説明

吸収性物品

【課題】体液の横漏れを防止することができ、かつ体液を吸収した際の吸収体の変形を抑制し、吸収性能の低下を抑制することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品1は、排泄口当接領域の中心を含む第1領域A1と、第1領域よりも幅方向両側方に配置された第2領域A2と、第2領域よりも幅方向両側方に配置された第3領域A3と、を備える。第1領域A1には、吸収体30を厚み方向に圧縮した圧縮部70が形成されている。第2領域A2には、圧縮部70と、表面シート及び吸収体を厚み方向に圧縮した線状圧搾部80とが形成されている。第3領域A3における吸収体30の密度は、第1領域A1における吸収体30の密度よりも低く、かつ第2領域A2における吸収体30の密度よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関し、体液を吸収した際の吸収性能の低下を抑制することができる吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品としての生理用ナプキンにおいて、吸収性物品の幅方向における吸収体の端部に、吸収性物品の厚み方向に吸収体を圧縮した圧縮部が形成された圧縮領域を有する生理用ナプキンが記載されている。特許文献1の生理用ナプキンの圧縮領域には、圧縮部と併せて、表面シートと吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾溝が形成されている。吸収体の幅方向における端部の圧縮領域に圧縮部及び圧搾溝が形成されているため、排泄口から排泄された体液を、圧縮部及び圧搾溝によって吸収し、体液の横漏れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−125485号公報(図8、段落0053等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の生理用ナプキンには、以下のような問題があった。
上述の生理用ナプキンは、吸収体の幅方向における両端部に圧縮領域が設けられており、圧縮領域の間の吸収体には、圧縮部が形成されていない非圧縮領域が設けられている。非圧縮領域における吸収体の密度は、圧縮領域における吸収体の密度よりも低い。比較的密度の低い非圧縮領域は、圧縮領域よりも体液を吸収した際に形状を維持し難く、変形し易い。体液を吸収した吸収体が変形すると、吸収体の上方に配置された表面シートと吸収体との距離が一定に維持されない。よって、表面シートから吸収体への体液を円滑に移行できず、吸収性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、体液の横漏れを防止することができ、かつ体液を吸収した際の吸収体の変形を抑制し、吸収性能の低下を抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本開示に係る吸収性物品は、液透過性の表面シート(表面シート10)、液不透過性の裏面シート(裏面シート20)、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体(吸収体30)を有し、前記吸収性物品の厚み方向において前記吸収体を圧縮した圧縮部(圧縮部)と、前記厚み方向において前記表面シートと前記吸収体とを厚み方向において圧縮した線状圧搾部(線状圧搾部80)と、が形成された吸収性物品であって、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含み、かつ前記圧縮部が形成された第1領域(第1領域A1)と、前記第1領域よりも前記吸収性物品の幅方向両側方に配置され、かつ前記圧縮部が形成された第2領域(第2領域A2)と、前記第2領域よりも前記幅方向両側方に配置された第3領域(第3領域A3)と、を備えており、前記線状圧搾部は、前記第2領域において前記吸収性物品の長手方向に延びて形成されており、前記第3領域における前記吸収体の密度は、前記第1領域における前記吸収体の密度よりも低く、かつ前記第2領域における前記吸収体の密度よりも低いことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
