説明

吸水性ポリマーの製造法

本発明は、モノマー溶液の重合による吸水性ポリマーの製造法に関し、その際、モノマー溶液の酸素含有率は、重合前に少なくとも1つの還元剤の添加によって低下させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー溶液の重合による吸水性ポリマーの製造法に関し、その際、モノマー溶液の酸素含有率を、少なくとも1つの還元剤の添加によって低下させた。
【0002】
本発明のさらに他の実施態様は、請求項、明細書および実施例から読み取ることができる。本発明による対象の、前で挙げられた特徴および後でさらに説明されるべき特徴は、そのつど記載された組み合わせにおいてのみならず、またその他の組み合わせにおいても、本発明の範囲を逸脱することなく使用可能であると理解される。
【0003】
吸水性ポリマーは、殊に、(共)重合された親水性モノマーからのポリマー、適したグラフトベース上の1つ以上の親水性モノマーのグラフト(共)重合体、架橋されたセルロースエーテルまたはデンプンエーテル、架橋されたカルボキシメチルセルロース、部分的に架橋されたポリアルキレンオキシドまたは水性液体中で膨潤可能な天然製品、例えばグアール誘導体である。そのようなポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯およびその他の衛生用品を製造するための、水溶液を吸収する製品として使用され、しかしまた農業園芸における保水剤としても使用される。
【0004】
吸水性ポリマーの製造は、例えば研究論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L.BuchholzおよびA.T.Graham, Wiley-VCH, 1998、またはUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版 , 第35巻, 第73頁〜第103頁に記載される。
【0005】
吸水性ポリマーは、通常、例えば部分中和されたアクリル酸をベースとするモノマー溶液のラジカル重合によって製造される。酸素はラジカル重合を阻害し、かつそれゆえたいてい重合前に大幅に除去される。
【0006】
溶解された酸素が不活性ガスによりモノマー溶液から排出される物理的な酸素除去のための方法が公知である。いわゆる不活性化に際して、不活性ガスはたいてい逆流においてモノマー溶液に導通される。良好な完全混合およびそれにより最適な不活性化は、例えばノズル、スタティックミキサーまたはダイナミックミキサーならびに気泡塔の使用によって達成されうる。重合自体も、頻繁に同様に不活性ガス下で実施される。窒素によるモノマー溶液の不活性化は、例えば研究論文"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L.BuchholzおよびA.T.Graham, Wiley-VCH, 1998、またはUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第6版 , 第35巻, 第73頁に記載される。
【0007】
DE−A−3540994は、モノマー溶液および窒素をベンチュリノズル内で逆流において完全に混合し、かつそれによって酸素をモノマー溶液から除去することを教示する。しかしながらこの手法は、ノズルがポリマー形成によって非常に簡単に詰まり、かつ酸素除去がそれによって妨害されやすいという欠点を有する。それに加えて、この方法の場合、不活性ガスの消費が比較的高い。
【0008】
DE−A19938574は、塔状装置中での不活性ガスによるモノマー溶液からの酸素の除去のための連続的な方法を記載し、その際、モノマー溶液および不活性ガスは、装置を逆流において貫流する。不活性ガスは、装置の底部にて微細な気泡で分散して導入され、かつ頂部で取り出される。効率は、付加的な攪拌装置によって高められる。
【0009】
モノマー溶液の不活性化のための、従来技術から公知の全ての方法は、装置による比較的高いエネルギー消費を必要とする。それに加えてさらに、ガス混合物を連続的に排出する排ガス導管が必要とされる。装置による比較的高いエネルギーの消費以外に、必要とされる不活性ガス量はコスト要因となる。酸素の除去によって容易に早期の重合が起こるため、装置が妨害されやすいということも欠点であることが明らかになる。
【0010】
WO−A−03/051415には熱処理による不活性化が記載され、その際、モノマー溶液は少なくとも40℃に加熱される。有利な一実施態様において、中和熱がモノマー溶液の加熱のために用いられる。加熱されかつ不活性化されたモノマー溶液は自発的に重合するので、モノマー溶液の成分は重合反応器中で混合されなければならない。この場合に欠点なのは、重合が開始する際の不完全な混合である。
【0011】
DE−A−19955861は、モノマー溶液が不活性化され、かつ重合反応器中で開始剤溶液と混合される連続的な重合を開示する。その際、使用されるレドックス開始剤系の還元剤および酸化剤が、分離された溶液として計量供給される。
