説明

吸引装置および吸引回収装置

【課題】車両に着脱自在に搭載可能な吸引装置において運搬や積み降ろしのコストを低減することが可能な吸引装置および吸引回収装置の提供。
【解決手段】車両に着脱自在に搭載され、回収対象物Xをホッパ2内に吸引回収するための吸引装置3であって、ホッパ2内の空気を吸引するブロワ5と、ブロワ5を駆動する電動モータと、ホッパ2とブロワ5との間の空気流路に設けられるサイクロン式集塵機6とがパレット4上に搭載された吸引装置3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設作業現場、下水処理場や各種工場等の回収場所において汚泥、土砂、粉塵や廃液等の回収対象物を吸引回収するための吸引装置および吸引回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設作業現場、下水処理場や各種工場等の回収場所において汚泥、土砂、粉塵や廃液等の回収対象物を回収し、これら回収対象物を処理場等の所定場所に運搬する吸引車が知られている。この種の吸引車は、車両と、当該車両に装備された吸引回収のための各種機器とを備えている。また、この吸引回収のための各種機器をコンテナ化し、これらの機器を車両に対して一体的に着脱自在に構成した吸引車が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の吸引車は、回収対象物を回収するレシーバタンクと、レシーバタンク内の空気を吸引するブロワと、車両の走行用エンジンとは別個に形成され、ブロワを駆動する独立エンジンと、レシーバタンクとブロワとの間の空気流路に設けられた集塵装置とが搭載された吸引コンテナを備えている。この吸引コンテナは、車両に着脱自在に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の吸引コンテナは、車両から分離された状態でも使用することが可能であるが、回収した回収対象物がレシーバタンク内に満杯になった場合には、その都度、吸引回収のための各種機器も含めて吸引コンテナごと車両上に搭載して所定場所まで運搬する必要がある。そして、レシーバタンク内の回収対象物を排出した後、再び回収場所まで運搬し、吸引コンテナごと車両から分離させる。
【0006】
また、車両の積載制限により、レシーバタンクが小型化されており、どうしても回収対象物は少なくなり、頻繁に吸引コンテナを交換する必要がある。そのため、レシーバタンク内が満杯になる度に、吸引回収のための各種機器も含めて吸引コンテナごと運搬および車両に対する積み降ろしを行う必要があり、運搬や積み降ろしのコストが嵩んでしまう。さらに、ブロワは一般的にはルーツ式ブロワが使われており、回収対象物が鉄錆であれば多量の微粉塵が吸引され、ブロワを破損する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明においては、車両に着脱自在に搭載可能な吸引装置において運搬や積み降ろしのコストを低減することが可能な吸引装置および吸引回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸引装置は、車両に搭載されて運搬され、あるいは地上に設置されて、回収対象物をホッパ内に吸引回収するための吸引装置であって、ホッパ内の空気を吸引するブロワと、ブロワを駆動する駆動部と、ホッパとブロワとの間の空気流路に設けられる集塵機と、ブロワを通過した空気から水のほか微粉塵を分離するセパレータとがパレット上に搭載されたものである。また、本発明の吸引回収装置は、この吸引装置と、吸引装置の近傍の地上に設置可能なホッパとから構成されるものである。
【0009】
本発明の吸引装置によれば、ブロワと駆動部と集塵機とセパレータとがパレット上に搭載された吸引装置を車両に搭載して回収対象物の回収場所へ運搬し、別途回収場所へ設置したホッパに対して、この吸引装置の集塵機を接続することで、ホッパ内に回収対象物を吸引することが可能である。このとき、空気に含まれる粉塵は集塵機により分離され、ブロワを通過した空気に含まれる水のほか微粉塵はセパレータにより分離される。そして、本発明の吸引回収装置では、ホッパ内が回収対象物により満杯になった場合には、ホッパから回収対象物を別の容器に移し替えて運搬すれば良く、ホッパのほか、ブロワと駆動部と集塵機とがパレット上に搭載された吸引装置は運搬する必要がない。