排泄口当接領域の中心を含む第1領域は、吸収体が圧縮された圧縮部が形成されているため、圧縮部が形成されていない領域と比較して、体液を吸収した場合における収体の変形を抑制できる。よって、表面シートと吸収体との距離のばらつきを抑制し、表面シートと吸収体との距離をほぼ一定に維持して、体液を吸収した際の吸収性能の低下を抑制できる。更に、第1領域は、吸収体が圧縮されていない領域と比較して、幅方向外側から内側に向かって力が掛かった際に変形し難く、第1領域が排泄口に対向した状態を維持しやすくなる。
【0008】
また、吸収体の第1領域よりも幅方向外側には、圧縮部及び線状圧搾部が形成された第2領域が設けられている。第2領域を備えることにより、第1領域において吸収した体液を保持し、体液の横漏れを防止できる。
【0009】
更に、第2領域の幅方向外側には、第1領域及び第2領域よりも密度が低い第3領域が設けられている。第3領域の吸収体は、第1領域等よりも密度が低く、着用者の脚等が吸収体の幅方向両側部に当たった際に変形し易い。よって、着用者の脚等によって幅方向外側から幅方向内側に押圧された際における着用者への抵抗を低減でき、着用者の装着感を向上させることができる。また、第3領域が変形することにより、フィット性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図2】図1に示す吸収性物品の背面図である。
【図3】図1に示すA−A断面の模式断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図5】第3の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図6】第4の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2を参照して、第1の実施形態に係る吸収性物品1について説明する。図1は、吸収性物品の平面図であり、図2は、吸収性物品の背面図である。図3は、図1に示すA−A断面の模式断面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキンである。
【0012】
吸収性物品1は、着用者の肌に当接する表面シート10と、液体を透過しない液不透過性の裏面シート20と、吸収体30とを有する。吸収体30は、表面シート10と裏面シート20との間に配設される。従って、吸収体30は、図1及び図2において破線で示される。吸収体30は、吸収性物品1の長手方向L及び幅方向Wにおける中央部分に配設される。
【0013】
吸収性物品1は、図1に示す平面視にて、長手方向Lに直交する幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるウイング部43,44を備える。更に、吸収性物品1は、幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるサイドシート41,42を備える。
【0014】
表面シート10は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。表面シート10は、少なくとも吸収体30の表面を覆う。表面シート10は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0015】
裏面シート20は、表面シート10の長さと略同一の長さを有する。裏面シート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。裏面シート20は、着用時の違和感を生じさせない程度の柔軟性を有する材料とすることが好ましい。裏面シート20は、不透液性且つ透湿性であることが望ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂に無機充填剤を溶融混練したものを延伸処理した微多孔性シートによって構成することができる。
【0016】
吸収体30は、親水性繊維、パルプを含む。吸収体30は、経血などの体液を吸収可能な材料によって形成される。吸収体30は、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によって積層して形成されてもよいし、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシートでもよいし、ティッシュ(例えば、目付15g/m)上に高吸収ポリマーを混入した粉砕パルプを配置し、ティッシュで包むことによって形成されていてもよい。
【0017】