【0012】
本発明の課題は、吸水性ポリマーの製造法の提供、殊にモノマー溶液の不活性化のための簡素化された方法であった。
【0013】
該課題は、モノマー溶液の重合による吸水性ポリマーの製造法によって解決され、その際、モノマー溶液の酸素含有率は、重合前に少なくとも1つの還元剤の添加によって低下させられる。
【0014】
モノマー溶液の酸素含有率は、還元剤の添加前は、通常5〜30質量ppmであり、かつ還元剤の添加後および重合前は、通常せいぜい4質量ppm、有利にはせいぜい2質量ppm、とりわけ有利にはせいぜい1質量ppm、極めて有利にはせいぜい0.5質量ppmである。
【0015】
還元剤は、所定の条件下で、モノマー溶液の溶解された酸素と反応させられえなければならず、かつさらに他の制限を受けない。適した還元剤は、例えば、レドックス開始剤系において還元性成分としても使用される還元剤、例えばアスコルビン酸、グルコース、ソルボース、亜硫酸水素アンモニウムまたは亜硫酸水素アルカリ金属塩、亜硫酸アンモニウムまたは亜硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アンモニウムまたはチオ硫酸アルカリ金属塩、次亜硫酸アンモニウムまたは次亜硫酸アルカリ金属塩、ピロ亜硫酸アンモニウムまたはピロ亜硫酸アルカリ金属塩、硫化アンモニウムまたは硫化アルカリ金属またはナトリウムヒドロキシメチルスルホキシレートである。有利には、アスコルビン酸またはピロ亜硫酸ナトリウムが還元剤として使用される。
【0016】
化学的な酸素除去のために、還元剤は重合前に溶液に添加される。重合前とは、例えばレドックス重合の場合においては、酸化性成分の添加前のことを、光重合の場合においては、照射前のことを、および熱重合の場合においては、加熱前のことを意味する。異なる開始剤系が使用される場合、重合前とは、最初の開始剤系の反応開始前のことを意味する。
【0017】
本発明による方法において有利には使用される還元剤の量は、一方では、溶解された酸素の量に、かつ他方では、使用される開始剤系に依存する。
【0018】
モノマー溶液の酸素含有率のみが低下させられるべきである場合、還元剤は、そのつど溶解された酸素に対して、一般に少なくとも50モル%、有利には少なくとも75モル%、とりわけ有利には少なくとも90モル%、および一般に150モル%まで、有利には125モル%まで、極めて有利には110モル%まで使用される。
【0019】
重合は、モノマー溶液の酸素含有率が所望された値に下がった時になってようやく開始される。通常、このためには20分で十分である。
【0020】
当然のことながら、本発明による方法はまた、通常の物理的な酸素除去を補助することにも適している。それによって酸素除去が促進されえ、かつ不活性ガスの必要量は低下させられうる。還元剤の必要量および反応時間は、この場合、要求に相応して場合により下方に調整されうる。
【0021】
本発明の有利な一実施態様において、重合はレドックス開始剤系によって開始される。この場合、酸素除去のために使用される還元剤を過剰に使用すること、および同時に還元性成分としてレドックス重合に際して使用することが有利である。
【0022】
有利なレドックス開始剤系の適した酸化性成分は、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸塩である。
【0023】
適した有機過酸化物は、例えばアセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−アミルペルピバレート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペルネオヘキサノエート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルイソノナノエート、t−ブチルペルマレエート、t−ブチルペルベンゾエート、ジ−(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネート、ジミリスチルペロキシジカーボネート、ジアセチルペロキシジカーボネート、アリルペルエステル、クミルペロキシネオデカノエート、t−ブチルペル−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシドおよびt−アミルペルネオデカノエートである。
【0024】
酸化剤に関して、ペルオキソ二硫酸ナトリウムが有利であり、かつ過酸化水素/ペルオキソ二硫酸ナトリウムの組み合わせがとりわけ有利である。
【0025】
有利には、酸化剤は重合反応器中になって初めて添加される。
【0026】
重合のために使用されうる重合反応器は、どんな制限も受けない。
【0027】
本発明による方法は、不連続的にまたは連続的に実施されうる。軸に平行な流路を有する連続多軸混練機、有利には連続二軸混練機が有利である。
【0028】
吸水性ポリマーは、例えば、
