説明

吸収性物品

【課題】固定化剤を使用せずとも、無駄な部分へのスキンケア剤の添加、移動を低減し、添加したスキンケア剤の多くを肌に接触可能とし、より効率良くスキンケア剤を使用できる、吸収性物品を提供する。
【解決手段】上記課題は、表面シート30に、スキンケア剤cを含有し、表面が凸でかつ裏面が凹の突出部31が間隔を空けて多数設けられるとともに、この突出部31間の部分に、スキンケア剤cを含有しないか又は突出部31よりも少ない量のスキンケア剤cを含有する、表面が凹でかつ裏面が凸の窪み部32が多数設けられており、表面シート30は突出部31では中間シート40から離間し、窪み部32では中間シート40と接触されている、ことにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にスキンケア剤を含む吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品は、長時間装着していたり、肌に弱い人が使用したりするとカブレを引き起こす場合がある。このため、カブレ抑制のためのスキンケア剤を、吸収性物品の肌接触面に付与することが種々提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
しかしながら、スキンケア剤を原綿加工して不織布にする前に添加した場合、吸収性物品の肌接触面以外にもスキンケア剤が存在することになり、塗布したスキンケア剤の量と比べると肌に接するスキンケア剤の量は少なくなってしまう。
また、吸収性物品の肌接触面にスキンケア剤を塗布する方法も提案されているが、塗布の際に、スキンケア剤が肌接触面に留まらず、肌面側のスキンケア剤が裏側に抜けてしまい、肌に接するスキンケア剤の量が設定値よりも少なくなるという問題がある。
さらに、スキンケア剤を肌接触面に固定する固定化剤を塗布する方法も知られているが、固定化剤による皮膚刺激、及び柔軟性の低下のおそれがあるため望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−110067号公報
【特許文献2】特開2008−086504号公報
【特許文献3】特表2006−519320号公報
【特許文献4】特表平11−510082号公報
【特許文献5】特開2009−5860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、固定化剤を使用せずとも、無駄な部分へのスキンケア剤の添加、移動を低減し、添加したスキンケア剤の多くを肌に接触可能とし、より効率良くスキンケア剤を使用できる、吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
不織布からなる肌接触シートと、この肌接触シートの裏側に設けられた裏側部材とを備えており、
前記肌接触シートに、スキンケア剤を含有し、表面が凸でかつ裏面が凹の突出部が間隔を空けて多数設けられるとともに、この突出部間の部分に、スキンケア剤を含有しないか又は前記突出部よりも少ない量のスキンケア剤を含有する、表面が凹でかつ裏面が凸の窪み部が多数設けられており、
前記肌接触シートは前記突出部では前記裏側部材から離間し、前記窪み部では前記裏側部材と接触されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
本発明においては、肌接触シートにおいて肌に接触し易い突出部にスキンケア剤が含有されているため、スキンケア剤をより確実に肌に接触させることができる。また、肌接触シートの窪み部は、スキンケア剤が含有されていないか又は突出部よりも少ない量のスキンケア剤が含有されているため、肌に接触し難い部分へのスキンケア剤の無駄な使用を低減することができる。しかも、肌接触シートの突出部は裏側シートから離間しており、突出部に含有されるスキンケア剤が裏抜けし難いため、添加したスキンケア剤の多くを肌に接触可能にすることができる。一方、肌接触シートの窪み部は裏側部材と接触されているため、排泄物等が肌接触シートの窪み部を介して裏側部材へ効率良く受け渡されるようになる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記突出部の繊維密度が前記窪み部の繊維密度よりも高い、請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
このように、突出部の繊維密度が窪み部の繊維密度よりも高いことで、突出部におけるスキンケア剤の保持力が向上し、裏抜けや周囲(窪み部)への移動が発生し難くなるため好ましい。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記肌接触シートは、前記スキンケア剤を繊維に固定するための固定化剤を含有しない、請求項2記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
肌接触シートは固定化剤を含有していても良いが、前述のとおり固定化剤による皮膚刺激、及び柔軟性の低下のおそれがあるため、全く含有しない方が好ましい。
【0011】
<請求項4記載の発明>
液透過性の表面シートと、液不透過性シートと、これらの間に設けられた吸収体とを備えており、
前記肌接触シートは前記表面シートであり、かつ前記スキンケア剤が疎水性である、請求項2記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
肌接触シートが表面シートである場合、表面シートにスキンケア剤を含有させることになる。この場合、スキンケア剤が油剤等のように疎水であると、液透過性が低下するおそれがある。また、本発明の突出部のように裏側部材から離間している部分においても液透過性は低下する。しかし、本発明では、単にスキンケア剤を含有させるのではなく、スキンケア剤を含有しないか又は低含有の窪み部を設けているため、排泄物はこの窪み部を通じて裏側に受け渡され、液透過性の低下を抑制することができる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