本実施の形態に係る吸収体30は、綿状パルプや合成パルプ等を積層したパルプを保護紙(図示せず)で包むことによって構成されている。保護紙は、パルプの形状を保持するためのものであり、例えばクレープ紙やティッシュペーパーなどを用いることができる。吸収体30の幅方向における中央に位置する吸収体コア31(例えば、図3参照)の目付は、例えば、吸収体コア31よりも幅方向両側部に位置する吸収体の目付よりも高い。具体的には、吸収体コア31の目付は、100〜800g/mであり、吸収体コア31の周囲に位置する吸収体(例えば、吸収体コア31よりも幅方向両側部に位置する吸収体)の目付は、100〜500g/mである。
【0018】
吸収体30は、前後方向に延びる形状であり、裏面シート20よりも略一回り程度小さい。吸収体30の幅方向Wの長さは、成人女性の股間隔に対応しており、概ね50〜80mmである。吸収体30は、ホットメルトなどの接着剤によって裏面シート20に接着される。また、本実施の形態では、吸収体30と表面シート10とは、ホットメルト接着剤60によって接着されている(図3参照)。
【0019】
サイドシート41,42は、表面シート10の両側に配設される。サイドシート41,42は、表面シート10と同様の材料から選ぶことができる。但し、サイドシート41,42を乗り越えて吸収性物品1外方へ経血が流れることを防止するためには、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート41,42は、吸収体30の側縁の一部及びウイング部43,44を覆う。
【0020】
吸収性物品1では、表面シート10、サイドシート41,42、及び裏面シート20の周縁が接合されて、吸収体30が内封される。表面シート10と裏面シート20との接合方法としては、ヒートエンボス加工、超音波、又はホットメルト接着剤のいずれか一つ、又は複数を組み合わせることが可能である。
【0021】
裏面シート20において、下着と接触する表面には、複数の領域において粘着剤50が塗布されている(図2参照)。粘着剤50は、吸収体の裏面側において長手方向Lに沿って間欠的に配置されている。粘着剤50は、ウイング部43及びウイング部44において、下着と接触する表面にも設けられる。使用前の状態では、粘着剤50は、剥離シート90に接している。剥離シート90は、使用前に粘着剤50が劣化するのを防止している。そして、使用時に着用者によって剥離シート90が剥離される。
【0022】
なお、剥離シート90を有しない吸収性物品においては、吸収性物品を個別に包装する包装シートによって使用前に粘着剤が劣化するのを防止するように構成されていてもよい。粘着剤と包装シートが接する場合には、包装シートの表面には、粘着剤の粘着力を低下させることなく粘着剤を剥離可能にする処理を施すことが望ましい。
【0023】
表面シート10には、表面シートを厚み方向に圧縮した表面シート圧搾部11が形成されている。表面シート圧搾部11は、格子状に配置されている。吸収体30には、厚み方向において圧縮された圧縮部70が形成されている。吸収性物品1には、表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮した線状圧搾部80が形成されている。
【0024】
圧縮部70は、吸収体の前端部に形成された第1圧縮部71と、第1圧縮部71の後方であって、後述する第2領域A2に形成された第2圧縮部72と、吸収体30の後端部に形成された第3圧縮部73と、を有する。
【0025】
第1圧縮部71は、吸収体30の前端部において吸収体の幅方向全体に形成されている。第1圧縮部71の前端の外形は、吸収体の前端の外形に沿っており、前側に凸状の幅方向に延びる円弧形状である。
【0026】
第2圧縮部72は、第1圧縮部71の後端から後方に向かって延びる。第2圧縮部72の前端及び後端は、吸収体30の幅方向端部に位置する。第2圧縮部72の長手方向における中央は、第2圧縮部72の前端及び後端よりも幅方向内側に位置する。第2圧縮部72の形状は、幅方向内側に凸状の長手方向に延びる円弧形状である。
【0027】
第3圧縮部73は、吸収体30の後端部において吸収体30の幅方向全体に形成されている。第3圧縮部73の後端の外形は、吸収体30の後端の外形に沿って形成されており、後側に凸状の幅方向に延びる円弧形状である。
【0028】
線状圧搾部80は、第1圧縮部71から第2圧縮部72に跨って形成された第1線状圧搾部81と、第1線状圧搾部81の後端よりも幅方向内側から後方に向かって延びる第2線状圧搾部82と、第2線状圧搾部82の後端よりも幅方向外側から後方に向かって延びる第3線状圧搾部83と、第3線状圧搾部83の後端よりも幅方向外側から後方に向かって延びる第4線状圧搾部84と、を有する。