a)少なくとも1つのエチレン系不飽和の、酸基を有するモノマー、
b)少なくとも1つの架橋剤、
c)場合により、モノマーa)と共重合可能な1つ以上のエチレン系および/またはアリル系の不飽和モノマーおよび
d)場合により、モノマーa)、b)および場合によりc)が少なくとも部分的にグラフト重合されうる1つ以上の水溶性ポリマー、
を含有するモノマー溶液の重合によって得られる。
【0029】
適したモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、またはそれらの誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルである。とりわけ有利なモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。極めて有利なのは、アクリル酸である。
【0030】
モノマーa)、殊にアクリル酸は、有利にはヒドロキノン半エーテルを0.025質量%まで含有する。有利なヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはトコフェロールである。
【0031】
トコフェロールは、以下の式
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルであり、Rは水素またはメチルであり、Rは水素またはメチルであり、かつRは水素または炭素原子1〜20個を有する酸基を意味する]の化合物と理解される。
【0032】
のための有利な基は、アセチル、アスコルビル、スクシニル、ニコチニルおよびその他の生理的に許容されるカルボン酸である。カルボン酸は、モノ−、ジ−またはトリカルボン酸であってもよい。
【0033】
有利なのは、R=R=R=メチルのアルファ−トコフェロール、殊にラセミ体のアルファ−トコフェロールである。Rは、とりわけ有利には、水素またはアセチルである。殊に有利なのは、RRR−アルファ−トコフェロールである。
【0034】
モノマー溶液は、そのつどアクリル酸に対してヒドロキノン半エーテルを、有利にはせいぜい130質量ppm、とりわけ有利にはせいぜい70質量ppm、有利には少なくとも10質量ppm、とりわけ有利には少なくとも30質量ppm、殊に50質量ppm含有し、その際、アクリル酸塩もアクリル酸として考慮される。例えばモノマー溶液の製造のために、ヒドロキノン半エーテルの相応する含有率を有するアクリル酸が使用されうる。
【0035】
架橋剤b)は、ポリマーネットワーク中にラジカル重合により導入されうる少なくとも2つの重合性基を有する化合物である。適した架橋剤b)は、例えば、EP−A−0530438に記載されたようなエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン、EP−A−0547847、EP−A−0559476、EP−A−0632068、WO−A−93/21237、WO−A−03/104299、WO−A−03/104300、WO−A−03/104301に、およびDE−A−10331450に記載されたようなジアクリレートおよびトリアクリレート、DE−A−10331456およびWO−A−04/013064に記載されたような、アクリレート基以外にさらに他のエチレン系不飽和基を含有する混合されたアクリレート、または、例えばDE−A−19543368、DE−A−19646484、WO−A−90/15830およびWO−A−02/32962に記載されたような架橋剤混合物である。
【0036】
適した架橋剤b)は、殊にN,N'−メチレンビスアクリルアミドおよびN,N'−メチレンビスメタクリルアミド、ポリオールの不飽和のモノカルボン酸またはポリカルボン酸のエステル、例えばジアクリレートまたはトリアクリレート、例えばブタンジオールジアクリレートまたはエチレングリコールジアクリレートもしくはブタンジオールメタクリレートまたはエチレングリコールメタクリレートならびにトリメチロールプロパントリアクリレートおよびアリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、リン酸のアリルエステルならびにビニルホスホン酸誘導体であり、それらは例えばEP−A−0343427に記載されている。さらに適した架橋剤b)は、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテルおよびペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルおよびグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールをベースとするポリアリルエーテル、ならびにエトキシル化されたその変形である。本発明に従う方法において使用可能なのは、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートであり、その際、使用されるポリエチレングリコールは、300から1000の間の分子量を有する。
