説明

吸水性を有するフィルム

【課題】均一な膜厚およびブツ等の欠陥のない表面を有し、かつ良好な吸湿性および耐熱性を有するフィルムを提供する。
【解決手段】(A)ポリエチレン系樹脂組成物100質量部、および(B)吸水性フィラー5〜200質量部を含む吸水性樹脂組成物の層から成るフィルムであって、ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、(A−1)下記(i)〜(iv)の特性を有するエチレン系重合体99〜60質量%、(i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、(ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、(iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および(iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である、および、(A−2)酸変性樹脂1〜40質量%を含み、ここで、成分(A−1)と成分(A−2)の量の合計が100質量%であり、吸水性フィラー(B)は、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有するところのフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性および耐熱性に優れたフィルムに関する。特に、湿気を嫌う内容物、例えば食品、医薬品、衣類、履物、電子部品、電子機器、二次電池等の保護に使用され得るフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾物や菓子、薬品等の乾燥商品は、シリカゲル等の乾燥剤が封入された小袋とともに包装されている。この包装は、乾燥商品を袋状包装材に投入し、さらに乾燥剤入りの小袋を投入し、そして袋状包装材を密封することにより行われる。乾燥剤入りの小袋を投入する工程は、通常自動化されているものの、包装工程を煩雑にし、乾燥商品によっては手作業となることがあり、面倒である。さらに、菓子類等の食品では、乾燥剤が食品に同封されることになるので、乾燥剤が誤って食品に混入されたり、誤飲されたりする恐れもある。
【0003】
そこで、乾燥剤入り小袋に代えて、包装材として利用可能な乾燥剤入りフィルムが提案されている。例えば、乾燥剤としてのモレキュラーシーブ(ゼオライト)を高メルトフローレート(MFR)のエチレンメタクリル酸共重合体(EMAA)を主体とするベース樹脂に混練したものをTダイ法によりPET基材フィルム上に押出ラミネートして得られるフィルムが知られている(例えば、特許文献1)。高MFRのEMAAはモレキュラーシーブとの混和性が良好なため、モレキュラーシーブを高充填しても良好な製膜が可能になる。しかし、このフィルムは、ベースとなっているEMAAが低融点であるため、耐熱融着性および耐溶剤性に劣る。吸湿性フィルムによって保護されるところの、湿気を嫌う内容物の中でも、特に電子部品、電子機器、二次電池等の場合には、それらが高温になっても乾燥を十分保って保護され得るように、フィルムが耐熱性であることが要求される。したがって、上記フィルムは、このような分野では使用出来ない。
【0004】
また、モレキュラーシーブをMFR10以上の樹脂に混練し、これを熱可塑性樹脂と共にインフレーション法により共押出成形して得られるフィルムが知られている(例えば、特許文献2)。MFRの高い樹脂はモレキュラーシーブとの混和性をある程度改善し、モレキュラーシーブを高充填しても製膜を可能にするが、混和性の改善はまだ充分でなく、フィルムの膜厚安定性も不充分である。
【特許文献1】特開2002−206046号公報
【特許文献2】特開2005−280188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、均一な膜厚およびブツ等の欠陥のない表面を有し、かつ良好な吸水性および耐熱性を有するフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、吸水性フィラーを高充填しても外観および膜厚安定性に優れ、かつ耐熱性に優れるフィルムを得るべく鋭意検討した結果、吸水性フィラーが混入される樹脂として、特定の融点、融解熱量、結晶化度およびMFRを有するエチレン系重合体を特定量の酸変性樹脂と混合したものを使用することにより、吸水性フィラーとの混和性および耐熱性の両方が改善されることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(A)ポリエチレン系樹脂組成物100質量部、および
(B)吸水性フィラー5〜200質量部
を含む吸水性樹脂組成物の層から成るフィルムであって、ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、
(A−1)下記(i)〜(iv)の特性を有するエチレン系重合体99〜60質量%、
(i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、
(ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、
(iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および
(iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である
および、
(A−2)酸変性樹脂1〜40質量%
を含み、ここで、成分(A−1)と成分(A−2)の量の合計が100質量%であり、
