説明

吸引用貯留器および吸引用貯留装置

【課題】 使い捨て用途に適した安価な吸引用貯留器及び吸引用貯留装置を提供する。
【解決手段】 軟性材料からなる袋状の貯留部4に2つの被保持部7を設ける。ホルダーケース10には、所定の距離を隔てて一対の固定レール13が配置されている。袋状の貯留部4の各被保持部7,7を各固定レール13,13にそれぞれ装着することで、袋状の貯留部4を膨らませた状態で保持する。これにより、貯留部4内が陰圧となっても、貯留部4が膨らんだ状態を保持でき、排液が貯留される内部空間容積を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用及びその他の吸引用貯留器および吸引用貯留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等の医療機関においては、手術等により生じた創腔あるいは口腔、咽喉又は鼻腔等の患部から排出される血液、浸出液、分泌液等の排液を取り除くために、吸引ポンプを使用した吸引用貯留器が使用されている。
【0003】
吸引用貯留器としては、貯留容器に、排液が流入する排液口、吸引ポンプ等の吸引装置に接続される吸引口とが設けられ、吸引口には排液が吸引装置に逆流しないように排液逆流防止弁が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、図8は、従来の他の吸引用貯留器の構造を示す図であり、この従来の他の吸引貯留器60は、密閉硬質容器61内に排液貯留袋62が設けられている。63は排液導入口、64は吸気導出口(吸気側接続口)である。密閉硬質容器61内を陰圧にすることによって排液貯留袋62を膨らませ、これにより陰圧空間容積を確保し、間接吸引と直接吸引を併用することで、排液を排液貯留袋62に貯留するようにしている。
【0005】
【特許文献1】実開平2−37651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の吸引用貯留器は、ガラス製の貯留容器や密閉硬質容器を用いているため高価であり、使い捨て用途には適さなかった。吸引用容器を再利用するには、洗浄、消毒等の手間が必要であるとともに、洗浄時に感染を発生させないよう注意を払う必要がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、使い捨て用途に適した安価な吸引用貯留器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸引用貯留器は、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載の手段を採用する。
【0009】
即ち、請求項1に記載のように、排液を吸引して集液するための吸引用貯留器であって、排液を貯留する袋状の貯留部と、排液を前記貯留部に導入する排液側接続部材と、前記貯留部から気体を排出する吸引側接続部材とを備え、前記貯留部は前記袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載のように、請求項1の吸引用貯留器において、前記袋状の貯留部には吸引の際に前記袋状の貯留部が膨らむ状態からの収縮を防止する収縮防止補助板が設けられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載のように、請求項2の吸引用貯留器において、前記袋状の貯留部には前記収縮防止補助板を覆う内部隔壁が設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載のように、請求項1の吸引用貯留器において、前記被保持部は、前記貯留部の内部に設けられ、少なくとも1対の凹凸状部材からなるロック機構であり、前記ロック機構は、袋状の貯留部の一方の内面側から突出されたピン部材と、袋状の貯留部の他方の内面側から突出された筒部材とを備え、前記筒部材の中に前記ピン部材が挿入されたクローズ状態から袋状の貯留部を膨らませると、前記ピン部材の先端側に設けた溝部に前記筒部材の先端に設けた爪部が係合して袋状の貯留部を膨らませた状態に保持するオープン状態になることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載のように、請求項1〜4の吸引用貯留器において、液体吸収剤または凝固剤を投入する投入口を備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸引用貯留装置は、特許請求の範囲の請求項6〜11に記載の手段を採用する。
【0015】