【0037】
しかしながらとりわけ有利な架橋剤b)は、3〜15回エトキシル化されたグリセリンの、3〜15回エトキシル化されたトリメチロールプロパンの、3〜15回エトキシル化されたトリメチロールエタンのジアクリレートおよびトリアクリレート、殊に、2〜6回エトキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、3回プロポキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、ならびに3回混合エトキシル化されたまたはプロポキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、15回エトキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンの、ならびに40回エトキシル化されたグリセリン、トリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンのジアクリレートおよびトリアクリレートである。
【0038】
極めて有利な架橋剤b)は、例えばWO−A−03/104301に記載されているような、アクリル酸またはメタクリル酸によりジアクリレートまたはトリアクリレートにエステル化された繰り返しエトキシル化されたおよび/またはプロポキシル化されたグリセリンである。とりわけ有利なのは、3〜10回エトキシル化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートである。極めて有利なのは、1〜5回エトキシル化されたおよび/またはプロポキシル化されたグリセリンのジアクリレートまたはトリアクリレートである。最も有利なのは、3〜5回エトキシル化されたおよび/またはプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートである。これらは吸水性ポリマー中でのとりわけ低い残留物含有率(一般に10質量ppm未満)によって特徴づけられ、かつそれにより製造された吸水性ポリマーの水抽出物は、同じ温度の水と比較してほぼ無変化の表面張力(一般に少なくとも0.068N/m)を有する。
【0039】
架橋剤b)の量は、そのつどモノマーa)に対して、有利には0.01〜1質量%、とりわけ有利には0.05〜0.5質量%、極めて有利には0.1〜0.3質量%である。
【0040】
モノマーa)と共重合可能なエチレン系不飽和モノマーc)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノネオペンチルアクリレートおよびジメチルアミノネオペンチルメタクリレートである。
【0041】
水溶性ポリマーd)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコールまたはポリアクリル酸、有利にはポリビニルアルコールおよびデンプンが使用されうる。
【0042】
適したベースポリマーの製造ならびにさらに他の適した親水性のエチレン系不飽和モノマーd)は、DE−A−19941423、EP−A−0686650、WO−A−01/45758およびWO−A−03/104300に記載される。
【0043】
吸水性ポリマーは、通常、モノマー水溶液の重合および場合により引き続くヒドロゲルの細分化によって得られる。適した製造法は文献中に記載される。吸水性ポリマーは、例えば
−バッチ法もしくは管型反応器中でのゲル重合および、ミートチョッパー、押出機または混練機中での引き続く細分化(EP−A−0445619、DE−A−19846413)
−混練機中での重合、その際、例えば逆方向の攪拌軸によって連続的に細分化される(WO−A−01/38402)
−ベルト上での重合および、ミートチョッパー、押出機または混練機中での細分化(DE−A−3825366、US−6,241,928)
−乳化重合、その際、すでに比較的狭いゲルサイズ分布のパールポリマーが生じる(EP−A−0457660)、
−織物層のin situ重合、それはたいてい連続的な運転において前もってモノマー水溶液で噴霧し、引き続き光重合に供した(WO−A−02/94328、WO−A−02/94329)
によって得られうる。
【0044】
反応は、有利には、例えばWO−A−01/38402に記載されているような混練機中で、または、例えばEP−A−0955086に記載されているようなベルト反応器上で実施される。