吸水性フィラー(B)は、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有する、ここでD99およびD50はそれぞれ、粒子径分布において粒子径の小さい方から累積して99質量%および50質量%になる点における粒子径を言う、ところのフィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルムは、均一な膜厚およびブツ等の欠陥のない表面を有し、かつ良好な吸湿性および耐熱性を有するので、湿気を嫌う内容物、例えば食品、医薬品、衣類、履物、電子部品、電子機器、二次電池等の保護に有用である。
【0009】
また、外層として特定のポリオレフィンの層をさらに有することにより、耐熱性がさらに高められるとともに、フィルムの取り扱いが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(A)ポリエチレン系樹脂組成物
本発明におけるポリエチレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(A−1)および酸変性樹脂(A−2)を含む。
【0011】
(A−1)エチレン系重合体
エチレン系重合体は、十分な耐熱性およびフィラー受容性を有するように、下記(i)〜(iv)を満たすことが必要である。
(i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、
(ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、
(iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および
(iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である。
【0012】
上記ピークトップ融点(Tm)が110℃より低いと、耐熱性が不充分になる場合がある。上記ピークトップ融点(Tm)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。
【0013】
また、上記融解熱量(ΔH)が90J/g未満であると、耐熱性が不充分になる場合があり、180J/gを超えるとフィラー受容性が不足し、製膜性に劣る場合がある。上記融解熱量(ΔH)は、好ましくは100〜170J/gである。
【0014】
また、上記結晶化度(Xc110)が10%未満では耐熱性が不充分になる場合があり、60%を超えるとフィラー受容性が不足し、製膜性に劣る場合がある。上記結晶化度(Xc110)は、好ましくは15〜45%である。なお、110℃における結晶化度とは、DSC融解曲線における融解熱量ΔH全体に対する110℃以上での融解熱量の割合を意味する。
【0015】
さらに、上記MFRが10g/10分以上では、ポリエチレン系樹脂組成物(A)と吸水性フィラー(B)との溶融混練性(フィラー分散性)が不充分になり、フィルム製膜時の引落性が低下する場合があり、0.1g/10分未満では、フィルムの肉厚調整が困難になる場合がある。上記MFRは、好ましくは0.2〜7g/10分、最も好ましくは0.5〜5g/10分である。
【0016】
なお、本明細書において、DSC融解曲線は、特に断らない限り、TA Instruments(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社)のDSC Q1000型を使用し、試料を190℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で190℃まで加熱するという温度プログラムでDSC測定を行って得られる曲線である。
【0017】
本発明におけるエチレン系重合体は、上記(i)〜(iv)の要件を満たすものであれば特に制限されない。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)とのコポリマーが挙げられる。酢酸ビニル、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどをコモノマーとするエチレンコポリマーは、コモノマーによる結晶性低下が大きいため、上記(i)〜(iv)の要件を満たすことが難しい。
【0018】
エチレン系重合体は、1種を単独で、または2種以上を任意に配合した混合物として使用することが出来る。混合物として使用する場合には、混合物全体が上記要件(i)〜(iv)を満たすようにすればよい。
【0019】
(A−2)酸変性樹脂
酸変性樹脂は、疎水性であるエチレン系重合体(A−1)と親水性である吸水性フィラー(B)との混和性を改良して吸水性フィラーの分散を促進し、製膜したときにフィルムにブツなどの欠点が発生しないようにするための成分である。
【0020】
本発明に使用する酸変性樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された樹脂であれば何でも良い。不飽和カルボン酸の例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が挙げられ、その誘導体の例としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等のエステルおよび無水物が挙げられる。上記樹脂としては、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体などのエチレン系重合体、プロピレン系重合体、スチレン系エラストマーが挙げられる。エチレン系重合体(A−1)との混和性の点から、上記樹脂がエチレン系重合体であるものが最も好ましい。