即ち、請求項6に記載のように、排液を貯留する袋状の貯留部と、排液を前記貯留部に導入する排液側接続部材と、前記貯留部から気体を排出する吸引側接続部材とを有する吸引用貯留器と、前記袋状の貯留部を広げた状態で保持するホルダーケースとを備え、前記吸引用貯留器は、前記袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部が設けられ、前記ホルダーケースは、前記被保持部をそれぞれ保持する保持手段が設けられることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載のように、排液を貯留する袋状の貯留部と、排液を前記貯留部に導入する排液側接続部材と、前記貯留部から気体を排出する吸引側接続部材とを有する吸引用貯留器と、前記袋状の貯留部を広げた状態で保持するホルダーケースとを備え、前記ホルダーケースは、前記袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部が設けられ、前記吸引用貯留器は、前記被保持部をそれぞれ保持する保持手段が設けられることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載のように、請求項6または7の吸引用貯留装置において、前記被保持部と前記保持手段は、面ファスナから構成されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に記載のように、請求項6〜8の吸引用貯留装置において、前記袋状の貯留部には吸引の際に前記袋状の貯留部が膨らむ状態からの収縮を防止する収縮防止補助板が設けられることを特徴とする。
【0019】
また、請求項10に記載のように、請求項9の吸引用貯留装置において、前記袋状の貯留部には前記収縮防止補助板を覆う内部隔壁が設けられることを特徴とする。
【0020】
また、請求項11に記載のように、請求項6〜10の吸引用貯留装置において、前記吸引用貯留器は液体吸収剤または凝固剤を投入する投入口を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明においては、袋状の貯留部を膨らませた状態にすることで、内容積を確保でき、排液を貯留することができる。また、ガラス製の貯留器や密閉硬質容器が不用となるので、使い捨て用途に適した安価な吸引用貯留器を提供することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明においては、袋状の貯留部に収縮防止補助板を設けることで、局部の陰圧負荷を分散し、貯留部の容積拡大を図ることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明においては、収縮防止補助板を覆う内部隔壁を設けることで、貯留部内の陰圧の漏気を防止できる。
【0024】
請求項4に記載の発明においては、被保持部は、前記貯留部の内部に設けられ、少なくとも1対の凹凸状部材からなるロック機構であるため、ロック機構によって袋状の貯留部を膨らませた状態で保持することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明においては、液体吸収剤又は凝固剤の投入口を備えることで、使用後に貯留部内に液体吸収剤又は凝固剤を投入することができ、これにより排液の散乱を防止できる。
【0026】
請求項6に記載の発明においては、袋状の貯留部を広げた状態で保持するホルダーケースを備えるため、吸引用貯留器の被保持部をホルダーケースの保持手段に係合させて装着することで、袋状の貯留部内が陰圧になっても、袋状の貯留部を膨らませた状態で保持することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明においては、ホルダーケースは、袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部が設けられ、吸引用貯留器は、被保持部をそれぞれ保持する保持手段が設けられることで、袋状の貯留部の突出する部分が小さくなり、収納が容易になる。
【0028】
請求項8に記載の発明においては、面ファスナを用いることで、コストダウンを図ることができ、さらに袋状の貯留部をホルダーケースに容易に装着することができる。
【0029】
請求項9に記載の発明においては、袋状の貯留部に収縮防止補助板を設けることで、局部の陰圧負荷を分散し、貯留部の容積拡大を図ることができる。
【0030】
請求項10に記載の発明においては、収縮防止補助板を覆う内部隔壁を設けることで、貯留部内の陰圧の漏気を防止できる。
【0031】
請求項11に記載の発明においては、吸引用貯留器に液体吸収剤又は凝固剤の投入口を設けることで、使用後に貯留部内に液体吸収剤又は凝固剤を投入することができ、これにより排液の散乱を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る吸引用貯留器および吸引用貯留装置の構造を示す斜視図である。図2は、吸引用貯留器100をホルダーケース10に装着した状態を示す平面図である。本発明の第1の実施の形態に係る吸引用貯留装置は吸引用貯留器100とホルダーケース10とから構成される。