得られたヒドロゲルの酸基は、通常、部分的に中和され、有利には25〜85モル%、有利には27〜80モル%、とりわけ有利には27〜30モル%または40〜75モル%中和され、その際、通常の中和剤が使用されえ、有利にはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩ならびにそれらの混合物が使用されうる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩も使用されうる。ナトリウムおよびカリウムは、アルカリ金属としてとりわけ有利であり、しかしながら、極めて有利なのは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムならびにそれらの混合物である。通常、中和は、水溶液としてのまたは同様に、有利には固体としての中和剤の混入によって達成される。例えば、明らかに50質量%未満の水割合を有する水酸化ナトリウムは、23℃を上回る融点を有するろう質材料として存在してもよい。この場合、反物または溶融物の計量供給は、高められた温度で可能である。
【0045】
中和は、重合後にヒドロゲルの段階で実施されうる。しかしまた、中和剤の一部をすでにモノマー溶液に添加し、かつ所望された最終的な中和度を重合後に初めてヒドロゲルの段階で調整することによって、酸基を重合前に40モル%まで、有利には10〜30モル%、とりわけ有利には15〜25モル%中和することも可能である。モノマー溶液は、中和剤の混入によって中和されうる。ヒドロゲルは、例えばミートチョッパーを用いて機械的に細分化されえ、その際、中和剤が噴霧、分散または注入されえ、次いで注意深く混ぜ合わされうる。そのために、得られたゲル材料は均質化のためにさらに繰り返しミートチョッパーで破砕してもよい。最終的な中和度へのモノマー溶液の中和は有利である。
【0046】
次いで、中和されたヒドロゲルは、残留湿分含有率が、有利には15質量%未満、殊に10質量%になるまでベルト乾燥機またはドラム乾燥機で乾燥され、その際、EDANA(欧州不織布協会)(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨された試験方法No.430.2−02"水分含有率(Moisutre content)"に従って測定される。選択的に、乾燥のためにしかしまた、流動層乾燥機または加熱されたプローシェアミキサーも使用されうる。とりわけ白色の生成物を得るために、このゲルの乾燥に際して、蒸発する水の迅速な搬出を保証することが有利である。そのために、乾燥機温度は最適化されなければならず、空気の供給および排出は制御して行われなければならず、かつどの場合においても十分な通気が考慮されなければならない。当然のことながら、乾燥は、ゲルの固体含有率が高ければ高いほどそれだけ容易であり、かつ生成物はそれだけ白色である。有利には、それゆえ乾燥前のゲルの固体含有率は30〜80質量%である。とりわけ有利なのは、窒素またはその他の非酸化性不活性ガスによる乾燥機の通気である。選択的に、しかしまた酸素の分圧のみを、酸化黄変現象を防止するために乾燥中に低下させてもよい。通例、しかしまた十分な通気と水蒸気の排出とによりなお許容される生成物が生じる。色および生成物品質に関して有利なのは、一般に可能な限り短い乾燥時間である。
【0047】
乾燥されたヒドロゲルは、有利には粉砕されかつふるいにかけられ、その際、粉砕のために、通常、ロールミル、ピンミル、振動ミルが使用されうる。ふるいにかけられた、乾燥されたヒドロゲルの粒度は、有利には1000μm未満、とりわけ有利には900μm未満、極めて有利には800μm未満であり、かつ有利には100μmを上回り、とりわけ有利には150μmを上回り、極めて有利には200μmを上回る。
【0048】
極めて有利なのは、106〜850μmの粒度(ふるいカット (Siebschnitt))である。粒度は、EDANA(欧州不織布協会)によって推奨された試験方法No.420.2−02"粒径分布(Particle size distribution)"に従って測定される。
【0049】
ベースポリマーは、有利には引き続き表面後架橋される。このために適した後架橋剤は、ヒドロゲルのカルボキシレート基と共有結合を形成しうる少なくとも2つの基を含有する化合物である。例えば、適した化合物は、EP−A−083022、EP−A−543303およびEP−A−937736に記載されたような、アルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ジ−またはポリグリシジル化合物、DE−C−3314019、DE−C−3523617およびEP−A−450922に記載されたような二官能性アルコールまたは多官能性アルコール、またはDE−A−10204938およびUS−6,239,230に記載されたようなβ−ヒドロキシアルキルアミドである。
【0050】
さらに、DE−A−4020780において環状カーボネート、DE−A−198075022においてオキサゾリドンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドン、DE−A−19807992においてビス−およびポリ−2−オキサゾリジノン、DE−A−198545732においてオキソテトラヒドロ−1,3−オキサジンおよびその誘導体、DE−A−19854574においてN−アシル−2−オキサゾリドン、DE−A−10204937において環状尿素、DE−A−10334584において二環式アミドアセタール、EP−A−1199327においてオキセタンおよび環状尿素およびWO−A−03/031482においてモルホリン−2,3−ジオンおよびその誘導体が適した表面後架橋剤として記載されている。