前記表面シートに、前後方向に延在する線状のスキンケア剤の含有領域が幅方向に間隔を空けて複数設けられており、
少なくともこのスキンケア剤の含有領域に少なくとも前記突出部が設けられるとともに、スキンケア剤の含有領域間に少なくとも前記窪み部が設けられている、請求項4記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
スキンケア剤は多かれ少なかれ液透過性を低下するものである。そこで、この性質を逆に利用して、上述のように前後方向に延在する線状のスキンケア剤の含有領域を幅方向に交互に設け、スキンケア剤の液透過性低下機能により排泄物を前後方向に拡散させつつ、窪み部を介して裏側に排泄物を受け渡す吸収構造とするのも好ましい。
【0015】
<請求項6記載の発明>
前記表面シートにおける少なくとも脚周りに沿う部分にスキンケア剤が含有されるとともに、少なくともこのスキンケア剤含有領域に少なくとも前記突出部が多数設けられている、請求項4又は5記載の吸収性物品。
【0016】
(作用効果)
表面シートにおける脚周りに沿う部分は皮膚との摩擦によりかぶれ等のスキントラブルが発生し易い部分であるため、少なくともこの部分にスキンケア剤の含有領域を設けるのが好ましい。
【0017】
<請求項7記載の発明>
前記表面シートにおける少なくともウエスト側端部にスキンケア剤が含有されるとともに、少なくともこのスキンケア剤含有領域に少なくとも前記突出部が多数設けられている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0018】
(作用効果)
表面シートにおけるウエスト側端部は皮膚との摩擦によりかぶれ等のスキントラブルが発生し易い部分であるため、少なくともこの部分にスキンケア剤の含有領域を設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、固定化剤を使用せずとも、無駄な部分へのスキンケア剤の添加、移動を低減し、添加したスキンケア剤の多くを肌に接触可能とし、より効率良くスキンケア剤を使用できる吸収性物品となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の6−6線断面図である。
【図4】図1の7−7線断面図である。
【図5】図1の8−8線断面図である。
【図6】図1の9−9線断面図である。
【図7】要部の拡大断面図である。
【図8】他の形態のテープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図9】他の形態のテープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図10】他の形態のテープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、「前後方向(縦方向)」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側部分両側部と背側部分量側部を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に幅方向と直交する方向を意味する。
【0022】
図1〜図6はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示している。図3及び図4は、図1における6−6線断面及び7−7線断面をそれぞれ示した図であり、図5及び図6は、図1における8−8線断面及び9−9線断面をそれぞれ示した図である。このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性表面シート30と、外面側に位置する液不透過性シート11との間に吸収要素50が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分である腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEとを有するものである。
【0023】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、腹側Fの上縁F1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の腹側サイドフラップ部FF,FFと、背側Bの上縁B1側部分の両側において、それぞれ股間部Cよりも幅方向外側まで延在する一対の背側サイドフラップ部BF,BFとを備えている。また、背側サイドフラップ部BF,BFには、係止部材としてのファスニングテープ13がそれぞれ設けられている。
【0024】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、および表面シート30がこの順に積層されている。表面シート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、表面シート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、表面シート30よりも若干幅広に形成されている。
【0025】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60,60が設けられており、この側部バリヤーカフス60,60を形成するバリヤーシート62,62が、背側および腹側の各サイドフラップ部BF,FFの内面を含め、吸収性本体部10の幅方向外側の全体にわたり延在されている。
【0026】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、この括れた部分が着用者の脚を入れる部位となる。
【0027】
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0028】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0029】
(表面シート)