【0029】
なお、線状圧搾部80は、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向Tに圧搾されて、所定方向に連続する線状に形成されていればよく、種々の構成を採用することができる。例えば、プレス加工やエンボス加工によって形成することができ、その形状は、格子網やハニカム形状であってもよい。
【0030】
吸収性物品1は、幅方向Wにおいて、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む第1領域A1と、第1領域A1よりも幅方向両側方に配置された第2領域A2と、第2領域A2よりも幅方向両側方に配置された第3領域A3と、を備えている。
【0031】
吸収性物品1は、長手方向Lにおいて、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む中央領域B1と、中央領域よりも前方に配置される前側領域B2と、中央領域よりも後方に配置される後側領域B3と、を備える。
【0032】
排泄口当接領域の中心とは、着用者の排泄口が当接する領域の長手方向L及び幅方向Wの中心である。例えば、ウイング部43、44を有する吸収性物品1においては、ウイング部43、44の長手方向Lの中心が、排泄口当接領域の長手方向Lの中心となる。また、ウイング部43、44を有しない吸収性物品1においては、吸収体の幅方向の長さ寸法が最も短い位置が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。
【0033】
第1領域A1には、吸収体コア31が配置されている。第1領域A1には、吸収体30を厚み方向に圧縮した第1圧縮部71が全体に亘って形成されている。第1圧縮部71は、第1領域A1の幅方向における中心に配置されている。第1圧縮部71は、長手方向Lにおいて、中央領域B1のみに配置されており、前側領域B2及び後側領域B3には、配置されていない。第1領域A1は、吸収体を厚み方向に圧縮した第1圧縮部が形成された領域となる。第1領域は、圧縮部が形成されていない吸収体の領域に比べて密度が高く構成されている。
【0034】
第2領域A2には、吸収体30を厚み方向Tに圧縮した第2圧縮部72と、吸収体30及び表面シート10を厚み方向Tに圧縮した線状圧搾部80と、が形成されている。第2圧縮部72は、長手方向Lにおいて、中央領域B1を中心にして前側領域B2及び後側領域B3に跨って配置されている。第2領域A2は、吸収体を厚み方向に圧縮した第2圧縮部72が形成された領域となる。
【0035】
第3領域A3は、第2領域よりも幅方向外側の領域である。第3領域A3は、吸収体30が厚み方向Tに圧縮されていない非圧縮領域である。すなわち、第3領域A3は、線状圧搾部80及び圧縮部70が形成されていない。したがって、第3領域A3は、第1領域A1の第1圧縮部や第2領域A2の第2圧縮部よりも嵩高であり、第3領域A3における吸収体30の密度は、第1領域A1における吸収体30の密度よりも低く、かつ第2領域A2における吸収体30の密度よりも低い。
【0036】
なお、第3領域A3は、吸収体30の密度が、第1領域A1における吸収体30の密度よりも低く、かつ第2領域A2における吸収体30の密度よりも低く構成された領域であればよく、例えば、吸収体30の製造過程で吸収体30が圧縮された領域をも含む概念である。
【0037】
排泄口当接領域の中心を含む第1領域A1は、吸収体30が圧縮されているため、吸収体30が圧縮されていない領域と比較して、体液を吸収した場合における吸収体形を抑制できる。よって、表面シート10と吸収体30との距離のばらつきを抑制し、体液を吸収した際の吸収性能の低下を抑制できる。したがって、長時間吸収性能を維持し易くなる。
【0038】
一方、吸収体30の第1領域A1よりも幅方向外側には、圧縮部70及び線状圧搾部80が形成された第2領域A2が設けられている。第1領域A1において吸収した体液を第2領域A2において保持することができ、体液の横漏れを防止できる。
【0039】