【0051】
通常、後架橋は、表面後架橋剤の溶液がヒドロゲル上または乾燥ベースポリマー粉末上に噴霧されるように実施される。噴霧に引き続き、ポリマー粉末は熱的に乾燥され、その際、架橋反応は、乾燥前のみならずまた乾燥中にも行われてよい。
【0052】
架橋剤の溶液の噴霧は、有利には、可動性の混合器具を有するミキサー中で実施され、例えばスクリューミキサー、パドルミキサー、ディスクミキサー、プローシェアミキサーおよびショベルミキサー中で実施される。とりわけ有利なのは、縦型ミキサー、極めて有利なのは、プローシェアミキサーおよびブレードミキサーである。適したミキサーは、例えばLoedige(R)−ミキサー、Bepex(R)−ミキサー、Nauta(R)−ミキサー、Processall(R)−ミキサーおよびSchugi(R)−ミキサーである。
【0053】
熱的乾燥は、有利には接触式乾燥機、とりわけ有利にはショベル式乾燥機、極めて有利にはディスク式乾燥機中で実施される。適した乾燥機は、例えばBepex(R)−乾燥機およびNara(R)−乾燥機である。そのうえ、流動層乾燥機も使用されうる。
【0054】
乾燥は、ミキサーそれ自体の中で、ジャケットの加熱または熱風の送り込みによって行われうる。同様に適しているのは、後接続された乾燥機、例えば箱形乾燥機、回転管炉または加熱可能なスクリューである。しかしまた、例えば共沸蒸留も乾燥方法として用いられうる。
【0055】
有利な乾燥温度は、50〜250℃の範囲にあり、有利には50〜200℃、およびとりわけ有利には50〜150℃である。反応ミキサーまたは乾燥機中におけるこの温度での有利な滞留時間は、30分未満、とりわけ有利には10分未満である。
【0056】
本発明のさらに他の一対象は、衛生用品、殊におむつを製造するための、本発明により製造された吸水性ポリマーの使用である。
【0057】
本発明による方法は、モノマー溶液の重合前の容易な不活性化を可能にする。
【0058】
本発明による方法により製造された吸水性ポリマーは、通常の物理的な酸素除去に比べて、低い残留モノマー含有率および遠心分離保持容量対抽出可能分の有利な比を有する。
【0059】
吸水性ポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。重合中の不所望の連鎖停止反応によって、短いかつそれによりまた未架橋のポリマー鎖(抽出可能分)の割合は増大し、遠心分離保持容量対抽出可能分の比はより小さくなる。
【0060】
方法:
測定は、他に記載がない場合、23±2℃の周囲温度および50±10%の相対湿度で実施されるべきである。吸水性ポリマーは、測定前に良く完全混合する。
【0061】
残留モノマー
吸水性ポリマー粒子の残留モノマーの含有率は、EDANA(欧州不織布協会)によって推奨された試験方法No.410.2−02"残留モノマー(Residual monomers)"に従って測定される。
【0062】
遠心分離保持容量(CRC Centrifuge Retention Capacity)
吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持容量は、EDANA(欧州不織布協会)によって推奨された試験方法No.441.2−02"遠心分離保持容量(Centrifuge Retention Capacity)"に従って測定される。
【0063】
抽出可能分
吸水性ポリマー粒子中の抽出可能分の割合は、EDANA(欧州不織布協会)によって推奨された試験方法No.470.2−02"抽出可能分(Extractables)"に従って測定される。
【0064】
EDANA−試験方法は、例えば欧州不織布協会, Avenue Eugene Plasky 157, B-1030 Bruessel, Belgienのもとで得られる。
【0065】
例:
例1
71.5モル%の中和度を有する33質量%のアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液1kgを、0.5質量%のアスコルビン酸水溶液と29℃で混合した。引き続き、モノマー溶液の酸素含有率の減少量を測定した。
【0066】
【表1】

【0067】
結果が示すのは、モノマー溶液がアスコルビン酸の添加によって不活性化されうるということである。
【0068】
例2
71.5モル%の中和度を有する33質量%のアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液1kgを、0.5質量%のアスコルビン酸水溶液と29℃で混合した。
【0069】
モノマー溶液は、アクリル酸に対して0.4質量%の、15回エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレートを架橋剤として含有していた。
【0070】