【0010】
また、回収対象物の吸引が不要な場合には、ブロワと駆動部と集塵機とセパレータとがパレット上に搭載された吸引装置のみを車両に搭載して運搬することが可能であり、このブロワと駆動部と集塵機とセパレータとがパレット上に搭載された吸引装置のみを他の回収場所へ運搬して別のホッパと接続し、別の回収対象物を吸引回収することが可能となる。
【0011】
ここで、ブロワは、水封式の真空ポンプであり、セパレータで分離された水をブロワに供給可能とすることが望ましい。ブロワが水封式の真空ポンプであることによって、集塵機により回収できなかった回収対象物に含まれる微粉塵を除去することが可能となる。
【0012】
また、ブロワは、大気に連通される通気管と、この通気管の開口端部に設けられたサイレンサと、ブロワ側から大気側へ空気が流れるのを防止する逆止弁と、ブロワに供給する空気を洗浄するフィルタとを備え、ブロワを空冷可能としたものであることが望ましい。これにより、ブロワ内の負圧によりフィルタ、逆止弁、サイレンサおよび通気管を通じてブロワ内に大気が吸引され、ブロワが冷却される。
【0013】
また、ホッパは、縦長のサイクロン式であることが望ましい。これにより、ブロワによりホッパ内の空気を吸引して回収対象物をホッパ内に吸引回収する際、ホッパ内で回収対象物が分離された空気が集塵機に流入するので、回収対象物を効率良くホッパ内に回収することができる。
【発明の効果】
【0014】
(1)ホッパ内の空気を吸引するブロワと、ブロワを駆動する駆動部と、ホッパとブロワとの間の空気流路に設けられる集塵機と、ブロワを通過した空気から水のほか微粉塵を分離するセパレータとがパレット上に搭載された吸引装置であることにより、ブロワと駆動部と集塵機とセパレータとがパレット上に搭載された吸引装置のみを車両に搭載して運搬したり、車両に積み降ろしたりすることができるため、運搬や積み降ろしのコストを低減することが可能となる。また、ホッパ内が回収対象物により満杯になった場合には、ホッパから回収対象物を別の容器に移し替えて運搬すれば良く、ホッパのほか、吸引装置は運搬する必要がないので、同様に運搬や積み降ろしのコストを低減することが可能となる。また、ホッパごと回収対象物を運搬することがないので、ホッパを大型化することが可能となり、その分、回収対象物を多く回収することができる。さらに、回収対象物の吸引が不要な場合には、吸引装置のみを車両に搭載して運搬することが可能であり、他の回収場所へ運搬して別のホッパと接続し、別の回収対象物を吸引回収することが可能であり、吸引装置を複数のホッパで共用することが可能となる。
【0015】
(2)ブロワが、水封式の真空ポンプであり、セパレータで分離された水をブロワに供給可能とすることにより、集塵機により回収できなかった回収対象物に含まれる細かな粉塵を除去することが可能となり、粉塵を効率良く回収することが可能となる。
【0016】
(3)ブロワが、大気に連通される通気管と、この通気管の開口端部に設けられたサイレンサと、ブロワ側から大気側へ空気が流れるのを防止する逆止弁と、ブロワに供給する空気を洗浄するフィルタとを備え、ブロワを空冷可能としたものであることにより、ブロワ内の負圧によりブロワを効率良く冷却することが可能となる。
【0017】
(4)ホッパが縦長のサイクロン式であることにより、ホッパ内で回収対象物と空気とを分離することができ、回収対象物を効率良くホッパ内に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における吸引回収装置の概略構成図である。
【図2】図1の吸引装置の平面図である。
【図3】図1の吸引装置の正面図である。
【図4】図1の吸引装置の配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における吸引回収装置の概略構成図、図2は図1の吸引装置の平面図、図3は図1の吸引装置の正面図、図4は図1の吸引装置の配管図である。