更に、第2領域A2の幅方向外側には、第1領域A1及び第2領域A2よりも密度が低い第3領域が設けられている。第3領域の吸収体は、第1領域A1等よりも密度が低く、着用者の脚等が吸収体の幅方向両側部に当たった際に変形し易い。よって、着用者の脚等によって幅方向外側から幅方向内側に押圧された際における着用者への抵抗を低減でき、着用者の装着感を向上させることができ、かつフィット性を向上させることができる。更に、第3領域は第2領域よりも密度が低いため、第2領域に引き込んだ体液が第3領域側に移行し難い。第2領域の幅方向両側方に第3領域を設けることにより、体液の横漏れを防止できる。
【0040】
また、第2領域A2は、排泄口当接領域の中心を通りかつ幅方向に沿った中心仮想線ELと交わる中心交点EPから、吸収性物品の長手方向外側に向かうに連れて幅方向外側に広がる曲線形状である。
【0041】
排泄口当接領域に対する幅方向外側には、着用者の脚が存在し、その脚の形状は、幅方向内側に向かって凸となる曲線状である。第2領域A2を、第1交点から吸収性物品の長手方向外側に向かうに連れて幅方向外側に広がる曲線形状にすることにより、脚の形状に沿って第2領域A2を配置し、フィット性を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、第2領域A2の形状は、中心交点EPから吸収性物品の長手方向外側に向かうに連れて幅方向外側に広がる曲線形状であるが、この構成に限定されない。具体的には、第2領域A2の形状は、例えば、長手方向に延びる直線形状であってもよいし、長手方向に延びる楕円形や長方形であってもよい。
【0043】
更に、第2領域A2の幅方向の長さは、第2領域に形成された第1線状圧搾部81の幅方向の長さよりも長く構成されている。線状圧搾部80は、股間の側圧を受けた際の変形基点になり得る。しかし、線状圧搾部80は、表面シート10から吸収体30までを圧縮しており、線状圧搾部80が形成された部分の剛性は、吸収体30のみを圧搾した領域と比較して高くなる。よって、線状圧搾部80の幅が広くなると、吸収体全体の剛性が高くなり、付け心地が悪化するおそれがある。
【0044】
よって、第2領域A2の幅を第1線状圧搾部81の幅よりも長くすることにより、第2領域A2によって変形基点を明確に設けつつ、第1線状圧搾部81の幅を短くすることによって剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、第2領域A2の幅は、第1線状圧搾部81の幅よりも長いが、この構成に限定されない。具体的には、第2領域A2の幅が、第1線状圧搾部81の幅と同じ幅であってもよいし、第1線状圧搾部81の幅よりも短くてもよい。
【0046】
また、第2領域A2の長手方向Lの長さは、第1領域A1の長手方向Lの長さよりも長い。第1領域A1は、最も体液が排出され易い排泄口付近に設けられていればよい。一方、第2領域A2は、変形の基点となるため、股繰り近傍まで長手方向にL沿って設けられていることが望ましい。よって、第1領域A1よりも第2領域A2の方が長手方向に長く形成することにより、吸収性能を確保しつつ、身体にフィットさせ易くなる。
【0047】
なお、本実施の形態では、第2領域A2の長手方向の長さは、第1領域A1の長手方向の長さよりも長いが、この構成に限定されない。具体的には、第2領域A2の長手方向の長さが、第1領域A1の長手方向の長さと同じ長さであってもよいし、第1領域A1の長手方向の長さよりも短くてもよい。
【0048】
また、第1領域A1の前端部を通り、かつ幅方向Wに延びる第1幅方向仮想線EW1と、第1領域A1の後端部を通り、かつ幅方向Wに延びる第2幅方向仮想線EW2との間に形成された線状圧搾部80は、第2領域A2に沿った曲線形状である。
【0049】
第1領域A1は、排泄口当接領域の中心を含み、最も吸収体30を身体にフィットさせたい領域となる。この第1領域A1よりも幅方向外側に位置する線状圧搾部80を、第2領域A2に沿った曲線形状とすることにより、脚の外形に沿って変形基点を設け、吸収体30を身体にフィットさせることができる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、第1線状圧搾部81のうち第1領域A1よりも幅方向外側に位置する線状圧搾部を、第2領域A2に沿った形状としているが、この構成に限られない。
【0051】
第2領域A2よりも幅方向における内側であって、第1領域A1よりも長手方向における後方には、第4領域A4が設けられている。第4領域A4は、吸収体30が厚み方向に圧縮されていない非圧縮領域である。すなわち、第4領域A4は、線状圧搾部80及び圧縮部70が形成されていない。したがって、第4領域A4は、第1領域A1の第1圧縮部や第2領域A2の第2圧縮部よりも嵩高であり、第4領域における吸収体の密度は、第1領域A1における吸収体の密度よりも低く、かつ第2領域A2における吸収体の密度よりも低い。