【0033】
図1、2において、1は排液側接続部材、2は凝固剤投入口ネジキャップ、3は吸引側接続部材、4は軟性材料からなる袋状の貯留部、5は凝固剤投入口、6は吸入口、7は被保持部としての固定ガイド、8は樹脂製の収縮防止補助板、9は内部隔壁、14は基部である。
【0034】
また、10はホルダーケース、11は固定ベースホルダー、12は固定ベース、13は保持手段としての固定レールである。
【0035】
袋状の貯留部4の開口部は基部14で密閉されている。この基部14には、排液側接続部材1及び吸引側接続部材3が気密状態で取り付けられている。また、基部14には、凝固剤投入口5が設けられるとともに、使用状態においてこの凝固剤投入口5は凝固剤投入口ネジキャップ2によって気密状態で閉塞されている。
【0036】
図2に示すように、被保持部としての固定ガイド7は、袋状の貯留部4の背部と腹部とに それぞれ取り付けられている。この固定ガイド7は、袋状の貯留部4の外方へ突出した鍔部7aを有している。
【0037】
ホルダーケース10は、吸引用貯留器の袋状の貯留部4を膨らませた状態で保持するものである。このホルダーケース10は、装着された吸引用貯留器を視認できるように格子状の枠体で構成しており、固定ベースホルダー11を介して固定ベース12を固定している。この固定ベース12には、吸引用貯留器の固定ガイド7の鍔部7aに係合する固定レール13が設けられている。図2に示すように、被保持部である固定ガイド7の鍔部7aを固定レール13に係合させて吸引用貯留器を装着することで、吸引用貯留器の袋状の貯留部4を膨らませた状態で保持することができる。
【0038】
図示しない吸引ポンプ等の吸引装置によって吸引側接続部材3の吸気導出口3aから袋状の貯留部4内の気体を吸引することで、袋状の貯留部4内が陰圧になり、図3に示すように貯留部4の容積が収縮されるが、袋状の貯留部4を膨らませた状態で固定ガイド7が保持手段(固定レール13)に保持されることで、袋状の貯留部4には空間容積が確保される。よって、排液側接続部材1を介して排液が袋状の貯留部4内に貯留されることになる。
【0039】
ここで、収縮防止補助板8を設けることで、空間容積を大きく確保し、陰圧による引っ張り力を分散させることができる。
【0040】
さらに、固定ガイド7と貯留部4との接続部からの漏気を防止するために、固定ガイド7覆うように内部隔壁9を設けている。
【0041】
使用終了後は、凝固剤投入口ネジキャップ2を取り外し、凝固剤投入口5から液体吸収剤又は凝固剤を貯留部4内へ投入することで、排液の散乱を防止することができる。これにより、吸引用貯留器の取り扱いが容易になり、廃棄物として処理ができる。
【0042】
なお、凝固剤投入口5の上部にはシートを設けてシーリングし、凝固剤投入口ネジキャップ2でキャップをすることで、漏気を防止している。
【0043】
本実施の形態では、袋状の貯留部4を貫通させて固定ガイド7を設けているが、固定ガイド7は袋状の貯留部4の表面側に一体成形及び、接着等によって取り付けるようにしてもよい。収縮防止補助板8は、袋状の貯留部4の表面側に固着するようにしてもよい。このようにした場合は、内部隔壁9は不用である。
【0044】
図4は、本発明の実施の形態に係る吸引側接続部材の一具体例を示す断面図である。図4において、吸引側接続部材の吸引状態を示している。
【0045】
吸引側接続部材3は、貯留部4と吸引ポンプ等の吸引装置とを接続するためのものであって、基部14を連通して設けられる吸引側内管31と、吸引側内管31の外側に設けられる吸引側外管34とを備える。そして、吸引側接続部材3には吸引側内管31と吸引側外管34とに囲まれる吸引側吸引一次室300が形成される。さらに、吸引側外管34の内部には、貯留部4内の排液の液面が上昇した際に、吸引側内管31の吸気口32からの吸引により吸気口32を閉塞するフロートバルブ40が設けられている。
【0046】
吸引側内管31は、円筒形状をしており、下端部312の底面に設けられた吸気口32から気体Bが吸引される。また、基部14の外部に突出した上端部311の吸気導出口33(3a)には、吸引装置と接続するためのチューブ等が取り付けられる。
【0047】
吸引側外管34は、上端の蓋部341に吸引用内管31を取り付けるための取付孔35が設けられている。また、吸引側外管34の上部側面には、貯留部4内の気体Bを主に吸引するための吸気口36(吸入口6)が設けられている。吸気口36(吸入口6)は、吸引側内管31の吸気口32より上方に設けられており、吸気口32からの液体飛沫の吸い込みが防止される。さらに、吸引側外管34の下端部343の側面には、貯留部4に集液された排液の液面が上昇した際に排液が流入する液流入口37が設けられている。液流入口37が側面に設けられているため、内部のフロートバルブ40は排液の液面の乱れによる影響を直接受けることがない。なお、排液を気体Bと一緒に吸い込んでしまうことがないように、吸気口32及び吸気口36は液流入口37の上方に離間して設けられている。