【0021】
酸変性樹脂は、好ましくは0.1〜10g/10分のMFR(190℃、21.18N)を有する。さらに好ましくは、0.2〜7g/10分、最も好ましくは0.5〜5g/10分である。MFRが上記上限より高いと、フィルム製膜時の引落性が低下する場合がある。MFRが上記下限より低いと、フィルムの肉厚調整が困難になる場合がある。
【0022】
酸変性樹脂の具体例としては、三井化学(株)製のアドマー(商品名)、日本ポリオレフィン(株)製のアドテックス(商品名)、クロンプトン社製のポリボンド(商品名)および住友化学(株)製のボンドファースト(商品名)が挙げられる。
【0023】
酸変性樹脂は、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、エチレン系重合体(A−1)99〜60質量%および酸変性樹脂(A−2)1〜40質量%を含む。より好ましくは、エチレン系重合体(A−1)97〜70質量%および酸変性樹脂(A−2)3〜30質量%であり、更に好ましくは、エチレン系重合体(A−1)95〜80質量%および酸変性樹脂(A−2)5〜20質量%である。酸変性樹脂(A−2)が少ない(すなわち、エチレン系重合体(A−1)が多い)と、吸水性フィラー(B)の分散が不充分になり、製膜の際に目脂が多く発生したり、得られるフィルムにブツなどの欠点が発生し易くなったりする。一方、酸変性樹脂(A−2)が多い(すなわち、エチレン系重合体(A−1)が少ない)と、酸変性樹脂と吸水性フィラーとの相互作用が非常に強くなり、吸水性樹脂組成物の製造時の混練負荷や製膜時の押出負荷が高くなる場合がある。また、得られるフィルムの引張伸びが低下する場合がある。
【0025】
(B)吸水性フィラー
吸水性フィラーは、吸水性を有し、溶剤に溶出しない安定的なものであればどのようなものでも良い。例えば、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、シリカゲル、石灰、焼成ハイドロタルサイトおよびモレキュラーシーブが挙げられ、これらを、単独で、または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0026】
吸水性フィラーは、ポリエチレン系樹脂組成物に良好に分散されてブツなどの欠点のない均一なフィルムが得られるように、制御された粒子径分布を有するものが使用される。すなわち、本発明で使用される吸水性フィラーは、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有し、ここでD99およびD50はそれぞれ、粒子径分布において粒子径の小さい方から累積して99質量%および50質量%になる点における粒子径を言う。D99は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。また、D50は、好ましくは0.01〜15μm、より好ましくは0.1〜10μmである。上記上限を超えるような粒子の粗いフィラーは、製膜したときに、フィルムの欠点や異物となる場合がある。また、粒子の細か過ぎるフィラーは、凝集してフィルムの欠点や異物になったり、凝集しなかった場合には多量の空気を抱き込んで吸水性樹脂組成物製造の際の溶融混練作業性を悪くしたりする場合がある。粒子径分布を制御するには、大きな粒子を生成してそれを粉砕、分級する方法、及び最初から細かい粒子を生成して分球する方法がある。粒子径分布を上記範囲内に制御出来るならどちらの方法でも良く、特に限定はされないが、押出負荷および製膜性の観点から、細かい粒子を最初から生成する方法がより好ましい。
【0027】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して吸水性フィラー(B)を5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部、より好ましくは15〜120質量部の量で含む。吸水性フィラー(B)の配合量が上記下限未満の場合には、充分な吸水機能が得られず、上記上限を超えると、製膜性が低下する場合がある。
【0028】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、スリップ剤、リン系、フェノール系、硫黄系などの酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの耐候剤、銅害防止剤、芳香族リン酸金属塩系、ゲルオール系などの造核剤、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの帯電防止剤、着色剤、芳香剤、抗菌剤、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、金属水和物などのフィラー、グリセリン脂肪酸エステル系、パラフィンオイル、フタル酸系、エステル系などの可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