【0052】
なお、第4領域A4は、吸収体30の密度が、第1領域A1における吸収体30の密度よりも低く、かつ第2領域A2における吸収体30の密度よりも低く構成された領域であればよく、例えば、吸収体30の製造過程で吸収体が圧縮された領域をも含む概念である。
【0053】
また、第2領域A2における吸収体の密度が第4領域A4における吸収体の密度よりも高いため、幅方向外側から幅方向内側に力が掛かった際に、第2領域A2を基点に変形させることができる。第4領域A4における吸収体30の密度が第1領域A1における吸収体30の密度よりも低いため、第1領域A1の後方に配置された吸収体30を変形させ易くして、吸収体30を身体に沿って配置することができる。例えば、第4領域A4が幅方向外側から幅方向内側に向かって押圧された際に、第4領域A4が着用者側に膨出するように変形することにより、中央領域B1より後方に位置する第4領域A4を身体側に突出させて、身体の隙間に吸収体を配置して、後漏れを防止することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、第4領域A4が形成されているが、この構成に限定されない。具体的には、第1領域A1の後方に、第1領域A1と同じ密度の領域や第1領域A1よりも高い密度の領域を設けてもよい。
【0055】
更に、第2領域A2における吸収体30の密度は、第1領域A1における吸収体30の密度よりも高く構成されている。第2領域A2における吸収体30の密度が、第1領域A1における吸収体30の密度よりも高いため、幅方向外側から押圧された際に、第2領域A2や線状圧搾部を基点に変形して、着用者へのフィット性を高めることができる。一方、第1領域A1の密度が高すぎると、体液の引き込み性が低下する。しかし、第2領域A2の密度が第1領域A1の密度よりも高いため、体液の引き込み性を維持しつつ、フィット性を向上させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、第2領域A2における吸収体の密度が、第1領域A1における吸収体の密度よりも高いが、この構成に限定されない。具体的には、第2領域A2における吸収体の密度が、第1領域A1における吸収体の密度と同じであってもよいし、第1領域A1における吸収体の密度よりも低くてもよい。例えば、吸収体を製造する際に、吸収体の厚みをほぼ均一に成型して、第1圧縮部及び第2圧縮部を形成してもよいし、第1領域に対応する部分の吸収体の厚みが厚くなるように成型し、第1領域と第2領域とが同じ厚みになるように第1圧縮部及び第2圧縮部を形成してもよい。このように第1圧縮部及び第2圧縮部を形成した吸収体は、第1領域の密度が第2領域の密度よりも高くなる。
【0057】
また、第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3における吸収体30の密度は、第2領域A2の密度が最も高く、次いで第1領域A1の密度が高く、第3領域A3の密度が最も低いことが望ましい。更に、第1領域A1、第2領域A2及び第4領域A4における吸収体30の密度は、第2領域A2の密度が最も高く、次いで第1領域A1の密度が高く、第4領域A4の密度が最も低いことが望ましい。
【0058】
なお、吸収体30の目付及び密度は、例えば、以下の測定方法によって測定することができる。包装体によって包装された吸収性物品においては包装体を開封し、折り畳まれた吸収性物品を展開して、目付及び密度を測定する部分の厚み及び面積を測定する。次いで、目付及び密度を測定する部分を吸収性物品から切り出し、切り出した部分の重量を測定する。次いで、切り出した部分から表面シート及び裏面シート等、吸収体以外の部分を取り除き、吸収体の重量を測定する。吸収体の重量と、目付及び密度を測定する部分の面積とに基づいて目付を算出する。目付及び厚みに基づいて、密度を算出する。
【0059】
なお、厚みは、以下のような測定方法によって測定することができる。具体的には、サンプルの吸収性物品を、液体窒素に含浸させて凍結させた後、剃刀でカットし、常温に戻した後、電子顕微鏡(例えば、キーエンス社VE7800)を用いて、50倍の倍率で測定する。ここで、サンプルの吸収性物品を凍結させる理由は、カット時の圧縮により厚みが変動するのを防ぐためである。
【0060】