【0048】
また、吸引用外管34の下端342の底面には、蓋部として波除去部材38が設けられている。波除去部材38は、貯留部4に集液した排液の液面を安定させるもので、特に吸引側外管34の液流入口37付近の排液の液面の乱れを減少させる。波除去部材38としては、吸引側外管34の外径よりも大きい面線のものが用いられる。
【0049】
さらに、吸引側外管34の内部には、吸引側内管31の吸気口32の下方位置にフロートバルブ40を備える。フロートバルブ40は、内部が中空である筒体43を備え、筒体43の上端部と下端部には、それぞれ上蓋42と下蓋44とが設けられている。内部が中空である筒体43を用いるので、フロートバルブ40は十分な浮力を有し、排液の液面とフロートバルブ40の上蓋との間の高低差を大きくとることができる。なお、筒体43は中空となっているため、フロートバルブ40の重心あるいは浮力を調整するためのウエイトバランス部材を内部に設けることができる。
【0050】
下蓋44は、吸引側外管34の内径よりも小さな直径を有している。下蓋44と吸引側外管34との間のクリアランスとしては、フロートバルブ40が液面の水位変動に従って移動する際に過度の抵抗が生じることがないようなクリアランスであることが好ましい。また、下蓋44の直径は、フロートバルブ40の側面に凸部441が形成されるように、筒体43の外径よりも大きな直径であることが好ましい。凸部441により筒体43との間に段差が生じるため、排液はフロートバルブ40と吸引側外管43との隙間を毛細管現象により上昇することがない。
【0051】
上蓋42は、フロートバルブ40の側面に凸部421を形成するように、下蓋44と同様の直径を有している。凸部421が設けられることで、フロートバルブ40は大きく傾くことがなく、向きが安定する。さらには、排液の毛細管現象による上昇を減少させる効果がある。
【0052】
また、フロートバルブ40の上蓋42には、吸引側内管31の吸気口32と対抗する面にパッキン41が設けられている。パッキン41としては、軟質性のものが用いられ、フロートバルブ40と吸気口32との間の密閉性が向上する。
【0053】
また、フロートバルブ40の上蓋42には、吸気口32からのフロートバルブ40の吸引を促進するための吸引促進部材46が設けられている。吸引促進部材46は、内径が吸気側内管31の外径よりも大きい円筒形状のもので、下端部の底面が上蓋42に固定されている。フロートバルブ40が排液の液面の上昇に伴い吸気口32に接近すると、吸気口32からの吸引は吸引促進部材46の内部空間に集中される。その結果、フロートバルブ40を吸引する吸引力が増大し、吸気口32の閉塞が速やかに行なわれる。このため、排液の液面が低い位置で吸引の停止を行なうことができる。
【0054】
また、フロートバルブ40の下蓋44には、吸引側外管34の波除去部材38と対向する面に凸部45が設けられている。凸部45は、フロートバルブ40と波除去部材38との接触面積を減少させるためのもので、フロートバルブ40と波除去部材38との間に排液が流入した際に、フロートバルブ40の動きが表面張力による抵抗を受けることなく、液面の水位変動に対する追従性が向上する。なお、凸部45の数、形状、大きさは適宜設定することが可能である。
【0055】
以上の吸引側接続部材3において、貯留部4内に吸引された気体Bは、吸引側外管34の吸気口36から吸引側吸引一次室300に吸引される。続いて、気体Bは、吸引側外管34と吸引側内管31との隙間を通って、吸引側内管31の吸気口32から吸引される。
【0056】
そして、吸気口32から吸引された気体Bは、吸気導出口33を通じて吸引装置により吸引される。この際、吸気口36と吸気口32との間に直線的な吸気経路が形成されないので、排液の液体飛沫の吸い込みが防止される。また、吸気口32は、液流入口37の上方に離間して設けられているので、排液の液面が上昇した際にも排液を吸い込むことがない。
【0057】
次に、吸引により集液された排液の液面が上昇し、吸引側外管34の下端部343まで達すると、排液は液流入口37から吸引側外管34の内部に流入する。この際、波除去部材38により、排液の液面の乱れが防止される。そして、排液が吸引側外管34の内部に流入すると、フロートバルブ40は排液の流入に従って上昇する。この際、フロートバルブ40は、十分な浮力を有しており排液の液面とフロートバルブ40の上端との間の高低差が大きくなるので、吸引の際に排液を吸い込むことがない。
【0058】