表面シート30としては、液透過性を有する有孔又は無孔の不織布を用いる。この不織布の原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0030】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0031】
(中間シート)
表面シート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、表面シート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体56による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体56からの逆戻りを防止し、表面シート30表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
【0032】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40は表面シート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材は表面シート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、表面シート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、表面シート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0033】
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0034】
(側部バリヤーカフス)
表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部バリヤーカフス60,60を設けるのは好ましい。
【0035】
この側部バリヤーカフス60は、実質的に幅方向に連続するバリヤーシート62と、このバリヤーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このバリヤーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0036】
バリヤーシート62の内面は、表面シート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、バリヤーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
【0037】
脚周りにおいては、側部バリヤーカフス60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部では表面シート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部バリヤーカフス60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0038】
図示形態と異なり、バリヤーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0039】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包装シート58とを有している。包装シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0040】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0041】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0042】
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
【0043】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0044】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0045】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0046】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0047】
この包装シート58は、図3に示すように、吸収体56の全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包装するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包装シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0048】
(ファスニングテープ)
図1及び図2に示されるように、ファスニングテープ13は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材からなるシート基材13Cの基部がおむつに取り付けられており、おむつから突出する先端側部分に腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック材13Aが設けられている。フック材13Aはシート基材13Cに接着剤により剥離不能に接合されている。
【0049】
乳幼児用おむつにおいては、ファスニングテープ13の取り付け部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、ファスニングテープ13の先端側部分の寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ13の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ13の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。フック材13Aは、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。フック材13Aに代えて、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0050】