次に、第1の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法の一部について説明する。なお、説明しない方法については、既存の方法を用いることができる。吸収性物品の製造方法は、第1ステップとして、表面シート生成工程を行う。具体的には、表面シートを厚み方向Tに圧縮加工し、表面シート圧搾部11を形成する。この圧縮加工は、例えば、加熱及び加圧を行うエンボスロールに表面シート10を通過させることで、格子状の凹凸加工を形成する。
【0061】
次いで、第2ステップとして、表面シート接合工程を行う。具体的には、表面シートとサイドシート41,42とを、例えば熱溶着によって接着する。
【0062】
第3ステップとして、吸収体成型工程を行う。具体的には、成型ドラムによって吸収体の材料となるパルプを積層した後、積層したパルプをティッシュ等の保護紙によって包む。そして、保護紙によって包んだ吸収体を厚み方向に圧縮して圧縮部を形成する。なお、第1ステップ及び第2ステップの表面シートの製造工程と、第3ステップの吸収体成型工程の順序は、逆の順序であってもよい。
【0063】
第4ステップにおいて、接合工程を行う。具体的には、第3ステップにおいて成型した吸収体と、第2ステップにおいて接合した表面シート及びサイドシートをと、を接合する接合工程を行う。
【0064】
第5ステップにおいて、圧搾工程を行う。具体的には、吸収体30と表面シート10とを厚み方向に圧縮し、線状圧搾部80を形成する。このとき、第2領域の吸収体30には、予め第2圧縮部が形成されているため、表面シートの吸収体に対する浮きが発生し難くなり、線状圧搾部を容易に形成することができる。
【0065】
第6ステップにおいて、裏面シート接合工程を行う。具体的には、線状圧搾部を形成した吸収体及び表面シート等と、裏面シートとを接合する。裏面シートを接合した後、接着剤を塗布する工程を備える。上記の工程により、本実施の形態に係る吸収性物品を製造することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
次いで、図4に基づいて第2の実施形態に係る吸収性物品1Aについて説明する。なお、以下の実施形態の説明においては、第1の実施形態と異なる構成のみ説明し、第1の実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態に係る吸収性物品1Aは、第2領域A2及び第3領域A3の形状及び線状圧搾部の形状が異なっている。吸収性物品1Aの第2領域A2は、第1領域A1の幅方向両側方において長手方向Lに延びる直線状である。第1領域A1と第2領域A2とは、幅方向Wにおいて隣接している。線状圧搾部80は、縦長の円形であり、内側線状圧搾部85と、内側線状圧搾部よりも外側に位置する外側線状圧搾部86とを有する。第2領域A2内には、内側線状圧搾部85及び外側線状圧搾部86の一部が配置されている。また、第3領域A3は、第2領域A2の幅方向両側方において長手方向Lに延びる直線状である。
【0068】
(第3の実施形態)
次いで、図5に基づいて第3の実施形態に係る吸収性物品1Bについて説明する。第3の実施形態に係る吸収性物品1Bは、第1の実施形態に係る吸収性物品1と、第1領域A1、第2領域A2及び第3領域A3の形状及び吸収体30の形状が異なっている。吸収性物品1Bの線状圧搾部80は、第2の実施形態に係る吸収性物品1Aと同じ構成である。
【0069】
吸収性物品1Bの第1領域A1は、中央領域B1と後側領域B3とに跨って配置されている。第1領域A1の吸収体30には、吸収体コア31が配置されている。第1領域A1の幅方向外側には、吸収体30の幅方向外側端部に位置する第3領域A3が配置されている。第3領域A3の長手方向の長さは、第1領域A1の長手方向の長さよりも短い。吸収性物品1Bの吸収体30は、第3領域以外の領域は、厚み方向において圧縮されている。吸収体30の第1領域A1及び第3領域A3以外の領域が、第2領域A2となる。
【0070】
(第4の実施形態)
次いで、図6に基づいて第4の実施形態に係る吸収性物品1Cについて説明する。第4の実施形態に係る吸収性物品1Cは、昼用の生理用ナプキンであり、前側領域B2と後側領域B3の形状及び長さが同じように構成されている。
吸収性物品1Cの中央領域B1は、吸収性物品1の長手方向中央に位置している。長手方向Lにおける中央領域B1の中心は、排泄口当接領域の中心と一致し、幅方向における中央領域B1の中心は、排泄口当接領域の中心と一致する。
【0071】