上記スリップ剤は、吸水性樹脂組成物の製造時の溶融混練作業性を向上させ、また製膜時のダイカスや目脂などの発生を回避することが出来る。スリップ剤としては、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、シリコンガム、シリコンオイルなどが挙げられる。スリップ剤の添加量は、ポリエチレン系樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0030】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、上記成分(A−1)、(A−2)および(B)ならびに所望により任意の添加剤を溶融混練することにより得ることが出来る。溶融混練は、二軸押出機、バンバリーミキサーなどの慣用の装置を使用して行うことができる。混練温度は、製膜時の吸湿発泡トラブルを回避するため、フィルム製膜温度よりも高くすることが好ましい。得られた組成物は、造粒機によってペレット化した後、Tダイ等を使用する通常の製膜に付することができるが、その場合には、ペレット化を、ホットカット法などの水を介在させない方法で行うことが好ましい。また真空ベントを設けたり、ギヤポンプ等を介したりしても良い。更に、ペレット化することなく、直接製膜に付する方法、例えば、溶融混練して得られた組成物をそのままギヤポンプ等を介してTダイに送って製膜する方法を使用することもできる。
【0031】
こうして得られた、吸水性樹脂組成物の層から成るフィルムは、ブツなどの欠点のない良好な外観を有し、厚さも均一であり、かつ十分な吸水性および耐熱性を有する。
【0032】
本発明のフィルムは、上記吸水性樹脂組成物の層の両面にポリオレフィンの層をさらに有することができる。ポリオレフィンの層を有しない上記フィルムは、吸水性が高いため、大気下に置いておくと、不必要に吸水してフィルム機能が低下し得る。そこで、ポリオレフィンの層を有しない上記フィルムは、湿度が十分低められた環境で保管、取扱する必要がある。しかし、ポリオレフィンの層を両面に有することにより、上記吸水性樹脂組成物の層の吸水速度を抑制することができ、したがって、フィルムの管理、取扱に際して、湿度に関する環境条件をあまり厳しくする必要がなくなる。
【0033】
上記ポリオレフィンとしては、不必要な吸水を低減するという目的から疎水性のものであれば何でも良いが、フィルムの耐熱性をさらに高めることができるように、下記(1)〜(2)を満たすものが好ましい。
(1)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が125℃以上である、および
(2)120℃における結晶化度(Xc120)が55%以上である。
上記ピークトップ融点は、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上であり、上記結晶化度は、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。
【0034】
上記ポリオレフィンとしては、ホモポリプロピレン、プロピレンとα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)とのコポリマーなどのプロピレン系重合体および、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。
【0035】
上記ポリオレフィンの具体例としては、プライムポリマー(株)製のF−730NV(商品名、プロピレンランダムコポリマー)およびSP4530(商品名、高密度ポリエチレン)が挙げられる。
【0036】
ポリオレフィンの層を外層として有するフィルムは、少なくとも3層以上の多層Tダイや多層スパイラルダイを使用して共押出することにより製造することが出来る。
【0037】
本発明の吸水性樹脂組成物の層からなるフィルムおよび上記フィルムの外層としてポリオレフィン層をさらに有するフィルムは、良好な吸水性を有し、したがって、湿気を嫌う内容物、例えば菓子や乾物などの食品、薬剤や検査薬(例えば尿検査用試験紙)などの医薬品、洋服、履物、電子部品、電子機器、二次電池などの保護材として有用である。具体的には、例えば、食品の包装材、二次電池用外装材、二次電池用吸湿材、履物の中敷き、衣類のカバーおよび検査薬の包装材として有用である。また、外層としてポリオレフィン層をさらに有する上記フィルムは、管理がより容易であるとともに、さらに改善された耐熱性を有し、特に、電子部品、電子機器、二次電池の保護材として有用である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1〜7および比較例1〜10
吸水性樹脂組成物の層から成るフィルムの製造:
表1に示す配合量(質量部)の成分をドライブレンドし、これを(株)モリヤマの20L加圧ニーダーにより溶融混練して吸水性樹脂組成物を得た後、造粒機によりペレット化した。排出温度(溶融混練温度)は220℃であり、造粒はホットカット法で行った。次いで、得られたペレットを、株式会社池貝製のPCM−46二軸押出機と東芝機械株式会社製のTダイを用いて製膜し、膜厚50μmのフイルムを得た。得られたフイルムは、露点温度−50℃以下にしたガス置換型グローブボックス(アズワン株式会社のSG−1000)の中に保管した。なお、製膜は、Tダイ出口樹脂温度200℃、チルロール温度40℃および引取速度10m/分の条件で真空ベントを使用して行った。得られたフィルムについて、下記(1)〜(6)の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(1)フィルム外観
A4サイズに裁断したフィルム5枚を目視で観察し、以下の基準で判定した。
○:発泡および穴開きがなく、直径0.1mm以上のブツもない
△:発泡および穴開きがなく、直径0.5mm以上のブツもないが、直径0.1mm〜0.5mm未満のブツが1〜10個ある
×:発泡または穴開きがあり、直径0.5mm以上のブツもある
【0041】
(2)膜厚安定性
フィルム幅の中心付近についてマシン方向に2cm毎に20個所の膜厚を測定し、その標準偏差が1.5μm以下を「○」、1.5μmを超えて3.0μm以下を「△」、3.0μmを超えるものを「×」とした。