おむつの装着に際しては、背側サイドフラップ部BFを腹側サイドフラップ部FFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープを腹側F外面の適所に係止する。ファスニングテープ13の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
【0051】
ファスニングテープ13は、背側エンドフラップ部BEと吸収要素50の境界線上にファスニングテープ13の取り付け部分が重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ13の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側エンドフラップBEの前後方向長さは、ファスニングテープ13の基部の前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0052】
(ターゲットシート)
腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート74を設けるのが好ましい。ターゲットシート74は、係止部がフック材13Aの場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。 また、腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部がフック材13Aの場合には、ターゲットシート74を省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート74を外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0053】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部FEであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部BEである。
【0054】
背側エンドフラップBEの前後方向長さは、ファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収要素50とが近接しすぎると、吸収要素50の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
【0055】
腹側エンドフラップ部FE及び背側エンドフラップ部BEの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0056】
(背側伸縮シート)
図示形態では、両ファスニングテープ13間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮シート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮シート70の両端部は両ファスニングテープ13の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮シート70の前後方向寸法は、ファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。また、図示のように背側伸縮シート70が背側エンドフラップ部BEと吸収要素50の境界線と重なるように配置されていると、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。背側伸縮シート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から不織布や紙を用いるのが好ましい。この場合、伸縮不織布のような通気性を有するシート状弾性部材を用いることもできるが、図5に示すように、二枚の不織布等のシート基材71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両シート基材71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸張した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合におけるシート基材71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸張率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
【0057】
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収要素50を横断するように配置すると、吸収要素50のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収要素50と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収要素50の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0058】
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)にシート基材71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
【0059】
背側伸縮シート70は、図示形態では、液不透過性シート11の幅方向両側ではバリヤーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ液不透過性シート11と重なる部位では、液不透過性シート11と吸収要素50との間に挟まれるように設けられているが、液不透過性シート11と外装シート12との間に設けても良いし、外装シート12の外面に設けても良く、また表面シート30と吸収要素50との間に設けてもよい。また、背側伸縮シート70は表面シート30の上に設けても良く、この場合、液不透過性シート11の幅方向両側ではバリヤーシート62の上に設けても良い。また、外装シート12を複数枚のシート基材を重ねて形成する場合には、背側伸縮シート70全体を、外装シート12のシート基材間に設けても良い。