第2領域A2の長手方向Lにおける中心は、吸収性物品1Cの長手方向Lにおける中心を通り、かつ幅方向に沿った仮想線EL2上に位置する。第2領域A2の形状は、この仮想線EL2上の中心点とした円弧形状である。中心点は、吸収体よりも幅方向外側に位置している。第2領域A2は、長手方向Lにおける中心から長手方向外側に向かうにつれて幅方向外側に広がる形状である。
【0072】
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【符号の説明】
【0073】
A1…第1領域、 A2…第2領域、 A3…第3領域、 A4…第4領域、 B1…中央領域、 B2…前側領域、 B3…後側領域、 EL…中心仮想線、 EP…中心交点、 L…長手方向、 T…厚み方向、 W…幅方向、 1、1A、1B、1D…吸収性物品、 10…表面シート、 11…表面シート圧搾部、 20…裏面シート、 30…吸収体、 31…吸収体コア、 41,42…サイドシート、 43,44…ウイング部、 50…粘着剤、 60…ホットメルト接着剤、 70…圧縮部、 71…第1圧縮部、 72…第2圧縮部、 73…第3圧縮部、 80…線状圧搾部、 81…第1線状圧搾部、 82…第2線状圧搾部、 83…第3線状圧搾部、 84…第4線状圧搾部、 85…内側線状圧搾部、 86…外側線状圧搾部、 90…剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体と、を有し、前記吸収性物品の厚み方向において前記吸収体を圧縮した圧縮部と、前記厚み方向において前記表面シートと前記吸収体とを厚み方向において圧縮した線状圧搾部と、が形成された吸収性物品であって、
前記吸収体は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含み、かつ前記圧縮部が形成された第1領域と、前記第1領域よりも前記吸収性物品の幅方向における両外側に配置され、かつ前記圧縮部が形成された第2領域と、前記第2領域よりも前記幅方向における両外側に配置された第3領域と、を備えており、
前記線状圧搾部は、前記第2領域において前記吸収性物品の長手方向に延びて形成されており、
前記第3領域における前記吸収体の密度は、前記第1領域における前記吸収体の密度よりも低く、かつ前記第2領域における前記吸収体の密度よりも低いことを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記第2領域における前記吸収体の密度は、前記第1領域における前記吸収体の密度よりも高い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第2領域の前記幅方向の長さは、前記線状圧搾部の前記幅方向の長さよりも長い、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第2領域の前記長手方向の長さは、前記第1領域の前記長手方向の長さよりも長い、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第2領域よりも前記幅方向における内側であって、前記第1領域よりも前記長手方向における後方には、第4領域が設けられており、
前記第4領域における前記吸収体の密度は、前記第1領域における前記吸収体の密度よりも低く、かつ前記第2領域における前記吸収体の密度よりも低い、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第2領域は、前記排泄口当接領域の中心を通りかつ前記幅方向に沿った中心仮想線と交わる中心交点から、前記吸収性物品の長手方向外側に向かうに連れて前記幅方向外側に広がる曲線形状である、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第1領域の前端部を通り、かつ前記幅方向に延びる第1幅方向仮想線と、前記第1領域の後端部を通り、かつ前記幅方向に延びる第2幅方向仮想線との間に形成された前記線状圧搾部は、前記第2領域に沿った曲線形状である、請求項6に記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−31552(P2013−31552A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169210(P2011−169210)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】