【0042】
(3)溶剤中の水分吸収能力
ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)/エチレンカーボネート(EC)=1/1/1(容積比)に水を極少量混合し、試験液とした。この試験液中の水分量をカールフィッシャー容量滴定装置(平沼産業株式会社のAQ-300)により測定した(初期の水分量)。次いで、この試験液30g中に450cmのフィルムを浸漬し、25℃×48時間保管後の試験液中の水分量を同様に測定した。なお、以上の操作を、アイ・エイ・シー株式会社のエアードライヤーQD20−75により露点温度−50℃以下にしたガス置換型グローブボックス(アズワン株式会社のSG−1000)中で25℃で行った。
【0043】
(4)大気中の水分吸収能力
内容積400cmの透明防湿袋に6000cmのフィルムと上記グローブボックス中で状態調節した神栄株式会社のハンディタイプ温湿度計Hygropalm1を入れてヒートシールにより封止し、封止直後(初期)、25℃×15分後および25℃×2時間後の絶対湿度を測定した。測定は25℃で行った。
【0044】
(5)耐熱性
株式会社東洋精機製作所のHG−100型ヒートシール試験機を用い、80〜130℃の所定のシール温度でフィルムをそのマシン方向がT字剥離試験の引張方向になるように融着した(4秒間、圧力0.2MPa)。次いで、T字剥離試験を、株式会社東洋精機製作所のAE−CT型引張試験機を使用し、引剥幅25mm、引剥速度100mm/分、引剥角度180°で行った。より高いシール温度まで○判定になるものが耐熱性の良いフィルムである。
○:全くあるいは殆ど融着していない(引剥強度<0.1N/25mm)
△:僅かに融着している(引剥強度0.1〜2.0N/25mm)
×:融着している(引剥強度>2.0N/25mm)
【0045】
(6)破断強度および破断伸び
フィルムをマシン方向が引張方向になるようにしてJIS5号ダンベル型試験片に打抜き、株式会社東洋精機製作所のAE−CT型引張試験機を使用して測定を行った(引張速度200mm/分、標線間距離40mm)。
【0046】
使用した材料は以下の通りである。
KF271:日本ポリエチレン(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=127℃、ΔH=127J/g、Xc110=26%、Xc120=23%、MFR=2.4g/10分、密度913kg/m
SP2040:プライムポリマー(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=117℃、ΔH=147J/g、Xc110=28%、MFR=4.0g/10分、密度920kg/m
UF240:日本ポリエチレン(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=123℃、ΔH=136J/g、Xc110=47%、MFR=2.1g/10分、密度920kg/m
SP2520:プライムポリマー(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=121℃、ΔH=154J/g、Xc110=38%、Xc120=19%、MFR=1.7g/10分、密度928kg/m
F−730NV:プライムポリマー(株)製、プロピレンランダムコポリマー、Tm=139℃、Xc120=66%、MFR=7g/10分
SP4530:プライムポリマー(株)製、高密度ポリエチレン、Tm=132℃、ΔH=185J/g、Xc110=80%、Xc120=72%、MFR=2.8g/10分、密度942kg/m
KS571:日本ポリエチレン(株)製、超低密度ポリエチレン、Tm=96℃、ΔH=110J/g、Xc110=0%、MFR=12.0g/10分、密度907kg/m
KF360:日本ポリエチレン(株)製、超低密度ポリエチレン、Tm=111℃、ΔH=92J/g、Xc110=5%、MFR=3.5g/10分、密度898kg/m
20200J:プライムポリマー(株)製、直鎖状低密度ポリエチレン、Tm=120℃、ΔH=137J/g、Xc110=43%、MFR=18.5g/10分、密度918kg/m
アドマーXE070:三井化学(株)製、無水マレイン酸変性エチレン系重合体、MFR=3 g/10分
モレキュラーシーブ:ユニオン昭和(株)製のモレキュラーシーブ4Aパウダー、D99=9.9μm、D50=2.5μm
硫酸マグネシウム−1:馬居化成工業(株)製の乾燥硫酸マグネシウムSN−00の粉砕物、D99=3.5μm、D50=1.3μm
硫酸マグネシウム−2:馬居化成工業(株)製の乾燥硫酸マグネシウムSN−00、D99=118μm、D50=24μm
LBT−77:堺化学工業(株)製のポリエチレンワックス
【0047】
なお、上記F−730NVおよびSP4530については、DSC測定を、230℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱するという温度プログラムを使用して行った。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から明らかなように、実施例1〜7の本発明のフィルムは、外観、膜厚安定性および吸水性に優れ、かつ耐熱性および強度も十分である。
【0050】