【0060】
(インジケータ)
排泄物の液分と接触する可能な部位には、排泄物の液分により呈色又は消色するインジケータ80を設けることができる。インジケータ80は、体液などの水分との接触により呈色反応を示すような着色剤及び/又は水分中のpHを検知して呈色反応を示すような着色剤、或いは体液との反応により着色が消失する反応、着色剤が尿により溶解(分散)して滲んだり消失したりする反応、その他の視覚的変化を示す薬剤が含有されたインク又は接着剤、或いは水分又は体液との接触により視覚的変化を示す薬剤(インジケータ反応手段)を含有するシート状部材により構成されている。例えば、体液などの水分との接触により呈色反応を示すような着色剤として、水溶性、水分解性染料又はロイコ染料と該ロイコ染料を発色させるフェノール性化合物、酸性物質、電子受容性物質等の顕色剤とからなる着色剤を使用することが可能である。
呈色により現れる色は特に限定されないが、おむつ外面と同じ色(通常は白色)であると紛れて見え難くなるため、おむつ外面と異なる色に呈色するものが好適である。
【0061】
上述のインク又は接着剤により構成されたインジケータ80は、図2及び図3に示されるように、所定の塗布領域に塗布される。なお、図2及び図3に示されるインジケータ80は、前述のインク又は接着剤の塗布領域を示したものである。この領域は、吸収体56の配置範囲に含まれるのが好ましく、幅方向中央部に位置し、幅が0.3〜14cm程度、好ましくは0.5〜2cm程度で、長さがおむつ全長Lの60〜90%の領域であり、吸収体56に吸収された排泄物との接触が効率よく行われる領域である。インジケータ80は、おむつ内面から視認できるような位置や、脚周りの立体ギャザー部から視認できるような位置に設けられていても良いが、おむつ外面から視認できるように、吸収体56の裏面と液不透過性シート11との間、具体的には液不透過性シート11の吸収体56側面、または包装シート58の内面又は外面に、インジケータ80を構成するインク又は接着剤を塗布することにより形成するのが望ましい。塗布パターンは特に限定されず、図示例のような多数の筋状に塗布する他、面状、帯状等に塗布することができる。もちろん、インジケータ80を形成したシートを別途製造し、このシート状のインジケータ80をおむつ内に内蔵させることもできる。
【0062】
インジケータ80の成分は、インジケータ80がインクから構成される場合、インクに着色剤が添加されたものであり、インジケータ80が接着剤から構成される場合、水溶性ポリマーあるいは親水性ポリマーに樹脂などからなる非水溶性成分および着色剤が添加されたものである。接着剤から構成される場合の具体例は、ポリエチレングリコール分子量100〜500と、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルコポリマーと、水溶性ポリエステルとからなる水溶性ポリマーに、高極性粘着付与樹脂および可塑剤の非水溶性成分と、接触する液体の酸性・アルカリ性の程度(pH)を変色によって指示する着色剤とで構成されている。
【0063】
インジケータ80を接着剤により構成した場合、接着剤には、公知の各種接着剤を使用することが可能である。その一例として、ホットメルト接着剤を使用した場合について詳述すると、インジケータ80として着色剤を含有したホットメルト接着剤を使用することにより、着色剤の拡散や浸出などが防止できるとともに、シート状のインジケータを設ける場合に比べると、インラインで簡単に実施できるためインジケータの付設作業工程が大幅に省力化できるようになる。この際、インジケータホットメルト接着剤の塗布量は、15〜40g/m2であることが好ましい。15g/m2より少量であるとインジケータとしての機能が損なわれ、40g/m2より多いと接着剤の硬化によるゴワ付き感が生じる。
【0064】
一方、シート状部材からなるインジケータ80を使用する場合には、このシート状部材を液不透過性シート11と吸収体56との間、具体的には吸収体56と包装シート58内面との間又は包装シート58の裏面と液不透過性シート11との間に配置するようにする。なお、このシート状のインジケータ80を使用した場合には、液体性のインジケータ80を塗布して設ける場合と比べて、部材点数は増えるが、必要部位に必要量だけ使用することが容易に行えるようになり、インジケータ反応手段を含むシート状部材の使用面積の低減を図ることにより低コスト化できるようになる。
【0065】
(スキンケア剤等)
特徴的には、図1、図3の他、図7にも示されるように、表面シート30(肌接触シート)に、スキンケア剤cを含有し、表面が凸でかつ裏面が凹の突出部31が間隔を空けて多数設けられるとともに、この突出部31間の部分に、スキンケア剤cを含有しないか又は前記突出部31よりも少ない量のスキンケア剤cを含有する、表面が凹でかつ裏面が凸の窪み部32が多数設けられている。そして、突出部31では表面シート30が中間シート40から離間し、窪み部32では表面シート30と中間シート40とが接合(単に接触されているだけでも良い)されている。したがって、表面シート30において肌に接触し易い突出部31にスキンケア剤cが含有されているため、スキンケア剤cをより確実に肌に接触させることができる。また、表面シート30の窪み部32は、スキンケア剤cが含有されていないか又は突出部31よりも少ない量のスキンケア剤cが含有されているため、肌に接触し難い部分へのスキンケア剤cの無駄な使用を低減することができる。しかも、表面シート30の突出部31は裏側シートから離間しており、突出部31に含有されるスキンケア剤cが裏抜けし難いため、添加したスキンケア剤cの多くを肌に接触可能にすることができる。一方、表面シート30の窪み部32は中間シート40と接合されているため、表面シート30は確実に固定されるとともに、排泄物等が表面シート30の窪み部32を介して中間シート40へ効率良く受け渡されるようになる。