アスコルビン酸の溶液の添加15分後に、重合を、過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムとからの混合物の計量供給によって開始した。
【0071】
アクリル酸に対して、過酸化水素0.007質量%(0.25質量%の水溶液として)およびペルオキソ二硫酸ナトリウム0.02質量%(15質量%の水溶液として)を使用した。開始剤混合物を、2つの水溶液の混合によって製造した。
【0072】
得られた生成物ゲルを細分化し、170℃で1時間、循環空気乾燥キャビネット中で乾燥させ、粉砕しかつ150〜850μmへとふるいにかけ除去した。
【0073】
引き続き、残留モノマー含有率、遠心分離保持容量および抽出可能分を測定した。結果は、表2にまとめられている。それらが示すのは、比較可能なそれ以外の特性とともに、本発明による方法により、少ない抽出可能分および少ない残留モノマーを有する吸水性ポリマーが得られることである。
【0074】
例3
例2の手順で処理した。0.5質量%のアスコルビン酸水溶液7gを使用した。化学的な酸素除去のための反応時間は14分であった。
【0075】
例4
例2の手順で処理した。0.5質量%のアスコルビン酸水溶液8gを使用した。化学的な酸素除去のための反応時間は15分であった。
【0076】
例5
例2の手順で処理した。0.5質量%のアスコルビン酸水溶液9gを使用した。化学的な酸素除去のための反応時間は17.5分であった。
【0077】
例6
例2の手順で処理した。0.5質量%のアスコルビン酸水溶液9gを使用した。化学的な酸素除去のための反応時間は18分であった。
【0078】
例7
例2の手順で処理した。アスコルビン酸水溶液を用いる代わりに、モノマー溶液を窒素で不活性化した。そのために3分間、窒素を25l/hの量でモノマー溶液に導通した。
【0079】
重合の開始のために、付加的に、アクリル酸に対して0.0015質量%のアスコルビン酸を添加した。アスコルビン酸を、0.5質量%の水溶液として使用した。
【0080】
例8
例7の手順で処理した。モノマー溶液を3分間、窒素50l/hで不活性化した。
【0081】
例9
例7の手順で処理した。モノマー溶液を7分間、窒素10l/hで不活性化した。
【0082】
例10
例7の手順で処理した。モノマー溶液を30分間、窒素100l/hで不活性化した。
【0083】
【表2】

【0084】
本発明による方法により製造されたポリマーは、少ない抽出可能分および少ない残留モノマーを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー溶液の重合による吸水性ポリマーの製造法において、モノマー溶液の酸素含有率を、重合前に少なくとも1つの還元剤の添加によって低下させることを特徴とする、モノマー溶液の重合による吸水性ポリマーの製造法。
【請求項2】
モノマー溶液の酸素含有率が、少なくとも1つの還元剤の添加後および重合前に1質量ppm未満であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの還元剤がアスコルビン酸であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの還元剤の量が、モノマー溶液中に溶解された酸素に対して50〜150モル%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
重合がレドックス重合であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
レドックス開始剤系の酸化剤を重合反応器中になって初めて添加することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ペルオキソ二硫酸ナトリウムを酸化剤として使用することを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
過酸化水素を付加的な酸化剤として使用することを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
モノマー溶液を、重合前にもっぱら少なくとも1つの還元剤の添加によって不活性化することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法によって製造された、吸水性ポリマーの使用下での衛生用品の製造法。

【公表番号】特表2009−507096(P2009−507096A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528480(P2008−528480)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065588
【国際公開番号】WO2007/025921
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】