一方、成分(A−1)としてプロピレン系重合体を使用した比較例1のフィルムは、吸水性フィラーの分散が不充分で細かいブツが残り、膜厚安定性も悪かった。また、成分(A−1)としてΔHおよびXc110が高過ぎるものを使用した比較例2のフィルムも、吸水性フィラーの分散が不充分で細かいブツが残り、膜厚安定性も不十分であった。成分(A−1)として、Tmおよび/またはXc110が低過ぎるものを使用した比較例3および4のフィルムは、耐熱性に劣る。成分(A−1)として、MFRが高すぎるものを使用した比較例5のフィルムは、吸水性フィラーの分散が不充分で細かいブツが残り、膜厚安定性も悪かった。成分(A−2)の量が多すぎる比較例6のフィルムは、製膜時の押出負荷が非常に高く、吐出量が不安定になり、膜厚安定性に劣る。成分(A−2)を使用しなかった比較例7のフィルムは、吸水性フィラーの分散が不充分で製膜時に目脂が発生し、また、フィルムには細かいブツが残った。膜厚安定性も不十分であった。吸水性フィラー(B)の量が多すぎる比較例8のフィルムは、フィルムの随所に穴を生じ、膜厚安定性も不十分であった。吸水性フィラー(B)の量が少なすぎる比較例9のフィルムは、吸水機能に劣る。吸水性フィラー(B)として粒子径の粗いものを使用した比較例10のフィルムは、ブツが非常に多く、膜厚安定性も不十分であった。比較例8および10については、良好に製膜することができなかったので、他の試験を行わなかった。
【0051】
実施例8〜11
ポリオレフィン層を外層として有するフィルムの製造:
実施例1で得られた吸水性樹脂組成物を、真空ベントを設けたGT−40−24−A型押出機(単軸タイプ、プラスチック工学研究所(株)製)から、表2に示すポリオレフィンをUT−32−24−A型押出機(単軸タイプ、プラスチック工学研究所(株)製)から押出してスタックプレートタイプの2種3層Tダイ(プラスチック工学研究所(株)製)により下記条件で、吸湿性樹脂組成物の層の両面にポリオレフィンの層を有する、全厚50μmの三層フィルムを製造した。ポリオレフィン層/吸水性樹脂組成物層/ポリオレフィン層の厚み比は1:8:1にした。得られたフィルムについて、上記(1)〜(6)の評価試験を行った。ただし、上記(3)の試験に関しては、25℃×48時間保管後に測定を行う代わりに、25℃×240時間保管後に測定を行った。また、上記(4)の試験に関しては、25℃×2時間後に測定を行う代わりに、25℃×96時間後に測定を行った。結果を表2に示す。
Tダイ出口樹脂温度220℃
引取速度15m/分
チルロール温度40℃
【0052】
【表2】

【0053】
表2から明らかなように、ポリオレフィン層を外層として有する実施例8〜11のフィルムは、外層を有しない実施例1のフィルムと比較して、吸水速度が遅い。すなわち、不必要な吸水が抑制されている。また、ポリオレフィンとして、TmおよびXc120が本発明の特定の範囲内であるものを使用した実施例8〜9のフィルムは、実施例1のフィルムよりも耐熱性がさらに改善された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエチレン系樹脂組成物100質量部、および
(B)吸水性フィラー5〜200質量部
を含む吸水性樹脂組成物の層から成るフィルムであって、ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、
(A−1)下記(i)〜(iv)の特性を有するエチレン系重合体99〜60質量%、
(i)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が110℃以上である、
(ii)DSC融解曲線における融解熱量(ΔH)が90〜180J/gである、
(iii)110℃における結晶化度(Xc110)が10〜60%である、および
(iv)MFR(190℃、21.18N)が0.1g/10分以上10g/10分未満である
および、
(A−2)酸変性樹脂1〜40質量%
を含み、ここで、成分(A−1)と成分(A−2)の量の合計が100質量%であり、
吸水性フィラー(B)は、30μm以下の粒子径(D99)および20μm以下の粒子径(D50)を有する、ここでD99およびD50はそれぞれ、粒子径分布において粒子径の小さい方から累積して99質量%および50質量%になる点における粒子径を言う、ところのフィルム。
【請求項2】
請求項1記載のフィルムの両面にポリオレフィンの層が積層されたフィルム。
【請求項3】
ポリオレフィンが下記(1)〜(2)
(1)DSC融解曲線における最も高い温度側のピークトップ融点(Tm)が125℃以上である、および
(2)120℃における結晶化度(Xc120)が55%以上である
を満たす、請求項2記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルムを食品の包装材のために使用する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルムを二次電池用外装材のために使用する方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルムを二次電池用吸湿材のために使用する方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルムを履物の中敷きのために使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルムを衣類のカバーのために使用する方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルムを検査薬の包装材のために使用する方法。

【公開番号】特開2009−29964(P2009−29964A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196438(P2007−196438)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】