断面の高さの割合を所定の範囲内で形成することにより、従来のようにパターン開孔の周縁に裏面側に突出する突出部分(ばり)が形成される立体的なシート(図8参照)でなく、基面がなだらかな曲線状に湾曲するほぼ平面的なシート状となる。従って、図8に示される従来のシートでは、「ばり」が裏面側に突出することにより、パターン開孔間のセカンドシート6に対して距離ができる平坦部分に経血が溜まりやすく、表面の液残りが生じる。
【0039】
具体的な実験の結果について説明すると、前記高さの割合(H−H)/Hを75%(実施例)、130%(比較例)とした表面シートの表面に、馬血1ccを3分ごとに2回滴下し、2回目を滴下した1分後の表面にろ紙を敷き、5g/cmの重りを5分間載置し、ろ紙に付着した馬血量を測定した。その結果、実施例は、比較例に対し58.2%の吸収量に抑えられ、表面の液残りが低減できることが明らかとなった。
【0040】
前記微細開孔8は円形が好ましく、その径は、0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.5mmとし、その開孔数は100〜500個/cm、好ましくは200〜400個/cm程度とするのが望ましい。
【0041】
前記パターン開孔9は、生理用ナプキン1の長手方向に縦長の形状で形成するのが好ましく、これを千鳥状に複数配置したパターンが好ましい。開孔の縦寸法は、1.0〜3.0mm、好ましくは1.5〜2.5mm、幅寸法は、0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.0mm程度である。また、開孔のピッチは、生理用ナプキン1の幅方向間隔が0.5〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mm、長手方向間隔が0.5〜3.0mm、好ましくは0.5〜2.0mm程度である。
【0042】
前記パターン開孔9は、図7に示されるように、2種以上の開孔形状を有するものを複数配置して形成しても良い。この場合、フィルムの強度を保ち、且つセカンドシート6への液透過性及び誘導性を向上させるため、開孔形状が縦長のものとこれより小さい面積のものとを組み合わせたパターンが好ましい。図7に示される例は、縦長の開孔9と円形のドット状開孔9’とがそれぞれ千鳥状に複数配置したものである。
【0043】
前記パターン開孔9を付与する際には、前記微細開孔8が施された表面シート3と前記セカンドシート6とを積層した状態で、前記加熱エンボスを施すようにしてもよい。これによって表面シート3とセカンドシート6とを一体化でき、経血をパターン開孔9からよりセカンドシート6に引き込みやすくなるとともに、表面シート3の基面3aがパターン開孔9に向けてなだらかな曲線状に湾曲しやすくなる。一方で、開口部が圧縮されるため、スポット吸収性は悪化する。よって、スポット吸収性を優先する場合はセカンドシート6を積層せず表面シート3単独でパターン開孔を施すというように、求める機能によって加工方法を選択することができる。
【0044】
前記表面シート3の表面の液残りを防止するため、さらに以下の手段をとることができる。第1に、表面シート3のプラスチックフィルムには、液流動性を高めるため、親水剤を含有させることが好ましい。第2に、パターン開孔9を施す際に、エンボスロール20の凸条部20a(図6参照)に親水剤を塗布しておくことにより、パターン開孔9周辺の親水度を高めることができる。第3に、パターン開孔9に経血を誘導するため、表面シート3を構成するプラスチックフィルムの表面側に好ましくは幅方向の筋状の溝加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、6…セカンドシート、7…サイド不織布、8…微細開孔、9…パターン開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる表面シートと不透液性の裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記表面シートと吸収体との間にセカンドシートが配設された吸収性物品において、
前記表面シートは、開孔周縁に沿って前記プラスチックフィルムの基面から表面側に起立する起立縁部を有する多数の微細開孔と、前記微細開孔が形成されたプラスチックフィルムに表面側からの加熱エンボスを施すことにより形成された裏面側に起立する起立縁部を有しない多数のパターン開孔とを備え、隣接する前記パターン開孔間の前記表面シートの基面がなだらかな曲線状に湾曲して形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記表面シートは、前記微細開孔を形成した状態の前記吸収性物品の表裏方向の高さをHとし、これに前記パターン開孔を形成した状態の前記吸収性物品の表裏方向の高さをHとしたとき、次式(1)の関係で形成されている請求項1記載の吸収性物品。
(H−H)/H×100%<100% ・・・・(1)
【請求項3】
前記微細開孔が施された表面シートと前記セカンドシートとを積層した状態で前記加熱エンボスを施し、前記パターン開孔を形成してある請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記パターン開孔は、前記吸収性物品の長手方向に縦長の形状で形成されたものが千鳥状に複数配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記パターン開孔は、2種以上の開孔形状を有するものが複数配置されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−29838(P2012−29838A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171580(P2010−171580)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】