【0066】
突出部31の形状・配列は適宜定めることができ、例えば直線状、曲線状、波状、円状、楕円状、台形状、錘形状などの幾何学的形状の突出部31を規則的又は不規則に配列する他、突出部31により梨地や各種絵模様を形成することができる。また、窪み部32の形状・配列も適宜定めることができ、例えば直線状、曲線状、波状、円状、楕円状、台形状、錘形状などの幾何学的形状の窪み部32を規則的又は不規則に配列したり、突出部31により梨地や各種絵模様を形成したりすることもできるが、突出部31間の部分のほぼ全体を窪み部32とするのが望ましい。
【0067】
スキンケア剤cは表面シート30のほぼ全体にわたり含有させる他、一部にのみ含有させることもできる。また、少なくとも一部の突出部31にスキンケア剤cを含有している限り、スキンケア剤cを含有しない突出部31や、スキンケア剤cを含有する窪み部32を有していても良い。換言すれば、突出部31及び窪み部32を表面シート30の全体等、広範囲に形成し、その一部の突出部31を含む範囲にスキンケア剤を含有させても良い。
【0068】
図1に示される例では、表面シート30に、前後方向に延在する線状のスキンケア剤cの含有領域が幅方向に間隔を空けて複数設けられており、これらスキンケア剤cの含有領域内及び含有領域間に、図7に示されるような突出部31及び窪み部32がそれぞれ多数設けられ、少なくとも突出部31にスキンケア剤cが含有されている。なお、図1及び図8〜図10においては、スキンケア剤cの含有領域における黒点を突出部31と想定し、白抜き部分を窪み部と想定している。図1に示される含有パターンの場合、スキンケア剤cの液透過性低下機能により排泄物を前後方向に拡散させつつ、窪み部32を介して裏側に排泄物を受け渡す吸収構造となる。各スキンケア剤cの含有領域の幅は0.1〜65mm程度とするのが好ましい。また、各スキンケア剤cの含有領域は表面シート30の全長にわたり設ける他、前後方向中間部のみに設けても良い。さらに、各スキンケア剤cの含有領域はまた連続的に延在する他、点線状に間欠的に設けても良い。また、各スキンケア剤cの含有領域の幅、長さ、間隔は均一である必要はない。
【0069】
また、図8(a)に示されるように、スキンケア剤cを格子状に含有させることも可能である。この含有パターンはスキンケア剤cによる通気性及び吸収性能の低下のおそれが少なく、スキンケア剤cの肌への接触面積を広くすることができる点で好ましいものである。なお、この格子状パターンは、表面シート30の全体に設けるほか、一部分に設けることができ、また、他の含有パターンと組み合わせることもできる。
【0070】
さらに、図8(b)に示されるように、スキンケア剤cによる吸収性能の影響をより低くする含有パターンとしてはドット状パターンがある。なお、このドット状パターンは、表面シート30の全体に設けるほか、一部分に設けることができ、他の含有パターンと組み合わせて、例えばカブレの少ないところはドット状に含有させ、カブレの多い部分はそれ以外のより密なパターンで含有させることもできる。
【0071】
また、表面シート30における脚周りに沿う部分や、ウエスト側端部は皮膚との摩擦によりかぶれ等のスキントラブルが発生し易い部分であるため、図9に示すように、少なくともこの部分にスキンケア剤cの含有領域を設けると、より効果的にかぶれ防止を図ることができる。この含有パターンは他の含有パターンと組み合わせることができる。
【0072】
さらに、図10に示すように、前後の脚周りに沿う部分だけでなく、それらを繋ぐ股間部分を含むX字状領域にスキンケア剤cを含有させると、肌と強く接触してカブレやすい部位(臀部・排尿口付近)にスキンケア剤cを配置できるため好ましい。この場合、前後いずれか一方の脚周りに沿う部分にはスキンケア剤cを含有させなくても良い。この含有パターンは他の含有パターンと組み合わせることができる。
【0073】
これらスキンケア剤cの含有領域内には、窪み部32が設けられなくても良いが、突出部31及び窪み部32の両者が多数設けられているのが好ましく、その場合、窪み部32にはスキンケア剤cが含有されていても良いが、含有されていないか又は低含有であるのが好ましい。
【0074】
スキンケア剤cとしては、公知のものを特に限定無く使用することができ、例えば石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレート エモリエント、脂肪アルコールエモリエント、およびこれらの混合物からなるものを用いることもできるが、特に、特開2000−110067号公報に記載された、ビタミンE群として知られるトコフェロール同族体が好適である。この場合、α型トコフェロールが表面シート30の100重量部に対して、0.001重量部以上付着するように、トコフェロール同族体を表面シート30に含有させるのが好ましい。さらに、塗布するトコフェロール同族体中のα型トコフェロールの割合は、90%以上であることが望ましい。
【0075】
スキンケア剤cとしては、親水性のものでも疎水性のものでも良いが、疎水性のものを用いる場合には含有部分の吸収性能に影響を及ぼす恐れがあるため、表面シート30全体ではなく、図示例のように一部分にのみ含有させ、非含有領域を設けてそこに少なくとも窪み部32を設けると、排泄物はこの窪み部32を通じて裏側に受け渡され、液透過性の低下を抑制することができる。
【0076】
使用するスキンケア剤cは一種類とする他、複数種とすることもでき、後者の場合は複数種のスキンケア剤cを混合して用いる他、含有位置により種類の異なるスキンケア剤cを用いることもできる。
【0077】
スキンケア剤cの含有部分には、スキンケア剤cの固定化剤を含有させることができるが、固定化剤による皮膚刺激、及び柔軟性の低下のおそれがあるため、全く含有しない方が好ましい。
【0078】