続いて、フロートバルブ40が一定の高さまで上昇すると、吸引側外管34とフロートバルブ40とで囲まれる容積が減少し、吸引側吸引一次室300における吸気口32からの吸引力が上昇する。その結果、フロートバルブ40は、吸引側内管31の吸気口32からの吸引力を受けて吸気口32を閉塞する。この際、吸引促進部材46を設けることで、排液の液面が低い位置で吸気口32の閉塞を行なうことができる。吸気口32が閉塞されると、貯留部4の内部と吸引装置との吸気経路が遮断され、排液の吸引が停止する。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る吸引用貯留器および吸引用貯留装置の構造を示す斜視図である。本発明の第2の実施の形態に係る吸引用貯留装置は吸引用貯留器100Aとホルダーケース10Aとから構成される。
【0060】
この例では、面ファスナを用いて吸引用貯留器100Aをホルダーケース10Aに取り付ける。面ファスナは、雌側と雄側からなる面状の係止又は係合具である。
【0061】
図5において、1は排液側接続部材、2は凝固剤投入口ネジキャップ、3は吸引側接続部材、4は軟性材料からなる袋状の貯留部、5は凝固剤投入口、6は吸入口、7Aは被保持部としての雄の面ファスナ、14は基部である。
【0062】
また、10Aはホルダーケース、13Aは保持手段としての雌の面ファスナである。
面ファスナ(雄の面ファスナ7A、雌の面ファスナ13A)は、例えば接着剤で袋状の貯留部4、ホルダーケース10Aに固定される。雌の面ファスナ13Aも複数に分割して設けるようにしてもよい。
【0063】
ホルダーケース10Aは、吸引用貯留器100Aの袋状の貯留部4を膨らませた状態で保持するものである。図5に示すように、被保持部である雄の面ファスナ7Aを雌の面ファスナ13Aに係合させて吸引用貯留器100Aを装着することで、吸引用貯留器100Aの袋状の貯留部4を膨らませた状態で保持することができる。
【0064】
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る吸引用貯留器の構成を示す斜視図である。この図6は吸引用貯留器100Bの使用前状態を示している。図6において、1は排液側接続部材、2は凝固剤投入口ネジキャップ、3は吸引側接続部材、4は軟性材料からなる袋状の貯留部、5は凝固剤投入口、6は吸入口、15はロック機構である。
【0065】
ロック機構15は、袋状の貯留部4の一方の内面側に設けられた基材部18から突出された複数のピン部材16と、袋状の貯留部4の他方の内面側に設けられた基材部19から突出された複数の筒部材17とから構成され、ピン部材16の先端側には溝部16aが形成され、筒部材17の先端には溝部16aに係合する爪部17aが形成されている。
【0066】
袋状の貯留部4が膨らんでいないクローズ状態では、筒部材17の中にピン部材16が挿入されている。袋状の貯留部4を膨らませたオープン状態では、図6に示すように、ピン部材16の先端側に設けた溝部16aに筒部材17の先端に設けた爪部17aが係合してロックした状態となり、貯留部4を膨らませた状態が保持される。したがって、貯留部4内を陰圧にしても、貯留部4の膨らんだ状態を保持できる。
【0067】
なお、上述した第1の実施の形態においては、袋状の貯留部4に被保持部としての固定ガイド7を設け、ホルダーケース10に固定ベースホルダー11、固定ベース12、保持手段としての固定レール13を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、ホルダーケース10に被保持部としての固定ガイド7、固定ベースホルダー11、固定ベース12を設け、袋状の貯留部4に保持手段としての固定レール13を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明は、病院等の医療機関においては、手術等により生じた創腔あるいは口腔、咽喉又は鼻腔等の患部から排出される血液、浸出液、分泌液等の排液を取り除くための吸引用貯留器および吸引用貯留装置として利用できる。また、病院等の医療機関においても液体を取り除くための吸引用貯留器および吸引用貯留装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係る吸引用貯留器および吸引用貯留装置の構造を示す斜視図である。
【図2】吸引用貯留器100をホルダーケース10に装着した状態を示す平面図である。
【図3】袋状の貯留部4内の気体を吸引する状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る吸引側接続部材の一具体例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る吸引用貯留器および吸引用貯留装置の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る吸引用貯留器の構成を示す斜視図である。本発明の実施の形態に係るホルダーケースの構造を示す正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る吸引用貯留器および吸引用貯留装置の他の構成を示す図である。