【0020】
図1において、本発明の実施の形態における吸引回収装置1は、クレーンなどにより移動可能なホッパ2と、回収対象物Xをホッパ2内に吸引回収するための吸引装置3とから構成される。吸引装置3は、図2および図3に示すように、パレット4上に、ホッパ2内の空気を吸引するブロワ5と、ホッパ2から吸引する空気に含まれる塵埃を集塵するサイクロン式集塵機6と、ブロワ5を通過した空気から水のほか微粉塵を分離するセパレータ7と、ブロワ5を駆動する駆動部としての電動モータ8と、電動モータ8に電力を供給したり、制御したりする制御盤15とが搭載されたものである。なお、ここでは駆動部として電動モータ8としているが、エンジンであっても良い。
【0021】
吸引装置3は、クレーンでワイヤを介して吊り上げて車両に搭載して運搬可能となっており、車両に搭載された状態でも車両から地上に降ろされた状態でも使用することができる。なお、吸引装置3を搭載した車両は、いわゆる吸引車として機能するが、パレット4上にはホッパ2は搭載されていないので、吸引装置3の近傍の地上にホッパ2を設置する必要がある。吸引装置3は、ホッパ2との間で空気流路を構成する連結ホース9により連結して使用する。
【0022】
ホッパ2はサイクロン式であり、大型で縦長の円筒状容器20の上部に吸引口21が設けられている。吸引口21には回収対象物Xを吸引するための吸引ホース10が接続される。また、円筒状容器20には、上端が円筒状容器20内の上部に開口された排気管22が設けられている。排気管22の下端の排気口23は、円筒状容器20の下部に設けられている。
【0023】
ブロワ5は、水封式の真空ポンプである。ブロワ5には、大気に連通される通気管50と、この通気管50の開口端部に設けられたサイレンサ51と、ブロワ5側から大気側へ空気が流れるのを防止する逆止弁52と、空気洗浄用フィルタ53とが備えられている。ブロワ5の運転中は、ブロワ5内の負圧によってフィルタ53、逆止弁52、サイレンサ51および通気管50を通じてブロワ5内に大気が吸引され、ブロワ5が冷却されるようになっている。
【0024】
サイクロン式集塵機6およびセパレータ7は公知のものであり、それ自体の詳細な説明は省略する。図4に示すように、サイクロン式集塵機6の吸気口60は、連結ホース9によってホッパ2の排気口23に接続される。一方、サイクロン式集塵機6の排気口61は、空気流路を構成する連通管11によってブロワ5の吸気口53に接続される。また、連通管11の途中にはバキュームブレーカ13が設けられている。バキュームブレーカ13は、連通管11内が所定値以下の負圧となったときに大気開放してブロワ5を保護するものである。
【0025】
ブロワ5の排気口54は、空気流路を構成する連通管12によってセパレータ7の吸気口71に接続されている。セパレータ7の排気口72には、排気管14が接続されている。また、セパレータ7の下部のドレン73は、バルブ74を通じて配管75によりブロワ5に連結されており、セパレータ7によって分離された水をブロワ5に供給して再利用することが可能となっている。
【0026】
上記構成の吸引回収装置1では、ホッパ2と吸引装置3とは、クレーンや車両に搭載して回収対象物Xの回収場所へ移動する。そして、ホッパ2と吸引装置3のサイクロン式集塵機6とを連結ホース9により接続し、電動モータ8を駆動してブロワ5を運転する。これにより、サイクロン式集塵機6およびホッパ2内の空気がブロワ5によって吸引され、回収対象物Xはホッパ2の吸引口21に接続された吸引ホース10により円筒状容器20内に吸引回収される。
【0027】
ホッパ2内では、吸引ホース10により回収対象物Xとともに吸引された空気が、円筒状容器20の内周面に沿って排気管22の周りを回転することで回収対象物Xと分離され、排気管22および連結ホース9を通じてサイクロン式集塵機6へ流入する。流入した空気はサイクロン式集塵機6によって塵埃が分離され、連通管11を通じてブロワ5に流入する。
【0028】