表面シート30の突出部31及び窪み部32の形成方法は適宜選択すれば良く、エンボス加工により凹凸を形成する他、熱収縮性シートを張り合わせて加熱することにより凹凸を形成することもできる。エンボス加工により凹凸を形成する場合、表面シート30の裏側がエンボスロールの凸ロール側となるようにしてエンボス加工を行うと、凸ロールの凸部により突出部31が形成され、突出部31の繊維密度が窪み部32の繊維密度よりも高くなり、突出部31におけるスキンケア剤cの保持力が向上し、裏抜けや周囲(窪み部32)への移動が発生し難くなるため好ましい。繊維密度の差は適宜定めることができるが、突出部31の繊維密度が窪み部32の繊維密度の1.1倍以上であると好ましい。反対に、表面シート30の表側がエンボスロールの凸ロール側となるようにしてエンボス加工を行うこともでき、その場合、凸ロールの凸部により窪み部32が形成される。この場合、表面シート30と中間シート40とを重ねた状態でエンボス加工を行うことにより、表面シート30の窪み部32の底部裏面が中間シート40に確実に接触される利点がある。なお、エンボス加工を行う場合、表面シート30の風合いを損なわない温度、好ましくは70〜160℃程度での加熱を伴うエンボス加工(ヒートエンボス加工)とするのが好ましい。
【0079】
また、熱収縮性シートを加熱することにより凹凸を有する表面シート30を形成する場合、表面シート30に対して、熱収縮性のより大きい中間シート40を間欠的に張り合わせるとともに加熱する(ヒートエンボス加工のように間欠張り合わせと加熱とを同時に行う他、ホットメルト接着剤等の間欠塗布により張り合わせた後に、熱風等により加熱する形態も含む)ことで、中間シート40の収縮により表面シート30の余剰部分が突出部31となる。この形態では、表面シート30として、熱収縮性の無い非収縮シートを用いる他、中間シート40より熱収縮量が少なければ熱収縮シートを用いることも可能である。
【0080】
また、この中間シート40に弾性伸縮素材を使用し、縦方向及び幅方向の少なくとも一方に引っ張って伸長した状態で、非伸縮性の表面シート30を重ね、接着剤又はヒートエンボス加工等により間欠で張り合わせた後、中間シート40のテンションを解放することで、表面シート30に凹凸を形成させても良い。この場合の中間シート40としては、例えば弾性伸縮不織布や、メッシュ状又はネット状の弾性伸縮部材を用いることができる。
【0081】
一方、スキンケア剤cは、表面シート30の凹凸形成後に、ロール転写等の公知の塗布方法により、少なくとも一部の突出部31に塗布する他、エンボス加工により凹凸加工を行う場合には、予め凸ロール等のエンボス加工ロールにスキンケア剤cを塗布しておき、これをエンボス加工時に表面シート30に転写するといったことも可能である。
【0082】
(その他)
本発明の肌接触シートは、肌に接触するように内面に露出するものである限り、表面シート30に限られず、例えばバリヤーシート62とすることもでき、その場合の裏側部材は液不透過性シート11あるいは外装シート12となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、テープタイプ使い捨ておむつはもちろん、パンツタイプやパッドタイプ使い捨ておむつ、生理用ナプキン等、吸収性物品一般に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0084】
11…液不透過性シート、12…外装シート、30…表面シート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート、70…背側伸縮シート、74…ターゲットシート、80…インジケータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布からなる肌接触シートと、この肌接触シートの裏側に設けられた裏側部材とを備えており、
前記肌接触シートに、スキンケア剤を含有し、表面が凸でかつ裏面が凹の突出部が間隔を空けて多数設けられるとともに、この突出部間の部分に、スキンケア剤を含有しないか又は前記突出部よりも少ない量のスキンケア剤を含有する、表面が凹でかつ裏面が凸の窪み部が多数設けられており、
前記肌接触シートは前記突出部では前記裏側部材から離間し、前記窪み部では前記裏側部材と接触されている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記突出部の繊維密度が前記窪み部の繊維密度よりも高い、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記肌接触シートは、前記スキンケア剤を繊維に固定するための固定化剤を含有しない、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
液透過性の表面シートと、液不透過性シートと、これらの間に設けられた吸収体とを備えており、
前記肌接触シートは前記表面シートであり、かつ前記スキンケア剤が疎水性である、請求項2又は3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記表面シートに、前後方向に延在する線状のスキンケア剤の含有領域が幅方向に間隔を空けて複数設けられており、
少なくともこのスキンケア剤の含有領域に少なくとも前記突出部が設けられるとともに、スキンケア剤の含有領域間に少なくとも前記窪み部が設けられている、請求項4記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表面シートにおける少なくとも脚周りに沿う部分にスキンケア剤が含有されるとともに、少なくともこのスキンケア剤含有領域に少なくとも前記突出部が多数設けられている、請求項4又は5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記表面シートにおける少なくともウエスト側端部にスキンケア剤が含有されるとともに、少なくともこのスキンケア剤含有領域に少なくとも前記突出部が多数設けられている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−55409(P2012−55409A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199660(P2010−199660)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】