【図8】従来の吸引用貯留器の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 排液側接続部材
2 凝固剤投入口ネジキャップ
3 吸引側接続部材
4 貯留部
5 凝固剤投入口
6 吸入口
7,7A 固定ガイド(被保持部)
8 収縮防止補助板
9 内部隔壁
10,10A ホルダーケース
11 固定ベースホルダー
12 固定ベース
13,13A 固定レール
14 基部
15 ロック機構
16 ピン部材
17 筒部材
100,100A,100B 吸引用貯留器




【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液を吸引して集液するための吸引用貯留器であって、
排液を貯留する袋状の貯留部と、
排液を前記貯留部に導入する排液側接続部材と、
前記貯留部から気体を排出する吸引側接続部材とを備え、
前記貯留部は前記袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部を備えることを特徴とする吸引用貯留器。
【請求項2】
請求項1記載の吸引用貯留器において、前記袋状の貯留部には吸引の際に前記袋状の貯留部が膨らむ状態からの収縮を防止する収縮防止補助板が設けられることを特徴とする吸引用貯留器。
【請求項3】
請求項2記載の吸引用貯留器において、前記袋状の貯留部には前記収縮防止補助板を覆う内部隔壁が設けられることを特徴とする吸引用貯留器。
【請求項4】
請求項1記載の吸引用貯留器において、前記被保持部は、前記貯留部の内部に設けられ、少なくとも1対の凹凸状部材からなるロック機構であり、
前記ロック機構は、袋状の貯留部の一方の内面側から突出されたピン部材と、袋状の貯留部の他方の内面側から突出された筒部材とを備え、前記筒部材の中に前記ピン部材が挿入されたクローズ状態から袋状の貯留部を膨らませると、前記ピン部材の先端側に設けた溝部に前記筒部材の先端に設けた爪部が係合して袋状の貯留部を膨らませた状態に保持するオープン状態になることを特徴とする吸引用貯留器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の吸引用貯留器において、液体吸収剤または凝固剤を投入する投入口を備えることを特徴とする吸引用貯留器。
【請求項6】
排液を貯留する袋状の貯留部と、排液を前記貯留部に導入する排液側接続部材と、前記貯留部から気体を排出する吸引側接続部材とを有する吸引用貯留器と、
前記袋状の貯留部を広げた状態で保持するホルダーケースとを備え、
前記吸引用貯留器は、前記袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部が設けられ、
前記ホルダーケースは、前記被保持部をそれぞれ保持する保持手段が設けられることを特徴とする吸引用貯留装置。
【請求項7】
排液を貯留する袋状の貯留部と、排液を前記貯留部に導入する排液側接続部材と、前記貯留部から気体を排出する吸引側接続部材とを有する吸引用貯留器と、
前記袋状の貯留部を広げた状態で保持するホルダーケースとを備え、
前記ホルダーケースは、前記袋状の貯留部を膨らませた状態で着脱可能に保持するための少なくとも2つの被保持部が設けられ、
前記吸引用貯留器は、前記被保持部をそれぞれ保持する保持手段が設けられる
ことを特徴とする吸引用貯留装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の吸引用貯留装置において、前記被保持部と前記保持手段は、面ファスナから構成されることを特徴とする吸引用貯留装置。
【請求項9】
請求項6〜8記載の吸引用貯留装置において、前記袋状の貯留部には吸引の際に前記袋状の貯留部が膨らむ状態からの収縮を防止する収縮防止補助板が設けられることを特徴とする吸引用貯留器。
【請求項10】
請求項9記載の吸引用貯留装置において、前記袋状の貯留部には前記収縮防止補助板を覆う内部隔壁が設けられることを特徴とする吸引用貯留装置。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の吸引用貯留装置において、前記吸引用貯留器は液体吸収剤または凝固剤を投入する投入口を備えることを特徴とする吸引用貯留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−300954(P2007−300954A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129242(P2006−129242)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(505131429)
【Fターム(参考)】