ブロワ5に流入した空気は、水封式の真空ポンプであるブロワ5の水封用の水によって微粉塵が除去され、連通管12を通じてセパレータ7へ流入する。流入する空気にはブロワ5の水封用の水が含まれるが、セパレータ7によって水のほか微粉塵と空気とが分離され、分離された空気は排気管14から排出される。一方、分離された水はセパレータ7内に貯留され、ドレン73、バルブ74および配管75を通じてブロワ5に供給され、水封用の水として再利用される。このように、水封式の真空ポンプであるブロワ5は、供給される水に微粉塵が混ざっても運転することが可能であり、ルーツ式ブロワのように微粉塵を除去する必要はない。
【0029】
こうしてホッパ2内に回収対象物Xが吸引回収され、大型のホッパ2内が満杯となった場合には、ホッパ2の底部の扉25を開き、別の容器24に回収対象物Xを移し替えて運搬することが可能である。このとき、ホッパ2のほか、吸引装置3は回収場所に置いたままとすることができ、吸引装置3の運搬や積み降ろしのコストを低減することが可能である。また、ホッパ2ごと回収対象物Xは運搬されないので、ホッパ2は大型化され、ホッパ2には多量の回収対象物Xが収容できる。
【0030】
さらに、回収対象物Xの吸引が不要な場合には、ホッパ2を回収場所に残したまま、吸引装置3のみを車両に搭載して運搬することが可能であり、ホッパ2を運搬する必要がない。また、この吸引装置3のみを他の回収場所へ運搬して別のホッパと接続し、別の回収対象物Xを吸引回収することが可能である。そのため、この吸引装置3は複数のホッパで共用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の吸引装置および吸引回収装置は、建設作業現場、下水処理場や各種工場等の回収場所において汚泥、土砂、粉塵や廃液等の回収対象物を吸引回収するための装置として有用である。
【符号の説明】
【0032】
1 吸引回収装置
2 ホッパ
3 吸引装置
4 パレット
5 ブロワ
6 サイクロン式集塵機
7 セパレータ
8 電動モータ
9 連結ホース
10 吸引ホース
11,12 連通管
13 バキュームブレーカ
20 円筒状容器
22 排気管
50 通気管
51 サイレンサ
52 逆止弁
53 フィルタ
70 ドレン
71 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて運搬され、あるいは地上に設置されて、回収対象物をホッパ内に吸引回収するための吸引装置であって、
前記ホッパ内の空気を吸引するブロワと、前記ブロワを駆動する駆動部と、前記ホッパと前記ブロワとの間の空気流路に設けられる集塵機と、ブロワを通過した空気から水のほか微粉塵を分離するセパレータとがパレット上に搭載された吸引装置。
【請求項2】
前記ブロワは、水封式の真空ポンプであり、前記セパレータで分離された水を前記ブロワに供給可能とした請求項1記載の吸引装置。
【請求項3】
前記ブロワは、大気に連通される通気管と、この通気管の開口端部に設けられたサイレンサと、前記ブロワ側から大気側へ空気が流れるのを防止する逆止弁と、前記ブロワに供給する空気を洗浄するフィルタとを備え、前記ブロワを空冷可能としたものである請求項2記載の吸引装置。
【請求項4】
前記駆動部は、制御盤より電力が供給され、制御される電動モータである請求項1から3のいずれかに記載の吸引装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の吸引装置と、
前記吸引装置の近傍の地上に設置可能なホッパとから構成される吸引回収装置。
【請求項6】
前記ホッパは、縦長のサイクロン式である請求項5記載の吸引回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214266(P2011−214266A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81742(P2010−81742)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】